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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070958
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】CD30+癌の検出と治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/07 20060101AFI20220506BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220506BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220506BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220506BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220506BHJP
【FI】
A61K38/07
G01N33/574 A
C07K16/28
A61P35/00
A61P11/00
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K47/68
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020085
(22)【出願日】2022-02-14
(62)【分割の表示】P 2020059264の分割
【原出願日】2013-02-08
(31)【優先権主張番号】61/597,547
(32)【優先日】2012-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503188759
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】アルバートソン,ティナ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,マリア,エル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CD30+癌を診断、予後判定、予防および治療する方法を提供する。
【解決手段】CD30の発現に基づいてCD30を指向する療法に適格であると同定された患者の肺癌を治療するための医薬の製造における、CD30に対する抗体薬物複合体の使用であって、該CD30を指向する療法が抗CD30抗体薬物複合体である、使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD30の発現に基づいてCD30を指向する療法に適格であると同定された患者の肺癌を治療するための医薬の製造における、CD30に対する抗体薬物複合体の使用であって、該CD30を指向する療法が抗CD30抗体薬物複合体である、使用。
【請求項2】
前記CD30の発現を、検出可能なCD30を発現するサンプル中の悪性または非定形的細胞のパーセントとして決定する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
BerH2抗体を検出抗体として用いるとサンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも10%がCD30を発現する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記抗体薬物複合体がブレンツキシマブベドチンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記肺癌が小細胞肺癌である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記肺癌が肺の扁平上皮細胞癌腫である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はCD30+癌を診断、予後判定、予防および治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
CD30は120キロダルトンの膜糖タンパク質であり(Froese et al., 1987, J. Immunol. 139: 2081-87)かつTNF-受容体スーパーファミリーのメンバーである。CD30はホジキンリンパ腫および未分化大細胞リンパ腫(ALCL)中の悪性細胞のマーカーであることが立証されている。CD30は元来、培養Hodgkin's-Reed Steinberg(H-RS)細胞上で、モノクローナル抗体Ki-1を用いて同定されたものである(Schwab et al., 1982, Nature 299:65-67)。
【0003】
CD30はヒトの正常組織上では発現が限られている。その故に、CD30は癌療法の標的として魅力がある。しかしながら、CD30発現は少数の癌においてでしか同定されていない。さらに、いくつかの癌におけるCD30発現の報告は、CD30に無関係な交差反応性を有する抗体、例えば、NovocastraのNCL-L-CD30抗体などによるものであって信頼性がない。CD30を発現しかつCD30を指向する療法を用いて治療し得る癌を同定することは有益なことであろう。本発明はこのおよびその他の必要性に対処するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Froese et al., 1987, J. Immunol. 139: 2081-87
【非特許文献2】Schwab et al., 1982, Nature 299:65-67
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、とりわけ、卵巣癌(例えば、卵巣漿液性癌腫)、皮膚癌(例えば、黒色腫、および皮膚扁平上皮細胞癌腫)、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、甲状腺癌腫(例えば、未分化甲状腺癌腫)、膵臓癌腫(例えば、未分化膵臓癌腫)、肺癌(例えば、小細胞および扁平上皮細胞癌腫)、肛門癌(例えば、肛門扁平上皮細胞癌腫)、胸腺癌腫、子宮内膜癌腫、および未知の原発性癌腫を診断、予後判定、予防および治療ならびに治療モニタリングする方法を提供する。また、泌尿生殖器扁平上皮細胞癌腫、婦人科癌肉腫、尿道扁平上皮細胞癌腫、子宮癌肉腫、セルトリ細胞腫瘍、ライディッヒ細胞腫瘍、および膵臓腺癌を診断、予後判定、予防および治療ならびに治療モニタリングする方法も提供する。
【0006】
一態様においては、患者のサンプルにおけるCD30の発現を検出する方法を提供する。サンプルは、例えば、卵巣、皮膚、子宮内膜、肺、乳房、甲状腺、膵臓、肛門、胸腺、または他の腫瘍部位(例えば、患者の婦人科癌腫瘍部位または泌尿生殖器癌腫瘍部位)から得ることができる。いくつかの実施形態において、サンプルは組織サンプルである。一態様においては、その組織を固定する。一態様においては、固定した組織サンプルを特異的にCD30と結合する抗体と接触させ、抗体の固定した組織サンプルとの結合を検出してCD30がサンプルにおいて発現するかどうかを決定する。固定したサンプル上のCD30の発現は患者がCD30を発現する癌を有することを示す。いくつかの実施形態においては、サンプルをホルマリンで固定しかつパラフィンに包埋する。
【0007】
他の態様においては、癌を有する患者を診断する、予後判定する、治療プロトコルを決定する、または治療モニタリングする方法を提供する。一態様において、患者は原発性または転移性卵巣癌(例えば、原発性または転移性卵巣漿液性癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性皮膚癌(例えば、原発性または転移性黒色腫および/または皮膚扁平上皮細胞癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性乳癌(例えば、原発性または転移性トリプルネガティブ乳癌)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性甲状腺癌(例えば、原発性または転移性未分化の甲状腺癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性膵臓癌(例えば、原発性または転移性未分化の膵臓癌腫または腺癌)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性肺癌(例えば、原発性または転移性小細胞または扁平上皮細胞肺癌)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性肛門癌(例えば、原発性または転移性肛門扁平上皮細胞癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性胸腺癌(例えば、原発性または転移性胸腺癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性子宮内膜癌腫を有する。他の態様において、患者は未知の原発性癌腫を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性尿道癌(例えば、尿道扁平上皮細胞癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性子宮癌肉腫を有する。本方法は、患者から採取した腫瘍サンプル中の細胞におけるCD30発現を決定するステップを含み、ここで、検出可能なCD30発現の存在を、患者の診断、予後判定、プロトコルの決定または治療モニタリングに用いる。サンプルはホルマリン固定してパラフィンに包埋したサンプルであってもよい。本方法は、さらに、もし決定ステップがCD30の検出可能なレベルを示せば、患者にCD30を指向する療法(例えば、抗CD30抗体または抗CD30抗体薬物複合体)の有効レジメンを投与するステップを含みうる。いくつかの態様においては、患者がCD30を指向する療法による治療から利益を得るかどうかを決定するカットオフレベルとして、ある特定レベルのCD30発現の存在を利用しうる。例えば、一態様においては、10%のカットオフを用いて、患者がCD30を指向する療法から利益を得る可能性があるとして分類する。従って、かかる実施形態においては、もし患者から採取した腫瘍サンプルが少なくとも10%のCD30ポジティブ腫瘍細胞(すなわち、サンプル中の悪性および/または非定形細胞の少なくとも10%がCD30ポジティブである)を有すれば、患者はCD30を指向する療法による治療から利益を得る可能性があるとして分類される。いくつかの実施形態において、患者から採取した腫瘍サンプルは、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、または85%のCD30ポジティブ腫瘍細胞を有しうる(すなわち、サンプル中の悪性および/または非定形細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、または85%はCD30ポジティブである)。好ましい実施形態においては、CD30の細胞外ドメインと特異的に結合する抗体(例えば、BerH2抗体)を検出抗体として用いると、サンプル中の腫瘍細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、または85%がCD30を発現する。
【0008】
他の態様においては、CD30を指向する療法による治療に応答しうる患者を同定する方法を提供し;CD30を指向する療法による治療から利益を得ることができる患者を同定する方法を提供し;および/または卵巣、皮膚、乳房、甲状腺、膵臓、肺、肛門、胸腺、子宮内膜癌または未知の原発性癌を有する患者のCD30を指向する療法に対する応答性を予測する方法を提供する。癌は原発性癌または転移性癌であってもよい。これらの方法は全て、患者から得た腫瘍サンプル中の細胞中のCD30発現を決定し、検出可能なCD30発現の存在を用いてCD30を指向する療法に応答しうる患者を同定するステップを含む。いくつかの態様においては、より高いレベルのCD30発現を有する患者を、CD30を指向する療法に応答する可能性が高い患者として同定する。例えば、もし患者より採取した腫瘍サンプルが少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、または85%CD30+ポジティブ腫瘍細胞を有すれば(すなわち、サンプル中の悪性および/または非定形的細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、または85%がCD30ポジティブであれば)、その患者はCD30を指向する療法に応答する高い可能性を有すると示される。好ましい実施形態においては、BerH2抗体またはCD30の細胞外ドメインと特異的に結合する他の抗体を検出抗体として用いると、サンプル中の腫瘍細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、または85%がCD30を発現する。一態様においては、患者の組織サンプルにおけるCD30の発現を検出する方法を提供する。癌の型に応じて、組織サンプルは、例えば、患者の卵巣、皮膚、肺、乳房、甲状腺、膵臓、子宮内膜、肛門、胸腺、または他の腫瘍部位から得ることができる。いくつかの実施形態においては、組織を固定する。固定した組織をCD30と特異的に結合する抗体と接触させ、抗体の組織サンプルとの結合を検出してCD30が前記サンプルにおいて発現されるかどうかを決定する。固定した組織サンプル上のCD30の発現は、その患者がCD30を発現する癌を有することを示す。いくつかの実施形態においては、サンプルをホルマリンで固定してパラフィンで包埋する。
【0009】
他の態様においては、CD30を指向する療法に適格である患者を同定する方法を提供する。その方法は患者から採取した腫瘍サンプルにおけるCD30発現のレベルを決定するステップを含む。一態様においては、腫瘍サンプル中のCD30の存在がその患者はCD30を指向する療法に適格であることを示すのに十分である。一態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも10%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。一態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも15%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも20%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも25%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも30%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも35%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも45%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも40%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも50%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも60%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも70%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも75%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも80%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。他の態様においては、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも85%がCD30を発現すると、その患者はCD30を指向する療法に適格であることを示す。患者は原発性または転移性卵巣癌、皮膚癌、乳癌、甲状腺癌、膵臓癌、肺癌、肛門癌、胸腺癌、子宮内膜癌、および未知の原発性癌腫のいずれか1つを有しうる。いくつかの態様において、患者は原発性または転移性泌尿生殖器扁平上皮細胞癌腫または婦人科癌肉腫のいずれか1つを有しうる。一態様において、患者は尿道扁平上皮細胞癌腫、子宮癌肉腫、セルトリ細胞腫瘍、ライディッヒ細胞腫瘍、または膵臓腺癌を有しうる。例えば、一態様において、患者は卵巣の原発性または転移性卵巣癌(例えば、原発性または転移性の卵巣漿液性癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性皮膚癌(例えば、原発性または転移性の黒色腫、および皮膚扁平上皮細胞癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性乳癌(例えば、原発性または転移性トリプルネガティブ乳癌)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性の甲状腺癌(例えば、原発性または転移性の未分化甲状腺癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性の膵臓癌(例えば、原発性または転移性の未分化膵臓癌腫または腺癌)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性の肺癌(例えば、原発性または転移性の小細胞肺癌または原発性または転移性の扁平上皮細胞癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性の肛門癌(例えば、原発性または転移性の肛門扁平上皮細胞癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性の胸腺癌(例えば、原発性または転移性胸腺癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性の子宮内膜癌を有する。他の態様において、患者は未知の原発性癌腫を有する。本方法はさらに、CD30を指向する療法により患者を治療するステップを含む。
【0010】
他の態様においては、CD30ポジティブ癌を治療する方法を提供する。本方法はCD30を指向する療法の有効レジメンを、癌を有しかつCD30の検出可能な発現を有する患者に投与するステップを含む。いくつかの実施形態において、CD30を指向する療法は抗体または抗体薬物複合体である。抗体はエフェクター機能を有してもよい。患者は先に、外科、照射および/またはCD30を指向しない薬剤による化学療法を受けて、癌が緩解しないものであってもよい。患者は先に、外科、照射および/または化学療法による治療を受けたが、その後、再発したものであってもよい。患者は新しく癌と診断されたものであってもよい。いくつかの実施形態において、抗体はキメラ、ヒト化、またはヒト抗体である。一態様において、患者は卵巣の原発性または転移性卵巣癌(例えば、原発性または転移性卵巣漿液性癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性の皮膚癌(例えば、原発性または転移性黒色腫、または皮膚扁平上皮細胞癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性の乳癌(例えば、原発性または転移性トリプルネガティブ乳癌)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性甲状腺癌(例えば、原発性または転移性未分化甲状腺癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性膵臓癌(例えば、原発性または転移性の未分化の膵臓癌腫または腺癌)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性肺癌(例えば、原発性または転移性の小細胞または扁平上皮細胞肺癌)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性肛門癌(例えば、原発性または転移性肛門扁平上皮細胞癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性胸腺癌(例えば、原発性または転移性の胸腺癌腫)を有する。他の態様において、患者は原発性または転移性子宮内膜癌を有する。他の態様において、患者は未知の原発性癌腫を有する。
【0011】
いくつかの好ましい実施形態においては、組織サンプル上の発現のレベルを決定するアッセイを行い、ここで前記発現のレベルはCD30ポジティブである組織サンプルにおける悪性および/または非定形的細胞のパーセントである。
【0012】
本発明の態様は、以下の例示の実施形態の詳しい説明を添付した図面、図および表と共に参照することによって良く理解されるであろう。
【0013】
定義
特に断らない限り、本明細書で用いる以下の用語および表現は以下の意味を持つと意図している。
【0014】
用語「抗体」は、(a)免疫グロブリンポリペプチドおよび免疫グロブリンポリペプチドの免疫学的活性部分、すなわち、特異的抗原(例えば、CD30)と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する免疫グロブリンファミリーのポリペプチドもしくはそのフラグメント、または(b)抗原(例えば、CD30)と免疫特異的に結合する免疫グロブリンポリペプチドもしくはフラグメントの保存的に置換された誘導体を意味する。抗体の概論は、例えば、Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)に記載されている。文脈から特に明記されない限り、抗体への参照はまた、以下にさらに詳しく記載した抗体誘導体または抗体薬物複合体を含むものである。
【0015】
「抗体誘導体」は、異種分子の共有結合により、例えば、異種ポリペプチドの結合により、または、通常、抗体と結合していないグリコシル化、脱グリコシル化、アセチル化またはリン酸化などにより改変された、先に定義した抗体を意味する。
【0016】
用語「モノクローナル抗体」は単一細胞クローン由来の抗体を意味し、任意の真核生物または原核生物の細胞クローン、またはファージクローンを含むものであって、作製された方法によらない。従って、用語「モノクローナル抗体」はハイブリドーマ技法を介して作製された抗体に限定されない。
【0017】
「抗原」は抗体が特異的に結合する実体である。
【0018】
用語「阻害する」または「の阻害」は、測定可能な量だけ低減するまたは全く阻止することを意味する。
【0019】
用語「薬剤」は元素、化合物、または分子状実体を意味し、例えば、医薬、治療、または 薬理学的化合物を含む。薬剤は天然物または合成物またはそれらの組み合わせであってもよい。「治療薬」は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて癌細胞に対して治療(例えば、有益な)効果を与える薬剤(例えば、プロドラッグ転化酵素と組み合わせたプロドラッグ)である。典型的には、本明細書に記載の方法および組成物に従って有用な治療薬は細胞傷害効果を与えるものである。
【0020】
「細胞傷害剤」は、細胞集団内の細胞の増殖をそれぞれ枯渇させるまたは阻害する細胞傷害効果を有する薬剤を意味する。
【0021】
用語「枯渇させる」は、CD30を発現する細胞に対するCD30抗体の効果の文脈において、CD30を発現する細胞の数の低減、または除去を意味する。
【0022】
用語「治療」または「治療する」は患者におけるCD30を発現する癌の減速、停止、または治癒を意味し、これは、臨床段階におけるCD30を発現する癌の臨床または診断症候の発症後に、被験者へのCD30標的化療法(例えば、抗CD30抗体または抗体薬物複合体)の投与による疾患の臨床または診断症候の低減または消滅により実証される。治療は、例えば、症候の重篤度、症候群の数、または再発頻度の低減を含みうる。
【0023】
用語「トリプルネガティブ乳癌」は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体およびHER2/neuタンパク質に対する臨床試験がネガティブである乳癌を意味する。
【0024】
用語「製薬上許容される」は、動物およびさらに特にヒトにおける使用について連邦または州政府の規制当局により認可されているまたは米国薬局方もしくは一般に容認された薬局方に掲載されていることを意味する。用語「製薬上許容される共存しうる成分」は、CD30抗体を一緒に投与することが製薬上許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを意味する。
【0025】
医薬の投与の文脈における用語「有効量」は、患者におけるCD30を発現する癌の1以上の臨床もしくは診断症候群の発生を抑制もしくは改善するのに十分な薬剤の量を意味する。薬剤の有効量を本明細書の有効レジメンに記載の方法に従って投与する。用語「有効レジメン」は、CD30を発現する癌の治療を達成するために十分な薬剤の量と投与頻度の組み合わせを意味する。
【0026】
用語「患者」は、診断、予防または治療処置を受けるヒトおよび他の哺乳動物被験体を含む。
【0027】
治療薬は、典型的には、望ましくない夾雑物を実質的に含まず、純粋である。これは、薬剤が、典型的には、少なくとも約50%w/w(重量/重量)純度であること、ならびに、妨害タンパク質および夾雑物を実質的に含まないことを意味する。場合によっては、薬剤は少なくとも約80%w/w、より好ましくは、少なくとも約90%w/wもしくは約95%w/w純度である。しかし、通常のタンパク質精製技法を用いると、少なくとも99%純度w/wの均質なペプチドを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
I. 概論
本発明は、とりわけ、卵巣癌(例えば、卵巣漿液性癌腫)、皮膚癌(例えば、黒色腫または皮膚扁平上皮細胞癌腫)、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、甲状腺癌腫(例えば、未分化の甲状腺癌腫)、膵臓癌腫(例えば、腺癌または未分化の膵臓癌腫)、肺癌(例えば、小細胞または扁平上皮細胞癌)、肛門癌(例えば、肛門扁平上皮細胞癌腫)、胸腺癌腫、子宮内膜癌腫、および未知の原発性癌腫を診断、予後判定、予防および治療ならびに治療モニタリングする方法を提供する。本発明は、とりわけ、泌尿生殖器扁平上皮細胞癌、婦人科癌肉腫、尿道扁平上皮細胞癌腫、子宮癌腫、セルトリ細胞腫瘍、ライディッヒ細胞腫瘍、および膵臓腺癌を診断、予後判定、予防および治療ならびに治療モニタリングする方法を提供する。いくつかの態様においては、CD30に対する抗体を診断、予後判定、予防および治療ならびに治療モニタリングする方法に用いる。本方法は、部分的に、CD30がある特定の癌に発現されることを示す実施例に提示された結果を前提とする。前記発現は、ホルマリン固定してパラフィン包埋した(FFPE)癌組織から得たサンプルにおいて、CD30と結合する抗体を用いて検出した。
【0029】
II. CD30に対する抗体
CD30に対する抗体は、癌(例えば、卵巣癌、皮膚癌、乳癌、甲状腺癌腫、膵臓癌腫、肺癌、肛門癌、胸腺癌腫、子宮内膜癌腫、および未知の原発性癌腫)におけるCD30の検出ならびにそれらの治療に用いることができる。抗体の特性に応じて、ある特定の抗体は検出用に好ましい一方、他の抗体は治療用に好ましい。
【0030】
A. CD30に対する抗体の概論
抗CD30抗体には、モノクローナル、キメラ(例えば、ヒト定常域およびマウス可変域を有するもの)、ヒト化、ベニヤ化(veneered)、またはヒト抗体;1本鎖抗体などが含まれる。免疫グロブリン分子は、いずれのタイプもしくはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)であってもよい。
【0031】
抗CD30抗体は抗原と結合する抗体フラグメント、例えば、Fab、F(ab')、F(ab')2、Fd鎖、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖鎖抗体、ジスルフィド結合したFv(sdFv)、VLまたはVHドメインを含むフラグメントであってもよく、ラクダ、ラマなどから得たナノ抗体、またはFab発現ライブラリーにより作製したフラグメント、または前掲の上記抗体のいずれかのCD30結合フラグメントが含まれる。一本鎖抗体を含む、抗原と結合する抗体フラグメントは可変域を単独で、またはさらなる部分(ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3およびCLドメイン)の全部もしくは一部分と組み合わせて含んでもよい。また、抗原と結合するフラグメントは、可変域のヒンジ域、CH1、CH2、CH3およびCLドメインとのいずれの組み合わせを含んでもよい。
【0032】
抗体は単特異的、二特異的、三特異的またはさらに多特異的であってもよい。多特異的抗体はCD30の色々なエピトープに対して特異的であってもよくまたはCD30ならびに異種タンパク質の両方に対して特異的であってもよい(例えば、WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tutt et al.、1991、J. Immunol. 147:60-69;米国特許4,474,893;4,714,681;4,925,648;5,573,920;および5,601,819;Kostelny et al.、1992、J. Immunol. 148:1547-1553.を参照)。本明細書に記載の方法を実施するのに有用な二特異的および三特異的抗体を含む多特異的抗体は、CD30と第二の細胞表面受容体または受容体複合体[例えば、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーメンバー、TNF受容体スーパーファミリーメンバー、インテグリン、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、可溶性タンパク質、主要組織適合性タンパク質、レクチン(C-型、S-型、またはI-型)、または補体調節タンパク質]の両方と免疫特異的に結合する抗体である。
【0033】
抗CD30抗体はまた、そのCD30に対する結合アフィニティ、10-7M、5x10-8M、10-8M、5x10-9M、10-9M、5x10-10M、10-10M、5x10-11M、10-11M、5x10-12M、10-12M、5x10-13M、10-13M、5x10-14M、10-14M、5x10-15M、または10-15Mを用いて記載することもできる。
【0034】
抗CD30抗体はキメラ抗体であってもよい。キメラ抗体は、抗体の色々な部分が色々な動物種に由来する分子であり、例えば、マウスモノクローナル抗体に由来する可変域とヒト免疫グロブリン定常域を有する抗体が挙げられる。キメラ抗体を作製する方法は当技術分野で公知である(例えば、Morrison, Science, 1985, 229:1202;Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214;Gillies et al., 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;米国特許5,807,715;4,816,567;および4,816,397を参照)。
【0035】
抗CD30抗体はまた、ベニヤ化抗体を含むヒト化抗体であってもよい。ヒト化抗体は所望の抗原と結合しかつ1以上の非ヒト種由来の相補性決定領域(CDR)ならびにヒト免疫グロブリン由来のフレームワークおよび定常域を有する抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域のフレームワーク残基をCDRドナー抗体からの対応する残基で置換し、抗原結合を改変するか、または好ましくは改善しうる。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRとフレームワーク残基の相互作用のモデル化、ならびに、特定位置における異常なフレームワーク残基を同定する配列比較によって同定される(例えば、Queen et al., 米国特許5,585,089;Riecbmann et al., 1988, Nature 332:323を参照)。抗体は当技術分野で公知の様々な技法、例えば、CDRグラフト化(EP 0 239 400;WO 91/09967;米国特許5,225,539;5,530,101;および5,585,089)、ベニヤ化または再表面処理(EP 0 592 106;EP 0 519 596;Padlan, Molecular Immunology, 1991, 28(4/5):489-498;Studnicka et al., 1994, Protein Engineering 7(6):805-814;Roguska et al., 1994, PNAS 91:969-973)、および鎖シャッフリング(chain shuffling)(米国特許5,565,332)を用いてヒト化することができる(これらの引用は全て参照により本明細書に組み込まれる)。
【0036】
抗CD30抗体はヒト抗体であってもよい。ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な方法、例えば、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法(前掲を参照)により作ることができる。また、例えば、米国特許4,444,887および4,716,111;WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741を参照されたい。さらに、選択したエピトープを認識するヒト抗体は、「案内選択(guided selection)」とよぶ技法を用いて作製することができ、この方法では、選択した非ヒトモノクローナル、例えば、マウス抗体を用いて同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を案内する(例えば、Jespers et al., 1994, Biotechnology 12:899-903を参照)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを用いて作製することができる。抗原を指向するモノクローナル抗体は免疫化したトランスジェニックマウスからハイブリドーマ技法を用いて得ることができる。ヒト抗体を作製する技法の総括については、Lonberg and Huszar, 1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作製する技法ならびにかかる抗体を作製するプロトコルの詳細な考察については、例えば、国際公開WO 98/24893;WO 92/01047;WO 96/34096;WO 96/33735;欧州特許0 598, 877;および米国特許5,413,923;5,625,126;5,633,425;5,569,825;5,661,016;5,545,806;5,814,318;5,885,793;5,916,771;および5,939,598を参照されたい。
【0037】
抗体は、公知の方法、例えば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインA免疫アッセイなどの技法を用いる競合および非競合イムノアッセイシステムにより、CD30との特異的結合を試験することができる(例えば、Ausubel et al., eds., Short Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, Inc., New York, 4th ed. 1999);Harlow & Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999)を参照)。
【0038】
さらに、抗体のCD30との結合アフィニティと抗体CD30相互作用のオフレート(off-rate)を、競合結合アッセイにより測定することができる。競合結合アッセイの一例は、増加する量の非標識CD30の存在のもとで、標識したCD30(例えば、3Hまたは125I)を目的の抗体とインキュベートし、標識したCD30と結合した抗体を検出するステップを含むラジオイムノアッセイである。次いで、CD30に対する抗体のアフィニティと結合オフレート(off-rate)をスキャッチャードプロットにより測定することができる。第二抗体との競合はまた、ラジオイムノアッセイを用いて測定することもできる。この場合、増加する量の非標識第二抗体の存在のもとで、CD30を(例えば、3Hまたは125I)標識した化合物と複合した目的の抗体とインキュベートする。あるいは、抗体のCD30との結合アフィニティおよび抗体-CD30相互作用のオン(on-)およびオフレート(off-rate)を表面プラズモン共鳴により測定することができる。
【0039】
抗体は、CD30タンパク質のフラグメントを含有する抗原を用いて、抗体の型に応じた標準手順により作製することができる(例えば、Kohler, et al., Nature, 256:495, (1975);Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (C.S.H.P., NY, 1988);Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989)およびWO 90/07861;Dower et al., WO 91/17271およびMcCafferty et al., WO 92/01047 (これらはそれぞれ参照により全ての目的に対して本明細書に組み込まれる。一例として、モノクローナル抗体は、広範囲の色々な技法、例えば、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技法、またはそれらの組み合わせを用いて調製することができる。ハイブリドーマ技法は、一般に、例えば、Harlow et al.(前掲)、およびHammerling、et al. In Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, pp. 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981)において考察されている。抗CD30抗体を作るために用いることができるファージディスプレイ法の例には、例えば、Briinnan et al., 1995, J. Immunol. Methods 182:41-50;Ames et al., 1995, J. Immunol. Methods 184:177-186;Kettleborough et al., 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958;Persic et al., 1997, Gene 187:9-18;Burton et al., 1994, Advances in Immunology 57:191-280;国際出願PCT/GB91/01 134;国際公開WO 90/02809;WO 91/10737;WO 92/01047;WO 92/18619;WO 93/11236;WO 95/15982;WO 95/20401;およびU.S. Pat. Nos. 5,698,426;5,223,409;5,403,484;5,580,717;5,427,908;5,750,753;5,821,047;5,571,698;5,427,908;5,516,637;5,780,225;5,658,727;5,733,743および5,969,108に開示されたものが含まれる(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0040】
特異的エピトープを認識する抗体フラグメントを作製する技法はまた、当技術分野では公知である。例えば、FabおよびF(ab')2フラグメントは、酵素、例えば、パパイン(Fabフラグメントを作製するため)またはペプシン(F(ab')2フラグメントを作製するため)を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断により作製することができる。F(ab')2フラグメントは可変域、軽鎖定常域および重鎖のCH1ドメインを含有する。Fab、Fab'およびF(ab')2フラグメントを遺伝子組換えにより作製する技法はまた、例えば、WO 92/22324;Mullinax et al., 1992, BioTechniques 12(6):864-869;およびSawai et al., 1995, AJRI 34:26-34;およびBetter et al., 1988, Science 240:1041-1043に開示された方法を用いて行うことができる(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0041】
一本鎖Fvおよび抗体を作製するために用いることができる技法の例には、米国特許4,946,778および5,258,498;Huston et al., 1991, Methods in Enzymology 203:46-88;Shu et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7995-7999;およびSkerra et al., 1988, Science 240:1038-1040に記載のものが含まれる。
【0042】
本発明に有用な抗CD30抗体はまた、組換え発現技法により作製することができる。CD30と結合するおよび/またはCD30を発現する細胞の増殖を枯渇させるもしくは阻害する抗体の組換え発現は、その抗体をコードする核酸を含有する発現ベクターの構築を必要とする。かかるタンパク質をコードする核酸が得られると、そのタンパク質分子の作製は当技術分野で周知の技法を用いて組換えDNA技法により作製することができる。Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 3rd ed., 2001);Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2nd ed., 1989);Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York, 4th ed., 1999);およびGlick & Pasternak, Molecular Biotechnology: Principles and Applications of Recombinant DNA(ASM Press, Washington, D.C., 2nd ed., 1998)に記載される標準技法を、組換え核酸法、核酸合成、細胞培養、トランスジーン組込み、および組換えタンパク質発現のために用いることができる。
【0043】
例えば、抗CD30抗体を発現するためには、発現ベクターはプロモーターと機能的に連結したその重もしくは軽鎖、または重もしくは軽鎖可変ドメインをコードしうる。発現ベクターは、例えば、抗体分子の定常域をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく(例えば、WO 86/05807;WO 89/01036;および米国特許5,122,464を参照)、そして抗体の可変ドメインをかかるベクター中にクローニングして全重鎖もしくは軽鎖を発現してもよい。発現ベクターを公知の技法により宿主細胞に伝達し、次いでトランスフェクトした細胞を培養して抗CD30抗体を作製する。二本鎖抗体を発現するためには、典型的には重鎖と軽鎖の両方をコードするベクターを宿主細胞において同時発現して完全な免疫グロブリン分子を発現する。
【0044】
様々な原核生物および真核生物の宿主発現ベクターシステムを利用して抗CD30抗体を発現することができる。特に全組換え抗CD30抗体分子に対しては、典型的には真核細胞を用いて組換えタンパク質を発現させる。例えば、哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(例えば、DG44またはCHO-S)は、ベクター、例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要中間体初期遺伝子プロモーターエレメントまたはチャイニーズハムスター卵巣EF-1αプロモーターと併用すると、抗CD30抗体を作製するための有効な発現系である(例えば、Foecking et al., 1986, Gene 45:101;Cockett et al., 1990, Bio/Technology 8:2;Allison, 米国特許5,888,809を参照)。
【0045】
他の宿主-発現系には、細菌細胞中のプラスミドに基づく発現系(例えば、Ruther et al., 1983, EMBO 1,2:1791;Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109;Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 24:5503-5509を参照);昆虫系、例えば、Spodoptera frugiperda細胞におけるAutographa californica核の多核体病ウイルス(AcNPV)発現ベクターの使用;ならびに、哺乳動物細胞におけるウイルスに基づく発現系、例えば、アデノウイルスに基づく系(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355-359;Bittner ら, 1987, Methods in Enzymol. 153:51-544を参照)が含まれる。
【0046】
B. CD30を検出するための抗体
本明細書に記載の癌におけるCD30を検出するための抗体は、CD30と特異的に結合するものである。モノクローナル抗体のその標的抗原との特異的結合は、少なくとも106、107、108、109、または1010M-1のアフィニティを意味し、明らかに量的に高くかつ少なくとも1つの無関係な標的に対して起こる非特異的結合とは識別可能である。特異的結合は、特別な官能基間結合の形成または特別な空間的適合(例えば、ロックおよびキー型)の結果でありうるが、非特異的結合は通常、van der Waals力の結果である。検出方法に用いるCD30に対する抗体の選択は(細胞上に発現された)変性CD30または未変性CD30の検出を必要とする技法によりCD30が検出されるかどうかに依存する。CD30を指向する療法から利益を受けうる患者を同定するための好ましい抗体は、CD30の細胞外ドメインと特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、前記抗体は、ホルマリンで固定しパラフィンに包埋した(PPFE)癌標本上のCD30と結合しうる、例えば、Ber-H2抗体である。
【0047】
C. CD30を指向する療法
CD30を指向する療法は、CD30を指向するいずれかの細胞傷害剤による療法を含む。CD30を指向する療法は、抗CD30抗体および抗CD30抗体薬物複合体ならびに他の抗CD30結合剤およびそれらの複合体を含む。
【0048】
治療施用に用いる抗体は、癌細胞上に発現される自然のCD30の細胞外ドメインと特異的に結合する。本発明の実施はその機構の理解に依存するものでないが、抗体はCD30と結合しかつ細胞内に内部化される結果、またはCD30と結合しかつ細胞外側に蓄積することにより、細胞傷害性または細胞分裂停止の効果を発揮し得ると思われる。いずれの場合にも、細胞傷害効果は抗体を細胞傷害剤と複合化することにより促進することができる。CD30と結合した抗体による細胞の外側から働く細胞傷害効果は、さらにまたはあるいは抗体定常(エフェクター)機能により促進されうる。抗体定常ドメインは様々なIgエフェクター機能、例えば、抗体依存性の細胞傷害性(ADCC)、補体依存性の細胞傷害性(CDC)および/または抗体依存性の細胞ファゴサイトーシス(ADCP)における抗体の参加に介在する。場合によっては、CD30結合剤のエフェクター機能は米国特許出願2012/0014943に記載のいくつかの手法により増加することができる。
【0049】
本発明の方法による使用に好適な抗CD30抗体はCD30抗原と特異的に結合する任意の抗体を含む。本発明の抗CD30抗体は好ましくはモノクローナルであり、そして、例えば、キメラ(例えば、ヒト定常域およびマウス可変域を有する)、ヒト化、またはヒト抗体を含んでもよい。免疫グロブリン分子はIgG型であり、免疫グロブリン分子のいずれのサブクローニング(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)およびそれらの変異体を含んでもよい。免疫グロブリン分子は好ましくはIgG1である。多特異的抗体も本発明の方法による使用に好適である。本発明の抗体はいずれの好適な当技術分野で公知の方法により作製してもよい。例示の抗CD30抗体は、限定されるものでないが、ヒト化またはキメラAC10抗体を含む。マウスAC10はATCC受託番号PTA-6679のもとで受託されている。例示の実施形態において、抗CD30抗体はcAC10抗体である。本明細書に用いるcAC10抗体はマウスAC10の重鎖および軽鎖可変域、ヒトγI定常域およびヒトκ定常域を有する抗体である。
【0050】
CD30に対する抗体は、細胞傷害性または細胞分裂停止部分と複合化して抗体薬物複合体(ADC)を形成してもよい。抗体と複合化するための特に好適な部分は、化学治療薬、プロドラッグ転化酵素、放射性同位体または化合物、または毒素である。例えば、抗CD30抗体を、細胞傷害剤、例えば、化学治療薬、または毒素(例えば、細胞分裂停止または細胞殺傷剤、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素など)と複合化してもよい。細胞傷害剤の有用なクラスの例には、例えば、アウリスタチン、カンプトテシン、デュオカルマイシン、エトポシド、メイタンシノイド、ベンゾジアゼピン(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン、インドリノベンゾジアゼピン、およびオキサゾリジノベンゾジアゼピン)およびビンカアルカロイドが含まれる。治療薬をタンパク質、および特に抗体と複合化する技法は周知である(例えば、Alley et al., Current Opinion in Chemical Biology 2010 14:1-9;Senter, Cancer J., 2008, 14(3):154-169を参照)。
【0051】
好適な細胞傷害剤には、例えば、アウリスタチン(例えば、アウリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE)、DNA副溝結合剤(例えば、エネジインおよびレキシトロプシン)、デュオカルマイシン、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ビンカアルカロイド、ドキソルビシン、モルホリノ-ドキソルビシン、およびシアノモルホリノ-ドキソルビシンが含まれる。
【0052】
好適な抗体-薬物複合体には、アウリスタチン系の抗体-薬物複合体(薬物成分がアウリスタチンであることを意味する)が含まれる。アウリスタチンはチューブリンと結合し、微小管動力学ならびに核および細胞分裂を妨害して抗癌活性を有することが示されている。アウリスタチンはアウリスタチンEまたはその誘導体であってもよい。アウリスタチンは、例えば、アウリスタチンEとケト酸の間で形成されるエステルであってもよい。例えば、アウリスタチンEをパラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応させ、それぞれAEBおよびAEVBを作製してもよい。他の典型的なアウリスタチン類にはMMAF、およびMMAEが含まれる。例示のアウリスタチン類の合成と構造は、米国特許公報7,659,241、7,498,298、2009-0111756、2009-0018086、および7,968,687に記載されており、それぞれは参照によりその全てが全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0053】
例示のアウリスタチンに基づく抗体薬物複合体には、以下に示したvcMMAE、vcMMAFおよびmcMMAF抗体薬物複合体(ここで、Abは抗CD30抗体であり、val-citはバリン-シトルリンのジペプチドを表す):
【化1】
【0054】
、またはそれらの製薬上許容される塩が含まれる。薬物負荷はp(1抗体当たりの薬物‐リンカー分子の数)により表す。文脈に応じて、pは1抗体当たり薬物-リンカー分子の平均数(平均薬物負荷とも呼ばれる)を表しうる。pは1~20の範囲にあり、好ましくは1~8である。いくつかの好ましい実施形態において、pが平均薬物負荷を表す場合、pは約2~約5の範囲にある。いくつかの実施形態において、pは約2、約3、約4、または約5である。調製物中の1抗体当たり薬物の平均数は通常の手段、例えば、質量分析、HIC、ELISA、およびHPLCによって特徴づけることができる。
【0055】
特に好ましい実施形態において、抗CD30アウリスタチン系の抗体薬物複合体はブレンツキシマブベドチン、すなわち、次の構造:
【化2】
【0056】
を有する抗体-薬物複合体である。
【0057】
ブレンツキシマブベドチンは、3成分:(i)ヒトCD30に特異的なキメラIgG1抗体であるcAC10、(ii)微小管破壊剤であるMMAE、および(iii)MMAEがcAC10と共有結合するプロテアーゼ切断性リンカーから成るCD30を指向する抗体-薬物複合体である。薬物-対-抗体比または薬物負荷はブレンツキシマブベドチンの構造式において「p」で表され、整数値1~約8の範囲にある。医薬調製物の平均薬物負荷は3~約5である。
【0058】
III. CD30の検出
診断実施のための組織サンプルは外科処置、例えば、バイオプシーにより得ることができる。CD30は典型的には、癌であることが判っているまたは疑われる細胞を含有するサンプルを抗CD30抗体と接触させるステップを含むイムノアッセイにより検出し、前記癌には、例えば、卵巣(例えば、卵巣漿液性癌腫)、皮膚(例えば、黒色腫および皮膚扁平上皮細胞癌腫)、乳房(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、甲状腺(例えば、未分化の甲状腺癌腫)、膵臓(例えば、腺癌または未分化の膵臓癌腫)、肺(例えば、小細胞および扁平上皮細胞癌腫)、肛門(例えば、肛門扁平上皮細胞癌腫)、胸腺、子宮内膜が含まれる。接触後、抗体の細胞との結合事象の存在または非存在を決定する。その結合は、このサンプル中の癌細胞上に発現される抗原の存在または非存在と関係がある。いくつかの態様においては、抗CD30抗体とのインキュベーション後に、サンプルを(検出可能なシグナルを生じ得る)特異的結合パートナーである標識した抗CD30抗体と接触させる。他の態様においては、抗CD30抗体自身を標識してもよい。標識の型の例には、酵素標識、ポリマー標識、放射性同位体標識、非放射性標識、蛍光標識、毒素標識および化学発光標識が含まれる。標識からのシグナルの検出はサンプル中のCD30と特異的に結合した抗体の存在を示す。
【0059】
患者から得た組織サンプルを凍結、生のまま、固定、遠心分離、および/または包埋、例えば、パラフィン包埋してもよい。好ましくは、アッセイを実施するサンプルを固定または凍結して組織切片を作製できるようにする。好ましくは、切除した組織サンプルをアルデヒド固定剤、例えば、ホルムアルデヒド、パラフォルムアルデヒド、グルタルアルデヒド;または重金属固定剤、例えば、塩化水銀で固定する。より好ましくは、切除したサンプルをホルマリンで固定しかつパラフィンワックスに包埋した後、抗体とインキュベーションする。ホルマリン固定しパラフィン包埋した(FFPE)標本を用いる利点は、細胞および組織切片の構築の詳細な形態学が保存されることである(Fox et al., 1985, J. Histochem. Cytochem. 33:845-853を参照)。場合によっては、エピトープへの接近可能性を増すために、FFPE標本をTris-EDTA(高pH)またはクエン酸および加熱により処理してもよい(例えば、Shi et al., 1991, J Histochem Cytochem. 39:741-748を参照)。
【0060】
いくつかの実施形態においては、免疫組織化学技法を用いてCD30を検出する。免疫組織化学は、特異的抗体と抗原の相互作用の原理に基づいて組織切片の細胞中の抗原を検出するプロセスを意味する。結合した抗体は、いくつもの手段、例えば、蛍光検出法、酵素検出法、およびポリマーに基づく検出系で検出することができる。
【0061】
あるいは、タンパク質画分を既知のまたは疑われる癌から得た細胞から単離し、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降などにより分析してもよい。他の変法では、細胞をCD30の発現について、好ましくは、他の癌細胞マーカーと組み合わせて、フローサイトメトリー分析により分析してもよい。
【0062】
CD30の検出は抗体を用いる検出以外の方法によってもよい。例えば、mRNAを既知のまたは疑われる癌から得た細胞より抽出してもよい。こうして得たmRNAまたは核酸、例えばcDNAを次いで、CD30をコードするDNAに対する核酸プローブ結合とのハイブリダイゼーションにより分析してもよい。あるいは、RT-PCRを実施してもよい。
【0063】
他の変法においては、標識した抗CD30抗体を患者に投与しかつin vivoイメージングにより抗体を検出することにより、癌(例えば、卵巣、膵臓の、皮膚、乳房、甲状腺、膵臓、小細胞肺、肛門、胸腺、または子宮内膜癌または未知の原発性癌腫)をin vivoで検出することができる。
【0064】
組織サンプル中のCD30の検出は定性もしくは定量または両方であってもよい。定性的検出は、CD30発現の存在または非存在を意味する。定量的発現は、CD30発現の発現レベルを決定することを意味する。問題の癌組織サンプル中のCD30の存在および/またはレベルは(必ずしも必要ではないが)1以上の標準と比較して決定することができる。標準は過去にまたは現時点で測定したものであってもよい。標準は、例えば、色々な被験者から癌でないことが判っているサンプル、CD30を発現しないことが判っている患者もしくは他の被験者からの組織、または対応する細胞株であってもよい。標準はまた、CD30と結合しない対照抗体と接触させた、分析中の患者サンプルであってもよい。CD30は非癌性の卵巣、膵臓、皮膚、乳房、子宮内膜、甲状腺、膵臓、小細胞肺、肛門、または胸腺組織においては、有意な程度で発現されないので、特異的なCD30検出法で試験する場合、かかる非癌性組織をゼロ(バックグランド)発現標準として用いることができる。
【0065】
抗CD30抗体とCD30の結合から得られる、標準(使用する場合)と比較した検出可能なシグナルの存在は、組織サンプル中のCD30の存在を示し、検出可能な結合のレベルはCD30の発現レベルを示す。発現レベルは、検出可能なCD30の発現を示すサンプル中の悪性もしくは非定型的細胞のパーセントとして表すことができる。例えば、組織切片で実施したアッセイにおいて、発現レベルは、検出可能なCD30の発現を示す組織切片中の悪性もしくは非定型的細胞のパーセントとして表すことができる。あるいは、または加えて、前記発現レベル(強度)は、サンプル中の全発現のまたはサンプル中のCD30を発現する細胞の基準として用いることができる。
【0066】
いくつかの態様において、抗CD30抗体の結合からの検出可能なシグナルの存在は、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定するのに十分である。いくつかの態様においては、少なくとも10%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法(例えば、抗CD30抗体または抗CD30抗体薬物複合体による療法)による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも15%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも20%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも25%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも30%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも35%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも40%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも45%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも50%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも75%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも80%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。いくつかの態様においては、少なくとも85%の発現レベルを用いて、CD30を指向する療法による治療に適した患者を同定し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル(例えば、組織切片)中の悪性のおよび/または非定形的細胞のパーセントである。これらの実施形態のいずれにおいても、発現強度を同様に測定し、これを用いて、サンプル中の全発現のまたはサンプル中のCD30を発現する細胞の基準を得ることができる。
【0067】
いくつかの態様においては、CD30発現を細胞膜、ゴルジ体、および/または細胞質において検出する。
【0068】
IV. 診断、予後判定、設計および治療モニタリング
癌(例えば、卵巣、膵臓、皮膚、乳房、甲状腺、膵臓、泌尿生殖器、婦人科、肺、肛門、尿道、子宮、胸腺、または子宮内膜の癌または未知の原発性癌腫)の患者から得た腫瘍サンプル中のCD30発現の検出は、そのサンプルが癌である徴候でありうる。CD30の存在および/またはレベルにより得られる癌の徴候を、診断手法、例えば、医師による患者の内部または外部検査、X線、CTスキャン(コンピューター断層撮影)、PETスキャン(陽電子放出断層撮影)、PET/CTスキャン、超音波、MRI(磁気共鳴イメージング)、内視鏡検査、ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)、組織学的検査、細胞遺伝学、および組織培養と組み合わせて、全診断に到達することができる。
【0069】
おそらく、医師にとって最大の関心事のなかで、CD30の存在およびレベルは、患者に対する治療プロトコルを設計し、そして特にCD30を指向する療法を投与するための有用な情報を提供する。正常組織における検出可能なCD30発現は本質的に存在しないので、癌におけるこの受容体の存在は治療処置の標的を提供する。治療後のCD30の継続的分析は、その治療が有効かどうかをモニタリングする手段を提供し、CD30-ポジティブシグナル(すなわち、CD30-ポジティブ癌細胞の存在を示す代理シグナル)のレベルの低下は治療が有効であることを示す。
【0070】
V. 治療に適した患者
本方法による治療に適している患者は、通常、上記癌の他の徴候または症候群を伴う癌組織中にCD30の検出可能なレベルを有する。いくつかの実施形態において、本方法による治療に適している患者はその癌組織中に検出可能なCD30レベルを有することだけが必要である。他の実施形態においては、本方法による治療に適している患者は少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%のCD30発現レベルを有し、ここで、前記発現レベルはCD30の検出可能な発現を示すサンプル中の悪性および/または非定形的細胞のパーセントである。好ましい実施形態においては、検出抗体としてCD30に特異的な抗CD30抗体(例えば、BerH2抗体)を用いると、サンプル中の細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、または85%がCD30を発現する。サンプルは典型的には患者から採取した腫瘍サンプルである。
【0071】
時折、本方法により治療する患者が以前に他の型の治療(例えば、外科、化学療法および/または照射)を受けていて、癌の緩解もしくは増殖の減速すら起こってないことがある。いくつかのかかる患者においては、癌が1以上のかかる療法による治療に不応性である。
【0072】
時折、本方法により治療する患者は以前に他の型の治療(例えば、外科、化学療法および/または照射)を受けたが、再発している。
【0073】
時折、本方法により治療する患者は治療が未経験(例えば、その癌に対する外科、化学療法または照射を受けてない)である。時折、本方法により治療する患者は新しく診断されたものである。
【0074】
癌のリスクのあるいくつかの患者はまた、疾患の徴候および症候群が現れる前に予防としての治療を受けることがありうる。かかる個人には、これらの疾患を経験した親族を有するもの、および遺伝的または生化学マーカーの分析によりそのリスクを決定したものが含まれる。
【0075】
VI. 治療方法
本発明は、CD30を発現する癌(例えば、卵巣癌、皮膚癌、乳癌、甲状腺癌腫、膵臓癌腫、肺癌、扁平上皮細胞肺癌、肛門癌、子宮癌、尿道癌、子宮内膜癌、未知の原発性癌腫、胸腺癌腫、泌尿生殖器扁平上皮細胞癌腫、婦人科癌肉腫、セルトリ細胞腫瘍、ライディッヒ細胞腫瘍、および膵臓腺癌)を、CD30を指向する療法(例えば、本明細書に開示した抗体、およびADC、および他の抗CD30結合剤(総称として薬剤))により治療または予防する方法を提供する。本組成物を患者に投与してもよい。いくつかの態様において、卵巣癌は卵巣漿液性癌腫であり;皮膚癌は黒色腫または皮膚扁平上皮細胞癌腫であり;乳癌はトリプルネガティブ乳癌であり;肺癌は小細胞肺癌または扁平上皮細胞肺癌であり、甲状腺癌腫は未分化の甲状腺癌腫であり;膵臓癌腫は腺癌または未分化の膵臓癌腫であり;そして肛門癌は肛門扁平上皮細胞癌腫である。
【0076】
様々な送達系を用いて薬剤を投与することができ、前記送達系には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が含まれる。薬剤は、例えば、注入または巨丸剤注入により、上皮または粘膜皮膚ライニング(例えば、経口粘膜、直腸および腸の粘膜など)を介する吸収により投与してもよく、また化学治療薬などの他の生物学的活性薬と一緒に投与してもよい。投与は全身性または局所性であってもよい。
【0077】
薬剤は注入により、カテーテルの手段により、坐剤の手段により、または移植片の手段により投与してもよく、前記移植片は多孔性、非多孔性、またはゼラチン状材料であり、シリコーン系プラスチック膜などの膜または繊維を含む。
【0078】
あるいは、薬剤を制御放出系で送達してもよい。例えば、ポンプを用いることができる(Langer, 1990, Science 249:1527-1533;Sefton, 1989, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201;Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507;Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。あるいは、ポリマー材料を用いることができる(Medical Applications of Controlled Release (Langer & Wise eds., CRC Press, Boca Raton, Florida, 1974);Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance (Smolen & Ball eds., Wiley, New York, 1984);Ranger & Peppas, 1983, Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照)。また、Levy et al., 1985, Science 228:190;During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351;Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 71:105を参照)。他の制御放出系が、例えば、Langer(上掲)に考察されている。
【0079】
薬剤は治療上もしくは予防上有効な量の薬剤および1以上の薬剤学的成分を含む医薬組成物として投与することができる。例えば、医薬組成物は、典型的には、1以上の医薬品担体(例えば、無菌液、例えば、水および油(石油、動物、野菜または合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む)を含む。医薬組成物を静脈に投与する場合、水は極く典型的な担体である。生理食塩水溶液ならびにブドウ糖およびグリセリン水溶液も、液状担体、特に注入可能な溶液用の液状担体として使うことができる。好適な医薬品賦形剤には、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤または乳濁化剤、pH緩衝剤(例えば、アミノ酸)および/または可溶化剤または安定剤(例えば、非イオン界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)または糖、例えば、スクロース、トレハロースなど)を含有してもよい。これらの組成物は溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、持続放出製剤などの剤形をとることができる。組成物は伝統的な結合剤およびトリグリセリドなどの担体を用いて、坐剤として製剤することができる。経口製剤は、標準担体、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムを含んでもよい。好適な医薬品担体の例は、E.W. Martinによる“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。かかる組成物は、典型的には精製された形態で、患者に適した投与剤形を与える好適な量の担体と一緒に、治療上有効な量の核酸またはタンパク質を含有しうる。製剤は投与モードに対応する。
【0080】
典型的には、静脈投与用の組成物は無菌の等張性水性バッファーの溶液である。必要であれば、医薬品はまた、溶解剤および注入部位における疼痛を和らげるためにリグノカインなどの局所麻酔薬を含有する。一般に、成分は単位投与剤形で、別々にまたは一緒に混合して、例えば、活性薬の量を示すアンプルもしくは小袋(sachette)などの密封した容器に入れた凍結乾燥粉もしくは濃縮液として供給される。医薬品を注入により投与する場合、医薬無菌医薬品グレードの水もしくは生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて調剤してもよい。医薬品を注射により投与する場合、注射用無菌水もしくは生理食塩水のアンプルを提供して、投与前に各成分を混合してもよい。
【0081】
癌の治療および予防に有効である薬剤の量は標準の臨床技法により決定することができる。さらに、場合によっては、in vitroアッセイを使って最適な用量範囲を同定する助けとしてもよい。製剤に用いる正確な用量はまた、投与経路、および癌の段階に応じるものであって、医師の判断と各患者の環境によって決定すべきである。有効な用量はin vitroまたは動物モデル試験から得た用量-応答曲線から外挿することができる。用量は、細胞培養で決定したIC50(すなわち、症候群の半最高阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度を動物モデルにおいて達成するように処方することができる。
【0082】
例えば、薬剤の毒性および治療効力は細胞培養または実験動物においてLD50(集団の50%に対する致死用量)およびED50(集団の50%における治療有効用量)を決定する標準の調剤手順により決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を示す薬剤が好ましい。薬剤が毒性副作用を示す場合、薬剤を患部組織の部位に標的化する送達系を用いてCD30を発現しない細胞の潜在的損傷を最小化し、それにより副作用を減ずる。
【0083】
一般に、CD30を発現する癌の患者に投与する抗体またはADCの投与量は、被験者体重当たり0.01mg/kg~25mg/kgまたは0.1mg/kg~25mg/kgである。さらに典型的には、被験者に投与する投与量は被験者体重当たり0.1mg/kg~10mg/kg、その上さらに典型的には被験者体重当たり0.1mg/kg~5mg/kg、0.1mg/kg~3mg/kgである。一般に、ヒト抗体は、外来タンパク質の免疫応答による他の種由来の抗体よりヒト体内の半減期が長い。従って、ヒト化、キメラまたはヒト抗体を含む抗体薬物複合体(ADC)は、しばしば、より低い投与量ならびにより少ない投与が可能である。
【0084】
ホジキンリンパ腫または未分化大細胞リンパ腫を治療するためのブレンツキシマブベドチンの推奨用量は、毎3週、最大16サイクルまで投与して1.8mg/kgである。現在の推奨用量はホジキンリンパ腫に対して1.8 mg/kgであるが、他の癌に対しては、例えば2.4mg/kgを含む、他のもっと高いまたは低い用量が考えられる。投与は30分間にわたる静脈内注入である。例示の実施形態においては、本明細書に記載の患者に対して、ブレンツキシマブ・ベドチンを毎3週、1.8mg/kgまたは2.4mg/kgの用量を与えうる。しかし、本発明により、他の投与レジメンおよび投与経路が考えられ包含される。代わりの投薬レジメンの一例は、4週のなかから毎3週、週1回約0.8mg/kg~約1.2mg/kg投与である。投与の頻度および用量は、患者の症状および疾患の重症度を含む多くの因子に依存する。
【0085】
CD30を指向する療法はまた、1以上の癌治療用の他の治療薬と組み合わせて投与(経時的投与を含めて)してもよく、特に、CD30を指向する療法を、治療すべき特定の疾患の看護の標準である他の療法(例えば、看護の最先端の標準または第2もしくは第3の治療、または救出療法であっても)と共に投与してもよい。いくつかの態様において、併用療法は第2の細胞分裂停止もしくは細胞傷害剤(例えば、癌の治療に通常用いられる、複合した細胞分裂停止もしくは細胞傷害剤)を含んでもよい。併用療法はまた、例えば、CD30を発現する癌細胞の表面上のCD30以外の受容体もしくは受容体複合体を標的化する薬剤の投与を含んでもよい。典型的には、かかる抗体またはリガンドは、腫瘍内のCD30を発現する癌細胞または他の細胞上の細胞表面受容体と結合し、細胞傷害シグナルをCD30を発現する癌細胞に送達することによりまたは抗-アポトーシス機構を低下させることにより、抗CD30-抗体の細胞傷害効果を亢進する。
【0086】
薬剤と共に投与しうる他の薬物には成長因子インヒビター、または抗-血管新生因子が含まれる。本発明の方法は、他の治療法、例えば、外科、照射、標的化療法、免疫療法、成長因子インヒビター、または抗-血管新生因子の使用と併用することができる。
【0087】
外科は好ましい治療であり、組織学を介する示差的診断用の組織標本を得るためにしばしば必要である。生存は、疾患の正確な病期の決定と腫瘍の速やかな積極的外科切除により改善されうる。外科の方式は、診断時に癌がどの程度広がっているか(癌の病期)ならびに癌の予想される型と程度に応じて決定される。
【0088】
CD30を指向する療法は、外科、化学療法または放射線療法による治療を受ける患者に同時に投与することができる。いくつかの他の実施形態において、患者は、少なくとも1時間から数か月だけCD30を指向する療法を受ける前または後に、例えば、少なくとも1時間、5時間、12時間、1日、1週、1か月、または3か月だけADCの投与を受ける前または後に、外科、化学療法または放射線療法を受けてもよい。
【0089】
本発明は以下の実施形態を包含する:
(1)卵巣癌、皮膚癌、乳癌、膵臓癌、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、子宮内膜癌、肛門癌、甲状腺癌、胸腺癌、未知の原発性癌腫、泌尿生殖器癌または婦人科癌を有する患者をCD30を指向する療法に適格であると同定する方法であって、患者から採取したサンプル中のCD30発現のレベルを決定するステップならびに対照と比較したサンプル中のCD30の発現に基づいて患者をCD30を指向する療法に適格であると同定するステップを含むものである前記方法。
(2)患者から組織サンプルを得るステップ、組織サンプルを固定するステップ、固定した組織サンプルを抗CD30抗体と接触させるステップ、および抗体の固定した組織サンプルとの結合を検出してCD30がサンプル中に発現されるかどうかを決定するステップを含むものである、実施形態1に記載の方法。
(3)サンプルが組織サンプルである、実施形態1に記載の方法。
(4)組織サンプルがCD30を発現し、かつCD30の発現を検出可能なCD30を発現するサンプル中の腫瘍細胞のパーセントとして決定する、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
(5)さらに、患者に対する治療プロトコルを決定するステップを含み、ここで検出可能なCD30の発現は治療プロトコルがCD30を指向する療法による治療を含む表示であるとする、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
(6)さらに、抗CD30抗体または抗CD30抗体薬物複合体の有効レジメンを患者に投与するステップを含む、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
(7)BerH2抗体を検出抗体として用いるとサンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも10%がCD30を発現する、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
(8)BerH2抗体を検出抗体として用いるとサンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも50%がCD30を発現する、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
(9)患者から得た腫瘍サンプル中の細胞のCD30発現を決定するステップを含む、膵臓、卵巣、肺、子宮内膜、乳房、甲状腺、肛門、胸腺、または皮膚、または未知の原発性の癌を有する患者を診断、予後判定、治療プロトコルの決定、または治療モニタリングする方法であって、検出可能なCD30発現の存在を患者の診断、予後判定、治療プロトコルの決定または治療モニタリングに用いる前記方法。
(10)決定ステップが検出可能なCD30のレベルを示す、実施形態8に記載の方法。
(11)CD30を指向する療法の有効レジメンを患者に投与するステップを含む、実施形態9に記載の方法。
(12)抗CD30抗体を投与する、実施形態11に記載の方法。
(13)抗CD30抗体薬物複合体を投与する、実施形態11に記載の方法。
(14)CD30発現を検出可能なCD30を発現するサンプル中の腫瘍細胞のパーセントとして決定する、実施形態9~13のいずれかに記載の方法。
(15)BerH2抗体を検出抗体として用いると、サンプル中の少なくとも10%の悪性または非定形的細胞がCD30を発現する、実施形態9~14のいずれかに記載の方法。
(16)BerH2抗体を検出抗体として用いると、サンプル中の少なくとも50%の悪性または非定形的細胞がCD30を発現する、実施形態9~14のいずれかに記載の方法。
(17)CD30標的化療法の有効レジメンを、膵臓、卵巣、肺、乳房、甲状腺、肛門、胸腺、子宮内膜、または皮膚の癌を有するかまたはCD30の検出可能な発現を有する未知の原発性癌腫を有する患者に投与するステップを含む、CD30ポジティブ癌を治療する方法であって、CD30を指向する療法が抗体または抗体薬物複合体である前記方法。
(18)CD30を指向する療法がエフェクター機能を有する抗体である、実施形態17に記載の方法。
(19)CD30を指向する療法が抗体薬物複合体である、実施形態17に記載の方法。
(20)抗体薬物複合体がブレンツキシマブベドチンである、実施形態19に記載の方法。
(21)CD30発現を、検出可能なCD30を発現するサンプル中の腫瘍細胞のパーセントとして決定する、実施形態17~20のいずれかに記載の方法。
(22)BerH2抗体を検出抗体として用いると、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも10%がCD30を発現する、実施形態17~21のいずれかに記載の方法。
(23)BerH2抗体を検出抗体として用いると、サンプル中の悪性または非定形的細胞の少なくとも50%がCD30を発現する、実施形態17~21のいずれかに記載の方法。
(24)卵巣、膵臓、肺、乳房、甲状腺、肛門、胸腺、子宮内膜、または皮膚癌または未知の原発性癌腫を有する患者の組織サンプル中のCD30の発現を検出する方法であって、患者から組織サンプルを得るステップおよびCD30がサンプル中に発現したことを示すCD30特異的抗体の組織サンプルとの結合を検出するステップを含むものである前記方法。
(25)さらに、対照組織サンプルと比較して、サンプル中のCD30の発現に基づいて、CD30を発現する癌の患者を診断するステップを含む、実施形態24に記載の方法。
(26)さらに、患者をCD30を指向する療法で治療するステップを含む、実施形態25に記載の方法。
(27)CD30標的化療法の有効レジメンをCD30の検出可能な発現を有する婦人科癌または泌尿生殖器癌を有する患者に投与するステップを含む、CD30ポジティブ癌を治療する方法であって、CD30を指向する療法が抗体または抗体薬物複合体である前記方法。
(28)CD30標的化療法の有効レジメンを、CD30の検出可能な発現を有するライディッヒ細胞腫瘍またはセルトリ細胞腫瘍を有する患者に投与するステップを含む、CD30ポジティブ癌を治療する方法であって、CD30を指向する療法が抗体または抗体薬物複合体である前記方法。
(29)患者が卵巣癌を有し、その卵巣癌が上皮細胞である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(30)患者が卵巣癌を有し、その卵巣癌が卵巣漿液性癌腫である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(31)患者が皮膚癌を有し、その皮膚癌が黒色腫である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(32)患者が皮膚癌を有し、その皮膚癌が扁平上皮細胞癌腫である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(33)患者が乳癌を有し、その乳癌がトリプルネガティブ乳癌である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(34)患者が甲状腺癌を有し、その甲状腺癌が未分化の甲状腺癌腫である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(35)患者が膵臓癌を有し、その膵臓癌が未分化の膵臓癌腫または腺癌である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(36)患者が肺癌を有し、その肺癌が小細胞肺癌である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(37)患者が肛門癌を有し、その肛門癌が肛門扁平上皮細胞癌腫である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(38)患者が胸腺癌を有し、その胸腺癌が胸腺癌腫である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(39)患者が肺癌を有し、その肺癌が肺の扁平上皮細胞癌腫である、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(40)患者が子宮内膜癌を有する、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(41)患者が未知の原発性癌腫を有する、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(42)患者が尿道癌を有する、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(43)患者が子宮癌を有する、実施形態1~26のいずれかに記載の方法。
(44)CD30シグナルが細胞膜および/またはゴルジに検出される、実施形態1~43のいずれかに記載の方法。
(45)CD30シグナルを免疫組織化学技法を用いて検出する、実施形態1~44のいずれかに記載の方法。
本発明をさらに次の実施例で説明するが、これらは本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例0090】
Ber-H2抗体を用いる腫瘍および非腫瘍癌組織におけるCD30発現
腫瘍組織は、卵巣癌(例えば、卵巣漿液性癌腫)、皮膚癌(例えば、黒色腫、および皮膚扁平上皮細胞癌腫)、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、甲状腺癌腫(例えば、未分化の甲状腺癌腫)、膵臓癌腫(例えば、未分化の膵臓癌腫または腺癌)、肺癌(例えば、小細胞および扁平上皮細胞)、肛門癌(例えば、肛門扁平上皮細胞癌腫)、子宮内膜癌、未知の原発性癌腫、胸腺癌腫、泌尿生殖器扁平上皮細胞癌、婦人科癌肉腫、ライディッヒ細胞腫瘍、およびセルトリ細胞腫瘍の患者から得た。組織サンプルを通常の手順に従って固定し、パラフィンに包埋した。組織切片(4~6ミクロン)をパラフィンブロックから調製した。
【0091】
間接的な免疫組織化学(IHC)技法アッセイを使い、抗CD30抗体(市販クローンBer-H2)を用いてCD30を検出した。この技法では、非複合一次抗体(2ug/mlのBer-H2)を一次抗体として用いた。内因性ペルオキシダーゼ活性をペルオキシダーゼ・ブロッキングのステップを用いて中和した。EnVisionTM FLEX+ポリマーに基づく系(Dako, Glostrup, Denmark)を用いてCD30を検出した。このポリマー技法は酵素標識したデキストラン分子(この分子に平均70分子の酵素と10分子の二次抗体が結合している)を用いる。基質の色素源(3,3-ジアミノベンジジン(DAB)または赤色検出系)を加えると、(それぞれ)褐色もしくは赤色沈降物が標識したポリマーに付着した。次いでスライドをヘマトキシリンを用いて対比染色して染色手順を完了する。病理学者がこれらのスライドを評価した。CD30シグナルは膜、細胞質、ゴルジ体、またはこれらの3つの細胞下の局所の組み合わせに検出された。それぞれの染色試験に対してネガティブ対照および適当なポジティブ対照を用いた。CD30の免疫組織化学的(IHC)発現を、関わる腫瘍のパーセントに基づいて評価した。
【0092】
全ての腫瘍組織の結果を表1に示す。
【表1】
【0093】
CD30 + 患者の治療
CD30+の卵巣癌、乳癌、膵臓癌および黒色腫を有する患者に、ブレンツキシマブベドチンを毎週1.8mg/kg、静脈内投与(IV)して治療した。12名の卵巣癌の患者を治療し、5名の疾患が安定した。2名の乳癌の患者を治療し、1名の患者は疾患が安定した。1名の黒色腫の患者を治療し、疾患が安定した。1名の膵臓癌の患者を治療し、サイクル12にて部分的応答を達成した。
【0094】
本発明は本明細書に記載の具体的な実施形態により範囲が限定されない。当業者には、以上の記載および添付した図面から、本明細書に記載のものだけでなく本発明の様々な改変が明らかになりうる。かかる改変は、添付した請求項の範囲に包含されると意図している。文脈から別段明らかでなくても、本発明の任意の段階、要素、実施形態、特徴または態様は任意の他のものと組み合わせて用いることができる。本出願に参照した全ての特許出願、および科学的刊行物、受託番号などは参照によりその全てが、全ての目的に対して、個々に示したのと同程度に本明細書に組み込まれる。