(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070961
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/129 20210101AFI20220506BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220506BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20220506BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220506BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20220506BHJP
H01M 50/145 20210101ALI20220506BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20220506BHJP
【FI】
H01M50/129
B32B15/08 F
B32B15/20
H01G11/78
H01M50/119
H01M50/145
H01M50/121
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020401
(22)【出願日】2022-02-14
(62)【分割の表示】P 2020105780の分割
【原出願日】2016-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】ホウ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】熊木 輝利
(72)【発明者】
【氏名】雁瀬 勉
(72)【発明者】
【氏名】王 宏琳
(57)【要約】
【課題】リードタイムを大幅に短縮できて生産性を向上できると共に、優れた成形性も確保し得る包装材の製造方法を提供する。
【解決手段】金属箔4の一方の面に、押出機40から押し出された押出溶融樹脂膜47を介して熱融着性樹脂フィルム3を接着して第1積層体48を得る内側層形成工程と、前記第1積層体48の金属箔4の他方の面に、電子線硬化性樹脂組成物44を介して基材層用樹脂フィルム2を接着して第2積層体49を得た後、該第2積層体49に対して前記基材層用樹脂フィルム側から電子線46を照射する外側層形成工程と、を含む製造方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に化成皮膜が形成されたアルミニウム箔の一方の面に電子線硬化性樹脂組成物からなる基材層が積層され、前記アルミニウム箔の一方の面に基材層用樹脂フィルムは積層されておらず、前記アルミニウム箔の他方の面に熱融着性樹脂層が積層されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記電子線硬化性樹脂組成物は、重合性オリゴマーおよび電子線重合開始剤を含有する組成物、または重合性オリゴマー、重合性モノマーおよび電子線重合開始剤を含有する組成物である請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記アルミニウム箔と前記熱融着性樹脂層との間に内側接着剤層が積層されている請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン、タブレット等のモバイル電気機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイス用の外装材(包装材)の他、食品用包装材、医薬品用包装材等として用いられる包装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池は、例えばノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話、電気自動車等の電源として広く用いられている。このリチウムイオン2次電池としては、電池本体部(正極、負極及び電解質を含む本体部)の周囲をケースで包囲した構成のものが用いられている。このケース用材料(外装材)としては、耐熱性樹脂フィルムからなる外層、アルミニウム箔層、熱可塑性樹脂フィルムからなる内層がこの順に接着一体化された構成のものが公知である。
【0003】
例えば、基材層(外側層)、第1接着剤層、金属箔層、第2接着剤層、シーラント層(内側層)がこの順に積層された電池用外装材であって、第1接着剤層および第2接着剤層がともに熱硬化(加熱エージング)により形成された構成の電池用外装材が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記熱硬化により第1及び第2接着剤層を形成させるには、接着剤を塗布した後に加熱エージング処理を40℃で5日間または10日間行う必要がある(特許文献1の段落0097)。
【0006】
このように少なくとも5日間以上、加熱エージング処理を行わなければならないので、リードタイム(資材投入から製品完成までに要する時間)が相当に長いという問題、即ち生産性に劣るという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、リードタイムを大幅に短縮できて生産性を向上できると共に、優れた成形性も確保し得る包装材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]金属箔の一方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を介して熱融着性樹脂フィルムを接着して第1積層体を得る内側層形成工程と、
前記第1積層体の金属箔の他方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を介して基材層用樹脂フィルムを接着して第2積層体を得た後、該第2積層体に対して前記基材層用樹脂フィルム側から電子線を照射する外側層形成工程と、を含むことを特徴とする包装材の製造方法。
【0010】
[2]金属箔の一方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔の一方の面に熱融着性樹脂層を形成して第1積層体を得る内側層形成工程と、
前記第1積層体の金属箔の他方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を介して基材層用樹脂フィルムを接着して第2積層体を得た後、該第2積層体に対して前記基材層用樹脂フィルム側から電子線を照射する外側層形成工程と、を含むことを特徴とする包装材の製造方法。
【0011】
[3]金属箔の一方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を介して基材層用樹脂フィルムを接着して第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記基材層用樹脂フィルム側から電子線を照射する外側層形成工程と、
前記電子線照射後の第1積層体の金属箔の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を介して熱融着性樹脂フィルムを接着する内側層形成工程と、を含むことを特徴とする包装材の製造方法。
【0012】
[4]金属箔の一方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を介して基材層用樹脂フィルムを接着して第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記基材層用樹脂フィルム側から電子線を照射する外側層形成工程と、
前記電子線照射後の第1積層体の金属箔の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔層の他方の面に熱融着性樹脂層を形成する内側層形成工程と、を含むことを特徴とする包装材の製造方法。
【0013】
[5]金属箔の一方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を介して熱融着性樹脂フィルムを接着して第1積層体を得る内側層形成工程と、
前記第1積層体の金属箔の他方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を塗布して第2積層体を得た後、該第2積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から電子線を照射する外側層形成工程と、を含むことを特徴とする包装材の製造方法。
【0014】
[6]金属箔の一方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔の一方の面に熱融着性樹脂層を形成して第1積層体を得る内側層形成工程と、
前記第1積層体の金属箔の他方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を塗布して第2積層体を得た後、該第2積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から電子線を照射する外側層形成工程と、を含むことを特徴とする包装材の製造方法。
【0015】
[7]金属箔の一方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を塗布して第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から電子線を照射する外側層形成工程と、
前記電子線照射後の第1積層体の金属箔の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を介して熱融着性樹脂フィルムを接着する内側層形成工程と、を含むことを特徴とする包装材の製造方法。
【0016】
[8]金属箔の一方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を塗布して第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から電子線を照射する外側層形成工程と、
前記電子線照射後の第1積層体の金属箔の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔層の他方の面に熱融着性樹脂層を形成する内側層形成工程と、を含むことを特徴とする包装材の製造方法。
【0017】
[9]前記内側層形成工程および前記外側層形成工程を連続して行う前項1、2、5、6に記載の包装材の製造方法。
【0018】
[10]前記基材層用樹脂フィルムとして、熱水収縮率が1.5%~12%である耐熱性樹脂フィルムを用いる前項1~4のいずれか1項に記載の包装材の製造方法。
【0019】
[11]前記押出溶融樹脂膜が、押出溶融酸変性ポリオレフィン樹脂膜である前項1~10のいずれか1項に記載の包装材の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
[1]~[8]の発明では、接着剤等として熱硬化性樹脂を用いていないので(数日間の加熱エージングを必要とする熱硬化性樹脂を使用していないので)、即ち「電子線硬化性樹脂組成物の電子線硬化を用いた接着又は電子線硬化性樹脂組成物の電子線硬化による基材層の形成」および「押出溶融樹脂膜を用いた接着又は押出溶融樹脂膜を用いた熱融着性樹脂層の形成」は、数日間の加熱エージングを必要とする熱硬化性樹脂の硬化と比較して格段に短い時間で行い得るので、リードタイム(資材投入から製品完成までに要する時間)を大幅に短縮できて、コスト低減を図ることができる。更に、電子線硬化性樹脂組成物および押出溶融樹脂膜には、溶剤を含有せしめる必要がなく、このように溶剤非含有とできるので環境負荷が小さくて済む利点がある。また、熱硬化性樹脂を用いていないので乾燥炉を必要としないことから、製造設備をコンパクトなものにできる。また、得られた包装材に対し深絞り成形、張り出し成形等の冷間(常温)成形により、成形深さの深い成形を行っても、ピンホールやクラックが発生せず優れた成形性を確保できる。
【0021】
[9]の発明は、内側層形成工程および外側層形成工程を連続して行うので、生産効率を向上させることができる。このように内側層形成工程および外側層形成工程を連続して行うに際し、内側層形成工程を外側層形成工程よりも先に実施する方法であるので(先に内側層を形成した後に電子線を照射する外側層形成工程を実施するので)、包装材においてカール現象が生じ難くなる利点がある。
【0022】
[10]の発明では、基材層用樹脂フィルムとして熱水収縮率が1.5%~12%である耐熱性樹脂フィルムを用いているので、成形深さの深い成形を行っても或いは高温多湿等の苛酷な環境下で使用しても、外側層(基材層)と金属箔層の間のデラミネーション(剥離)を十分に防止することができる。
【0023】
[11]の発明では、押出溶融樹脂膜が、押出溶融酸変性ポリオレフィン樹脂膜であるので、金属箔層と熱融着性樹脂層との接着強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る第1の製造方法の一例を示す概略側面図である。
【
図2】本発明に係る第1又は第2の製造方法により得られた包装材の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る第3又は第4の製造方法により得られた包装材の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る第5又は第6の製造方法により得られた包装材の一実施形態を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る第7又は第8の製造方法により得られた包装材の一実施形態を示す断面図である。
【
図6】本発明に係る蓄電デバイスの一実施形態を示す断面図である。
【
図7】
図6の蓄電デバイスを構成する包装材(平面状のもの)、蓄電デバイス本体部及び成形ケース(立体形状に成形された成形体)をヒートシールする前の分離した状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る、包装材の製造方法について説明する。本発明の製造方法として、以下の第1~8の各製造方法が挙げられる。
【0026】
(第1の製造方法)
金属箔4の一方の面に、押出機40から押し出された押出溶融樹脂膜47を介して熱融着性樹脂フィルム3を接着して第1積層体48を得る内側層形成工程と、前記第1積層体48の金属箔4の他方の面に、電子線硬化性樹脂組成物44を介して基材層用樹脂フィルム2を接着して第2積層体49を得た後、該第2積層体49に対して前記基材層用樹脂フィルム2側から電子線46を照射する外側層形成工程と、を含むことを特徴とする(
図1参照)。この第1の製造方法により、
図2に示す構成の包装材1が得られる。
【0027】
(第2の製造方法)
上記第1の製造方法における内側層形成工程と外側層形成工程の実施順序を逆転させた製造方法が第2の製造方法である。即ち、第2の製造方法は、金属箔4の一方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を介して基材層用樹脂フィルム2を接着して第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記基材層用樹脂フィルム2側から電子線を照射する外側層形成工程と、前記電子線照射後の第1積層体の金属箔4の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を介して熱融着性樹脂フィルム3を接着する内側層形成工程と、を含むことを特徴とする。この第2の製造方法により、
図2に示す構成の包装材1が得られる。
【0028】
図2に示す包装材1は、金属箔層4の一方の面(上面)に電子線硬化性樹脂組成物の硬化膜からなる外側接着剤層(第1接着剤層)5を介して前記基材層用樹脂フィルムからなる基材層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面(下面)に押出樹脂膜47からなる内側接着剤層(第2接着剤層)6を介して熱融着性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成である。
【0029】
(第3の製造方法)
金属箔4の一方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔4の一方の面に熱融着性樹脂層3を形成して第1積層体を得る内側層形成工程と、前記第1積層体の金属箔4の他方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を介して基材層用樹脂フィルム2を接着して第2積層体を得た後、該第2積層体に対して前記基材層用樹脂フィルム2側から電子線を照射する外側層形成工程と、を含むことを特徴とする。この第3の製造方法により、
図3に示す構成の包装材1が得られる。
【0030】
前記第3の製造方法において、金属箔4の一方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔4の一方の面に熱融着性樹脂層3を形成する際には、1台の押出機から押し出された1層の押出溶融樹脂膜を前記金属箔4の一方の面に重ね合わせるようにしてもよいし(シングルラミネート法)、複数台の押出機から押し出された複数層の押出溶融樹脂膜を前記金属箔4の一方の面に重ね合わせるようにしてもよい(タンデムラミネート法)。
【0031】
(第4の製造方法)
上記第3の製造方法における内側層形成工程と外側層形成工程の実施順序を逆転させた製造方法が第4の製造方法である。即ち、第4の製造方法は、金属箔4の一方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を介して基材層用樹脂フィルム2を接着して第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記基材層用樹脂フィルム2側から電子線を照射する外側層形成工程と、前記電子線照射後の第1積層体の金属箔4の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔4の他方の面に熱融着性樹脂層3を形成する内側層形成工程と、を含むことを特徴とする。この第4の製造方法により、
図3に示す構成の包装材1が得られる。
【0032】
前記第4の製造方法において、電子線照射後の第1積層体の金属箔4の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔4の他方の面に熱融着性樹脂層3を形成する際には、1台の押出機から押し出された1層の押出溶融樹脂膜を前記金属箔4の他方の面に重ね合わせるようにしてもよいし(シングルラミネート法)、複数台の押出機から押し出された複数層の押出溶融樹脂膜を前記金属箔4の他方の面に重ね合わせるようにしてもよい(タンデムラミネート法)。
【0033】
図3に示す包装材1は、金属箔層4の一方の面(上面)に電子線硬化性樹脂組成物の硬化膜からなる外側接着剤層(第1接着剤層)5を介して基材層用樹脂フィルムからなる基材層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面(下面)に押出樹脂膜47からなる熱融着性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成である。
【0034】
(第5の製造方法)
金属箔4の一方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を介して熱融着性樹脂フィルム3を接着して第1積層体を得る内側層形成工程と、前記第1積層体の金属箔4の他方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を塗布して第2積層体を得た後、該第2積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から電子線を照射する外側層形成工程と、を含むことを特徴とする。この第5の製造方法により、
図4に示す構成の包装材1が得られる。
【0035】
(第6の製造方法)
上記第5の製造方法における内側層形成工程と外側層形成工程の実施順序を逆転させた製造方法が第6の製造方法である。即ち、第6の製造方法は、金属箔4の一方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を塗布して第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から電子線を照射する外側層形成工程と、前記電子線照射後の第1積層体の金属箔4の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を介して熱融着性樹脂フィルム3を接着する内側層形成工程と、を含むことを特徴とする。この第6の製造方法により、
図4に示す構成の包装材1が得られる。
【0036】
図4に示す包装材1は、金属箔層4の一方の面(上面)に電子線硬化性樹脂組成物の硬化膜からなる基材層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面(下面)に押出樹脂膜47からなる内側接着剤層(第2接着剤層)6を介して熱融着性樹脂フィルムからなる熱融着性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成である。
【0037】
(第7の製造方法)
金属箔4の一方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔の一方の面に熱融着性樹脂層3を形成して第1積層体を得る内側層形成工程と、前記第1積層体の金属箔4の他方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を塗布して第2積層体を得た後、該第2積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から電子線を照射する外側層形成工程と、を含むことを特徴とする。この第7の製造方法により、
図5に示す構成の包装材1が得られる。
【0038】
前記第7の製造方法において、金属箔4の一方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔4の一方の面に熱融着性樹脂層3を形成する際には、1台の押出機から押し出された1層の押出溶融樹脂膜を前記金属箔4の一方の面に重ね合わせるようにしてもよいし(シングルラミネート法)、複数台の押出機から押し出された複数層の押出溶融樹脂膜を前記金属箔4の一方の面に重ね合わせるようにしてもよい(タンデムラミネート法)。
【0039】
(第8の製造方法)
上記第7の製造方法における内側層形成工程と外側層形成工程の実施順序を逆転させた製造方法が第8の製造方法である。即ち、第8の製造方法は、金属箔4の一方の面に、電子線硬化性樹脂組成物を塗布して第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から電子線を照射する外側層形成工程と、前記電子線照射後の第1積層体の金属箔4の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔4の他方の面に熱融着性樹脂層を形成する内側層形成工程と、を含むことを特徴とする。この第8の製造方法により、
図5に示す構成の包装材1が得られる。
【0040】
前記第8の製造方法において、電子線照射後の第1積層体の金属箔4の他方の面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔4の他方の面に熱融着性樹脂層3を形成する際には、1台の押出機から押し出された1層の押出溶融樹脂膜を前記金属箔4の他方の面に重ね合わせるようにしてもよいし(シングルラミネート法)、複数台の押出機から押し出された複数層の押出溶融樹脂膜を前記金属箔4の他方の面に重ね合わせるようにしてもよい(タンデムラミネート法)。
【0041】
図5に示す包装材1は、金属箔層4の一方の面(上面)に電子線硬化性樹脂組成物の硬化膜からなる基材層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面(下面)に押出樹脂膜47からなる熱融着性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成である。
【0042】
上記第1、2、5、6の製造方法において、内側層形成工程で、金属箔4の片面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を介して熱融着性樹脂フィルム3を接着する際には、特に限定されるものではないが、例えば、サンドイッチラミネート法等を用いて行うのがよい。
【0043】
上記第3、4、7、8の製造方法において、内側層形成工程で、金属箔4の片面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせて該押出樹脂膜からなる熱融着性樹脂層3を形成する際には、特に限定されるものではないが、例えば、シングルラミネート法、タンデムラミネート法等を用いて行うのがよい。
【0044】
本発明に係る第1~8の製造方法により得られた包装材1は、例えば、リチウムイオン2次電池等の電池用外装材として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。前記包装材1は、成形を施されることなくそのまま包装材1として使用されてもよいし(
図7参照)、例えば、深絞り成形、張り出し成形等の成形に供されて成形ケース10として使用されてもよい(
図7参照)。
【0045】
本発明において、前記基材層(外側層)2は、包装材1として良好な成形性を確保する役割を主に担う部材である、即ち成形時のアルミニウム箔のネッキングによる破断を防止する役割を主に担うものである。
【0046】
第1~4の製造方法において、前記基材層用樹脂フィルム2は、耐熱性樹脂フィルムで形成されているのが好ましい。前記耐熱性樹脂フィルム2を構成する耐熱性樹脂としては、包装材1をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層3を構成する熱融着性樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、熱融着性樹脂の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0047】
前記耐熱性樹脂フィルム2としては、特に限定されるものではないが、例えば、延伸ナイロンフィルム等の延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリエステルフィルム等が挙げられる。中でも、前記耐熱性樹脂フィルム2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが好ましい。また、前記耐熱性樹脂フィルム2としては、同時2軸延伸法により延伸された耐熱性樹脂2軸延伸フィルムを用いるのが好ましい。前記ナイロンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロン、6,6ナイロン、MXDナイロン等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂フィルム2は、単層(単一の延伸フィルム)で形成されていても良いし、或いは、例えば延伸ポリエステルフィルム/延伸ポリアミドフィルムからなる複層(延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0048】
第1~4の製造方法において、前記耐熱性樹脂フィルム2は、熱水収縮率が1.5%~12%の耐熱性樹脂フィルムにより構成されているのが好ましい。熱水収縮率が1.5%以上であることで成形時の割れやクラックの発生をより防止できるし、熱水収縮率が12%以下であることで外側層2と金属箔層4の間のデラミネーション(剥離)の発生をより防止できる。中でも、前記耐熱性樹脂フィルム2として、熱水収縮率が1.8~11%の耐熱性樹脂フィルムを用いるのがより好ましい。更に、熱水収縮率が1.8%~6%の耐熱性樹脂フィルムを用いるのがさらに好ましい。前記耐熱性樹脂フィルムとしては、耐熱性樹脂延伸フィルムを用いるのが好ましい。
【0049】
なお、前記「熱水収縮率」とは、耐熱性樹脂延伸フィルムの試験片(10cm×10cm)を95℃の熱水中に30分間浸漬した際の浸漬前後の試験片の延伸方向における寸法変化率であり、次式で求められる。
【0050】
熱水収縮率(%)={(X-Y)/X}×100
X:浸漬処理前の延伸方向の寸法
Y:浸漬処理後の延伸方向の寸法。
【0051】
なお、2軸延伸フィルムを採用する場合におけるその熱水収縮率は、2つの延伸方向における寸法変化率の平均値である。
【0052】
前記耐熱性樹脂延伸フィルムの熱水収縮率は、例えば、延伸加工時の熱固定温度を調整することにより制御することができる。
【0053】
第1~4の製造方法では、金属箔4の片面に電子線硬化性樹脂組成物を介して基材層用樹脂フィルム2を接着するが、前記電子線硬化性樹脂組成物としては、以下の構成のものを使用する。また、第5~8の製造方法では、金属箔4の片面に電子線硬化性樹脂組成物を塗布して電子線を照射することによって、金属箔4の片面に電子線硬化性樹脂組成物の硬化膜からなる基材層(外側層)2を積層するが、該電子線硬化性樹脂組成物としては、以下の構成のものを使用する。
【0054】
即ち、本発明に係る第1~8の製造方法において、前記電子線硬化性樹脂組成物は、重合性オリゴマーおよび電子線重合開始剤を含有する組成物であり、中でも、重合性オリゴマー、重合性モノマーおよび電子線重合開始剤を含有する組成物であるのが好ましい。前記電子線硬化性樹脂組成物は、いずれも、ラジカル重合系樹脂組成物であってもよいし、カチオン重合系樹脂組成物であってもよいし、ラジカル重合及びカチオン重合系樹脂組成物(ラジカル重合系とカチオン重合系が混在しているもの)であってもよく、特に限定されない。中でも、前記電子線硬化性樹脂組成物として、アクリル系紫外線硬化性樹脂組成物を用いるのが好ましい。
【0055】
前記重合性オリゴマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー等のラジカル重合型のオリゴマー、ビニルエーテルオリゴマー、脂環式エポキシオリゴマー(樹脂)等のカチオン重合型のオリゴマー等が挙げられる。
【0056】
前記電子線重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等が挙げられる。前記光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインアルキルエーテル(ベンゾエチルエーテル、ベンゾブチルエーテル等)、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノン、チオキサントン等が挙げられる。
【0057】
前記光カチオン重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、オニウム塩等が挙げられる。前記オニウム塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、ジアゾニウム塩、クロロニウム塩等が挙げられる。
【0058】
前記スルホニウム塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロホスフェート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロホスフェート、4-(p-ter-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロアンチモネート、4-(p-ter-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムブロミド等が挙げられる。
【0059】
前記ヨードニウム塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0060】
また、前記重合性モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリレートモノマー、ビニルエーテルモノマー等が挙げられる。前記アクリレートモノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、リン酸含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記リン酸含有(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等のモノマーが挙げられる。
【0061】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)等が挙げられる。
【0062】
前記電子線硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤、酸無水物、増感剤、各種添加剤等を含有せしめてもよい。
【0063】
前記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、前記シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等の炭素-炭素二重結合を有するシランカップリング剤を用いるのが好ましく、この場合には特にラジカル重合反応を利用する接着剤との結合を強化させることができる。
【0064】
前記酸無水物としては、特に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸、メチル無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ハイミック酸、無水メチルハイミック酸等が挙げられる。中でも、前記酸無水物としては、無水マレイン酸等の炭素-炭素二重結合を有する酸無水物を用いるのが好ましく、このような二重結合を有する酸無水物によりラジカル重合反応をより促進させることができる。
【0065】
前記増感剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、3級アミン等が挙げられる。前記3級アミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N,3,5-テトラメチルアニリン等が挙げられる。
【0066】
前記電子線硬化性樹脂組成物において前記重合性モノマーの含有率は、0.01質量%~5質量%であるのが好ましい。また、前記電子線硬化性樹脂組成物において前記重合性オリゴマーの含有率は、85質量%~99質量%であるのが好ましい。また、また、前記電子線硬化性樹脂組成物において前記電子線重合開始剤の含有率が0.1質量%~10質量%であるのが好ましい。
【0067】
第1~4の製造方法において、金属箔4又は基材層用樹脂フィルム2に電子線硬化性樹脂組成物を塗布する手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラビアロール塗工法、スクリーン塗工法、インクジェット方式による塗工、ダイ塗工等が挙げられ、塗工する材料(電子線硬化性樹脂組成物)に応じて最適な塗工法を選択するのがよい。この時、金属箔4に電子線硬化性樹脂組成物を塗布してもよいし、基材層用樹脂フィルム2に電子線硬化性樹脂組成物を塗布してもよいし、或いは金属箔4及び基材層用樹脂フィルム2の両方に電子線硬化性樹脂組成物を塗布してもよい。また、本発明に係る第5~8の製造方法において、金属箔4に電子線硬化性樹脂組成物を塗布する手法としては、特に限定されるものではないが、上記例示したものと同様の手法を挙げることができる。
【0068】
第1~4の製造方法において、得られる包装材1の外側接着剤層(第1接着剤層)5の厚さ(乾燥後の厚さ)は、1μm~6μmに設定されるのが好ましい。
【0069】
本発明において、前記基材層2の厚さは、10μm~50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで包装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0070】
本発明において、前記金属箔層(金属箔)4は、包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔、SUS箔(ステンレス箔)、ニッケル箔、チタン箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。前記金属箔4の厚さは、10μm~200μmであるのが好ましい。10μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、200μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記金属箔4の厚さは、20μm~100μmであるのが特に好ましい。
【0071】
前記金属箔4は、少なくとも内側の面(内側層3側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることで内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0072】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2が好ましい。
【0073】
本発明において、前記熱融着性樹脂層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液等に対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、包装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0074】
第1、2、5、6の製造方法では、金属箔4の片面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜(内側接着剤6)を介して熱融着性樹脂フィルム3を接着するが、該熱融着性樹脂フィルムおよび前記押出溶融樹脂膜を構成する樹脂としては、以下のものを使用する。また、第3、4、7、8の製造方法では、金属箔4の片面に、押出機から押し出された押出溶融樹脂膜を重ね合わせることによって、前記金属箔4の片面に該押出樹脂膜からなる熱融着性樹脂層(内側層)3を積層するが、前記押出溶融樹脂膜を構成する樹脂としては、以下のものを使用する。
【0075】
即ち、第1、2、5、6の製造方法において、前記熱融着性樹脂フィルム3を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレンアクリル酸エチル(EEA)、エチレンアクリル酸メチル(EAA)、エチレンメタクリル酸メチル樹脂(EMMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、前記熱融着性樹脂フィルム3は、熱融着性樹脂無延伸フィルムで形成されているのが好ましい。
【0076】
また、前記押出溶融樹脂膜を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。中でも、第3、4、7、8の製造方法では、前記押出溶融樹脂膜を構成する樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等の熱融着性樹脂を用いるのが望ましい。
【0077】
第1、2、5、6の製造方法において、サンドイッチラミネート法等により金属箔4と熱融着性樹脂フィルム3の間に挟み込む直前(接触する直前)の押出溶融樹脂膜の厚さは、特に限定されないが、5μm~40μmに設定するのが好ましい。また、第1、2、5、6の製造方法において、得られる包装材1の内側接着剤層(第2接着剤層)6の厚さ(乾燥後の厚さ)は、5μm~40μmに設定されるのが好ましい。
【0078】
本発明において、前記熱融着性樹脂層(内側層)3の厚さは、20μm~100μmに設定されるのが好ましい。20μm以上とすることで十分なヒートシール強度を確保できるとともに、100μm以下に設定することで薄膜化、軽量化に資する。前記熱融着性樹脂層3は、単層であっても良いし、複層であっても良い。前記熱融着性樹脂層3が複層で形成される場合には、該熱融着性樹脂層3の最内層が、エチレン-プロピレンランダム共重合体または/およびプロピレンブロック共重合体(エラストマー変性プロピレン樹脂)で形成されているのが好ましく、このような構成を採用することで熱融着後(ヒートシール後)のシール特性を向上できる(高いヒートシール強度等が得られる)。
【0079】
本発明の製造方法において、前記電子線としては、例えば、紫外光、可視光、X線、γ線等が挙げられる。前記紫外光、可視光を照射する場合において、その照射光量は、特に限定されるものではないが、片面あたり50mJ/cm2~1000mJ/cm2に設定するのが好ましい。
【0080】
本発明の製造方法で得られた包装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、外装ケース(蓄電デバイス用外装ケース等)10を得ることができる(
図7参照)。なお、本発明の製造方法で得られた包装材1は、成形に供されずにそのまま使用することもできる(
図7参照)。
【0081】
本発明の製造方法で得られた包装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を
図6に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、
図6、7に示すように、包装材1を成形して得られたケース10と、成形に供されなかった平面状の包装材1とにより、包装部材15が構成されている。しかして、本発明の製造方法で得られた包装材1を成形して得られた成形ケース10の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に、本発明の製造方法で得られた包装材1が成形されることなくその内側層3側を内方(下側)にして配置され、該平面状包装材1の内側層3の周縁部と、前記成形ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29の内側層3とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の蓄電デバイス30が構成されている(
図6、
図7参照)。なお、前記成形ケース10の収容凹部の内側の表面は、内側層(熱融着性樹脂層)3になっており、収容凹部の外面が外側層(基材層)2になっている(
図7参照)。
【0082】
図6において、39は、前記包装材1の周縁部と、前記成形ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29とが接合(融着)されたヒートシール部である。なお、前記蓄電デバイス30において、蓄電デバイス本体部31に接続されたタブリードの先端部が、包装部材15の外部に導出されているが、図示は省略している。
【0083】
前記蓄電デバイス本体部31としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0084】
前記ヒートシール部39の幅は、0.5mm以上に設定するのが好ましい。0.5mm以上とすることで封止を確実に行うことができる。中でも、前記ヒートシール部39の幅は、3mm~15mmに設定するのが好ましい。
【0085】
上記実施形態では、包装部材15が、包装材1を成形して得られた成形ケース10と、平面状の包装材1と、からなる構成であったが(
図6、7参照)、特にこのような組み合わせに限定されるものではなく、例えば、包装部材15が、一対の包装材1からなる構成であってもよいし、或いは、一対の成形ケース10からなる構成であってもよい。
【実施例0086】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0087】
<実施例1>
厚さ40μmのアルミニウム箔(JIS H4160に規定されるA8021H-Oのアルミニウム箔)4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は、片面当たり10mg/m2であった。
【0088】
次に、
図1に示すように、供給ロール51から供給されてきた前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、押出機40から押し出された厚さ15μmの押出溶融マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)47を介して、供給ロール52から供給されてきた厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂フィルム)3を貼り合わせた後、一対のロール41、41間で挟圧することにより(サンドイッチラミネート法により)、第1積層体48を得た(内側層形成工程)。
【0089】
次いで、
図1に示すように、前記内側層形成工程に連続して(連続工程で)、第1積層体48の金属箔4の他方の面に、アクリロイル基を2つ有するウレタンアクリレートオリゴマー(重合性オリゴマー)94質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(重合性モノマー)1質量部およびベンゾフェノン(光ラジカル重合開始剤)5質量部を含有する光硬化性樹脂組成物A(電子線硬化性樹脂組成物)44を乾燥後の質量が2.0g/m
2になるように塗布ロール42で塗布した後、該塗布面に、供給ロール53から供給されてきた熱水収縮率が5.0%であり、厚さ25μmの2軸延伸ナイロンフィルム(基材層用樹脂フィルム)2を貼り合わせた後、一対のロール45、45間で挟圧することにより、第2積層体49を得、該第2積層体49に対して基材層用樹脂フィルム2側から100mJ/cm
2の紫外光(UV光;波長365nm)46を照射することによって(外側層形成工程)、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。なお、
図1において、43は、電子線硬化性樹脂組成物含有槽(容器)である。
【0090】
<実施例2>
実施例1と同様にして化成処理済みアルミニウム箔を得た。次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、押出機から押し出された厚さ55μmの押出溶融マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)を重ね合わせた後、冷却ロールと常温ロール間で冷却及び挟圧することにより(シングルラミネート法により)、アルミニウム箔の一方の面にマレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる厚さ55μmの熱融着性樹脂層3が積層された第1積層体を得た(内側層形成工程)。
【0091】
次に、前記内側層形成工程に連続して(連続工程で)、第1積層体の金属箔4の他方の面に、アクリロイル基を2つ有するウレタンアクリレートオリゴマー(重合性オリゴマー)94質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(重合性モノマー)1質量部およびベンゾフェノン(光重合開始剤)5質量部を含有する光硬化性樹脂組成物A(電子線硬化性樹脂組成物)を乾燥後の質量が2.0g/m
2になるように塗布ロールで塗布した後、該塗布面に、熱水収縮率が5.0%であり、厚さ25μmの2軸延伸ナイロンフィルム(基材層用樹脂フィルム)2を貼り合わせた後、一対のロール間で挟圧することにより、第2積層体を得、しかる後、前記第2積層体に対して基材層用樹脂フィルム側から100mJ/cm
2の紫外光(UV光;波長365nm)を照射することによって(外側層形成工程)、
図3に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0092】
<実施例3>
実施例1と同様にして化成処理済みアルミニウム箔を得た。次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、実施例1と同一の光硬化性樹脂組成物A(電子線硬化性樹脂組成物)を乾燥後の質量が2.0g/m2になるように塗布した後、該塗布面に、熱水収縮率が5.0%であり、厚さ25μmの2軸延伸ナイロンフィルム(基材層用樹脂フィルム)2を貼り合わせた後、一対のロール間で挟圧することにより、第1積層体を得、しかる後、前記第1積層体に対して基材層用樹脂フィルム側から100mJ/cm2の紫外光(波長365nm;電子線)を照射した(外側層形成工程)。
【0093】
次に、前記外側層形成工程に連続して(連続工程で)、前記電子線照射後の第1積層体のアルミニウム箔4の他方の面に、押出機から押し出された厚さ15μmの押出溶融マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)を介して、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂フィルム)3を貼り合わせた後、一対のロール間で挟圧することにより(サンドイッチラミネート法により)(内側層形成工程)、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0094】
<実施例4>
実施例1と同様にして化成処理済みアルミニウム箔を得た。次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、実施例1と同一の光硬化性樹脂組成物A(電子線硬化性樹脂組成物)を乾燥後の質量が2.0g/m2になるように塗布した後、該塗布面に、熱水収縮率が5.0%であり、厚さ25μmの2軸延伸ナイロンフィルム(基材層用樹脂フィルム)2を貼り合わせた後、一対のロール間で挟圧することにより、第1積層体を得、しかる後、前記第1積層体に対して基材層用樹脂フィルム側から100mJ/cm2の紫外光(波長365nm;電子線)を照射した(外側層形成工程)。
【0095】
次に、前記外側層形成工程に連続して(連続工程で)、前記電子線照射後の第1積層体のアルミニウム箔4の他方の面に、押出機から押し出された厚さ55μmの押出溶融マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)を重ね合わせた後、冷却ロールと常温ロール間で冷却及び挟圧することにより(シングルラミネート法により)、アルミニウム箔4の他方の面にマレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる厚さ55μmの熱融着性樹脂層3を積層して(内側層形成工程)、
図3に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0096】
<実施例5>
実施例1と同様にして化成処理済みアルミニウム箔を得た。次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、押出機から押し出された厚さ15μmの押出溶融マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)を介して、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂フィルム)3を貼り合わせた後、一対のロール間で挟圧することにより(サンドイッチラミネート法により)、第1積層体を得た(内側層形成工程)。
【0097】
前記内側層形成工程に連続して(連続工程で)、第1積層体の金属箔4の他方の面に、実施例1と同一の光硬化性樹脂組成物A(電子線硬化性樹脂組成物)を乾燥後の質量が10g/m
2になるように塗布することにより、第2積層体を得た後、該第2積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から100mJ/cm
2の紫外光(波長365nm;電子線)を照射することによって(外側層形成工程)、
図4に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0098】
<実施例6>
実施例1と同様にして化成処理済みアルミニウム箔を得た。次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、押出機から押し出された厚さ55μmの押出溶融マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)を重ね合わせた後、冷却ロールと常温ロール間で冷却及び挟圧することにより(シングルラミネート法により)、アルミニウム箔4の一方の面にマレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる厚さ55μmの熱融着性樹脂層3が積層された第1積層体を得た(内側層形成工程)。
【0099】
前記内側層形成工程に連続して(連続工程で)、前記第1積層体の金属箔4の他方の面に、実施例1と同一の光硬化性樹脂組成物A(電子線硬化性樹脂組成物)を乾燥後の質量が10g/m
2になるように塗布することにより、第2積層体を得た後、該第2積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から100mJ/cm
2の紫外光(波長365nm;電子線)を照射することによって(外側層形成工程)、
図5に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0100】
<実施例7>
実施例1と同様にして化成処理済みアルミニウム箔を得た。次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、実施例1と同一の光硬化性樹脂組成物A(電子線硬化性樹脂組成物)を乾燥後の質量が10g/m2になるように塗布することにより、第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から100mJ/cm2の紫外光(波長365nm;電子線)を照射した(外側層形成工程)。
【0101】
前記外側層形成工程に連続して(連続工程で)、前記電子線照射後の第1積層体の金属箔4の他方の面に、押出機から押し出された厚さ15μmの押出溶融マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)を介して、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂フィルム)3を貼り合わせた後、一対のロール間で挟圧することにより(サンドイッチラミネート法により)(内側層形成工程)、
図4に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0102】
<実施例8>
実施例1と同様にして化成処理済みアルミニウム箔を得た。次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、実施例1と同一の光硬化性樹脂組成物A(電子線硬化性樹脂組成物)を乾燥後の質量が10g/m2になるように塗布することにより、第1積層体を得た後、該第1積層体に対して前記電子線硬化性樹脂組成物側から100mJ/cm2の紫外光(波長365nm;電子線)を照射した(外側層形成工程)。
【0103】
前記外側層形成工程に連続して(連続工程で)、前記電子線照射後の第1積層体の金属箔4の他方の面に、押出機から押し出された厚さ55μmの押出溶融マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)を重ね合わせた後、冷却ロールと常温ロール間で冷却及び挟圧することにより(シングルラミネート法により)、アルミニウム箔4の他方の面にマレイン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる厚さ55μmの熱融着性樹脂層3を積層して(内側層形成工程)、
図5に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0104】
<実施例9>
光硬化性樹脂組成物(電子線硬化性樹脂組成物)44として、光硬化性樹脂組成物Aに代えて、ビニル基を2つ有するビニルエーテルオリゴマー(重合性オリゴマー)96.0質量部、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(重合性モノマー)3.0質量部およびトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(スルホニウム塩;光カチオン重合開始剤)1.0質量部を含有する光硬化性樹脂組成物Bを使用した以外は、実施例1と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0105】
<実施例10>
光硬化性樹脂組成物(電子線硬化性樹脂組成物)として、光硬化性樹脂組成物Aに代えて、実施例9で使用した光硬化性樹脂組成物Bを使用した以外は、実施例2と同様にして、
図3に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0106】
<実施例11>
光硬化性樹脂組成物(電子線硬化性樹脂組成物)として、光硬化性樹脂組成物Aに代えて、実施例9で使用した光硬化性樹脂組成物Bを使用した以外は、実施例5と同様にして、
図4に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0107】
<実施例12>
光硬化性樹脂組成物(電子線硬化性樹脂組成物)として、光硬化性樹脂組成物Aに代えて、実施例9で使用した光硬化性樹脂組成物Bを使用した以外は、実施例6と同様にして、
図5に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0108】
<実施例13>
照射光(電子線)として、100mJ/cm
2の紫外光に代えて、250mJ/cm
2の紫外光を用いた以外は、実施例1と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0109】
<実施例14>
照射光(電子線)として、100mJ/cm
2の紫外光に代えて、500mJ/cm
2の紫外光を用いた以外は、実施例1と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0110】
<実施例15>
実施例2の内側層形成工程において、化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、第1押出機から押し出された厚さ10μmの押出溶融マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)を重ね合わせた後、冷却ロールと常温ロール間で冷却及び挟圧した後、該樹脂膜の上にさらに、第2押出機から押し出された厚さ45μmの押出溶融ポリプロピレン樹脂膜(押出溶融樹脂膜)を重ね合わせた後、冷却ロールと常温ロール間で冷却及び挟圧することにより(タンデムラミネート法により)、アルミニウム箔の一方の面に総厚さ55μmの熱融着性樹脂層3が積層された第1積層体を得た以外は、実施例2と同様にして
図3に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0111】
<参考例>
実施例1と同様にして化成処理済みアルミニウム箔を得た。次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、ウレタン系接着剤(外側接着剤)5を乾燥後の厚さが2μmになるように塗布した後、該外側接着剤塗布面に、熱水収縮率が5.0%であり、厚さが25μmの2軸延伸ナイロンフィルム2を重ね合わせて貼り合わせて第1積層体を得た。前記第1積層体を60℃環境下に7日間静置して加熱エージング処理を行うことにより、外側接着剤を硬化させて外側接着剤層を形成した。
【0112】
次に、前記第1積層体のアルミニウム箔4の他方の面に、熱硬化型酸変性ポリプロピレン接着剤からなる内側接着剤6を乾燥後の質量が2.0g/m2になるように塗布した後、該内側接着剤塗布面に、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム3を貼り合わせることによって、第2積層体を得た。
【0113】
前記第2積層体を40℃環境下に7日間静置して加熱エージング処理を行うことにより、内側接着剤を硬化させて内側接着剤層6を形成することによって、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
【0114】
なお、実施例1~4、9、10、13、14、15および参考例において、前記熱水収縮率が5.0%の2軸延伸ナイロンフィルムは、ナイロンフィルムを2軸延伸加工する際の熱固定温度を191℃に設定することにより得たものである。
【0115】
【0116】
【0117】
なお、表1、2において、光硬化性樹脂組成物の種類の欄で、「A」は光ラジカル重合系樹脂組成物を示し、「B」は光カチオン重合系樹脂組成物を示す。
【0118】
また、実施例1、9、13、14は、上記第1の製造方法に対応する実施例であり、実施例2、10、15は、上記第3の製造方法に対応する実施例であり、実施例3は上記第2の製造方法に対応する実施例であり、実施例4は上記第4の製造方法に対応する実施例であり、実施例5、11は、上記第5の製造方法に対応する実施例であり、実施例6、12は、上記第7の製造方法に対応する実施例であり、実施例7は第6の製造方法に対応する実施例であり、実施例8は上記第8の製造方法に対応する実施例である。
【0119】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材(包装材)について、下記測定法、評価法に基づいて評価を行った。
【0120】
<高温でのラミネート強度測定法>
得られた外装材から幅15mm×長さ150mmの試験体を切り出し、この試験体の長さ方向の一端から10mm内方に入った位置までの領域においてアルミニウム箔と基材層の間で剥離せしめた。
【0121】
JIS K6854-3(1999年)に準拠し、島津製作所製ストログラフ(AGS-5kNX)を使用して,一方のチャックでアルミニウム箔を含む積層体を挟着固定し、他方のチャックで前記剥離した基材層を挟着固定し、120℃の温度環境下で1分間保持した後、そのまま120℃温度環境下で引張速度100mm/分でT型剥離させた時の剥離強度を測定し、この測定値が安定したところの値を「高温でのラミネート強度(N/15mm幅)」とした。ラミネート強度が「2.0N/15mm幅」以上であるものを合格とした。
【0122】
<成形性(最大成形深さ)評価法>
株式会社アマダ製の深絞り成形具を用いて外装材に対して縦55mm×横35mm×各深さの略直方体形状(1つの面が開放された略直方体形状;
図7参照)に深絞り成形を行い、即ち成形深さを0.5mm単位で変えて深絞り成形を行い、得られた成形体におけるコーナー部におけるピンホール及び割れの有無を調べ、このようなピンホール及び割れが発生しない「最大成形深さ(mm)」を調べた。なお、ピンホールや割れの有無は、暗室にて光透過法で調べた。最大成形深さが5.0mm以上であるものを合格とした。
【0123】
<シール性評価法>(成形深さの深い成形を行った場合のデラミネーション発生の有無の評価)
成形深さの深い成形として、上記深絞り成形具を用いて外装材に対して縦55mm×横35mm×5.0mmの略直方体形状(1つの面が開放された略直方体形状;
図7参照)に深絞り成形を行った。この時、基材層2が成形体の外側になるように成形を行った。各実施例、各比較例毎にそれぞれ2個の成形体を作製し、2個の成形体(成形ケース)10のフランジ部(封止用周縁部;
図7参照)29同士を接触させて重ね合わせて170℃×6秒間ヒートシールを行った後、目視観察によりヒートシール部39におけるデラミネーション(剥離)発生の有無および外観の浮きの有無を調べ下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「○」…デラミネーション(剥離)が認められず、且つ外観の浮きも認められなかった(合格)
「△」…僅かなデラミネーション(剥離)が稀に発生することがあるが、実質的にはデラミネーション(剥離)が無く、且つ外観の浮きもなかった(合格)
「×」…デラミネーション(剥離)が発生しており、外観の浮きもあった(不合格)。
【0124】
<耐熱水性評価法>(高温多湿等の苛酷な環境下で使用した場合のデラミネーション発生の有無の評価)
上記深絞り成形具を用いて外装材に対して深絞り成形を行うことにより、縦55mm×横35mm×5mmの略直方体形状(1つの面が開放された略直方体形状;
図7参照)に成形した。この時、外側層(基材層)2が成形体の外側になるように成形を行った。各実施例、各比較例毎にそれぞれ2個の成形体を作製し、2個の成形体10のフランジ部(封止用周縁部;
図7参照)29同士を接触させて重ね合わせて170℃×6秒間ヒートシールを行い、次にヒートシール物を85℃の熱水中に240時間浸漬した後、取り出して、目視観察によりヒートシール部39におけるデラミネーション(剥離)発生の有無および外観の浮きの有無を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「○」…デラミネーション(剥離)が認められず、且つ外観の浮きも認められなかった(合格)
「△」…僅かなデラミネーション(剥離)が稀に発生することがあるが、実質的にはデラミネーション(剥離)が無く、且つ外観の浮きもなかった(合格)
「×」…デラミネーション(剥離)が発生しており、外観の浮きもあった(不合格)。
【0125】
<ヒートシール強度測定法>
得られた外装材から幅15mm×長さ200mmの試験体を2枚切り出した後、これら2枚の試験体を互いの内側シーラント層同士で接触するように重ね合わせた状態で、テスター産業株式会社製のヒートシール装置(TP-701-A)を用いて、ヒートシール温度:200℃、シール圧:0.2MPa(ゲージ表示圧)、シール時間:2秒の条件にて片面加熱によりヒートシールを行った。
【0126】
次に、上記のようにして内側シーラント層同士がヒートシール接合された一対の外装材について、JIS K7127-1998に準拠して、島津アクセス社製ストログラフ(引張試験装置)(AGS-5kNX)を使用して該外装材(試験体)をシール部分の内側シーラント層同士で引張速度100mm/分で180度剥離させた時の剥離強度を測定し、これをヒートシール強度(N/15mm幅)とした。ヒートシール強度が50N/15mm幅以上であるものを合格とする。
【0127】
表から明らかなように、本発明の製造方法を適用した実施例1~15では、数日間の加熱エージングを必要とする熱硬化性樹脂を使用せずに、「電子線硬化性樹脂組成物の電子線硬化を用いた接着又は電子線硬化性樹脂組成物の電子線硬化による基材層の形成」および「押出溶融樹脂膜を用いた接着又は押出溶融樹脂膜を用いた熱融着性樹脂層の形成」を行っているので、リードタイムを大幅に短縮できて生産性を向上できると共に、本発明の製造方法で得られた実施例1~15の包装材(蓄電デバイス用外装材)は、成形深さの深い成形を行ってもピンホールやクラックが発生せず優れた成形性を備え、成形深さの深い成形を行ってもデラミネーション(剥離)を抑制できる。
【0128】
また、本発明の製造方法を適用した実施例1~15と、参考例との対比から明らかなように、本発明の製造方法で得られた実施例1~15の包装材(蓄電デバイス用外装材)は、従来の熱硬化性樹脂を接着剤として使用した参考例の包装材と同等程度の性能が得られている。