(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070944
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】リファキシミンの多形混合物および固形製剤の製造のためのその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 498/22 20060101AFI20220506BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20220506BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220506BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220506BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20220506BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20220506BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C07D498/22 301
C07D498/22 CSP
A61K31/437
A61P1/16
A61P25/00
A61P1/12
A61K9/28
A61P31/04
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019164
(22)【出願日】2022-02-10
(62)【分割の表示】P 2019212153の分割
【原出願日】2015-03-24
(31)【優先権主張番号】14162587.1
(32)【優先日】2014-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519420078
【氏名又は名称】アエンメエッレイ・イタリー・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】AMRI Italy S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】パリデ・グリゼンティ
(72)【発明者】
【氏名】マリア・アルジェーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエーレ・ペンゴ
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ドナータ・グリッリ
(72)【発明者】
【氏名】エマヌエーラ・フマガッリ
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ・モッタ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安定なリファキシミン結晶多型混合物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】リファマイシンOを出発物質として湿った粗リファミキシンを製造する工程、該リファキシミンを50℃~60℃の温度でエチルアルコール中に溶解させ、水を加え、次いで前記懸濁液の温度を1~3時間攪拌した状態で28~33℃に下げることによって湿った精製リファキシミンを沈殿させ、結晶化混合物を1~2時間攪拌した状態で20~25℃に冷却し、そして前記結晶化混合物の沈殿を得るまでの一定時間0~5℃に冷却し、沈殿させることで精製し、前記懸濁液をフィルタードライヤーで濾過し、得られた固形物を水で洗浄し、続いて38~42℃の範囲の温度で常圧にて不活性ガス気流下で6±2%の最終的な含水量に達する一定の時間まで攪拌しながら乾燥させる方法によって製造される、85/15±3の相対比率のα/β形態のリファキシミン多形混合物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
85/15±3の相対比率のα/β形態のリファキシミン多形混合物。
【請求項2】
請求項1に記載のリファキシミン多形混合物の製造方法であって:
a)1モル当量のリファマイシンOを、20℃~30℃の間の温度にて1:2~1:3の間の体積比の水およびエチルアルコールの溶媒混合液中で2または3当量の2-アミノ-4-メチルピリジンと反応させて反応物を得;
b)20~30℃で前記反応物を、アスコルビン酸、続いて水およびエチルアルコールの混合液および濃塩酸溶液で処理し、前記反応物のpHを6.0~6.5の最終値に調整して、懸濁液を得;
c)前記懸濁液を濾過し、得られた固形物を水/エチルアルコール溶媒混合液で洗浄して、湿った粗リファキシミンを得;
d)湿った粗リファキシミンを、50℃~60℃の温度でエチルアルコール中に溶解させ、水を加え、次いで前記懸濁液の温度を1~3時間攪拌させた状態で28~33℃に下げることによって湿った精製リファキシミンを沈殿させ、結晶化混合物を1~2時間攪拌させた状態で20~25℃に冷却し、そして最後に前記結晶化混合物の沈殿を得るまでの一定の時間、0~5℃に冷却させることによって沈殿させることによって精製し;
e)前記懸濁液をフィルタードライヤーで濾過し、得られた固形物を水で洗浄し、続いて
f)38~42℃の範囲の温度で常圧にて不活性ガス気流下で6±2%の最終的な含水量に達する一定の時間まで攪拌させながら乾燥させること
を特徴とする方法。
【請求項3】
医薬として使用するための、請求項1に記載のリファキシミン多形混合物。
【請求項4】
旅行者下痢症および肝性脳症の治療における使用のための、請求項1に記載のリファキシミン多形混合物。
【請求項5】
請求項1に記載のリファキシミン多形混合物を活性成分として含む、医薬組成物。
【請求項6】
固形製剤の製造のための、請求項1に記載のリファキシミン多形混合物の使用。
【請求項7】
請求項1に記載のリファキシミン多形混合物を含む、フィルムコーティング錠剤。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルムコーティング錠剤の製造方法であって、下記の工程:
a’)請求項1に記載のリファキシミンα/β多形混合物を、適当な賦形剤と室温で混合して、均一な混合物を得;
b’)工程a’)からの前記混合物を乾式造粒/圧縮で処理し、これをふるいにかけて、混合物を得;
c’)工程b’)で得られた前記混合物を圧縮して、錠剤を供し;
d’)工程c’)で得られた前記錠剤を、適当なコーティングを用い、適宜、通常の賦形剤を用いて、コーティングすること
を特徴とする方法。
【請求項9】
工程d’)において、前記通常の賦形剤が、可塑剤および/または乳白剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項2に記載の方法の工程a)~c)によって得られた湿った粗リファキシミンの多形形態。
【請求項11】
請求項2に記載の方法の工程d)~e)によって得られた湿った精製リファキシミンの多形形態。
【請求項12】
85/15±3の相対比率のα/β形態のリファキシミン多形混合物の製造方法における中間体としての請求項10に記載の湿った粗リファキシミンの使用。
【請求項13】
85/15±3の相対比率のα/β形態のリファキシミン多形混合物の製造方法における中間体としての請求項11に記載の湿った精製リファキシミンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化学、特に、医化学、さらに、活性医薬成分(API)の製造の分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
リファキシミン(CAS登録番号80621-81-4によって同定される化合物)は、Alfa Wassermanによって1981年に最初に開示された非呼吸性合成リファマイシン抗生物質であり(BE888895);この化合物は、現在、旅行者下痢症および肝性脳症の治療のための療法で利用されている。リファキシミンに対して行われた薬物動態試験により、この化合物は腸からほとんど吸収されないことが確認された(Cellai, L.; Cerrini, S.; Brufani, M.; Marchi, E.; Mascellani, G.; Montecchi, L. Structure-activity relationships in 4-deoxypyrido(1',2'-1.2)imidazo(5.4-c)rifamycin SV derivatives. Chemioterapia (1983), 2(5. Suppl.: Mediterr. Congr. Chemother., Proc., 3rd, 1982), 53-4)。
【0003】
リファキシミンの構造式は、下記
【化1】
である。この体内吸収の欠如のため、リファキシミンは、胃腸管以外で用いられず、優れた安全性プロファイルを示す。
【0004】
文献データによると、この物質は、ギリシャ文字で同定された異なる結晶形態で同定され得ることが確認され:α、β、およびγ形態が2004年に開示され(Alfa WassermanによるEP1557421)、2006年にεおよびδ形態(Alfa WassermanによるEP1698630)、2009年にζ、η、α乾燥、ι形態(Salix Pharmaceuticals社によるWO2009108730)、2011年にΚおよびθ形態(Salix Pharmaceuticals社によるWO2011153444)が開示されている。さらに、リファキシミンは、アモルファス形態(Cipla LimitedによるWO2008035109)およびアモルファスハロ形態(WO2011080691)で存在しうることが知られている。
【0005】
リファキシミンの多形形態α(Xifaxan(登録商標)の商品名で販売されている結晶形態)は、非吸収性薬物と考えられているが、つい最近の薬理学的試験の結果(例えば、G. C. Viscomi et al. Crystal forms of Rifaximin and their effect on pharmaceutical properties Cryst Eng Comm, 2008. 10. 1074-1081を参照)により、上記に記載の結晶形態のいくつか、例えばγおよびδ形態は著しく吸収されうることが示唆された。
【0006】
さらに、上記で引用される文献データにより、リファキシミンの公知の多形形態は、相対湿度の異なる値に曝されると容易にそれらの多形形態を変化しうることが示され:例えば、無水αおよびδ形態は、一水和物のβ形態を減圧下にて異なる温度(30-65℃)で乾燥させることによって得ることができ、無水α形態は、56%の相対湿度で40時間後に対応する一水和物のβ形態に変換することができる(EP1557421)。
【0007】
本発明者らは、所望されるαまたはα/β混合物を一貫して得るだけではなく、望ましくないγ多形形態または他の多形混合物を得ることから、特に、EP1557421に記載の結晶化および乾燥条件(バイコニカルドライヤーのような従来の静力学的もしくは動力学的ドライヤーを使用)が重要であることが示されていることを見出した。
【0008】
リファキシミン多形形態の得られた固形状態の制御は、従来の示差熱量測定分析(DSC)および赤外分光法(IR)がこれらの多形を判別し、定量化することができないため、通常、DRX分光法によって行われ;また、カールフィッシャーによって決定される水分含量は、吸収された水と格子内の水を区別することができないため、固形状態についての間接的な情報のみを付与しうる。さらに、リファキシミンについての1つ以上の水和物および無水形態が記載される。
【0009】
それゆえ、これらの多形形態の変換は、活性医薬成分(API)および原薬における結晶形態の「一貫性」を保証するために考慮されることが重要であり、必要がある(Guidance for Industry ANDAs: Pharmaceutical Solid Polymorphism Chemistry, Manufacturing, and Controls Information. U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research (CDER) July 2007)。
【0010】
多形形態の「一貫性」、すなわち、再現性は、特に規制上の要件を考慮すると、非常に重要であることが指摘されるべきである。
【0011】
最終的に、原薬の製造のためにも、リファキシミンの多形形態の安定性(例えば、フィルムコーティング錠剤)が不可欠である。本発明者らは、湿式造粒法および錠剤化がこのAPIの最初の固形状態を変更しうる実験証拠を示し:例えば、リファキシミンα形態の湿式造粒法(結合剤として精製水の使用を供する方法)により、このAPIの固形状態において無水(α形態)から水和物(β形態)への変化の結果として相当量のリファキシミンβ形態(<50%)が得られた。
【0012】
これらの知見は、原薬の製造中に固形状態の変化を最少にするのに適した適当な固形状態の一貫した収率のリファキシミンのために適当な製造方法が必要であることを示している。
【発明の概要】
【0013】
驚くべきことに、85/15±3の相対比率のα/β混合物からなる新規なリファキシミン形態は、一貫して製造することでき、上記に記載される先行技術の課題を解決することを見出した。
【0014】
リファキシミンの新規な多形形態の結晶化および乾燥による85/15±3の相対比率の一貫したリファキシミンα/β混合物の製造方法が見出された(以下、湿った精製リファキシミンとも称される)。予想外なことに、このリファキシミン85/15±3のα/β混合物は、乾式造粒および錠剤化について用いられる物理的処理の影響に対して安定である。
【0015】
この一貫した混合物リファキシミンα/βの製造は、窒素下において、新規な多形形態の混合物を大気圧で攪拌しながら40℃で乾燥させることにより得られる。上記に記載の方法により得られた85/15±3の相対比率のリファキシミンα/β混合物は、αおよびβ多形形態間の相対比率を合理的に改変することなく、乾式造粒法および錠剤化方法を用いてフィルムコーティング錠剤を製造するために利用することができる。
【0016】
それゆえ、本発明の目的は、85/15±3の相対比率のα/β形態のリファキシミン多形混合物である。
【0017】
本発明の別の目的は、85/15±3の相対比率のα/β形態の前記リファキシミン多形混合物の製造方法である。
【0018】
本発明の別の目的は、リファキシミンの上記多形混合物を活性成分として含む、医薬組成物、特に、固形製剤である。
【0019】
本発明の目的は、上記リファキシミン多形を含むフィルムコーティング錠剤と前記フィルムコーティング錠剤の製造方法である。
【0020】
本発明の別の目的は、医薬として使用するための、特に、旅行者下痢症および肝性脳症の治療におけるリファキシミンの上記多形混合物である。
【0021】
本発明の別の目的は、85/15±3の相対比率のα/β形態の上記リファキシミン多形混合物の製造方法における中間体として得られた湿った粗リファキシミンの多形形態である。
【0022】
本発明の別の目的は、85/15±3の相対比率のα/β形態の上記リファキシミン多形混合物の製造方法における中間体として得られた湿った精製リファキシミンの多形形態である。
【0023】
本発明の別の目的は、85/15±3の相対比率のα/β形態のリファキシミン多形混合物の製造方法における中間体としての上記湿った粗リファキシミンおよび/または上記湿った精製リファキシミンの使用である。
【0024】
本発明のこれらおよび他の目的は、図面および実施例により下記に詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、アルファおよびベータ形態の標準的な混合物を用いて得られた検量線である。
【
図2】
図2は、結晶化前の湿ったリファキシミンのDRXである。
【
図3】
図3は、乾燥前にフィルタードライヤーで回収した湿ったリファキシミン生成物のDRXである。
【
図4】
図4は、85/15±3の相対比率のリファキシミンα/β多形混合物のDRXである。
【
図5】
図5は、リファキシミンのコーティングされていない錠剤(乾式造粒および圧縮)のDRXである
【
図7】
図7は、ポリビニルアルコールのDRXである。
【
図8】
図8は、FeO(赤色酸化鉄)のDRXである。
【
図9】
図9は、パルミトステアリン酸グリセロールのDRXである。
【
図10】
図10は、デンプングリコール酸ナトリウムのDRXである。
【
図11】
図11は、ポリエチレングリコール6000のDRXである。
【
図15】
図15は、リファキシミンアルファ形態のDRXである。
【
図16】
図16は、リファキシミンベータ形態のDRXである。
【
図17】
図17は、四重水素標識メタノール中のリファキシミン多形混合物の一次元
1H-NMR(500MHz)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の範囲内において、我々は、「多形性」を多形として公知の複数の形態または結晶構造に存在する固形物質の能力を定義する。
【0027】
本発明の範囲内において、用語「一貫」および「一貫した」は、「再現性」および「再現可能な」の同義語として用いられる。これらの用語は、当業者、特に、規制当局の要件も考慮して、APIの製造の当業者によって十分に理解される。
【0028】
本発明によれば、85/15±3の相対比率のリファキシミンα/β多形混合物の製造方法は、下記の工程を特徴とする:
a)1モル当量のリファマイシンOを、20℃~30℃の間の温度にて1:2~1:3の間の体積比の水およびエチルアルコールの溶媒混合液中で2または3当量の2-アミノ-4-メチルピリジンと反応させて反応物を得;
b)20~30℃で前記反応物を、アスコルビン酸、続いて水およびエチルアルコールの溶媒混合液および濃塩酸溶液で処理し、前記反応物のpHを6.0~6.5の最終値に調整して、懸濁液を得;
c)前記懸濁液を濾過し、得られた固形物を水/エチルアルコール溶媒混合液で洗浄して、湿った粗リファキシミンを得;
d)湿った粗リファキシミンを、50℃~60℃の温度でエチルアルコール中に溶解させ、水を加え、次いで前記懸濁液の温度を1~3時間攪拌させた状態で28~33℃に下げることによって湿った精製リファキシミンを沈殿させ、結晶化混合物を1~2時間攪拌させた状態で20~25℃に冷まし、そして最後に前記結晶化混合物の沈殿を得るまでの一定の時間、0~5℃に冷却させることにより沈殿させることによって精製し;
e)前記懸濁液をフィルタードライヤーで濾過し、得られた固形物を水で洗浄し、続いて
f)38~42℃の範囲の温度で常圧にて不活性ガス気流下で6±2%の最終的な含水量に達する一定の時間まで攪拌させながら乾燥させること。
【0029】
本発明の方法で開示される全ての数値および間隔は、絶対的なものとされるべきではないと理解される。いずれの数値または間隔も「約」として当業者によって理解されるべきものである。用語「約」は、本明細書で意図されるように、本明細書で開示される数値がそれ自体正確に示されていなければならないわけではなく、本明細書に開示される技術的効果が達成される限り、この値からの偏差も本発明の範囲内であることを意味する。
【0030】
本発明による方法の好ましい実施態様において、工程a)におけるリファマイシンOの濃度は、0.2~0.4Mに含まれ、水およびエチルアルコール間の相対比率は、1:2.3であり、反応温度は、23℃である。
【0031】
好ましくは、工程b)におけるリファマイシンOの開始量についてのアスコルビン酸のモル当量は、1/8~1/10の範囲に含まれる。水およびエチルアルコールの相対比率は、65/35~60/40の範囲に含まれ、塩酸の最終濃度は、2.5M~3.5Mの範囲に含まれる。
【0032】
好ましくは、工程e)におけるリファマイシンOの開始量およびフィルタードライヤーのフィルター表面の間の相対比率は、1g/0.6cm2~1g/1.57cm2の間に含まれる。
【0033】
好ましくは、工程f)における攪拌速度は、約15rpm/分であり、好ましい温度は、40℃であり、乾燥時間は、典型的に、20~25時間の範囲の時間間隔で保つことができ、より好ましくは、約21時間である。好ましくは、工程f)の不活性ガスは、窒素である。
【0034】
工程f)は、必要に応じて、リファキシミンの得られた多形形態の相対比率に影響を与えることなく不連続的に行うことができる。
【0035】
本発明による工程c)から回収された湿った粗リファキシミンは、(相対強度):4.88(87%)、7.78(74%)、12.76(57%)、14.08(59%)、14.66(46%)、17.80(50%)、18.34(69%)、19.78(80%)、21.22(70%)、21.92(74%)、23.18(80%)、25.30(100%)(
図2)の特徴的な2シータ値のX線スペクトルによって特徴付けられる。
【0036】
本発明による工程e)から回収された湿った精製リファキシミンは、(相対強度):5.78(15%)、7.32(27%)、8.16(40%)、9.20(44%)、10.74(50%)、17.56(42%)、18.04(75%)、18.70(100%)、20.02(54%)、21.24(73%)、22.32(54%)、23.62(46%)、25.66(61%)(
図3)の特徴的な2シータ値のX線スペクトルによって特徴付けられる。
【0037】
本発明による工程f)から回収されたリファキシミンα/β多形混合物85/15±3は、(相対強度):5.32(11%)、5.78(19%)、6.50(27%)、7.24(45%)、7.82(61%)、8.80(100%)、10.50(59%)、11.02(35%)、11.58(32%)、13.08(20%)、14.42(26%)、17.32(48%)、17.68(93%)、18.58(79%)、19.52(61%)、21.04(52%)、21.60(30%)、21.92(46%)(
図4)の特徴的な2シータ値のX線スペクトルによって特徴付けられる。
【0038】
一般に、本発明による方法において、リファマイシンOは、20~30℃で攪拌させながら上記に開示される割合の脱塩水およびエチルアルコールの混合液中に分散され、次いで2-アミノ-4-メチルピリジンを入れた。反応混合液は、反応させるために十分な時間、好ましくは、20~25℃で20~25時間攪拌させながら保った。
【0039】
この間、L-アスコルビン酸を前記反応混合物に加え、pHを、20~30℃で攪拌させながら、水/エタノール溶液(例えば、62/38v/v)中の3M HClを加えることにより6.0~6.5の最終値に調整した。続いて、反応混合液を、大量の沈殿物を得るために十分な時間、通常、2時間攪拌しながら8~12℃に冷まし、前記懸濁液をブフナー(または他の同等物)フィルターで濾過した。前記フィルター上の回収された固形物をエタノール/水混合液、例えば、1/1のv/vで洗浄し、そのまま結晶化の次の工程に利用した。
【0040】
次いで、前の工程で回収した湿った生成物をエタノール中に分散させ、溶液が得られるまで攪拌しながら加熱する。利便的に、加熱は約50~60℃である。続いて、水を加熱温度、利便的に、約50~60℃を保ちながら加える。反応混合液を28~33℃に下げて、沈殿物を得る。得られた懸濁液を2時間攪拌しながら28~33℃で保ち、続いて20~25℃に下げ、この温度で1時間攪拌し、最終的に0~5℃まで冷却し、この温度で大量の沈殿物を得るために必要となる時間、通常、1時間攪拌した。得られた懸濁液を濾過し、回収した固形物を水で洗浄する。
【0041】
フィルター上に回収された湿った精製リファキシミン(特徴的なDRX(粉末)スペクトルによって規定される新規な多形形態;
図3)を、40℃の温度で不活性ガス気流下にて攪拌させながら乾燥させて(例えば、21時間)、6.0±2%の含水量に達した(カールフィッシャー法によって決定する)。85/15±3の相対比率のα/β多形混合物としてのリファキシミンが得られる。
【0042】
本発明による方法は、複数回の反復後に±3%の変動(α/β多形混合物の82/18~88/12)で同一多形混合物を得る有利な一貫性を示す。
【0043】
有利なことに、本発明の方法によって得られたα/β多形混合物は、室温で6ヶ月まで保存した場合に安定である。
【0044】
本発明で開示のリファキシミン混合物は、それを活性成分として含有する医薬組成物の製造に非常に有用である。
【0045】
前記組成物は、従来のベヒクル、賦形剤、製剤化成分のいずれかを含み、当該技術分野で一般的な知識に従って製造することができる。一般的な参考文献は、例えば、Remington "The Science and Practice of Pharmacy, 21st edition Pharmaceutical Press中に見出される。
【0046】
本発明の好ましい実施態様において、上記に開示のリファキシミン混合物は、フィルムコーティング錠剤の製造に有用である。
【0047】
前記組成物は、当該技術分野で一般的な知識に従って製造することができる。一般的な参考文献は、例えば、Pharmaceutical Manufacturing Handbook: Production and Processes, Shayne Cox Gad, John Wiley & Sons, 2008中で見出される。
【0048】
前記組成物には、固体医薬組成物のコーティング技術で用いられる従来のベヒクル、賦形剤、製剤化成分のいずれか、例えば、タルク、微結晶セルロース、パルミトステアリン酸グリセロール、デンプングリコール酸ナトリウム、含水二酸化ケイ素が含まれる。
【0049】
よって、本発明の別の目的は、下記工程を特徴とするフィルムコーティング錠剤の製造方法である:
a’)85/15±3の相対比率のリファキシミンα/β多形混合物を、適当な賦形剤と室温で混合して、均一な混合物を得;
b’)工程a’)からの前記混合物を乾式造粒/圧縮により処理し、これを20メッシュシーブでふるいにかけて、混合物を得;
c’)工程b’)で得られた混合物を圧縮して、1’20’’±15’’の37℃における精製水中での崩壊時間を有する錠剤を得;
d’)工程c’)で得られた錠剤を、適当なコーティング剤、可塑剤、および乳白剤を用いてコーティングすること。
【0050】
工程a’)は、好ましくは、賦形剤、例えば、微結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、パルミトステアリン酸グリセロール、含水二酸化ケイ素およびタルクを用いて、33±3%、4±0.4%、4.9±0.5%、0.5±0.05%、および3.0±0.3%の範囲の相対比率で実施することができる。
【0051】
工程d’)は、好ましくは、コーティング剤、例えば、ポリビニルアルコールまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース、可塑剤、例えば、ポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、クエン酸エステル、トリアセチン、ならびに乳白剤、例えば、二酸化チタンおよびアルミニウムラッカー、より好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールおよび二酸化チタンを用いて実施することができる。
【0052】
本発明による工程c’)から回収したコーティングされていない錠剤は、(相対強度):5.28(15%)、5.78(23%)、6.52(46%)、7.26(47%)、7.88(75%)、8.82(42%)、10.52(46%)、11.02(45%)、11.58(40%)、13.12(37%)、14.48(42%)、17.38(56%)、17.72(62%)、18.62(93%)、19.54(72%)、21.10(87%)、21.64(82%)、22.00(100%)における特徴的な2シータ値のX線スペクトルによって特徴付けられる。用いられる賦形剤の下記の診断用ピークはまた、DRXスペクトルで検出可能である(2シータ値、括弧内は回折ピークの相対強度):タルクについて19.10(50%)および28.72(40%);微結晶セルロースについて22.36(99%);パルミトステアリン酸グリセロールについて21.10(87%);デンプングリコール酸ナトリウムについて45.74(36%);含水二酸化ケイ素は、アモルファスであり、回折ピークが存在しない(
図5)。
【0053】
本発明の例示的な実施態様において、上記リファキシミンα/β多形混合物を含むフィルムコーティング錠剤は、錠剤化混合物を開始物質として調製する。前記リファキシミンα/β多形混合物は、フィルムコーティング錠剤の技術分野で公知の通常の賦形剤、例えば、微結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、パルミトステアリン酸グリセロールおよびタルクと混合する。他の賦形剤は、当該技術分野における一般的な知識に従って用いることができる。構成成分は、適する混合装置において均一な混合物を得るために十分な時間混合する。典型的には、数分で充分である。次いで、得られた混合物は、従来のコンパクター(例えば、WP50 N/75コンパクター)を用いることにより圧縮/造粒する。得られた造粒物は、適する大きさ、例えば、約20メッシュなどのシーブで仕上げる。滑沢剤、例えば、1つまたはそれ以上のパルミトステアリン酸グリセロール、タルク、含水二酸化ケイ素を加える。利便的に、賦形剤もまた、造粒物と同一サイズのシーブに前もって通す。混合は、適する混合機において、適する時間、典型的に、数分間行われる。前記混合物は、ロータリー打錠機または他の従来の装置のいずれかによって圧縮される。
【0054】
好ましい実施態様において、本発明による錠剤は、下記の技術的特徴を有する:硬度-18.49±1.30Kp;厚さ-5.48±0.06mm;摩損度-0.058%;37℃における精製水中での崩壊時間-1’20’’。
【0055】
フィルムコーティングは、適する公知技術のいずれか、例えば、フィルムコーティング剤(例えば、ポリビニルアルコールまたは他の同等物)および可塑剤(例えば、ポリエチレングリコールまたは他の同等物)を含有し、必要であれば、乳白剤(例えば、二酸化チタン)および/または着色剤(例えば、赤色酸化鉄)を含有していてもよい水懸濁液をスプレーすることによるコーティングパンによって施される。好ましくは、コーティングされた錠剤は、全コーティング工程を通して、40℃以下の温度で錠剤ベッドを保ちながら製造する。
【0056】
包装は、従来の製造工程に従って行われ、例えば、アルミニウム/プラスティックブリスターである。
【0057】
本発明の別の目的によれば、本明細書に開示のリファキシミン多形混合物は、医薬として使用するため、特に、旅行者下痢症および肝性脳症の治療のためのものである。
【0058】
投与用量、方法、および臨床的適応は、例えば、コーティング錠剤またはコーティングされていない錠剤、硬および軟ゼラチンカプセル剤、ならびに密封された袋中の散剤についてUS7902206、US7906542、US8158644およびUS7928115に示されるように、一般的知識に基づいて、当業者によって決定することができる。
【実施例0059】
下記の実施例は、本発明をさらに示す。
【0060】
材料および方法
X線回折スペクトルは、5.000~60.000の開始角度[1/2 2-シータ]から回折計(Rigaku-D-Max)によって記録した。回折図はCu陽極を用いて得た(Kα=1.54060ÅおよびKα=1.54439Å)。アルファおよびベータ多形形態間の相対比率は、80/20および90/10の相対比率の純粋なアルファ(DRX:
図15)および純粋なベータ(DRX:
図16)形態を混合することによって調製したリファキシミンの2つの試料(これらの試料は、EP1557421に従って調製した)を用いて得られた較正曲線を使用してDRX(粉末)によって決定した。アルファおよびベータ形態間の相対比率を定量化するために考慮される診断用回折ピークは下記である:
・アルファ形態:約5.9 2シータで回折ピーク
・ベータ形態:約5.3 2シータで回折ピーク
【0061】
前記較正曲線は、5.2 2シータ(ベータ形態)での回折ピークの強度を5.9 2シータ(アルファ形態)での回折ピークの強度で割ったものを考慮して作成した(
図1を参照)。
【0062】
実施例1
湿った粗リファキシミンの製造
リファマイシンO(50g)は、室温で攪拌させながら脱塩水(60ml)およびエチルアルコール(140ml)の混合液中に分散し、続いて2-アミノ-4-メチルピリジン(20.8g)を入れた。反応混合液を20~30℃で20~23時間攪拌させながら維持する。
【0063】
この後、L-アスコルビン酸(1.4g)を該反応混合液に加え、pHを室温で攪拌させながら3M HClの水/エタノール 62/38 v/v溶液を加えることにより、6.0~6.5の最終値に調整した。次いで、反応混合液を2時間攪拌しながら維持して8~12℃に冷まし、ブフナーフィルターで濾過した。該フィルター上で回収した固形物(約90.2gの湿った生成物(乾燥時に54%の喪失);30%の含水量)を1/1のエタノール/水混合液(242ml)で洗浄し、結晶化の次の工程にそのまま使用した。この新規の多形形態は、
図2に記載のDRXによって定義される。この多形形態の特徴的な2シータ値(相対強度)は:4.88(87%)、7.78(74%)、12.76(57%)、14.08(59%)、14.66(46%)、17.80(50%)、18.34(69%)、19.78(80%)、21.22(70%)、21.92(74%)、23.18(80%)、25.30(100%)である。
【0064】
実施例2
湿った粗リファキシミンからの83/17の相対比率のリファキシミンα/β多形混合物の製造
前の工程で回収された湿った粗リファキシミンを、エタノール(80.5ml)中に分散させ、50~60℃で攪拌させながら加熱し(溶液を得た)、続いて50~60℃の温度を維持しながら水(16.5ml)を加えた。反応混合液を28~33℃に冷まして、沈殿物を得た。得られた懸濁液を2時間攪拌しながら28~33℃で維持し、続いて20~25℃に冷まし、この温度で1時間攪拌し、最終的に0~5℃にし、この温度で1時間攪拌した。得られた懸濁液を研究室用フィルタードライヤー(GFD(登録商標)Mod.PF00002ATEX)で濾過し、回収した該固形物を、フィルター上で水(62.2ml)にて洗浄した。
【0065】
フィルター上で回収された湿った生成物(DRX粉末で定義され、湿った精製リファキシミンとして同定された;
図3)を、40℃の温度で攪拌させ(15rpm/m)、21時間窒素気流下で乾燥させて、6.0%の含水量に達した(Karl Fisherによって決定)。87/13の相対比率のα/β多形混合物としてのリファキシミンの32gを得た(
図4に記載されるようにDRX粉末によって決定した)。得られた試料の物理化学的データは、提唱される構造および公表された文献データと一致する(R. Stradi et al. Journal Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 51 (2010), 858-865);四重水素標識メタノール中の得られた試料の一次元
1H-NMR(500MHz)スペクトルを記載した(
図17)。
【0066】
フィルター上で回収された湿った精製リファキシミンのDRXスペクトルの関連ピークは、下記の2シータ値(相対強度)で検出される:5.78(15%)、7.32(27%)、8.16(40%)、9.20(44%)、10.74(50%)、17.56(42%)、18.04(75%)、18.70(100%)、20.02(54%)、21.24(73%)、22.32(54%)、23.62(46%)、25.66(61%)(
図3)。
【0067】
87/13の相対比率のリファキシミンα/β多形混合物のDRXスペクトルの関連ピークは、下記の2シータ値(相対強度)で検出される:5.32(11%)、5.78(19%)、6.50(27%)、7.24(45%)、7.82(61%)、8.80(100%)、10.50(59%)、11.02(35%)、11.58(32%)、13.08(20%)、14.42(26%)、17.32(48%)、17.68(93%)、18.58(79%)、19.52(61%)、21.04(52%)、21.60(30%)、21.92(46%)(
図4)。
【0068】
実施例3
多形混合物の一貫性
この方法の一貫性は、この方法を3回繰り返して調べ、±3%の変動性で同一の多形混合物を得た(82/18~88/12のα/β多形混合物)。
【0069】
実施例4
多形混合物の安定性
室温で二重ポリエチレン袋を一時包装として使用したリファキシミンα/β多形混合物88/12の試料の安定性を、時間=0、3ヶ月後および6ヶ月後に同一バッチのDRX(粉末)解析を繰り返すことによって確認した。
【0070】
実施例5
85/15±3の相対比率のリファキシミンα/β多形混合物の乾式造粒および打錠
打錠混合物の製造
85/15±3の相対比率のリファキシミンα/β多形混合物(452.86g)、微結晶セルロース(259.90g/Vivapur PH102)、デンプングリコール酸ナトリウム(16.824g)、パルミトステアリン酸グリセロール(20.040g/Precirol ATO5)およびタルク(1.203g)を、適する混合装置中で5分間混合する。次いで、混合物をコンパクターWP50 N/75を用いて圧縮/造粒した。
【0071】
これらの造粒物の部分量のみを次の工程に使用した。得られた造粒物(556.76g)を20メッシュシーブを用いて仕上げ、パルミトステアリン酸グリセロール(14.87g/Precirol ATO5)、タルク(4.68g)、含水二酸化ケイ素(2.97g/Syloid 244)(全ての賦形剤は前もって20メッシュシーブスに通してふるいにかけた)を一緒に加え、適する混合機中で5分間混合した。打錠混合物の該組成物は下記のとおりである:
【0072】
【0073】
打錠結果
混合物は、22x10mmのオーバルパンチを備えたロータリー打錠機Ronchi EA8によって圧縮する。下記の技術的特徴を有する錠剤を得た:硬度-18.49±1.30Kp;厚さ-5.48±0.06mm;摩損度-0.058%;37℃で精製水中の崩壊時間-1’20’’。
【0074】
コーティング錠剤のための製剤を下記に記載する:前記フィルムコーティングを、フィルムコーティング剤(ポリビニルアルコール)および可塑剤(ポリエチレングリコール)および乳白剤(二酸化チタン)および着色剤(赤色酸化鉄)を含有する懸濁水溶液をスプレーすることにより適するコーティングパン中で施した。コーティング錠剤は、全コーティング工程を通して、錠剤ベッドを40℃以下の温度を保ちながら調製した。
【0075】
コーティング処理後のリファキシミン錠剤組成物を下記に記載する。
【表2】
【0076】
コーティング前に得られた錠剤を、乳鉢で軽く粉々にし、DRX(粉末)により試験した:これらの解析により、リファキシミンは、85/15±3のα/β多形形態間の相対比率に変化がなく存在することが確認される(
図5);このDRXスペクトルでは、用いられた賦形剤の下記の診断用ピークで検出される:タルクについて19.10(50%)および28.72(40%);微結晶セルロースについて22.36(99%);パルミトステアリン酸グリセロールについて21.10(87%);デンプングリコール酸ナトリウムについて45.74(36%);含水二酸化ケイ素はアモルファスであり、回折ピークが存在しない。
【0077】
図6~14では、用いられた賦形剤のDRXスペクトルを収集した;賦形剤の回折ピークは、リファキシミンαおよびβ形態の相対定量について用いられる診断用ピークを妨げない(材料および方法を参照)。
請求項2に記載の方法の工程a)~c)によって得られた湿った粗リファキシミンの多形体であって、4.88(87%)、7.78(74%)、12.76(57%)、14.08(59%)、14.66(46%)、17.80(50%)、18.34(69%)、19.78(80%)、21.22(70%)、21.92(74%)、23.18(80%)、25.30(100%)の特徴的な2シータ値(相対強度)のX線スペクトルによって特徴付けられる、多形体。
請求項2に記載の方法の工程d)~e)によって得られた湿った精製リファキシミンの多形体であって、5.78(15%)、7.32(27%)、8.16(40%)、9.20(44%)、10.74(50%)、17.56(42%)、18.04(75%)、18.70(100%)、20.02(54%)、21.24(73%)、22.32(54%)、23.62(46%)、25.66(61%)の特徴的な2シータ値(相対強度)のX線スペクトルによって特徴付けられる、多形体。