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特開2022-7080路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、及び、路面標示用水性塗料の乾燥促進方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007080
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、及び、路面標示用水性塗料の乾燥促進方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/506 20160101AFI20220105BHJP
   E01C 23/22 20060101ALI20220105BHJP
   E01F 9/518 20160101ALI20220105BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
E01F9/506
E01C23/22
E01F9/518
B05D3/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109784
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000101477
【氏名又は名称】アトミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】新津 健太
(72)【発明者】
【氏名】生沼 和彦
(72)【発明者】
【氏名】東 弘一朗
(72)【発明者】
【氏名】小川 博巳
【テーマコード(参考)】
2D053
2D064
4D075
【Fターム(参考)】
2D053AA28
2D064AA05
2D064CA03
2D064EA02
2D064JA02
4D075AA01
4D075BB64Z
4D075BB68Z
4D075CA02
4D075CA47
4D075DA06
4D075DB13
4D075DC05
4D075EA06
(57)【要約】
【課題】塗布膜の乾燥促進効果を有しつつも金属を腐食させにくく、簡便な散布装置で散布が可能な路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、及び、路面標示用水性塗料の乾燥促進方法を提供すること。
【解決手段】本発明の水性路面標示用塗料の乾燥促進剤は、酢酸塩及びプロピオン酸塩のいずれか一方もしくは双方のカルボン酸塩の水溶液からなり、前記カルボン酸塩の濃度が、0.1mol/リットル以上飽和濃度以下である。一方、本発明の路面標示用水性塗料の乾燥促進方法は、路面に形成された、乾燥前の水性路面標示用塗料の塗布膜の乾燥を促進させる水性路面標示用塗料の乾燥促進方法であって、前記塗布膜に、1m当たりの前記カルボン酸塩の成分量が1g以上になるように、上記本発明の水性路面標示用塗料の乾燥促進剤を供給することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸塩及びプロピオン酸塩のいずれか一方もしくは双方のカルボン酸塩の水溶液からなり、
前記カルボン酸塩の濃度が、0.1mol/リットル以上飽和濃度以下であることを特徴とする路面標示用水性塗料の乾燥促進剤。
【請求項2】
前記カルボン酸塩として、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、及びプロピオン酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の路面標示用水性塗料の乾燥促進剤。
【請求項3】
路面に形成された、乾燥前の路面標示用水性塗料の塗布膜の乾燥を促進させる路面標示用水性塗料の乾燥促進方法であって、
前記塗布膜に、1m当たりの前記カルボン酸塩の成分量が1g以上になるように、請求項1または2に記載の路面標示用水性塗料の乾燥促進剤を供給することを特徴とする路面標示用水性塗料の乾燥促進方法。
【請求項4】
前記塗布膜への前記乾燥促進剤の供給が、路面に形成された前記塗布膜の表面に、前記乾燥促進剤を散布することにより行われることを特徴とする請求項3に記載の水性路面標示用塗料の乾燥促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の路面に塗装した水性の路面標示用塗料の塗布膜を乾燥する、路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、及び、路面標示用水性塗料の乾燥促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、舗装道路の路面には、道路交通に関する規則、警戒、規制、案内、指示等の情報を適切に車両の運転手や歩行者に与えるために、各種の区画線、道路標示、カラーリング(以下、これらを「路面標示」という。)が、塗料を用いて路面に施されている(以下、このような塗料を「路面標示用塗料」という。)。
【0003】
共用道路に於ける路面標示の施工作業は、道路交通を規制して行われるが、路面標示用塗料は、道路交通を規制してから通行を可能とするまでの時間(交通規制時間)を短縮するために、塗料塗布後の乾燥が可能な限り速いことが要求される。また、交通規制からの解放(交通開放)直後の走行車両のタイヤによる塗膜の耐汚れ性に優れることが求められる。そのような塗料として、従前、蒸発速度の速いケトン系、エステル系、芳香族系、脂肪族系等の有機溶剤を用いた塗料が使用されてきた。
【0004】
しかしながら、蒸発性有機溶剤は、塗布後迅速に大気中に揮散することから、環境汚染のひとつとなっており、近年では、より環境汚染の少ない路面標示用水性塗料が使用されている。従前の有機溶剤を使用した路面標示用塗料(有機溶剤系路面標示用塗料)の場合、塗布後通常約10分程度で交通解放が可能である。
【0005】
一方、路面標示用水性塗料の乾燥時間は、塗布後の雰囲気温度や湿度に大きく依存する。JIS K5600に規定されている塗料一般試験条件である気温23℃湿度50%の雰囲気下では、路面標示用水性塗料でも有機溶剤系路面標示用塗料と同等の乾燥時間である。しかし、路面標示用水性塗料では、低温時や多湿時に乾燥時間が長くなり、交通解放が遅くなってしまうことがある。
【0006】
また、乾燥時間が長いことから、降雨に遭遇する確率が上がってしまう。路面標示用水性塗料の塗膜が十分に乾燥・硬化していない状態で降雨に遭遇すると、当該塗膜が溶出、剥離することがある。更に、路面標示用水性塗料の塗膜が、一見、乾燥に至ったとしても、塗膜に粘着が残ってしまえば、タイヤによる汚れが発生するなどの不具合を生ずる懸念があり、一般に、安全を見た乾燥時間が確保される。
【0007】
路面標示用水性塗料を路面標示に用いる場合の上記の如き問題を解決するために、いくつかの試みがなされている。例えば、特許文献1には、路面標示用水性塗料(当該文献中においては、水性組成物。以下同様に括弧内は文献中表現。)を塗布後、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどの水溶性塩を塗料と接触させることで乾燥を促進する技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、酸との接触によって凝集する水希釈可能な分散塗料を路面に塗布する技術が開示されている。詳しくは、路面標示用水性塗料(水性の酸凝固性エマルジョン塗料)を路面に塗布する際に、その塗料上に、または塗料中に反射粒子粉を散布した後に、酸水溶液をスプレー散布することによって、数分で乾燥させる方法および装置が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、水と反応することで発熱可能な非水溶性の無機化合物粒子を、路面標示用水性塗料とともに路面に塗布するか、あるいは、路面に塗布された乾燥前の路面標示用水性塗料の塗布膜上に散布することで、塗布膜の乾燥を促進させる技術が開示されている。
【0010】
さらに、特許文献4には、路面標示用水性塗料の乾燥を促進させる水性塗料定着剤、及び、スプレーから吐出される路面標示用水性塗料が通過する容器内に、移送された水性塗料定着剤を散布させることで、路面標示用水性塗料と水性塗料定着剤とを混合させる技術が開示されている。特許文献4に記載の技術によれば、容器外に水性塗料定着剤が飛散せずに効率よく水性塗料定着剤を路面標示用水性塗料に混合することができる。
【0011】
特許文献1と特許文献2に記載の技術は、路面標示用水性塗料を路面に塗布した後、酸または水溶性塩との接触によって乾燥を促進する方法である。酸や水溶性塩は金属を腐食させ錆を発生させる性質がある。路面標示用塗料は、一般的にマーカー車と呼ばれる路面標示用塗布装置を搭載した車両を用いて塗装される。
【0012】
酸または水溶性塩の飛沫が塗布装置や車両に付着すると、錆が発生し装置の寿命が短くなるため、メンテナンス周期を短くしなければならない。また、酸を多量に散布すると、塗料中に含有する炭酸カルシウムと反応し、炭酸ガスが発生するため、設計された塗料性能が得られない場合がある。
【0013】
特許文献3に記載の技術は、水と反応することで発熱可能な非水溶性の無機化合物粒子を散布するもので、塗膜表面および内部まで乾燥を促進できるが、無機化合物粒子が粉末粒子であるため、周囲への粉末粒子の飛散の懸念がある。
特許文献4に記載の技術は、水性塗料定着剤を飛散させずに効率よく水性塗料に混合できるが、特殊な塗布装置が必要であり、経済的な観点からは課題が残る。
【0014】
以上のように、何れの文献においても、路面標示用水性塗料の乾燥を促進するための技術が記載されている。しかし、提案されている技術は、何れも、速乾性の路面標示を実現することはできるものの、上述したように、各々課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭61-243866号公報
【特許文献2】特表平8-500405号公報
【特許文献3】特開2004-244467号公報
【特許文献4】特開2007-107278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みて検討されたものであり、詳しくは、塗布膜の乾燥促進効果を有しつつも金属を腐食させにくく、簡便な供給装置で塗布膜への供給が可能な路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、及び、路面標示用水性塗料の乾燥促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、以下の本発明によって解決される。即ち、本発明の路面標示用水性塗料の乾燥促進剤は、酢酸塩及びプロピオン酸塩のいずれか一方もしくは双方のカルボン酸塩の水溶液からなり、
前記カルボン酸塩の濃度が、0.1mol/リットル以上飽和濃度以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明の路面標示用水性塗料の乾燥促進剤においては、前記カルボン酸塩として、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、及びプロピオン酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
【0019】
一方、本発明の路面標示用水性塗料の乾燥促進方法は、路面に形成された、乾燥前の水性路面標示用塗料の塗布膜の乾燥を促進させる水性路面標示用塗料の乾燥促進方法であって、
前記塗布膜に、1m当たりの前記カルボン酸塩の成分量が1g以上になるように、上記本発明の水性路面標示用塗料の乾燥促進剤を供給することを特徴とする。
【0020】
本発明の路面標示用水性塗料の乾燥促進方法においては、前記塗布膜への前記乾燥促進剤の供給が、路面に形成された前記塗布膜の表面に、前記乾燥促進剤を散布することにより行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、塗布膜の乾燥促進効果を有しつつも金属を腐食させにくく、簡便な供給装置で塗布膜への供給が可能な路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、及び、路面標示用水性塗料の乾燥促進方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、及び、路面標示用水性塗料の乾燥促進方法の実施形態について、各構成に分けて詳細に説明する。
なお、本実施形態において「路面」とは、車両通行のための道路舗装面、飛行機の滑走路面、工場内の通行路、自転車道、歩道等の舗装路面、及び、屋内外の駐車場等の舗装面等を意味し、建造物の床面や屋上等作業スペースや生活空間となり得る床面についても概念に含まれる。
【0023】
また、本実施形態において「舗装」とは、アスファルト舗装、コンクリート舗装及び敷石舗装等を意味する。さらに、本実施形態において「路面標示」とは、特に限定されるものではないが、路面に各種の情報の表示を目的として塗装により形成されるマーク等であり、例えば、区画線、横断歩道、はみ出し禁止、制限速度、通行区分、行先表示等を線、文字、記号及び模様等で表した交通標示やその他の情報の標示を含み、さらには、路面をカラーリングする等、視覚により注意喚起する標示や意匠性を付与する標示等を挙げることができる。
【0024】
[路面標示用水性塗料]
本実施形態において、乾燥促進の対象となる路面標示用塗料とは、車両の運転者及び歩行者等に道路交通に関する規制、警戒、案内、指示等の情報を路面に表示するために用いられるものである。
【0025】
また、路面標示用水性塗料とは、溶剤として、主として水や水系の液体を用い、有機溶剤を含まないか、含んでも少量であり、水系媒体が溶剤のメインの材料である路面標示用塗料をいう。
路面標示用水性塗料の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、スチレン等のエチレン性不飽和基を有する化合物を重合または共重合してなる樹脂成分、例えば、アクリル酸樹脂成分をビヒクル成分とするものが挙げられる。
【0026】
更に、樹脂成分は、カルボキシル基、エポキシド基、カルボニル基、アミノ基、炭素-炭素二重結合等の反応性官能基または結合を分子内に導入した重合体であってもよい。水性のビヒクル成分は、分散ポリマーであってもよいし、水溶性ポリマーとの混合物であってもよい。
【0027】
また、路面標示用水性塗料は、塗布作業性、着色や塗料物性、塗膜物性を改善するために、添加される各種の添加剤や顔料、フィラーを、適宜、必要に応じて、種類、含有量等を所望の特性に合わせて適宜選択し、それぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0028】
例えば、添加剤としては、塗料に一般的に使用されている分散剤、湿潤剤、沈降防止剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。また、添加可能な顔料としては、二酸化チタンや酸化鉄などの無機顔料、アゾ顔料やフタロシアニン顔料などの有機顔料等、各種着色顔料および体質顔料が挙げられる。、添加可能なフィラーとしては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、二酸化珪素、珪石粉などが挙げられる。
【0029】
また、路面標示用水性塗料は、溶媒または分散媒として、主として水を有するが、必要に応じて単独または2種類以上の有機溶剤を含んでいてもよく、特に水溶性の有機溶剤が好ましいが、水性塗料の安定性を阻害するものでなければ限定されるものではない。
このような路面標示用水性塗料の具体例としては、JIS K 5665 1種A及びJIS K 5665 2種Aなどに記載されたものが挙げられる。
【0030】
本実施形態において、「塗布膜」とは、水性路面標示用塗料を塗布することで形成された乾燥前の塗料の層をいう。当該塗布膜を乾燥させることで、使用に供し得る「塗膜」が形成される。なお、「塗膜」といった場合には、ある程度硬化して塗膜としての層が構成された状態の全般を指し、使用に供し得る状態の他、いわゆる生乾き状態の塗料の層をも含む概念である。
【0031】
[路面標示用水性塗料の乾燥促進剤]
(カルボン酸塩)
本実施形態にかかる路面標示用水性塗料の乾燥促進剤は、酢酸塩及びプロピオン酸塩のいずれか一方もしくは双方のカルボン酸塩の水溶液からなる。
【0032】
使用可能な酢酸塩には特に制限はないが、好ましい酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛などが挙げられる。
使用可能なプロピオン酸塩には特に制限はないが、好ましいプロピオン酸塩としては、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸亜鉛などが挙げられる。
【0033】
水溶液を調製する前の原料の状態においては、これら酢酸塩、プロピオン酸塩として水和物も含まれ、好適に使用可能である。
これらカルボン酸塩は、いずれかを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
これら酢酸塩やプロピオン酸塩は、水溶液の状態で使用される。即ち、乾燥を促進させようとするならば、常識的には却って不利になると考えられる水分を多く含む水溶液を敢えて用いることが、本実施形態の肝となる。粉体等の固体を塗布膜表面に散布する方法では、均一に散布することが困難であるが、乾燥促進剤を水溶液にすることで、塗布膜表面への均一な散布を実現することができる。また、塗布前の塗料に混合する場合にも、個体では塗料に均一に分散することが困難であるが、乾燥促進剤が水溶液であるため、混合後すぐに相溶し、塗料への均一混合が容易である。
【0035】
さらに、水溶液とした場合に水溶液中に存在する酢酸イオンやプロピオン酸イオンは、金属表面に化学的に吸着して疎水膜を形成するため,例えば、路面標示用塗布装置や、マーカー車などの車両に飛沫がかかってしまったとしても、錆の発生が抑制されると考えられる。
【0036】
本実施形態にかかる路面標示用水性塗料の乾燥促進剤は、上記カルボン酸塩の濃度が0.1mol/リットル~飽和濃度の範囲で使用する。これらカルボン酸塩の濃度が少な過ぎると、乾燥促進剤の効果が不十分となる懸念があり、特に水分が過剰であると、水が追加されることで未添加よりも却って乾燥が遅くなることがある。
【0037】
これらカルボン酸塩の濃度の下限としては、0.3mol/リットル以上であることが好ましい。一方、これらカルボン酸塩の濃度の上限としては、成分が析出しない飽和濃度まで可能である。乾燥促進の効果向上の観点からは、成分が析出しない範囲内で、濃度が高い方が好ましい。
【0038】
(その他の成分)
本実施形態にかかる乾燥促進剤には、その他の成分が含まれていても構わない。添加可能なその他の成分としては、着色剤、防腐剤、分散剤等が挙げられ、乾燥促進剤としての性質を損なわない程度の量を添加することができる。また、金属に腐食を発生させない程度の濃度であれば、有機酸や無機酸を添加しても構わない。
【0039】
[路面標示用水性塗料の乾燥促進方法]
本実施形態にかかる路面標示用水性塗料の乾燥促進方法は、路面に形成された、乾燥前の路面標示用水性塗料の塗布膜の乾燥を促進させる路面標示用水性塗料の乾燥促進方法であって、
前記塗布膜に、1m当たりの前記カルボン酸塩の成分量(原料として水和物を用いた場合でも、水和水の量は含まない。以下同様。)が1g以上になるように、上記本実施形態で説明した路面標示用水性塗料の乾燥促進剤(以下、単に「乾燥促進剤」と称する場合がある。)を供給することを特徴とするものである。
【0040】
路面標示用水性塗料の塗布膜を路面に形成する方法は、特に制限はなく、従来公知の方法により行えばよい。即ち、既述の路面標示用水性塗料を、従来公知の施工機を用いて塗布すればよい。塗装方法としては、ローラー塗装、はけ塗り、エアレススプレー、エアースプレーなどが可能であるが、目的とする塗布膜が形成可能であれば、塗装方法に制限はない。
【0041】
形成された路面標示用水性塗料の塗布膜に供給する乾燥促進剤の供給量としては、塗装面積1m当たりのカルボン酸塩(酢酸塩及び/またはプロピオン酸塩)の成分量が1g/m以上となるように供給することが好ましい。適切な量以上の乾燥促進剤を供給することで、乾燥促進効果が得られる。
塗装面積1m当たりのカルボン酸塩の成分量が1g/m未満の場合には、乾燥促進や耐水性の向上効果が十分に図れない場合がある。塗装面積1m当たりのカルボン酸塩の成分量の下限値としては、2g/m以上であることがより好ましい。
【0042】
塗装面積1m当たりのカルボン酸塩の成分量の上限値としては、過剰量であっても乾燥促進効果は認められるが、適度な量の場合と比して乾燥促進効果に差がないため、経済的に好ましくない。また、カルボン酸塩の成分量が多くなってくると、塗膜の外観を荒らしてしまう場合がある。したがって、塗装面積1m当たりのカルボン酸塩の成分量としては、40g/m以下にすることが好ましく、30g/m以下にすることがより好ましく、25g/m以下にすることがさらに好ましい。
【0043】
路面標示用水性塗料の塗布膜への乾燥促進剤の供給方法としては、路面に形成された塗布膜の表面に、乾燥促進剤を散布することにより行われることが好ましい。既述の通り、本実施形態にかかる乾燥促進剤は水溶液であるため、形成された塗布膜の表面に均一に供給することができる。
【0044】
また、従来の酸や塩を散布する方法では、散布の際に発生したミストによって、乾燥促進剤散布装置や隣接する路面標示塗布装置等の金属部材を腐食させる懸念があるが、本実施形態の乾燥促進剤ではこれらの金属部材の腐食が抑制されることから、装置の寿命が延び経済的である。
【0045】
形成された塗布膜の表面への乾燥促進剤の散布方法としては、特に制限はないが、塗布膜表面の全体に均一に散布しやすい点で、シャワー方式やスプレー方式が好適である。特に、散布する乾燥促進剤が低粘度の水溶液であるため、一般的なエアレススプレー装置、エアースプレー装置あるいは霧吹き等の簡便な装置を使用することができ、特殊な散布装置を必要としない。
【0046】
さらに、路面標示用水性塗料の塗布膜への乾燥促進剤の供給方法としては、路面標示用水性塗料を路面に塗布すると同時に、乾燥促進剤を散布することで、結果として路面標示用水性塗料の塗布膜に乾燥促進剤を供給することも可能である。このような乾燥促進剤の供給方法においても、路面標示用水性塗料の塗布膜に乾燥促進剤を均一に供給することができる。
【0047】
路面標示用水性塗料の路面への塗布方法と、乾燥促進剤の供給方法は、以上説明した通りであり、これらを同時、あるいはほぼ同時に行うことで、塗布膜に乾燥促進剤を均一に供給することができる。例えば、路面標示用水性塗料の塗装用のスプレーノズルと、乾燥促進剤の散布用のスプレーノズルと、を並べて配置し、同時に吐出して路面に同時に供給する方法などが挙げられる。
【0048】
以上のように、本実施形態の路面標示用水性塗料の乾燥促進方法によれば、乾燥前の路面標示用水性塗料の塗布膜に、本実施形態の乾燥促進剤を供給することで、塗布膜の乾燥性が促進され交通開放時間の短縮と耐水性の顕著な向上効果を実現することができる。
【0049】
特に、路面標示用水性塗料の塗布直後の未乾燥の状態で、本実施形態の乾燥促進剤を塗布膜の表面に散布することで、塗布膜への乾燥促進剤の供給がより均一となり、より一層乾燥性が促進され、交通開放時間の短縮と耐水性の顕著な向上効果を実現することができる。塗布膜への散布による乾燥促進剤の供給は、路面標示用水性塗料に混合するための特殊な塗布装置を必要とせず、簡便な散布装置で乾燥促進効果を得ることができる。
【0050】
以上の如き、本実施形態にかかる路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、並びに、本実施形態にかかる路面標示用水性塗料の乾燥促進方法による効果は、後述する実施例において、塗布された塗料の乾燥性試験及び耐水性試験や、乾燥促進剤の金属腐食性試験の結果によって実証される。
【実施例0051】
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、「部」あるいは「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、特に条件を記載していない場合は、気温23℃、湿度50%の条件で試験を行った。
【0052】
[実施例1]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A。即ち、路面標示用水性塗料。以下同様。)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、プロピオン酸ナトリウム1.69mol/リットル(15質量%)水溶液からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりのプロピオン酸ナトリウムの成分量が7.1g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例1の供試材を得た。
【0053】
[実施例2]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、プロピオン酸カルシウム0.56mol/リットル(10質量%)水溶液からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりのプロピオン酸ナトリウムの成分量が4.0g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例2の供試材を得た。
【0054】
[実施例3]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、プロピオン酸カルシウム0.14mol/リットル(2.5質量%)水溶液からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりのプロピオン酸ナトリウムの成分量が1.0g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例3の供試材を得た。
【0055】
[実施例4]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、プロピオン酸カルシウム0.56mol/リットル(10質量%)水溶液からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりのプロピオン酸ナトリウムの成分量が30.0g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例4の供試材を得た。
【0056】
[実施例5]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、酢酸マグネシウム四水和物1.57mol/リットル(30質量%)水溶液(無水物換算で1.57mol/リットル、20質量%)からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりの酢酸マグネシウムの成分量が10.0g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例5の供試材を得た。
【0057】
[実施例6]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、酢酸マグネシウム四水和物0.24mol/リットル(5.0質量%)水溶液(無水物換算で0.24mol/リットル、3.3質量%)からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりの酢酸マグネシウムの成分量が1.7g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例6の供試材を得た。
【0058】
[実施例7]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、酢酸マグネシウム四水和物0.49mol/リットル(10質量%)水溶液(無水物換算で0.49mol/リットル、6.6質量%)からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりの酢酸マグネシウムの成分量が3.6g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例7の供試材を得た。
【0059】
[実施例8]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、酢酸カルシウム一水和物1.60mol/リットル(25質量%)水溶液(無水物換算で1.60mol/リットル、22質量%)からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりの酢酸カルシウムの成分量が13.2g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例8の供試材を得た。
【0060】
[実施例9]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、酢酸カリウム4.73mol/リットル(40質量%)水溶液からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりの酢酸カルシウムの成分量が22g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例9の供試材を得た。
【0061】
[実施例10]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21C10白(JIS K 5665 1種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、プロピオン酸カルシウム0.56mol/リットル(10質量%)水溶液からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりのプロピオン酸カルシウムの成分量が5.0g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、実施例10の供試材を得た。
【0062】
[実施例11]
環境条件を気温5℃、湿度80%の条件下にしたことを除き、その他は実施例2と同様にして、路面標示用水性塗料をガラス板に塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜に乾燥促進剤を散布して、実施例11の供試材を得た。
【0063】
[比較例1]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料をフィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。その後、乾燥促進剤を散布しないそのままの状態を比較例1の供試材とした。
【0064】
[比較例2]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、プロピオン酸カルシウム0.05mol/リットル(1.0質量%)水溶液からなる乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりのプロピオン酸カルシウムの成分量が0.6g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、比較例2の供試材を得た。
【0065】
[比較例3]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、酢酸3.40mol/リットル(20質量%)水溶液からなる比較用の乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりの酢酸の成分量が6g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、比較例3の供試材を得た。
【0066】
[比較例4]
アトミクス株式会社製ハードラインアクア#21H60白(JIS K 5665 2種A)塗料を、フィルムアプリケータを用いて、乾燥膜厚が100±20μmになるようにガラス板に塗布して塗布膜を形成した。
塗布膜形成後、直ちに、プロピオン酸2.70mol/リットル(20質量%)水溶液からなる比較用の乾燥促進剤を、塗装面積1m当たりのプロピオン酸の成分量が7g/mになるように、一般的な霧吹き器で散布して、比較例4の供試材を得た。
【0067】
[比較例5]
環境条件を気温5℃、湿度80%の条件下にしたことを除き、その他は比較例1と同様にして、路面標示用水性塗料をガラス板に塗布して塗布膜を形成した。その後、乾燥促進剤を散布しないそのままの状態を比較例5の供試材とした。
【0068】
以上の実施例1~11及び比較例1~5に用いた乾燥促進剤(比較用を含む)の成分について、下記表1にまとめて示す。
【0069】
<表1>
【表1】
【0070】
[評価試験項目及び評価試験方法]
得られた実施例1~11及び比較例1~5の各供試材について、各種評価試験を行った。その結果を下記表2にまとめて示す。なお、各評価試験方法は、以下に示すとおりである。
【0071】
(1.塗膜外観判定)
実施例1~11及び比較例1~5の各供試材について、塗膜の外観を目視で観察した。評価基準は以下に示す通りである。なお、不具合があった場合には、その内容を書き留めた。
〇:良好
△:微かに塗膜欠陥が認められる。
×:塗膜欠陥が認められる。
【0072】
(2.乾燥性試験)
乾燥性試験は、JIS K5665で規定される「8.13 タイヤ付着性 1種乃至2種」に準じて試験を行った。塗料がタイヤに付着しなくなるまでの塗布後の静置時間を測定し、当該静置時間を評価指標とすることで、乾燥性を評価した。
【0073】
(3.耐水性試験)
まず、供試材作製後(塗布後)の経過時間が5分、10分、15分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、120分および150分となる間養生した供試材を、水に浸漬した。浸漬から1時間経過後、各供試材を水から引き上げ、その直後の塗膜の溶出状況を観察するとともに、人差指で塗膜を軽く擦り、塗料が付着するか否かを調べた。塗料が指に付着しなくなる養生時間を測定し、当該養生時間を評価指標とすることで、耐水性を評価した。
【0074】
<表2>
【表2】
【0075】
[実施例及び比較例の結果の考察]
以上に示す実施例及び比較例の結果から、プロピオン酸塩または酢酸塩の水溶液からなる本発明の乾燥促進剤を用い、本発明の乾燥促進方法によって乾燥を促進された実施例1~11の供試材の塗膜は、塗膜外観に優れ、乾燥性や耐水性も良好な結果となった。ただし、乾燥促進剤の散布量(塗膜面積1m当たりのプロピオン酸塩の成分量)がやや多めの実施例4では、塗膜の表面がやや荒れた状態になった。
【0076】
一方、路面標示用水性塗料を塗布しただけで、乾燥促進剤を散布しなかった比較例1や5では、乾燥までに時間を要し、耐水性が劣る結果となった。
また、乾燥促進剤中のプロピオン酸塩の濃度が低く、その散布量(塗膜面積1m当たりのプロピオン酸塩の成分量)が少ない比較例2では、乾燥促進剤を散布しなかった比較例1の場合よりも、乾燥性や耐水性がさらに低下した。
そして、乾燥促進剤として、酸を散布した比較例3や4では、塗膜に膨れが生じてしまい、塗膜外観が大幅に劣っていた。
【0077】
[乾燥促進剤の金属腐食性試験]
以上の実施例及び比較例とは別に、後記表3に示す如き、金属腐食性試験用に各種乾燥促進剤としての水溶液(実施例乾燥促進剤1~5)、及び、比較用の各種水溶液(比較水溶液1~5)乃至水(比較水6)を用意した。
【0078】
JIS G 3141に規定される冷間圧延鋼板の試験板をシンナーで脱脂し、実施例乾燥促進剤1~5及び比較水溶液(水)1~6のそれぞれを2ml滴下して、時計皿でふたをし、放置した。24時間後に腐食(錆の発生)状況を観察し、以下の評価基準で評価した。評価結果を下記表3にまとめて示す。
〇:錆の発生が認められない。
△:滴下部分に一部錆の発生が認められる。
×:滴下面全面に錆の発生が認められる。
【0079】
<表3>
【表3】
【0080】
[乾燥促進剤の金属腐食性試験の結果の考察]
以上に示す乾燥促進剤の金属腐食性試験の結果から、本発明の乾燥促進剤に相当する実施例乾燥促進剤1~5では、鋼板を錆びさせることが無い。これに対して、他の塩や酸を含む比較水溶液では、いずれも24時間で鋼板を錆びさせてしまった。それどころか、単なる脱イオン水である比較水6でも24時間で鋼板を錆びさせてしまった。このことから、本発明の乾燥促進剤に含まれるプロピオン酸塩や酢酸塩の水溶液は、錆の発生を抑制する性質があることが認められる。
【0081】
以上説明した実施形態及び実施例は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。即ち、当事者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが出来る。かかる変形によってもなお、本発明にかかる路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、並びに、本発明にかかる路面標示用水性塗料の乾燥促進方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の路面標示用水性塗料の乾燥促進剤、乃至、路面標示用水性塗料の乾燥促進方法は、路面以外の被塗装対象、例えば、建造物の内外壁面や屋根等を塗装した水性塗料に対しても、乾燥促進剤乃至乾燥促進方法として利用乃至適用することができる。その場合に、被塗装対象に塗布された乾燥前の塗布膜に、本発明の路面標示用水性塗料の乾燥促進剤を、本発明の路面標示用水性塗料の乾燥促進方法により供給することができる。これらについても、勿論、全て、本願発明の範疇に含まれるものである。