(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007094
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】水排出機構及び水はね逆流防止カバー
(51)【国際特許分類】
E03F 7/04 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
E03F7/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109815
(22)【出願日】2020-06-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】500183607
【氏名又は名称】藤沢 和則
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100136744
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 佳正
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 和則
(57)【要約】
【課題】周囲への水はねを防止しつつ雨どい等への水の逆流を防止することができる水排出機構及び水はね逆流防止カバーを提供する。
【解決手段】水排出機構の水はね逆流防止カバーは、雨どいの下側筒状部を内部に収容可能である筒状本体部と、前記筒状本体部の下方に配置され、前記水はね逆流防止カバーを水に入れたとき、前記筒状本体部に浮力を付与する浮力部と、前記水はね逆流防止カバーを水に入れたとき、水面よりも上側に位置する下方排水開口部空間とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在し且つ下端が下方に開口する下側筒状部を有する雨どいと、
前記雨どいの前記下側筒状部の下方に配置された集水枡と、
前記集水枡の開口部を開閉可能な蓋と
を有する水排出機構であって、
前記水排出機構は、前記雨どいから前記集水枡に落ちる水の水はねを防止すると共に、前記集水枡から前記雨どいへの水の逆流を防止する水はね逆流防止カバーをさらに備え、
前記水はね逆流防止カバーは、
前記雨どいの前記下側筒状部を内部に収容可能である筒状本体部と、
前記筒状本体部の下方に配置され、前記筒状本体部に浮力を付与する浮力部と
を備え、
前記集水枡が無水状態で前記水はね逆流防止カバーの底部が前記集水枡の底部に接している場合、前記筒状本体部の上縁は、前記雨どいの前記下側筒状部の下端と一致するか、あるいは、前記下側筒状部の少なくとも一部を覆うものであり、
前記水はね逆流防止カバーは、
前記水はね逆流防止カバーを水に入れたとき、水面よりも上側に位置する下方排水開口部空間を形成する
ことを特徴とする水排出機構。
【請求項2】
請求項1に記載の水排出機構において、
前記水排出機構は、前記筒状本体部の下部から下方に延在して前記浮力部を支持する脚部をさらに備え、
前記下方排水開口部空間は、前記脚部と前記浮力部により形成される
ことを特徴とする水排出機構。
【請求項3】
請求項1に記載の水排出機構において、
前記筒状本体部は、少なくとも一部が水よりも比重が小さい部分を有することで前記浮力部を形成し、
さらに、前記筒状本体部の下部には、前記下方排水開口部空間を構成する切欠きが設けられる
ことを特徴とする水排出機構。
【請求項4】
雨どいから集水枡に落ちる水の水はねを防止すると共に、前記集水枡から前記雨どいへの水の逆流を防止する水はね逆流防止カバーであって、
前記水はね逆流防止カバーは、
前記雨どいの下側筒状部を内部に収容可能である筒状本体部と、
前記筒状本体部の下方に配置され、前記筒状本体部に浮力を付与する浮力部と
を備え、
前記水はね逆流防止カバーを水に入れたとき、水面よりも上側に位置する下方排水開口部空間を形成する
ことを特徴とする水はね逆流防止カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根に降った雨水等を排出する水排出機構等に関し、より具体的には、雨どいから集水枡に落ちる水等の水はね及び逆流を防止する水排出機構等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根に降った雨水を排出するために雨どい、集水枡等を備える水排出機構が用いられてきた。
図6(A)及び
図6(B)は、従来の水放出機構の第1例及び第2例を示す。
図6(A)の水排出機構600では、雨どい621を通過した水は、コンクリート製の蓋651の開口部661を介して集水枡641に排出される。同様に、
図6(B)の水排出機構601では、雨どい622を通過した水は、格子状の蓋652の開口部662を介して集水枡642に排出される。
【0003】
また、水排出機構に関連する技術として、次のような先行技術文献がある。すなわち、特許文献1には、外部からの排水が流入する排水桝中に配設される排水逆流防止装置であって、排水の水位に係る浮力により上下する弾性体からなる浮子と、該浮子の外径より若干小さい内径を有し先端部が重力下方に開口する排水管と、前記浮子を前記先端部の下方に位置させる定置装置と、を含んで構成され、前記浮力により浮子が前記排水管の先端部を閉塞することを特徴とする排水逆流防止装置が開示されている。かかる装置によれば、雨水等の排水が排水管に逆流することを防止することができるものとされている。
【0004】
また、特許文献2には、建物の屋根に降り注いだ雨水及び/又は風呂,洗面所の雑排水を貯留するための水貯留槽の流入口または流出口に接続されるフロート式止水装置であって、前記水貯留槽に貯留されている前記水の水位が所定の高さ位置まで上昇すると、フロートの浮力により流路を塞いで前記水の流れを停止し、前記水の水位が下がると、前記フロートの自重により前記流路を開けて前記水を流すようにしたことを特徴とするフロート式止水装置が開示されている。かかる装置によれば、雨水等を貯留するための水貯留槽の水位が所定の高さ位置になると、雨水等の流れを自動的に停止することができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06-067588号公報
【特許文献2】特開2002-039427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1では、浮力により浮子が排水管の先端部を閉塞することで排水が排水管に逆流することを防止する(例えば、請求項1、[0006]、[0007]を参照)。同様に、特許文献2では、水貯留槽に貯留されている水の水位が所定の高さ位置まで上昇すると、フロートの浮力により流路を塞いで水の流れを停止することで、雨水等の流れを自動的に停止する(例えば、請求項1、[0007]、[0008]を参照)。しかしながら、
図6(A)及び
図6(B)のように、雨どい621、622の下端が蓋651、652よりも上方に位置する場合、特許文献1及び特許文献2のような構成では、逆流を防止することができない。
【0007】
さらに、従来例として示した
図6(A)及び
図6(B)のような構成では、雨どい621、622から集水枡641、642に向かって排出された水が、集水枡641、642内に溜まった水に当たった際、水はねが起こる場合がある。このような水はねが起こった場合、雨どい621、622周辺の壁等に雨水や泥を含んだ水がかかることになり、壁等を汚してしまう。
【0008】
本発明は、上記のような課題を考慮したものであり、周囲への水はねを防止しつつ雨どいへの水の逆流を防止する水排出機構及び水はね逆流防止カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の一実施形態にかかる水排出機構は、上下方向に延在し且つ下端が下方に開口する下側筒状部を有する雨どいと、前記雨どいの前記下側筒状部の下方に配置された集水枡と、前記集水枡の開口部を開閉可能な蓋とを有する水排出機構であって、前記水排出機構は、前記雨どいから前記集水枡に落ちる水の水はねを防止すると共に、前記集水枡から前記雨どいへの水の逆流を防止する水はね逆流防止カバーをさらに備え、前記水はね逆流防止カバーは、前記雨どいの前記下側筒状部を内部に収容可能である筒状本体部と、前記筒状本体部の下方に配置され、前記筒状本体部に浮力を付与する浮力部とを備え、前記集水枡が無水状態で前記水はね逆流防止カバーの底部が前記集水枡の底部に接している場合、前記筒状本体部の上縁は、前記雨どいの前記下側筒状部の下端と一致するか、あるいは、前記下側筒状部の少なくとも一部を覆うものであり、前記水はね逆流防止カバーは、前記水はね逆流防止カバーを水に入れたとき、水面よりも上側に位置する下方排水開口部空間を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、集水枡に水がないときであっても、水はね逆流防止カバーの筒状本体部の上縁が雨どいの下側筒状部を覆う。また、集水枡の水位が上がった場合でも、浮力部の作用により筒状本体部が上下動して、集水枡の水位との隙間を維持ないし確保しながら雨どいを覆い続ける。そのため、集水枡における水位にかかわらず、逆流を防止しながら雨どいから集水枡に落ちる水がはねて雨どい近傍の壁等に向かう、いわゆる水はねを防止する。
【0011】
また、本発明によれば、浮力部の作用により水はね逆流防止カバーの筒状本体部が上下動した場合でも、下方排水開口部空間により筒状本体部内の水を排出し続けることが可能である。従って、集水枡の水位にかかわらず、集水枡から雨どいへの水の逆流を防止可能となる。
【0012】
前記水排出機構は、前記筒状本体部の下部から下方に延在して前記浮力部を支持する脚部をさらに備えてもよい。また、前記下方排水開口部空間は、前記脚部と前記浮力部により形成されてもよい。これにより、下方排水開口部空間を簡易な構成で形成可能となる。
【0013】
或いは、前記筒状本体部は、少なくとも一部が水よりも比重が小さい部分を有することで前記浮力部を形成してもよい。また、前記筒状本体部の下部には、前記下方排水開口部空間を構成する切欠き部が設けられてもよい。これにより、少ない部品点数で水はね逆流防止カバーを形成することが可能となる。
【0014】
本発明に係る水はね逆流防止カバーは、雨どいから集水枡に落ちる水の水はねを防止すると共に、前記集水枡から前記雨どいへの水の逆流を防止する水はね逆流防止カバーであって、前記水はね逆流防止カバーは、前記雨どいの下側筒状部を内部に収容可能である筒状本体部と、前記筒状本体部の下方に配置され、前記筒状本体部に浮力を付与する浮力部とを備え、前記水はね逆流防止カバーを水に入れたとき、水面よりも上側に位置する下方排水開口部空間を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態にかかる水排出機構等によれば、例えば、周囲への水はねを防止しつつ雨どいへの水の逆流を防止するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる水排出機構及びその周辺を模式的に説明する説明図である。
【
図2】
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)及び
図2(D)は、本発明の一実施形態において、集水枡内の水位に応じた水はね逆流防止カバーの第1~第4状態を説明する説明図である。
【
図3】
図3(A)は、本発明の第1変形例に係る水はね逆流防止カバーの構造を概念的に説明する斜視概念図である。
図3(B)は、本発明の第2変形例に係る水はね逆流防止カバーの構造を概念的に説明する斜視概念図である。
図3(C)は、本発明の第3変形例に係る水はね逆流防止カバーの構造を概念的に説明する斜視概念図である。
【
図4】
図4(A)は、本発明の第4変形例に係る水はね逆流防止カバーの構造を概念的に説明する斜視概念図である。
図4(B)は、本発明の第5変形例に係る水はね逆流防止カバーの構造を概念的に説明する斜視概念図である。
図4(C)は、本発明の第6変形例に係る水はね逆流防止カバーの構造を概念的に説明する斜視概念図である。
【
図5A】本発明の第7変形例に係る水はね逆流防止カバーの筒状本体部を概念的に説明する斜視概念図である。
【
図5B】
図5B(a)、
図5B(b)及び
図5B(c)は、第7変形例に係る水はね逆流防止カバーを組み立てる際の第1状態、第2状態及び第3状態をそれぞれ説明する説明図である。
【
図6】
図6(A)及び
図6(B)は、従来の水排出機構の第1例及び第2例をそれぞれ説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<一実施形態>
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態にかかる水排出機構1000及びその周辺を模式的に示す。
図1に示すように、水排出機構1000は、雨どい1010と、集水枡1020と、排水管1021と、蓋1022と、水はね逆流防止カバー1030(以下「カバー1030」ともいう。)とを有する。雨どい1010は、その上端が建物1040の屋根1050に連結されて、屋根1050に降った雨水等の水1060を集水枡1020近傍まで案内する。雨どい1010は、建物1040の壁に沿って上下方向に延在し且つその下端が下方に開口する下側筒状部1011を有する。雨どい1010の下端は、蓋1022よりも上方に位置する。
【0018】
集水枡1020は、雨どい1010の下方に位置し、雨どい1010から放出される雨水等の水1060を受ける構造物である。また、集水枡1020は、排水管1021と連結されることで、雨どい1010等から入り込む水1060の水位が上昇した場合に溢れる水を、排水管1021を介して地中などに放出する。本発明一実施形態において、集水枡1020は、下側に底面を有し、上側に開口部1023を有する略直方体状であり、
図1に示すように、その底部よりも上方において排水管1021と連結される。そのため、雨どい1010から放出される雨水等の水1060は、一時的に集水枡1020に蓄積され、この蓄積された水1060の水位が排水管1021の高さに到達すると、水1060は、集水枡1020から排水管1021に向かって排出される。さらに、排水管1021が集水枡1020と連結する位置は、集水枡1020の底部よりも上方にあることから、集水枡1020に流れ込んだ泥やゴミは、集水枡1020に蓄積される。これにより、泥やゴミが排水管1021に流れ込んで排水管1021が閉塞することを抑制することができる。
【0019】
集水枡1020の上部には、蓋1022が配置されて、集水枡1020の開口部1023を開閉可能に閉塞し、石や枯葉、その他ゴミ等が集水枡1020に入り込むのを防止する。また、人などがうっかり足を踏み入れて怪我をすることもない。本発明はこれに限定されるものではないが、一実施形態において、蓋1022は、縞鋼板、ます蓋、格子蓋等の各種の蓋を用いることができる。一実施形態の蓋1022には、雨どい1010からの雨水等の水1060を集水枡1020に到達させるための開口部1024(蓋開口部1024)が形成される。本発明はこれに限定されるものではないが、一実施形態において、蓋開口部1024は、雨どい1010の直下に配置される。また、この蓋開口部1024を介してカバー1030を上下動可能とするため、蓋開口部1024は、カバー1030の外形よりも大きい。より具体的には、本発明の一実施形態における蓋開口部1024の好適な大きさは、後述する筒状本体部3131や4131等の外形よりも大きく、脚部3135a、3135bや4135a~4135c等を含む外形よりもやや小さい。本発明の一実施形態において、水はね逆流防止カバー1030は、雨どい1010から集水枡1020に落ちる水1060の水はねを防止すると共に、集水枡1020から雨どい1010への水1060の逆流を防止するための水位との隙間を常に維持ないし確保している。
【0020】
[水はね逆流防止カバー]
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)及び
図2(D)は、本発明の一実施形態において、水排出機構2000の集水枡2020内の水位に応じた水はね逆流防止カバー2030(以下「カバー2030」ともいう。)の第1~第4状態を示す図である。
図2(A)等に示すように、カバー2030は、筒状本体部2031と、浮力部2032と、下方排水開口部空間2033とを有する。
【0021】
筒状本体部2031は、蓋2022の開口部2024内に配置されると共に、雨どい2010の下側筒状部2011をその内部に収容可能な円筒状の部材である。換言すると、一実施形態において、筒状本体部2031の内径は、雨どい2010の下側筒状部2011の外径よりも大きい。
図2(A)に示すように、カバー2030は、集水枡2020に水2060がなくカバー2030の底部が集水枡2020の底部に接している場合であっても、筒状本体部2031の上縁が、雨どい2010の下側筒状部2011を依然として覆う程度の高さを有している。
【0022】
浮力部2032は、筒状本体部2031の下方に配置される。また、浮力部2032は、カバー2030が水2060に浸水されたとき、依然として水2060の水位との間に隙間を確保する程度の浮力を筒状本体部2031に与える。一実施形態における浮力部2032は、2つの浮子2034a及び2034bを備える。浮子2034a及び2034bは、筒状本体部2031の下部から下方及び径方向外側に延在する脚部2035a及び2035bに支持される。
図2(A)等に示すように、脚部2035a及び2035bは、上側に向かって凸となるように湾曲している。或いは、脚部2035a及び2035bは、直線状又は下側に向かって凸となるように湾曲してもよい。本発明はこれに限定されるものではないが、一実施形態において、浮子2034及び脚部2035の各組合せは、筒状本体部2031の中心軸を中心として線対称となる位置に配置される。
【0023】
下方排水開口部空間2033は、カバー2030を水2060に浸水させたとき、水面よりも上側に位置して形成される空間である。本発明の一実施形態において、下方排水開口部空間2033は、浮力部2032(浮子2034a及び2034b)の浮力により、脚部2035の全部または一部及び浮子2034a、2034bの少なくとも一部が水面よりも上側に位置することで、筒状本体部2031の下縁と水面との間に形成される。
図2(A)~
図2(D)から明らかなように、集水枡2020内の水位が変化すると、カバー2030は、浮力部2032の作用により上下動する。この際、脚部2035の全部または一部及び浮子2034の少なくとも一部は水面よりも上側に位置し続けるため、下方排水開口部空間2033も確保される。そのため、上下方向におけるカバー2030の位置にかかわらず、筒状本体部2031内を通ってくる水を逆流させることなく外へ排出し続けることができる。
【0024】
なお、
図2(A)では、高さ方向における雨どい2010の下縁と筒状本体部2031の上縁との重なり部分の長さはh1であり、筒状本体部2031の上縁の方が雨どい2010の下縁よりも上側に位置するように構成されている。
図2(B)では、高さ方向における雨どい2010の下縁と筒状本体部2031の上縁との重なり部分の長さはh2(>h1)である。
図2(C)では、高さ方向における雨どい2010の下縁と筒状本体部2031の上縁との重なり部分の長さはh3(>h2)である。
図2(D)では、高さ方向における雨どい2010の下縁と筒状本体部2031の上縁との重なり部分の長さはh4(>h3)であり、浮子2034が蓋2022と接触しているため、重なり部分は最も大きくなる。一方で、上記重なり部分が最小でもh1が確保されているというのが本発明の一実施形態にかかる水排出機構または水はね逆流防止カバーの特徴である。
【0025】
なお、h1は、理論的には0cm以上であればよい。つまり、h1=0であるときは、集水枡に水がなく(無水状態)、水はね逆流防止カバーの底部が前記集水枡の底部に接している場合に、筒状本体部の上縁は、雨どいの下側筒状部の下端と一致する。さらに好適には、雨どい2010の下縁から漏れ出る水を防いだり、水はねを効果的に防止するだけのマージン(重なり長)があることが望ましい。
【0026】
また、
図2(D)では、急激な増水又は排水管2021の詰まりにより集水枡2020内の水位が蓋2022まで到達し、集水枡2020内の水2060は、外部に溢れ出している。このとき、図示されるように、浮子2034a及び2034bは、蓋2022に遮られて地表に露出することはない。しかし、そのような場合でも、下方排水開口部空間2033は確保されている。そのため、溢れ出た水2060は、筒状本体部2031内を逆流することなく、下方排水開口部空間2033から外へ放出されることとなる。
【0027】
[一実施形態にかかる効果]
以上のような本発明の一実施形態によれば、集水枡2020に水2060がないときであっても、カバー2030の筒状本体部2031の上縁が雨どい2010の下側筒状部2011の少なくとも一部を覆う(
図2(A))。また、集水枡2020の水位が上がった場合でも、浮力部2032の作用により筒状本体部2031が上下動して雨どいをカバーし続ける(
図2(B)~
図2(D))。そのため、集水枡2020における水位にかかわらず、逆流を防止しながら、雨どい2010から集水枡2020に落ちる水2060がはねて雨どい2010近傍の壁1051(
図1)等に向かういわゆる水はねを防止することができる。
【0028】
また、本発明の一実施形態によれば、浮力部2032の作用によりカバー2030の筒状本体部2031が上下動した場合でも、下方排水開口部空間2033により筒状本体部2031内の水2060を逆流させることなく外へ排出し続けることが可能である(
図2(B)~
図2(D))。従って、集水枡2020の水位にかかわらず、集水枡2020から雨どい2010への水2060の逆流を防止することができる。
【0029】
本発明の一実施形態において、水排出機構2000は、筒状本体部2031の下部から下方に延在して浮力部2032(浮子2034a及び2034b)を支持する脚部2035a及び2035bを備える(
図2(A)等)。また、下方排水開口部空間2033は、脚部2035と浮力部2032により形成される(
図2(A)等)。これにより、下方排水開口部空間2033を簡易な構成で形成可能となる。
【0030】
本発明の一実施形態において、浮子2034a及び2034bを支持する脚部2035a及び2035bは、筒状本体部2031の下部から下方に延在する(
図2(A)等)。これにより、上下方向において、筒状本体部2031の下縁と浮子2034a及び2034bとの距離を確保し易くなり、下方排水開口部空間2033を形成し易くなる。
【0031】
[変形例]
(第1変型例)
図3(A)は、本発明の第1変形例に係る水はね逆流防止カバー3130(以下「カバー3130」ともいう。)の構造を概念的に説明する斜視概念図である。カバー3130は、筒状本体部3131と、浮力部3132と、下方排水開口部空間3133とを有する。浮力部3132は、浮子3134a及び3134b(さらに、図示されない浮子があってもよい。以下、同様。)を備え、これらの浮子3134a及び3134bは、脚部3135a及び3135bを介して筒状本体部3131の下部に連結されている。上記実施形態のカバー2030(
図2(A)等)では、脚部2035が上側に向かって凸となるように湾曲していた。これに対し、第1変形例のカバー3130では、脚部3135が直線状である。本発明においては、これらに限らず、様々な脚部のデザインを採用可能である。
【0032】
(第2変型例)
図3(B)は、本発明の第2変形例に係る水はね逆流防止カバー3230(以下「カバー3230」ともいう。)の構造を概念的に説明する斜視概念図である。カバー3230は、筒状本体部3231と、浮力部3232と、下方排水開口部空間3233とを有する。浮力部3232は、浮子3234a及び3234bを備え、これらの浮子3234a及び3234bは、筒状本体部3231の下部に形成された脚部3235a及び3235bに連結されている。上記実施形態のカバー2030(
図2(A)等)では、筒状本体部2031は、単純な円筒状であり、別部材としての脚部2035を有していた。これに対し、第2変形例のカバー3230では、筒状本体部3231は、円筒状であると共に、その下部に切欠き部3236が形成される。これにより、筒状本体部3231自体により脚部3235が形成される。上記実施形態(
図2(A)等)及び第1変形例(
図3(A))と比較して、部品点数を減らすことが可能となる。
【0033】
(第3変型例)
図3(C)は、本発明の第3変形例に係る水はね逆流防止カバー3330(以下「カバー3330」ともいう。)の構造を概念的に説明する斜視概念図である。カバー3330は、筒状本体部3331と、浮力部3332と、下方排水開口部空間3333とを有する。浮力部3332は、浮子3334a及び3334bを備え、これらの浮子3334a及び3334bは、筒状本体部3331の下部に連結されている。上記実施形態のカバー2030(
図2(A)等)では、浮子2034は、脚部2035を介して筒状本体部2031に接続されていた。これに対し、第3変形例のカバー3330では、浮子3334a及び3334bは、筒状本体部3331に直接固定される。筒状本体部3331に対する浮子3334a及び3334bの固定は、例えば、鉤構造、接着剤、図示しないねじ等を用いて行うことができる。これにより、上記実施形態(
図2(A)等)及び第1変形例(
図3(A))と比較して、部品点数を減らすことが可能となる。
【0034】
(第4変型例)
図4(A)は、本発明の第4変形例に係る水はね逆流防止カバー4130(以下「カバー4130」ともいう。)の構造を概念的に説明する斜視概念図である。カバー4130は、筒状本体部4131と、浮力部4132と、下方排水開口部空間4133とを有する。浮力部4132は、3つの浮子4134a~4134cを備え、これらの浮子4134a~4134cは、脚部4135a~4135cを介して筒状本体部4131の下部に連結されている。第1変形例のカバー3130(
図3(A))では、浮子3134及び脚部3135はそれぞれ2つ設けられていた。これに対し、第4変形例のカバー4130では、浮子4134及び脚部4135はそれぞれ3つ設けられる。これにより、浮子4134が集水枡(例えば
図1の集水枡1020)の底部と接したときに、カバー4130の姿勢を安定させることができる。なお、浮子4134及び脚部4135の数は、3つに限定されず、たとえば1つあるいは4つ以上としてもよい。
【0035】
(第5変型例)
図4(B)は、本発明の第5変形例に係る水はね逆流防止カバー4230(以下「カバー4230」ともいう。)の構造を概念的に説明する斜視概念図である。カバー4230は、筒状本体部4231と、浮力部4232と、下方排水開口部空間4233とを有する。浮力部4232は、1つのリング状浮子4234を備え、この浮子4234は、複数の脚部4235a及び4235bを介して筒状本体部4231の下部に連結されている。上記実施形態(
図2(A)等)では、浮子2034が複数設けられていた。第1~第4変形例のカバー3130、3230、3330、4130(
図3(A)~
図3(C)、
図4(A))も同様である。これに対し、第5変形例のカバー4230では、1つのリング状の浮子4234を複数の脚部4235a及び4235bで筒状本体部4231に連結する。これにより、浮子4234の数を減らしつつ、浮子4234が集水枡(
図1の120等)の底部と接したときに、カバー4230の姿勢を安定させることができる。なお、浮子4234を支持する脚部4235の数は、1つ又は3つ以上としてもよい。
【0036】
(第6変型例)
図4(C)は、本発明の第6変形例に係る水はね逆流防止カバー4330(以下「カバー4330」ともいう。)の構造を概念的に説明する斜視概念図である。カバー4330は、筒状本体部4331と、浮力部4332と、下方排水開口部空間4333とを有する。上記実施形態(
図2(A)等)では、筒状本体部2031とは別部材の浮子2034(及び脚部2035)を設けた。第1~第5変形例のカバー3130、3230、3330、4130、4230(
図3(A)~
図3(C)、
図4(A)、
図4(B))も同様である。これに対し、第6変形例のカバー4330では、比重が小さい素材(あるいは、比重が1以上であっても内部に気泡等が形成される等により、素材トータルとして浮力が備わっておればよい)でカバー4330を構成することにより、筒状本体部4331自体に浮力部4332の機能が備わる(その意味では、筒状本体部4331が全体として浮力部となる)。また、筒状本体部4331の下方に切欠き部4336を設けることで下方排水開口部空間4333を形成する。これにより、水はね防止及び逆流防止の機能を確保しつつ、カバー4330の部品点数を減らすことができる。なお、切欠き部4336の形状は、
図4(C)に示すもの以外に、複数の穴あき状のものや格子状のものなどであってもよい。
【0037】
また、カバー4330あるいは筒状本体部4331は、その全体の比重が水よりも小さくなるように構成される必要はなく、カバー4330あるいは筒状本体部4331の少なくとも一部の比重が水よりも小さくなるように構成されればよい。
【0038】
(第7変型例)
図5Aは、本発明の第7変形例に係る水はね逆流防止カバー5130(以下「カバー5130」ともいう。)の筒状本体部5131の構造を概念的に説明する斜視概念図である。カバー5130は、筒状本体部5131と、(
図5Bに示す)浮力部5132と、(
図5Bに示す)下方排水開口部空間5133とを有する。
図5B(b)及び
図5B(c)に示されるように、カバー5130は、浮子5134a及び5134b及び脚部5135a及び5135bを有するが、
図5Aでは図示を省略している。上記実施形態(
図2(A)等)では、筒状本体部2031は単一部材で構成されていた。第1~第6変形例の筒状本体部3131、3231、3331、4131、4231、4331(
図3(A)~
図3(C)、
図4(A)~
図4(C))も同様である。これに対し、第7変形例のカバー5130では、筒状本体部5131は、上部材5137及び下部材5138を有する。上部材5137と下部材5138は、所定の連結方法(例えば、継ぎ構造、ねじ構造、接着剤等)により連結あるいは着脱可能である。これにより、以下に詳述するように、カバー5130の設置を容易化することができる。また、上部材5137及び下部材5138の素材は、同一であっても、相違してもよい。
【0039】
図5B(a)、
図5B(b)及び
図5B(c)は、第7変形例に係る水はね逆流防止カバー5130を組み立てる際の第1状態、第2状態及び第3状態を示す。
図5B(a)の状態では、雨どい5010、集水枡5020及び排水管5021の設置は既に完了しているものとする。ここで、カバー5130を組み立てる際、作業者は、筒状本体部5131の上部材5137の内部に雨どい5010が入るように、上部材5137を上方に向かって移動させる(
図5B(a))。換言すると、作業者は、上部材5137が雨どい5010に被さるように上部材5137を上側に向かって移動させる。
このとき、蓋5022は閉じていない状態であってもよい。
【0040】
次いで、作業者は、筒状本体部5131の下部材5138を、蓋開口部5024内に通過させ、そのままの状態で蓋5022を閉める(
図5B(b))。この際、作業者は、蓋5022を閉める作業の邪魔にならないように上部材5137を上方位置で仮止めなどして保持させ、また、下部材5138の上側を把持しておくなどする。次いで、作業者は、雨どい5010を内部に通した状態の上部材5137と、蓋開口部5024に通した状態の下部材5118を連結させ、カバー5130を下方に移動させて集水枡5020の底部に接触させた後、カバー5130から手を離す(
図5B(c))。なお、上部材5137を雨どい5010に被せる前に、下部材5118を蓋開口部5024に通しておいてもよい。
【0041】
(その他のバリエーション)
上記実施形態では、筒状本体部2031は円筒状であった(
図2(A)等)。しかしながら、本発明はこれに限定されることはなく、筒状本体部2031は、その他の筒状(角筒状、角柱状、円錐台状、角錐台状)であってもよい。
【0042】
本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された構成要件の全て及び/又は開示された全ての方法又は処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。
【0043】
また、本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。従って、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一又は均等となる特徴の一例にすぎない。
【0044】
さらに、本発明は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本発明は、本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された全ての新規な特徴又はそれらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法又は処理のステップ、又はそれらの組合せに拡張することができる。
【符号の説明】
【0045】
1000、2000 水排出機構
1010、2010、5010 雨どい
1011、2011 雨どいの下側筒状部
1020、2020、5020 集水枡
1021、2021、5021 排水管
1022、2022、5022 蓋
1023 集水枡の開口部
1024、2024、5024 蓋の開口部
1030、2030、3130、3230、3330、4130、4230、4330、5130 水はね逆流防止カバー
1040 建物
1050 屋根
1051 壁
1060、2060 水
2031、3131、3231、3331、4131、4231、4331、5131 筒状本体部
2032、3132、3232、3332、4132、4232、4332、5132 浮力部
2033、3133、3233、3333、4133、4233、4333、5133 下方排水開口部空間
2034a、2034b、3134a、3134b、3234a、3234b、3334a、3334b、4134a~4134c、4234、5134a、5134b 浮子
2035a、2035b、3135a、3135b、3235a、3235b、4135a~4135c、4235a、4235b、5135a、5135b 脚部
3236 4336 切欠き部