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特開2022-70912多様な多能性幹細胞から誘導された褐色脂肪細胞の再誘導のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070912
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】多様な多能性幹細胞から誘導された褐色脂肪細胞の再誘導のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20220506BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20220506BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20220506BHJP
【FI】
C12N5/077 ZNA
C12N5/0735
C12Q1/6876 Z
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016648
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2018549142の分割
【原出願日】2016-12-07
(31)【優先権主張番号】62/264,311
(32)【優先日】2015-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521193289
【氏名又は名称】エージェックス セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェスト,マイケル,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】スターンバーグ,ハル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多能性幹細胞由来の細胞を、褐色脂肪組織(BAT)の細胞成分を含む所望の細胞型へ分化させるための改善された方法を提供する。
【解決手段】a.DIO3、DLK1、ZIC2、SLC1A3およびSBSNを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、IL13RA2、DLX5、CRABP1、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない、多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、b.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARガンマアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに、c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすることを含む、褐色脂肪細胞を製造する方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はDIO3、DLK1、ZIC2、SLC1A3およびSBSNを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、IL13RA2、DLX5、CRABP1、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARガンマ(PPARγ)アゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項2】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はHOXA2、HOXB2、HOXA5、HEPH、NEFM、およびRBP1を発現するがZIC2、TPR、PRG4、IL13RA2、DLK1、およびSBSNは発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項3】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLK1、NEFM、およびRBP1を発現するがCOX7A1は発現せず、かつZIC2、DLX5、PRG4、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項4】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はHOXA2、RBP1、およびZIC2を発現するが、COX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、NEFM、PRG4、DLX5、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項5】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はHOXA2、HOXB2、DLX5、およびZIC2を発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項6】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はHOXA2、DLK1、DLX5、PRG4、およびZIC2を発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、GPC4、NEFM、IL13RA2、NTNG1およびSBSNのうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項7】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はCRABP1、SNAP25、PPP1R1B、PRG4、DLK1、ZIC2およびPAPLNを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLX5、RBP1、およびIL13RA2のうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項8】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はHOXA2、ZIC2、THY1およびEFNB2を発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項9】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はHOXA2、ZIC2、CD24、およびRBP1を発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、NEFM、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項10】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はHOXA5、SNAP25、THY1、PAPLN、ZIC2、およびDLK1を発現するがCOX7A1は発現せず、かつRBP1、NEFM、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項11】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はHOXC6、PAPLN、THY1、RBP1およびEFNB2を発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、ZIC2、およびNEFMのうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項12】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はDLK1、DLX5、GPC4、およびTHY1を発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、およびSNAP25のうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項13】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はBARX1、EPDR1、GPC4、EFNB2、およびDLK1を発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、ZIC2、CRABP1、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項14】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はSNAP25、PRG4、SBSN、GPC4、およびDLK1を発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しないものであり、
b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項15】
以下a~c、すなわち
a.多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を提供すること、ここで該クローン胚性前駆体細胞株はALDH1A2、SBSN、CPVL、ZIC2、およびTHY1を発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、RBP1およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しないものであり、b.前記多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を、PPARγアゴニストの存在下で褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間分化させ、それにより、分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を製造すること、ならびに
c.前記の分化した多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株をUCP1マーカーの発現についてスクリーニングすること、ここで該UCP1マーカーの存在は褐色脂肪細胞を同定する、を含む、褐色脂肪細胞を製造する方法。
【請求項16】
褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間が約2日~約21日である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間が約5日~約19日である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間が約9日~約17日である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
褐色脂肪細胞系列への前記細胞の決定に十分な期間が約11日~約15日である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記PPARγアゴニストがロシグリタゾンである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記のUCP1を発現する褐色脂肪細胞が、ADIPOQまたはC19orf80のうちの1つ以上の発現によりさらに特徴付けられる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞生物学の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幹細胞技術、例えば胚性幹細胞(「ES」細胞、例えばヒトES細胞(「hES」細胞))、およびiPS、EG、EC、ICM、胚盤葉上層、単為発生的に活性化された卵母細胞もしくはED細胞(例えば、ヒト種から得た該細胞)に由来する同等細胞を含むがこれらに限定されない関連のある多能性または全能性幹細胞を含む始原幹細胞の単離およびin vitroでの増殖に関連する幹細胞技術における進歩は、医学研究および治療製品開発の重要な新規領域を構成している。前述の多能性細胞の型には差異があるが、本発明は多様な中胚葉細胞型に分化可能なそれらのいずれの使用にも適用される。これらの始原幹細胞の多くは本来、未分化状態でテロメラーゼ陽性であり、そのため該細胞を無限に増殖させること、その後遺伝的に改変すること、および該遺伝的改変後、分化の前にクローンとして増大させることができる。前記始原細胞株の多くにおけるテロメア長は、テロメラーゼの触媒成分(TERT)の発現を部分的に介して精子DNAに認められるもの(約10~18 kb TRF長)と同程度である。従って、前記始原幹細胞の分化した子孫は典型的にはTERT発現の抑制のために死ぬ運命にあり、またテロメア長は細胞分裂に伴って短縮するものの、それらの長い初期テロメア長は該細胞に胎仔または成体由来の細胞と比較して長期の複製能を与え、移植用の比較的若い細胞の製造を可能にする。
【0003】
ヒトES細胞は、未分化状態で増殖し、その後続いて複合組織を含むヒト体内のあらゆる全ての細胞型に分化するよう誘導される、実証された可能性を有する。hES細胞の多能性により、細胞の機能障害に起因する多くの疾患はhES由来の様々な分化型の細胞の投与による治療に適している場合があること(Thomsonら、Science 282:1145-1147 (1998))、ならびにhES由来前駆体株の長い増殖寿命はhES細胞由来胚性前駆体細胞株のクローン増大および初期特徴付けを可能にすること(Westら、Regen Med (2008) 3(3), 287-308)が示唆される。
【0004】
多能性幹細胞は、多様なリプログラミング技術を通じて体細胞から誘導することもできる。かかるリプログラミング技術の1つは体細胞核移植(SCNT)である。SCNT研究により、分化した体細胞を変換して始原幹細胞状態、例えば胚性幹(「ES」)細胞(Cibelli,ら、Nature Biotech 16:642-646 (1998))または胚由来(「ED」)細胞の始原幹細胞状態に戻しうることが示されている。あるいは、体細胞を分析的リプログラミング技術(より一般的には人工多能性幹(iPS)細胞技術と称される)によりリプログラムして全能性または多能性としてもよく、この場合は体細胞を転写調節因子を使用してリプログラムすることが記載されている(2006年8月3日に出願されかつ「Improved Methods of Reprogramming Animal Somatic Cells」と題したPCT出願第PCT/US2006/030632号を参照されたい)。これらの方法により、患者の核遺伝子型を有する始原細胞由来体細胞を移植するための潜在的戦略が提供される(Lanzaら、Nature Medicine 5:975-977 (1999))。
【0005】
SCNTおよび分析的リプログラミング技術に加えて、雌性発生および雄性発生の利用を含む、移植片拒絶反応の問題に対処するための他の技術が存在する(1999年10月28日に出願された米国出願第60/161,987号、2000年10月27日に出願された米国出願第09/697,297号、2001年11月29日に出願された米国出願第09/995,659号、2003年2月27日に出願された米国出願第10/374,512号、2000年10月27日に出願されたPCT出願第PCT/US00/29551号を参照されたい)。単為発生と称される雌性発生の一種の場合、多能性幹細胞は、配偶子ドナーにとって異物である抗原を使用せずに製造してもよく、従って拒絶反応無く該配偶子ドナーに移植できる細胞を製造する上で有用でありうる。さらに、単為発生幹細胞株を集めてHLA領域(または非ヒト動物の対応MHC領域)がホモ接合体である細胞株のバンクとすることで、HLAハプロタイプに関して幹細胞バンクの複雑さを軽減することができる。
【0006】
免疫監視機構を回避するために選択または遺伝的に改変された、全能性もしくは多能性細胞株または該細胞株のバンク、例えばcGMPに準拠するよう製造されたものを製造することができる。HLA遺伝子(または非ヒト動物の対応MHC領域、2006年10月20日に出願されかつ「Totipotent, Nearly Totipotent or Pluripotent Mammalian Cells Homozygous or Hemizygous for One or More Histocompatibility Antigen Genes」と題したPCT出願第PCT/US2006/040985号を参照されたい)を含有するクロマチンの領域が半接合体である前記細胞の単離を含む、種々の様式が当分野で公知である。半接合細胞株のバンクは、正常な哺乳動物のMHC遺伝子プールに固有の複雑さを軽減して前記抗原を患者に適合させるプロセスを簡略化するという利点だけでなく、前記抗原の遺伝子量を減少させることにより前記抗原の発現を(それらの発現を完全に排除するのではなく)低下させて、その結果、HLAクラスI発現を示さない細胞に対して生じるナチュラルキラー応答の刺激を回避するという利点も提供する。
【0007】
SCNTまたは分析的リプログラミング技術、例えば組織適合性細胞移植片を取得するためのiPS細胞作製によるリプログラミング(再プログラミング)に加えて、前記多能性幹細胞を、特定の遺伝子の発現のモジュレーション、例えば、HLA遺伝子のノックアウト、β2ミクログロブリン(B2M)の両対立遺伝子のうちの一方、HLA-GもしくはHLA-Hの発現の増大、またはCTLA4-IgおよびPD-L1(参照により本明細書中に組み込まれる、Z. Rong,ら、An Effective Approach to Prevent Immune Rejection of Human ESC-Derived Allografts, Cell Stem Cell, 14: 121-130 (2014))、ならびに当分野で公知でありかつその後研究および治療用途のための分化細胞を製造するために利用される他の改変を通じて、免疫原性を低減するために遺伝的に改変してもよい。免疫原性が低減された細胞を製造するために設計されたかかる遺伝的改変始原幹細胞を、本明細書中では「ユニバーサルドナー細胞」と称する。
【0008】
ヒト多能性幹細胞由来クローン胚性前駆細胞株を単離する可能性は、出生前パターンの遺伝子発現を示す新規の高度に精製された細胞系譜(系列)、例えば組織の再生に有用なCOX7A1の発現が欠如しているものなどの胎仔前(pre-fetal)パターンの遺伝子発現を示すものを増やすための手段を提供する。かかる細胞型は、研究における、および細胞ベースの治療法の創出のための、重要な用途を有する(参照により本明細書中に組み込まれる、2006年4月11日に出願されかつ「Novel Uses of Cells With Prenatal Patterns of Gene Expression」と題したPCT出願第PCT/US2006/013519号、2006年11月21日に出願されかつ「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」と題した米国特許出願第11/604,047号、および2009年7月16日に出願されかつ「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」と題した米国特許出願第12/504,630号、「Differentiated Progeny of Clonal Progenitor Cell Lines」と題した米国特許出願第14/048,910号)を参照されたい)。EYA4を発現する胚性皮膚脂肪細胞前駆体細胞(ECAPCs)を形成可能なクローン胚性前駆体およびオリゴクローン胚性前駆体のクローン集団、オリゴクローン集団およびプールした集団(ここで該前駆体細胞は、褐色脂肪組織(BAT)の特定の細胞成分に分化可能であるものとする)もまた開示されている(いずれも参照により本明細書中に組み込まれる、(「Improved Methods of Screening Embryonic Progenitor Cell Lines」と題した国際公開第2011/150105号)ならびに(「Methods of Screening Embryonic Progenitor Cell Lines」と題した米国特許出願第13/683,241号)ならびに(「Methods for Generating Pluripotent Stem Cell-Derived Brown Fat Cells」と題した米国特許公開第2015/0275177号)を参照されたい)。
【0009】
上記進歩にもかかわらず、依然として、多能性幹細胞由来の細胞を、褐色脂肪組織(BAT)の細胞成分を含む所望の細胞型への分化の可能性に関してスクリーニングするための方法を改善する必要がある。このBAT前駆体は、in vivoで移植した場合、メタボリックシンドロームの症状に悩まされている患者において治療反応をもたらす可能性があり、該症状には糖尿病、冠動脈疾患、肥満、脂質異常症、高血圧、ならびに腎疾患および網膜疾患などの糖尿病の合併症が含まれる。
【0010】
同様に、多能性幹細胞を、部位特異的前駆体および最終分化細胞型、例えば部位特異的BAT細胞型に効率的に分化させる手段も依然として必要とされている。さらに、COX7A1の発現の欠如により明示される出生前または胎仔前パターンの遺伝子発現を示すと同時に均一の分化状態を呈しかつ維持し、また遺伝子発現に部位特異的な差異を示す前駆体細胞型を多能性幹細胞から作製するための改善された方法の必要性が高まっている。成体または胎仔由来の脂肪細胞または脂肪細胞前駆体はBATまたは皮下脂肪組織(SAT)再生の能力が低下しており、またCOX7A1を発現する。対照的に、安定した組織再生能力を持つBATまたはSAT前駆体は、COX7A1発現の欠如により明示される胎仔前(すなわち出生前)パターンの遺伝子発現を示す。
【0011】
脂肪細胞は遺伝子発現において重要な部位特異的差異を有する細胞型の1例であり、ヒト体内の多様なタイプの脂肪細胞は、その各々が生理的恒常性を維持する上で特有の役割を担っている。SAT細胞は一般に将来の代謝要求のためのエネルギーを貯蔵する生理学的機能を与えるが、BAT細胞はエネルギー消費または熱産生を調節し、かつリパシンおよびアディポネクチンなどのアディポカインを合成する。BAT細胞はヒトの発達および加齢の過程で次第に失われ、その結果、それらの欠如は、BATがより少ない集団においてBAT細胞が重要な役割(例えば、体内の脂肪代謝の調節、血圧、血糖調節、膵臓における膵臓ベータ細胞数、ならびにHDLおよびLDLリポタンパク質およびトリグリセリド代謝における役割)を果たす障害の年齢依存性リスクの増大をもたらす。従って、BAT細胞を含む多様な組織型の部位特異的脂肪細胞に分化可能な精製脂肪細胞前駆体を作製する必要がある。
【0012】
驚いたことに、本発明の方法により、未分化状態で培養しかつ増大させた場合に本発明の特定要素の投与によりそれらが能動的に分化するまでは高レベルの脂肪細胞マーカーを発現せず、かつ分化するまでは検出可能なレベルのBAT脂肪細胞のマーカー(例えば、遺伝子UCP1またはアディポカインADIPOQ)を発現しないが、それでも本明細書中に開示した条件を利用して分化させると以下1)または2)、すなわち1)少量の~検出不可能なアディポカイン、例えばC19orf80(ベータトロフィンもしくはANGPTL8としても知られ、ヒトではC19orf80遺伝子によりコードされている)、およびアディポネクチン(AdipoQもしくはGBP-28としても知られ、ヒトではADIPOQ遺伝子によりコードされている)を発現するUCP1-発現褐色脂肪組織(BAT)細胞、または2)C19orf80およびアディポネクチンに関して豊富なmRNAを発現するが低レベルのUCP1を発現する脂肪細胞を作製可能なクローン胚性前駆体、に分化可能な、別個の多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株を単離できることが示される。さらに、驚いたことに、多様な部位特異的マーカーを有しかつミトコンドリア機能に関して互いに異なるクローン前駆体細胞株を、本発明の方法を利用して単離しかつ細胞数を増大させることができる。例えば、多能性マーカーを発現しないかまたは高レベルの脂肪細胞マーカーを発現し、かつ検出可能なレベルのBAT脂肪細胞のマーカー、例えばC19orf80、アディポネクチンまたはUCP1を発現しない、比較的未分化の状態で培養しかつ増大させうる多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株ESI EP004 NP 88SM(NP 88SM またはNP88SMまたはNP88とも称される)は、それでも本発明の方法を利用して分化させると、培養胎仔組織由来BAT細胞と同等またはそれより高いレベルのUCP1、C19orf80、およびADIPOQのレベルを同時に発現可能であるが、以前に開示されたクローン前駆体株NP110SM(NP 110SMまたはNP110とも称される)(参照により本明細書中に組み込まれる、「Methods for Generating Pluripotent Stem Cell-Derived Brown Fat Cells」と題した米国特許出願公開第2015/0275177号)と違って、NP88SMは部位特異的マーカーHOXA5を発現せず、また褐色脂肪細胞に分化するとNP110SM細胞株と比較して増大した酸素消費速度を示すことが、本発明の方法により示される。
【0013】
脂肪過多症、I型およびII型糖尿病、高血圧、ならびに内皮細胞機能障害に関連する疾患、例えば冠動脈疾患症候群(これらの障害のうちの多くが患者において同時に発生する(例えば、メタボリックシンドロームXおよび本明細書中に記載した関連障害))の症状の治療に役立つ生存可能かつ機能的なBAT細胞の生着をもたらす細胞治療レジメンにおいて有効かつ再現性よく投与しうる褐色脂肪の細胞成分を作製できる特定の前駆体細胞型への多能性幹細胞の定方向性分化を可能にする、さらなる方法が必要とされている。さらに、脱共役タンパク質1(UCP1)、アンジオポエチン様8(C19orf80としても知られるANGPTL8)、アディポネクチン(ADIPOQ)を含むがこれらに限定されない生理学的に有益な遺伝子の発現を示す前駆体細胞型および該前駆体細胞型から製造される最終分化細胞型、ならびに該細胞を、それらが皮下に安定に生着し、かつかかるアディポカインおよび有益な要素を全身に送達することでインシュリン感受性を高め、総体脂肪量を減らし、I型およびII型糖尿病の症状を軽減し、好ましくは冠動脈疾患の経過に影響を与え、さらにメタボリックシンドロームXを治療しうるように製剤化することが必要とされている。最後に、脂肪細胞への胚性前駆体細胞の分化を容易にすることにより、in vivoで注入した場合に体内の適切な部位での該細胞の永久生着を促進し、かつ該褐色脂肪細胞成分部位の望ましくない移動を制限する、生体適合性マトリックスが必要である。後述する本発明の種々の実施形態は、当分野におけるこれらの需要および他の需要を満たすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】PCT出願第PCT/US2006/030632号
【特許文献2】米国出願第60/161,987号
【特許文献3】米国出願第09/697,297号
【特許文献4】米国出願第09/995,659号
【特許文献5】米国出願第10/374,512号
【特許文献6】PCT出願第PCT/US00/29551号
【特許文献7】PCT出願第PCT/US2006/040985号
【特許文献8】PCT出願第PCT/US2006/013519号
【特許文献9】米国特許出願第11/604,047号
【特許文献10】米国特許出願第12/504,630号
【特許文献11】米国特許出願第14/048,910号
【特許文献12】国際公開第2011/150105号
【特許文献13】米国特許出願第13/683,241号
【特許文献14】米国特許公開第2015/0275177号
【特許文献15】米国特許出願公開第2015/0275177号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Thomsonら、Science 282:1145-1147 (1998)
【非特許文献2】Westら、Regen Med (2008) 3(3), 287-308
【非特許文献3】Cibelli,ら、Nature Biotech 16:642-646 (1998)
【非特許文献4】Lanzaら、Nature Medicine 5:975-977 (1999)
【非特許文献5】Z. Rong,ら、An Effective Approach to Prevent Immune Rejection of Human ESC-Derived Allografts, Cell Stem Cell, 14: 121-130 (2014)
【発明の概要】
【0016】
本発明は、ヒト胚性前駆体細胞型の分化および使用に役立つ化合物、組成物、キット、試薬および方法を提供する。本発明には、参照により米国特許出願第14/554,019号(第2015/0275177号として公開)が組み込まれるものとする。
【0017】
ある実施形態では、本発明は、褐色脂肪組織の新規の多能性幹細胞由来の(から誘導された)細胞成分を作製する方法、該細胞成分を含む組成物、および該細胞成分を使用する方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、多様なクローン精製した部位特異的な型の褐色脂肪細胞を生じる、単離されたクローン前駆体細胞株を提供する。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroで褐色脂肪細胞を生じうる。この単離されたクローン前駆体細胞株は同様に、in vivoで褐色脂肪細胞を生じうる。
【0018】
ある特定の実施形態では、本発明はBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで、分化した細胞は、比較的未分化な前駆体細胞に由来するものであって、本明細書中に記載した通りに分化させた後にFABP4、C19orf80、ADIPQ、UCP1、PCK1、NNAT、THRSP、CEBPA、またはCIDEAから選択される1つ以上のマーカーを発現するが、胎仔または成体由来のBAT細胞と違って、該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、in vivo投与の前にin vitroで培養し分化させると遺伝子COX7A1を発現しないものとする。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroで褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、in vivoで褐色脂肪細胞を生じうる。
【0019】
ある特定の実施形態では、本発明は、褐色脂肪組織(BAT)の細胞成分、例えば、UCP1を発現する褐色脂肪細胞に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にDIO3、DLK1、ZIC2、SLC1A3およびSBSNから選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、IL13RA2、DLX5、CRABP1、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NP88 SMに遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆細胞株を作製する方法も提供する。
【0020】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLK1、NEFM、およびRBP1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつZIC2、DLX5、PRG4、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NPCC SM19に遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0021】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、RBP1、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するが、COX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、NEFM、PRG4、DLX5、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NPCC SM36に遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0022】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、HOXB2、DLX5、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するが、COX7A1は発現せず、かつHOXA5、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NPCC SM28に遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0023】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、DLK1、DLX5、PRG4、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、GPC4、NEFM、IL13RA2、NTNG1およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NPCC SM31に遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0024】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にCRABP1、SNAP25、PPP1R1B、PRG4、DLK1、ZIC2およびPAPLNから選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLX5、RBP1、およびIL13RA2のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NP111 SM、NP77 EN、NP80 EN、およびNP85 ENに遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0025】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、ZIC2、THY1およびEFNB2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NPCC SM23に遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0026】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、ZIC2、CD24、およびRBP1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、NEFM、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NPCC SM27に遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0027】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA5、SNAP25、THY1、PAPLN、ZIC2、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつRBP1、NEFM、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NP78 ENに遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0028】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXC6、PAPLN、THY1、RBP1およびEFNB2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、ZIC2、およびNEFMのうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株SK1に遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0029】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にDLK1、DLX5、GPC4、およびTHY1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、およびSNAP25のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NP92 SMに遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0030】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にBARX1、EPDR1、GPC4、EFNB2、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、ZIC2、CRABP1、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NP91 SMに遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0031】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にSNAP25、PRG4、SBSN、GPC4、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NP93 SMに遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0032】
ある特定の実施形態では、本発明は、UCP1を発現するBATの細胞成分に分化可能な単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株は、ノギンの存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にALDH1A2、SBSN、CPVL、ZIC2、およびTHY1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、RBP1およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない。本発明は同様に、単離された細胞株NP113 SMに遺伝子発現のパターンが類似している前記多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を作製する方法も提供する。
【0033】
別の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来のクローン前駆体細胞株、またはプールしたクローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体はUCP1-発現褐色脂肪細胞の精製集団に分化可能である。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来のクローン前駆体細胞株、またはプールしたクローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、EGF、インスリン、デキサメタゾン、FCSまたはFBS、bFGF、ウシ・フェチュイン(ウシ)を追加したMCDB 120培地などの骨格筋筋芽細胞の増殖を助長する培地の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体はUCP1-発現褐色脂肪細胞の精製集団に分化可能である。
【0035】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にDIO3、DLK1、ZIC2、SLC1A3およびSBSNから選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、IL13RA2、DLX5、CRABP1、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0036】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLK1、NEFM、およびRBP1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつZIC2、DLX5、PRG4、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0037】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、RBP1、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するが、COX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、NEFM、PRG4、DLX5、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0038】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、HOXB2、DLX5、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するが、COX7A1は発現せず、かつHOXA5、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0039】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、DLK1、DLX5、PRG4、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、GPC4、NEFM、IL13RA2、NTNG1およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0040】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にCRABP1、SNAP25、PPP1R1B、PRG4、DLK1、ZIC2およびPAPLNから選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLX5、RBP1、およびIL13RA2のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0041】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、ZIC2、THY1およびEFNB2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0042】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、ZIC2、CD24、およびRBP1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、NEFM、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0043】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA5、SNAP25、THY1、PAPLN、ZIC2、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつRBP1、NEFM、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0044】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXC6、PAPLN、THY1、RBP1およびEFNB2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、ZIC2、およびNEFMのうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0045】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にDLK1、DLX5、GPC4、およびTHY1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、およびSNAP25のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0046】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にBARX1、EPDR1、GPC4、EFNB2、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、ZIC2、CRABP1、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0047】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にSNAP25、PRG4、SBSN、GPC4、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0048】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にALDH1A2、SBSN、CPVL、ZIC2、およびTHY1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、RBP1およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアンジオポエチン様8(ANGPTL8)またはリパシンまたはベータトロフィンとも称される遺伝子C19orf80によりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、リパシンの循環レベルが低い患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症およびメタボリックシンドロームなどのリパシンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでリパシンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0049】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にDIO3、DLK1、ZIC2、SLC1A3およびSBSNから選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、IL13RA2、DLX5、CRABP1、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0050】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLK1、NEFM、およびRBP1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつZIC2、DLX5、PRG4、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0051】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、RBP1、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するが、COX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、NEFM、PRG4、DLX5、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0052】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、HOXB2、DLX5、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するが、COX7A1は発現せず、かつHOXA5、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0053】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、DLK1、DLX5、PRG4、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、GPC4、NEFM、IL13RA2、NTNG1およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0054】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にCRABP1、SNAP25、PPP1R1B、PRG4、DLK1、ZIC2およびPAPLNから選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLX5、RBP1、およびIL13RA2のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0055】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、ZIC2、THY1およびEFNB2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0056】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA2、ZIC2、CD24、およびRBP1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、NEFM、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0057】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXA5、SNAP25、THY1、PAPLN、ZIC2、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつRBP1、NEFM、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0058】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にHOXC6、PAPLN、THY1、RBP1およびEFNB2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、ZIC2、およびNEFMのうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0059】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にDLK1、DLX5、GPC4、およびTHY1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、およびSNAP25のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0060】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にBARX1、EPDR1、GPC4、EFNB2、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、ZIC2、CRABP1、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0061】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にSNAP25、PRG4、SBSN、GPC4、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0062】
他の実施形態では、本発明は、単離された多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を提供し、ここで該細胞株は、ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させた多能性幹細胞から単離し、クローン胚性前駆体の株として増大させるものとし、該前駆体は分化の前にALDH1A2、SBSN、CPVL、ZIC2、およびTHY1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、RBP1およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない。この単離されたクローン前駆体細胞株は、in vitroでアディポネクチンと称される遺伝子ADIPOQによりコードされるタンパク質を分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。前記の単離されたクローン前駆体細胞株は、低アディポネクチン血症の患者、または糖尿病、心臓病、脂質異常症、骨粗鬆症、アルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームなどのアディポネクチンの投与が治療に役立つ患者における治療効果のために、in vivoでアディポネクチンを分泌する褐色脂肪細胞を生じうる。
【0063】
他の実施形態では、本発明は、前記褐色脂肪細胞における所望の遺伝子の発現を最大化する方法、前記褐色脂肪細胞に関する組成物および前記褐色脂肪細胞を使用する方法を提供する。
【0064】
さらに他の実施形態では、本発明は、ステップ1)~4)、すなわち1)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で多能性幹細胞を部分的に分化させるステップ、2)in vitroで胚性前駆体細胞株をクローンとして単離しかつ増殖させるステップ、3)この胚性前駆体のクローンまたはプールしたクローンを、ロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストに、場合によってはさらに以下、すなわちヒドロゲル、例えばI型コラーゲンおよびヒアルロン酸を含有するヒドロゲル、トリヨードチロニン(T3)、CL-316,243などのβ3-アドレナリン受容体アゴニスト、ならびにBMP4またはBMP7、のうちの1つ以上と共に曝露するステップ、4)UCP1の発現を測定することにより所望の部位特異的な型の褐色脂肪細胞を発現可能な株を検出するステップを含む、UCP1-発現細胞への単離された多能性幹細胞由来クローン胚性前駆体細胞株の分化の方法を提供する。
【0065】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にDIO3、DLK1、ZIC2、SLC1A3およびSBSNから選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、IL13RA2、DLX5、CRABP1、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0066】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLK1、NEFM、およびRBP1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつZIC2、DLX5、PRG4、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0067】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にHOXA2、RBP1、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するが、COX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、NEFM、PRG4、DLX5、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0068】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にHOXA2、HOXB2、DLX5、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するが、COX7A1は発現せず、かつHOXA5、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0069】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にHOXA2、DLK1、DLX5、PRG4、およびZIC2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXB2、HOXA5、GPC4、NEFM、IL13RA2、NTNG1およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0070】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にCRABP1、SNAP25、PPP1R1B、PRG4、DLK1、ZIC2およびPAPLNから選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、DLX5、RBP1、およびIL13RA2のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0071】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にHOXA2、ZIC2、THY1およびEFNB2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0072】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にHOXA2、ZIC2、CD24、およびRBP1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつDLK1、PPP1R1B、NEFM、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0073】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にHOXA5、SNAP25、THY1、PAPLN、ZIC2、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつRBP1、NEFM、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0074】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にHOXC6、PAPLN、THY1、RBP1およびEFNB2から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA5、ZIC2、およびNEFMのうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0075】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にDLK1、DLX5、GPC4、およびTHY1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、およびSNAP25のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0076】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にBARX1、EPDR1、GPC4、EFNB2、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXB2、HOXA5、ZIC2、CRABP1、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0077】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にSNAP25、PRG4、SBSN、GPC4、およびDLK1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0078】
他の実施形態では、本発明は、以下のステップ1)~3)、すなわち1)多能性幹細胞由来クローン前駆体細胞株を単離するステップであって、該細胞株は多能性幹細胞から単離するものとする該ステップ、2)ノギンなどのTGF-βファミリーの増殖因子の不活性化因子の存在下で分化させて、クローン胚性前駆体の株として増大させるステップであって、該前駆体は分化の前にALDH1A2、SBSN、CPVL、ZIC2、およびTHY1から選択される1つ以上のマーカーを発現するがCOX7A1は発現せず、かつHOXA2、HOXA5、HOXB2、RBP1およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない該ステップ、ならびに3)該前駆体細胞、またはロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストの存在下で分化させたUCP1-発現細胞を、患者に、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むヒドロゲルと組み合わせて投与するステップからなる、肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、またはアルツハイマー病、およびメタボリックシンドロームを治療するための方法を提供する。
【0079】
本発明のクローン胚性前駆体細胞またはプールしたクローン胚性前駆体細胞は、胎仔または成体由来のBAT前駆体と違って、COX7A1またはADIRFを発現しない。該クローン前駆体細胞株は、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方からなり架橋剤を含むものなどのヒドロゲル上で増殖させてもよいし、または該ヒドロゲルに埋め込んでもよい。
【0080】
さらなる実施形態では、本発明は、クローン前駆体細胞株を、ロシグリタゾンなどのチアゾリジンジオンクラスの小分子を含むがこれらに限定されないPPARγアゴニストと、場合によってはさらに以下、すなわちI型コラーゲンおよびヒアルロン酸を含有するものなどのヒドロゲル、トリヨードチロニン(T3)、CL-316,243などのβ3-アドレナリン受容体アゴニスト、ならびにBMP4またはBMP7、のうちの1つ以上と共に接触させて、それによりUCP1を発現する細胞を取得することを含む、UCP1を発現する細胞を取得する方法を提供する。適切なTGFβファミリーメンバーとしては、BMPファミリーのメンバー、例えばBMP4、BMP6またはBMP7が挙げられる。幾つかの実施形態では、該TGFβファミリーメンバーはTGFβでありうる。前記クローン前駆体細胞株は、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方を含むヒドロゲル上で増殖させてもよいし、または該ヒドロゲルに埋め込んでもよい。
【0081】
さらなる実施形態では、本発明は、クローン前駆体細胞株を1つ以上のTGFβファミリーメンバーと接触させて、それによりC19orf80を発現する細胞を取得することを含む、C19orf80を発現する細胞を取得する方法を提供する。適切なTGFβファミリーメンバーとしては、BMPファミリーのメンバー、例えばBMP4、BMP6、またはBMP7が挙げられる。前記クローン前駆体細胞株は、ヒドロゲル、例えばチオール化ヒアルロン酸塩、チオール化ゼラチンおよび/またはチオール化ヒアルロン酸塩とチオール化ゼラチンとの両方を含むヒドロゲル上で増殖させてもよいし、または該ヒドロゲルに埋め込んでもよい。
【0082】
さらに他の実施形態では、本発明は、本明細書中に開示したクローン前駆体細胞株を、100 ng/mLのBMP7、および1.0μMのロシグリタゾンを追加したチオール化ヒアルロン酸塩およびチオール化ゼラチン-ベースのヒドロゲルと14日間接触させることを含み、ここで該細胞は生理的温度よりも低い温度、例えば28℃で一定期間インキュベートするものとする、FABP4、C19orf80、ADIPOQ、またはUCP1から選択される1つ以上の遺伝子発現マーカーを発現する細胞を取得する方法を提供する。
【0083】
さらに他の実施形態では、本発明は、本明細書中に開示したクローン前駆体細胞株を、10 ng/mLのBMP4、1.0μMのロシグリタゾン、2.0 nMのトリヨードチロニン(T3)、および使用前の最後の4時間は10μMのCL316243を追加したチオール化ヒアルロン酸塩およびチオール化ゼラチン-ベースのヒドロゲルと接触させることを含む、FABP4、C19orf80、ADIPOQ、またはUCP1から選択される1つ以上の遺伝子発現マーカーを発現する細胞を取得する方法を提供する。
【0084】
さらに他の実施形態では、本発明は、本明細書中に開示したクローン前駆体細胞株を、100 ng/mLのBMP7、および5.0μMのロシグリタゾンを追加したチオール化ヒアルロン酸塩およびチオール化ゼラチン-ベースのヒドロゲルと14日間接触させることを含み、ここで該細胞は生理的温度でインキュベートするものとする、FABP4、C19orf80、ADIPOQ、またはUCP1から選択される1つ以上の遺伝子発現マーカーを発現する細胞を取得する方法を提供する。
【0085】
さらに他の実施形態では、本発明は、本明細書中に開示したクローン前駆体細胞株を、1~50 ng/mLのBMP4、および1.0~5.0μMのロシグリタゾンを追加したチオール化ヒアルロン酸塩およびチオール化ゼラチン-ベースのヒドロゲルと14日間接触させることを含み、ここで該細胞は生理的温度でインキュベートするものとする、FABP4、C19orf80、ADIPOQ、またはUCP1から選択される1つ以上の遺伝子発現マーカーを発現する細胞を取得する方法を提供する。
【0086】
さらに他の実施形態では、本発明は、本明細書中に開示したクローン前駆体細胞株を、100 ng/mLのBMP7、および1.0~5.0μMのロシグリタゾンを追加したチオール化ヒアルロン酸塩およびチオール化ゼラチン-ベースのヒドロゲルと14日間接触させることを含み、ここで該細胞は、最後の4時間を、追加したβ3-特異的アドレナリン受容体アゴニスト(10μMのCL-316243)の存在下でインキュベートするものとする、FABP4、C19orf80、ADIPOQ、またはUCP1から選択される1つ以上の遺伝子発現マーカーを発現する細胞を取得する方法を提供する。
【0087】
他の実施形態では、本発明は、被験体に後述する細胞のうちの1つ以上を投与することを含む、該被験体において代謝性疾患および脈管疾患を治療する方法を提供する。該代謝性疾患および該脈管疾患としては、I型またはII型糖尿病、シンドロームX、肥満、高血圧、および粥状硬化症を挙げることができる。前記細胞は、前記被験体に、生理学的適合性塩溶液中または好ましくはマトリックス、最も好ましくは後述するコラーゲンおよびヒアルロン酸-ベースのヒドロゲル中の懸濁物としての細胞からなる製剤の形で投与しうる。
【0088】
本発明のさらに他の実施形態には、本明細書中に記載した細胞を含むキットおよび試薬、ならびに本明細書中に記載した細胞を取得する、および/または増殖させる上で有用な試薬が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1図1は、前駆細胞状態のサンプル(Ctrl)、ならびにBMP4、ロシグリタゾン、T3、およびCL- CL-316243中で分化を受けたサンプル(分化型)における、選択された細胞のFABP4発現に関するIlluminaマイクロアレイRFU値を表すグラフを示す。(RFU値>130RFUが陽性とみなされる)(”*”はCITED1陽性の、確定的な脂肪細胞を特定する)。
図2図2は、前駆細胞状態のサンプル(Ctrl)、ならびにBMP4、ロシグリタゾン、T3、およびCL- CL-316243中で分化を受けたサンプル(分化型)における、選択された細胞のUCP1発現に関するIlluminaマイクロアレイRFU値を表すグラフを示す。(RFU値>130RFUが陽性とみなされる)(”*”はCITED1陽性の、確定的な脂肪細胞を特定する)。
図3図3は、前駆細胞状態のサンプル(Ctrl)、ならびにBMP4、ロシグリタゾン、T3、およびCL- CL-316243中で分化を受けたサンプル(分化型)における、選択された細胞のADIPOQ発現に関するIlluminaマイクロアレイRFU値を表すグラフを示す。(RFU値>130RFUが陽性とみなされる)(”*”はCITED1陽性の、確定的な脂肪細胞を特定する)。
図4図4は、前駆細胞状態のサンプル(Ctrl)、ならびにBMP4、ロシグリタゾン、T3、およびCL- CL-316243中で分化を受けたサンプル(分化型)における、選択された細胞のLIPASIN発現に関するIlluminaマイクロアレイRFU値を表すグラフを示す。(RFU値>130RFUが陽性とみなされる)(”*”はCITED1陽性の、確定的な脂肪細胞を特定する)。
図5図5は、細胞内脂質のオイルレッドO染色を示す挿入図を有する、クローン性前駆細胞株NP88(A)およびNP110(B)の位相コントラスト写真、ならびにDAPIの対比染色を伴うUCP1タンパク質の免疫細胞化学的染色(CおよびD)を示す。
図6図6に示すグラフは、UCP1発現を誘導するのに最適な条件を特定するために、異なる分化条件の、fBATおよびSATコントロール細胞、ならびにさまざまなクローン性胚性前駆細胞におけるUCP1発現をqPCR定量したことを示す。
図7図7は、BMP4、ロシグリタゾン、T3、およびCL- CL-316243中で分化した、追加選択された細胞(分化型)のUCP1発現に関するIlluminaマイクロアレイRFU値を表すグラフを示す。(RFU値>130RFUが陽性とみなされる)。
図8図8は、BMP4、ロシグリタゾン、T3、及びCL- CL-316243中で分化した、追加選択された細胞(分化型)のADIPOQの発現に関するIlluminaマイクロアレイRFU値を表すグラフを示す。(RFU値>130RFUが陽性とみなされる)。
図9図9は、BMP4、ロシグリタゾン、T3、及びCL- CL-316243中で分化した、追加選択された細胞(分化型)のLIPASINの発現に関するIlluminaマイクロアレイRFU値を表すグラフを示す。(RFU値>130RFUが陽性とみなされる)。
【0090】
定義および省略形
定義
用語「脂肪由来SVF(脂肪から誘導されたSVF)」とは、脂肪組織起源に由来する間質血管画分細胞を指す。一般に、これらのものは、低密度脂肪細胞から細胞材料(SVF)のペレットを分離するために遠心分離される脂肪吸引材料である。脂肪由来SVFはまた、そのようなペレット又はそうでなければ脂肪吸引由来細胞も指し、液体中に再懸濁され、本明細書に記載される本発明の細胞と共に使用される。
【0091】
用語「成体幹細胞」とは、胚発生が完了した後の発生段階にある哺乳動物から生じる組織から得られる幹細胞を指す(ヒトにおいては、これは妊娠発生の8週より大きい組織を指す)。哺乳動物由来組織は、胎児又は成体哺乳動物に由来する組織を含んでもよく、間葉系幹細胞、神経幹細胞、及び骨髄由来幹細胞を含んでもよい。
【0092】
用語「分析的リプログラミング技術」とは、体細胞の遺伝子発現パターンを、iPS、ES、ED、ECまたはEG細胞のものなどの、より多能性の状態のものにリプログラミングするための様々な方法を指し、ここで、リプログラミングは、複数かつ個別のステップで起こり、体細胞の卵母細胞への導入およびその卵母細胞の活性化に単に依拠するものではない(2001年11月26日に出願された米国特許出願第60/332,510号; 2002年11月26日に出願された米国特許出願第10/304,020号; 2003年11月26日に出願されたPCT出願第PCT/US02/37899号; 2005年8月3日に出願された米国特許出願第60/705625号; 2005年8月20日に出願された米国特許出願第60/729173号; 2006年7月5日に出願された米国特許出願第60/818813号;2006年8月3日に出願されたPCT/US06/30632を参照されたい)。
【0093】
用語「割球/桑実胚細胞」とは、哺乳動物の胚、哺乳動物のin vitroの受精卵中の割球もしくは桑実胚細胞、または割球もしくは桑実胚細胞の分化した誘導体を含むさらなる細胞と共に、もしくはそれを用いずにin vitroで培養された割球もしくは桑実胚細胞を指す。本開示の目的のために、別途特定しない限り、用語「褐色脂肪細胞(adipose cell)」または「褐色脂肪細胞(adipocyte)」または「褐色脂肪組織(BAT)の細胞成分」とは、タンパク質LIPASIN(BETATROPHINとしても知られる)をコードする、遺伝子UCP1、ADIPOQまたはC19orf80(ANGPTL8またはLOC55908[プローブID 1430689としてイルミナ遺伝子発現マイクロアレイ上で同定された、受託番号NM_018687.3]のうちの1つ以上と共に脂肪細胞マーカーを発現する任意の細胞を指す。この用語は、COX7A1を発現する胎児又は成体褐色脂肪組織中に存在する成熟細胞を含むが、本発明の細胞は、成熟マーカーCOX7A1を発現しないが、そうでなければ機能的な褐色脂肪細胞であり、胚性前駆細胞から産生されるBAT細胞中でのNetrin G1発現(交感神経系による組織の神経支配を促進する)などの神経突起伸長促進因子の発現レベルがより高いため、胎児または成体由来褐色脂肪細胞と比較して治療的使用にとって望ましい。この用語はまた、前記神経支配を促進するために最も高いレベルのNetrin G1を発現する褐色脂肪細胞に部分的に分化する細胞も含む。
【0094】
用語「候補培養物」とは、クローン、オリゴクローン、またはプールされたクローン細胞を記載のように(Regen.Med.(2008)3(3), 287-308)単離し、増殖させることができる多様な胚性前駆細胞型の多能性幹細胞由来異種混合物を指す。前記候補培養物を、ユーザーの選択で、新しいクローン、オリゴクローン、またはプールされたクローン細胞の連続的再単離のために凍結保存することができる。
【0095】
用語「遺伝子Xを発現する細胞」、「遺伝子Xが細胞(もしくは細胞集団)中で発現される」、またはその等価物は、特定のアッセイプラットフォームを使用する細胞の分析が陽性の結果を提供したことを意味する。その逆もまた真である(すなわち、遺伝子Xを発現しない細胞、またはその等価物は、特定のアッセイプラットフォームを使用する細胞の分析が陰性の結果を提供したことを意味する)。かくして、本明細書に記載の任意の遺伝子発現結果は、示される遺伝子のためのアッセイプラットフォーム(または複数のプラットフォーム)において用いられる特定のプローブまたは複数のプローブと関係する。
【0096】
用語「細胞株」とは、in vitroで増殖および拡張することができる細胞の死に至る、または不死の集団を指す。
【0097】
用語「クローン(クローン性の)」とは、全て元の単一細胞に由来し、他の細胞を含有しない細胞の集団への、単一細胞の拡張によって得られる細胞の集団を指す。
【0098】
用語「コロニーin situ分化」とは、コロニーが未分化の幹細胞株として増殖した培養容器からコロニーを除去しない、または脱凝集化しない、in situでの細胞(例えば、hES、hEG、hiPS、hECまたはhED)のコロニーの分化を指す。コロニーin situ分化は、胚様体を形成する中間ステップを使用しないが、撹拌培養の使用などの胚様体形成または他の凝集技術がそれにも拘わらずコロニーin situ分化の期間に従う。
【0099】
多能性幹細胞から本発明の方法によって作製される細胞を参照して用いられる場合、用語「分化した細胞」とは、親の多能性幹細胞と比較した場合、全ての体細胞型に分化する能力が低下した細胞を指す。非限定例として、hES細胞などのヒト多能性幹細胞は、本発明のhES由来クローン胚性前駆細胞よりも分化度が低く、次いで、本発明のin vitroで産生された褐色脂肪前駆体よりも分化度が低く、胎児またはより後の分化段階の細胞のマーカーであるCOX7A1を発現する胎児または成体由来褐色脂肪細胞中の胎児または成体由来褐色脂肪細胞よりも分化度が低く、本発明の細胞は、COX7A1をまだ発現しない。本発明の分化した細胞は、さらに分化することができる細胞を含む(すなわち、それらは最終分化していなくてもよい)。
【0100】
用語「直接分化」とは、未分化細胞株としてhES細胞などの単離された未分化幹細胞を増殖させる中間状態なしに直接的に未分化状態にリプログラミングされる割球、桑実胚細胞、ICM細胞、ED細胞、または体細胞を分化させるプロセス(iPS細胞を作製するプロセスにおけるものなどであるが、その前にそのような細胞は未分化状態で精製されている)を指す。直接分化の非限定例は、培養物中での無傷のヒト胚盤胞の培養およびヒトES細胞株を生成しないED細胞の誘導であり、記載されている(Bongosら、1994. Human Reproduction 9:2110)。
【0101】
用語「胚様体」は、「凝集体」と同義の業界用語であり、多能性幹細胞が単層培養物中で過増殖するか、または懸濁培養物中で維持される場合に出現する分化細胞および未分化細胞の凝集物を指す。胚様体は、典型的には、形態学的基準によって識別可能ないくつかの胚葉および免疫細胞化学によって検出可能な細胞マーカーに由来する、異なる細胞型の混合物である。用語「胚性幹細胞」(ES細胞)は、未分化状態を維持しながら(例えば、TERT、OCT4、およびSSEAならびにその種のES細胞に特異的なTRA抗原を発現する)、細胞株として連続的に継代された胚盤胞、割球、または桑実胚の内細胞塊に由来する細胞を指す。胚盤胞、割球、桑実胚などを、in vitroの受精卵から取得することができる。ES細胞を、精子もしくはDNAを用いた卵細胞のin vitroでの受精、核移植、単為生殖から、またはMHC領域中に半接合性もしくは同型接合性を有するhES細胞を生成する手段によって誘導することができる。ES細胞は、歴史的には、着床前の胚に移植された場合、全ての体細胞型ならびに生殖系列に分化することができる細胞と定義されているが、ヒトを含む多くの種に由来する候補ES培養物は、培養物中でより平たい外見を有し、典型的には、生殖系列分化には寄与せず、したがって、「ES様細胞」と呼ばれる。ヒトES細胞は、現実的には、「ES様」であると一般的には考えられるが、本出願では、本発明者らはES細胞という用語を、ES細胞株とES様細胞株との両方を指すように使用する。
【0102】
「フィーダー細胞」または「フィーダー」は、第2の型の細胞が増殖することができる環境を提供するために、別の型の細胞と同時培養される1つの型の細胞を記載するように使用される用語である。ある特定の型の多能性幹細胞を、一次マウス胚性線維芽細胞、不死化マウス胚性線維芽細胞、胚性トリ線維芽細胞、またはhES細胞から分化したヒト線維芽細胞様細胞によって支持することができる。多能性幹細胞集団は、細胞が、新鮮なフィーダー細胞が細胞の増殖を支持するために添加されない分割後に少なくとも1ラウンドにわたって増殖された場合、フィーダー細胞を「本質的に含まない」と言われる。
【0103】
「増殖環境」は、目的の細胞がin vitroで増殖、分化または成熟する環境である。環境の特徴としては、細胞が培養される培地、存在してもよい任意の増殖因子または分化誘導因子、および存在する場合、支持構造(固相表面上の基質など)が挙げられる。
【0104】
ポリヌクレオチドが人工的操作の任意の好適な手段によって細胞中に導入された場合、または細胞がポリヌクレオチドを遺伝により受け継いだ元の変化した子孫である場合、細胞は、「遺伝的に変化した」、「トランスフェクトされた」、または「遺伝的に形質転換された」と言われる。ポリヌクレオチドは、目的のタンパク質をコードする転写可能な配列を含むことが多く、細胞はそのタンパク質を高レベルで発現することができる。遺伝的変化は、変化した細胞の子孫が同じ変化を有する場合、「遺伝性」と言われる。
【0105】
用語「ヒト胚由来」(「hED」)細胞とは、内細胞塊、胎盾、もしくは内胚葉のものを含む割球由来細胞、桑実胚由来細胞、胚盤胞由来細胞、または原始内胚葉、外胚葉、中胚葉、および神経堤を含む、初期胚の他の分化全能性もしくは多能性幹細胞ならびに正常なヒト発生の最初の8週の等価物と相関する分化の状態に至るその誘導体を指すが、細胞株として継代されたhES細胞に由来する細胞を除く(例えば、Thomsonの米国特許第7,582,479号; 第7,217,569号; 第6,887,706号; 第6,602,711号; 第6,280,718号; および第5,843,780号を参照されたい)。hED細胞を、精子もしくはDNA、核移植、またはクロマチン移入を用いる卵細胞のin vitroでの受精により産生される着床前の胚、単為生殖により単為生殖生物を形成するように誘導された卵細胞、または分析的リプログラミング技術から誘導することができる。
【0106】
用語「ヒト胚性生殖細胞」(hEG細胞)とは、体内の様々な組織に分化することができる、胎児組織の始原生殖細胞または卵母細胞および精原細胞などの成熟中もしくは成熟生殖細胞に由来する多能性幹細胞を指す。また、hEG細胞を、雌性発生またはアンドロゲン性手段、すなわち、多能性細胞が雄性または雌性起源のDNAのみを含有する卵母細胞に由来し、したがって、全ての雌性由来または雄性由来DNAを含む方法によって産生された多能性幹細胞から誘導することもできる(1999年10月28日に出願された米国特許出願第60/161,987号; 2000年10月27日に出願された米国特許出願第09/697,297号; 2001年11月29日に出願された米国特許出願第09/995,659号; 2003年2月27日に出願された米国特許出願第10/374,512号; 2000年10月27日に出願されたPCT出願第PCT/US/00/29551号を参照されたい)。
【0107】
用語「ヒト胚性幹細胞」(hES細胞」とは、IVF手順における胚盤胞の日常的な生産において廃棄されるものなどの、着床前ヒト胚から生成される多能性幹細胞の系列であるヒトES細胞を指す。
【0108】
用語「ヒトiPS細胞」とは、前記iPS細胞が、脱分化因子、例えば、hES細胞特異的転写因子組合せ:KLF4、SOX2、MYC、およびOCT4またはSOX2、OCT4、NANOG、およびLIN28への曝露後の変化した体細胞系列の細胞から誘導される免疫不全マウスに移植された場合に、3つ全ての胚葉(中胚葉、外胚葉及び内胚葉)に由来する少なくとも1つの細胞型を形成する能力を含む、hES細胞と類似する特性を有する細胞を指す。任意の都合のよい脱分化因子の組合せを用いて、iPS細胞を産生することができる。前記iPS細胞を、当業界で公知のようなレトロウイルス、レンチウイルスもしくはアデノウイルスベクターなどのベクターを介するこれらの遺伝子の発現によって、またはタンパク質としての因子の導入により、例えば、透過処理もしくは他の技術により産生することができる。そのような例示的方法の記載については、2006年8月3日に出願されたPCT出願第PCT/US2006/030632号; 米国特許出願第11/989,988号; 2000年6月30日に出願されたPCT出願第PCT/US2000/018063号; 2000年12月15日に出願された米国特許出願第09,736,268号; 2004年4月23日に出願された米国特許出願第10/831,599号; ならびに米国特許出願公開第20020142397号(「Methods for Altering Cell Fate」の表題の米国特許出願第10/015,824号); 米国特許出願公開第20050014258号(「Methods for Altering Cell Fate」の表題の米国特許出願第10/910,156号); 米国特許出願公開第20030046722号(「Methods for cloning mammals using reprogrammed donor chromatin or donor cells」の表題の米国特許出願第10/032,191号); および米国特許出願公開第20060212952号(「Methods for cloning mammals using reprogrammed donor chromatin or donor cells」の表題の米国特許出願第11/439,788号)を参照されたい。
【0109】
胚性幹細胞(hES細胞など)、胚性幹細胞様細胞(iPS細胞など)および他の多能性幹細胞ならびに上記の細胞型に由来する前駆細胞の全てを本発明の方法に従って使用することができることが理解されるであろう。用語「ICM細胞」とは、哺乳動物胚の内細胞塊の細胞または周囲の栄養外胚葉細胞と共に、もしくはそれを用いずにin vitroで培養された内細胞塊の細胞を指す。ICM細胞を、in vitroの受精卵から誘導することができる。
【0110】
用語「オリゴクローン」とは、同じ培養物中の他の細胞のものとは異なる形態または分化のマーカーの存在もしくは非存在などの類似する特徴を共有すると考えられる、細胞の小集団、典型的には、2~1000個の細胞を起源とする細胞の集団を指す。オリゴクローン細胞は、これらの共通の特徴を共有しない細胞から単離され、類似する細胞の元の集団から本質的に完全に誘導される細胞の集団を増殖、生成することができる。
【0111】
用語「多能性幹細胞」とは、神経堤を含む3つの一次胚葉である内胚葉、中胚葉、および外胚葉のいずれかの2つ以上の分化した細胞型に分化することができる哺乳動物細胞を指す。そのような細胞としては、hES細胞、割球/桑実胚細胞およびその誘導されるhED細胞、hiPS細胞、hEG細胞、hEC細胞が挙げられる。多能性幹細胞は、遺伝的に改変されているか、または遺伝的に改変されていなくてもよい。非限定例として、遺伝的に改変された細胞は、他の細胞型と混合した場合にその同定を容易にするための蛍光タンパク質などのマーカー、または拒絶なしに細胞を同種異系的に寛容することができる免疫監視と関連する遺伝子の改変を含んでもよい。
【0112】
用語「プールされたクローン」とは、2つ以上のクローン集団を混合して、クローン集団と類似するが、全ての細胞が同じ元のクローンに由来する集団ではない、遺伝子発現のマーカーなどのマーカーの均一性を有する細胞の集団を生成することによって得られる細胞の集団を指す。前記プールされたクローン系列は、単一の、または混合した遺伝子型の細胞を含んでもよい。プールされたクローン系列は、クローン系列が比較的早く分化するか、またはその増殖寿命の初期において望ましくない方法で変化する場合に特に有用である。
【0113】
本発明において「多能性幹細胞」と同義的に用いられる用語「始原幹細胞」とは、3つ全ての一次胚葉:内胚葉、中胚葉、および外胚葉、ならびに神経堤の細胞に分化することができる細胞を集合的に指す。ヒト始原幹細胞はしたがって、段階特異的胚抗原(SSEA)SSEA3およびSSEA4、ならびにTra-1-60およびTra-1-81と命名された抗体を用いて検出可能なマーカーを発現する(Thomsonら、Science 282:1145, 1998)。したがって、始原幹細胞の例としては、限定されるものではないが、ヒトもしくは非ヒト哺乳動物のES細胞もしくは細胞株、割球/桑実胚細胞およびその誘導されるED細胞、iPS、およびEG細胞、または単為生殖胚、雌性発生胚、もしくは核移植由来胚に由来する対応する細胞が挙げられる。
【0114】
用語「ユニバーサルドナー細胞(万能ドナー細胞)」とは、ベータ2ミクログロブリン(B2M)の両対立遺伝子の一方のノックアウト、HAL遺伝子のノックアウトなどのある特定の遺伝子の発現の調節、またはHLA-GもしくはHLA-H、またはCTLA4-IgおよびPD-L1の発現の増加、ならびに本明細書に包含されるか、もしくは当業界で公知の他の改変により免疫原性を低下させるように遺伝的に改変された後、前記細胞が低下した免疫原性を有する場合に研究および治療適用のために分化した細胞を生成するために使用される始原幹細胞に由来する細胞を指す。
【0115】
本明細書で用いられる場合、「対象(被験体)」は、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類ならびにネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウサギ、マウスおよびラットなどのげっ歯類などの任意の哺乳動物を含む、野生動物、家庭用動物および家畜などの非ヒト脊椎動物を含む。いくつかの実施形態においては、用語「対象」、「患者」または「動物」とは、雄性を指す。いくつかの実施形態においては、用語「対象」、「患者」または「動物」とは、雌性を指す。
【0116】
本明細書で用いられる用語「処置する」、「処置された」、または「処置すること」は、目的が望ましくない生理的状態、症状、障害もしくは疾患を防止すること、もしくは減速させること(軽減すること)、または有益な、もしくは望ましい臨床結果を得ることである、治療的処置または予防的もしくは防止的手段の両方を指してもよい。いくつかの実施形態においては、この用語は、処置することと防止することの両方を指してもよい。本開示の目的のために、有益な、または望ましい臨床結果としては、検出可能もしくは検出不可能なものであっても、または状態、障害もしくは疾患の増強もしくは改善であっても、限定されるものではないが、症状の軽減;状態、障害または疾患の程度の減少;状態、障害または疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと);状態、障害または疾患の開始の遅延または進行の減速;状態、障害または疾患状態の改善;および寛解(部分または完全)が挙げられる。処置は、過剰なレベルの副作用なしに臨床的に有意な応答を惹起することを含む。処置はまた、処置を受けない場合の予想される生存と比較して生存を延長することも含む。
【0117】
用語「組織再生」とは、喪失、損傷、または変性後の、組織、臓器、または他の身体構造、またはその一部の少なくとも部分的な再生、置換、回復、または再増殖を指し、前記組織再生は、本発明に記載の方法がなかったら起こらないものである。組織再生の例としては、軟骨、骨、筋肉、腱、および靱帯の再増殖を含む、切断された指または手足の再増殖、傷害または疾患に起因して失われた骨、軟骨、皮膚、または筋肉の傷痕を残さない再増殖と共に、組織または臓器が、組織もしくは臓器の正常なサイズまたは傷害もしくは疾患の前のそのサイズに近づくような、傷害を受けた、もしくは疾患を有する臓器のサイズおよび細胞数の増加が挙げられる。組織型に応じて、組織再生は、例えば、元々存在する細胞および/もしくは組織の再配置(例えば、細胞移動による)、成体体性幹細胞もしくは他の前駆細胞の分裂およびその子孫の少なくともいくつかの分化、ならびに/または細胞の脱分化、トランス分化、および/もしくは増殖などの、様々な異なる機構によって起こり得る。
【0118】
AdipoQ、GBP-28、またはapM1としても知られる、「アジポネクチン」または「ADIPOQ」は、ヒトにおいては、ADIPOQ遺伝子によってコードされるタンパク質である。アジポネクチンは、グルコース調節および脂肪酸酸化などのいくつかの代謝プロセスをモジュレートする。アジポネクチンは、脂肪組織から血流中に分泌され、そのホルモンレベルは体脂肪率、II型糖尿病、および冠動脈疾患と逆相関する(Yamamotoら、「Circulating adiponectin levels and risk of type 2 diabetes in the Japanese」、Nutr Diabetes. 2014 Aug 18;4:e130)。
【0119】
aP2またはAFABPとしても知られる「FABP4(脂肪酸結合タンパク質4)」は、脂肪細胞およびマクロファージ中で主として発現され、ヒトにおいてはFABP4遺伝子によってコードされる脂肪酸のための担体タンパク質である。脂肪酸結合タンパク質は、長鎖脂肪酸および他の疎水性リガンドに結合する低分子の高度に保存された細胞質タンパク質のファミリーである。FABPの役割は、脂肪酸の取込み、輸送、および代謝を含むと考えられる(Thumserら、「Fatty acid binding proteins: tissue-specific functions in health and disease」、Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2014 Mar;17(2):124-9)。
【0120】
ベータトロフィンまたはANGPTL8としても知られる「リパシン」は、ヒトにおいては、LOC55908、LIPASIN、またはBETATROPHIN(プローブID 1430689としてイルミナ遺伝子発現マイクロアレイ上で同定された、受託番号NM_018687.3)としても知られるC19orf80遺伝子によってコードされるタンパク質である。C19orf80は、膵臓ベータ細胞がマウスにおいて細胞分裂を受ける速度で増加することがわかった推定ペプチドホルモンである(Yiら、Betatrophin: a hormone that controls pancreatic beta cell proliferation, Cell. 2013 May 9;153(4):747-58)。ベータトロフィンcDNAのマウスへの注入は、おそらく膵島細胞での作用のため、血糖値の低下をもたらした(Yiら、Betatrophin: a hormone that controls pancreatic β cell proliferation, Cell. 2013 May 9;153(4):747-58)。
【0121】
サーモゲニンまたはSLC25A7としても知られる「UCP1(脱共役タンパク質1)」は、褐色脂肪組織のミトコンドリア中に認められ、ヒトにおいてはUCP1遺伝子によってコードされる脱共役タンパク質である。UCP1は、非震え熱産生による発熱に関与する(Golozoubovaら、Only UCP1 can mediate adaptive nonshivering thermogenesis in the cold, FASEB J. 2001,Sept 15 (11):2048-50)。UCP-1は、UCP-1を含まないミトコンドリア中で起こるように、電子輸送からの酸化的リン酸化を脱共役させ、ATPの代わりに熱を生成する(Fedorenkoら、「Mechanism of fatty-acid dependent UCP1 uncoupling in brown fat mitochondria」、Cell 2012 Oct12;151(2)400-13)。UCP1は、細胞膜上のベータ-3アドレナリン受容体上への交感神経系によるノルエピネフリンの放出によって開始されるシグナリングカスケードによって褐色脂肪細胞中で活性化される(Cannonら、「Brown adipose tissue function and physiological significance」、Physiol Rev.2004, 84, 277-359)。
【0122】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明が記載される特定の実施形態に限定されず、そのようなものとして、勿論、変化してもよいことが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって限定されるため、本明細書で用いられる用語が、特定の実施形態だけを記載するためのものであり、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0123】
値の範囲が提供される場合、本文が別途明確に記述しない限り、下限の単位の10分の1までの、その範囲の上限と下限の間のそれぞれの介在する値およびその記述される範囲の任意の他の記述されるか、または介在する値が、本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限と下限は、より小さい範囲に独立に含まれていてもよく、また、記述される範囲の任意の特に排除される限界に依存して、本発明に包含される。記述される範囲が限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界のいずれかまたは両方を含まない範囲も、本発明に含まれる。
【0124】
ある特定の範囲は、用語「約」が先行する数値と共に提示される。用語「約」は、それが先行する正確な数、ならびにこの用語が先行する数に近い、または近似的である数の文字通りの支援を提供するために本明細書で提供される。数が特定の記載される数に近いか、または近似的であるかどうかを決定する際に、近いか、または近似的な記載されていない数は、それが提示される文脈において、特に記載される数の実質的な等価物を提供する数であってもよい。
【0125】
別途定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業界の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似するか、または等価である任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において用いることもできるが、代表的な例示的方法および材料をここで説明する。
【0126】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、本文が別途明確に記述しない限り、複数の指示対象を含むことが指摘される。さらに、特許請求の範囲を、任意の選択的要素を排除するために起草することができることが指摘される。そのようなものとして、この記述は、特許請求の範囲の要素の記載、または「負の」限定の使用と共に、「単に」、「のみ」などのような排他的用語の使用のための先行詞として働くことが意図される。
【0127】
本開示を読む際に当業者には明らかであるように、本明細書に記載され、例示される個々の実施形態はそれぞれ、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離するか、またはそれと組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有する。任意の記載される方法を、記載される事象の順序で、または論理的に可能である任意の他の順序で実行することができる。
【0128】
省略形
BAT - 褐色脂肪組織
bFGF - 塩基性線維芽細胞増殖因子
BMP - 骨形成タンパク質
cGMP - 医薬品適正製造基準
CNS - 中枢神経系
CT - コンピュータ断層撮影
CTLA4-Ig - 細胞傷害性Tリンパ球抗原4-免疫グロブリン融合タンパク質
DMEM - Dulbeccoの改変Eagle培地
DMSO - ジメチルスルホキシド
DPBS - Dulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水
EC - 胎生期癌
EC細胞 - 胎生期癌細胞;hEC細胞はヒト胎生期癌細胞である
ECAPCs - 胚性皮膚脂肪細胞前駆細胞
ECM -細胞外マトリックス
ED細胞 - 胚由来細胞;hED細胞はヒトED細胞である
EDTA - エチレンジアミン四酢酸
EG細胞 - 胚性生殖細胞;hEG細胞はヒトEG細胞である。
EGF - 上皮増殖因子
ES細胞 - 胚性幹細胞;hES細胞はヒトES細胞である。本発明の目的のためのhES細胞を含むES細胞は、ヒト胚盤胞のICM細胞に対応するナイーブな状態、または平たい胚盤葉上層細胞(「ES様」細胞と呼ばれることもある)に対応するプライミングされた状態にあってもよい。
FACS - 蛍光活性化細胞選別
fBAT - 胎児由来褐色脂肪組織
FBS - ウシ胎仔血清
FCS - ウシ胎仔血清
30FDG - F18-フルオロデオキシグルコース
GMP - 製造管理および品質管理に関する基準
hED細胞 - ヒト胚由来細胞
hEG細胞 - ヒト胚性生殖細胞は胎児組織の始原生殖細胞に由来する幹細胞である。
hEP細胞 - ヒト胚性前駆細胞
hiPS細胞 - ヒト誘導多能性幹細胞は、SOX2、KLF4、OCT4、MYCなどのhES特異的転写因子、またはNANOG、LIN28、OCT4、およびSOX2によりコードされる遺伝子、RNA、もしくはタンパク質への曝露後の体細胞から得られるhES細胞と類似する特性を有する細胞である。
hES - ヒト胚性幹
hESC - ヒト胚性幹細胞
ICM - 哺乳動物胚盤胞段階の胚の内細胞塊
iPS細胞 - 誘導多能性幹細胞は、SOX2、KLF4、OCT4、MYCなどのES特異的転写因子、またはNANOG、LIN28、OCT4、およびSOX2への曝露後の体細胞から得られるhES細胞と類似する特性を有する細胞である。
ITS - インスリン、トランスフェリン、セレン
IVF - in vitroでの受精
MEM - 最少必須培地
MSC - 間葉系幹細胞
NHAC - 正常ヒト関節軟骨細胞
NT - 核移植
PBS - リン酸緩衝生理食塩水
PCR - ポリメラーゼ連鎖反応
PD-L1 - プログラム細胞死リガンド-1
PEGDA - ポリエチレングリコールジアクリレート
25PET - ポジトロン放出断層撮影
PNS - 末梢神経系
qRT-PCR - 定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
RFU - 相対蛍光単位
SCNT - 体細胞核移植
SFM - 無血清培地
SVF - 間質血管画分
TRF - 末端制限断片;制限エンドヌクレアーゼによる消化後のテロメアの消化の生成物
WAT細胞 - 白色脂肪組織細胞
【発明を実施するための形態】
【0129】
発明の詳細な説明
本発明は、褐色脂肪組織の高度に精製された細胞成分の大集団を生成する課題を、多能性幹細胞からそれらを効率的に分化させる方法を示すことによって解決する。
【0130】
ヒト誘導多能性幹細胞(hiPS)細胞、ヒト胚性幹(hES)細胞、およびヒト単為生殖多能性幹細胞(hPPS)および多能性を有する他の細胞などの多能性幹(pPS)細胞を、本明細書に記載のある特定の規定の条件下で一般的な分化を最初に開始させた後、伝統的な細胞培養容器中で接着細胞として細胞培養物中で単に拡張するか、またはスラリー中のビーズに接着させ、凍結保存し、再度拡張した後、本明細書に記載の技術を用いて分化させて、研究および治療にとって有用なBATの細胞成分を生成することができるクローン胚性前駆細胞またはプールされたクローン胚性前駆細胞、またはオリゴクローン胚性前駆細胞を拡張させることによって、工業規模でBATの正常な機能的細胞成分に分化させることができる。上記の製造技術において有用である因子の組合せを最適化するのに役立つ戦略が開発された。本発明の技術は、ADIPOQ、C19orf80、およびUCP1を発現するBAT細胞に分化することができる高度に富化された細胞の集団を産生することに向けられる。
【0131】
純度および同一性の必要な基準を満たす分化した細胞型を製造する手段が公知であるという条件で、hES細胞を無制限に増殖させることができ、遺伝的に改変して、既製品の同種異系細胞の生成を可能にする遺伝的改変の導入を可能にすることができ、次いで、望ましい治療的に有用な分化した細胞型の工業規模での製造をもたらすことができるため、hES細胞からBAT細胞を効率的に産生する方法の開発が重要である。したがって、本発明は、無限量のBAT細胞を生成するための使用することができる系を提供する。
【0132】
以下の開示は、本発明のBAT細胞を作製する方法の完全な説明を提供する。それは、これらの細胞を研究および医薬品開発において用いることができる方法の広範囲の例示を提供する。本開示はまた、若い脂肪、リポタンパク質、およびグルコース代謝を回復するためのBATの再生および再モデリングのための多能性幹細胞由来BAT細胞の使用のための医薬組成物、デバイス、および処置方法も提供する。
【0133】
均一な分化状態を示し、維持し、部位特異的なホメオボックス遺伝子発現を示す、ESおよびiPS細胞に由来する前駆細胞型を生成する改良された方法がますます必要になっている。脂肪細胞は、遺伝子発現における重要な部位特異的差異を有する細胞型の例である。発達したヒト体内の多様な型の脂肪細胞はそれぞれ、生理的恒常性を維持する独特の役割を有する。例えば、皮下脂肪は、いくつかの側面で内臓脂肪と異なる。皮下脂肪の場合、互いに異なる様々な部位特異的脂肪細胞が存在する。脂肪細胞は一般に、将来の代謝的必要性のためにエネルギーを保存する生理学的機能を提供するが、若い哺乳動物における肩甲骨の間、または鎖骨上もしくは頸部領域の中などの哺乳動物の背側面に一般的には限定される、褐色脂肪組織(BAT)または単に「褐色脂肪」と呼ばれる特殊な型の脂肪組織は、いくつかの点で、体内の他の場所の皮下脂肪中の白色脂肪細胞と異なる。代謝的に活性なBATは、造影剤としてグルコース類似体F18-フルオロデオキシグルコースを使用するPET/CT(FDG-PET/CT)によりアッセイされた場合、ヒト成人において検出可能であると報告されている(van der Lansら、「Cold-activated brown adipose tissue in human adults: methodological issues」、Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol, 2014, Jul 15;307(2)R103-13)。
【0134】
ここ20年で、BATは、発熱源として、ならびにエネルギー、脂質、およびリポタンパク質代謝を調節する器官として機能することが発見された。褐色脂肪細胞は、交感神経系(SNS)によって高度に刺激され、BAT熱発生はほぼ排他的にSNS刺激制御下にある(Cannonら、「Brown adipose tissue function and physiological significance」、Physiol Rev.2004, 84, 277-359)。BATはさらに、アジポネクチン(ヒトにおいてはADIPOQ遺伝子によってコードされる、AdipoQ、GBP-28またはaPM1としても知られる)、およびC19orf80(ヒトにおいてはC19orf80遺伝子によってコードされる、ベータトロフィンまたはANGPTL8としても知られる)などの重要なアジポカインを生成する内分泌器官として機能することができる(Shehzadら、「Adiponectin:regulation of its production and its role in human diseases」、Hormone, 2012, Jan-Mar,11(1):8-20)。褐色脂肪中に存在するある特定の細胞中で発現される、ミトコンドリア膜タンパク質UCP1(ヒトにおいてはUCP1遺伝子によってコードされる、サーモゲニンとしても知られる脱共役タンパク質1)は、BATによる熱発生をもたらす酸化的リン酸化の脱共役において重要であると考えられる(Fedorenkoら、「Mechanism of fatty-acid dependent UCP1 uncoupling in brown fat mitochondria」、Cell 2012 Oct12;151(2)400-13)。さらに、一般的に、「褐色」脂肪細胞および「ベージュ」脂肪細胞と呼ばれる、2つの異なる型の褐色脂肪細胞が存在する。褐色およびベージュ脂肪細胞は、異なる発生起源を有すると報告されており、褐色脂肪細胞は骨格筋分化を行うこともできるMYF5+前駆細胞に由来すると報告されており(Seale P, Bjork B, Yang Wら、PRDM16 controls a brown fat/skeletal muscle switch. Nature (2008); 454:961-968)、ベージュ脂肪細胞はMYF5-前駆細胞に由来すると報告されている(Wuら、「Beige adipocytes are a distinct type of thermogenic fat cell in mouse and human」、Cell, Jul20, 2012, 150(2)366-376)。
【0135】
本発明において用いられる場合、UCP1およびADIPOQまたはC19orf80のうちの1つ以上を発現する本発明の全ての細胞は、「褐色」脂肪細胞と呼ばれる。チアゾリジンジオンクラスの化合物などの低分子薬物(Avandiaとしても知られるロシグリタゾン)は抗糖尿病剤としての有用性を示してきたが、そのような化合物は重篤な副作用を有することも多い。したがって、治療レジメンとしての褐色脂肪細胞移植の概念が出現した。報告は、褐色またはベージュ脂肪細胞の喪失が、肥満、心血管疾患、高血圧、およびII型糖尿病と相関し、移植によるこれらの細胞の回復が非ヒト動物試験において肥満およびII型糖尿病を逆転させることができると提言している。しかしながら、これらの大きな、かつ高まっている健康問題の処置のためのヒトにおける移植にとって好適な工業規模での、UCP1ならびにアジポネクチンおよびC19orf80などの褐色脂肪組織により発現されるある特定のアジポカインを発現する褐色脂肪細胞成分の製造のための方法が依然として必要である。
【0136】
ヒト胚性前駆(hEP)細胞株のクローン増殖などの技術は、研究および治療における使用のための多様な組織型の局所原基に対応する精製された、拡張可能な細胞株の誘導を容易にすることができる。さらに、そのような規定の拡張可能な前駆細胞を中心とする研究の標準化は、研究室間での分化研究の再現性を改善することができる。
【0137】
本発明は、1)低レベルから検出不可能なレベルのアジポカインであるアジポネクチンおよびベータトロフィンを発現するUCP1を発現する褐色脂肪細胞;2)低レベルのUCP1を発現する、またはUCP1を発現しないアジポネクチン+、ベータトロフィン+脂肪細胞;3)fBAT細胞と同等のレベルでADIPOQおよびC19orf80を発現するUCP1を発現する褐色脂肪細胞、ならびに4)ITLN1またはITLN2を発現する血管内皮細胞;ならびにこれらの3つの細胞型と、自己脂肪由来SVFに由来する細胞を添加した、または添加していないコラーゲンおよびヒアルロン酸に基づくヒドロゲルとの組合せを含む、BAT組織の特定の細胞成分の製造のための方法および組成物を教示する。
【0138】
幹細胞の起源
本発明を、様々な型の幹細胞を用いて実施することができる。特に、本発明における使用にとって好適な幹細胞は、全て本明細書に記載のように機能する互換性供給源に由来する多能性幹細胞である。多能性幹細胞は、胚盤胞などの卵母細胞、または分析的リプログラミング技術によってリプログラミングされた体細胞の活性化後に形成される細胞であってもよい。非限定例は、以下に例示されるような、胚性幹細胞または胚性生殖細胞の一次培養物または確立された細胞株である。
【0139】
本発明の技術を、一次胚組織または胎児組織を用いて直接的に実行し、未分化細胞株を最初に確立することなく、軟骨細胞を生じる能力を有する一次細胞から直接的に軟骨細胞を誘導することもできる。
【0140】
多能性幹細胞
哺乳動物多能性幹細胞は、神経堤を含む、3つの一次胚葉である内胚葉、中胚葉、および外胚葉のいずれかの2つ以上の分化した細胞型に分化することができる。本発明の目的のために、そのような細胞は、ヒト誘導多能性幹細胞、単為生殖により活性化された卵母細胞(すなわち、精子細胞による受精なしに活性化される卵細胞)に由来するヒト単為生殖幹細胞、ヒト胚性幹細胞、胎児生殖隆起に由来するヒト胚性生殖細胞、およびいくつかのヒト胚性癌細胞を含む。多能性幹細胞を、遺伝的に改変するか、または遺伝的に改変しなくてもよい。非限定例として、遺伝的に改変された細胞は、他の細胞型と混合した場合にその同定を可能にするための蛍光タンパク質などのマーカー、または細胞が拒絶なしに同種異系的に寛容される免疫監視に関する遺伝子の改変を含んでもよい。
【0141】
胚性幹細胞を、霊長類種のメンバーの胚盤胞(米国特許第5,843,780号; Thomsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7844, 1995)ならびに桑実胚段階の胚、および胚盤の胚盤葉上層から単離することができる。ヒト胚性幹(hES)細胞を、Thomsonら(米国特許第6,200,806号; Science 282:1145, 1998; Curr. Top. Dev. Biol. 38:133 ff., 1998)およびReubinoffら、Nature Biotech. 18:399, 2000により記載された技術を用いてヒト胚盤胞細胞から調製することができる。
【0142】
簡単に述べると、IVF手順の日常的な経過において生成される過剰のヒト着床前胚を用いるか、または1細胞のヒト胚を、胚盤胞段階に拡張することができる(Bongsoら、Hum Reprod 4:706, 1989)。胚を、G1.2およびG2.2培地中で胚盤胞段階まで培養する(Gardnerら、Fertil. Steril. 69:84, 1998)。透明帯を、プロナーゼ(Sigma)への簡単な曝露によって発生した胚盤胞から除去する。胚盤胞をウサギ抗ヒト脾臓細胞抗血清の1:50希釈液に30min曝露した後、DMEM中で5分間、3回洗浄し、モルモット補体(Gibco)の1:5希釈液に3分間曝露する免疫手術によって、内細胞塊を単離する(Solterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72:5099, 1975)。DMEM中でさらに2回洗浄した後、穏やかなピペッティングによって無傷の内細胞塊(ICM)から溶解した栄養外胚葉細胞を除去し、有糸分裂が不活化されたマウス、ヒト、または鳥類線維芽細胞フィーダー層上にICMを塗布する。
【0143】
9~15日後、1mM EDTAを含むカルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)への曝露、ジスパーゼもしくはトリプシンへの曝露、またはマイクロピペットを用いる機械的解離のいずれかによって、内細胞塊由来伸長物を塊に解離した後、新鮮な培地中のフィーダー細胞上に再塗布する。未分化形態を有する増殖中のコロニーを、マイクロピペットによって個別に選択し、塊に機械的に解離し、再塗布する。ESのような形態は、見かけ上高い核:細胞質比および顕著な核小体を有するコンパクトなコロニーを特徴とする。次いで、得られるES細胞を、簡単なトリプシン処理、DulbeccoのPBS(2mM EDTAを含有する)への曝露、IV型コラゲナーゼ(約200U/mL; Gibco)への曝露により、またはマイクロピペットによる個々のコロニーの選択により、1~2週間毎に日常的に分割する。約50~100個の細胞の塊サイズが最適である。
【0144】
体細胞のリプログラミング
リプログラミング培地の調製:
TGFbスーパーファミリーに由来するサイトカインの含有はリプログラミングにとって阻害的であり得るため、ヒト胚性幹細胞(hESC)培養のために開発された多くの培地はRNAリプログラミングを支援しない。Pluriton Reprogramming Medium(Stemgent)の使用は、RNAリプログラミングを支援する。さらに、正規のヒト新生児包皮線維芽細胞(Global StemからのNUFF-RQ)をリプログラミングしながらPluriton Mediumを条件付けることは、リプログラミング効率を増加させることができる。リプログラミングを開始する1週間前に、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM(DMEM 10% FCS)中にT175組織培養処理フラスコあたり250万個のNUFFを播種し、5%CO2酸素正常インキュベータ中で一晩培養する。次の日、培地を交換し、PBSで1回洗浄し、除去した後、照射されたNUFF上に25mlのPluriton Mediumを載せる。培地を収集し、5日間にわたってそれぞれの日に25mlの新鮮なPluriton Mediumを補充する。4℃で毎日の画分を保存し、プールした後、0.5μmの低接着フィルターを通して濾過して、細胞破片を除去する。次いで、条件付けられたPluriton Mediumを使用するか、または使用まで凍結保存することができる。
【0145】
リプログラミングのためのヒト線維芽細胞の調製:
患者生検試料に由来するヒト真皮線維芽細胞を、RNAを用いてiPS細胞に容易にリプログラミングすることができる。リプログラミングを開始する前に、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM(DMEM 10% FCS)中にT175組織培養処理フラスコあたり250万個の真皮線維芽細胞を播種し、5%CO2酸素正常(21%O2)インキュベータ中で一晩培養する。培養物を80%集密まで増殖させた後、プレートから0.05%トリプシンEDTA溶液を含む単一細胞溶液中に解離させる。DMEM 10% FCSでトリプシンを不活化し、25,000個の細胞/mlの密度でDMEM 10% FCS培地中に再懸濁する。Matrigel(Corning)で予め被覆された6ウェルプレートの1つのウェル上に、50,000個の標的線維芽細胞を再播種し、5%CO2低酸素(3~5%O2)インキュベータ中で一晩培養する。
【0146】
リプログラミング培地へのヒト線維芽細胞の移行:
マイクロRNAのカクテルをトランスフェクトされたヒト真皮線維芽細胞は、Oct4をコードするmRNAによるその後のリプログラミングをより受け入れやすい。DMEM 10% FCS培地を除去し、PBSで1回洗浄した後、300ng/mlの組換えB18Rタンパク質(eBioscience)を添加した、ウェルあたり2mlの条件付けられたPluriton Mediumと交換する。培地を平衡化させるために、少なくとも2時間、5%CO2低酸素(3~5%O2)インキュベータ中にプレートを再び入れる。
【0147】
ヒト線維芽細胞へのRNAのトランスフェクション:
マイクロRNAのカクテルを1回ヒト真皮線維芽細胞にトランスフェクトした後、Oct4、Sox2、Klf4、c-MycおよびLin28(OSKML)合成mRNAのカクテルをその後毎日トランスフェクトすると、全体のRNAリプログラミング効率を改善することができる。マイクロRNAトランスフェクション複合体を調製するために、2つの別々のチューブ中で、3.5μlのマイクロRNAカクテル(Stemgent)を21.5μlのStemfectバッファーに添加し、4μlのStemfectトランスフェクション試薬を21μlのStemfectバッファーに添加する。2つを合わせ、室温で15分間静置する。50μlのマイクロRNAトランスフェクション複合体を、B18Rを含有する条件付けられたPluritonリプログラミング培地2ml中のヒト線維芽細胞の1つのウェルに滴下様式で添加する。旋回させて混合し、一晩のトランスフェクションのためにプレートを5%CO2低酸素(3~5%O2)インキュベータ中に再び入れる。次の日、吸引し、B18Rを含有するリプログラミング培地2mlで置き換え、mRNAカクテルによるトランスフェクションを進行させる。
【0148】
mRNAトランスフェクション複合体を調製するために、(3:1:1:1:1:1比のOSKML)に由来する1μgの総mRNAを含有する10μlのmRNAリプログラミングカクテル(Stemgent)を、15μlのStemfectバッファーに添加する。別々のチューブ中で、4μlのStemfectを21μlのStemfectバッファーに添加する。2つを合わせ、室温で15分間静置する。50μlのmRNAトランスフェクション複合体を、B18Rを含有する条件付けられたPluritonリプログラミング培地2ml中のヒト線維芽細胞の1つのウェルに滴下様式で添加する。旋回させて混合し、一晩のトランスフェクションのためにプレートを5%CO2低酸素(3~5%O2)インキュベータ中に再び入れる。
【0149】
ヒト線維芽細胞からのRNAリプログラミングされたiPS細胞株の単離:
この毎日のmRNAのトランスフェクションを、さらに7~9回のトランスフェクションにわたって繰り返す。一度、一次iPSコロニーが明らかとなったら停止し、培地を、E8(Life Technologies)などの規定のフィーダーを含有しない培地に交換する。一次コロニーを手動で拾い、最後のトランスフェクションの24~48時間以内にMatrigel上のE8などのフィーダーを含有しない培養系上で継代して、いかなるウイルスまたはDNA夾雑物も含有しないクローン性の安定なRNAリプログラミングされたiPS細胞株を拡張することができる。さらなる拡張および特徴付けは、ヒトESまたはIPS細胞株について継続して、核型安定性および多能性の保持を証明することができる。
【0150】
未分化状態のヒト多能性幹細胞の増殖
iPS細胞またはhES細胞などのヒト多能性幹細胞を、分化を促進することなく増殖を促進する培養条件を用いて、培養物中で連続的に増殖させることができる。例示的な血清含有ES培地を、80%DMEM(ノックアウトDMEM、Gibcoなど)、20%の規定のウシ胎仔血清(FBS、Hyclone)または血清代替物(WO98/30679)、1%非必須アミノ酸、1mM L-グルタミン、および0.1mMベータメルカプトエタノールを用いて作製する。使用直前に、ヒトbFGFを4ng/mLとなるように添加する(WO 99/20741、Geron Corp.)。
【0151】
伝統的には、ES細胞は、フィーダー細胞、典型的には、胚組織または胎児組織に由来する線維芽細胞の層上で培養される。前記フィーダー細胞は、ヒト、鳥類、またはマウス起源のものであってもよい。マウスの場合、マウス胚を妊娠の13日目にCF1マウスから収獲し、2.0mLのトリプシン/EDTAに移し、細かく刻み、37℃で5.0分間インキュベートする。10%FBSを添加し、破片を沈降させ、90%DMEM、10%FBS、および2mMグルタミンを含む組織培養容器に細胞を移す。フィーダー細胞層を調製するために、細胞を照射して、増殖を阻害するが、ES細胞を支持する因子の合成を可能にする(4000radのガンマ線照射)。培養プレートを0.5%のゼラチンで一晩被覆し、ウェルあたり375,000個の照射されたマウス胚性線維芽細胞を播種し、播種の5時間~4日後に使用する。ヒト多能性幹細胞を播種する直前に、培地を新鮮なhES培地で置き換える。
【0152】
また、ヒト多能性幹細胞を、フィーダー細胞を用いなくても未分化状態で維持することもできる。フィーダーを含有しない培養のための環境は、好適な培養基質、特に、Matrigel、HyStem、またはラミニンなどの細胞外マトリックスを含む。多能性幹細胞を、15,000個の細胞/cm2より高い密度で播種する(最適には、90,000個の細胞/cm2~170,000個の細胞/cm2)。典型的には、細胞が完全に分散する前(コラゲナーゼIVを用いて約5min)に、酵素的消化を停止させる。次いで、約10~2,000個の細胞の塊を、さらに分散させずに基質上に直接播種する。あるいは、PBS中の0.5mMの溶液中で培養容器を約minインキュベートするか、または小さい細胞質:核領域比を有する比較的未分化の細胞を含有するコロニーを機械的に吸引することによって、プレートが集密に達する前に、細胞を、酵素を用いずに収獲することができる。培養容器から洗浄した後、さらに分散させずに細胞を新しい培養物中に播種する。無フィーダー培養を、分化させずに細胞の増殖を支援する因子を含有する栄養培地によって支援する。照射された(約4,000rad)一次マウス胚性線維芽細胞、テロメア化されたマウス線維芽細胞、または多能性幹細胞に由来する線維芽細胞様細胞などの、そのような因子を分泌する細胞を用いて培地を条件付けることによって、そのような因子を培地中に導入することができる。20%血清代替物および4.0ng/mLのbFGFを添加したKO DMEMなどの無血清培地中に、約5~6x104個の細胞/cm2の密度でフィーダーを播種することにより、培地を条件付けることができる。1~2日間条件付けられた培地に、bFGFをさらに添加し、これを用いて、多能性幹細胞培養物を1~2日間支援する。あるいは、またはさらに、FGF-2またはFGF-4受容体のためのリガンド、c-kitのためのリガンド(幹細胞因子など)、gp130、インスリン、トランスフェリン、脂質、コレステロール、ヌクレオシド、ピルビン酸塩、およびベータ-メルカプトエタノールなどの還元剤と関連する受容体のためのリガンドなどの、分化せずに増殖を支援するのに役立つ他の因子を添加してもよい。無フィーダー培養法の特徴は、国際特許出願公開WO01/51616;およびXuら、Nat. Biotechnol.19:971, 2001にさらに考察されている。
【0153】
比較的未分化の多能性幹細胞が望ましく、顕微鏡下で、それらは高い核/細胞質比、顕著な核小体、および認識できる細胞間結合があまりないコンパクトなコロニー形成を示すと考えられる。霊長類のES細胞は、段階特異的胚抗原(SSEA)3および4、ならびにTra-1-30 60およびTra-1-81(Thomsonら、Science 282:1145, 1998)と命名された抗体を使用して検出可能なマーカーを発現する。マウスES細胞を、SSEA-1のための陽性対照として、また、SSEA-A、Tra-1-60、およびTra-1-81のための陰性対照として用いることができる。in vitroでの多能性幹細胞の分化は、SSEA-4、Tra-1-60、およびTra-1-81発現の喪失、ならびにSSEA-1発現の増加をもたらし、これは未分化のhEG細胞上でも認められる。
【0154】
本発明の親細胞株ならびにその特徴付けおよび分化
本発明を通じて、E3、E72、E75、C4ELS5.1、C4ELSR2、およびNP110SMと本明細書で指定されるものなどの特定のヒトES細胞由来クローン性胚性前駆細胞株に関するデータが提示される。さらに、実施例6および7は、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40と指定されるヒトES細胞由来クローン性前駆細胞株に関する。本発明の細胞のための組成物、方法、および使用は、異なる継代レベルのこれらの同一の細胞株、ならびに臨床等級のGMPに適合する製造条件で製造された前記前駆細胞株を含む、本明細書に記載の同じ遺伝子発現パターンを有する、多能性幹細胞由来クローン性、プールされたクローン性、およびオリゴクローン性胚性前駆細胞にも適用される。
【0155】
本発明で記載される全ての多能性幹細胞由来クローン性胚性前駆細胞株は、SK1を除いて、多能性幹細胞株Envy(Costaら、The hESC line Envy expresses high levels of GFP in all differentiated progeny, Nat Methods 2(4):259-260 (2005))に由来するものであり、細胞を比較的未分化の前駆細胞状態に維持するために、連続的トリプシン処理およびゼラチンで被覆された標準的な細胞培養容器中での継代によって拡張されたものであった。SK1細胞株は、同様の様式であるが、hESC株H9(WA09)に由来するものであった。NP88 SM、NP111 SM、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31、NPCC SM36、NP92 SM、NP91 SM、NP93 SM、NP95 SM、およびNP113 SM株の前記拡張のための培養培地は、5%ウシ胎仔血清、0.5ng/mlのEGF、2.0ng/mlの塩基性FGF、および5.0μg/mlのインスリンの増殖添加物を含むMCDB131培地であった。SK1およびESI-004-EP SK8n拡張のための培養培地は、2mMのグルタマックス、および10,000U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、5%FCS、50μg/mLのウシフェツイン、10ng/mLの組換えEGF、1.0ng/mLの組換えbFGF、10μg/mLの組換えインスリン、0.4μg/mLのデキサメタゾン、および2.0mMのGlutaMAX-1添加物を含有する基本MCDB120培地であった。
【0156】
次いで、ゼラチンで被覆された標準的な細胞培養容器中で細胞を拡張し、上記の拡張培地から、供給業者によって提供された10%の正常な増殖添加物を含む同じ培地に変更することによって5日間休止に誘導した。したがって、休止培地は、PromoCell Smooth Muscle Cell Medium 2(カタログ番号97064)であったか、またはあるいは、供給業者によって推奨される10%の正常濃度、もしくは0.5%ウシ胎仔血清、0.05ng/mlのEGF、0.2ng/mlの塩基性FGF、および0.5μg/mlのインスリンの、PromoCell GmbH(Heidelberg、Germany)から得られた(MCDB131培地)および増殖添加物(カタログ番号39267)であった。RNAを、本明細書で「対照」または「Ctrl」と呼ばれることもある条件である5日間休止に誘導された細胞から抽出した場合、細胞は、分化した(脂肪細胞)状態とは反対に、前駆細胞状態にある細胞について記載された遺伝子発現マーカーのパターンを示した。
【0157】
細胞のBAT細胞への分化を誘導するために本明細書に記載される条件で7~21日間分化させた場合の本発明のBAT前駆細胞は、同じ条件で分化させた培養fBAT細胞と同等であるか、またはそれより高いレベルで、FABP4(受託番号NM_001442.1、Illumina Probe ID 150373)、およびCD36(受託番号NM_000072.2、Illumina Probe ID 3310538)などの一般的な脂肪細胞マーカー、ならびにUCP1(受託番号NM_021833.3、Illumina Probe ID 4390348)、LIPASIN(ANGPTL8またはC19orf80またはLOC55908としても知られる(受託番号NM_018687.3、Illumina Probe ID 1430689))、およびADIPOQ(受託番号NM_004797.2、Illumina Probe ID 4200471)などのBAT特異的マーカーの発現を誘導する。最も高いレベルのBATマーカーは、1.0μmのロシグリタゾン、2.0nMのT3ホルモン + 最後の4時間の10μMのCL-316,243の存在下で観察され、HyStemビーズ中に埋め込まれ、後者は架橋チオール化ヒアルロン酸及びゼラチンから構成されていたが、細胞を10ng/mLのBMP4または100ng/mLのBMP7の存在下でも培養した場合、より高いレベルの細胞生存能力が観察された。
【0158】
in vivoでの機能的な生着を意図されるBAT細胞にとって、細胞が交感神経系による神経支配を動員することが重要である。最適な神経支配のために、生着した細胞に、軸索誘導分子としても知られる、Netrin G1を添加する。Netrin G1(NTNG1)は、脊椎動物神経系発生の間に軸索誘導の合図として作用する保存されたタンパク質ファミリーに属する(Nakashibaら、2000(PubMed 10964959)。
【0159】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NP88は、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NP88胚性前駆細胞クローン細胞株は、DIO3、DLK1、ZIC2、SLC1A3およびSBSNを発現するが、COX7A1を発現せず、HOXA5、IL13RA2、DLX5、CRABP1、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない。NP88、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0160】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NPCC SM19は、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NPCC SM19胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXA2、HOXB2、HOXA5、DLK1、NEFM、およびRBP1を発現するが、COX7A1を発現せず、ZIC2、DLX5、PRG4、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。NPCC SM19、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0161】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NPCC SM23は、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NPCC SM23胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXA2、ZIC2、THY1およびEFNB2を発現するが、COX7A1を発現せず、DLK1、PPP1R1B、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない。NPCC SM23、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0162】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NPCC SM28は、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NPCC SM28胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXA2、HOXB2、DLK5、およびZIC2を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXA5、NEFM、PRG4、およびRBP1のうちの1つ以上を発現しない。NPCC SM28、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0163】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NPCC SM31は、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NPCC SM31胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXA2、DLK1、DLX5、PRG4、およびZIC2を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXB2、HOXA5、GPC4、NEFM、IL13RA2、NTNG1およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。NPCC SM31、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0164】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NPCC SM36は、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NPCC SM36胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXA2、RBP1、およびZIC2を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXB2、HOXA5、NEFM、PRG4、DLX5、IL13RA2、CRABP1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。NPCC SM36、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0165】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NPCC SM31は、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NPCC SM31胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXA2、DLK1、DLX5、PRG4、およびZIC2を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXB2、HOXA5、GPC4、NEFM、IL13RA2、NTNG1、およびSBSNのうちの1つ以上を発現しない。NPCC SM31、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0166】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NPCC SM27は、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NPCC SM27胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXA2、ZIC2、CD24、およびRBP1を発現するが、COX7A1を発現せず、DLK1、PPP1R1B、NEFM、およびGPC4のうちの1つ以上を発現しない。NPCC SM27、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0167】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NP78 ENは、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NP78 EN胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXA5、SNAP25、THY1、PAPLN、ZIC2、およびDLK1を発現するが、COX7A1を発現せず、RBP1、NEFM、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない。NP78 EN、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0168】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NP92 SMは、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NP92 SM胚性前駆細胞クローン細胞株は、DLK1、DLX5、GPC4、およびTHY1を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXA2、HOXB2、HOXA5、およびSNAP25のうちの1つ以上を発現しない。NP92 SM、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0169】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NP93 SMは、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NP93 SM胚性前駆細胞クローン細胞株は、SNAP5、PRG4、SBSN、GPC4、およびDLK1を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXA2、HOXA5、HOXB2、およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない。NP93 SM、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0170】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NP113 SMは、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NP113 SM胚性前駆細胞クローン細胞株は、ALDH1A2、SBSN、CPVL、ZIC2、およびTHY1を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXA2、HOXA5、HOXB2、RBP1およびCRABP1のうちの1つ以上を発現しない。NP113 SM、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0171】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NP91 SMは、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NP91 SM胚性前駆細胞クローン細胞株は、BARX1、EPDR1、GPC4、EFNB2、およびDLK1を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXA2、HOXB2、HOXA5、ZIC2、CRABP1、およびDLX5のうちの1つ以上を発現しない。NP91 SM、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0172】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株SK1は、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。SK1胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXC6、PAPLN、THY1、RBP1およびEFNB2を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXA5、ZIC2、およびNEFMのうちの1つ以上を発現しない。SK1、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0173】
多能性幹細胞由来胚性前駆細胞クローン細胞株NP111 SM、NP77 EN、NP80-EN、およびNP85 ENは、本明細書で、PPARガンマアゴニストの存在下での褐色脂肪細胞系列への細胞の決定にとって十分な条件下で、および十分な期間にわたって分化させた場合、褐色脂肪細胞に分化することが示された。分化した細胞株は、褐色脂肪細胞を同定するUCP1マーカーを発現する。NP111 SM、NP77 EN、NP80-EN、およびNP85 EN胚性前駆細胞クローン細胞株は、HOXC6、PAPLN、THY1、RBP1、およびEFNB2を発現するが、COX7A1を発現せず、HOXA5、ZIC2、およびNEFMのうちの1つ以上を発現しない。NP111 SM、NP77 EN、NP80-EN、およびNP85 EN、ならびに実施例3で考察される他の胚性前駆細胞クローン細胞株のための分化時間は、約2日~約21日;約5日~19日;約9~約17日;または約11日~15日であってもよい。
【0174】
マトリックスがチオール改変ゼラチンであり、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)とin vivoもしくはin vitroでチオール化ヒアルロナン架橋されたHyStem-C (BioTime,Inc.Alameda、CA)などのヒドロゲル中で、または、研究および治療適用のために前記マトリックスを含まない代替マトリックスもしくは溶液中で、細胞を製剤化することができる。例えば、脂質異常症の処置のためなどの脂質障害の処置のため、またはI型もしくはII型糖尿病のための治療モダリティとしてのベータ細胞増殖の誘導のための細胞の移植のために、細胞をHyStem-C(BioTime, Inc.Alameda、CA)中で製剤化し、脂質の治療的に有用な低下またはベータ細胞および関連するインスリンの誘導を引き起こすように計算された用量で皮下移植することができる。
【0175】
免疫原性が低下した親細胞株および子孫細胞株
本発明の様々な実施形態において、同種異系拒絶を軽減するために親細胞株および子孫細胞株の免疫原性を低下させるためのいくつかの方法を、細胞分化の前または後に用いることができる。理想的には、免疫拒絶からドナー系を保護することにより、レシピエントにおける毒性免疫拒絶防止薬の必要性を低下させる、または排除する、万能ドナー親細胞株を得ることができる。
【0176】
ヒト白血球抗原(HLA)分子は、多くの細胞中に存在する細胞表面タンパク質である。それらは高度に多型性であり、疾患と戦い、異物を排除するための免疫系に対して抗原を提示するために用いられる。クラスI HLAは、細胞表面発現にとって必須であるマクログロブリン(B2M)と、HLAクラスI重鎖サブユニットHLA-A、B、C、E、F、またはGとの2つの主要なサブユニットから構成されるヘテロ二量体である。クラスI HLA-A、BおよびCは、主要組織適合決定基であり、ドナー間で一致している必要がある。クラスI HLA分子は、外来ペプチドを提示する重要な決定基であり、細胞傷害性T細胞を活性化して外来細胞を破壊する。HLAクラスIIタンパク質(HLA-DP、DQおよびDR)は、抗原提示細胞によって用いられ、B細胞による抗体の産生を刺激して、外来抗原を排除する。
【0177】
いくつかの方法を用いて、ドナー細胞に応答するレシピエントの免疫系のモジュレーションを最小化または排除することができる。第1の方法は、ドナーのHLA型と、レシピエントのHLA型とを一致させることにある。本発明の一実施形態においては、全ての可能なHLAバリアントの全部またはサブセットを代表する純粋な選択されたHLA型のライブラリーにある一連の親細胞株を用いることができる。これは、それぞれのクローン系がレシピエント群と、対応するHLA型とを一致させる、様々なHLA型を代表するクローン由来細胞の大きなライブラリーの生成を必要とする。
【0178】
代替的な手法は、免疫系への異物抗原の提示を担うHLA対立遺伝子の除去にある。個々のHLA対立遺伝子を、個別に、または全てのHLAクラスIに共通であり、細胞表面発現にとって必要であるベータ-2ミクログロブリン(B2M)をノックアウトすることによりノックアウトすることができる(Riolobos, L.ら、HLA engineering of human pluripotent stem cells. Mol Ther 21, 1232-1241 (2013))。発現にとって必要な必須転写因子遺伝子RFXANKをノックアウトすることにより、HLAクラスII分子を抑制することができる(DeSandro, A.M., Nagarajan, U.M.およびBoss, J.M. Associations and interactions between bare lymphocyte syndrome factors. Mol Cell Biol 20, 6587-6599 (2000))。ナチュラルキラー(NK)細胞によるクラスI陰性細胞の破壊の可能性を回避するために、ドナー細胞を、NK細胞活性化を阻害することが証明された非多型性HLA分子(HLA-E)を発現するように操作することができる(Lee, N.ら、HLA-E is a major ligand for the natural killer inhibitory receptor CD94/NKG2A. Proc. Natl. Acad Sci USA 95, 5199-5204 (1998))。
【0179】
当業界で周知のいくつかの技術を、様々なHLA対立遺伝子をノックアウト/編集するために用いることができ、これは当業者には明らかである。それらは、裸の、または相同組換えによって様々な遺伝子を特異的に置き換えるか、もしくは編集するために用いられる担体ウイルスもしくはリポソーム中に封入された様々なDNAベクターを含んでもよい。あるいは、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどの他の発現ノックアウト手法を、単独で、または他のノックアウト手法と組み合わせて用いることができる。
【0180】
ドナー細胞の免疫原性を低下させるために用いることができる別の方法は、HLA-Gを過剰発現するように細胞を操作することにある。HLA-Gは、妊娠中に胎盤細胞によって発現され、免疫抑制特性を付与する。HLA-G改変細胞および方法は、PCT/US2013/05757特許出願に記載されている。
【0181】
また、他の免疫モジュレーション戦略を本発明の様々な実施形態において用いて、同種異系レシピエントにおけるドナー細胞の長期的生着を最大化することもできる。T細胞活性化を抑制することを目的とする方法が、ヒト同種異系移植のマウスモデルにおいて拒絶を軽減するためにRongら(An effective approach to prevent immune rejection of human ESC-derived allografts. Cell Stem Cell 14, 121-132 (2008))によって上手く用いられてきた。彼らの手法は、T細胞活性化を阻害することが知られる、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)およびプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)を過剰発現させることにある。
【0182】
本発明のある特定の実施形態においては、長期的生着が長期的な臨床利益を提供するために重要である場合、免疫拒絶を回避または抑制するドナー細胞が明確な利点である。さらに、本発明の好ましい実施形態においては、本明細書に記載の方法によって操作されたヒトiPS細胞またはES細胞株などの、万能親多能性幹細胞株は、異なるレシピエントの様々な遺伝的バックグラウンドと一致する複数の子孫株を開発する必要性、または毒性免疫抑制薬への依存を軽減する。
【0183】
褐色脂肪細胞を生じることができる前駆細胞
以下に記載の様々な実施形態において、本発明は、褐色脂肪細胞型を生じる前駆細胞、例えば、単離された前駆細胞株を提供する。いくつかの実施形態においては、前駆細胞は、様々な褐色脂肪細胞によって発現される1つ以上のマーカーを発現する細胞に分化することができる。本発明の任意の特定の褐色脂肪細胞型によって発現される例示的マーカーとしては、以下のもの:FABP4、C19orf80、ADIPOQ、UCP1、PCK1、NNAT、THRSP、CEBPA、CIDEAの1つ以上が挙げられる。成体または胎児起源に由来するin vivo由来褐色脂肪細胞に対応するヒトへの移植後の完全な成熟細胞中では、COX7A1が発現される。しかしながら、COX7A1は、本発明の前駆細胞またはin vivoでの移植前のin vitroの前記前駆細胞に由来する褐色脂肪細胞成分中では発現されず、本発明の褐色脂肪細胞が、胎児または成体の分化段階とは反対に胚に対応する分化の初期段階にあり、当業界で以前には記載されていないことを反映する。
【0184】
いくつかの実施形態においては、本発明は、C19orf80を発現する単離された細胞株を提供する。いくつかの実施形態においては、本発明は、UCP1を発現する単離された前駆細胞株を提供する、いくつかの実施形態においては、本発明は、C19orf80とUCP1とを発現する細胞の組合せ製剤を提供する。
【0185】
単離された前駆細胞株、例えば、褐色脂肪細胞を生じる単離された前駆細胞株は、多能性幹細胞のin vitroで分化した子孫であってもよい。褐色脂肪細胞を、下記の好適な培養条件下で単離された前駆細胞株を分化させることによって取得することができる。したがって、本発明の褐色脂肪細胞は、それが誘導された親細胞と本質的には同じゲノムを有してもよい。親細胞は、下記の前駆細胞株、または下記の前駆細胞の多能性前駆細胞であってもよい。下記の前駆細胞の多能性前駆細胞の例としては、hES細胞などのES細胞、ヒトiPS細胞などのiPSなどが挙げられる。かくして、いくつかの実施形態においては、本発明の褐色細胞細胞は、その多能性親細胞または細胞株と約95%、96%、97%、98%、99%同一であるゲノムを有してもよい。本発明のいくつかの実施形態においては、本発明の褐色脂肪細胞は、その多能性親細胞または細胞株と90%を超えて、93%を超えて、94%を超えて、95%を超えて、96%を超えて、97%を超えて、98%を超えて、99%を超えて同一であるゲノムを有するであろう。
【0186】
前駆細胞株
前駆細胞および前駆細胞株は、本明細書では互換的に用いられ、少なくとも5回の継代にわたって増殖させることができるが、それにも拘わらず、致死的であり、テロメアの短縮のため、最終的には老化する細胞の培養物を指す。本発明のある特定の実施形態は、前駆細胞株、前駆細胞株を作製する方法および前駆細胞株を使用する方法を提供する。前駆細胞株は、いくつかの実施形態においては、胚性幹細胞(例えば、hES細胞などのES細胞またはiPS細胞)のin vitroでの子孫などの子孫であってもよい。ES細胞またはiPS細胞を、霊長類などの哺乳動物から取得することができる。一実施形態においては、ESまたはiPS細胞は、ヒト起源のものである。前駆細胞を、WiCellまたはBioTime,Inc.などの細胞バンクから入手可能な確立されたES細胞株から取得することができる。前駆細胞を、胚またはin vitroの受精卵を破壊することなく生成されたES細胞株から取得することができる(Chungら、Cell Stem Cell (2008) 2:113)。
【0187】
前駆細胞は、クローンまたはオリゴクローン前駆細胞株を含んでもよい。前駆細胞は、複数回の継代を通して培養物中で複製する能力を有してもよい。本発明のいくつかの実施形態においては、前駆細胞を、約1~100回、約5~90回、約10~80回、約20~70回、約30~60回、約40~50回継代することができる。いくつかの実施形態においては、前駆細胞を、約5回、約10回、約11回、約12回、約13回、約14回、約15回、約16回、約17回、約18回、約19回、約20回、約21回、約22回、約23回、約24回、約25回継代することができる。
【0188】
ある特定の実施形態においては、本発明は、ヒトなどの動物の体内に見出される細胞に分化する能力を有する前駆細胞株を提供する。例えば、前駆細胞が典型的に維持される培養条件を変化させることによって、分化を誘導することができる。例えば、増殖因子、サイトカイン、マイトジェンなどを添加するか、または培養培地から除去することができる。
【0189】
いくつかの実施形態においては、前駆細胞は、多能性細胞である。いくつかの実施形態においては、前駆細胞は多能性細胞ではない。いくつかの実施形態においては、前駆細胞は間葉系幹細胞(MSC)ではない。いくつかの実施形態においては、前駆細胞は、CD74などの間葉系幹細胞に見出される1種以上のマーカーまたはCOX7A1などの胎児もしくは成体起源に由来する細胞マーカーを発現しない。いくつかの実施形態においては、前駆細胞は、MSC上に見出される発現レベルよりも低いレベルでMSC上に見出される1種以上のマーカーを発現する。本発明のいくつかの実施形態においては、前駆細胞は、CD74を発現しない。本発明のいくつかの実施形態においては、前駆細胞は、MSC上に見出されるレベルよりも低いレベルでCD74を発現する。いくつかの実施形態においては、前駆細胞株は、軟骨細胞または軟骨前駆細胞によって発現される1種以上の遺伝子を発現する。
【0190】
ある特定の実施形態においては、本発明は、C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、およびNP110SMと命名された細胞株から選択される前駆細胞を提供する。他の実施形態においては、本発明は、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40と命名された細胞株から選択される前駆細胞株を提供する(実施例6および7を参照されたい)。
【0191】
さらに他の実施形態においては、本発明は、DLK1 (受託番号NM_003836.4、Illumina ID 6510259)、HOXA5 (受託番号NM_019102.2、Illumina ID 6620437)、SLC7A14 (受託番号NM_020949.1、Illumina ID 6100717)、NTNG1 (受託番号NM_014917.2、Illumina ID 6940053)、HEPH (受託番号NM_138737.1、Illumina ID 1850349)、PGM5 (受託番号NM_021965.3、Illumina ID 4480112)、IL13RA2 (受託番号NM_000640.2、Illumina ID 5420386)、SLC1A3 (受託番号NM_004172.3、Illumina ID 4210403)、およびSBSN (受託番号NM_198538.1、Illumina ID 4480477)から選択される1種以上の遺伝子を発現するNP110SM細胞株の遺伝子発現パターンを有する前駆細胞株を提供する。いくつかの実施形態においては、本発明は、MKX (受託番号NM_173576.1、Illumina ID 6620017)、NNAT (受託番号NM_181689.1、Illumina ID 4010709)、HOXD11 (受託番号NM_021192.2、Illumina ID 5290142)、およびDHRS9 (受託番号NM_005771.3、Illumina ID 630315)から選択される1種以上の遺伝子を発現しないNP110SM細胞株の遺伝子発現パターンを有する前駆細胞を提供する。前駆細胞株は、比較的高いレベルのBAT遺伝子発現マーカーUCP1を同時に発現し、ならびに比較的高いレベル遺伝子発現マーカーLOC55908 (TD26、ベータトロフィン、C19orf80) (受託番号NM_018687.5、Illumina ID 1430689)、CIDEC (受託番号NM_022094.2、Illumina ID 780309)、UCP2 (受託番号NM_003355.2、Illumina ID 6580059)、ELOVL6 (受託番号NM_024090.1、Illumina ID 5670040)、(受託番号、Illumina ID )、CKMT1A (受託番号15 NM_001015001.1、Illumina ID 3420661)、およびADIPOQ (受託番号NM_004797.2、Illumina ID 4200471)を発現する高度に精製された褐色脂肪細胞の集団に分化する能力を有し、褐色脂肪細胞に分化するように誘導された培養されたヒト胎児BAT由来細胞と同様であるが、前脂肪細胞または分化した脂肪細胞状態にある前記ヒト胎児BAT由来細胞と違って、NP110SMと命名された前記hES細胞由来クローン胚性前駆細胞株に由来する褐色脂肪細胞は、未分化または分化状態のいずれにおいてもCOX7A1を発現せず、前記ヒト胎児BAT由来細胞が褐色脂肪細胞に分化するように誘導された場合に、比較的高いレベルのCIDEAの発現を誘導する培養されたヒト胎児BAT由来細胞と違って、NP110SMと命名された前記hES細胞由来クローン胚性前駆細胞株を14日間にわたって褐色脂肪細胞に分化させた場合、細胞は比較的低いか、または検出不可能なレベルの遺伝子発現マーカーCIDEA(受託番号NM_001279.2、Illumina ID 10048)を発現する。
【0192】
ある特定の実施形態においては、成体由来細胞は、研究および治療のためのBAT細胞の製造において有用であってよい。高レベルの循環ケトン体などに曝露された個体に由来する冠動脈平滑筋細胞などの動脈平滑筋細胞は、アルコールを有意に長期に摂取した個体中に存在してもよく、本明細書に開示される方法を用いてBAT細胞分化を行うことができる。さらに、BAT細胞分化を行うことができる前記平滑筋細胞を、テロメラーゼ(TERT)の触媒成分の外因性発現によって一過的または永続的に不死化し、それによって、前記前駆細胞のBAT細胞への工業的拡張を可能にすることができる。同様に、胎児または成体BAT組織由来前脂肪細胞を、テロメラーゼ(TERT)の触媒成分の外因的発現によって一過的または永続的に不死化し、それによって、前記前駆細胞のBAT細胞への工業的拡張を可能にすることができる。
【0193】
下記の前駆細胞株はいずれも、下記の方法において用いることができる。例えば、前駆細胞株を、TGF-ベータスーパーファミリーのメンバーと接触させ、分化するように誘導することができる。下記の前駆細胞株を、レチノイン酸と接触させ、分化するように誘導することができる。下記の前駆細胞株を、PPARγのアゴニストまたはアンタゴニストと接触させ、分化するように誘導することができる。下記の前駆細胞株を、T3またはT4などの甲状腺ホルモンと接触させ、分化するように誘導することができる。下記の前駆細胞株を、エピネフリンまたはノルエピネフリンなどのアドレナリン作動性ホルモンと接触させ、分化するように誘導することができる。下記の前駆細胞株を、実質的には37℃以下の温度でインキュベートして、分化するように誘導することができる。前駆細胞株を、TGF-βスーパーファミリーのメンバー、レチノイン酸、PPARγのアゴニスト、アドレナリン作動薬、および甲状腺ホルモンなどの分化剤を用いて、または用いずに、下記のように、実質的に正常体温以下の温度でヒドロゲル中で培養することができる。
【0194】
hPS細胞からの精製された体細胞前駆体の拡張性を改善するために、本発明者らは、部位特異的ホメオボックス遺伝子発現を示す精製された細胞型の供給源としての140を超える多様なクローンヒト胚性前駆細胞(hEP)株の生成を以前に報告した。本発明者らは、これらの新規細胞株がin vitroで広く増殖する能力を示し、続いて、多様な増殖因子および誘導因子に応答して分化することができるため、それらを「胚性前駆細胞」と命名した。したがって、この用語は、多能性細胞と、最終的に分化した細胞型との間の中間分化状態にある細胞を指す。
【0195】
本明細書に開示されるある特定の実施形態においては、褐色脂肪細胞を生成するのに有用な遺伝子発現パターンを示す部位特異的脂肪細胞に分化することができるクローン胚性前駆細胞株の相対的部位特異的遺伝子発現が、TGFβ3を含むTGF-ベータタンパク質、BMP2、4、6、および7を含む骨形成タンパク質(BMP)、GDF5を含む増殖分化因子(GDF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、アクチビン、レフティ、ミュラー管抑制物質(MIS)、インヒビン、ならびにノダルなどの、1種以上のTGF-ベータスーパーファミリーメンバーの存在下で分化させた場合に、その多様な応答の開示と共に提供される。
【0196】
さらに他の実施形態においては、本発明は、微量培養された、またはヒドロゲル中で培養された、前駆細胞株C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40または本明細書に記載のようなC4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40の遺伝子発現パターンを示す細胞株を含む細胞培養物を提供する。細胞培養物は、TGFβ3を含む1種以上のTGF-ベータタンパク質、BMP2、4、6、および7を含む骨形成タンパク質(BMP)、GDF5を含む増殖分化因子(GDF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、アクチビン、レフティ、ミュラー管抑制物質(MIS)、インヒビン、ならびにノダルを含んでもよい。
【0197】
したがって、本発明は、第1および第2の細胞集団を含む組成物であって、第1の細胞集団が、第2の集団が誘導される比較的未分化のクローン、プールされたクローン、またはオリゴクローンの胚性前駆細胞を含み、第2の集団が、第1の細胞集団のin vitroで分化した子孫を含み、第2の細胞集団の細胞が、培養されたfBAT細胞と同等のレベルで、FABP4およびUCP1、C19orf80、またはADIPOQのいずれかを発現する、前記組成物を記載する。
【0198】
ITLN1またはITLN2を発現するクローン胚性血管内皮細胞
別の実施形態においては、hESまたはiPS細胞などの多能性幹細胞をin vitroで分化させて、オメンチン1(ITLN1)またはインテレクチン-2(ITLN2)を発現する血管内皮細胞を生成し、SVF、ヒドロゲル、または本発明の褐色脂肪前駆体と共に使用する。前記ITLN1またはITLN2を発現する内皮細胞を、アクチビン-AおよびWNT-3A、次いで、FGF-4およびBMP-2の存在下で生成した後、血管内皮細胞の増殖を支援することができる培地の存在下で、Matrigel、ゼラチン、または同様の支持培養支持体上でモノクローナル細胞系列としてクローニングする。より具体的には、hESまたはiPS細胞を、線維芽細胞フィーダー細胞上でコロニーとして培養し、KO血清置換したInvitrogen KO-DMEMなどのES細胞培養培地中で13日間にわたってin situで過剰増殖および分化させる。次いで、分化の0日目(図6)に、培地を、KO-DMEM/RPMI-1640(5/1 v/v)を含む基本分化培地に交換し、前記基本分化培地に、100ng/mLのアクチビンAおよび25ng/mLのWnt3Aを添加する。2日目の開始時(図6中では1日目と指定されている)に、およびその後の2日間にわたって、培地を、100ng/mLのアクチビンAのみを添加した前記基本分化培地と交換する。次いで、4日目の開始時(図6では3日目と指定されている)に、培地を、30ng/mLのFGF4および20ng/mLのBMP2を添加した前記基本分化培地と交換する。8日目の開始時(図6中では7日目と指定されている)に、細胞を、PBS中で2回洗浄し、Accutaseを用いて脱凝集化し、SB431542などのTGFβシグナリング阻害剤を添加した血管内皮細胞の増殖を支援することができる培地中、Matrigelで被覆されたプレート上に播種する。前記内皮培地の非限定例は、5.0ng/mLのVEGF-A、5.0ng/mLのFGF-2、0.75IU/mLのヘパリン、2%のFBSを添加したMCDB131、例えば、製造業者によって通常推奨され、完全キット(カタログ番号C-22022)または細胞基本培地(カタログ番号C-22221)として販売される濃度の添加物を含み、増殖添加物(カタログ番号C-39221)およびSB431542などのTGFβシグナリング阻害剤を含むPromocell内皮MV2培地である。細胞を、連続的クローン細胞株を誘導する目的で拡張し、凍結保存することができる、候補培養物の機能的ストックとして拡張する。候補培養物を、Matrigelまたは内皮細胞の培養のための好適な基質で被覆された15cmの組織培養皿中に約500および2,000個の細胞で播種し、見える細胞コロニーまで増殖させた後、クローニングシリンダーの使用などの当業界で公知の様々な手段によって単離し、その後、同じ培地およびマトリックス中で拡張される細胞株として連続的に増殖させ、将来の使用のために凍結保存する。
【0199】
前記細胞、特に、細胞を拒絶なしに永続的に生着させて、限定されるものではないが、PECAM1、CDH5(VE-カドヘリン)、およびvWFなどの血管内皮マーカーを発現する、iPS細胞から産生されたものなどの、本明細書に記載のユニバーサルドナー細胞を産生することができるような様式で産生された細胞の使用は、移植された脂肪組織における血流を増加させるため、および治療効果のためにITLN1(オメンチン)またはITLN2を発現させるための移植を含む。特に有用なものは、比較的高レベルのITLN1(オメンチン)またはITLN2を発現するクローン、プールされたクローン、またはプールされたオリゴクローン内皮細胞株であり、II型糖尿病患者、高齢患者、またはX症候群患者にインスリンに対する感受性の増大を付与するのに有用である。前記ITLN1発現内皮細胞株を、ヒドロゲル、SVFおよび本発明の細胞と共に同時注入して、さらに前記患者における血管形成を促進し、炎症経路を減少させ、インスリン感受性を増大させることができる。前記細胞の用量は、患者間で変化するが、患者中のオメンチンの血清または血漿レベルを測定することによって容易に決定することができる。報告されているように(Zhongら、Acta Pharmacol Sin 32: 873-878)、血清オメンチンレベルは、正常な患者においては約254ng/ml +/- 72.9ng/mlであり、急性冠動脈症候群を有する患者においては113ng/mlであり、安定狭心症を有する患者においては155ng/mlであることが観察される。正常患者における血漿レベルは、370ng/mLであるとも報告されており(de Souza Batistaら、Diabetes 56: 1655-1661)、この差異は、アッセイ技術の差異に起因する可能性がある。用量は、注入部位および患者の疾患状態によって変化するが、典型的には、HyStem-c(BioTime、Alameda、CA)などの、架橋ヒアルロン酸およびゼラチンから構成されるヒドロゲルなどの好適なバッファーまたはマトリックス中で製剤化された、1x106~1x109個の細胞/患者である。
【0200】
クローン胚性前駆細胞株の命名:
C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163株および類似する遺伝子発現パターンを示す細胞を含む、下記の研究において用いられたヒト胚性前駆細胞株の多くは、以前に記載されている(例えば、両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20120171171号および第20100184033号を参照されたい)。さらに、BATの細胞成分に分化することができるEYA4を発現する細胞も記載されている(「Improved Methods of Screening Embryonic Progenitor Cell Lines」の表題のWO2011/150105、ならびに「Methods of Screening Embryonic Progenitor Cell Lines」の表題の米国特許出願第13/683,241号を参照されたい)。クローン胚性前駆細胞株BP110SMおよび類似する遺伝子発現パターンを示す細胞は、米国特許出願公開第2015/0275177号に記載されている。細胞株の命名法は、バイオインフォマティクス分析の結果得られる名称の操作から得られる小さい改変を表す同義語と共にその代替的な指定を含み、例えば、「-」の「.」への置換およびその逆、アラビア数字で始まる細胞株名の前の「x」の含有、ならびに同じ株の凍結アンプルを解凍し、増殖させ、平行分析において用いた事例の例である同じ株の生物学的複製物を示す「bio1」または「bio2」などの接尾辞および所与の細胞株から単離されたRNAが、解凍することなく、またはそうでなければ細胞の新しい培養を開始することなく、反復分析のための第2の時間用いられる技術的複製物を含む「Rep1」または「Rep2」を含む。細胞株の継代回数(細胞がトリプシン処理され、再播種された回数である)は、通常、文字「P」、次いで、アラビア数字で指定され、対照的に、集団倍加時間(細胞株が1個の細胞からのクローン拡張において受けた倍加の推定回数を指す)は、文字「PD」、次いで、アラビア数字で指定される。継代におけるPDの回数は実験間で変化したが、一般的には、それぞれのトリプシン処理および再播種は、1:3~1:4の比(それぞれ、1.5および2のPDの増加に対応する)であった。クローンの拡張において、元のコロニーを、上記のように、クローニングシリンダーを用いて組織培養プレートから取り出し、24ウェルプレート、次いで、12ウェル、および6ウェルに移した。第1の集密な24ウェルをP1と指定し、第1の集密な12ウェル培養物はP2であり、第1の6ウェル培養物はP3であり、次いで、6ウェル培養物を、第2の6ウェルプレート(P4)およびT25(P4)に分割した。P4での第2の6ウェルを、RNA抽出のために使用し(その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20100184033号を参照されたい)、約18~21PDのクローン拡張を表す。典型的な推定5回のその後の継代およびPDは、T75フラスコへの以下の分割(19.5~22.5PD)であり、T225フラスコへの細胞のP6継代(21~24PD)、次いで、P7はローラーボトルへの細胞の移動(850cm2、23~26PD)であり、P8は4つのローラーへの分割である(25~28PD)。上記で括弧内に示される範囲は、細胞サイズ、付着効率、および計数誤差に起因する細胞計数の推定範囲を表す。
【0201】
クローン、プールされたクローン、オリゴクローン、およびプールされたオリゴクローン細胞株の増殖
本発明の態様は、単一の細胞に由来する胚性前駆細胞株(クローン)またはクローン化された細胞株が、遺伝子発現マーカーなどの識別可能なマーカーを有し、培養物中の細胞数を増加させるために単一細胞培養物を産生するために混合される、もしくは細胞株が少数、典型的には、2~1,000個の類似細胞から産生され、細胞株として拡張されるオリゴクローンであることを意味する「プールされたクローン」である細胞株、または遺伝子発現パターンなどの識別可能なマーカーを有する2つ以上のオリゴクローン細胞株を混合することによって産生される株である「プールされたオリゴクローン」株である細胞株を同定し、分化させるための方法を提供する。次いで、前記クローン、プールされたクローン、オリゴクローン、またはプールされたオリゴクローン細胞株を、それらが固定された基質からの細胞の除去、典型的には、元の細胞数の1/3~1/4の低い密度での細胞の再播種によってin vivoで増殖させて、さらなる増殖を容易にする。前記細胞株およびその関連する細胞培養培地の例は、2009年7月16日に出願され、「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」の表題の米国特許出願第12/504,630号;およびWestら、2008, Regenerative Medicine vol. 3(3) pp. 287-308に開示されている。本発明の組成物および方法は、記載のようにであるが、クローン拡張の21回を超える倍加にわたって培養された前記細胞株に関する。
【0202】
胎児由来褐色脂肪細胞と同等の遺伝子発現パターンおよび分化能力を有するクローン胚性前駆細胞株を単離する方法
ヒトES細胞などのヒト多能性幹細胞を、50ng/mlのFGF2(Strathmann、130-093-842)を添加した、または添加しない、20%FCS(Invitrogen、16000)、1x非必須アミノ酸(Invitrogen、カタログ番号12383-014)、2mM L-グルタミン(Invitrogen、カタログ番号25030-081)、1%インスリントランスフェリンセレン添加物(Invitrogen、カタログ番号41400-045)、および0.1mM β-メルカプトエタノール(Invitrogen、カタログ番号21985-023)を添加した高グルコースを含むDMEM(Invitrogen、カタログ番号11960-044)からなるhES細胞培養培地中、マウス胚性線維芽細胞フィーダー細胞上で維持する。維持し、拡張するために、hES細胞を、手動の微小切開により、または1mg/mlのコラゲナーゼNB6(Serva、17458)を使用する酵素的解離によって継代する。
【0203】
BAT前駆細胞誘導のためのhES細胞の初期分化
NP110SM株の遺伝子発現プロファイルを有するクローン前駆細胞を単離することができるストック培養物として機能する候補培養物の生成のための調製において、細胞を初期分化させる。以下に提供される例においては、hES細胞株hES3(Envy)を、1mg/mlのコラゲナーゼと共に60分間インキュベートした後、皿を穏やかにタップして、懸濁液中にhES細胞コロニーを放出させた。これらのコロニーを収集し、磨砕して、小さい塊を生成し、胚様体(EB)形成のために超低接着度プレート(CoStar、Corning、カタログ番号3471)中に播種した。Glutamax I(Invitrogen、カタログ番号10565-018)およびビタミンA(Invitrogen、カタログ番号12587-010)を添加しない1xB27添加物を含み、500ng/ml組換えヒトNoggin(R&D systems、カタログ番号3344-NG-050)および20ng/ml bFGF(Strathmann、130-0930842)を添加したDMEM/F12(以後、「NP(-)」培地と呼ぶ)からなるニューロン分化培地中でEBを形成させた。次の21日にわたって、消費された培地を48時間毎に除去し、500ng/ml Nogginおよび20ng/ml bFGFを添加した新鮮な培地をEBに添加した。21日目に、消費された培地を除去し、20ng/ml bFGFのみを添加した新鮮な培地をEBに添加した。別途記述しない限り、試薬はInvitrogenを起源とするものであった。ニューロンEB形成は、培養物中で明らかであった。
【0204】
ストック候補培養物の生成
クローン単離のための候補培養物を生成するために、22日目(FGF2のみの培養の1日後)の上記のEBを、37℃で10分間、Accutase(Innovative Cell Technologies、AT-104)で解離させた後、磨砕して、単一細胞懸濁液を生成した。PBS中の細胞懸濁液を4本のチューブに分割し、各アリコートをNP(-)培地(上記のもの)+20ng/ml bFGF(本明細書ではNP(+)培地と指定される)で希釈した。細胞を180gで5分間遠心分離し、ペレットを、NP(+)培地中、6ウェル組織培養プレートの1個のウェルに播種した。最初の播種の24時間後に、次いで、その後、週に3回、培地を交換した。集密時に、6ウェルプレート中の細胞を、TrypLE(Invitrogen、カタログ番号12563-029)を用いて、37℃で5分間解離させ、集密細胞のT225拡張段階に達するまで数週間にわたって、NP(+)培地中、T25フラスコ、T75フラスコおよびT225フラスコである徐々に大きくなる組織培養容器中に再播種した。次いで、T225フラスコ中の集密細胞の候補培養物を、TrypLEを用いて解離させ、計数し、この単一細胞懸濁液のアリコートを、NP(+)培地中に10,000細胞/mlの濃度に希釈し、これをT225段階候補培養段階までの培養のために用いた。次いで、単一細胞懸濁液のアリコートを、NP(+)培地中の0.1%ゼラチン被覆(Sigma、カタログ番号G1393)15cm皿中に、クローン希釈率(15cm皿中に50mlあたり500~7000個の細胞)で播種した。候補培養物からの残りの細胞を、制御された速度の冷凍庫プログラムならびに凍結保存および将来の使用のための凍結培地を用いて凍結保存した(典型的には、3x106~5x106細胞/バイアル)。
【0205】
候補培養物からのクローン胚性前駆細胞株の生成
50mlの上記のNP(+)培地をゼラチン被覆(0.1%)15cm培養皿に添加することにより、クローニング皿を調製した。次いで、各皿に、NP(+)培地中で増殖させた候補培養物からの単一細胞懸濁液の調製物を、15cmの培養皿に添加することによって手動で希釈し、以下の細胞希釈率:500細胞/皿、または1000細胞/皿または1500細胞/皿または3000細胞/皿、5000細胞/皿または7000細胞/皿の選択となるように細胞の懸濁液を計数することによって細胞の容量を決定して、異なる密度の単一細胞懸濁液を達成し、単一細胞から増殖した単一コロニーの単離を補助した。あるいは、自動細胞沈着ユニットを用いて単一細胞として細胞を分散させるか、または前記自動沈着を、フローサイトメトリーを用いるモノクローナル抗体に基づく免疫選択またはNP110SM細胞上に存在する抗原について富化された細胞を選択するために磁気ビーズにコンジュゲートされた抗体を含む、当業界で公知のフロー選別または他のアフィニティ精製技術に従って使用することができる。そのような抗原は、がん/精巣抗原19としても知られる、CD213A2としても知られる、インターロイキン13受容体、アルファ2(IL13RA2)を含んでもよい。
【0206】
細胞の手動による希釈の場合、上記の密度のいずれか3つを有する3つの別々の皿を最適化し、個別の、容易に単離できる単一コロニーを、胚性前駆細胞株としての単離および拡張について観察することができる。インキュベータ内部で約30秒間、15cmの皿を交互に時計回りにスライドさせた後、反時計回りにスライドし、次いで、左右交互に(左から右の)動かし、次いで、前方および後方に繰り返し動かすことによって、適切な希釈率の播種された単一細胞を、皿中に均等に分配した。次いで、皿をCO2インキュベータ(5%CO2、20%O2)中でインキュベートし、14日間、動かすか、または供給することなく静置して、単一細胞を培養皿表面に付着させ、コロニーを単離にとって十分なサイズまで増殖させた。NP110SM細胞によって24~48時間予め条件付けられたNP(+)培地を用いて、得られるコロニーの増殖の回数および速度を増加させることができる。
【0207】
皿を視覚的に検査し、よく分離された細胞コロニーを、6mmのシリンダーについては25μlのTrypLE、8mmのシリンダーについては50μlのTrypLEおよび10mmのシリンダーについては100μlのTrypLEを用いて、滅菌クローニングシリンダー(Sigma、カタログ番号CLS31666、CLS31668およびCLS316610)で拾った。次いで、それぞれの単離された細胞コロニーを、1mlのPromocell平滑筋細胞増殖培地2またはその等価な培地(本明細書ではSM培地と命名される)を含有する0.1%ゼラチン被覆24ウェルプレート(Nunc、142475)のそれぞれの1個のウェルに播種した。この方法の例では、単離された胚性前駆細胞を、SM培地中でさらに培養する。集密時に、24ウェルプレート中の細胞を、37℃で5分間、TrypLEを用いて解離させ、数週間にわたってSM培地中、6ウェルプレートの1個のウェル、T25フラスコ、T75フラスコおよびT225フラスコである徐々に大きくなる組織培養容器中に再播種した(各継代間は平均1~2週間)。T225フラスコ中の集密細胞を凍結乾燥し、単離された胚性前駆細胞株として預け、免疫染色およびRNA単離のため、例えば、クローン細胞株NP110SMのもののような遺伝子発現パターンを示す細胞のための1回目のスクリーニングとしてHOXA5およびIL13RA2のための転写物のPCR増幅のために播種した。
【0208】
褐色脂肪組織の細胞成分への分化の能力について胚性前駆細胞をスクリーニングする方法 クローン多能性幹細胞由来胚性前駆細胞もしくは前記クローン細胞株のプールされた集団などの細胞、または前記前駆細胞のオリゴクローン培養物は、単純に、それらが単一の細胞からクローン的に拡張された元の培地中で細胞を連続的に継代することにより、また、細胞が集密に達する直前の継代で1:2または1:4分割などのより低密度で細胞を脱凝集させ、再播種することにより直接拡張可能な細胞培養物であり、それによって、高密度で起こり得る望ましくない分化を防止する。次いで、前記細胞を、本明細書に記載の分化条件に曝露することができる。非限定例として、hES細胞由来クローン胚性前駆細胞株を、分化培地が、追加の10ng/mlのBMP4を含む、または含まない、1.0μMのロシグリタゾン、および2.0nMのトリヨードチロニン(T3)を添加された本明細書に記載のHyStem Bead分化条件で培養することができる。次いで、プレートを周囲O2および10%CO2を含む37℃の加湿インキュベータ中に入れ、細胞に14~21日間にわたって週に3回供給した。使用前の最後の4時間にわたって、10μMのCL-316,243を培養培地に添加した。好ましくは、分化の条件および時間は、多様なクローン胚性前駆細胞によって一定である。次いで、分化した細胞を、遺伝子発現リポーター構築物、免疫細胞化学を含む当業界で公知の方法により、ならびにPCRもしくは遺伝子発現マイクロアレイによる前記試料中のRNAの単離およびmRNA転写物の分析により、分化のマーカーについてアッセイすることができる。FABP4(受託番号NM_001442.1、Illumina ID 150373)およびCD36(受託番号NM_000072.2、Illumina ID 3310538)を発現する試料は、脂肪細胞系列に分化すると考えられる。FABP4などの脂肪細胞マーカーを発現し、遺伝子BETATROPHIN(受託番号NM_018687.3、Illumina ID 1430689)(C19ORF80、LOC55908、およびC19Orf80としても公知である)を同時に発現する前記細胞培養物を、ヒットと考えることができ、したがって、褐色脂肪組織細胞の前駆体のための候補であると考えることができる。
【0209】
前駆細胞を分化させる方法
ある特定の実施形態においては、本発明は、hEP細胞などの、in vitroの前駆細胞を、出発前駆細胞と比較して、より分化した状態(例えば、下記の前駆細胞の1つ以上の分化した子孫など)に分化させる方法であって、前駆細胞を、TGFβスーパーファミリーの1種以上のメンバーと接触させることを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態においては、TGFβスーパーファミリーメンバーを、TGFβ3を含むTGF-ベータタンパク質、BMP2、4、6、および7を含む骨形成タンパク質(BMP)、GDF5を含む増殖分化因子(GDF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、アクチビン、レフティ、ミュラー管抑制物質(MIS)、インヒビン、ならびにノダルから選択することができる。前駆細胞は、以下に開示される任意の前駆細胞であってもよい。一実施形態においては、前駆細胞は、C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40細胞株または本明細書に記載のようにC4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40の遺伝子発現パターンを示す細胞株から選択される。
【0210】
他の実施形態においては、本発明は、hEP細胞などの、in vitroの前駆細胞を、出発前駆細胞と比較してより分化した状態に分化させる方法であって、前駆細胞を、レチノイン酸などのレチノール類と接触させることを含む、前記方法を提供する。前駆細胞は、以下に開示される任意の前駆細胞であってもよい。一実施形態においては、前駆細胞は、C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40細胞株または本明細書に記載のようにC4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40の遺伝子発現パターンを示す細胞株から選択される。
【0211】
他の実施形態においては、本発明は、hEP細胞などの、in vitroの前駆細胞を、出発前駆細胞と比較してより分化した状態に分化させる方法であって、前駆細胞を、T3またはT4などの甲状腺ホルモンと接触させることを含む、前記方法を提供する。前駆細胞は、以下に開示される任意の前駆細胞であってもよい。一実施形態においては、前駆細胞は、C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40細胞株または本明細書に記載のようにC4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40の遺伝子発現パターンを示す細胞株から選択される。
【0212】
他の実施形態においては、本発明は、hEP細胞などの、in vitroの前駆細胞を、出発前駆細胞と比較してより分化した状態に分化させる方法であって、前駆細胞を、エピネフリン、ノルエピネフリン、または高選択性ベータ3-アドレナリン作動薬、CL316243などのアドレナリン作動薬(J. D. Bloom, M. D. Dutia, B. D. Johnson, A. Wissner, M. G. Burns, E. E. Largis, J. A. Dolan,およびT. H. Claus., J. Med. Chem. 35: 3081, 1992)と接触させることを含む、前記方法を提供する。前駆細胞は、以下に開示される任意の前駆細胞であってもよい。一実施形態においては、前駆細胞は、C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40細胞株または本明細書に記載のようにC4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40の遺伝子発現パターンを示す細胞株から選択される。
【0213】
他の実施形態においては、本発明は、hEP細胞などの、in vitroの前駆細胞を、出発前駆細胞と比較してより分化した状態に分化させる方法であって、前駆細胞を、生理的に活性な濃度の増殖因子FGF21と接触させることを含む、前記方法を提供する。前駆細胞は、以下に開示される任意の前駆細胞であってもよい。一実施形態においては、前駆細胞は、C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40細胞株または本明細書に記載のようにC4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40の遺伝子発現パターンを示す細胞株から選択される。
【0214】
他の実施形態においては、本発明は、hEP細胞などの、in vitroの前駆細胞を、出発前駆細胞と比較してより分化した状態に分化させる方法であって、前駆細胞を、正常体温よりも実質的に低い温度でインキュベートすることを含む、前記方法を提供する。前駆細胞は、以下に開示される任意の前駆細胞であってもよい。一実施形態においては、前駆細胞は、C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40細胞株または本明細書に記載のようにC4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40の遺伝子発現パターンを示す細胞株から選択される。
【0215】
他の実施形態においては、本発明は、hEP細胞などの、in vitroの前駆細胞を、出発前駆細胞と比較してより分化した状態に分化させる方法であって、前駆細胞を、ロシグリタゾンなどのPPARγアゴニストと接触させることを含む、前記方法を提供する。前駆細胞は、以下に開示される任意の前駆細胞であってもよい。一実施形態においては、前駆細胞は、C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40細胞株または本明細書に記載のようにC4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40の遺伝子発現パターンを示す細胞株から選択される。
【0216】
他の実施形態においては、本発明は、長期的なアルコール消費およびその結果として、テロメラーゼ(TERT)の触媒成分の外因性発現によって相対的に高レベルのケトン体への長期的曝露に曝露された個体に由来する、胎児もしくは成体由来BAT細胞または冠動脈平滑筋細胞などの動脈平滑筋細胞の寿命を延長するための方法であって、細胞を工業規模で拡張し、免疫監視を回避するように遺伝的に改変することができる、前記方法を提供する。
【0217】
他の実施形態においては、本発明は、hEP細胞などの、in vitroの前駆細胞を、出発前駆細胞と比較してより分化した状態に分化させる方法であって、前駆細胞を、TGFβ3を含むTGF-ベータタンパク質、BMP2、4、6、および7を含む骨形成タンパク質(BMP)、GDF5を含む増殖分化因子(GDF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、アクチビン、レフティ、ミュラー管抑制物質(MIS)、インヒビン、ならびにノダルなどの、TGF-ベータスーパーファミリーの1種以上のメンバー、レチノイン酸などのレチノール類、T3またはT4などの甲状腺ホルモン、エピネフリン、ノルエピネフリン、または高選択性ベータ3-アドレナリン作動薬、CL316243などのアドレナリン作動薬、ならびにロシグリタゾンなどのPPARγアゴニストの組合せと接触させることを含む、前記方法を提供する。前駆細胞は、以下に開示される任意の前駆細胞であってもよい。一実施形態においては、前駆細胞は、C4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40細胞株または本明細書に記載のようにC4ELSR2、C4ELS5.1、E3、E72、E75、E163、NP110SM、NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40の遺伝子発現パターンを示す細胞株から選択される。
【0218】
以下に開示される方法の一実施形態においては、前駆細胞は、微小塊から構成される。別の実施形態においては、前駆細胞を、本明細書に記載の1つ以上の分化条件によって分化させ、ヒドロゲルと接触させる。いくつかの実施形態においては、前駆細胞を、ヒドロゲル内に封入する。ヒドロゲルは、ヒアルロン酸塩から構成されていてもよい。ヒアルロン酸塩は、チオール化されていてもよい。ヒドロゲルは、ゼラチンから構成されていてもよい。ゼラチンは、チオール化されていてもよい。好ましくは、ヒドロゲルは、チオール化ゼラチンまたはチオール化カルボキシメチルゼラチンと組み合わせたチオール化ヒアルロン酸またはチオール化カルボキシメチルヒアルロン酸から構成される。ヒドロゲルは、架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、アクリレートから構成されていてもよい。一実施形態においては、アクリレートは、PEGジアクリレートである。
【0219】
いくつかの実施形態においては、より分化した細胞は、前駆細胞のin vitroで分化した子孫によって発現されるような、以下に記載される1種以上の遺伝子を発現する。いくつかの実施形態においては、in vitroで分化した子孫は、脂肪細胞によって発現される1種以上の遺伝子、例えば、FABP4およびCD36を発現する。いくつかの実施形態においては、in vitroで分化した子孫は、BAT細胞前駆体または成熟BAT細胞によって発現される1種以上の遺伝子、例えば、UCP1、ADIPOQ、またはC19ORF80(ベータトロフィンとしても知られる)を発現する。いくつかの実施形態においては、分化した子孫は、脂肪細胞によって発現される1種以上の遺伝子を発現する。
【0220】
前駆細胞株の子孫
ある特定の実施形態においては、本発明は、前駆細胞株の子孫を提供する。前駆細胞株は、ヒト胚性前駆細胞株(hEP)などの胚性前駆細胞株であってもよい。前駆細胞株の子孫は、前駆細胞株のin vitroでの子孫であってもよく、親前駆細胞株と比較してより分化した1個以上の細胞を含んでもよい。細胞の分化状態を、親前駆細胞株と比較して子孫細胞によって発現される1種以上の遺伝子を分析すること、および/またはLifeMapデータベースなどの、様々な発生段階にある細胞の遺伝子発現に関する情報を含有するデータベースにアクセスすることによって決定することができる。前駆細胞株の子孫は、霊長類(例えば、ヒト)などの、発生中の哺乳動物中の細胞によって典型的に発現される1種以上の遺伝子を発現する細胞であってもよい。例えば、前駆細胞株の子孫は、FABP4、CD36、CIDEA、ADIPOQ、UCP1、C19orf80、NTNG1、およびTHRSPから選択される脂肪細胞の運命に対応する1種以上の遺伝子を発現してもよい。
【0221】
ある特定の実施形態においては、本発明は、hEP細胞株などの前駆細胞株のin vitroでの子孫を含む細胞培養物を提供する。いくつかの実施形態においては、細胞培養物は、1種以上の増殖因子、サイトカインおよび/またはマイトジェンを含んでもよい。ある特定の実施形態においては、細胞培養物は、TGF-βスーパーファミリーの1種以上のメンバーを含んでもよい。TGFβスーパーファミリーの例示的メンバーとしては、TGFβ3を含むTGF-ベータタンパク質、BMP2、4、6、および7を含む骨形成タンパク質(BMP)、GDF5を含む増殖分化因子(GDF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、アクチビン、レフティ、ミュラー管抑制物質(MIS)、インヒビン、ならびにノダルが挙げられる。ある特定の実施形態においては、細胞培養物は、細胞を、以下に記載されるような、正常体温よりも実質的に低い温度でヒドロゲルの中で、またはそれを用いずに、TGFβスーパーファミリーのメンバー、レチノイン酸、PPARγのアゴニスト、アドレナリン作動薬、および甲状腺ホルモンなどの分化剤と共に、またはそれを用いずに培養することを含む、褐色脂肪細胞の分化を誘導するサイトカイン、因子、または条件の組合せの存在下で培養された細胞を含んでもよい。ある特定の実施形態においては、細胞培養物は、ヒドロゲル中に包埋された細胞を含んでもよい。好適なヒドロゲルは、1つ以上のポリマーを含んでもよい。ポリマーは、ヒアルロン酸塩、ゼラチン、アクリレートなどのヒドロゲルを形成することが知られる任意のポリマーを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルは、チオール化ヒアルロン酸から構成される。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルは、チオール化ゼラチンから構成される。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルは、PEGジアクリレートなどのアクリレート架橋剤から構成される。
【0222】
いくつかの実施形態においては、本発明は、前駆細胞株のin vitroでの子孫が脂肪細胞前駆体または成熟脂肪細胞である、前駆細胞株のin vitroでの子孫を含む細胞培養物を提供する。本発明のある特定の実施形態においては、前駆細胞株、例えば、脂肪前駆細胞のin vitroでの子孫は、培養物中の細胞の約5%、培養物中の細胞の約10%、培養物中の細胞の約15%、培養物中の細胞の約20%、培養物中の細胞の約25%、培養物中の細胞の約30%、培養物中の細胞の約35%、培養物中の細胞の約40%、培養物中の細胞の約45%、培養物中の細胞の約50%、培養物中の細胞の約55%、培養物中の細胞の約60%、培養物中の細胞の約65%、培養物中の細胞の約70%、培養物中の細胞の約75%、培養物中の細胞の約80%、培養物中の細胞の約85%、培養物中の細胞の約90%、培養物中の細胞の約95%、培養物中の細胞の約99%を占めてもよい。
【0223】
ビーズ中の細胞を凍結保存し、ヒト細胞中のMYH11およびFABP4遺伝子発現を改変するためのHyStem-Cの使用
HyStem-C(BioTime,Inc. Alameda, CA)は、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)とin vivoまたはin vitroで架橋されたチオール改変ゼラチンおよびチオール化ヒアルロナンから構成されるマトリックスである。本発明者らは、本発明に記載されるものなどのクローン性ヒト胚性前駆細胞株を、1%w/v HyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)中の2.0 x 107細胞/mL(10%DMSOであるFBS中)の25μlアリコートなどのポリマー化されたHyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)のビーズ(500,000細胞/ビーズ)内で凍結および解凍することができることを観察した。これは、ビーズが多様な分化条件に曝露され、その分化が遺伝子発現マイクロアレイまたは当業界で公知の他の手段によってアッセイされる高効率ロボットシステムなどにおいて同時に解凍およびアッセイすることができる多数の多様なhEP細胞型を含む多数のビーズの蓄積を容易にする。それはまた、凍結保存された多数のビーズの解凍およびビーズの組合せと、多様な型の埋め込まれた細胞とのインキュベーションおよび遺伝子発現マイクロアレイまたは当業界で公知の他の手段などの分化状態の変化のその後の分析も可能にする。
【0224】
さらに、HyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)中でのhEP細胞株のインキュベーションは、多様な細胞型に対するHyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)の生物学的影響に関する大量のデータの蓄積を可能にした。3,000を超える分化実験からのIllumina遺伝子発現マイクロアレイデータを用いて、本発明者らは、HyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)ビーズ中で頻繁に上方および下方調節される遺伝子を検索し、これらのプロファイルを、微量培養条件下で得られたものと比較した。例えば、本発明者らは、HyStem-4D(BioTime, Inc. Alameda, CA)ビーズ中でBMP4と共に培養された細胞が、MYH11などの筋線維芽細胞マーカーの顕著な減少、ならびにFABP4などの脂肪細胞マーカーおよびTIMP4などの抗炎症マーカーの発現の増加を頻繁に示すことを観察した。細胞株E15は、他の条件では軟骨形成能力を有することが示され、W10株は10ng/mLのBMP4を添加した微量培養条件でMYH11を強く誘導したが、この誘導は、BMP4を添加したHyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)培養物中で本質的に除去された。その代わりに、HyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)ビーズ中では、細胞株は、髄膜のマーカーであるDCNの発現を顕著に上方調節した。HyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)ビーズ中で培養された多くの細胞株に見られる筋線維芽細胞分化に対するこの生理学的効果は、線維化または癒着の阻害などの、in vivoで治療的関連を有する。それはまた、手術部位での癒着および関連する線維化プロセスを阻害しながら、細胞を移植して組織機能を再生することができる外科手術設定においても有益である。
【0225】
以前に記載されたように(参照により組み込まれる米国特許出願第14/048,910号を参照されたい)、多様なクローン胚性前駆細胞株は、TGF-ベータスーパーファミリーのメンバーなどの増殖因子に対するそれに応じて多様な分化応答を示す。限定されるものではないが、BMP4の存在下、HyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)ビーズ中での細胞の培養を含む、いくつかの事例では、いくつかの細胞株は、FABP4およびCD36などの脂肪細胞のマーカーを強く発現する。脂肪細胞分化を行うことができるクローン前駆細胞株は多様な解剖学的起源の間葉原基であるため、対応する脂肪細胞は、多様な表現型を有する脂肪形成細胞であってもよい。これらの多様な表現型のいくつかは、本明細書に記載されるような新しい治療機会を提供する。
【0226】
本発明のC19orf80を発現する脂肪細胞は、I型およびII型糖尿病の処置においても有用である。前記治療適用においては、本発明のC19orf80を発現する脂肪細胞、非限定例として、HyStem-C(BioTime, Inc. Alameda, CA)中、2.5 x 105細胞/ml~1.0 x 108細胞/ml、好ましくは、1.0 x 107細胞/mlの濃度、または細胞の生着を促進するのに有用な他のマトリックス中のこれらの濃度の細胞を、体内に注入することができる。生着部位は変化してもよいが、例として、細胞を、背部の肩甲骨間部などの、ヒトにおける褐色脂肪細胞の正常部位で皮下的に注入することができる。細胞を、インスリン受容体遺伝子を下方調節するか、もしくは生着した細胞の誘導性アポトーシスを可能にするものなどの、C19orf80発現を増加させるための改変、または前記細胞の同種異系組織適合性を促進するための改変を用いて、遺伝的に改変してもよく、またはしなくてもよい。
【0227】
いくつかの適用においては、前記C19orf80発現脂肪細胞を、本明細書に記載のように有糸分裂的に不活化して、その寿命を制限し、C19orf80の一過的発現をもたらして、膵臓ベータ細胞の増殖を一過的に誘導する。
【0228】
高齢患者においては、移植されたC19orf80分泌脂肪細胞に応答する膵臓ベータ細胞増殖またはあるいは、投与されたC19orf80タンパク質に応答する膵臓ベータ細胞増殖、または単に、低インスリン血症に応答する膵臓ベータ細胞増殖を、ヒトTERTなどの、テロメラーゼ逆転写酵素の触媒成分の外因性発現によってベータ細胞またはベータ細胞前駆体中のテロメア長の伸長によって容易にすることができる。テロメラーゼのテロメラーゼ触媒成分を、限定されるものではないが、アデノウイルスベクターなどの、ウイルス遺伝子療法などの当業界で公知の様々な方法によって導入することができる。
【0229】
hEP細胞およびその分化した子孫を含む改良された方法および組成物ならびに研究において有用な、およびある特定の代謝疾患および血管疾患を処置するのに有用な成熟褐色脂肪細胞へのhEP細胞の分化を指令するための方法が本明細書に提供される。
【0230】
細胞を凍結保存するための方法および組成物
いくつかの実施形態においては、本発明は、以下に記載される細胞を凍結保存するための方法を提供する。他の実施形態においては、本発明は、細胞が以下に記載される1種以上の細胞である、凍結保存された細胞を含む組成物を提供する。
【0231】
ある特定の実施形態においては、本発明は、以下に記載されるhEP細胞などの、凍結保存された前駆細胞を含む組成物を提供する。組成物は、少なくとも1個の前駆細胞、少なくとも10個、少なくとも100個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,00,000個の生きた凍結保存された前駆細胞を含んでもよい。組成物は、約1個の前駆細胞、約10個、約100個、約1,000個、約10,000個、約100,000個、約1,000,000個の生きた凍結保存された前駆細胞を含んでもよい。凍結保存された前駆細胞は、前駆細胞がヒドロゲル内に播種されたヒドロゲルをさらに含んでもよい。凍結保存された前駆細胞は、細胞の凍結を容易にするためのDMSOまたはFBSなどの、1種以上の凍結防止剤を含有する好適な培地を含んでもよい。一実施形態においては、本発明は、ヒアルロン酸塩を含むヒドロゲル中で凍結保存されたhEP細胞を提供する。ヒドロゲルは、ゼラチンをさらに含んでもよい。ヒドロゲルは、PEGアクリレートなどのアクリレートをさらに含んでもよい。アクリレートは、架橋剤として働くことができる。ヒドロゲル中で細胞を凍結保存するための好適な培地の例は、10%DMSOであるFBSを含んでもよい。細胞を、-80℃で凍結することができる。
【0232】
他の実施形態においては、本発明は、以下に記載されるhEP細胞などの、凍結保存されたin vitroで分化した前駆細胞の子孫を含む組成物を提供する。組成物は、少なくとも1個、少なくとも10個、少なくとも100個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,00,000個の生きた凍結保存されたin vitroで分化した前駆細胞の子孫を含んでもよい。凍結保存されたin vitroで分化した前駆細胞の子孫は、in vitroで分化した前駆細胞の子孫がヒドロゲル内に播種されたヒドロゲルをさらに含んでもよい。凍結保存されたin vitroで分化した前駆細胞の子孫は、細胞の凍結を容易にするためのDMSOまたはFBSなどの、1種以上の凍結防止剤を含有する好適な培地を含んでもよい。一実施形態においては、本発明は、ヒアルロン酸塩を含むヒドロゲル中で凍結保存されたhEP細胞のin vitroで分化した子孫を提供する。ヒドロゲルは、ゼラチンをさらに含んでもよい。ヒドロゲルは、PEGアクリレートなどのアクリレートをさらに含んでもよい。アクリレートは、架橋剤として働くことができる。ヒドロゲル中で細胞を凍結保存するための好適な培地の例は、10%DMSOであるFBSを含んでもよい。細胞を、-80℃で凍結することができる。
【0233】
凍結保存された組成物を、研究および治療適用において用いることができる。例えば、細胞療法を必要とする対象を、以下に記載される凍結保存された組成物を用いて処置することができる。組成物を解凍し、処置を必要とする対象に投与することができる。ヒドロゲル中に以下に記載される細胞を入れることにより、細胞の凍結保存と、対象への細胞の移植の増強との両方を容易にすることができる。
【0234】
いくつかの実施形態においては、本発明は、1)細胞をヒドロゲルと接触させること、2)1)の細胞を、ウシ胎仔血清(FBS)およびジメチルスルホキシド(DMSO)を含む培地と接触させること、ならびに3)2)の細胞を-80℃で凍結することによって、細胞を凍結保存することを含む、細胞を凍結保存する方法を提供する。
【0235】
いくつかの実施形態においては、本発明は、1)細胞をヒドロゲルと接触させること、2)1)の細胞を、ウシ胎仔血清(FBS)およびグリセロールを含む培地と接触させること、ならびに3)2)の細胞を-80℃で凍結することによって、細胞を凍結保存することを含む、細胞を凍結保存する方法を提供する。
【0236】
いくつかの実施形態においては、前記段落に記載された方法を、以下に記載される1つ以上の細胞を用いて実行する。かくして、細胞は、hEP細胞またはhEP細胞のin vitroで分化した子孫であってもよい。ヒドロゲルが固化する機会を有する前に、細胞をヒドロゲルと接触させることができる、例えば、ヒドロゲルを含む1つ以上の液体調製物と接触させ、細胞を、ヒドロゲルを含む1つ以上の液体調節物と接触させた後、ヒドロゲルを重合化させることができる。ヒドロゲルは、ヒアルロン酸塩、ゼラチンおよびアクリレートまたはメタクリレート、例えば、PEGアクリレートなどの架橋剤を含んでもよい。ヒアルロン酸塩をチオール化することができる。ゼラチンをチオール化することができる(米国特許第7,928,069号;第7,981,871号を参照されたい)。ヒドロゲルに、約100個の細胞、約500個の細胞、約1,000個の細胞、約10,000個の細胞、約100,000個の細胞、約1,000,000個の細胞、約10,000,000個の細胞を播種することができる。いくつかの実施形態においては、ヒドロゲルに、約105~約107個の細胞を播種する。
【0237】
以下に記載される細胞を凍結保存する方法において用いられる培地は、任意の公知の培地および好適な凍結防止剤を含んでもよい。好適な凍結防止剤の例としては、FBS、DMSO、グリセロール、グルコースなどが挙げられる。一実施形態においては、培地は、10%DMSOを含むFBSから構成される。別の実施形態においては、培地は、10%DMSOを含むFBSからなる。
【0238】
一般的技術
本発明の実施において有用な実験技術を、細胞生物学、組織培養、および発生学における標準的な教科書および書評に見出すことができる。幹細胞生物学および操作は、Teratocarcinomas and embryonic stem cells: A practical approach, E. J. Robertson(編)、IRL Press Ltd. 1987; Guide to Techniques in Mouse Development, P. M. Wassermanら(編)、Academic Press 1993; およびEmbryonic Stem Cell Differentiation in Vitro, M. V. Wiles, Meth. Enzymol. 225:900 1993に記載されている。
【0239】
分子遺伝学および遺伝子工学における方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Sambrookら、1989; Oligonucleotide Synthesis, M. J. Gait(編)、1984; Animal Cell Culture, R. I. Freshney(編)、1987; the series Methods in Enzymology, Academic Press; Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, J. M. Miller & M. P. Calos(編)、1987; Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology、第3版、F. M. Ausubelら(編)、1987 & 1995; およびRecombinant DNA Methodology II, R. Wu(編)、Academic Press 1995に記載されている。本開示に記載の遺伝子操作のための試薬、クローニングベクター、およびキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、およびClonTechなどの商業的供給業者から入手可能である。抗体の生成、ならびにイムノアッセイおよび免疫組織化学アッセイの設計および実行において用いられる一般的技術は、Handbook of Experimental Immunology, D. M. Weir & C. C. Blackwell(編); Current Protocols in Immunology, J. E. Coliganら(編)、1991; ならびにR. Masseyeff, W. H. Albert, およびN. A. Staines(編)、Methods of Immunological Analysis, Weinheim: VCH Verlags GmbH 1993に見出される。
【0240】
適用
動物の細胞および組織の培養のための開示された方法は、研究および治療における使用のための褐色脂肪前駆細胞および分化した褐色細胞細胞の生成において有用である。研究的使用は、代謝障害の処置において有用な薬剤の薬物スクリーニングにおける細胞の使用を含み、治療的使用は、限定されるものではないが、ヒトおよび非ヒト動物における糖尿病および肥満などの代謝障害、高血圧およびアテローム性動脈硬化症などの血管障害、ならびにアルツハイマー病の処置において有用なヒト細胞の生成などの、哺乳動物およびヒトの細胞療法における細胞またはその子孫の使用を含む。
【0241】
元の多能性幹細胞が、分化した細胞型の工業規模での無限誘導のためのマスター細胞バンクとして用いられる本発明において用いられる方法は、品質制御および再現性における商業的利点を有する。特に有用なものは、マスター細胞バンクを遺伝的に改変して、得られる体細胞が免疫監視を回避することができるようにし、比較的長いテロメア長を有する依然として比較的未分化のクローン性胚性前駆細胞型の中間体を、工業的拡張性のポイントとしてスケールアップする本発明である。また、特に有用なものは、本発明の細胞を、ヒトにおいて安全に皮下投与することができると証明されたヒドロゲル中でBAT細胞分化を誘導する因子を用いて分化させることによって、in vivoの三次元脂肪組織を産生するための製剤を提供する、本明細書に記載の製剤である。
【0242】
薬物スクリーニング
本発明の細胞を用いて、褐色脂肪前脂肪細胞前駆体と成熟褐色脂肪細胞との両方の特徴に影響する因子(溶媒、低分子薬物、ペプチド、ポリヌクレオチドなど)または環境条件(培養条件もしくは操作など)についてスクリーニングすることができる。一例では、多能性幹細胞(未分化であるか、または分化パラダイムに開始される)を用いて、褐色脂肪細胞への成熟を促進するか、または長期培養物中での褐色脂肪細胞の増殖および維持を促進する因子をスクリーニングする。例えば、候補成熟因子または増殖因子を、それらを異なるウェル中の細胞に添加した後、細胞の将来の試料および使用のための望ましい基準に従って得られる任意の表現型変化を決定することによって試験する。これは、多能性幹細胞由来褐色脂肪細胞だけでなく、胎児または成体組織から単離された褐色脂肪細胞前駆体のための改良された誘導および培養方法をもたらすことができる。
【0243】
別の例は、褐色脂肪細胞前駆体の使用であるか、または本発明の分化した褐色脂肪細胞を用いて、リポタンパク質の代謝、アジポカインの分泌、または熱調節のそれらの役割において褐色脂肪細胞活性に影響する能力を有する低分子薬物の効果を測定する。このために、細胞を、in vitroで試験化合物と混合し、遺伝子発現またはタンパク質合成に対する化合物の効果を決定することができる。また、動物モデルにおける細胞の挙動に対する化合物の効果を測定することにより、スクリーニングをin vivoで行うこともできる。
【0244】
本発明の他のスクリーニング方法は、医薬化合物または褐色脂肪細胞増殖、発生、もしくは毒性に対する潜在的な効果の試験に関する。この型のスクリーニングは、化合物が褐色脂肪細胞自体に対する薬理学的効果を有するように設計された場合だけでなく、化合物の褐色脂肪細胞関連副作用に関する試験が他の場所での主な薬理学的効果について設計された場合にも適切である。読者には、標準的な教科書「In vitro Methods in Pharmaceutical Research」、Academic Press, 1997、および米国特許第5,030,015号を一般的に参照されたい。候補医薬化合物の活性の評価は、一般的には、本発明の分化した細胞と、候補化合物とを、単独で、または他の薬物と共に混合することを含む。調査者は、化合物に起因する細胞の形態、マーカー表現型、または機能的活性の任意の変化(未処理の細胞または不活性化合物で処理された細胞と比較する)を決定した後、化合物の効果と、観察された変化とを相関させる。
【0245】
第1の例では、細胞生存能力、生存率、形態に対する効果、ならびにある特定のマーカーおよび受容体の発現によって、細胞傷害性を決定することができる。染色体DNAに対する薬物の効果を、DNA合成または修復を測定することによって決定することができる。特に、細胞周期中のスケジュール化されていない時間での、または細胞複製に必要とされるレベルより上での[3H]-チミジンまたはBrdUの取込みは、薬物の効果と一致する。また、望ましくない効果は、中期拡散によって決定される、異常な速度の姉妹染色分体交換を含んでもよい。読者には、さらなる精緻化のために、A. Vickers (「In vitro Methods in Pharmaceutical Research」Academic Press, 1997, pp 375-410)を参照されたい。
【0246】
本発明のある特定の実施形態においては、以下に記載されるhEP細胞の分化した子孫を、「フィーダー細胞」として使用して、多能性幹細胞を含む、他の細胞型の増殖を支持することができる。フィーダー細胞としての本発明のhEP細胞の分化した子孫の使用は、他の哺乳動物起源に由来するフィーダー細胞に由来する病原体を、標的細胞に伝達する潜在的なリスクを軽減する。フィーダー細胞を、例えば、ガンマ線照射またはマイトマイシンCを用いる処理によって不活化して、複製を制限した後、多能性幹細胞と同時培養することができる。
【0247】
本発明のある特定の実施形態においては、以下に開示されるhEP細胞の分化した子孫の細胞外マトリックス(ECM)を用いて、あまり分化していない細胞を支持することができる(Stojkovicら、Stem Cells (2005) 23(3):306-14を参照されたい)。通常はフィーダー層を必要とするある特定の細胞型を、マトリックス上での無フィーダー培養物中で支持することができる(Roslerら、Dev Dyn. (2004) 229(2):259-74)。STOマウス線維芽細胞株(ATCC受託番号CRL-1503)、またはヒト胎盤線維芽細胞などの、マトリックス形成細胞株(WO99/20741を参照されたい)を予備培養し、溶解することにより、マトリックスを沈着させることができる。
【0248】
本発明の特定の実施形態においては、hEP細胞の分化した子孫の条件化培地を収集し、プールし、濾過し、条件化培地として保存することができる。この条件化培地を、製剤化し、研究および治療のために使用することができる。以下に記載される細胞培養物の条件化培地の使用は、培養された細胞を、他の哺乳動物起源に由来する非ヒト動物病原体(すなわち、異種を含まない)に曝露する潜在的リスクを軽減するのに有利であり得る。
【0249】
本発明の別の実施形態においては、単一細胞由来およびオリゴクローン細胞由来細胞および以下に記載されるその分化した子孫を、細胞が分化を受けるにつれて転写的に活性化される、または抑制される遺伝子を同定および特性評価するための手段として用いることができる。例えば、遺伝子捕捉単一細胞由来またはオリゴクローン細胞由来細胞および/またはその分化した子孫のライブラリーを、本発明の方法によって作製し、アッセイして、細胞がin vitroおよびin vivoで分化する際の遺伝子捕捉マーカーの発現レベルの変化を検出することができる。遺伝子捕捉細胞を作製するため、および細胞が分化する際の遺伝子捕捉マーカーの発現の変化を検出するための方法は、Durickら(Genome Res. (1999) 9:1019-25)に概説されている。遺伝子捕捉細胞を作製する、および細胞が分化する際の遺伝子捕捉マーカーの発現の変化を検出するのに有用なベクターおよび方法は、米国特許第5,922,601号 (Baetscherら)、米国特許第6,248,934号(Tessier-Lavigne)および米国特許出願公開第2004/0219563号 (Westら)にも記載されている。細胞を遺伝的に改変する、in vitroでその分化を誘導する、およびそれらを用いて、キメラまたは核移植クローン化胚およびクローン化マウスを生成するための方法が開発されており、当業界で公知である。遺伝子の同定およびその生理学的活性の特性評価を容易にするために、遺伝子捕捉DNAマーカーがそのゲノム中に無作為に挿入された遺伝子捕捉細胞の大きなライブラリーを調製することができる。細胞がin vitroまたはin vivoで分化する際の遺伝子捕捉マーカーの発現レベルの変化をスクリーニングし、検出するための効率的な方法が開発されている。単一細胞由来またはオリゴクローン細胞由来細胞またはその分化した子孫が分化するように誘導するためのin vivoでの方法は、1個以上の細胞を胚盤胞に注入して、発生が可能になったキメラ胚を形成させること;幹細胞を除核卵母細胞と誘導して、核移植ユニット(NTU)を形成させ、発生が可能になった胚の生成をもたらす条件下でNTUを培養すること;および1個以上のクローン形成性分化細胞を、免疫不全動物または組織適合宿主動物(例えば、SCIDマウス、または同系核ドナー)に埋め込み、分化した細胞を含むテラトーマを形成させることをさらに含む。単一細胞由来またはオリゴクローン細胞由来細胞が分化するように誘導するためのin vitroでの方法は、細胞を、単層中、懸濁液中、または三次元マトリックス中で、単独で、または異なる型の細胞との同時培養物中で培養すること、およびそれらを、分化を誘導する、または可能にすることができることが知られる、1つ以上の異なる細胞型との同時培養を含む、化学的、生物的、および物理的因子の多くの組合せの1つに曝露することをさらに含む。
【0250】
本発明の別の実施形態においては、任意の公知の細胞培養条件下で増殖しない細胞型を、SV40ウイルスラージT抗原(Tag)、または調節されたE1aおよび/もしくはE1b、またはパピローマウイルスE6および/もしくはE7、またはCDK4(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、2006年11月21日に出願され、「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」の表題の米国特許出願第11/604,047号を参照されたい)の調節された発現などの、細胞周期の阻害を克服する因子の調節された発現により、本発明の方法に従ってそれらをクローン的またはオリゴクローン的に単離することができるように増殖するように誘導することができる。
【0251】
本発明の別の実施形態においては、細胞周期停止を無効化する因子を、さらなるタンパク質またはタンパク質ドメインと融合し、細胞に送達することができる。例えば、細胞周期停止を無効化する因子を、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)に連結することができる。細胞周期停止を無効化する因子に共有的または非共有的に連結されたタンパク質形質導入ドメインは、細胞膜を横断する前記因子の輸送を可能にし、タンパク質は最終的には細胞の核区画に到達することができる。細胞周期停止を無効化する因子と融合することができるPTDとしては、HIVトランス活性化タンパク質(TAT)のPTD(Tat 47-57)が挙げられる(SchwarzeおよびDowdy, 2000 Trends Pharmacol. Sci. 21: 45-48; Kroslら、2003 Nature Medicine (9): 1428-1432)。HIV TATタンパク質については、膜輸送活性を付与するアミノ酸配列は、残基47-57に対応する(Hoら、2001, Cancer Research 61: 473-477; Vivesら、1997, J. Biol. Chem. 272: 16010-16017)。これらの残基は単独で、タンパク質輸送活性を付与することができる。
【0252】
臨床治療におけるBAT細胞前駆細胞およびBAT細胞
本発明はまた、当該の治療を必要とする患者において正常な代謝を保持もしくは回復するために、BAT前駆細胞および完全に分化したBAT細胞、ならびにそれらに由来する細胞の使用を提供する。脂肪、リポタンパク質、血圧、またはグルコース代謝の異常をもたらすいかなる疾患も、考慮される可能性がある。一般にメタボリックシンドロームXと関連した疾患が含まれる。本発明の細胞はI型糖尿病の治療用にも考慮されるが、この場合ベータトロフィン分泌細胞が膵臓に注入される。本発明の細胞を肥満および冠動脈疾患の管理のために使用することも考えられる。
【0253】
本発明のある実施形態において、下記のように、単一細胞由来およびオリゴクローン性細胞由来細胞ならびにそれらの分化した子孫細胞は、細胞生物学、脂肪細胞分化、およびリポタンパク質代謝に関係する疾患の治療に利用される。たとえば、hEP細胞およびその分化した子孫細胞を用いてcDNAライブラリを作成することができるが、このライブラリを次に、ベータトロフィンもしくはアディポネクチンなどの重大な意味を持つアディポカインを発現する褐色脂肪細胞を含む、たとえば脂肪などの、組織の発達における遺伝子発現を研究するために、また、肥満およびII型糖尿病のリスクファクターであるIL13RA2の遺伝性発現レベルを研究するために使用することができる。hEP細胞およびその分化した子孫細胞を、薬物スクリーニングに使用することができる。たとえば、hEP細胞の分化した子孫細胞などの細胞を被験薬もしくは化合物と接触させ、顕微鏡下で細胞を調べて細胞の形態を観察することによって、または培養下での細胞増殖もしくは生存を調べることによって、毒性について分析することができると考えられる。細胞を遺伝子発現についてスクリーニングして、UCP1、ADIPOQ、またはC19ORF80発現をアッセイすることによって、薬物の効果、特に脂肪の褐色化を誘導するための薬物の効果を判定することもできる。たとえば、被験薬物もしくは化合物と接触させた、分化したhEP細胞の子孫細胞と、そのような接触を行わなかった同じ分化した子孫細胞とを比較して、その間で比較を行うこともありうる。
【0254】
分化したhEP細胞の子孫細胞を用いて、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、マイトジェンなどの効果についてスクリーニングし、分化したhEP細胞の子孫細胞の分化状態に及ぼす、上記被験化合物の影響を判定することができる。
【0255】
本発明のある実施形態において、治療的有用性を示すために、あるいはまた細胞をさらに分化させるために、分化したhEP細胞の子孫細胞を、それが通常存在する組織内に導入することができる。本発明のある実施形態において、下記の分化したhEP細胞の子孫細胞は、他の多能性(pluripotent)もしくは複能性(multipotent)幹細胞の分化誘導に用いられる。細胞間誘導は、初期杯において分化を方向付ける一般的な手段である。誘導に有効な細胞型は、正常な杯発生において自然に生じる、当技術分野で周知の誘導を、模倣することができる。
【0256】
多くの医学的に有用となりうる細胞型は、正常な杯発生の間に誘導シグナルの影響を受けるが、こうした細胞型には脊髄ニューロン、心臓細胞、膵臓β細胞、および二次造血細胞などが含まれる。分化したhEP細胞の子孫は、望ましい細胞型もしくは組織型となるように他の多能性幹細胞の分化を誘導するために、さまざまなin vitroもしくはin vivo培養条件で培養することができる。誘導は、インデューサー細胞を標的細胞と並置する、さまざまな方法で行うことができる。限定的でない例として、インデューサー細胞を組織培養にプレーティングして、細胞がそれ以上増殖しないようにマイトマイシンCもしくは放射線により処理することができる。次に標的細胞を、分裂を不活化したインデューサー細胞の上に撒く。あるいはまた、分化したhEP細胞の子孫細胞を、より大規模な細胞培養物から、または元の単個細胞由来コロニーから、取り外し可能な膜上で培養し、標的細胞をインデューサー細胞の上に撒くか、または標的細胞で覆われた別の膜を、直接接触したた状態で2つの細胞層を間に挟むように並べて置くことができる。その結果得られた2層の細胞は、in vitroで培養してSPF鳥卵に移植され、または血管を支持しつつ3次元の増殖を可能にするような条件で培養することができる(たとえば、国際特許公開番号WO/2005/068610、2005年7月28日発行、を参照されたいが、その明細は参考として本明細書に組み入れられる)。インデューサー細胞は、分化したhEP細胞の子孫細胞の起源に由来することもあり、その中に自殺構築物が、インデューサー細胞を意のままに除去できるように導入された。本発明の細胞は、HyStem-C (Renevia)などの生体適合性マトリックスと組み合わせて、治療用に最適に製剤される。BAT細胞は、組織培養容器表面上で、またはスラリー中のビーズ上で、あるいはまたHyStem-Cビーズ上で細胞培養して増殖させることによって調製され、ポイントオブケアで使用するために凍結される。外科手術時に、BAT細胞を融解してマトリックス成分と混合し、細胞を満たしたマトリックスを、望ましい挿入領域内に注入する。
【0257】
本発明にしたがって作製されたBAT細胞は、血管内皮を含む正常な脂肪組織血管系の細胞成分、ならびに血管新生および移植組織の生存を支援する血管周囲細胞を提供する、患者固有の脂肪間質血管細胞群(stromal vascular fraction)とともに調剤することができるが、これらはたとえば腹部脂肪吸引術で得られるものである。それに加えて、移植組織は既述(Compositions and methods relating to clonal progenitor cell lines, WO 2013036969 A1)のITLN1およびITLN2を発現する多能性幹細胞由来血管前駆細胞によって増大させることができる。通例のごとく、患者選定、投与方法、および支持構造の選択、ならびに外科オプションに関する最終的な責任は、管理する臨床医の責任である。
【0258】
商品流通のために、本発明のBAT細胞は典型的には医薬製剤の形で供給されるが、これは、ヒト投与用に十分無菌的な条件下で調製された等張添加剤を含有する。細胞組成物の薬剤としての一般原則について、読者には、「Cell Therapy: Stem Cell Transplantation, Gene Therapy, and Cellular Immunotherapy, by G. Morstyn & W. Sheridan, eds, Cambridge University Press, 1996」を参照されたい。
【0259】
組成物はまた、治療後最初の数か月の間、BAT細胞を所定の位置に保持するために、マトリックスを含有することができる。HyStem (BioTime)などの生体適合性マトリックスは、in vivoでの重合形成によって、細胞とマトリックスとの混合、液体状の前記細胞およびマトリックスの注入を可能にする。HyStemのほかに可能性のあるマトリックスとしては、生体吸収型ポリマーフリースマトリックス(Rudert, et al., Cells Tissues Organs 167:95, 2000);ヒアルロナン誘導体(Grigolo, et al., Biomaterials 22:2417, 2001);ポリ(L-乳酸/ε-カプロラクトン)で作られたスポンジ(Honda et al., J. Oral Maxillofac. Surg. 58:767, 2000)、ならびにコラーゲン-フィブリンマトリックス(Clin. Exp. Rheumatol. 18:13, 2000)などがある。
【0260】
本発明の細胞は、細胞を1回の投与で移植することによって、インスリン感受性を高め、体内総脂肪量を低下させ、または冠動脈疾患もしくは脳卒中リスクを下げることができるように、移植することができるが、非限定的な例として、ヒトにおいて、細胞は、出生時に通常BAT細胞が存在する肋間部、およびそうしたBAT細胞の交感神経支配の近傍に、HyStem-C (BioTime, Inc. Alameda, CA)中2.5 x 105 細胞/ml~1.0 x 108細胞/mlの濃度で、好ましくは1.0~3.0 x 107 細胞/mlの濃度で、または細胞の生着を促すのに有用な他のマトリックス中で上記濃度にて、投与することができる。投与される前記細胞の総投与量は、BAT組織の喪失程度および疾患の重症度によって変動しうる。たとえば、病的肥満の患者は、その患者の医師の判断に基づいて、本明細書に記載の上限で投与される細胞を必要とする可能性がある。個別の用量は、1回の注入で10~100 x 106細胞までさまざまとなると考えられる(細胞濃度に応じて、注入1回当り0.3 mL~10.0 ml)。治療の有効性は、治療の前後にELISAもしくは当技術分野で公知の他の方法で血清アディポネクチンおよび/またはベータトロフィンをモニターすることによって、または、BAT組織への取り込みを算定するために2-[18F]フルオロ-2-デオキシグルコース(FDG)をin vivo投与した後にPETスキャンすることによって、評価することができる。
【0261】
移植部位はさまざまであってよいが、非限定的な例として、細胞は、ヒトにおいて正常な褐色脂肪細胞の部位、たとえば背中の肩甲骨間部に、皮下注射することができる。細胞は遺伝子改変されていることも、されていないこともあるが、C19orf80発現を増加させる改変、たとえば、インスリン受容体遺伝子をダウンレギュレートするか、もしくは移植細胞の誘導アポトーシスを可能にする改変を有し、または前記細胞の同種組織適合性を促進する改変を有する。
【0262】
冠動脈疾患などのアテローム性動脈硬化の予防において、本発明のBAT細胞は、本明細書の記載に相当する濃度でHyStem-C中で製剤されて、アテローム性動脈硬化のリスクのある、またはアテローム性動脈硬化を示す、動脈を取り囲む血管周囲腔に注入することができる。本発明のBAT細胞の存在は、その細胞が示すユニークなリポタンパク質代謝、ならびにアディポネクチンの分泌を通じて、患者に治療効果をもたらすことになる。
【0263】
I型およびII型糖尿病の管理において、本明細書に記載のような免疫寛容を与える遺伝子パターンおよびNP110SMに相当する遺伝子発現パターンを発現し、さらに比較的高レベルのC19orf80を分化した状態で発現するヒトES細胞由来クローン胚性前駆細胞株を含むがそれに限定されない、本発明の細胞を、膵臓に直接注入してβ細胞の増殖を誘導することができる。前記細胞がPD-L1などの局在性免疫抑制物質も過剰発現する場合、そのような細胞を用いて、I型糖尿病における膵臓β細胞の免疫介在性破壊を止めることもできる。
【0264】
組成物もしくは装置は、肥満、糖尿病、および冠動脈疾患の管理のためにBAT組織を再構成するといった望ましい目的のために、適宜、書面の使用説明書とともに適当な容器内にパッケージされる。
【0265】
当業者のためのルーチン最適化の問題として、本明細書に記載されるある特定の本発明の適応を、本発明の精神もしくは添付の請求の範囲から逸脱することなく実行することができる。別の実施形態において、テロメラーゼの触媒成分(TERT)の永続的もしくは一過性発現により、hEP細胞株、たとえば褐色脂肪分化の能力を有するhEP細胞株を、不死化したり、その細胞の寿命を延長することができる。
【0266】
本発明の別の実施形態において、単一細胞由来およびオリゴクローン性細胞由来細胞、またはそれらの分化した子孫を用いて、ファージディスプレイ技術に使用するリガンドを作製することができる(米国出願60/685,758、出願日2005年5月27日、およびPCT US2006/020552を参照されたい)。
【0267】
本発明の細胞の遺伝子発現を測定することができる。遺伝子発現レベルの測定は、当技術分野で既知の任意の方法で実施可能であって、その方法にはマイクロアレイ遺伝子発現解析、ビーズアレイ遺伝子発現解析、およびノーザン解析などがあるがそれらに限定されない。遺伝子発現レベルは、ADPRT(受入番号NM_001618.2)、GAPDH(受入番号NM_002046.2)、または当技術分野で既知の他のハウスキーピング遺伝子に対して標準化された相対的発現として表される。遺伝子発現データはまた、中央値法の中央値によって標準化することもできる。この方法において、それぞれのアレイは異なる総強度を与える。中央値を使用することは、実験において細胞株(アレイ)を比較するロバストな方法である。一例として、それぞれの細胞株について中央値を求めた後、それらの中央値の中央値が、標準化のための値となった。それぞれの細胞株からのシグナルは、他の細胞株のそれぞれに対して相対化された。遺伝子発現レベルに基づいて、対応するタンパク質の本発明の細胞による発現が予想されることになる。
【0268】
本発明の別の実施形態において、下記の単一細胞由来もしくはオリゴクローン性細胞由来細胞、またはそれらの分化した子孫は、ユニークなCD抗原遺伝子発現パターンを示す可能性があり、それらは細胞表面抗原である。細胞表面上のCD抗原の発現差異は、ツールとして、たとえば、細胞にどのCD抗原が発現しているかに基づいて、市販の抗体を用いて細胞を選別するために、有用となりうる。本発明の一部の細胞のCD抗原発現プロファイルは、West et al., 2008, Regen Med vol. 3(3) pp. 287-308に示されており、追加の情報も含めて、参考として本明細書に組み入れられる。関係のある、より分化した本発明の細胞で発現されるが、ES細胞では発現されない(または、場合によっては著しく低下したレベルの)、いくつかのCD抗原がある。このカテゴリーに該当する抗原には、CD73、CD97、CD140B、CD151、CD172A、CD230、CD280、CDw210bがある。これらの抗原は、ネガティブ選択戦略として、ES細胞を増殖させたり、あるいはまた下記の特定の細胞を単離するのに役立つ可能性がある。
【0269】
本発明の別の実施形態において、単一細胞由来およびオリゴクローン性細胞由来細胞、またはそれらの分化した子孫を、マウスに注入して、分化抗原に対する抗体を生じさせることができる。分化抗原に対する抗体は、細胞を同定して細胞治療用集団の純度を実証するためにも、細胞分化の研究のためにも、移植後の細胞の存在および運命を立証するためにも、有用となるであろう。一般に、抗体を産生させるための技法は当技術分野でよく知られている。
【0270】
本発明の別の実施形態において、単一細胞由来およびオリゴクローン性細胞由来細胞、またはそれらの分化した子孫を、元の幹細胞型より多能性は少ないが未だ完全に分化した細胞ではない、多様な細胞型をさらに多量に生じさせる目的で使用することができる。次に、これらの細胞株からmRNAまたはmiRNAを調製し、それらの相対的遺伝子発現のマイクロアレイを本明細書に記載のように実施することができる。
【0271】
本発明の別の実施形態において、単一細胞由来およびオリゴクローン性細胞由来細胞、またはそれらの分化した子孫は、たとえばECM成分などの他の分子とともに、またはそれらなしで、細胞の用量を段階的に増加させて移植する動物移植モデルに使用して、移植後に細胞が増殖するかどうか、細胞がどこに移動するか、ならびに安全性試験における細胞の長期分化運命を調べることができる。
【0272】
本発明の別の実施形態において、本発明の細胞は、ベータトロフィンおよびアディポネクチンを培地中に発現させるBAT細胞成分に分化するよう誘導された場合、研究用および治療用に前記タンパク質を製造する手段として使用することができるが、これは使用済み培地を使用し、または分泌タンパク質の温和な尿素抽出のための本明細書に記載の方法を使用し、または単に使用済み培地を集めてさまざまな純度レベルまでタンパク質を精製する。
【0273】
本発明の別の実施形態において、本発明の方法にしたがって作製された単一細胞由来およびオリゴクローン性細胞由来細胞は、単一細胞または少数の細胞(すなわちクローン)からmRNA、マイクロRNA、およびcDNAを回収して、遺伝子発現情報のデータベースを作成するために有用である。このデータベースは、研究者が、データベースの中のどの細胞型が検討中の1つもしくは複数の細胞型と同レベルで遺伝子を発現するか否かについて検索することによって、細胞型の同一性を識別することを可能にする。たとえば、mRNAの相対的発現は、当技術分野でよく知られているマイクロアレイ解析を用いて測定することができる。相対値をMicrosoft Excelなどのソフトウェアプログラムに取り込んで、さまざまな細胞株から得られた遺伝子発現の値を、たとえば平均値、最頻値、中央値、およびquantile normalizationなどの当技術分野で周知のさまざまな手法を用いて標準化することができる。当技術分野で周知のThe R Project for Statistical Computingなどのソフトウェアを用いて、単連結法による階層的クラスタリングを実行することができる。このようなドキュメントの例は、オンラインで見出すことができる。次に階層的クラスタリング解析を、当技術分野でよく知られているように実行することができる。これらのソフトウェアプログラムは、クラスター化される多数のオブジェクトに関する一群の非類似度を用いて階層的クラスター分析を実行する。まず初めに、各オブジェクトをそれ自身のクラスターに入れ、その後繰り返し、類似したクラスターをそれぞれ、1つのクラスターになるまで結合する。クラスター間の距離は、Lance-Williams非類似度更新式によってコンピューター処理される(Becker, R. A., Chambers, J. M. and Wilks, A. R. (1988) The New S Language. Wadsworth & Brooks/Cole. (S version.); Everitt, B. (1974). Cluster Analysis. London: Heinemann Educ. Books)。典型的には、デンドログラムの縦軸は、細胞クローンの遺伝子発現プロファイルの類似度を表す。すなわち、それらが分岐して離れるのが下方に遠いほど、細胞クローンの類似性は高い。縦軸は、n-1の非減少実数値のセットである。クラスタリングの高さは、個別の凝集型に関する、クラスタリング法と関連する基準値である。新たな細胞株が既存の細胞株と同一であるかどうかを判断するために、2種類の反復実験(replicate):生物学的(biological)および技術的反復実験(technical replicate)を実施する。生物学的反復実験は、新たな細胞株を増殖させ、mRNAを回収した後、分析を比較することが必要である。その一方で、技術的反復実験は、同じRNAを2回分析する。次に、カットオフ線の下で枝分かれする細胞が同一細胞型とみなされるように、反復実験が枝分かれするすぐ上にカットオフ線を引く。上記データベースに関するもう1つの情報源は、下記の単一細胞由来およびオリゴクローン性細胞由来細胞、またはそれらの分化した子孫のマイクロRNAプロファイルであってもよい。マイクロRNA(miRNA)は、mRNAを切断または翻訳抑制の標的とすることによって、動植物において重要な調節上の役割を果たす、約22ヌクレオチドの内在性RNAである。700個を超えるmiRNAが種を超えて同定されている。その発現レベルは、種や組織によって異なる。少量のmiRNAは、クローニング、ノーザンハイブリダイゼーション、および修正Invader(登録商標)アッセイなどの現行の技術に基づいて検出することが困難であった。本発明において、looped-primer RT-PCRと呼ばれる新しいリアルタイム定量法を用いた別のアプローチが、ヒト胚性幹細胞およびヒト胚性幹細胞から分化した細胞株に存在する、miRNAならびに他の非コードRNA(ncRNA)分子の、正確で高感度な検出のために用いられた。
【0274】
本発明の別の実施形態において、遺伝子発現解析を用いて、in vitro分化したhES細胞について発生経路および細胞型を同定することができる。ヒトもしくは非ヒトの胚組織または胎児(胎仔)組織から得られた単一細胞または少数の細胞の遺伝子発現解析は、分化段階の異なる別個の細胞集団のユニークな遺伝子発現プロファイルのデータベースを作成するためのもう1つの手段を提供する。特定の組織から単離された単一細胞に関する遺伝子発現解析は、Kurimoto et al., Nucleic Acids Research (2006) Vol. 34, No. 5, e42によって既に記載されるように実施することができる。したがって、細胞miRNAプロファイルは、それだけで、または遺伝子発現プロファイル、免疫細胞化学、およびプロテオミクスと連繋して、組織、および分化細胞株の発生段階を識別するために用いることができる分子シグネチャーを提供する。この方法は、データベースを用いて正確に細胞型を識別し、それを他の細胞型から区別することができることを例証する。本発明の方法はまた、発現レベルはさまざまであるがすべての細胞株で発現される遺伝子とは対照的に、ある細胞株では比較的高レベルで発現される一方で、他の細胞株ではまったく発現されない一部の遺伝子発現マーカーを提供するのに有用である。こうした一部の“全部又は無(all-or none)”マーカーは、たとえばオリゴヌクレオチドプローブの利用もしくは当技術分野で既知の他の手段により測定される発現レベルを比較し、1つの細胞株の遺伝子発現レベルを本発明の他のすべての細胞株と比較することによって、容易に同定することができる。一部の細胞株で比較的高レベルに発現され、他の細胞株ではまったく発現されない遺伝子は、遺伝子発現マーカーのショートリストを作成するために用いられる。本明細書に記載の細胞および遺伝子発現データに適用される場合、Illumina 1における発現陰性は<120 RFUであり、発現陽性は>140 RFUである。
【0275】
オイルレッドO染色
オイルレッド染色は、脂肪生成分化の識別に使用される。オイルレッドOはSigma-Aldrichから購入した(カタログ番号O1391-500ML)。細胞、細胞培養容器に付着した細胞、または細胞/マトリックス構築物、たとえば細胞を含有するHyStemビーズを、30分間4%パラホルムアルデヒドで固定する。次に細胞もしくは上記の構築物を蒸留水ですすぎ、濾過したオイルレッドO溶液の希釈標準溶液(0.5%オイルレッドO水性原液3に対して、水2の割合で希釈)を用いて室温にて10分間染色し、次にWhatman濾紙で濾過する。オイルレッドOの原液は、イソプロパノール中0.5% (w/v) オイルレッドOである。細胞もしくは構築物を、その後、水で少なくとも4回すすいでから、顕著な細胞質内の赤い脂肪滴を示す細胞の割合を記録するために写真撮影する。
【0276】
胚性前駆細胞およびそれらの分化した子孫の遺伝子発現を解析するための方法
下記の、本発明の一部の実施形態において、以下の方法は、胚性前駆細胞、およびそれらの分化した子孫、たとえばin vitroで分化したそれらの子孫、の遺伝子発現解析に有用であると考えられる。
【0277】
RNAの単離
RNAは、Rneasyミニキット(Qiagen)を用いて、メーカーの説明書にしたがって、細胞溶解物から調製される。簡単に説明すると、細胞培養物をPBSで洗浄した後、最小量のRLT溶解バッファー中で溶解する。氷上でインキュベーション後、細胞片を遠心分離によって除去し、溶解物をRLTバッファーと混合し、その後エタノールを混合物に添加する。その混合物を、Rneasyスピンカラムにロードして遠心する;その後ロードされたカラムを洗浄し、精製RNAは、最小量のDEPC処理水(典型的には100μl以下)でカラムから遊離される。最終溶離液中のRNA濃度は、260 nmにおける吸光度により測定される。
【0278】
cDNA合成
cDNA合成は、SuperScript First Strand cDNAキット(InVitrogen; Carlsbad, CA)を用いて実施される。簡単に説明すると、1μgの精製RNAをランダムヘキサマー存在下で熱変性させる。冷却後、第1鎖反応は、キットにあるSuperSript逆転写酵素および関連試薬を用いて完了する。得られた産物をさらに、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を用いて、メーカーの説明書にしたがって精製する。略記すると、PBバッファーを第1鎖cDNA反応産物に添加し、次いでその混合物をQIAquickスピンカラムにロードして遠心する。カラムをPEバッファーで洗浄すると、精製cDNAが、50μl水を用いてカラムから溶離される。
【0279】
定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)分析
検査用サンプル(鋳型)は、標準のOptical96ウェル反応プレート(Applied Biosystems Carlsbad, CA, PN 4306737)内で調製したが、これは、cDNAに対応するRNA 30 ng、遺伝子特異的カスタムオリゴヌクレオチドプライマーセット(Life Technologies, Carlsbad, CA or Eurofins Genomics, Huntsville, AL)それぞれ0.8μM、超純水(Life Technologies Cat. # 10977015)からなるものであって、12.5μlのPower SYBR Green PCR Master Mix (Applied Biosystems Carlsbad, CA, Cat. # 4367659)で1:1希釈して、AmpliTaq Gold DNA ポリメラーゼを混合し、総反応容量25μlとした。リアルタイムqPCRは、Applied Biosystems 7500 Real-Time PCR Systemを用いて、SDS2.0.5ソフトウェアにより実行された。増幅条件は、50℃にて2分間(ステージ1)、95℃にて10分間(ステージ2)、95℃にて15秒間を40サイクル、その後60℃にて1分間(ステージ3)に設定し、解離段階(ステージ4)は95℃にて15秒間、60℃にて1分間、および95℃にて15秒間とした。アンプリコンのCt値は、GAPDHの平均Ct値に対して標準化された。
【0280】
qPCRプライマー
qPCRプライマーペアは、それぞれの標的遺伝子に対して合成される。簡潔に述べると、標的遺伝子に対するプライマーペアは、標的mRNA配列だけを増幅し、好ましくは、それらの標的配列に対して65-80℃の範囲にあるアニーリング温度を有し、特有の増幅産物のサイズが80-500 bpの範囲にあるように、デザインされる。プライマーペアは、カスタムqPCR OpenArrayプレートを作製するために、実用濃度(10μM)でBioTrove, Inc. (Woburn, MA)に提供される。OpenArrayプレートは、56-336プライマーペアを収容するようにデザインされ、完全に乾燥されたプライマーペアを有するプレートの最終製品が、サービス提供会社に供給される。精製cDNA反応産物およびSYBR Green Master Mixを、OpenArray AutoLoaderデバイス(BioTrove)を用いてOpenArrayプレートの個々のウェルに加える。プレートを密封し、qPCR、および増幅のためにNT Imager/Cycler装置(BioTrove)に入れる。各サンプルのCt値は、OpenArrayアプリケーションソフトウェアを用いて計算される。
使用されたプライマー:
GAPDH (NM_002046.4)
f. GGCCTCCAAGGAGTAAGACC [配列番号1]
r. AGGGGTCTACATGGCAACTG (147bp) [配列番号2]

UCP1 (NM_021833.4)
f. AGGCGTGAAGAGCAAGGGAAA [配列番号3]
r. CCCCATCTTCACTCAGAGACTG (89bp) [配列番号4]

FABP4(NM_001442.2)
f. GACCTGGACTGAAGTTCGCA 5 - [配列番号5]
r. ACTTGCTTGCTAAATCAGGGA (94bp) [配列番号6]

LOC55908(TD26、ベータトロフィン、C19orf80) (NM_018687.5)
f. CTACGGGACAGCGTGCAGC [配列番号7]
r. CAGCATGATTGGTCCTCAGTTCC (257bp) [配列番号8]
-- このプライマーを特に1422と称する。

LOC55908(TD26、ベータトロフィン、C19orf80) (NM_018687.5)
f. GCTGACAAAGGCCAGGAACAGC [配列番号9]
r. ACCTCCCCCAGCACCTCAGC (180bp) [配列番号10]
- このプライマーを特に1424と称する。

LOC55908(TD26、ベータトロフィン、C19orf80) (NM_018687.5)
f. GCAAGCCTGTTGGAGACTCAG [配列番号11]
r. CTGTCCCGTAGCACCTTCT (110bp) [配列番号12]
-- このプライマーを特に1085と称する。
【0281】
分泌タンパク質単離プロトコール1 - 馴化培地
細胞は、その細胞の通常の増殖培地(West et al., 2008, Regen Med vol. 3(3) pp. 287-308)中で、または本明細書に記載の分化条件下で、増殖させた。小規模に(典型的には1-2 L以下)馴化培地を得るために、細胞は、10% CO2雰囲気の37℃インキュベーターにおいて、T150、T175もしくはT225フラスコ(CorningまたはBD Falcon)内で、単層培養にて増殖させた。より大量の培地を集めるために、細胞は典型的には、2 Lローラーボトル内で、(Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)製のCytodex各種のように多孔質の、もしくはSoloHill Engineering(Ann Arbor, MI)製のような非多孔質の)マクロキャリアー懸濁液によってスピナーフラスコもしくは他のバイオリアクター内で、または中空糸カートリッジバイオリアクター(GE Healthcare, Piscataway, NJ)内で増殖させた。馴化培地採取の前に、胎仔血清タンパク質を除去するために、培養物をPBSで2回すすぎ、次に無血清培地の存在下で37℃にて2時間インキュベートしたが、この培地は、細胞の増殖または分化用の本明細書に記載の同一基本培地である。その後、無血清培地を除去し、新鮮培地に置き換えてから、37℃にて24-48時間本明細書に記載のように続行した。
【0282】
次に培養馴化培地を、細胞が結合した容器表面もしくはマトリックスから(たとえば、そのまま注ぎ出して、または遠心沈降後に)分離して採取し、分泌タンパク質濃度、濃縮もしくは精製のためにさらに処理した。収集量にふさわしいとされるように、培地をまず、15ないし50 ml遠心管、または250 mlボトル内で、500から10,000 x gで遠心分離して残存する細胞および細胞片を除去した。次に、1μmもしくは0.45μm、および0.2μmフィルターユニットを続けて通過させて、それ以上の残屑を除去し、その後、少量には、攪拌セルでの10,000 MWカットオフ超遠心もしくはCentricon遠心式フィルター(Amicon-Millipore)を用いて、大量にはタンジェンシャルフロー超遠心ユニット(Amicon-Millipore)を用いて、濃縮した。残留タンパク質濃縮物を次に、個別のタンパク質のその後の精製に適したバッファー中で透析し、等電点電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性もしくは逆相クロマトグラフィー、抗体アフィニティクロマトグラフィー、または個別のタンパク質に適した他の公知の方法を併用してさらに精製した。精製過程のさまざまな段階で、収集画分は、個別の分泌タンパク質の存在および量についてELISAにより(たとえばR&D Systems(Minneapolis, MN)製のBMP-2もしくはBMP-7 ELISAキットを用いて)検査した。精製タンパク質はその後、溶液中に保持されるか、または凍結乾燥後4℃もしくはマイナス20-80℃にて保存された。
【0283】
分泌タンパク質単離プロトコール2 - 尿素によるタンパク質抽出
一部の分泌タンパク質の場合、細胞もしくはECM成分との相互作用によって、上記分泌タンパク質単離プロトコール1に記載されるような、培地中へのファクターの単純拡散が減少する可能性がある。2つのプロトコールにおける収率の単純比較だけで、どちらのプロトコールが、求めるファクターの最高収率をもたらすかを判定するのに十分である。分泌タンパク質単離プロトコール2の場合、低濃度の尿素を添加して、ファクターの取り出しを促進する。与えられた例の場合、すべての尿素抽出は、添加後2日行われた。2日目に、T-150細胞培養フラスコ内の細胞単層をCMF-PBSで2回すすいだ後、無血清培地の存在下で37℃にて2時間インキュベートした。CMF-PBSですすぎ、無血清培地中でインキュベートすることはともに、細胞表面から胎仔血清タンパク質を取り除くのに役立つ。次に無血清培地を除去して、新調製のCMF-PBS中200 mM尿素をT150フラスコ当り10 ml添加した。その後フラスコを37℃の振動台に6.0時間置いた。次に尿素溶液を除去し、ただちに-70℃で凍結した。
【0284】
細胞外マトリックス単離プロトコール - DOCによる調製
細胞外マトリックスタンパク質は、Hedmanら、1979 (Isolation of the pericellular matrix of human fibroblast cultures. J. Cell BioI. 81: 83-91)の方法を用いて抽出することができる。細胞層を室温にてCMF-PBSバッファーで3回すすいだ後、振動台の上であるが氷上で、30 mlの0.5%デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、1 mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF、エタノール中0.4M溶液より)、CMF-PBSバッファーにより3×10分間、洗浄した。次にフラスコを、2mM Tris-HCI、pH 8.0および1 mM PMSFにより3×5分、同様に洗浄した。その後、フラスコに付着して残存するタンパク質を、2 mlのゲルローディングバッファー中でラバーポリスマンを用いて取り除いた。
【0285】
分泌タンパク質もしくは細胞外マトリックスタンパク質の生物活性スクリーニング
本発明の細胞株およびそれらの分化した子孫は、多様な胚性セクレトームを、さまざまな生物活性についてスクリーニングする手段としても有用である。18-21倍加のクローン性増殖で培養された本発明の細胞株は、幅広い分泌型可溶性および細胞外マトリックス遺伝子を発現する(2009年7月16日出願の“METHODS TO ACCELERATE THE ISOLATION OF NOVEL CELL STRAINS FROM PLURIPOTENT STEM CELLS AND CELLS OBTAINED THEREBY”と題された米国特許出願公開2010/0184033を参照されたいが、これは参考として本明細書に組み入れられる)。21倍加以上のクローン性増殖において、本発明の細胞は、分泌型可溶性および細胞外マトリックス遺伝子を特異的に発現する。これらのタンパク質、プロテオグリカン、サイトカイン、および増殖因子は、本発明の胚性前駆細胞株もしくはそれらの分化した子孫から、下記を含めて当技術分野で公知のさまざまな技法によって回収することができる。分泌型および細胞外マトリックスタンパク質のこうしたプールは、さらに精製してもよいが、ファクターの混合物として使用してもよく、当技術分野で知られている生物活性のさまざまなin vitroおよびin vivoアッセイに使用することができる。分泌タンパク質は、抗原として使用して、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体などの抗体を作製することもできるであろう。その抗体を次に、分泌タンパク質を単離するために使用することができる。たとえば、ADIPOQなどのアディポカイン遺伝子またはC19orf80(ベータトロフィン)に対する遺伝子を発現する分化した子孫を用いて、細胞からアディポカインを単離する、またはそれに対する抗体を作製することができる。アディポカインは、研究もしくは治療に使用することができる。抗体を用いて、下記の細胞もしくはアディポカインを発現する他の細胞からアディポカインを精製することができる。
【0286】
細胞株のルーチン培養
細胞を解凍、培養し、ルーチン的にCa MgフリーPBSで1:3希釈した0.25%トリプシンで単個細胞に解離して、ゼラチンコートした組織培養プレート上に蒔いた。37℃にて10% CO2 および5% O2の加湿環境で、細胞株は維持され、HyStemビーズ実験を除いてすべてのその後の実験が実施された。細胞株NP88 SM、NP111 SM、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31、NPCC SM36、NP92 SM、NP91 SM、NP93 SM、NP95 SM、およびNP113 SMの前記の増殖のための培地は、増殖を補助する追加物質:5%ウシ胎仔血清、0.5 ng/ml EGF、2.0 ng/ml 塩基性FGF、および5.0μg/mlインスリンを含有するMCDB131培地とした。細胞株SK1およびESI-004-EP SK8の増殖用培地は、GlutaMAX 2mM、およびペニシリン-ストレプトマイシン溶液10,000 U/ml、5% FCS、50 ug/mLウシ フェチュイン、10 ng/mL組換えEGF、1.0 ng/mL組換えbFGF、10 ug/mL組換えインスリン、0.4 ug/mLデキサメタゾン、および2.0 mM GlutaMAX-1 supplementを含有するMCDB120基本培地とした。細胞株NP77 EN、NP78 EN、NP80 ENおよびNP95 ENは、Promocell MV2内皮細胞培地で培養した。
【0287】
脂肪生成プロトコール1
HyStem-Cマトリックス(BioTime, Alameda, CA)は次のように調製する。HyStem成分(チオール修飾ヒアルロナン10 mg)を、脱気した脱イオン水1.0 ml中に約20分間溶解し、1% w/v溶液を調製する。Gelin-S(登録商標)成分(チオール修飾ゼラチン(BioTime)10 mg)を、脱気した脱イオン水1.0 ml中に溶解して1% w/v溶液を調製し、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA 10 mg)を、脱気した脱イオン水0.5 ml中に溶解して2% w/v溶液を調製する。次に、使用直前にHyStem(1 ml、1% w/v)をGelin-S(1 ml、1% w/v)と混合する。ペレット状の本発明の細胞を上記の新調製HyStem:Gelin-S(1:1 v/v)混合物中に再懸濁する。PEGDA架橋剤を添加したら、ある程度ゲル化した後、細胞懸濁液を、2.0 × 107細胞/mlの終濃度で、6ウェルプレート(Corning(登録商標)3516; VWR, PA, USA)に分割する(25μl/分割量)。完全にゲル化した後(20分)、分化培地を各ウェルに加える。分化培地は、ピルビン酸塩1mM (Gibco Cat. 11360)、ペニシリン:ストレプトマイシン100U/ml:100ug/ml(Gibco Cat. No. 504284)、GlutaMAX 2mM(Gibco Cat. No. 35050)、デキサメタゾン0.1uM(Sigma, St. Louis, MO, Cat. No.D1756-100)、L-プロリン0.35mM(Sigma Cat. No. D49752)、2-ホスホ-L-アスコルビン酸0.17mM(Sigma, Cat. No. 49792, Fluka)、およびITS Premix(BD, Franklin Lakes, NJ, sterile Cat. No. 47743-628)を含有する高グルコースDMEM(CellGro Cat. No. 15-013-CV)であって、このITS Premixは終濃度6.25ug/mlインスリン、6.25ug/mlトランスフェリン、6.25ng/ml 亜セレン酸、血清アルブミン1.25mg/ml、5.35 ug/ml リノール酸を含有するものである。分化培地には、10 ng/ml BMP4とともに、または10 ng/ml BMP4なしで、1.0μMロシグリタゾン、および2.0 nM トリヨードチロニン(T3)が添加される。プレートを、大気中のO2および10% CO2を有する37℃の加湿インキュベーターに入れ、細胞は週3回フィードされる。使用直前の4時間の間、10μM CL-316,243が培地に添加された。望ましい時点で、ハイドロゲル構築物を、免疫組織化学分析のために固定して処理するか、または全RNAのために1%βメルカプトエタノールを含有するRLT(Qiagen, CA, USA)を用いて溶解して定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)および/もしくは全ゲノムマイクロアレイによって転写物の発現を分析するか、または治療用に凍結保存した。分化の手段としてHyStemビーズを使用すると、数多くの多様なhEP細胞型を有する多数のビーズの集積を促進し、それらを、たとえばハイスループットロボットシステムで、同時に解凍してアッセイすることが可能であって、そこでビーズはさまざまな分化条件にさらされ、その分化が遺伝子発現マイクロアレイ、もしくは当技術分野で知られている他の方法によって分析される。それによって、多数の凍結保存されたビーズの解凍、ならびにさまざまなタイプの埋め込まれた細胞とビーズを組み合わせてのインキュベーション、ならびに分化段階の変化に関するその後の分析、たとえば遺伝子発現マイクロアレイもしくは当技術分野で知られている他の方法、も可能になる。
【0288】
コンフルエンス脂肪細胞分化条件:
細胞は通常の増殖培地でコンフルエンスに達するまで培養し、次に、DMEM低グルコース培地、10% FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、GLX、ITS、デキサメタゾン1uM、IBMX 0.5mM、インドメタシン60uMを用いて、14日間分化培地に移した。使用されたITS濃度は6.25ug/ml インスリン、6.25ug/mlトランスフェリン、6.25ng/ml亜セレン酸、血清アルブミン1.25mg/ml、5.35 ug/mlリノール酸であった。指定の期間、Qiagen RNeasy kits (Qiagen, Valencia, CA, USA cat. #74104)を用いて、メーカーの説明書にしたがってRNAを抽出した。RNA収率は、RNA抽出の前にRLTバッファーで微量を溶解した後サンプルをホモジナイズするためにQiagen’s QiaShredder (Qiagen, Valencia, CA, USA cat. #79654)を使用して最大となった。
【0289】
遺伝子発現解析
全RNAは、6ウェルプレートもしくは10 cm組織培養ディッシュで増殖させた細胞から直接、Qiagen RNeasyを用いてメーカーの説明書にしたがって抽出した。RNA濃度は、Beckman DU530もしくはNanodrop分光光度計を用いて測定し、RNAの品質は、変性アガロースゲル電気泳動によって、またはAgilent 2100バイオアナライザを用いて判定した。全ゲノム発現解析は、Illumina Human Ref-8v3またはHuman HT-12 v4 BeadArrayを用いて実行し、特定の遺伝子のRNAレベルはqRTPCRで確認した。Illumina BeadArrayのために、全RNAは、Illumina TotalPrepキット(Life Technologies, Temecula, CA, USA)を用いて、線形に増幅してビオチン標識し、cRNAは、Agilent 2100バイオアナライザを用いて品質管理した。cRNAはIllumina BeadChipとハイブリダイズして処理し、BeadStationアレイリーダーを用いてメーカーの説明書にしたがって読み取った(Illumina, San Diego, CA, USA)。120相対蛍光単位(RFU)未満の値は、非特異的なバックグラウンドシグナルとみなした。
【0290】
未分化hEP細胞株におけるmRNA発現の比較
以前に報告した、II型コラーゲン、アルファI(COL2A1)mRNA発現に関する、100個の異なるhES由来クローン性hEP細胞株の選別は、部位特異的遺伝子発現を示す7つの反応性の細胞株:4D20.8、7PEND24、7SMOO32、E15、MEL2、SK11、およびSM30を同定した(Sternberg et al, Regen Med. 2013 Mar;8(2):125-44)。7つの異なるヒト胚性幹細胞由来軟骨形成クローン性胚性前駆細胞株は、部位特異的細胞運命を示す。脂肪細胞分化の能力を有する部位特異的hEP細胞株を選別するために、より詳細には、褐色脂肪細胞分化の能力を有するhEP細胞株を特定するために、さまざまなhEP細胞株を、前記BAT細胞分化を誘導することができる条件、たとえば本明細書に記載のBMP4を追加してHyStemビーズの存在下で当該前駆細胞を培養してアディポカインC19ORF80の発現についてスクリーニングするといった条件で、またはBAT細胞分化の能力を有する細胞においてUCP1発現を誘導することが見込まれる脂肪細胞分化プロトコール1のような条件下で分化させ、mRNAをIllumina Human HT-12 v4 BeadArray Analysisを用いたマイクロアレイ分析によって解析した。RFU値は、ランク不変で標準化され、得られた値を本明細書に記載のように比較した。120 RFU未満のRFU値は、本発明に提示されるデータに関して、非特異的ハイブリダイゼーションに伴うバックグラウンドRFU値とみなした。
【0291】
キットおよび培地
ある実施形態において、本発明は下記のhEP細胞などの分化した前駆細胞のキットを提供する。ある実施形態において、キットは、1つもしくは複数の外から加えられたTGF-βスパーファミリーメンバーを添加した培地を含んでなる。TGF-βスーパーファミリーメンバーは、下記の1つもしくは2つ以上とすることができる:TGF-β3などのTGF-βタンパク質、BMP2、4、6および7などの骨形成タンパク質(BPM)、GDF5などの増殖分化因子(GDF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、アクチビン、レフティー、ミュラー管抑制因子(MIS)、インヒビン、およびノダル(Nodal)。一部の実施形態において、培地には、多数の外部から加えられたTGF-βスーパーファミリーメンバーが追加される。ある実施形態において、培地にはBMP4およびBMP7が加えられる。別の実施形態において、前駆細胞株は、条件を組み合わせて培養されるが、そこで細胞は、TGF-βスーパーファミリーメンバー、レチノイン酸、PPARγのアゴニスト、アドレナリン作動性アゴニスト、および甲状腺ホルモンなどの分化剤あり、またはなしで、下記のように実質的に正常な体温以下の温度で、ヒドロゲル中で培養される。前項に記載のTGF-βスーパーファミリーメンバーのうち1つもしくは2つ以上を、約1 ng/ml、5 ng/ml、10 ng/ml、15 ng/ml、20 ng/ml、25 ng/ml、30 ng/ml、40 ng/ml、50 ng/ml、60 ng/ml、70 ng/ml、80 ng/ml、90ng/ml、100 ng/ml、200 ng/ml、300 ng/ml、400 ng/ml、500 ng/ml、600 ng/ml、700 ng/ml、800 ng/ml、900 ng/ml、1,000 ng/mlの濃度で培地中に供給することができる。本発明の一部の実施形態において、前項に記載のTGF-βスーパーファミリーメンバーは、1,000 ng/mlを上回る濃度で培地に加えることができる。TGF-βスーパーファミリーメンバーは、TGF-β3などのTGF-βタンパク質、BMP2、4、6および7などの骨形成タンパク質(BPM)、GDF5などの増殖分化因子(GDF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、アクチビン、レフティー、ミュラー管抑制因子(MIS)、インヒビン、およびノダルから選択することができる。
【0292】
一部の実施形態において、キットは、外部から加えられたレチノール類、たとえばレチノイン酸を追加した培地を含んでいてもよい。外部から加えられるレチノイン酸は、約0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μMの濃度で提供することができる。一部の実施形態では、外部添加レチノイン酸の濃度は5.0μMより高い。
【0293】
一部の実施形態において、キットはさらに、ヒドロゲルを含有することもある。ヒドロゲルはヒアルロン酸塩、ゼラチンおよびアクリレートで構成されることがある。ヒアルロン酸塩はチオール化されていてもよい。ゼラチンはチオール化されていてもよい。アクリレートは、PEGジアクリレートなどのPEGアクリレートとすることができる。
【0294】
本発明の特定の実施形態において、キットはさらに、下記の細胞を含有することができる。したがって、一部の実施形態において、キットはさらに、hEP細胞などの前駆細胞を含んでいてもよい。hEP細胞は軟骨形成能を有する可能性がある。他の実施形態において、キットはさらに、前駆細胞の進化した子孫、たとえば、下記前駆細胞のin vitroで分化した子孫を含んでいてもよい。本発明のキットはさらに、使用説明書を含めることができる。
(実施例)
【実施例0295】
多様なクローン性胚性前駆細胞株の脂肪細胞分化条件の効果の解析
図1に示すように、多くの多様なクローン性胚性前駆細胞株(Ctrl)は、10 ng/ml BMP4、1.0μM ロシグリタゾン、2.0 nM トリヨードチロニン(T3)を添加し、使用前の最後の4時間に10μM CL316243を追加したHyStemビーズで培養すると、レベルの上昇した脂肪細胞マーカーFABP4を発現した(分化型)。図2-4に示すように、これらの多様なクローン性hEP細胞株のあるサブセットだけが、UCP1、BETATROPHIN(C19ORF80、LOC55908、およびC19Orf80としても知られる)もしくはADIPOQのアップレギュレーションを示した。培養された胎仔褐色脂肪組織(fBAT)由来の前脂肪細胞、および皮下脂肪組織(SAT)由来の前脂肪細胞は、ほんの少数の細胞の、本明細書に記載の脂肪細胞マーカーオイルレッドOによる染色、および少数の細胞のUCP1に対する染色を示すのに対して、NP88およびNP110株の分化型培養物では、基本的にすべての細胞が、マーカーに対して染色された(図5)。図6に示すように、最適なUCP1発現は、細胞が1.0μMロシグリタゾン、2.0 nM トリヨードチロニン(T3)、および使用前4時間だけ10μM CL316243の存在下で分化するような条件でのHyStemビーズで観察された。それに加えて、ELISA分析は、上記株においてアディポネクチンおよびリパシン(lipasin)産生の強いアップレギュレーションを確認した。
【実施例0296】
万能ドナーcGMPヒトES細胞株から作製されたBAT細胞
臨床グレードcGMP適合ヒトES細胞株を、CTLA4-IgおよびPD-L1を構成的に発現するように遺伝子改変する(Z. Rong, et al, An Effective Approach to Prevent Immune Rejection of Human ESC-Derived Allografts, Cell Stem Cell, 14: 121-130 (2014)、これは参考として本明細書に組み入れられる)。簡単に説明すると、HPRT BACクローンRP11-671P4(Invitrogen)などのBACベースの標的化ベクターを用いて、J. Crook et al, The Generation of Six Clinical-Grade Human Embryonic Stem Cell Lines, Cell Stem Cell 1, November 2007により記載されるヒトES細胞株を、遺伝子CTLA4-IgおよびPDL1を構成的に発現するように遺伝子改変するが、標的化ベクターは、記載(Rong et al, A scalable approach to prevent teratoma formation of human embryonic stem cells, J. Biol. Chem. 287: 32338-32345; Song et al, Modeling disease in human ESCs using an efficient BAC-based homologous recombination system, Cell Stem Cell 6: 80-89.)のような組換え操作によって構築され、これらは参考として本明細書に組み入れられる。pCAG/CTLA4-Ig/IRES/PD-L1/poly A発現カセットは、HPRT1終止コドンの600 bp下流に配置され、Loxp隣接選択カセットpCAG/Neo/IRES/Puro/polyAは、HPRT1終止コドンとそのpolyA部位の間に配置されたが、その後選択カセットのCreによる除去によって正常なHPRTの発現がもたらされた。
【0297】
遺伝子改変はcGMP条件下で実施され、hES細胞のゲノムは、記載(Funk, W.D., Evaluating the genomic and sequence integrity of human ES cell lines; comparison to normal genomes Stem Cell Research (2012) 8, 154-164)のように、外来遺伝子の挿入部位を実証し、細胞の正常性を証明するために配列決定される。マスター・セル・バンクおよびワーキング・セル・バンクが確立され、ワーキング・セル・バンクは本明細書に記載のBAT細胞成分に分化するが、本明細書に記載のように、これにはベータトロフィンおよびアディポネクチン発現脂肪細胞ならびにUPC1発現脂肪細胞、さらに血管内皮細胞がともに含まれる。
【実施例0298】
hESC由来の他の多様な胚性BAT細胞前駆細胞の性質検討
いくつかの明確なヒトES細胞由来クローン性胚性前駆細胞株が本明細書においてはじめて公表されている。具体的には、上記の細胞株は次の名称を与えられた:NP88、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31、NPCC SM36、NP111 SM、NP77 EN、NP78 EN、NP80 EN、NP91 SM、NP92 SM、NP93 SM、NP85 EN、NP113 SM、NPCC SM27、およびSK1。すべてのクローン性胚性前駆細胞株は、SK1株を除いて多能性幹細胞株Envy(Costa et al., The hESC line Envy expresses high levels of GFP in all differentiated progeny, NAT Methods 2(4): 259-260 (2005))を起源とし、SK1株はhESC細胞株H9(WA09)を起源として、“Novel Uses of Cells With Prenatal Patterns of Gene Expression”という表題:2006年11月21日出願の“Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby”と題された米国特許出願番号11/604,047;2009年7月16日出願の“Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby”と題された米国特許出願番号12/504,630;“Differentiated Progeny of Clonal Progenitor Cell Lines”と題された米国特許出願番号14/048,910の下に記載される方法が用いられたが、これらは参考として本明細書に組み入れられる。クローン性およびオリゴクローン性胚性前駆細胞の、クローン性、オリゴクローン性、およびプール集団を、脂肪生成能およびBAT細胞分化能について、“Methods of Screening Embryonic Progenitor Cell Lines”と題された米国特許出願番号13/683,241、より具体的には、“Methods for Generating Pluripotent Stem Cell-Derived Brown Fat Cells”と題された米国特許出願番号14/554,019に記載されるようにスクリーニングした。
【0299】
簡単に述べると、hES細胞株hES3(Envy)を1mg/mlコラゲナーゼとともに60分間インキュベートした後、ディッシュをそっとたたいてhESコロニーをはがして浮遊液とした。このコロニーを集め、解離して、小さな凝集塊とし、これを胚様体(EB)形成のため超低接着プレート(CoStar, Corning, Cat# 3471)に蒔いた。EBは神経分化培地において形成されたが、この培地は、Glutamax I(Invitrogen, Cat# 10565-018)、および1x B27 Supplement、ビタミンAなし(Invitrogen, Cat# 12587-010)を含有するDMEM/F12からなり(これ以降「NP(-)」培地と呼ぶ)、500ng/mlヒト組換えノギン (R & D systems, Cat# 3344-NG-050)および20ng/ml bFGF (Strathmann, 130-093-842)が添加された。次の21日間、使用済み培地を48時間ごとに除去し、500ng/mlノギンおよび20ng/ml bFGFを添加した新鮮培地をEBに添加した。21日目に使用済み培地を除去し、20ng/ml bFGFだけを添加した新鮮培地をEBに加えた。とくに指示のない限り試薬はInvitrogenから入手した。神経EBの形成は、培養物において明白であった。
【0300】
保存候補培養物の作製
クローン単離のための候補株の培養物を作製するために、22日目(FGF2のみで1日培養後)の上記EBを、37℃にて10分間、Accutase(Innovative Cell Technologies, AT-104)で解離し、その後トリチュレートして単個細胞浮遊液を作製した。PBS中の細胞浮遊液を4つのチューブに分け、それぞれ分割したものをNP(-)培地(上記) + 20ng/ml bFGF(本明細書ではNP(+)培地と称する)で希釈した。細胞を180gで5分間遠心分離し、各ペレットを6ウェル組織培養プレートの1ウェル内へ、NP(+)培地中にシードした。培地は最初のプレーティングの24時間後に交換し、その後週3回交換した。コンフルエンスになったら、6ウェルプレート内の細胞をTrypLE (Invitrogen, Cat# 12563-029)を用いて37℃で5分間解離し、段階的により大きい組織培養容器である:T25フラスコ、T75フラスコおよびT225フラスコ内で、NP(+)培地に、数週間にわたって再プレーティングして、コンフルエント細胞のT225増殖段階に達した。T225フラスコのコンフルエント細胞の候補培養物を、その後、TrypLEを用いて解離して計数し、この単個細胞浮遊液の一定量を希釈して、濃度をNP(+)培地中10,000細胞/mlとし、それをT225段階の候補培養段階への培養のために使用した。単個細胞浮遊液の一定分量をその後、クローン希釈度(15cmディッシュに入る500-7000細胞/50ml)で、0.1%ゼラチンコート(Sigma, Cat# G1393)15cmディッシュ内NP(+)培地にプレーティングした。候補培養物の残りの細胞は、凍結保存して後で使用するために、速度制御フリーザープログラムおよび凍結用培地を用いて凍結保存した(典型的には3 x 106 から5 x 106 細胞/バイアル)。
【0301】
候補培養物からのクローン性胚性前駆細胞株の作製
クローニングディッシュは、上記NP(+)培地50mlをゼラチンコート(0.1%)15cm培養ディッシュに添加して調製した。各ディッシュに対して、さまざまな密度の単個細胞浮遊液を得るため、ならびに、単一細胞から増殖させた単コロニーの分離を助けるために、細胞浮遊液を計数して決定された容量の細胞を15cm培養ディッシュに添加することによって、NP(+)培地で増殖させた候補培養物から調製した単個細胞浮遊液を手作業で希釈し、以下の希釈度の細胞セレクション:500細胞/ディッシュまたは、1000細胞/ディッシュまたは;1500細胞/ディッシュまたは;3000細胞/ディッシュ、5000細胞/ディッシュまたは7000細胞/ディッシュが得られた。適当な希釈度のシードされた単個細胞は、インキュベーターの中で30秒間、ディッシュを代わる代わる時計回り、次に反時計回りに滑らせ、さらに左右、次いで前後に繰り返し動かして、ディッシュの中に均一に分散させた。その後ディッシュは、CO2インキュベーター(5% CO2、20% O2)内でインキュベートし、単個細胞が培養ディッシュ表面に接着できるように、また、コロニーが分離に十分な大きさに成長できるように、14日間動かさず、フィードせず、そのままにしておいた。
【0302】
ディッシュを目で見て検査し、よく分離されたコロニーを、滅菌クローニング・シリンダー(Sigma, Cat# CLS31666, CLS31668 & CLS316610)により、6mmシリンダー用には25μl TrypLE、8mmシリンダー用には50μl TrypLE、そして10mmシリンダー用には100μl TrypLEを用いてピックアップした。分離された細胞コロニーをそれぞれ、1mlのPromocell Smooth Muscle Cell Growth Medium 2またはそれと同等の培地(本明細書ではSM培地と称する)を含有する0.1%ゼラチンコート24ウェルプレート(Nunc, 142475)の各1ウェルにプレーティングした。この方法の場合、分離された胚性前駆細胞をSM培地中でさらに培養する。コンフルエンスになったら、24ウェルプレートの細胞を、TrypLEを用いて37℃にて5分間解離し、段階的により大きい組織培養容器である:6ウェルプレートの1ウェル、T75フラスコ、およびT225フラスコ(1つもしくは複数)内で、SM培地中に、数週間にわたって(各継代の間は平均1-2週間)再プレーティングした。T225フラスコ(1つもしくは複数)内のコンフルエント細胞は凍結保存され、単離された胚性前駆細胞株としてバンクに保存され、免疫染色、ならびにRNA単離のために播種されたが、これはたとえば、本明細書に記載の転写物のPCR増幅のためである。ここに細胞株NP88が導き出され、特徴づけられた。
【0303】
凍結保存された候補培養物からの褐色脂肪細胞のクローン性胚性前駆細胞の再導出
この実施例に記載の条件下で作製された凍結保存候補培養物を融解し、さらに追加のクローン性胚性前駆細胞株を上記実施例に記載のように分離した。こうした細胞株のサブセットは、NPCC SM19、NPCC SM23、NPCC SM28、NPCC SM31およびNPCC SM40と命名された。
【0304】
第10継代においてこれらのクローン性胚性前駆細胞株からRNAが抽出され、5日間の静止状態、本明細書において「コントロール」または「Ctrl」と呼ばれることのある状態に入ると、細胞は、下記の表1に記載の遺伝子発現プロファイルを示した。実施例3の目的ために、マイクロアレイで測定されたバックグラウンドを上回る転写物の発現は、実施例3において13 RFUより大きい値と定義され、「発現している」と特徴づけられる。12 RFU未満の転写物発現データを生じるアレイ解析は、実施例3において非発現と特徴付けされる。
【0305】
図7に示すように、これらの細胞株はそれぞれ、10 ng/ml BMP4、1.0μMロシグリタゾン、2.0 nMトリヨードチロニン(T3)、ならびに使用直前の4時間は10μM CL316243を添加したHyStemビーズ中で14日間分化させると、UCP1を発現した(分化型)。図8に示すように、細胞株はADIPOQも発現し、図9に示すように各細胞株はさらにLIPASINを発現した。
【0306】
以下の表1は、未分化前駆細胞の状態にある本発明のさまざまなクローン性胚性前駆細胞株について、遺伝子発現レベルを、Illuminaビーズアレイで定量された、選択されたマーカーのRFU値として示す。(FRU値>130RFUは陽性とみなされるが、FRU値<120RFUは陰性とみなされる)。
【0307】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【外国語明細書】