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特開2022-70924アルギン酸をベースとする抗菌性化合物を使用して炎症と疾患を阻害するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070924
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】アルギン酸をベースとする抗菌性化合物を使用して炎症と疾患を阻害するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/734 20060101AFI20220506BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 15/18 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A61K31/734
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
A61P15/18
A61P29/00
A61P31/00
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022017393
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2020063444の分割
【原出願日】2014-12-19
(31)【優先権主張番号】61/918,445
(32)【優先日】2013-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516182247
【氏名又は名称】エヴォフェム,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ガスリー,ウェンデル
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,ゲイリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルギン酸をベースとする避妊に使用するための組成物を提供する。
【解決手段】避妊に使用するための組成物は、1-10%のアルギン酸、1-10%のキサンタンガム、及び1-4%のL-乳酸を含み、ここで、アルギン酸のマンヌロン酸塩:グルロン酸塩の比率は、0.5~1.2である。前記アルギン酸は100,000乃至200,000の間の平均分子量を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症及び疾患を阻害する組成物であって、該組成物は、1-(6-アミノプリン-9-イル)プロパン-2-イルオキシメチルホスホン酸(テノホビル)又はその生理的に機能的な誘導体、アルギン酸、及び水性ベースの担体を含み;
ここで、アルギン酸は20,000乃至400,000の間の平均分子量を持ち;及び
アルギン酸は、0.25乃至2.0の間のマンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率を持つ
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
酸緩衝避妊薬であって、薬学的に許容可能な担体の中に、1-(6-アミノプリン-9-イル)プロパン-2-イルオキシメチルホスホン酸(テノホビル)又はその生理的に機能的な誘導体、アルギン酸、生体付着性化合物、及び乳酸を含み;
ここで、アルギン酸は20,000乃至400,000の間の平均分子量を持ち;及び
アルギン酸は、0.25乃至2.0の間のマンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率を持つ
ことを特徴とする酸緩衝避妊薬。
【請求項3】
マンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率は、0.3乃至1.5の間である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
マンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率は、0.3乃至1の間である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
マンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率は、0.3乃至0.8の間である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
マンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率は、0.3乃至0.6の間である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
アルギン酸は、75,000乃至375,000の間の分子量を持つ、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
アルギン酸は、100,000乃至300,000の間の分子量を持つ、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
アルギン酸は、100,000乃至200,000の間の分子量を持つ、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
乳酸を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
生体付着性化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
緩衝剤、増粘剤、保水剤、又は防腐剤を更に含む、請求項1乃至11の何れか1つに記載の組成物。
【請求項13】
パモ酸又はその塩を更に含む、請求項1乃至12の何れか1つに記載の組成物。
【請求項14】
担体は水である、ことを特徴とする請求項1乃至13の何れか1つに記載の組成物。
【請求項15】
乳酸はL-乳酸である、ことを特徴とする請求項2又は9に記載の組成物。
【請求項16】
炎症及び疾患を阻害する方法であって、請求項1乃至15の何れか1つに係る組成物の有効な量を局所投与する工程を含む、方法。
【請求項17】
炎症及び疾患を阻害する方法であって、薬学的に許容可能な担体の中に、アルギン酸、生体付着性化合物、及び乳酸を含む化合物を局所投与する工程を含み;
ここで、アルギン酸は20,000乃至400,000の間の平均分子量を持ち;及び
アルギン酸は、0.25乃至2.0の間のマンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率を持つ
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
マンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率は、0.3乃至1.5の間である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
マンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率は、0.3乃至1の間である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
マンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率は、0.3乃至0.8の間である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
マンヌロン酸塩残基:グルロン酸塩残基の比率は、0.3乃至0.6の間である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
アルギン酸は、75,000乃至375,000の間の分子量を持つ、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項23】
アルギン酸は、100,000乃至300,000の間の分子量を持つ、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項24】
アルギン酸は、100,000乃至200,000の間の分子量を持つ、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項25】
疾患は性行為感染症である、ことを特徴とする請求項16乃至24の何れか1つに記載の方法。
【請求項26】
請求項1乃至15の何れか1つの組成物を製造する方法であって:
(a)1-(6-アミノプリン-9-イル)プロパン-2-イルオキシメチルホスホン酸(テノホビル)又はその生理学的に機能的な誘導体を塩基性溶液に溶かす工程;
(b)pHを中性より下に調整する工程、及び
(c)アルギン酸を加える工程
を含む、方法。
【請求項27】
pHは、乳酸を使用して工程(b)において調整される、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1乃至15の何れか1つに記載の組成物と、該組成物を分配するためのデバイスとを含む、キット。
【請求項29】
請求項1乃至15の何れか1つに記載の組成物で覆われる、バリアデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本出願は、2013年12月19日に出願された米国仮出願第61/918,445号の利益を主張するものであり、その内容は、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、アルギン酸をベースとする抗菌性化合物を使用して、炎症、及び性行為感染症などの疾患を阻害するための組成物及び方法に関係する。そのような組成物は、(1)ウィルスと他の微生物を攻撃及び不活性化すること、及び(2)ウィルスが宿主細胞への侵入を引き起こす宿主反応を遮断することにより、2重の保護を提供する。そのような組成物は、酸緩衝避妊薬(acid buffering contraceptive)の一部でもある。
【背景技術】
【0003】
性行為感染症(STD)は、性行動を通じてヒトの間で感染する病気である。STDは、細菌、ウィルス、原生動物、及び寄生生物により引き起こされ得る。多くのSTD、特に細菌、原生動物、及び寄生生物により引き起こされるものは、抗生物質又は他の薬物により治療され得るが、ウィルスにより引き起こされる大半のSTDは、治療されない場合がある。むしろ薬物は、ウィルスのレベルを、症状を引き起こすレベルより下に維持するために使用される。既知のウィルス性STDの中で、3つの最も問題となるものは、ヒト免疫不全ウィルス、肝炎ウィルス、及び単純ヘルペスウィルスである。
【0004】
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体は、出産年齢の女性において最も急上昇している死因である。世界中に、AIDSの異性間性接触による感染は、女性における全てのHIV感染の約90%を占める、AIDSの感染の流行している様式である。それ故、かなりの注意が、HIV感染の性接触による拡散を妨げる研究手段に向けられてきた。エイズに対する有効な処置又はワクチンが存在しないため、予防手段が、現時点でHIVの感染を減らすことができる主要なツールである。例えば、コンドームの一貫して正確な使用は、HIV感染を予防するための有効なバリアを表わす。しかし、HIVの流行している地区でのほぼ全ての性交にコンドームが使用される場合、感染する危険性が著しく減るだけであり;これは、コンドームの使用を増やすための集中的な予防プログラムにもかかわらず、達成することができない結果である。
【0005】
肝炎ウィルスは、肝臓の炎症を引き起こす。最も一般的な肝炎ウィルスは、5つの無関係な肝親和性のウィルス、即ち、A型肝炎(HAV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、D型肝炎(HDV)、及びE型肝炎(HEV)である。5つの肝炎ウィルスは、糞口経路(A型肝炎とE型肝炎)、又は血液接触(B型肝炎、C型肝炎、及びD型肝炎)経由で感染される。HAV、HBV、及びHEVは通常、身体の免疫系により取り除かれ得る。しかし、HCVとHBVは慢性肝炎を引き起こし得る。HDVは、HBVの存在下でのみ繁殖することができるという点で、独特である。しかし、HDVの存在は、HBVの症状を悪化させる。適切なコンドーム使用が、HBV、HCV、及びHDVの感染を予防する助けとなり得る。
【0006】
単純ヘルペスウィルス(HSV)は、ウィルスのファミリーに属するものであり、そのうちの9つは、ヒトに疾患を引き起こすと知られている。9つのヒトヘルペスウィルスは、水疱瘡、帯状疱疹、単核症、第6病、及びカポジ肉腫を含む様々な疾患を引き起こす。HSVファミリーは、口、口唇、及び/又は生殖器の皮膚又は粘膜に水疱を引き起こす、HSV-1及びHSV-2と称される、2つのウィルスを含む。両方のウィルスは口又は生殖器の何れかを感染させ得るが、HSV-1は主に口顔の組織を感染させ、一方でHSV-2は主に生殖の組織を感染させる。HSV-1とHSV-2の両方は、密接な身体的接触を通じて感染される。Center for Disease Control(CDC)は、14-49歳の6人のうち1人がHSV-2に感染すると推測している。コンドームの使用がHSVの拡散の危険性を減らすことができる一方、しかしながらHSVは、コンドームにより覆われていない生殖器の皮膚との接触を介して未だに感染され得る。
【0007】
様々なSTDの拡散を予防する及び/又は減らすことができる膣内殺菌性薬剤の開発に、かなりの重点が置かれてきた。局所的な使用のための殺菌剤の開発は、コンドームの使用に代わる重要な代案を示す。殺菌剤は、ウィルスを含む病原体を死滅させる又は非活性化する、任意の薬剤である。International Association of Physicians in AIDS CARE(IAPAC)によると、殺菌剤の定義は、性的行為を介した感染症を予防するための身体の自然の防御物の拡大と同様に、感染症を遮断又は予防することができる介入物も含む。
【0008】
理想的に、殺菌剤は、有効な殺菌性の濃度で、副作用をほとんど持たないか、又は全く持たないものでなければならない。従って、殺菌剤として使用される薬物は、有効な殺菌性の濃度で、免疫抑制活性をほとんど持たないか、又は全く持たないものでなければならない。加えて、理想的な殺菌剤は、異なる温度に十分に耐え、及び、様々なpH領域(膣におけるアルカリ性及び酸性のレベルの範囲)の中で許容可能に機能しなければならない。更に、前記殺菌剤は、膣の中にあって膣の健康に寄与する、自然の有益な乳酸菌を除去してはならない。
【0009】
局所的な殺菌剤は、避妊の能力も有していれば、更に有益なものである。避妊は、特にSTDを患う多くの女性が出産年齢であるので、将来の世代への疾患の感染を予防するために、STDを患う女性にも重要である。現在、市販で入手可能な二つの機能を兼ねた殺精薬の殺菌剤の大多数は、細胞膜を破壊する洗浄剤成分を有している。最も広く使用された膣の殺精薬、つまりノノキシノール-9(N-9)は、その膜を破壊する特性により、頚腟の上皮を傷つけ、急性の炎症組織反応を引き起こし、膣のミクロフローラを変えて、尿生殖器管における日和見感染を促進する危険性を増すと示されてきた。N-9はまた、膣と頸部細胞に有毒であり、膣組織の透過性を増加させる。N-9はまた、膣の管に住み、通常は有益と見なされるラクトバシルス属微生物を死滅させかねない。ラクトバシルスは、膣の酸性のpH(~pH3.5乃至5.0)と健康な膣のフローラを維持する助けとなる、乳酸と過酸化水素を生成する。このpHでは、HIVのような多くのSTDを引き起こす生体が、不活性化される。
【0010】
膣用のクリーム剤と軟膏剤の形態である他の殺菌剤は、処方箋無しで、又は処方箋により現在利用可能である。また他のものが、開発の様々な段階にある。例として、オクトキシノール-9及び塩化ベンザルコニウムが含まれる。膣のpHを制御するよう設計されたゲル剤も利用可能であり、例えばAciJel(商標)(Ortho-McNeil Pharmaceutical Corp., Raritan, N.J.)は、3.9乃至4.1のpHを持つ、水の中で分散可能な緩衝化したゲル剤である。それは、正常な膣の酸性度を回復及び維持するために使用される。そのようなゲル剤は、膣のpHを制御するように設計され、STD及び/又は避妊を妨げるようには明確に設計されておらず、従って必ずしも有効な殺菌作用を持つとは限らない。
【0011】
議論されるように、活性成分としてN-9を大抵は含有している、現在市場に出された膣避妊具組成物は通常、当該技術分野で周知である。現在市場に出された膣避妊具製剤が妊娠の予防を支援する一方、効果的にSTD(特にHIV/AIDS)を予防するその能力は、非常に限定的である。更に、近年の分析により、N-9は、高い危険性で女性により頻繁に使用された場合、HIV感染の危険性を実際に増加させるかもしれないことが示された(WHO 2002, WHO/CONRAD technical consultation on nonoxynol-9, Geneva)。
【0012】
加えて、開発中の幾つかの殺菌剤は、HIV感染を患う患者の処置のために本来開発されていた、抗レトロウィルス薬剤を含有している。しかし、一時的且つ限定的な利益のみが、実際の抗レトロウィルス剤の何れか或いはそれらの組み合わせにより処置されたHIV感染患者に観察される。これらの薬剤がウィルス負荷を減らす限定的な能力、耐性の急速な発達、及び大半の薬剤の有毒な副作用は、それらの長期的な効果を制限した。患者への抗ウィルス剤の投与に関連した1つの主な問題は、感染細胞に浸透し且つそれを標的とする能力が不十分であることである。急速な薬物クリアランス、及び、親化合物又は代謝物質の毒性も、多くの抗ウィルス剤の開発と使用を遅くしかねない、主要な欠点の幾つかを構成する。AIDSと他のウィルス性疾患を処置するために実際に利用可能な抗ウィルス剤の重い毒性、及び感染細胞を標的とするその限定的な能力を考慮すると、感染細胞に対する薬物の治療レベルへの到達及び毒性の減少を目的とした戦略が、必要とされる。
【0013】
近年の研究により、膣の中に自然に存在する抗菌剤特性へのかなりの貢献は、主に乳酸分子の殺菌作用によるものであり、必ずしもpH低下のみ或いは過酸化水素の存在によるものではないことが、示された。(O’Hanlon et al., BMC Infect Dis., 11:200, 2011)。特に、膣液の中で、細菌性腟症に関連した細菌は、乳酸により抑えられ得るが、同じpHの他の酸によって抑えられる程度は更に少ない。
【0014】
従って、ウィルスをベースとするSTDの感染の危険性を効果的に減らすSTD阻害剤を使用することが容易な代案が、必要とされる。そのような組成物は、ラクトバシルス属微生物不活性化しない、又は明らかな腟刺激感或いは他の毒性を引き起こすのに有効な用量での膣内投与に有用でなければならない。前記組成物は、避妊の能力も有していれば、更に有益なものである。
【発明の概要】
【0015】
以下に開示された実施形態は、このような必要性を満たす。以下の単純化した概要は、請求された主題の幾つかの態様の基本的な理解を確立するために提供される。この概要は広範囲な概略ではなく、主要な/重大な要素を識別するように、又は請求された主題の範囲を線引きするようには意図されていない。
【0016】
1つの実施形態は、疾患の感染を阻害するための組成物である。該組成物は、1-(6-アミノプリン-9-イル)プロパン-2-イルオキシメチルホスホン酸(テノホビル)又はその生理的に機能的な誘導体、アルギン酸ポリマー、及び水性ベースの担体を含む。本開示の典型的なアルギン酸ポリマーは、約20,000と約400,0000の間の平均分子量、及び、約0.25と約2.0の間の、ポリマーにおけるマンヌロン酸(mannuronate)残基:グルロン酸(guluronate)残基の比率を有する。別の実施形態において、アルギン酸ポリマーにおけるマンヌロン酸残基:グルロン酸残基の比率は、0.3と1.5の間である。別の実施形態において、アルギン酸ポリマーにおけるマンヌロン酸残基:グルロン酸残基の比率は、0.3と1の間である。別の実施形態において、アルギン酸ポリマーにおけるマンヌロン酸残基:グルロン酸残基の比率は、0.3と0.8の間である。別の実施形態において、アルギン酸ポリマーにおけるマンヌロン酸残基:グルロン酸残基の比率は、0.3と0.6の間である。別の実施形態において、アルギン酸ポリマーにおけるマンヌロン酸残基:グルロン酸残基の比率は、約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、又は2.0である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約75,000と375,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約100,000と300,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約100,000と200,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約125,000と175,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも20,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも50,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも75,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも100,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも125,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも150,000である。
【0017】
別の実施形態において、組成物は乳酸も含む。別の実施形態において、乳酸は、乳酸の「L」形態である。別の実施形態において、組成物は、パモ酸、又はその塩或いはエステルも含む。また別の実施形態において、組成物はカラギーナンも含む。また別の実施形態において、カラギーナンは、イオタカラギーナンである。また別の実施形態において、組成物は、緩衝剤(クエン酸、酸性酒石酸カリウム、ソルビン酸、フマル酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、酒石酸、酒石酸水素カリウム、エデト酸エチレンジアミン四酢酸、酢酸、リンゴ酸など)、増粘剤(キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポール、ジェランガム、ポロクサマー、カラギーナン、イオタカラギーナンなど)、保水剤(グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチンなど)、又は防腐剤(安息香酸、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンジルアルコニウム、硝酸フェニル水銀、クロルヘキシジンなど)を含んでもよい。また別の実施形態において、組成物の担体は水である。
【0018】
別の実施形態は酸緩衝避妊薬である。酸緩衝避妊薬は、薬学的に許容可能な担体の中にアルギン酸、生体付着性化合物、及び乳酸を含む。アルギン酸は、20,000と400,000の間の平均分子量、及び、0.25と2.0の間のマンヌロン酸残基:グルロン酸残基の比率を有する。別の実施形態において、マンヌロン酸残基:グルロン酸残基は、0.3と1.5の間である。別の実施形態において、マンヌロン酸残基:グルロン酸残基は、0.3と1の間である。別の実施形態において、マンヌロン酸残基:グルロン酸残基は、0.3と0.8の間である。別の実施形態において、マンヌロン酸残基:グルロン酸残基は、0.3と0.6の間である。別の実施形態において、アルギン酸ポリマーにおけるマンヌロン酸残基:グルロン酸残基の比率は、約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、又は2.0である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約75,000と375,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約100,000と300,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約100,000と200,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも50,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも75,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも100,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも125,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも150,000である。上述のアルギン酸の使用は更に、酸緩衝避妊薬が疾患の感染を阻害する能力を増強するかもしれない。
【0019】
1つの実施形態において、酸緩衝避妊薬の生体付着性化合物は、キサンタンガム、カラギーナン、イオタカラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポールなどでもよい。別の実施形態において、酸緩衝化合物は、緩衝剤(クエン酸、酸性酒石酸カリウム、ソルビン酸、フマル酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、酒石酸、酒石酸水素カリウム、エデト酸エチレンジアミン四酢酸、酢酸、リンゴ酸など)、増粘剤(キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポール、ジェランガム、ポロクサマー、カラギーナン、イオタカラギーナンなど)、保水剤(グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチンなど)、保存剤(安息香酸、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンジルアルコニウム、硝酸フェニル水銀、クロルヘキシジンなど)、又は、薬物の溶解性、浸透性、及び吸収性を増強する薬剤(パモ酸、及びその塩並びにエステル)も含んでもよい。別の実施形態において、乳酸はL-乳酸である。
【0020】
1つの実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、キサンタンガム、及び乳酸を含む。別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、カラギーナン、及び乳酸を含む。別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、イオタカラギーナン、及び乳酸を含む。また別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、キサンタンガム、パモ酸、及び乳酸を含む。別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、カラギーナン、パモ酸、及び乳酸を含む。別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、イオタカラギーナン、パモ酸、及び乳酸を含む。
【0021】
別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、緩衝剤(クエン酸、酒石酸カリウム、安息香酸、ソルビン酸、フマル酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、酒石酸、酒石酸水素カリウム、エデト酸エチレンジアミン四酢酸、酢酸、リンゴ酸など)、増粘剤(キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポール、ジェランガム、ポロクサマー、カラギーナン、イオタカラギーナンなど)、保水剤(グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチンなど)、又は防腐剤(安息香酸、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンジルアルコニウム、硝酸フェニル水銀、クロルヘキシジンなど)を含んでもよい。また別の実施形態において、組成物の担体は水である。
【0022】
別の実施形態は酸緩衝避妊薬である。該酸緩衝避妊薬は、薬学的に許容可能な担体の中に、1-(6-アミノプリン-9-イル)プロパン-2-イルオキシメチルホスホン酸(テノホビル)又はその生理的に機能的な誘導体、アルギン酸、生体付着性化合物、及び乳酸を含む。アルギン酸は、20,000と400,000の間の平均分子量、及び、0.25と2.0の間のマンヌロン酸残基:グルロン酸残基の比率を有する。別の実施形態において、マンヌロン酸残基:グルロン酸残基は、0.3と1.5の間である。別の実施形態において、マンヌロン酸残基:グルロン酸残基は、0.3と1の間である。別の実施形態において、マンヌロン酸残基:グルロン酸残基は、0.3と0.8の間である。別の実施形態において、マンヌロン酸残基:グルロン酸残基は、0.3と0.6の間である。別の実施形態において、アルギン酸ポリマーにおけるマンヌロン酸残基:グルロン酸残基の比率は、約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、又は2.0である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約75,000と375,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約100,000と300,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は約100,000と200,000の間である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも50,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも75,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも100,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも125,000である。別の実施形態において、アルギン酸の平均分子量は少なくとも150,000である。上述のアルギン酸の使用は更に、酸緩衝避妊薬が疾患の感染を阻害する能力を増強するかもしれない。
【0023】
1つの実施形態において、テノホビルを備えた酸緩衝避妊薬の生体付着性化合物は、キサンタンガム、カラギーナン、イオタカラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポールなどでもよい。別の実施形態において、酸緩衝化合物は、緩衝剤(クエン酸、酸性酒石酸カリウム、ソルビン酸、フマル酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、酒石酸、酒石酸水素カリウム、エデト酸エチレンジアミン四酢酸、酢酸、リンゴ酸など)、増粘剤(キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポール、ジェランガム、ポロクサマー、カラギーナン、イオタカラギーナンなど)、保水剤(グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチンなど)、保存剤(安息香酸、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンジルアルコニウム、硝酸フェニル水銀、クロルヘキシジンなど)、又は、薬物の溶解性、浸透性、及び吸収性を増強する薬剤(パモ酸、及びその塩並びにエステル)も含んでもよい。別の実施形態において、乳酸はL-乳酸である。
【0024】
1つの実施形態において、テノホビルを備えた酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、キサンタンガム、及び乳酸を含む。別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、カラギーナン、及び乳酸を含む。別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、イオタカラギーナン、及び乳酸を含む。また別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、キサンタンガム、パモ酸、及び乳酸を含む。別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、カラギーナン、パモ酸、及び乳酸を含む。別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、イオタカラギーナン、パモ酸、及び乳酸を含む。
【0025】
別の実施形態において、テノホビルを備えた酸緩衝避妊薬は、緩衝剤(クエン酸、酒石酸カリウム、安息香酸、ソルビン酸、フマル酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、酒石酸、酒石酸水素カリウム、エデト酸エチレンジアミン四酢酸、酢酸、リンゴ酸など)、増粘剤(キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポール、ジェランガム、ポロクサマー、カラギーナン、イオタカラギーナンなど)、保水剤(グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチンなど)、又は防腐剤(安息香酸、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンジルアルコニウム、硝酸フェニル水銀、クロルヘキシジンなど)を含んでもよい。また別の実施形態において、組成物の担体は水である。
【0026】
別の実施形態は、上述及び本明細書に記載の組成物の何れかの有効な量を局所投与することにより、性行為感染症の拡散の危険性を減らす方法である。別の実施形態において、組成物は、膣、子宮頚、口、肛門、及び/又は直腸に局所的に適用されてもよい。組成物は性活動の前に適用されてもよい。1つの実施形態において、組成物は、性活動の少なくとも15分前、少なくとも30分前、少なくとも1時間前、1.5時間前、少なくとも2時間前、少なくとも2.5時間前、少なくとも3時間前、少なくとも3.5時間前、少なくとも4時間前、少なくとも4.5時間前、少なくとも5時間前、少なくとも6時間前、少なくとも7時間前、少なくとも8時間前、少なくとも9時間前、少なくとも10時間前、又は少なくとも12時間前に適用されてもよい。組成物は性活動の後にも適用されてもよい。1つの実施形態において、組成物は、性活動の5分後又は5分以内、10分後又は10分以内、15分後又は15分以内、20分後又は20分以内、30分後又は30分以内、45分後又は45分以内、1時間後又は1時間以内、2時間後又は2時間以内、3時間後又は3時間以内、4時間後又は4時間以内、5時間後又は5時間以内、6時間後又は6時間以内、7時間後又は7時間以内、8時間後又は8時間以内、9時間後又は9時間以内、或いは10時間後又は10時間以内に適用されてもよい。別の実施形態において、組成物は、物的バリアデバイスを使用する前に、コンドーム、スポンジ、又はペッサリーなどの物的バリアデバイスの表面に適用されてもよい。
【0027】
別の実施形態において、本明細書に記載される組成物を製造する方法が記載される。1つの実施形態において、1-(6-アミノプリン-9-イル)プロパン-2-イルオキシメチルホスホン酸(テノホビル)又はその生理学的に機能的な誘導体は、塩基性溶液中で溶かされる。一旦テノホビルが溶かされると、溶液は中性より下になり、アルギン酸が加えられる。1つの実施形態において、溶液のpHは乳酸の追加により下げられる。別の実施形態において、付加的な添加剤は、添加剤のpHに基づいて加えられる。例えば、緩衝剤は、溶液のpHを下げ、即ちより酸性にするために使用されてもよい。別の実施形態において、増粘剤を加えてもよい。幾つかの方法において、増粘剤の追加は幾つかの成分の組み込みを阻害するかもしれないので、増粘剤は最後に加えられてもよい。
【0028】
別の実施形態において、容器を分配するのに容易な、上述の組成物を含むキットが記載される。分配容器の限定しない例は、ボトル、チューブ、シリンジ、坐薬、又はポンプを含む。キットは、所望の表面への組成物の適用のためのデバイス、及び/又は、使用又は適用のための取扱説明書も含んでもよい。限定しないアプリケータデバイスは、シリンジ、スポンジ、ブラシ、綿棒、又はスパチュラを含む。1つの実施形態において、組成物は、単回使用の用量で分けられてもよい。限定しない例は、予め充填されたシリンジ、予め充填されたスクイズチューブ、又は坐剤を含む。別の実施形態において、組成物はバリアデバイス上に覆われてもよい。バリアデバイスの限定しない例は、スポンジ、コンドーム、又はペッサリーを含む。
【0029】
本開示の他の態様は、本明細書の全体にわたって見出される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書には、アルギン酸をベースとする抗菌性化合物を使用して炎症を阻害し、且つ性行為感染症(STD)の危険性を減らすための、組成物及び方法が開示される。そのような組成物は、(1)ウィルスと他の微生物を攻撃及び不活性化すること、及び(2)ウィルスが宿主細胞への侵入を促進するように活性化する宿主反応を遮断することにより、2重の保護を提供する。より具体的に、本明細書に開示される組成物及び方法は、個々の構成成分の効果を増強する担体の中にアルギン酸と抗ウィルス剤の組み合わせを含む、相乗的な組成物に関連する。アルギン酸をベースとする抗菌性化合物は、酸緩衝避妊薬の一部でもあり得る。
【0031】
後に続く本明細書で説明される開示の理解を促進するため、多くの用語を以下に定義する。
【0032】
用語「one」、「a」、又は「an」がこの開示において使用される場合、それらは他に明記されない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味する。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語「抗菌剤」、「殺菌剤」、及び「殺菌剤の」は、ウィルス、細菌、菌類、原生動物、寄生生物、及び藻類を含む微生物の増殖を予防又は阻害する、及び/又は前記微生物の感染性を予防又は減少することが可能な化合物を指す。
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「性行為感染症」は、「STD」、「性行為感染症(sexually transmitted infection)」、「STI」、及び/又はそれらの複数形と互換的に使用される。STDは、キスを含む性的接触の任意の形態によりヒトの間で感染する可能性がかなりある、病気又は病態生理学的疾病である。用語STDはまた、疾患又は感染症の兆候を示すことなく、感染し、及び潜在的に他のものを感染させ得る人を包含してもよい。
【0035】
用語「相乗効果」及び「相乗的な」は、共に使用される化合物により達成された効果が、化合物を別々に使用した結果得られる効果の合計よりも大きい、即ち、別々に投与された2つの活性成分に基づいて予測されるものより大きいことを意味する。化合物が(1)組み合わせた製剤において同時処方され、及び同時に投与又は送達され;(2)別個の製剤として交互に又は平行して送達され;或いは(3)他の幾つかのレジメンにより送達されると、相乗効果が得られることもある。相乗的な抗ウィルス効果は、組み合わせの個々の化合物の予測された純粋に付加的な効果よりも大きな、抗ウィルス効果を示す。
【0036】
本明細書で使用されるように、用語「生理学的に機能的な誘導体」は、本開示の組み合わせで別の薬学的に活性な化合物と組み合わせて投与されると、テノホビルに等しい又はほぼ等しい生理学的機能性を持つ、薬学的に活性な化合物を指す。本明細書で使用されるように、用語「生理学的に機能的な誘導体」は、以下の何れかを含む:生理学的に許容可能な塩、エーテル、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は立体異性的に富化された或いはラセミ混合物を含む立体異性体、及び、レシピエントへの投与後に化合物又はその抗ウィルス性の活性代謝物質或いは残基を(直接的又は間接的に)提供することができる他の化合物。
【0037】
本明細書で使用されるように、用語「接触させる」は、本明細書に記載されるように、本明細書に記載されるアルギン酸をベースとする化合物の1以上を、性的に感染された又は性的に獲得した微生物或いは微生物細胞に接触させる、任意の適切な方法を指す。インビトロ又はエキソビボで、これは、適切な培地において微生物又は微生物細胞を殺菌剤に晒すことにより達成される。典型的なインビボでの適用のために、投与の局所的な方法が、本明細書に記載されるように適切である。
【0038】
本明細書で使用されるように、用語「マトリックス」は、その間に生じるイオン相互作用を介して三次元構造を形成する、複数の異なる分子を指すことを意味する。
【0039】
用語「緩衝能力」は、異なるpHを持つ化合物と接触した場合に所望のpHを維持する能力を意味する。特に、緩衝能力は、健康な膣のpHを維持する能力を意味する。
【0040】
用語「射精液と接触した」は、射精中に通常生じる容量(例えば0.1乃至11ミリリットル)での精液の存在を意味する(Rehan, et al., Fertil Steril. 1975, 26:492-502)。
【0041】
用語「塩基性溶液」は、8、9、10、11、12、又は13といった、7より上のpHを持つ溶液を意味する。「塩基性溶液」を作るための典型的な塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムを含むが、これらに限定されない。
【0042】
用語「疾患を阻害する」は、本明細書に使用されるように、通常、性行為感染症の拡散の阻害を含む、性行為感染症の阻害を指す。
【0043】
用語「アルギン酸」、「アルギン酸ポリマー」、又は「アルギン酸塩」は互換的に使用され、ベータ-D-マンヌロン酸とアルファ-L-グルロン酸のポリサッカリドポリマーを指す。
【0044】
本明細書に開示される、アルギン酸をベースとする殺微生物剤配合物及び方法は、STD及び/又は通常の膣感染症の感染の危険性を予防する又は減らす。STDは、HIV/AIDS、ヘルペス(1型単純ヘルペスウィルス(HSV-1)又は2型単純ヘルペスウィルス(HSV-2)により引き起こされる)、肝炎、淋疾、クラミジア、梅毒、及びトリコモナス症を含むが、これらに限定されない。通常の膣感染症の限定しない例は、細菌性腟症(BV)とカンジダ膣炎を含む。本明細書に記載されるように、同様の組成物、及びそのような組成物の適用の方法は、STD及び/又は通常の膣感染症の予防又は処置のために使用され得る。付加的な化学物質が、酸緩衝避妊薬を形成するためにアルギン酸をベースとする殺微生物剤組成物に加えられてもよい。
【0045】
本開示の組成物は、アルギン酸ポリマーと特定の抗ウィルス剤(テノホビル)の組み合わせを含む。アルギン酸は、(1)物理的バリアをもたらす粘膜付着性及び生体付着性の特性を持ち、(2)膣における酸性環境を維持するのを支援する緩衝能力を持ち、及び(3)宿主細胞におけるウィルス感染を減らす抗炎症特性を持つ、酸性ポリマーである。テノホビルは、逆転写酵素を阻害するように設計された抗レトロウィルス薬である。テノホビルのプロドラッグ形態、テノホビルdisproxylフマル酸塩は、HIVと慢性B型肝炎の処置のためにアメリカ食品薬品局により承認されており、ヘルペスなどの他のウィルスに有効かもしれない。(Andrei, et al., Cell Host Microbe., 10:379-89, 2011)。典型的な実施形態において、相乗効果が、アルギン酸ポリマーと抗ウィルス剤の間で達成される。より具体的に、テノホビルの負に負荷した(charged)一燐酸部分は、アルギン酸ポリマーとのイオン相互作用を形成し、テノホビルの持続放出を促進し、故に効果を増強する。他の実施形態において、アルギン酸ポリマーとテノホビルは、酸緩衝避妊薬を形成するために、乳酸、及び、キサンタンガム又はカラギーナンなどの生体粘着剤と合わせられ得る。酸緩衝避妊薬は、射精液との接触後に、精子、及び射精液に存在する他の微生物を捕捉する、マトリックスを形成する。
【0046】
任意の特定の動作理論に縛られることを望んでいないが、送達点から離れて抗レトロウィルス薬の希釈を阻害し、それにより薬物の標的化及び局在化を改善する、アルギン酸の粘膜付着性と生体接着性の特性により、テノホビル濃度が有効レベルと毒性レベルの間で維持されるので、本開示の組成物は改善された効果を示すと、更に考えられている。この文脈において、粘膜付着及び生体付着は、テノホビルと粘膜表面の間の接触の親密性と持続時間を増加させる。この増強された直接の薬物吸収、及び、拡散の減少と局在化の改善から結果として生じる排出率の減少の組み合わせの効果は、薬物のバイオアベイラビリティをかなり増強し、そしてより少量の投与量と、あまり頻繁でない投与を可能にする。
【0047】
<微生物感染及び炎症>
トール様受容体(TLR)は、潜在的に有害な物質、特に微生物由来の化学物質への曝露に対する、免疫系の初期の警告兆候(warning sign)である。具体的に、TLRは、細菌、原生動物、菌類、及びウィルスに存在する、病原体に関連する分子パターン(PAMP)と呼ばれる分子構造に結合する。活性化の後、TLRは、活性化されたB細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー(NFkB)を含む、炎症及び細胞の免疫防御を活性化する、多数の生化学的なカスケードを引き起こす。NFkBは、マスター遺伝子のレギュレータであり、その活性化は、炎症、TNFアルファ、IL-1、及び他のインターロイキンを含む、多くの炎症性メディエータ(mediatory)及び抗炎症性サイトカインの合成の増加を結果としてもたらす。多くのウィルスのために、典型的に微生物感染に対する免疫防御を支援する、炎症性の経路の活性化は、代わりに、感染性を増強する。HIV、肝炎、及びHSVを含む特定のウィルスは、NFkBの活性化が宿主細胞を感染させることを要求すると、現在知られている。例えば、活性化の後、NFkBは、統合されたHIVゲノムの転写を始めるために、HIV末端反復配列上の部位に結合する。(Pande and Ramos,Curr.Med.Chem.,vol.10,no.16,pgs.1603-15(2003)を参照)。事実上、身体自体の自然な反応は、ウィルスの感染性に起因している。
【0048】
<身体外傷及び炎症>
多くの性活動の結果、光顕レベルでの組織に対する身体外傷がもたらされる。解剖学的なバリアの破壊の後、例えば粘膜、好中球は、肥満細胞などの炎症細胞により放出された様々なサイトカインにより引きつけられる。好中球は食作用により損傷を受けた細胞を呑み込み、そのプロセスにおいて、健康な周囲の細胞に対して有毒な多量の活性酸素種(ROS)を生成且つ放出する。ROSは、細胞の抗酸化剤、特にグルタチオンに反応する。ROSへの曝露の後、還元グルタチオン(GSH)はその酸化した状態(GSSG)に変わる。細胞のレベルの酸化型グルタチオンの細胞レベルの増加は、NFkBの活性化を引き起こす。上述のように、NFkBの活性化はウィルス性STDの感染症を促進する。
【0049】
<アルギン酸>
アルギン酸塩(alginate)は、褐藻類から抽出することができる天然高分子である。該天然高分子は、二糖類、1、4-架橋β-D-マンヌロン酸(M)及びα-L-グルロン酸(G)で構成される。前記天然高分子は、連続するM残基のブロック、連続するD残基のブロック、又は代替的なD及びM残基で構成され得る。M:Gの比率はソースに依存して異なる。最も商業上利用可能なアルギン酸塩は、14-31%の間のG含量率を持つが、Laminaria hyperboreanのアルギン酸塩は60%のG含量率を持つ。より多くの定義された化学構造と物理的性質を備えたアルギン酸塩は、細菌の生合成を使用して得ることができる。しかし、細菌のアルギン酸塩は、C2及び/又はC3においてO-アセチル基を有する。アセチル基は、4-57%の間で異なるアセチル化の程度を備えたマヌロン酸残基に排他的に関連する。(Donati and Paoletti,“Material Properties of Alginates,”in Alginates:Biology and Applications:Biology and Applications, Rehm,ed.,Springer Dordrecht Heidelburg, London,UK,2009,page 10及び“The History of Aglinate Chemistry-Bacterial,”Cyber Colloids,LTD,http://www.cybercolloids.net/information/technical-articles/history-alginate-chemistry-bacterialを参照)。アセチル基は、陽イオン結合の能力と選択性を減少させ、溶液粘度を増加させ、水収容力を増強し、アルギン酸リアーゼによる分解を保護する。(Flemming and Wingender,“The Crucial Role of Extracellular Polymeric Substances in Biofilms,”in Biofilms in Wastewater Treatment:An Interdisciplinary Approach,Wuertz,Bishop,Wilderer,eds.,IWA Publishing,London,UK 2003,page 184を参照)。アルギン酸塩は典型的に、アルギン酸塩を形成するためにアルカリ溶液と塩を使用して、褐藻類から抽出される。アルギン酸塩は更に、アルギン酸を形成するために酸により処理され得る。
【0050】
一般的にポリサッカリドのようなアルギン酸塩は、分子量に関して多分散系である。この多分散性のため、アルギン酸塩の「分子量」は全体の分子量分布にわたる平均である。(Draget,et al.,“Alginates From Algae,”Biopolymers Online,DOI:10.1002/3527600035.bpol6008(2005)を参照)。短いG-ブロックのみを含有する低分子量フラグメントが、ゲル-ネットワーク形成に加わらず、結果的にゲル強度に起因しないので、分子量分布は、アルギン酸塩の使用に影響を及ぼし得る。大抵のアルギン酸塩の分子量は、1モル当たり約10,000乃至600,000グラム(g/mol)の範囲である。
【0051】
アルギン酸塩ポリマーは、カルシウム、ナトリウム、及びカリウムなどの、1価カチオンと2価カチオンを使用してヒドロゲルを形成するために架橋され得る。しかし、G残基のみが、2価カチオンを使用する場合に関与すると考えられる。故に、アルギン酸塩のM:Gの比率は、アルギン酸塩ヒドロゲルの物理的性質に影響する。更に、カチオンを使用する場合、ゲル化時間と温度も、ゲルの均一性と強度に影響する。より低い温度(例えば体温より下)での遅いゲル化速度(例えば15分より長い)の結果、より均一な構造及びより大きな機械的完全性を持つゲルがもたらされる。(Asada,et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,vol.61,no.6,pgs.1030-1032(1997)を参照)。
【0052】
MとGの両方の糖残基は、pKaの約3.5を備えたカルボキシル基を含有する。生理学的なpHにおいて、カルボキシル基はイオン化され、濃い組織接着性ゲル(例えば生体接着剤)を形成するために水と水素結合することが可能な、繰り返しの負に帯電したカルボキシル基(repeating negatively-charge carboxyl groups)の長鎖を形成する。アルギン酸塩はまた、水素結合を使用して粘膜表面に付着する。アルギン酸塩は、化学的及び身体的外傷の両方に対して保護する「人工粘膜」として作用し得ると考えられている。アルギン酸の固有の粘膜付着性及び生体付着性の特性により、それは、女性により取り除かれない場合には、約12乃至24時間(又は更に長く)膣の内に残っていなければならない。
【0053】
アルギン酸塩は抗炎症能力を有する。具体的には、研究により、アルギン酸がNFkB活性化を阻害することが示された。NFkBはDNAの転写を制御するタンパク質複合体である。(Jeong,et al.,Clinical and Experimental Allergy,vol.36,pgs.785-794(2006)を参照)。NFkBは、ストレス、サイトカイン、フリーラジカル、紫外線照射、酸化したLDL、及び細菌又はウィルスの抗原などの刺激に対する細胞の反応に関係する。NFkBは、感染症に対する免疫応答を調節する際に重要な役割を果たす。HIV、肝炎、及びヘルペスを含む多くのウィルスは、宿主細胞感染を促進するためにNFkBを活性化させると、現在知られている。NFkBの活性化の予防によって、及び、ひいては多数の炎症性の経路の活性化の予防によって、アルギン酸は、ウィルスのSTD感染症の危険性を減らす。
【0054】
アルギン酸塩はまた、免疫グロブリンEを媒介とした肥満細胞脱顆粒反応を阻害する。(Asada,et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,vol.61,no.6,pgs.1030-1032(1997)を参照)。肥満細胞は、病原微生物に対する防御において重要な役割を果たす。病原微生物は、免疫グロブリンE(IgE)受容体の刺激、又はパターン認識受容体を介して肥満細胞を活性化することができ、それらは、トール様受容体(TLR)、Nod様受容体、Cタイプレクチン、及びグリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型タンパク質CD48を含む。活性化の後、肥満細胞は、血管透過性に影響し且つ付加的な免疫応答を引き起こす、様々な媒介物質を放出する。媒介物質は、ヒスタミン、セロトニン、ヘパリン、トリプターゼ、キマーゼ、及び腫瘍壊死因子アルファ、サイトカイン、及びケモキネスを含む、顆粒関連の媒介物質を含む。HIV感染に関する主要な部位となり得る粘膜組織において、血管透過性の増加及びT細胞との肥満細胞相互作用に通じる、肥満細胞の活性化は、HIV感染性に起因するかもしれない。更に、HIV感染において、肥満細胞は、潜伏感染中にウィルスのリザーバとして役立つかもしれず、TLRを媒介としたシグナルを通じて再活性化され得る。(Urb M and Sheppard,DC(2012)“The Role of Mast Cells in the Defence against Pathogens.”PLoS Pathog 8(4):e1002619.doi:10.1371/journal.ppat.1002619を参照。)
【0055】
アルギン酸の全ての分子量が炎症の遮断において情動性であるとは限らないことが、偶然にも発見された。具体的に、20,000乃至400,000g/molの間の分子量を備えたアルギン酸塩は、肥満細胞脱顆粒反応を阻害する際に、より大きな能力を示す。1つの実施形態において、アルギン酸塩の分子量は、約100,000と375,000g/molの間でもよい。別の実施形態において、アルギン酸塩の分子量は、約200,000と350,000g/molの間でもよい。また別の実施形態において、アルギン酸塩の分子量は、約290,000と34,000g/molの間でもよい。(Asada,et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,vol.61,no.6,pgs.1030-1032(1997)を参照)。
【0056】
また、M:Gの比率もアルギン酸の抗炎症の特性に影響することが、偶然にも発見された。1つの実施形態において、M:Gの比率は、0.25と2.0の間でもよい。別の実施形態において、M:Gの比率は、0.3と1.5の間でもよい。別の実施形態において、M:Gの比率は、0.5と1.2の間でもよい。また別の実施形態において、M:Gの比率は1である。(参照により本明細書に組み込まれる、Asada,et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,vol.61,no.6,pgs.1030-1032(1997)を参照。Asadaには、3:7のM:Gの比率を持つ0.6型のアルギン酸ナトリウムが記載されており、文献の第2段落を参照されたい。しかし、3:7のM:Gの比率は計算上0.43である)。
【0057】
上記で注目されるように、アルギン酸塩は、ナトリウム、カリウム、及びカルシウムなどの1価及び2価のカチオンの存在下で架橋する。膣液は通常、これらのカチオンをごくわずかな量しか含有していない。他方で、精液にはこれらのカチオンが大量にある。故に、精液の存在下で、アルギン酸は、精子と微生物を捕捉することが可能なマトリックスを形成するように架橋する。精子を、及び精液に存在する他の微生物を捕捉することで、STDの感染の危険性が減ることになる。加えて、アルギン酸は、水溶液中で約1.5乃至3.5のpHを有する。任意の特定の動作理論に縛られることは望まれないが、アルギン酸の自然の低いpHは、健康な膣のpH(即ち3.5乃至5.0の間の)の維持を支援し得る。上記で注目されるように、低いpHは、多くのSTDを引き起こす微生物を不活性化する。更に、アルギン酸は、性活動中にアルギン酸をベースとする組成物を適所に保管する、生体付着性及び粘膜付着性の特性を持つ。最後に、アルギン酸は通常、その高分子量により身体に吸収されない。
【0058】
<テノホビル>
テノホビル(その誘導体、アナログ、プロドラッグ、及び塩を含む)は、逆転写酵素を遮断する、ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤(NtRTI)として知られる抗レトロウィルス薬の分類に属する。テノホビルは、化学名1-(6-アミノプリン-9-イル)プロパン-2-イルオキシメチルホスホン酸[CAS登録番号:147127-20-6]を持つ。テノホビルは、Gilead Sciences,Inc.,(Foster City,CA)などから市販で入手可能である。テノホビルの構造は以下のように示される:
【0059】
【化1】
【0060】
テノホビルは、他の自然発生のヌクレオチドの競合的阻害剤であり、その最終的な生物活性はウィルスDNA連鎖停止である。テノホビルは、HIVとB型肝炎の両方に対する抗ウィルス活性を備えた、新規のヌクレオチドアナログである。テノホビルの機構は、ヌクレオシドアナログのものに類似しており、それは、逆転写酵素に干渉して、ウィルスDNAへのウィルスの遺伝物質の翻訳を妨げる。ヌクレオシドアナログと異なり、NtRTIは、リン酸基の存在により化学的に予め活性化される。リン酸化工程が必要とされないため、ヌクレオチドアナログは、ヌクレオシドアナログよりも早く、ウィルスDNA鎖に組み込むことができる。より重要なことに、このことは、ヌクレオシド耐性のウィルス機構を迂回する(bypass)。
【0061】
<酸緩衝避妊薬>
1つの実施形態において、上述の特異的なアルギン酸の亜群は、酸緩衝避妊薬の一部であり得る。そのような酸緩衝避妊薬の限定しない1つの例は、酸性型(Amphora(登録商標)ゲルとしても知られる(米国特許第6,706,276号、WO01/66084))であり、それは、身体の開口部(例えば膣)に配されると、射精液との接触後にマトリックスを形成し、それにより、精子、及び/又は、STD並びにSTIを引き起こす微生物を補足して不活性化する、ゲルである。1つの通常の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、(1)マトリックスを形成する化合物、(2)生体付着性化合物、及び(3)乳酸を含む。アルギン酸、カラギーナン、又はキトサンなどの幾つかの化合物は、マトリックスを形成する化合物及び生体付着性化合物の両方として作用することができる。
【0062】
典型的な実施形態において、使用される酸性型は通常、(1)約1-10%の1以上のマトリックスを形成する化合物、(2)約1-10%の1以上の生体付着性化合物、及び(3)約1-10%の乳酸を含む。他の実施形態において、酸性型組成物は、(1)約3-5%の1以上のマトリックスを形成する化合物、(2)約2.5-6%の1以上の生体付着性化合物、及び(3)約1-7%の乳酸を含む。他の実施形態において、酸性型組成物は、(1)約3.5-4.5%の1以上のマトリックスを形成する化合物、(2)約2.5-3.5%の1以上の生体付着性化合物、及び(3)約1-4%の乳酸を含む。
【0063】
他の典型的な実施形態において、使用される酸性型は通常、(1)約1-10%の1以上のマトリックスを形成する化合物、(2)約1-10%の1以上の生体付着性化合物、及び(3)約1-10%のL-乳酸を含む。他の実施形態において、酸性型組成物は、(1)約3-5%の1以上のマトリックスを形成する化合物、(2)約2.5-6%の1以上の生体付着性化合物、及び(3)約1-7%のL-乳酸を含む。他の実施形態において、酸性型組成物は、(1)約3.5-4.5%の1以上のマトリックスを形成する化合物、(2)約2.5-3.5%の1以上の生体付着性化合物、及び(3)約1-4%のL-乳酸を含む。
【0064】
本開示における使用に適しているマトリックスを形成する化合物は、広範囲のpH範囲、特に膣に見出される正常な酸性のpH値にわたって安定していなければならない。適切なマトリックスを形成する化合物は、例えば、アルギン酸、キトサン、ジェランガム、ポロクサマー、カラギーナン、イオタカラギーナンなどを含む。マトリックスを形成する化合物は、射精液に接触するまで、好ましくは非マトリックス状態でとどまる。射精液との接触後、マトリックスを形成する化合物は、より下方の女性生殖管を通って移動出来ないよう、精子及びSTDを引き起こす微生物を捕捉する、半固形マトリックスを形成する。水溶液中で約1.5-3.5のpHを持つ、アルギン酸などの幾つかのマトリックスを形成する化合物は、酸緩衝避妊薬の酸緩衝能力に起因するかもしれない。更に、幾つかのマトリックスを形成する化合物は、酸緩衝避妊薬の生体付着性の性質にも起因するかもしれない。幾つかの実施形態において、マトリックスを形成する化合物及び生体付着性化合物は、同じものである。
【0065】
本開示における使用に適している生体付着性化合物は、例えば、キサンタンガム、カラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポールなどを含む。少なくとも1つの実施形態において、生体付着性化合物は、キサンタンガム、つまり、D-グルコシル、D-マンノシル、及びD-グルコシルウロン酸(glucosyluronic acid)の残基、及びO-アセチル基並びにピルビン酸アセタールの異なる特性を含有する高分子量の多糖類ガムである。主要な構造は、三糖類側鎖を備えたセルロースバックボーンであり;反復単位は五糖類である。通常、分子量は約106g/モルより大きい。
【0066】
酸緩衝避妊薬は更に、正常な量の射精液の存在下でさえ、その正常な酸性の範囲(即ち、約5未満、より好ましくは約3.5乃至約4.5の範囲のpH)内で膣のpHを維持するように作用する、乳酸又は他の緩衝剤を含む。乳酸に加えて、適切な緩衝剤は、例えば、クエン酸、酸性酒石酸カリウム、安息香酸、アルギン酸、ソルビン酸、フマル酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、酒石酸、酒石酸水素カリウム、安息香酸、エデト酸エチレンジアミン四酢酸、酢酸、リンゴ酸などを含むが、これらに限定されない。酸は、遊離酸、水和物、又は薬学的に許容可能な塩として加えられてもよい。もちろん、遊離酸は、インサイツで(即ち、膣の中で)対応する塩に変換され得る。様々な典型的な実施形態において、様々な緩衝剤が、緩衝能力の増加を提供するために酸性型組成物の中に含まれる。アルギン酸はもちろん、マトリックス形成剤及び緩衝剤の両方として機能することができる。アルギン酸は身体に吸収されないので、その酸緩衝効果は、身体に吸収され得る他の緩衝剤と比較して、より長く持続する。
【0067】
従って、上記で議論されるように、乳酸又は他の適切な緩衝剤は、適用後に正常な酸性の範囲(即ち、約5未満、より好ましくは約3.5乃至約4.5の範囲のpH)内で膣のpHを維持するために使用されてもよい。特に、過酸化水素などの他の自然の膣の防衛機構に関連して、乳酸が殺菌剤の効能を著しく増加させることが発見された。この機能は当業者に以前から知られており、本開示の発明者は驚くことに、緩衝剤として乳酸を使用して調剤した場合、酸緩衝避妊薬は、緩衝剤として乳酸を使用しない製剤よりも著しく大きな殺菌作用を持つことを見出した。
【0068】
具体的に、乳酸の存在は、同等のpHでの過酸化水素又は酢酸などの化合物と比較して、ウィルスを含む微生物のより大きな不活性化を結果的にもたらす。乳酸が殺菌剤の効能を増加させる作用機構は、グラム陰性菌の細胞膜の破壊であると考えられ、HIVとHSV-2を不活性化するようにも作用する。
【0069】
より具体的に、乳酸は2つの異性体を持ち、1つはL-(+)-乳酸又は(S)-乳酸として知られ、他方はD-(-)-乳酸又は(R)-乳酸として知られる。近年の発見により、乳酸のL形態が、HIVの不活性化においてD又はラセミの乳酸よりも強力であることが示された。L-乳酸がどのようにHIVを不活性化するかに関する正確な機構が未知である一方で、立体化学の依存性活性は、タンパク質に作用することを示唆する。(Purcell et al.,AIDS Res Hum Retroviruses. 2012 Nov;28(11):1389-96)。
【0070】
乳酸は、ラクトバシルス種などの乳酸菌により作られる。しかし、乳酸菌は通常、D及びL-乳酸の両方を作る。更に、乳酸菌は成長するのが困難な場合もある。組み換え法が、酵母菌又は大腸菌などの、成長をより容易にする宿主を用いて明確にL-乳酸を製造するために使用され得る。(Ishida et al.,Appl Environ Microbiol. 2005 April;71(4):1964-1970 and Dien et al.,J Ind Microbiol Biotechnol. 2001 Oct;27(4):259-64)。代替的に、精製されたL-乳酸は、Sigma-Aldrich(登録商標)(St.Louis,Missouri)などの確立された化学製品供給業者から購入することができる。
【0071】
1つの実施形態において、酸緩衝避妊薬は更に以下のように記載され:マトリックスを形成する化合物はアルギン酸であり;生体付着性化合物は、キサンタンガム、及び/又はヒドロキシセルロース、及び/又はカラギーナンであり;乳酸は、使用されるか、又はクエン酸、安息香酸、又は酸性酒石酸カリウムと置き換えられ;グリセロールは保水剤として含まれ;安息香酸は防腐剤として使用され;そして水は薬学的に許容可能な担体である。別の実施形態において、組成物は、キサンタンガム、アルギン酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、酒石酸水素カリウム、グリセロール、及び水を含む。別の実施形態において、乳酸はL-乳酸である。
【0072】
別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、カラギーナン、及び乳酸を含む。別の実施形態において、酸緩衝避妊薬は、アルギン酸、カラギーナン、乳酸、クエン酸、安息香酸、酒石酸水素カリウム、グリセロール、及び水を含む。別の実施形態において、カラギーナンは、イオタカラギーナンである。別の実施形態において、乳酸はL-乳酸である。
【0073】
<薬学的に許容可能な担体>
1つの実施形態において、医薬担体は水である。経腟分娩に適した他の薬学的に許容可能な担体は周知であり、水の代わりに使用することができる。適切な薬学的に許容可能な担体の一例は、白色ワセリンなどのワセリンである。
【0074】
<随意の成分>
付加的な随意の賦形剤は、緩衝剤、増粘剤、保水剤、及び防腐剤などの本開示の組成物の中で使用されてもよい。適切な緩衝剤は、例えば、乳酸、クエン酸、酸性酒石酸カリウム、酒石酸水素カリウム、安息香酸、ソルビン酸、フマル酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、酒石酸、エデト酸エチレンジアミン四酢酸、酢酸、リンゴ酸などを含むが、これらに限定されない。適切な増粘剤は、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポール、ジェランガム、ポロクサマー、カラギーナン、イオタカラギーナンなどを含むが、これらに限定されない。適切な保水剤は、例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチンなどを含むが、これらに限定されない。1つの典型的な実施形態において、グリセロールは、膣の内に配された場合にゲル上での乾燥皮膜の形成を防ぐために使用される。グリセロールは、潤滑剤としても作用するかもしれない。加えて、組成物は防腐剤も含んでもよい。適切な防腐剤は、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンジルアルコニウム、硝酸フェニル水銀、クロルヘキシジンなどを含むが、これらに限定されない。1つの典型的な実施形態において、安息香酸が使用され、それは酸性型ゲルの緩衝能力にも寄与するかもしれない。
【0075】
随意の成分は、薬物の可溶性、透過性、及び吸収を増強する薬剤も含む。限定しない例は、パモ酸(「エンボン酸」とも呼ばれる)及びその塩並びにエステルを含む。
【0076】
<製剤>
医薬組成物は、ゲル、半固体、クリーム、及び/又はローションの形態であってもよい。通常、アルギン酸をベースとする殺菌剤は、膣又は直腸の腔を洗い流すために使用されるゲル、クリーム、ローション、非水溶液又は水溶液として達成され得る、膣及び/又は子宮頚及び/又は直腸の内膜に適用される局所軟膏、及び/又は、膣又は直腸用坐剤として投与されてもよい。他の実施形態において、アルギン酸をベースとする殺微生物剤組成物は、スプレー製剤で投与されてもよい。加えて、アルギン酸をベースとする殺微生物剤組成物は、殺菌剤をしみ込ませたペッサリー、及び女性用並びに男性用コンドームを使用して送達されてもよい。
【0077】
更に、本明細書に開示されるアルギン酸をベースとする殺微生物剤組成物に加えて、組成物のバランス(balance)、即ち、典型的に約0-10重量%、約0.1-5重量%、又は約0.1-3重量%は、1以上の化粧品成分を随意に含んでもよい。そのような化粧品成分は当業者に既知であり、当該技術分野では頻繁に賦形剤、溶媒、及びアジュバントと称される。典型的に、化粧品成分は、例えば;水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、グリセロールプロピレングリコール、ソルビトール、及び他の高分子量アルコールを含む。加えて、組成物は、例えば安定剤、界面活性剤、メントール、ユーカリ油、他の芳香油、香水などの、少量の他の添加剤を含んでもよい。化粧品成分、他の添加剤、及び混合手順の選択及び量は、当該技術分野で周知の技術に従って行なわれ得る。
【0078】
<製造方法>
テノホビルは、287.2(無水)又は305(一水和物として)の分子量を備えたオフホワイト粉末剤である。テノホビルは、酸性のpHでは水溶性でなく、故にアルギン酸と容易に組み合わせることができない。本開示は、アルギン酸とテノホビルを組み合わせるための様々な製造法を提供する。
【0079】
最終的な製剤は、物理デバイスを使用することなく適所に残るほど十分に粘着性でなければならない。薄すぎる組成物は漏出し、濃すぎる組成物は適切に使用するのが困難となる(例えば、膣と子宮頚を覆うスミア)。加えて、使用中に、例えば膣液の存在及び精液への曝露により、希釈が生じると予想される。本明細書に記載される製剤の粘度は、トルクのパーセンテージが約20%である場合、20,000-200,000センチポアズ(cP)の間でもよい。代替的に、粘度は30,000-150,000cPの間でもよい。
【0080】
本明細書に開示される方法は通常、3つの工程を含む。第1の工程において、テノホビルが塩基性溶液に溶かされる。第2の工程において、pHは中性よりも下にされる。第3の工程において、アルギン酸が加えられる。増粘剤、保水剤、又は防腐剤などの随意の成分は、それらが様々な工程において溶液の全体的なpHに影響を及ぼさない限り、前記工程の何れかの間に加えられてもよい。
【0081】
1つの実施形態において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸を加える。別の実施形態において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。また別の実施形態において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程はL-乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。
【0082】
上述の方法は、酸緩衝避妊薬にアルギン酸をベースとする殺菌剤を組み込むためにも使用され得る。1つの実施形態において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びキサンタンガムを加える。代替的に、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程はクエン酸及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びキサンタンガムを加える。別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は、安息香酸、クエン酸、及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びキサンタンガムを加える。また別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は、安息香酸、クエン酸、酒石酸水素カリウム、及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びキサンタンガムを加える。また別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は、安息香酸、クエン酸、酒石酸水素カリウム、及び乳酸を加える。第3の工程は、アルギン酸、グリセリン、及びキサンタンガムを加える。
【0083】
別の実施形態において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、及び安息香酸を組み合わせる。第2の工程は乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びキサンタンガムを加える。代替的に、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、及び安息香酸を組み合わせる。第2の工程はクエン酸及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びキサンタンガムを加える。別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、及び安息香酸を組み合わせる。第2の工程は、酒石酸水素カリウム、クエン酸、及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びキサンタンガムを加える。また別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、及び安息香酸を組み合わせる。第2の工程は、酒石酸水素カリウム、クエン酸、及び乳酸を加える。第3の工程は、アルギン酸、グリセリン、及びキサンタンガムを加える。
【0084】
また別の実施形態において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、安息香酸、及び酒石酸水素カリウムを組み合わせる。第2の工程は乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びキサンタンガムを加える。代替的に、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、安息香酸、及び酒石酸水素カリウムを組み合わせる。第2の工程はクエン酸及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びキサンタンガムを加える。別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、安息香酸、及び酒石酸水素カリウムを組み合わせる。第2の工程はクエン酸及び乳酸を加える。第3の工程は、アルギン酸、グリセリン、及びキサンタンガムを加える。
【0085】
また別の実施形態において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。代替的に、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程はクエン酸及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は、安息香酸、クエン酸、及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。また別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は、安息香酸、クエン酸、酒石酸水素カリウム、及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。また別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、及び水酸化ナトリウムを組み合わせる。第2の工程は、安息香酸、クエン酸、酒石酸水素カリウム、及び乳酸を加える。第3の工程は、アルギン酸、グリセリン、及びイオタカラギーナンを加える。
【0086】
また別の実施形態において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、及び安息香酸を組み合わせる。第2の工程は乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。代替的に、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、及び安息香酸を組み合わせる。第2の工程はクエン酸及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、及び安息香酸を組み合わせる。第2の工程は、酒石酸水素カリウム、クエン酸、及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。また別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、及び安息香酸を組み合わせる。第2の工程は、酒石酸水素カリウム、クエン酸、及び乳酸を加える。第3の工程は、アルギン酸、グリセリン、及びイオタカラギーナンを加える。
【0087】
また別の実施形態において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、安息香酸、及び酒石酸水素カリウムを組み合わせる。第2の工程は乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。代替的に、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、安息香酸、及び酒石酸水素カリウムを組み合わせる。第2の工程はクエン酸及び乳酸を加える。第3の工程はアルギン酸及びイオタカラギーナンを加える。別の代替的な方法において、第1の工程は、水、テノホビル、水酸化ナトリウム、安息香酸、及び酒石酸水素カリウムを組み合わせる。第2の工程はクエン酸及び乳酸を加える。第3の工程は、アルギン酸、グリセリン、及びイオタカラギーナンを加える。
【0088】
<使用方法>
典型的な実施形態において、本開示は、本明細書に記載されるような、アルギン酸をベースとする抗菌性組成物の局所適用を含む。本開示の文脈において、用語「局所適用」は、皮膚と同様に体腔への適用を含むことを、理解されたい。故に、例えば、前述の組成物は、膣、肛門、直腸、又は口などの体腔に適用される。更に、局所適用は、性交の前、その間、又はその後に行なわれてもよく、性交とは別に行われてもよい。
【0089】
本開示のアルギン酸をベースとする抗菌性組成物は、当業者に既知の任意の手段により、哺乳動物の膣に送達されるかもしれないことを、理解されたい。組成物の送達のための典型的な形態は、例えば、クリーム、ローション、ゲル、泡、スポンジや坐剤などの膣内デバイス、及びフィルムを含む。加えて、アルギン酸をベースとする抗菌性組成物は、例えばコンドーム潤滑剤などの、パーソナルケア製品として使用されてもよい。そのような潤滑剤は共通して知られている成分を含んでもよく、例えば、本開示の組成物に加えて、保水剤(例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール、グリコール、及びグリコールエーテル);バッファー(例えばグルコノ-d-ラクトン);殺菌剤(germicides or bactericides)(例えばグルコン酸クロルヘキシジン);防腐剤(例えばメチルパラベン);増粘剤(viscosifiers)(例えばヒドロキシエチルセルロースなど);他のアジュバント(例えば着色料、香水)である。当業者は、そのような送達形態の物理的性質(例えば粘度)が広く異なってもよいことを認識する。例えば、本開示の組成物のゲル形態の粘度(例えば150,000センチポアズ)は、本開示の組成物のローション形態の粘度(例えば100センチポアズ)より実質的に高くてもよい。そのような送達形態の材料、成分、比率、及び手順に関する更なる詳細は、当該技術分野で周知の技術に従って選択され得る。
【0090】
様々な実施形態において、本開示のアルギン酸をベースとする抗菌性組成物は好ましくは、STD感染の危険性を減らすのに有効な投与量で、哺乳動物の腟に投与される。典型的な投与量は、組成物の約1-10グラムの間、3-7グラムの間、又は4-6グラムの間に及ぶ。様々な実施形態において、開示された、アルギン酸をベースとする抗菌性組成物は、坐剤、スポンジ、綿棒、ブラシ、又はシリンジなどのデバイス或いはアプリケータを使用して適用され得る。他の実施形態において、開示された、アルギン酸をベースとする抗菌性組成物は、スポンジ、コンドーム、又はペッサリーなどのバリアデバイスに適用され得る。1つの実施形態において、開示された、アルギン酸をベースとする抗菌性組成物は、予め満たされた圧搾可能なチューブ又は予め満たされたシリンジなどの、予め満たされた単回用デバイスの中にあり得る。
【0091】
本件化合物の塩及びエステルなどの、前駆体、アナログ、及び誘導体として機能する他の化合物が利用され得ることは、当業者に容易に明らかとなる。
【0092】
上述の開示は、完全な開示、及び、どのようにして組成物及び方法を作り且つ使用する下についての記載を当業者に与えるように提供され、発明者がそれらの発明と見なすものの範囲を制限するようには意図されていない。(当業者に明白である開示を実行するための)上述の様式の修正は、以下の特許請求の範囲内にあると意図される。
【0093】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも個々のそのような刊行物、特許、又は特許出願が参照によって本明細書に組み込まれるよう具体的且つ個別に示されるかのように、それらの全体における参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0094】
以下の製剤は、20,000と400,000の間の分子量、及び0.25と2.0の間のM:Gの比率を有する、アルギン酸の亜群を使用する。
【0095】
<実施例1:アルギン酸をベースとする殺菌剤のための製剤>
その最も単純な形態において、アルギン酸をベースとする殺菌剤は、アルギン酸、テノホビル、及び水を含む。また別の形態において、アルギン酸、イオタカラギーナン、テノホビル、及び水を組み合わせる。本明細書に言及される製剤の何れかのために、パモ酸を随意に加えて、テノホビルの可溶性、透過性、又は吸収性を増強する。
【0096】
水と水酸化ナトリウムの塩基性溶液にテノホビルを溶かすことにより、製剤を作る。pHを中性より下にして、アルギン酸を加える。イオタカラギーナンは、使用する場合、アルギン酸を加える前、同時、又はその後に加えられる。
【0097】
<実施例2:アルギン酸をベースとする殺菌剤及び避妊薬のための製剤>
その最も単純な形態において、アルギン酸をベースとする殺菌剤及び避妊薬は、アルギン酸、テノホビル、乳酸、及び水を含む。また別の形態において、アルギン酸、キサンタンガム、テノホビル、乳酸、及び水を組み合わせる。また別の形態において、アルギン酸、イオタカラギーナン、テノホビル、乳酸、及び水を組み合わせる。別の形態において、アルギン酸、キサンタンガム、テノホビル、乳酸、クエン酸、安息香酸、酒石酸水素カリウム、グリセリン、及び水を組み合わせる。別の形態において、アルギン酸、イオタカラギーナン、テノホビル、乳酸、クエン酸、安息香酸、酒石酸水素カリウム、グリセリン、及び水を組み合わせる。本明細書に言及される製剤の何れかのために、パモ酸を随意に加えて、テノホビルの可溶性、透過性、又は吸収性を増強する。
【0098】
水と水酸化ナトリウムの塩基性溶液にテノホビルを溶かすことにより、製剤を作る。クエン酸、乳酸、及びアルギン酸などのpH低下成分を、次に加える。キサンタンガム及びイオタカラギーナンなどの増粘剤を最後に加える。グリセリン、安息香酸、及び酒石酸水素カリウムなどの、pHに影響しない他の成分を、任意の段階で加えることができる。最終的なpHは、約2と約5の間、約2と約4の間、又は約3と約4の間といった、正常な膣のpH範囲と同様でなければならない。
【0099】
<実施例3:酸緩衝避妊薬、アンフォラゲル(Amphora Gel)のための臨床試験>
この実施例において、酸緩衝避妊薬、アンフォラゲルの避妊能力を評価するために、臨床試験を行った。アンフォラゲルを、非劣性研究において、Conceptrol(登録商標)膣用ゲル(Revive Personal Products Company, Madison, New Jersey)と比較した。Conceptrol(登録商標)膣用ゲルは、2.5mL容量のゲルの中に4%のノノキシノール-9を含有する、局所用ゲルである。18-35歳の間の健康な女性を臨床試験に参加させ、半数にはアンフォラゲル(1回の使用につき5mL用量)を与え、もう半数にはConceptrol(登録商標)ゲル(1回の使用につき2.5mL用量)を与えた。女性に、異性間性交をする2時間前にゲルを膣内に挿入するよう指示した。両方のゲルを7の生理周期の期間にわたり投与し、ユーザーの亜群は、更に6のサイクルの間、アンフォラゲルを使用し続けた。評価期間の終わりに、女性の亜群は、膣及び子宮頚における病変を検知するコルポスコピー、及び膣フローラにおける任意の変化を測定するための試験を受けた。
【0100】
結果は、Kaplan-Meier統計分析を使用して、アンフォラゲルが、避妊の目的のためのConceptrol(登録商標)膣用ゲルより劣っていないことを示した。アンフォラゲルは十分に耐性があり、深刻な有害事象はなかった。細菌性腟症、尿路感染症、及び酵母菌感染の発生率は、2つのゲルの間で同様であった。更に、アンフォラゲルの漏出の報告は無く、女性はアンフォラゲルを好んでいると思われる。
【0101】
上述の実施例は、完全な開示、及び、どのようにして組成物及びを作り且つ使用するかについての記載を当業者に与えるように提供され、発明者がそれらの発明と見なすものの範囲を制限するようには意図されていない。(当業者に明白である本発明を実行するための)上述の様式の修正は、以下の特許請求の範囲内にあると意図される。
【0102】
本明細書で引用される全ての引用文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-10%のアルギン酸、1-10%のキサンタンガム、及び1-4%のL-乳酸を含む避妊に使用するための組成物であって、ここで、アルギン酸のマンヌロン酸塩:グルロン酸塩の比率は、0.5~1.2である、ことを特徴とする避妊に使用するための組成物。
【請求項2】
アルギン酸は100,000乃至200,000の間の平均分子量を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項3】
3-5%のアルギン酸、2.5-6%のキサンタンガム、及び1-4%のL-乳酸を含む、請求項1に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項4】
避妊に使用するための組成物は1.5乃至3.5のpHを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項5】
緩衝剤、増粘剤、保水剤、及び防腐剤の1以上を更に含む、請求項1に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項6】
緩衝剤は、クエン酸、酒石酸カリウム、安息香酸、ソルビン酸、フマル酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、酒石酸、酒石酸水素カリウム、エデト酸、エチレンジアミン四酢酸、酢酸、及びリンゴ酸から成る群から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項7】
増粘剤は、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、キトサン、ポリカルボフィル、カルボポール、ジェランガム、ポロクサマー、カラギーナン、及びイオタカラギーナンから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項8】
防腐剤は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンジルアルコニウム、硝酸フェニル水銀、及びクロルヘキシジンから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項9】
保水剤は、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、及びトリアセチンから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項10】
避妊に使用するための組成物は薬学的に許容可能な担体を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項11】
薬学的に許容可能な担体は水又はワセリンである、ことを特徴とする請求項10に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項12】
避妊に使用するための組成物は、受胎の予防、又は性行為感染症の拡散の危険性の減少のためのものである、ことを特徴とする請求項1に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項13】
避妊に使用するための組成物は、性活動の前又は後の局所適用のためのものである、ことを特徴とする請求項12に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項14】
避妊に使用するための組成物は、性活動の少なくとも15分前、少なくとも30分前、少なくとも1時間前、少なくとも1.5時間前、少なくとも2時間前、少なくとも2.5時間前、少なくとも3時間前、少なくとも3.5時間前、少なくとも4時間前、少なくとも4.5時間前、少なくとも5時間前、少なくとも6時間前、少なくとも7時間前、少なくとも8時間前、少なくとも9時間前、少なくとも10時間前、又は少なくとも12時間前に適用される、ことを特徴とする請求項13に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項15】
避妊に使用するための組成物は、性活動後5分以内、10分以内、15分以内、20分以内、30分以内、45分以内、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、或いは10時間以内に適用される、ことを特徴とする請求項13に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項16】
避妊に使用するための組成物は、避妊に使用するための組成物の1-10グラム、3-7グラム、又は4-6グラムを含む投与量で投与される、ことを特徴とする請求項12に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項17】
3-5%のアルギン酸、2.5-6%のキサンタンガム、及び2-4%のL-乳酸を含む、請求項1に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項18】
避妊に使用するための組成物は1.5乃至3.5のpHを有する、ことを特徴とする請求項17に記載の避妊に使用するための組成物。
【請求項19】
a)約3-5%のアルギン酸
b)約2.5-3.5%のキサンタンガム
c)約1-7%のL-乳酸
d)酒石酸水素カリウム
e)グリセリン
f)安息香酸
g)クエン酸、および
h)水
から実質的に成る組成物であって、
ここで、組成物はD-乳酸を実質的に含まない、ことを特徴とする組成物。
【請求項20】
アルギン酸は約20,000~約300,000g/モルの範囲の平均分子量を有する、ことを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
マトリックス状態の組成物は精子を捕捉及び不活性化することができる、ことを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
マトリックス状態の組成物は、性行為感染症を引き起こす微生物の増殖を予防又は阻害することができる、及び前記微生物の感染性を予防又は減少することができる、ことを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
組成物のpHは5.0以下である、ことを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
約3.5-4.5%のアルギン酸、約2.5-3.5%のキサンタンガム、及び約1-4%のL-乳酸を含む、請求項19に記載の組成物。
【外国語明細書】