(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007085
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】弁装置及び弁装置の固定部材
(51)【国際特許分類】
F16K 15/02 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
F16K15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109805
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 淳
(72)【発明者】
【氏名】福山 晃平
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA02
3H058BB22
3H058BB29
3H058CA04
3H058CA33
3H058CB02
3H058CB14
3H058CC02
3H058CC11
3H058CD04
3H058CD23
3H058EE01
3H058EE18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡素な構成を有し、コスト低減を図れる弁装置及び弁装置の固定部材を提供する。
【解決手段】内周に所定間隔で形成した突出部242と、弁座223とを備えた中空の弁本体20と、外周に径方向に突出した突起34を備え、前記弁座223に着座可能な弁体30と、前記弁体30を付勢するコイルばね50と、前記コイルばね50を弁本体20に取り付ける固定部材40と、を有し、前記弁体30は、前記突出部242同士の間の切欠溝241を通して前記突起34を通過させたのちに、前記弁本体20の軸線回りに相対回転することにより、前記弁本体20内に組み付けられており、前記固定部材40は、前記弁本体20に組み付けられた前記弁体30の相対回転を制限する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に所定間隔で形成した突出部と、弁座とを備えた中空の弁本体と、
外周に径方向に突出した突起を備え、前記弁座に着座可能な弁体と、
前記弁本体に取り付けられる固定部材と、を有し、
前記弁体は、前記突出部同士の間の切欠溝を通して前記突起を通過させたのちに、前記弁本体の軸線回りに相対回転することにより、前記弁本体内に組み付けられており、
前記固定部材は、前記弁本体に組み付けられた前記弁体の相対回転を制限する、
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記固定部材を介して前記弁本体に保持され、前記弁体を付勢するコイルばねを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記固定部材が係合する係合溝を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記固定部材は、線状鋼材を折り曲げて形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の弁装置。
【請求項5】
前記固定部材を、前記弁本体に取り付ける止め輪を有し、
前記突出部は、前記止め輪が係合する係合溝を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項6】
前記止め輪は、線状鋼材を折り曲げて形成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の弁装置。
【請求項7】
前記弁体は、前記突出部よりも軸線方向内側に配置される、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項8】
内周に所定間隔で形成した突出部と切欠溝を備えた中空の弁本体と、
外周に径方向に突出した突起を備え、前記切欠溝に対して前記突起の位相を合わせることで前記弁本体内に組み付け可能であり、また前記切欠溝に対して前記突起の位相をずらすことで前記弁本体内から脱落が阻止される弁体と、を有する弁装置に用いる固定部材であって、
前記固定部材は、線状鋼材を折り曲げて形成され、前記弁本体に形成された係合溝に係合可能であり、
前記係合溝に係合した前記固定部材は、前記切欠溝と前記突起の位相がずれた状態を維持する、
ことを特徴とする弁装置の固定部材。
【請求項9】
前記弁本体は、前記弁体を前記弁本体の弁座に着座する方向に付勢するコイルばねを有し、
前記固定部材は、前記コイルばねを保持する、
ことを特徴とする請求項8に記載の弁装置の固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置及び弁装置の固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーエアコンなどの空調機器に使用される冷凍サイクルにおいて、冷媒(流体)の流れ方向を制御するために逆止弁が用いられている。
【0003】
特許文献1は、共通する軸線上に配設される第1の入口と、第2の入口と、これらを結ぶシリンダ部と、シリンダ部に直交する出口と、を備えた弁本体を含む三方口逆止弁を開示している。
【0004】
また、特許文献1の三方口逆止弁は、シリンダ内を摺動可能な弁体と、第2の入口の近傍に設けられてオリフィスを有するストッパとを備えている。このため、第2の入口側からの流体の供給が断たれ、第1の入口側からの供給に切り換えられると、流入する圧力によって弁体は、シリンダ部内を摺動してストッパに突き当たり、テーパ部がオリフィスを封止するように機能する。
【0005】
一方、弁体がオリフィスを封止しない状態では、第2の入口から流入する流体は、オリフィスと、シリンダ及び弁体間に形成される流路を通り、出口側へ流れることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の逆止弁は、四角柱部と、ストッパと、スナップリングとを備えており、これらの部品は金属素材を精度良く加工して得られるものであるため、部品コストがかかる。また、スナップリングを装着する際には、一般的にスナップリングプライヤなどの特殊な工具を用いる必要があり、設備コストがかかる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、簡素な構成を有し、コスト低減を図れる弁装置及び弁装置の固定部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る弁装置は、
内周に所定間隔で形成した突出部と、弁座とを備えた中空の弁本体と、
外周に径方向に突出した突起を備え、前記弁座に着座可能な弁体と、
前記弁本体に取り付けられる固定部材と、を有し、
前記弁体は、前記突出部同士の間の切欠溝を通して前記突起を通過させたのちに、前記弁本体の軸線回りに相対回転することにより、前記弁本体内に組み付けられており、
前記固定部材は、前記弁本体に組み付けられた前記弁体の相対回転を制限する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る弁装置の固定部材は、
内周に所定間隔で形成した突出部と切欠溝を備えた中空の弁本体と、
外周に径方向に突出した突起を備え、前記切欠溝に対して前記突起の位相を合わせることで前記弁本体内に組み付け可能であり、また前記切欠溝に対して前記突起の位相をずらすことで前記弁本体内から脱落が阻止される弁体と、を有する弁装置に用いる固定部材であって、
前記固定部材は、線状鋼材を折り曲げて形成され、前記弁本体に形成された係合溝に係合可能であり、
前記係合溝に係合した前記固定部材は、前記切欠溝と前記突起の位相がずれた状態を維持する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡素な構成を有し、コスト低減を図れる弁装置及び弁装置の固定部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、軸線に沿って弁本体を半割した状態で示す第1の実施形態にかかる逆止弁の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる逆止弁の軸線方向断面図であり、閉弁状態を示す。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかる逆止弁の軸線方向断面図であり、閉弁状態を示す。
【
図4】
図4は、第1の実施形態にかかる弁本体に固定部材を取り付けた状態で、
図2のA-A線で切断して上面視した図である。
【
図5】
図5は、軸線方向に見た状態で、第1の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図6】
図6は、軸線方向に見た状態で、第1の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図7】
図7は、軸線方向に見た状態で、第1の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図8】
図8は、軸線方向に見た状態で、第1の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図9】
図9は、軸線方向に見た状態で、第1の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図10】
図10は、軸線方向に見た状態で、第1の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図11】
図11は、軸線方向に見た状態で、第1の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図12】
図12は、軸線に沿って弁本体を半割した状態で示す第2の本実施形態にかかる逆止弁の分解斜視図である。
【
図13】
図13は、
図13は、第2の実施形態にかかる逆止弁の軸線方向断面図であり、閉弁状態を示す。
【
図14】
図14は、第2の実施形態にかかる逆止弁の軸線方向断面図であり、閉弁状態を示す。
【
図15】
図15は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図16】
図16は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図17】
図17は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図18】
図18は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図19】
図19は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図20】
図20は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図21】
図21は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図22】
図22は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図23】
図23は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図24】
図24は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図25】
図25は、軸線方向に見た状態で、第2の実施形態にかかる逆止弁の組立手順を説明するための図である。
【
図26】
図26は、第1の実施形態の変形例にかかる逆止弁の軸線方向断面図であり、閉弁状態を示す。
【
図27】
図27は、第2の実施形態の変形例にかかる逆止弁の軸線方向断面図であり、開弁状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では本発明の弁装置として、主としてカーエアコンなどの冷凍サイクルに使用される圧力調整用の逆止弁に適用した例を説明するが、それらの用途に限られない。ここで、「線状鋼材」とは、硬鋼線、ピアノ線、ステンレス鋼線などをいう。また、「C字形状」とは、螺旋形状の巻数が0.5を超え、1未満の形状、又は形状の中心と両端とを結ぶ2直線のなす角度が180度を超え、360度未満である形状をいう。なお、C字形状の部材を平面に載置したときに、両端が高さ方向にオフセットしている場合、螺旋形状の一部とみなすものとする。
【0014】
さらに本明細書中、「位相を合わせる」とは、弁装置の軸線方向に見たときに、弁本体の内周に形成された溝と、弁体の外周に形成された突起とが重なり合った状態とすることをいう。また、「位相をずらす」とは、重なり合った状態から、該溝と該突起とを相対回転させることをいう。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、軸線に沿って弁本体20を半割した状態で示す本実施形態の逆止弁10の分解斜視図である。
図2は、逆止弁10の軸線方向断面図であり、閉弁状態を示す。
図3は、逆止弁10の軸線方向断面図であり、閉弁状態を示す。
図4は、弁本体20に固定部材を取り付けた状態で、
図2のA-A線で切断して上面視した図である。ここで、逆止弁10の流体通路の軸線をLとする。
【0016】
逆止弁10は、内部に冷媒を通す冷媒流路(流体通路ともいう)を備える中空の弁本体20と、弁本体20の流体通路内に配置される弁体30と、弁本体20に取り付けられる固定部材40と、固定部材40に対して弁体30を付勢するコイルばね50と、を有する。逆止弁10は、例えば蒸発器及び圧縮機(不図示)に繋がる冷媒配管が接続される継手に連結され、それにより閉じた冷凍サイクルが形成される。ここで、
図2,3で、逆止弁10の左側が冷媒の入口側であり、右側が冷媒の出口側であるものとする。
【0017】
内部に流路構造を備えた弁本体20は、軸線Lに沿って
図2,3の入口側より、略円筒状の第1の連結部21と、中間通路22と、円筒状の中央通路23と、中間構造24と、略円筒状の第2の連結部(大径円筒部)25とを有している。第1の連結部21と、第2の連結部25には、それぞれ配管(不図示)が接続可能となっている。
【0018】
第1の連結部21と中央通路23とを接続する中間通路22は、テーパ筒部221と、第1の連結部21より小径のガイド筒部222と、中央通路23側に向かってテーパ状に拡径した弁座223とを連設してなる。
【0019】
一方、円筒状の中央通路23と第2の連結部25とを接続する中間構造24は、環状縮径部に対して周方向に等間隔に4か所、切欠溝241が設けられた形状を有する。切欠溝241の底面は、中央通路23及び第2の連結部25と共通する円筒面上にある。また、切欠溝241によって環状縮径部を周方向に分断することにより、4つの突出部242が形成される。
【0020】
各突出部242の頂面243は、共通の円筒面の一部を構成する。さらに、頂面243には、中央通路23より第2の連結部25に近い側に、周方向に沿って形成された円弧状の係合溝244が形成されている。各係合溝244内の空間は、単一の環状形状の一部を構成し、各係合溝244の底面は、中央通路23及び第2の連結部25よりも一段縮径した円筒面上にある。
【0021】
更に弁本体20は、
図1で下方側に盛り上がった隆起部26を有する。隆起部26には、第1の連結部21及び/または第2の連結部25に接続する配管を固定するためのボルト(不図示)を螺合するためのねじ穴261が、軸線Lに平行に形成されている。
【0022】
弁体30は、第1円筒部31と、フランジ部32と、第2円筒部33とを連結してなり、さらにフランジ部32と第2円筒部33の外周より径方向に板状に突出した4つの突起34が、周方向に等間隔に配置されている。
【0023】
第1円筒部31は、フランジ部32に隣接して周溝311(
図2参照)を有する。周溝311内には、O-リングORが配置されている。
【0024】
フランジ部32の外径は、突出部242の頂面243の内接円径より小さくなっており、開弁時にフランジ部32と中央通路23との隙間を冷媒が通過可能となっている。
【0025】
軸線方向に延在する突起34の周方向幅は、弁本体20の切欠溝241の溝幅よりも狭くなっており、また突起34の外接円径は、中央通路23及び第2の連結部25の内径より小さくなっている。
【0026】
第2円筒部33の平らな端面331(
図1参照)につながるようにして、各突起34は斜面341を有する。斜面341は、共通の円錐面の一部であってよい。
【0027】
固定部材40は、1本の線状鋼材を折り曲げることによって、安価にかつ軽量に形成されている。具体的に固定部材40は、略環状に加工された取付部41と、取付部41に接続し側方から見て略コ字状に加工された保持部42と、保持部42に接続し上方から見て略V字状(先細状)に加工されたアーム部43とを有する。
【0028】
取付部41の端部は、自身に固着されないため自由端となっており、これにより取付部41は縮径可能となっている。保持部42は、取付部41から略直交する方向に立ち上がり、アーム部43は、取付部41の外周近傍であって弁体30のフランジ部32よりも径方向外側において、保持部42と同方向に延在している。なお、アーム部43は、中間構造24から中央通路23内に僅かでも出ている程度の長さであればよい。
【0029】
保持部42の幅寸法は、金属製のコイルばね50の内径より小さく形成されている。アーム部43は、
図4に示すように切欠溝241内に挿入されたときに弾性変形可能である。
【0030】
(逆止弁の組立)
次に、逆止弁10の組立手順について説明する。
図5~11は、軸線方向に見た状態で、逆止弁10の組立手順を説明するための図である。本実施形態では、すべての構成部品を第2の連結部25側から組み付けることができ、これにより作業効率が向上する。
【0031】
まず、第1円筒部31の周溝311(
図2参照)にO-リングORを配置した弁体30を、弁本体20に対して同軸に配置し、
図5に示すように、切欠溝241と突起34との位相を合わせつつ、
図6に示すように、第1円筒部31側から弁本体20の第2の連結部25内に挿入する。すると、突起34が切欠溝241を通過し、フランジ部32が突出部242を通過して、弁体30は中央通路23(
図2参照)内に進入する。
【0032】
さらに、
図7に示すように、コイルばね50を弁本体20内に挿入する。コイルばね50の挿入端は、弁体30の突起34の斜面341に当接し、これにより
図8に示すように、弁体30に対してコイルばね50のセンタリングが行われる。なお、弁体30にコイルばね50を設置する穴を斜面341の間に設けた場合は、弁体30の突起34の斜面341がコイルばね50を穴に設置するガイドとなり、容易にコイルばね50を穴に設置することができる。
【0033】
次いで
図9に示すように、弁本体20に対して弁体30を軸線回りにおおよそ45度相対回転させる(位相をずらす)。これにより突起34が切欠溝241に対向する位置から突出部242の軸線方向内側へと入り込むため、弁体30は第2の連結部25側へ移動できなくなる。なお、弁体30の相対回転は、コイルばね50の装着前に行ってもよい。
【0034】
さらに、
図10に示すように、固定部材40を弁本体20内に挿入する。具体的には、固定部材の保持部42をコイルばね50内に挿入し、アーム部43を切欠溝241の一つに挿入し、取付部41を縮径させながら第2の連結部25を通過させて突出部242の係合溝244(
図1参照)に係合させる。
【0035】
取付部41は、係合溝244に係合すると自身の弾性力により拡径し、係合溝244から抜け出ることが阻止される。かかる状態で、保持部42がコイルばね50を弁体30に対してセンタリングした状態で保持することができる。以上で、
図11に示すように、逆止弁10の組立が完了する。
【0036】
本実施形態によれば、アーム部43は、突出部242から中央通路23側へと延在し、弁体30のフランジ部32の径方向外側にて、突起34の間に位置するようになる。これにより、弁体30が回転してもアーム部43に当接するため、略45度以上の回転が阻止され(回転が制限され)、回転摺動により生じる摩耗を防止できる。さらに、アーム部43が切欠溝241に配置されているため、いずれの突起34も切欠溝241に到達できず、弁本体20から弁体30が脱落することを防止できる。弁体30は、略45度未満で回転が阻止されるようにしてもよい。この場合、回転摺動により生じる摩耗をさらに防止できる。
【0037】
従来の弁装置において、弁座223と中間構造24とが別部品となっているものがある。本実施形態では弁座223と中間構造24とを弁本体20に一体に設けることにより、従来の弁装置に比較して、部品点数が少ないにもかかわらず、弁体30を弁本体20に強固に保持することができる。
【0038】
また、
図4を参照して、切欠溝241に挿入されたアーム部43は鋭角を持つV字形状に折り曲げられ、その弾性力で切欠溝241の側壁を押圧するため、これにより固定部材40のガタ付きが抑制される。さらに、弁体30がいずれかの方向に回転して突起34がアーム部43に衝接した場合にも、固定部材40の傾きを抑えて高い支持剛性を発揮できる。
【0039】
コイルばね50を弁体30に対して保持する方法として、例えば突起34を中央に寄せて軸線方向に延長し、その周囲にコイルばね50を配置することも一案である。しかし、このような突起34を長くした弁体を用いると、逆止弁10の軸線方向長の増大を招いたり、突起34の破損を招きやすいという問題がある。
【0040】
これに対し本実施形態では、突起34の内側の斜面341によりコイルばね50の一端を保持するようにしたため、突起34の軸線方向長を短縮できる。また、弁体30を突出部242の内側の中央通路23内でのみ移動するシャトル構成とすることができ、弁本体20の軸線方向長を抑えることができるとともに、耐衝撃性にも優れる。さらに、弁体30、コイルばね50、固定部材40がすべて突出部242から外側にはみ出さないため、第2の連結部25に接続される配管との干渉が生じず、配管との組付設計の自由度が高まる。
【0041】
本実施形態の固定部材40は、線状鋼材を折り曲げて形成される安価な構成であるにもかかわらず、単一の部材で弁体30の脱落防止機能とコイルばね50の保持機能を発揮できる。
【0042】
(逆止弁の動作)
次に、逆止弁10の動作を簡単に説明する。
図2、3において、第1の連結部21と第2の連結部25に、それぞれ配管が接続されているものとする。第1の連結部21側の冷媒圧力が、第2の連結部25側の冷媒圧力に所定圧(コイルばね50の付勢力に相当)を加えた圧力より低い場合、
図2に示すように、弁体30のO-リングORが弁本体20の弁座223に着座した閉弁状態となる。かかる状態では、逆止弁10を冷媒が通過することが阻止され、第2の連結部25側から冷媒が流れ出すことはない。
【0043】
一方、第1の連結部21側の冷媒圧力が、第2の連結部25側の冷媒圧力に所定圧を加えた圧力より高くなると、コイルばね50の付勢力に抗して弁体30が開弁方向(
図3で右方)へ移動し、O-リングORが弁座223から離れた開弁状態となる。移動した弁体30が取付部41に当接して、固定部材40を脱落させることはない。開弁状態では、冷媒が第1の連結部21側から、弁体30と中央通路23との間を通って第2の連結部25側へと通過することを許容する。このとき、固定部材40が線状鋼材により形成されているため、冷媒の流れを抑制しないようになっている。なお、弁装置にコイルばねを設けない場合は、弁体30が弁座223に着座するように弁装置の取り付け角度と冷媒圧力を調整する。
【0044】
(変形例)
図26は、第1の実施形態の変形例にかかる逆止弁10Aの軸線方向断面図であり、閉弁状態であって、弁体30Aの一部を断面で示している。本変形例は、第1の実施形態に対して弁体30Aの構成が異なる。より具体的には、弁体30Aの固定部材40に対向する端面に、斜面の代わりに円筒状の袋孔35を設けている。コイルばね50の一端は、袋孔35の底面に配置されている。固定部材40の保持部42の一部を、袋孔35内に挿入してもよい。それ以外の第1の実施形態と同様な構成は、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0045】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態にかかる逆止弁100について説明する。
図12は、軸線に沿って弁本体120を半割した状態で示す本実施形態の逆止弁100の分解斜視図である。
図13は、逆止弁100の軸線方向断面図であり、閉弁状態を示す。
図14は、逆止弁100の軸線方向断面図であり、閉弁状態を示す。ここで、逆止弁100の流体通路の軸線をLとする。
【0046】
逆止弁100は、内部に冷媒を通す冷媒流路(流体通路ともいう)を備える中空の弁本体120と、弁本体120の流体通路内に配置される弁体130と、弁本体120に取り付けられる固定部材140と、固定部材140に対して弁体130を付勢するコイルばね150と、固定部材140を保持する止め輪160と、を有する。本実施形態の逆止弁100は、例えば蒸発器及び圧縮機(不図示)に繋がる冷媒配管内に配置される。ここで、
図13,14で、逆止弁100の左側が冷媒の入口側であり、右側が冷媒の出口側であるものとする。
【0047】
内部に流路構造を備えた弁本体120は、軸線Lに沿って
図13,14の入口側より、略円筒状の入口開口121と、弁座122と、円筒状の中央通路123と、端部構造124とを有している。弁本体120の外周には周溝125が形成されており、周溝125に、弁本体120を内挿する配管(不図示)との間を密封するO-リングOR1が配置されている。
【0048】
入口開口121と中央通路123とを接続する弁座122は、入口開口121から中央通路123側に向かってテーパ状に拡径している。
【0049】
端部構造124は、環状縮径部に対して周方向に等間隔に4か所、切欠溝124aが設けられた形状を有する。切欠溝124aの底面は、中央通路123と共通する円筒面上にある。また、切欠溝124aによって環状縮径部を周方向に分断することにより、4つの突出部124bが形成される。
【0050】
図12において、各突出部124bの頂面124cは、共通の円筒面の一部を構成する。さらに、頂面124cには、弁本体120の軸線方向中央において、周方向に沿って形成された円弧状の係合溝124dが形成されている。各係合溝124d内の空間は、単一の環状形状の一部を構成し、各係合溝124dの底面は、中央通路123よりも一段縮径した円筒面上にある。
【0051】
弁体130は、第1円筒部131と、フランジ部132と、第2円筒部133とを連結してなり、さらに第2円筒部133の外周より径方向に板状に突出した4つの突起134が、周方向に等間隔に配置されている。
【0052】
第1円筒部131は、フランジ部132に隣接して周溝131a(
図13参照)を有する。周溝131a内には、O-リングOR2が配置されている。
【0053】
フランジ部132の外径は、突出部124bの頂面124cの内接円径より小さくなっており、開弁時にフランジ部132と中央通路123との隙間を冷媒が通過可能となっている。
【0054】
軸線方向に延在する突起134の周方向幅は、弁本体120の切欠溝124aの溝幅よりも狭くなっており、また突起134の外接円径は、中央通路123の内径より小さくなっている。
【0055】
第2円筒部133の凹状端面133a(
図12参照)につながるようにして、各突起134は斜面134aを有する。
【0056】
固定部材140は、1枚の細長い金属板を略M字状に折り曲げることによって、安価にかつ軽量に形成されている。具体的に固定部材140は、中央のベース141と、ベース141の中央を側方から見て略コ字状に折り曲げ加工されてなる保持部142と、ベース141の両端から保持部142と同方向に延在するよう折り曲げ加工された一対の脚部143とを有する。
【0057】
保持部142の外接円は、金属製のコイルばね150の内径より小さく形成されている。脚部143は、弁体130のフランジ部132よりも径方向外側に延在しており、その幅は切欠溝124aの幅に略等しい。
【0058】
線状鋼材をC字形状に加工した止め輪160は、螺旋形状に巻かれたワイヤの一部のような形状を有する。したがって、止め輪160を仮想平面上に載置すると、一端が仮想平面に載置された状態で、他端が仮想平面から浮いた状態になる。つまり、一端と他端とは、仮想平面からの高さ方向に沿って所定距離で離間するとともに、周方向にも離間している。このような止め輪160は、コイルばねを切断することにより形成でき、あるいは線状鋼材をコイルばね状に加工する際に、360度未満の間隔で切断することによって形成できるため、一般的なスナップリングよりも安価に形成できる。
【0059】
(逆止弁の組立)
次に、逆止弁100の組立手順について説明する。
図15~25は、軸線方向に見た状態で、逆止弁100の組立手順を説明するための図である。本実施形態では、すべての構成部品を端部構造124側から組み付けることができ、これにより作業効率が向上する。
【0060】
まず、第1円筒部131の周溝131aにO-リングOR2(
図13参照)を配置した弁体130を、弁本体120に対して同軸に配置し、
図15に示すように、切欠溝124aと突起134との位相を合わせつつ、
図16に示すように、第1円筒部131側から弁本体120内に挿入する。すると、突起134が切欠溝124aを通過し、フランジ部132が突出部124bを通過して、弁体130は中央通路123内に進入する。
【0061】
さらに、
図17に示すように、コイルばね150を弁本体120内に挿入する。コイルばね150の挿入端は、弁体130の突起134の斜面134aにより案内され、
図18に示すように、弁体130に対してコイルばね150のセンタリングが行われる。
【0062】
次いで
図19に示すように、弁本体120に対して弁体130を軸線回りにおおよそ45度相対回転させる(位相をずらす)。これにより突起134が切欠溝124aに対向する位置から突出部124bの軸線方向内側へと入り込むため、弁体130は端部構造124から外部へ移動できなくなる。なお、弁体130の相対回転は、コイルばね150の装着前に行ってもよい。
【0063】
さらに、
図20に示すように、固定部材140を弁本体120内に挿入する。具体的には、固定部材の保持部142をコイルばね150内に挿入し、脚部143を切欠溝124aの二つに挿入する(
図21)。脚部143は、弁本体120の中央通路123の段部に突き当てて係止される。
【0064】
その後、
図22に示すように、止め輪160を弁本体120内に挿入する。具体的には、止め輪160を縮径させながら突出部124bの係合溝124dに係合させる(
図23)。
【0065】
止め輪160を係合溝124dに係合させると、自身の弾性力により拡径し、また両端が係合溝124dの両側壁に当接するため、止め輪160が係合溝124dから抜け出ることが阻止される。かかる状態で、保持部142がコイルばね150を弁体130に対してセンタリングした状態で保持することができ、また止め輪160により固定部材140の脱落を阻止することができる。その後、
図24,25に示すように、周溝125にO-リングOR1を組み付けることで、逆止弁100の組立が完了する。逆止弁100は、不図示の配管内に設置されて用いられる。
【0066】
本実施形態によれば、脚部143は、端部構造124から中央通路123側へと延在し、弁体130のフランジ部132の径方向外側にて、突起134の間に位置するようになる。これにより、弁体130が回転しても脚部143に当接するため、略45度以上の回転が阻止され、回転摺動により生じる摩耗を防止できる。なお、脚部143は中央通路123から離間した状態に保持される。
【0067】
本実施形態においても、脚部143が切欠溝124aに配置されているため、弁体130のいずれの突起134も切欠溝124aに到達できず、弁本体120から弁体130が脱落することを防止できる。さらに、脚部143の幅が切欠溝124aの幅に略等しいため、両者間のガタを防止できる。
【0068】
また本実施形態でも、突起134の内側の斜面134aによりコイルばね150の一端を保持するようにしたので、突起134の軸線方向長を短縮できるため、弁体130を端部構造124の内側の中央通路123内でのみ移動するシャトル構成とすることができ、弁本体120の軸線方向長を抑えることができるとともに、耐衝撃性にも優れる。また、弁体130、コイルばね150、固定部材140、止め輪160がすべて端部構造124から外側にはみ出さないため、第2の連結部25に接続される配管との干渉が生じず、配管との組付設計の自由度が高まる。
【0069】
本実施形態の固定部材140は、金属板を折り曲げて形成される安価な構成であり、また止め輪160も安価な線状鋼材から形成されたものであり、低コストを図ることができる。
【0070】
(逆止弁の動作)
次に、逆止弁100の動作を簡単に説明する。
図13、14において、逆止弁100は不図示の配管内に配置されているものとする。配管の内周と逆止弁100の外周との間は、O-リングOR1により密封される。ここで、入口開口121側の冷媒圧力が、端部構造124側の冷媒圧力に所定圧(コイルばね150の付勢力に相当)を加えた圧力より低い場合、
図13に示すように、弁体130のO-リングOR2が弁本体120の弁座122に着座した閉弁状態となる。かかる状態では、逆止弁100を冷媒が通過することが阻止され、端部構造124側から冷媒が流れ出すことはない。
【0071】
一方、入口開口121側の冷媒圧力が、端部構造124側の冷媒圧力に所定圧を加えた圧力より高くなると、コイルばね150の付勢力に抗して弁体130が開弁方向(
図14で右方)へ移動し、O-リングOR2が弁座122から離れた開弁状態となる。移動した弁体130が止め輪160に当接することはない。開弁状態では、冷媒が入口開口121側から、弁体130と中央通路123との間を通って端部構造124側へと通過することを許容する。
【0072】
(変形例)
図27は、第2の実施形態の変形例にかかる逆止弁100Aの軸線方向断面図であり、開弁状態を示している。本変形例は、第2の実施形態に対して弁体130Aの構成が異なる。より具体的には、弁体130Aの固定部材140に対向する端面に、斜面の代わりに円筒状の袋孔135を設けている。コイルばね150の一端は、袋孔135の底面に配置されている。固定部材140の保持部142の一部を、袋孔135内に挿入してもよい。それ以外の第2の実施形態と同様な構成は、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0073】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の実施形態の任意の構成要素の変形が可能である。また、上述の実施形態において任意の構成要素の追加または省略が可能である。
【0074】
特に本発明においては、コイルばねを必須の構成要件としない。たとえば軸線Lを鉛直方向に沿うようにし、または傾けて、弁体30、130が自重で弁座に押圧されるような向きで逆止弁10、100を設置することもできる。あるいは、弁本体20、120に加わる圧力によって弁体30、130が弁座に押圧されるような使用形態もある。この場合、固定部材40、140は、弁本体20、120から抜け落ちないように弁体30、130を保持するために用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
10、100 逆止弁
20、120 弁本体
30、130 弁体
40、140 固定部材
50、150 コイルばね
160 止め輪
OR1、OR2、OR3 O-リング
L 軸線