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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070832
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20220506BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P27/16
A61P17/00
A61P29/00
A61P43/00 121
A61P43/00 113
A61P31/04
A61K31/573
A61K31/05
A61K31/167
A61K31/19
A61K31/045
A61K31/138
A61K31/14
A61K31/4402
A61K31/4166
A61P31/10
A61K47/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174404
(22)【出願日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2020180025
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021023770
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 智史
(72)【発明者】
【氏名】吉村 昌徳
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC32
4C076DD37
4C076FF11
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA11
4C084ZA341
4C084ZA342
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB352
4C084ZC412
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC38
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZA34
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA03
4C206CA13
4C206CA17
4C206DA14
4C206FA05
4C206FA41
4C206GA01
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA83
4C206NA05
4C206ZA34
4C206ZA89
4C206ZB11
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】外耳又は外耳周辺の皮膚用の外用組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ステロイド系抗炎症剤;(B)抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上を含有する、外耳又は外耳周辺の皮膚に適用する為の外用組成物を調製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ステロイド性抗炎症剤、並びに
(B)抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上
を含有する、外耳又は外耳周辺の皮膚に適用する為の外用組成物。
【請求項2】
前記外耳が、耳介、外耳道、耳介周辺の皮膚である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
外耳又は外耳周辺の皮膚の炎症性疾患の予防又は治療のために用いられる、請求項1又は請求項2に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記(A)ステロイド性抗炎症剤が、アンテドラッグステロイドである、請求項1~3のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項5】
前記アンテドラッグステロイドが、吉草酸酢酸プレドニゾロンである、請求項4に記載の外用組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、イソプロピルメチルフェノール、クロタミトン、グリチルレチン酸類、アラントイン、メントール、第四級アンモニウム塩、ジフェンヒドラミン又はその薬学的に許容される塩、及びクロルフェニラミン又はその薬学的に許容される塩、からなる群より選択される1種又は2種以上を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項7】
さらに、エタノールを含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項8】
(A)ステロイド性抗炎症剤、並びに
(B)抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上を共存させることで、組成物の外耳又は外耳周辺の皮膚への薬物の送達作用を向上させる方法。
【請求項9】
(A)ステロイド性抗炎症剤、並びに(B)抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上、を含有する、アスペルギルス属真菌性の外耳又は外耳周辺の皮膚疾患又は皮膚症状の予防及び/又は治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣の変化により、外耳における疾患が増加している。外耳の炎症や疾患には、様々な要因が考えられるが、イヤホン、耳栓、補聴器等の使用や、その他の慢性的な刺激によっても引き起こされ、罹患すると、かゆみ、耳漏の充満等で、日常生活に支障をきたすことも多い。また、難治性に至る場合もあり、改善が望まれる。
【0003】
このような外耳における炎症や疾患は、緑膿菌や黄色ブドウ球菌等の様々な細菌や真菌により引き起こされる場合もある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】江川徹也、他 日本医真菌学会:2007;44:307-310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような外耳やその周辺という特殊な環境における症状に効果を有する薬剤は多くは報告されていない状況である。また、外耳においては、少なからず耳垢や垢が堆積し、耳垢や垢が多い場合には、薬剤の外耳上皮への送達性が下がる懸念がある。そのため、局所療法を効果的に行うために、適度な清掃・洗浄の後に薬剤を投与することが望ましい一方で、清掃・洗浄に際して外耳道及び外耳周辺への物理的刺激を控える必要がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、特に外耳や外耳周辺の皮膚用に特化した組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、ステロイド性抗炎症剤(ステロイド系抗炎症薬)に、特定成分を組み合わせて配合させることにより、外耳や外耳周辺の皮膚への適用に好適な組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる外用組成物を提供する。
項1.
(A)ステロイド性抗炎症剤、並びに
(B)抗ヒスタミン剤(抗ヒスタミン薬)、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上
を含有する、外耳又は外耳周辺の皮膚に適用する為の外用組成物。
項2.
前記外耳が、耳介、外耳道、耳介周辺の皮膚である、項1に記載の外用組成物。
項3.
外耳又は外耳周辺の皮膚の炎症性疾患の予防又は治療のために用いられる、項1又は項2に記載の外用組成物。
項4.
前記(A)ステロイド性抗炎症剤が、アンテドラッグステロイドである、項1~3のいずれか1項に記載の外用組成物。
項5.
前記アンテドラッグステロイドが、吉草酸酢酸プレドニゾロンである、項4に記載の外用組成物。
項6.
前記(B)成分が、イソプロピルメチルフェノール、クロタミトン、グリチルレチン酸類、アラントイン、メントール、第四級アンモニウム塩、ジフェンヒドラミン又はその薬学的に許容される塩、及びクロルフェニラミン又はその薬学的に許容される塩からなる群より選択される1種又は2種以上を含む、項1~5のいずれか1項に記載の外用組成物。
項7.
さらに、エタノールを含有する、項1~6のいずれか1項に記載の外用組成物。
項8.
(A)ステロイド性抗炎症剤、並びに
(B)抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上、を共存させることで、組成物の外耳又は外耳周辺の皮膚への薬物の送達作用を向上させる方法。
項9.
(A)ステロイド性抗炎症剤、並びに(B)抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上、を含有する、アスペルギルス属真菌性の外耳又は外耳周辺の皮膚疾患又は皮膚症状の予防及び/又は治療剤。
項10.
(A)ステロイド性抗炎症剤、並びに
(B)抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上を含有する、アスペルギルス属真菌性の外耳又は外耳周辺の皮膚疾患又は皮膚症状の予防及び/又は治療用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外耳又は外耳周辺の皮膚に関与する疾患や炎症等の症状を治療、予防、又は改善することができる外用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[外用組成物]
本発明の外用組成物は、
(A)ステロイド性抗炎症剤;並びに、
(B)抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上を含有し、外耳又は外耳周辺の皮膚に適用する為のものである。
【0011】
本明細書において、「薬学的に許容される塩」としては、限定はされないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩基等との塩が例示され、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、又はジエタノールアミン、エチレンジアミン等との塩が挙げられる。さらには、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、L-グルカミン等のアミンの塩;又はリジン、δ-ヒドロキシリジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。また、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、吉草酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸等の有機酸との塩;又はアスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との塩等も挙げられる。「薬学的に許容される塩」には、塩の溶媒和物又は水和物を含んでいてもよい。
【0012】
((A)ステロイド性抗炎症剤)
本明細書において、(A)ステロイド性抗炎症剤とは、ステロイド核を有するステロイドホルモン又はそれに由来する構造を有する薬物であって、抗炎症作用、免疫抑制作用、抗アレルギー作用等を有するものである。ステロイドホルモンは、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、性ホルモン等に分類されるが、抗炎症剤としては、主に糖質コルチコイドが用いられている。また、本明細書において、ステロイド性抗炎症剤には、その誘導体やこれらの薬学的に許容される塩も含まれる。ステロイド性抗炎症剤は、公知の方法により合成して使用しても、市販の薬剤を入手して使用してもよい。
【0013】
本発明の外用組成物において、ステロイド性抗炎症剤の誘導体とは、本発明の効果を損なわない範囲において、ステロイド性抗炎症剤の有する官能基の一部を化学修飾したもの、官能基の一部に保護基を付加したもの等をいい、異性体を含むものである。限定はされないが、例えば、ステロイド性抗炎症剤におけるステロイド核の一つ又はそれ以上の水素原子が、ヒドロキシル基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、フルオロ基、トリフルオロ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアセチル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシル基、炭素数1~6のアルキルアミノ基等に置換されたものや、有機酸(例えば、吉草酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸、フランカルボン酸等)でエステル化されたもの、保護基が外れることによりステロイド性抗炎症剤としての活性を有するように修飾された前駆体等が挙げられる。より高い本発明の効果が期待できるという観点から、好ましくは、有機酸でエステル化された誘導体であり、より好ましくは、吉草酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸及び/又はフランカルボン酸でエステル化された誘導体であり、更に好ましくは吉草酸、酢酸、酪酸及び/又はプロピオン酸でエステル化された誘導体である。エステル化誘導体はモノエステル、ジエステル、トリエステル等の任意のエステル化誘導体であってよく、例えば、吉草酸酢酸プレドニゾロン等のように、2種以上の有機酸でエステル化された誘導体であってもよい。
【0014】
本発明のステロイド性抗炎症剤としては、外用組成物に使用できるステロイド性抗炎症剤であれば、限定はされないが、具体的には、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ジフルプレドナード、モメタゾン、ジフルコルトロン、フルオニシド、ベクロムタゾン、デプロドン、クロベタゾン、アルクロメタゾン、フルメタゾン及びこれらの誘導体、並びにこれらの薬学的に許容される塩等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を顕著に奏する観点から、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、ジフルプレドナード、コルチゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、及びこれらの誘導体、並びにこれらの薬学的に許容される塩が好ましく、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ジフルプレドナード、及びこれらの誘導体、並びにこれらの薬学的に許容される塩がより好ましく、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの薬学的に許容される塩がさらに好ましく、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン及びこれらの誘導体、並びにこれらの薬学的に許容される塩がさらにより好ましく、プレドニゾロン及びこの誘導体、並びにこれらの薬学的に許容される塩がさらに好ましい。本発明において、ステロイド性抗炎症剤は、1種又は2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0015】
現在、ステロイド性抗炎症剤は、ステロイドの強さによって5段階(強い薬物から順に、ストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウィーク)に分類されており、本発明にはそのいずれもが用いられ得るが、好ましくは、人体への作用は比較的緩和でありながら、本願発明の効果を発揮することが期待できるストロング、ミディアム、ウィークに分類されるステロイド性抗炎症剤が用いられる。このうち、本発明の効果を顕著に奏する観点から、ミディアム、ウィークに分類されるステロイド性抗炎症剤が好ましく用いられる。また、具体的に、ステロイド性抗炎症剤としては、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ジフロラゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フランカルボン酸モメタゾン、アムシノニド、プロピオン酸デキサメタゾン、ジフルプレドナート、フルオニシド、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニゾロン、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸クロベタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、酢酸デキサメタゾン、酢酸コルチゾン、酢酸プレドニゾロン、リン酸ベタメタゾン等が例として挙げられる。本発明の効果を発揮する観点から、好ましくは、吉草酸酢酸プレドニゾロン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニゾロン、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸クロベタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸プレドニゾロン等が挙げられる。特には、塗布した患部で薬理活性を示し、体内で低活性な物質に代謝される、吉草酸酢酸プレドニゾロン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、ジフルプレドナート等のアンテドラッグステロイドが好適に用いられ、なかでも吉草酸酢酸プレドニゾロン、酪酸ヒドロコルチゾン等のアンテドラッグステロイドが好適である。
【0016】
本発明の外用組成物において、このような(A)成分の含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、組成物の全量に対して、一般的には0.01質量%以上とすることができ、0.025質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、ステロイド性抗炎症剤の含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、組成物の全量に対して、一般的には1質量%以下とすることができ、0.7質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。外用組成物全量に対して、(A)成分の含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、好ましくは0.01質量%~1質量%であり、より好ましくは0.025質量%~0.7質量%、さらに好ましくは0.05質量%~0.5質量%である。
【0017】
例えば、(A)成分が、吉草酸酢酸プレドニゾロン、又は酪酸ヒドロコルチゾンである場合、これらのうち、いずれか1種類を、(A)成分として、好ましくは0.01質量%~1質量%、より好ましくは0.025質量%~0.7質量%、さらに好ましくは0.05質量%~0.5質量%、さらにより好ましくは、0.1質量%~0.2質量%、最も好ましくは、0.15質量%含有する。
【0018】
((B)抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、ビタミン類、局所麻酔剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上)
本発明の(B)成分としては、以下の物質を用いることができ、これらであれば、特に制限されない。すなわち、抗ヒスタミン剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、クロタミトン、及びテルペノイドからなる群より選択される1種又は2種以上の物質である。
【0019】
((B-1)抗ヒスタミン剤)
(B-1)本発明に用いられる抗ヒスタミン剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等で用いられているグレードであれば、特に制限されない。抗ヒスタミン剤としては、限定はされないが、ジフェンヒドラミン、ブロモジフェンヒドラミン、クレマスチン、クロルフェノキサミン、ジフェニルピラリン、ドキシラミン、オルフェナドリン、フェニルトロキサミンのようなエタノールアミン系抗ヒスタミン剤、クロルフェニラミン、ジメチンデン、タラスチンのようなプロピルアミン系抗ヒスタミン剤、メピラミン、メタピリレン、トリペレナミンのようなエチレンジアミン系抗ヒスタミン剤、アリメマジン、ヒドロキシエチルプロメタジン、イソチペンジル、メキタジン、オキソメマジン、プロメタジンのようなフェノチアジン系抗ヒスタミン剤、ブクリジン、セチリジン、ホモクロルシクリジン、シクリジン、ヒドロキシジン、レボセチリジン、メクリジン、オキサトミドのようなピペラジン系抗ヒスタミン剤、ケトチフェン、オロパタジン、フェキソフェナジン、ロラタジン、テルフェナジン、アンタゾリン、アザタジン、バミピン、シプロヘプタジン、デプトロピン、エバスチン、エメダスチン、エピナスチン、メブヒドロリン、ミゾラスチン、ピメチキセン、ピロブタミン、キフェナジン、ルパタジン、トリプロリジン、アクリバスチン、アステミゾール、アゼラスチン、ビラスチン、デスロラタジン、ベポタスチン、ジメンヒドリナート、イプロヘプチン、レボカバスチン、ジフェニルイミダゾール、及びこれらの化合物の薬学的に許容される塩が例示される。
【0020】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、抗ヒスタミン剤としては、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾール、又はそれらの薬学的に許容される塩が好ましく、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン又はそれらの薬学的に許容される塩がより好ましく、クロルフェニラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩酸塩がさらに好ましい。これらの薬剤から1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。また、第一世代抗ヒスタミン剤として知られている抗ヒスタミン剤を使用することも好ましい。
【0021】
((B-2)殺菌剤)
(B-2)本発明に用いられる殺菌剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等で用いられているグレードであれば、特に制限されない。殺菌剤としては、塩化デカリニウム、酢酸デカリニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルへキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩化セチルピリジニウム等の第四級アンモニウム塩、安息香酸ナトリウム、クロロブタノール、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、アクリノール、ヒノキチオール、レゾルシン、安息香酸ベルベリン、又はビグアニド化合物が例示される。これらの薬剤から1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。これらの薬剤のうち、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、また、特に、細胞膜への作用により殺菌効果を発揮し得る観点から、第四級アンモニウム塩又はイソプロピルメチルフェノールが好ましく、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、又はイソプロピルメチルフェノールがより好ましい。
【0022】
((B-3)非ステロイド性抗炎症剤)
(B-3)本発明に用いられる非ステロイド性抗炎症剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等で用いられているグレードであれば、特に制限されない。非ステロイド性抗炎症剤としては、特に限定されないが、具体的には、ケトプロフェン、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ウフェナマート、ピロキシカム、フルルビプロフェン、ナプロキセン、ロキソプロフェン、フェルビナク、チアプロフェン酸、カルプロフェン、ベノキサプロフェン、フェンブフェン、ジクロフェナック、フェノプロフェン、イブフェナック、ピメプロフェン、ベンダザック、テノキシカム;グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルリチン酸及び又はその塩(グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等)等の、グリチルレチン酸類;メフェナム酸、アラントイン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、及びそれらの薬学的に許容される塩等が例示される。サリチル酸系、アントラニル酢酸系 (フェナム酸系)、アリール酢酸系、プロピオン酸系、エノール酸系(オキシカム系)、コキシブ系のいずれかに属する非ステロイド性消炎鎮痛薬を用いることもできる。これらの薬剤から1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0023】
これらの薬剤のうち、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、アラントイン、グリチルレチン酸類が好ましく、グリチルレチン酸又はアラントインが好ましい。塩として、代表的には、グリチルリチン酸のアルカリ金属塩、特には、グリチルリチン酸ジカリウムが好ましい。
【0024】
((B-4)クロタミトン)
本発明に用いられるクロタミトンは、医薬品、医薬部外品、化粧品等で用いられているグレードであれば、特に制限されない。
【0025】
((B-5)テルペノイド)
本発明に用いられるテルペノイドは、医薬品、医薬部外品、化粧品等で用いられているグレードであれば、特に制限されない。テルペノイドとしては、メントール、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウ等のテルペノイドが挙げられる。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0026】
テルペノイドは精油の形態で含有されていてもよい。このような精油としては、例えば、ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油等が挙げられる。
【0027】
テルペノイド(及び精油)は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明においては、メントール、カンフル及びボルネオールからなる群より選択される1種以上を含有するのが好ましく、メントール及びカンフルからなる群より選択される1種以上を含有するのがより好ましく、少なくともメントールを含有するのがさらにより好ましい。ここで、メントールとしては、それを含む精油を用いてもよい。このような精油としては、クールミント油、ペパーミント油、ハッカ油、樟脳油等を挙げることができる。
【0029】
(B)成分の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、外用組成物全量に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは、0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.5質量%以上であり、特に好ましくは1質量%以上である。(B)成分の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、外用組成物全量に対して、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、さらにより好ましくは7.5質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。外用組成物全量に対して、(B)成分の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、好ましくは0.01質量%~25質量%であり、より好ましくは0.05質量%~20質量%、さらに好ましくは0.1質量%~15質量%、さらにより好ましくは0.5質量%~7.5質量%、特に好ましくは1質量%~5質量%である。
【0030】
本発明の外用組成物において、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対する(B)成分の総量の比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上、さらにより好ましくは5質量部以上であり、特に好ましくは10質量部以上である。(B)成分の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点ならびに製剤の使用感の観点から、(A)成分の含有量1質量部に対して、好ましくは、200質量部以下であり、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは75質量部以下、さらにより好ましくは50質量部以下であり、特に好ましくは25質量部以下である。本発明の外用組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.05~200質量部が好ましく、0.5~100質量部がより好ましく、5~50質量部がさらにより好ましく、10~25質量部が特に好ましい。
【0031】
(B)成分が(B-1)抗ヒスタミン剤を含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、抗ヒスタミン剤の含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.05質量%~3質量%、さらに好ましくは0.1質量%~2質量%、特に好ましくは0.2質量%~1質量%である。
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する抗ヒスタミン剤の比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.06~34質量部が好ましく、0.33~20質量部がより好ましく、0.66~6.7質量部がさらにより好ましく、1.3~3.3質量部が特に好ましい。
【0032】
(B)成分が(B-2)殺菌剤を含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、殺菌剤の含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.001質量%~3質量%であり、より好ましくは0.005質量%~2質量%、さらに好ましくは0.01質量%~1質量%、特に好ましくは0.1質量%~0.5質量%である。
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する殺菌剤の比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.0066~20質量部が好ましく、0.033~14質量部がより好ましく、0.066~6.7質量部がさらにより好ましく、0.66~3.3質量部が特に好ましい。
【0033】
例えば、(B)成分がイソプロピルメチルフェノールを含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、イソプロピルメチルフェノールの含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.02質量%~2質量%、さらに好ましくは0.03質量%~1質量%、特に好ましくは0.05質量%~0.5質量%である。
【0034】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対するイソプロピルメチルフェノールの比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.03~35質量部が好ましく、0.06~17.5質量部がより好ましく、0.15~7質量部がさらにより好ましく、0.3~3.5質量部が特に好ましい。
【0035】
例えば、(B)成分が第四級アンモニウム塩を含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、第四級アンモニウム塩の含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.0001質量%~3質量%であり、より好ましくは0.001質量%~2質量%、さらに好ましくは0.005質量%~1質量%、特に好ましくは0.01質量%~0.5質量%である。
【0036】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する第四級アンモニウム塩の比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.00066~20質量部が好ましく、0.0066~14質量部がより好ましく、0.033~6.7質量部がさらにより好ましく、0.066~3.4質量部が特に好ましい。
【0037】
例えば、(B)成分が塩化ベンザルコニウムを含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、塩化ベンザルコニウムの含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.0001質量%~3質量%であり、より好ましくは0.001質量%~2質量%、さらに好ましくは0.005質量%~1質量%、特に好ましくは0.01質量%~0.5質量%である。
【0038】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する塩化ベンザルコニウムの比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.00066~20質量部が好ましく、0.0066~14質量部がより好ましく、0.033~6.7質量部がさらにより好ましく、0.066~3.4質量部が特に好ましい。
【0039】
例えば、(B)成分が塩化ベンゼトニウムを含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、塩化ベンゼトニウムの含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.0001質量%~3質量%であり、より好ましくは0.001質量%~2質量%、さらに好ましくは0.005質量%~1質量%、特に好ましくは0.01質量%~0.5質量%である。
【0040】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する塩化ベンゼトニウムの比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.00066~20質量部が好ましく、0.0066~14質量部がより好ましく、0.033~6.7質量部がさらにより好ましく、0.066~3.4質量部が特に好ましい。
【0041】
(B)成分が(B-3)非ステロイド性抗炎症剤を含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、非ステロイド性抗炎症剤の含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.005質量%~5質量%であり、より好ましくは0.01質量%~3質量%、さらに好ましくは0.05質量%~2質量%、特に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0042】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する非ステロイド性抗炎症剤の比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.033~34質量部が好ましく、0.066~20質量部がより好ましく、0.33~13質量部がさらにより好ましく、0.66~6.7質量部が特に好ましい。
【0043】
例えば、(B)成分が、アラントインを含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、その含有量は、外用組成物全量に対して、0.1質量%~5質量%であり、より好ましくは0.15質量%~3質量%、さらに好ましくは0.2質量%~2質量%、特に好ましくは0.2質量%~1質量%である。
【0044】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対するアラントインの比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.1~70質量部が好ましく、0.2~35質量部がより好ましく、0.5~14質量部がさらにより好ましく、1~7質量部が特に好ましい。
【0045】
例えば、(B)成分が、グリチルレチン酸類を含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、その含有量は、外用組成物全量に対して、0.03質量%~3質量%であり、より好ましくは0.05質量%~2質量%、さらに好ましくは0.08質量%~1.5質量%、特に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0046】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対するグリチルレチン酸類の比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.06~70質量部が好ましく、0.12~35質量部がより好ましく、0.3~14質量部がさらにより好ましく、0.6~7質量部が特に好ましい。
【0047】
(B)成分が(B-4)クロタミトンを含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、クロタミトンの含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.5質量%~15質量%であり、より好ましくは1質量%~10質量%、さらに好ましくは2質量%~8質量%、さらにより好ましくは3質量%~7質量%、特に好ましくは5質量%~6質量%である。
【0048】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対するクロタミトンの比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、3~100質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましく、20~50質量部がさらにより好ましく、30~40質量部が特に好ましい。
【0049】
(B)成分が(B-5)テルペノイドを含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、テルペノイドの含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.01質量%~10質量%であり、より好ましくは0.05質量%~5質量%、さらに好ましくは0.1質量%~5質量%、特に好ましくは0.5質量%~5質量%、最も好ましくは1.5質量%~5質量%である。
【0050】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対するテルペノイドの比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、0.066~67質量部が好ましく、0.33~34質量部がより好ましく、0.66~34質量部がさらにより好ましく、3.3~34質量部が特に好ましく、8~34質量部が最も好ましい。
【0051】
なお、(B)成分としてテルペノイドを含有する精油を使用する場合は、当該精油に含有されるテルペノイドが上述した含有量及び比率を満たすように配合させることが好ましい。
【0052】
例えば、(B)成分がメントールを含む場合、本発明の効果を顕著に奏する観点から、メントールの含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.1質量%~15質量%であり、より好ましくは1.5質量%~10質量%、さらに好ましくは2.0質量%~7質量%、さらにより好ましくは2.5質量%~5.5質量%、特に好ましくは3.0質量%~5質量%である。
【0053】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対するメントールの比率は、例えば、(A)成分の含有量1質量部に対して、2~350質量部が好ましく、4~175質量部がより好ましく、10~70質量部がさらにより好ましく、20~35質量部が特に好ましい。
【0054】
(エタノール)
本発明の外用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、(A)成分及び(B)成分以外にエタノールを含有することができる。本発明に用いられるエタノールは、医薬品、医薬部外品、化粧品等で用いられている等級、グレードであれば、特に制限されない。外用組成物の原料として用いるエタノールは、例えば、95%エタノール、99%エタノール(無水エタノール)等を適宜用いることが可能である。
【0055】
エタノールの含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは5質量%~70質量%であり、より好ましくは10質量%~60質量%、さらに好ましくは20質量%~55質量%、さらにより好ましくは30質量%~50質量%である。
エタノールの含有量は、外用組成物が乳剤又はクリーム剤の場合には、外用組成物全量に対して、上記範囲でもよいが、好ましくは3質量%~30質量%、より好ましくは5質量%~25質量%、さらに好ましくは10質量%~20質量%である。
【0056】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対するエタノールの比率は、使用感の観点から、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対して、好ましくは、30~500質量部、より好ましくは50~400質量部、さらに好ましくは75~350質量部、特に好ましくは100~300質量部である。
【0057】
(多価アルコール)
本発明の外用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、(A)成分及び(B)成分以外に多価アルコールを含有することができる。本発明に用いられる多価アルコールは、医薬品、医薬部外品、化粧品等で用いられている等級、グレードであれば、特に制限されない。多価アルコールとしては、限定はされないが、グリセリン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0058】
多価アルコールの含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.1質量%~20質量%であり、より好ましくは0.5質量%~10質量%、さらに好ましくは1質量%~5質量%である。
多価アルコールの含有量は、外用組成物が乳剤又はクリーム剤の場合には、外用組成物全量に対して、上記範囲でもよいが、好ましくは0.1質量%~25質量%、より好ましくは1質量%~15質量%である。
【0059】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する多価アルコールの比率は、使用感の観点から、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対して、多価アルコールの含有量を0.1~200質量部とすることができ、好ましくは、0.6~140質量部、より好ましくは1~120質量部、さらに好ましくは3~90質量部、さらにより好ましくは3~70質量部、特に好ましくは6~35質量部である。
【0060】
(増粘剤)
本発明の外用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、(A)成分及び(B)成分以外に増粘剤を含有することができる。増粘剤としては、限定はされないが、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム等の天然植物由来多糖類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類;ポリビニルアルコール(完全けん化物、部分けん化物)、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子類;アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー等のアクリル系高分子類;ポリエチレングリコール、ベントナイト、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー等が挙げられる。
【0061】
増粘剤の含有量は、外用組成物全量に対して、通常0.001質量%~2質量%好ましくは0.01質量%~1質量%、より好ましくは0.05質量%~0.5質量%である。
【0062】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する増粘剤の比率は、使用感の観点から、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対して、増粘剤の含有量を0.0001~1000質量部とすることができ、好ましくは、0.005~100質量部、より好ましくは0.01~50質量部、さらに好ましくは0.05~10質量部、さらにより好ましくは0.1~5質量部である。
【0063】
(保湿成分)
本発明の外用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、(A)成分及び(B)成分以外に保湿成分を含有することができる。保湿成分としては、限定はされないが、トレハロース、キシリトール、オリゴ糖のような糖類;ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサンのような高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニンのようなアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウムのような天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂質のような脂質;カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、シソエキスのような植物抽出エキス等が挙げられる。
【0064】
保湿成分の含有量は、外用組成物全量に対して、好ましくは0.0001質量%~1質量%、より好ましくは0.01質量%~0.1質量%である。
【0065】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する保湿成分の比率は、使用感の観点から、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対して、保湿成分の含有量を0.0001~100質量部とすることができ、好ましくは、0.001~50質量部、より好ましくは0.005~10質量部、さらに好ましくは0.01~5質量部、さらにより好ましくは0.05~1量部である。
【0066】
(水)
本発明の外用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、(A)成分及び(B)成分以外に、水を含んでいてもよい。限定はされないが、外用組成物の全量に対する水の含有量は、好ましくは、10質量%~70質量%、より好ましくは、20質量%~60質量%、さらに好ましくは30質量%~50質量%である。
【0067】
本発明の外用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品、化粧品等として用いられ得る、公知の基剤又は担体と共に混合して製剤化することができる。その他に、本発明の外用組成物には、例えば、ビタミン剤、局所麻酔剤、界面活性剤、油分、アルコール類、防腐剤、抗酸化剤、酸化防止剤、保存剤、キレート剤、pH調整剤、安定化剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、分散剤、香料、着色剤、色素等の添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。さらには、血行促進成分、収斂成分ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、細胞賦活化成分等の追加の有効成分等を含有させることもできる。
【0068】
基剤又は担体としては、流動パラフィン、スクワラン、ゲル化炭化水素(プラスチベース等)、オゾケライト、α-オレフィンオリゴマー、軽質流動パラフィンのような炭化水素;メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン、シリコーンレジンのようなシリコーン油;ポリエチレングリコール;ジオキサン;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリットのようなエステル類等が挙げられる。
【0069】
基剤又は担体は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0070】
ビタミン類としては、ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンE類、ニコチン酸類、ビタミンK類、その他のビタミン類のいずれも用いることができる。
【0071】
このうち、ビタミンA類としては、レチノール、レチナール、レチノイン酸、及びこれらの薬理学的に許容される塩又は誘導体が挙げられる。具体的には、レチノール、レチナール、レチノイン酸、パルミチン酸レチノール(レチノールパルミチン酸エステル)、酢酸レチノール(レチノール酢酸エステル)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールが好ましい。
【0072】
ビタミンB類としては、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類、ビタミンB12類、ニコチン酸類、パントテン酸類、葉酸、ビオチン等が挙げられる。ビタミンB1類としては、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等;ビタミンB2類としては、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等;ビタミンB6類としては、塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’-リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等;ニコチン酸類としては、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等;ビタミンB12類としては、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等;ニコチン酸類としては、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、ニコチン酸1-(4-メチルフェニル)エチル等;パントテン酸類としては、パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(D-パンテノール)、D-パンテサイン、D-パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等が挙げられる。
【0073】
ビタミンC類としては、アスコルビゲン-A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L-アスコルビル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸ナトリウム塩、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム等が挙げられる。
【0074】
ビタミンD類としては、メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等が挙げられる。
【0075】
ビタミンE類としては、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロールカルシウム等が挙げられる。
【0076】
ビタミンK類としては、フィロキノン、ファルノキノン等が挙げられる。
【0077】
局所麻酔剤としては、リドカイン、ジブカイン、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、及びこれらの薬学的に許容される塩のようなアミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔剤、プロカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、及びこれらの塩のようなアミン及びエステル構造を有するエステル型局所麻酔剤、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエトキシドデカン等が挙げられる。
【0078】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0079】
ここで、非イオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタンのようなソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコールのようなプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO-40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO-50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80等の硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、オレイルアミンのようなアミン類;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンのようなシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0080】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ココイルグルタミン酸塩、ヤシ油メチルアラニン塩、アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩が挙げられる。
【0081】
両性界面活性剤としては、ラウリルジアミノエチルグリシン塩、ヤシ油脂肪酸ベタイン塩等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0082】
油分としては、天然動植物油脂類、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級アルコール、高級脂肪酸、動植物や合成の精油等が挙げられる。
【0083】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
【0084】
抗酸化剤としては、亜硫酸塩等が挙げられる。
【0085】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、L-システイン塩酸塩等が挙げられる。
【0086】
保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0087】
キレート剤としては、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0088】
pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸等)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム等)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)等が挙げられる。
【0089】
本発明の外用組成物において、(A)成分と(B)成分とを配合する場合は、その組み合わせは特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。限定はされないが、(A)成分と(B)成分との組み合わせを以下の表1に例示する。
【0090】
【表1】
【0091】
本発明の外用組成物は、耳垢とのなじみが良好であり、その為に、外耳又は外耳周辺の皮膚にある耳垢や垢に対して強い物理的刺激を与えることなく、薬物送達の送達性を上げることが可能である。さらに、外耳における炎症の原因菌に対する殺菌作用を有する。当該原因菌としては、例えば、アスペルギルス属の真菌が挙げられ、これらのうち、特に、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ブラシリエンシス(Aspergillus brasiliensis)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)が挙げられる。本発明の外用組成物は、アスペルギルス属真菌の増殖を抑制することも可能である。
【0092】
本明細書において、「アスペルギルス属真菌の増殖を抑制する」とは、アスペルギルス属真菌の生育を抑えることをいい、アスペルギルス属真菌の生菌数を増加させないことや減少させること、アスペルギルス属真菌を殺菌することを含む。
【0093】
(pH)
本発明の外用組成物のpHは、生理学的又は薬学的に許容できる範囲であれば制限されないが、例えば、pHが3~9、好ましくは3.5~8.5、より好ましくは4~8、さらに好ましくは4.5~7とすることができる。
【0094】
(剤形)
本発明の外用組成物は、医薬品、医薬部外品又は化粧品として公知の形態であれば、特に限定されないが、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、パウダー剤、不織布等のシートに外用組成物を含浸させたシート剤等の形態により、公知の方法で製剤化することができる。本願の効果をより顕著に奏する観点から、液剤、乳剤、クリーム剤が好ましく、液剤が更に好ましい。このような形態に製剤化することにより、外耳への適用に適した形態として、効果を十分に発揮することができる。
【0095】
液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤等の形態で外用組成物を液状又は半固形状に製剤化した場合、限定はされないが、ノズル付き容器やスポンジヘッド容器に収容することにより、本発明の外用組成物を、炎症を引き起こしている患部に直接的に塗布することができる。ノズルやスポンジは、患部の狭い範囲又は広い範囲に塗布できるように、先細又は大きな径に設計することも可能である。患部に本発明の外用組成物を塗布した後に、不織布、綿棒、指等により、塗り拡げて用いることも可能である。また別の態様として、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤等の形態で外用組成物を液状に製剤化した場合、限定はされないが、スプレー容器に収容することにより、本発明の外用組成物を、患部に直接的に噴霧して使用することもできる。噴霧した後に、不織布、綿棒や指等により、塗り拡げて用いることも可能である。さらに別の態様として、製剤を綿棒、不織布等に含侵させ、これらを用いて患部に塗布することも可能である。
【0096】
本発明の外用組成物の適用部位は、外耳、外耳上皮、耳の周りの皮膚(外耳周辺の皮膚)等が例示される。外耳には、外耳道、耳介(耳たぶ上部も含む)が含まれ、耳の周りの皮膚には、耳の後ろの領域、耳の付け根やマスク着用時に接触する耳の部位やその近辺が含まれる。
【0097】
本発明の外用組成物の有効投与量は、配合成分の種類及び含有量、該外用組成物の用途や製剤形態に応じて適宜設定され得るが、外耳やその周りの皮膚に塗布する場合には、1日数回又は痒み等の症状が現れた際に、単位面積あたり1回、約20~60mg/cm程度である。
【0098】
本発明の外用組成物を外耳や外耳周辺の皮膚、上皮に適用することにより、症状が改善され、外耳炎、耳の中や外耳領域、外耳周辺の皮膚のかゆみ、皮膚炎、荒れた皮膚、耳の裏のかぶれ、耳たぶのかぶれ、荒れ、これらの繰り返す症状(例えば繰り返すかゆみや、しつこいかゆみ、かゆみのぶり返し)が予防又は治療される。人の外耳やその周辺という特殊な環境では、耳垢や垢が堆積しており、湿度が高く、また、人の耳介は凹凸が多い複雑な構造である。本発明の外用組成物は耳垢や垢へのなじみが良く、薬剤の外耳上皮への送達が円滑に行われ得、このため、痒み抑制などの薬効を速やかに発現させることが出来る。
【0099】
(製造方法)
本発明の外用組成物は、公知の方法により製造することができる。必要に応じて、滅菌工程を含めることができる。
【実施例0100】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
[試験例1:耳垢なじみ試験(1)]
表2に示す、比較例1-1~1-3、実施例1-1~1-5の組成物を常法に従って調製した。表3の組成からなる疑似耳垢を調製し、表2の組成物(液剤)を用いて、耳垢なじみ試験を行った。すなわち、まず、表3の疑似耳垢に、ヘキサン10gを投入して溶解・分散混合し、ヘキサン:疑似耳垢=1:1の液を調製してボルテックス(VORTEX GENIE2、SCIENTIFIC INNDUSTRIES社)で1分間攪拌して均一にした。次に、この混合物を、24ウェルマイクロプレート(ポリスチレン製、Corning社)に15μlずつ添加した。この時適宜ボルテックスで混合した。これを、50℃で15分間静置し、さらに室温15分間静置してヘキサンを蒸発させた。ここに、実施例又は比較例の組成物を2mlずつ添加し、振とう機を用いて300rpmで1.5時間振とうした。振とう後、上清を200μl取り、96ウェルマイクロプレート(ポリスチレン製、Corning社)に添加してマイクロプレートリーダー(SH-9000、コロナ電気株式会社)で565nmでの吸光度測定を行った。各処方例における、比較例1-1に対する耳垢へのなじみの改善率を耳垢親和性改善率(%)とし、下記式(I)により算出した。結果を表2に示す。
耳垢親和性向上率 (%)={(各処方例の吸光度-比較例1-1の吸光度)/比較例1-1の吸光度}×100・・・式(I)
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
その結果、上記の通り、実施例1-1~1-5の組成物は、比較例の組成物に比べて、耳垢なじみ性が高いことが示された。なお、結果は、すべて、3回の実験結果の平均の吸光度を求め、それらを比較したものである。
【0105】
上記の結果から、吉草酸酢酸プレドニゾロン等のステロイドに対し、イソプロピルメチルフェノール、クロタミトン、グリチルレチン酸、アラントイン、又はメントールを組み合わせることにより、外耳用製剤の耳垢へのなじみが向上し、耳上皮への送達性を上げることができると考えられる。このことから、外耳炎、耳の中や外耳領域のかゆみ、皮膚炎等の症状や疾患に対し、すみやかに予防又は治療をすることができると考えられる。
【0106】
[試験例2:アスペルギルス属真菌に対する増殖抑制試験(1)]
以下の表4に示す実施例2-1、比較例2-1及び比較例2-2の組成物を用いて、外耳疾患の原因菌の1つとされる、アスペルギルス属真菌の1種、A.brasiliensisに対する殺菌力試験を行った。
【表4】
【0107】
具体的には、以下の試験方法で殺菌力試験を実施した。すなわち、実施例又は比較例の組成物を、20mLずつ50mLの遠沈管へ分注し、そこへ10cfu/mL相当のA.brasiliensis(ATCC:16404)の胞子懸濁液を200μL添加し、試験サンプルとした。胞子懸濁液添加後、1分、及び15分経過後の試験サンプルを500μ分取し、4.5mLの滅菌生理食塩液(日本薬局方17局に従い調製)へ添加し混合した。混合後、それぞれサブロー寒天培地(アテクト社製)へ塗抹し33℃、5日間培養した。必要に応じて、希釈操作を繰り返した。培養後のサブロー寒天培地に発育したコロニー数をカウントし、希釈倍率を乗じて生残菌数及びLog reductionを算出し、次に、下記式(II)に従って、殺菌力の改善率を求めた。
殺菌力改善率(%)={(各処方例のLog reduction-比較例2-1のLog reduction)/比較例2-1のLog reduction}×100・・・式(II)
【0108】
表5に1分経過後の殺菌力の改善率を示した。表5に記載の通り、実施例2-1の組成物は、A.brasiliensis胞子懸濁液に対して高い殺菌力を示した。尚、15分経過後においても実施例2-1の組成物は比較例2-1、2-2の組成物に対して高い殺菌力を奏していることが確認された。
なお、イソプロピルメチルフェノールと第四級アンモニウム塩はいずれも細胞膜に作用することによって抗菌効果を奏する点で共通することから、イソプロピルメチルフェノールの代わりに第四級アンモニウム塩を使用した場合においても、同様の効果が奏されることが推測される。
【表5】
【0109】
[試験例3:耳垢なじみ試験(2)]
組成物として表6の組成物(液剤)を用いたこと、耳垢親和性改善率を算出するために下記式(III)を用いたこと以外は、試験例1と同様の方法で、耳垢なじみ試験を行った。
耳垢親和性向上率 (%)={(各処方例の吸光度-比較例3-1の吸光度)/比較例3-1の吸光度}×100・・・式(III)
【0110】
【表6】
【0111】
試験の結果、上記の通り、実施例3-1~3-5の組成物は、比較例3-1の組成物に比べて、耳垢なじみ性が高いことが示された。なお、結果は、すべて、3回の実験結果の平均の吸光度を求め、それらを比較したものである。
【0112】
さらに、エタノール濃度が30重量%であること以外は実施例3-5と同じ処方例(実施例3-6)においても、比較例3-1と比較して耳垢親和性向上率が上昇する傾向が確認された。
【0113】
上記の結果から、吉草酸酢酸プレドニゾロン等のステロイドに対し、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンを組み合わせることにより、外耳用製剤の耳垢へのなじみが向上し、耳上皮への送達性を上げることができると考えられる。加えて、エタノールの配合量を変えた場合にも、同様に顕著な作用が得られることが確認された。このことから、外耳炎、耳の中や外耳領域のかゆみ、皮膚炎等の症状や疾患に対し、すみやかに予防又は治療をすることができると考えられる。
【0114】
[試験例4:耳垢なじみ試験(3)]
表7に示す、比較例4-1、実施例4-1の組成物(クリーム剤)を常法に従って調製した。表3の組成からなる疑似耳垢を調製し、表7の組成物(液剤)を用いて、耳垢なじみ試験を行った。すなわち、まず、表3の疑似耳垢に、ヘキサン10gを投入して、溶解・分散混合し、ヘキサン:疑似耳垢=1:1の液を調製してボルテックス(VORTEX GENIE2、SCIENTIFIC INNDUSTRIES社)で1分間攪拌して均一にした。次に、この混合物を、24ウェルマイクロプレート(ポリスチレン製、Corning社)に15μlずつ添加した。この時適宜ボルテックスで混合した。これを、50℃で15分間静置し、さらに室温15分間静置してヘキサンを蒸発させた。ここに各組成物を1gずつ添加し、綿棒で製剤と疑似耳垢を、一定条件で1分間なじませた。約75℃の温水で、クリームを洗い流し、24ウェルマイクロプレート上に残存した疑似耳垢をヘキサン1mLで溶解させた。この液を200μl取り、96ウェルマイクロプレート(ポリスチレン製、Corning社)に添加してマイクロプレートリーダー(SH-9000、コロナ電気株式会社)で565nmでの吸光度測定を行った。
【0115】
各処方例における、比較例4―1に対する耳垢へのなじみの改善率を耳垢親和性改善率(%)とし、下記式(IV)により算出した。結果を表7に併せて示す。
耳垢親和性向上率 (%)={(比較例4-1の吸光度-実施例4-1の吸光度)/比較例4-1の吸光度}×100・・・式(IV)
【0116】
【表7】
【0117】
試験の結果、上記の通り、実施例4-1の組成物は、比較例4-1の組成物に比べて、耳垢親和性が高いことが示された。なお、結果は、3回の実験結果の平均の吸光度を求め、それらを比較したものである。
上記の結果から、吉草酸酢酸プレドニゾロン等のステロイドに対し、イソプロピルメチルフェノール等を組み合わせることにより、製剤がクリーム製剤の場合であっても外耳用製剤の耳垢へのなじみが向上し、耳上皮への送達性を高めることが出来た。
【0118】
[試験例5:アスペルギルス属真菌に対する増殖抑制試験(2)]
対象となる菌種として、A.brasiliensis の代わりに、A.terreus を用いたこと、胞子懸濁液添加後の試験サンプルの分取を1分後のみとしたこと以外は、試験例2と同様の方法で、A.terreusに対する殺菌力試験を行った。尚、A.terreus は、A.brasiliensisと並んで外耳疾患の原因菌の1つとされる菌種である。A.terreusとしてはATCC:1012のものを使用した。
【0119】
【表8】
【0120】
表8に記載の通り、実施例2-1の組成物は、A.terreus胞子懸濁液を用いた場合においても高い殺菌力を示した。
なお、イソプロピルメチルフェノールと第四級アンモニウムはいずれも細胞膜に作用することによって抗菌効果を奏する点で共通することから、イソプロピルメチルフェノールの代わりに第四級アンモニウムを使用した場合においても、同様の効果が奏されることが推測される。
【0121】
[試験例6:使用感に関する評価]
外用組成物の、外耳における掻痒感に対する作用を評価した。具体的には、比較例1-3と同一の組成物(比較例6-1)と、プレドニゾロン吉草酸酢酸エステル(吉草酸酢酸プレドニゾロン)0.15w/v%、イソプロピルメチルフェノール0.15w/v%、アラントイン0.2w/v%、グリチルレチン酸1w/v%、クロタミトン5w/v%、及び、l-メントール3.5w/v%、並びに、エタノール、1、3ブチレングリコール、ラウロマクロゴール、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、pH調節剤、及び、水を各々適量含有する組成物(実施例6-1)に、綿棒の一端を約1秒間浸漬させた後、それぞれ片耳ずつ外耳部に塗布し、塗布1分後、10分後の掻痒感の抑制度合をVAS法により評価した。具体的には、10cmの線が引いてある自覚症状調査シート上に、掻痒感の抑制作用が全く感じられない場合を0cm、掻痒感の抑制作用が顕著に奏される場合を10cmとして、被験者が感じた症状の程度のところにチェックしてもらった。この長さ(mm)をVAS値とした。
【0122】
【表9】
【0123】
比較例6-1のVAS値を1とした場合の実施例6-1のVAS値の割合を算出した結果を表9に示す。吉草酸酢酸プレドニゾロン等のステロイドに対し、イソプロピルメチルフェノール等を組み合わせ、外耳に適用することにより、外耳における掻痒感が顕著に抑制されることが確認できた。
【0124】
以下、本発明の外用組成物の製剤処方例を示す。なお、表10の処方例はすべて液剤、表11の処方例はすべてクリーム剤である。
表10の処方例は、ポリエチレンテレフタレート製の容器に充填され、ポリプロピレン製のノズルを装着し、ポリプロピレン製のキャップを装着した状態で提供される。
表11の処方例は、アルミ製のチューブに充填され、ポリプロピレン製のキャップをした状態で提供される。
【0125】
【表10】
【表11】