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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022070970
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】変位補償を有するツールセット
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/02 20060101AFI20220506BHJP
   B22F 3/035 20060101ALI20220506BHJP
   B30B 11/02 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B22F3/02 G
B22F3/035 D
B30B11/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021742
(22)【出願日】2022-02-16
(62)【分割の表示】P 2019563688の分割
【原出願日】2018-02-08
(31)【優先権主張番号】62/456,495
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515056277
【氏名又は名称】ゲーカーエン シンター メタルズ エンジニアリング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト エーバーハルト
(72)【発明者】
【氏名】クーパー ドナルド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】テキネス ハッシム
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー グイドー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ライナー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】部品を成形するツールの表面上の位置がプレスの負荷を取り除くと様々に歪み、プリフォームに亀裂が形成される。それを回避するための、プレス用の改善されたツール及びダイセット、ならびにそれらの使用方法を提供する。
【解決手段】粉末金属をプリフォームに圧縮するためのプレスでのツール及びダイセット及び関連するツール及びダイセットの使用方法は、少なくとも2つの下部又は上部ツール部材の不均一な位置変位を伴い、荷重下での非対称の弾性応答が圧縮荷重が除去された後の部品の割れを軽減する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスでツール及びダイセットを使用する方法であって、該ツール及びダイセットは、中に形成されたダイキャビティ(26)が上面(22)から底面(24)へ延在するダイ(14)と、前記ダイ(14)の底面(24)から前記ダイキャビティ(26)に収容可能な下部ツールセット(18)の少なくとも1つの下部ツール部材と、前記ダイ(14)の上面(22)からダイキャビティ(26)に収容可能な上部ツールセット(16)の少なくとも1つの上部ツール部材と、を備え、方法が、
前記ダイキャビティ(26)を粉末金属(124)で充填し、
前記ダイ(14)の上面(22)から前記ダイキャビティ(26)内に前記少なくとも1つの上部ツール部材を降下させ、
前記ダイ(14)、前記下部ツールセット(18)、及び前記上部ツールセット(16)を駆動して、前記少なくとも1つの下部ツール部材の上面及び前記少なくとも1つの上部ツール部材の底面を対向させ、前記少なくとも1つの下部ツール部材、及び前記少なくとも1つの上部ツール部材が圧縮荷重の下でプリフォームの形状を集合的に画定する各位置にプレスして、圧縮荷重を加えることによりダイキャビティ(26)内の粉末金属(124)を圧縮し、
前記少なくとも1つの上部ツール部材を前記ダイ(14)から持ち上げることにより、圧縮力を除去し上部ツールセット(16)及び下部ツールセット(18)を弛緩させ、
前記少なくとも1つの上部ツール部材及び前記少なくとも1つの下部ツール部材の少なくとも1つは、複数のツール部材を含み、複数のツール部材の第1のツール部材が、該第1のツール部材の第1のプリフォーム接触表面の第1の量の位置変位をもたらす圧縮荷重の下で第1の弾性応答を有し、複数のツール部材の第2のツール部材が、前記第2のツール部材の第2のプリフォーム接触表面の第2の量の位置変位をもたらす圧縮荷重の下で第2の弾性応答を有し、第1の量の位置変位が第2の量の位置変位より大きく、
前記第1のツール部材及び前記第2のツール部材は、前記少なくとも1つの下部ツール部材に含まれ、
前記粉末金属(124)を圧縮するステップ中に、前記第1のツール部材の第1の上面が、圧縮荷重の下で前記ダイ(14)の上面(22)に対して前記第2のツール部材の第2の上面よりも低く前記ダイキャビティ(26)内に配置し、圧縮荷重が解放される前記第1のツール部材は前記第1の量の位置変位を弛緩し、前記第2のツール部材は前記第2の量の位置変位を弛緩して弛緩の際に前記第2のツール部材は前記プリフォームに力を加えず、
前記プリフォームが高さの異なる複数のセクションを含み、該複数のセクションのうちの高さの高いセクションが前記第1のツール部材に対応して、高さの低いセクションが前記第2のツール部材に対応してそれぞれ成形され、
前記プリフォーム上の前記第2のツール部材の前記第2のプリフォーム接触表面とは別の前記少なくとも1つの下部ツール部材の何れの下方のプリフォーム接触表面が圧縮荷重の解放で前記第2のツール部材の前記第2のプリフォーム接触表面よりも大きく変位する状態で、圧縮荷重が解放されると、前記第2のツール部材と前記第2のツール部材で成形されるセクションとの間に隙間が形成され、その結果、前記プリフォームが前記第2のツール部材から部分的に剥がれる、
ツール及びダイセットを使用する方法。
【請求項2】
前記第1の量の位置変位は、前記第2の量の位置変位よりも0.02mm~0.2mm大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のツール部材が第3のツール部材をさらに含み、該第3のツール部材に第3の量の位置変位をもたらす圧縮荷重の下で該第3のツール部材が第3の弾性応答を有し、前記第3の量の位置変位が前記第1の量の位置変位及び前記第2の量の位置変位とは異なる、請求項1~2の何れか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のツール部材が第3のツール部材をさらに含み、該第3のツール部材に第3の量の位置変位をもたらす圧縮荷重の下で該第3のツール部材が第3の弾性応答を有し、前記第3の量の位置変位が前記第1の量の位置変位及び前記第2の量の位置変位の1つと同じである、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記下部ツールセット(18)は、前記第1のツール部材を支持する第1のアダプタ、及び前記第2のツール部材を支持する第2のアダプタを含み、前記第1のアダプタは前記第1のツール部材の前記第1の量の位置変位を少なくとも部分的に占め、前記第2のアダプタは前記第2のツール部材の前記第2の量の位置変位を少なくとも部分的に占める、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの上部ツール部材及び前記少なくとも1つの下部ツール部材のうちの少なくとも一方における少なくとも2つのツール部材が、圧縮荷重に対して非対称の弾性応答を有する、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの下部ツール部材の上面を前記ダイ(14)の上面(22)と同じ高さに上げることにより、前記プリフォームを前記ダイキャビティ(26)から排出するステップをさらに含む、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
粉末金属(124)をプリフォームに圧縮するプレスで使用するためのツール及びダイセット(10)であって、
中に形成されたダイキャビティ(26)が上面(22)から底面(24)まで延在する、ダイ(14)と、
前記ダイ(14)の底面(24)から前記ダイキャビティ(26)内に収容可能な少なくとも1つの下部ツール部材を含む下部ツールセット(18)と、
前記ダイ(14)の上面(22)から前記ダイキャビティ(26)内に収容可能な少なくとも1つの上部ツール部材を含む上部ツールセット(16)と、を備え、
前記ダイ(14)、前記少なくとも1つの下部ツール部材、及び前記少なくとも1つの上部ツール部材が、前記プレスに受け入れ可能であり、前記少なくとも1つの下部ツール部材及び前記少なくとも1つの上部ツール部材はそれぞれ、前記プレスによって加えられる圧縮荷重の下で前記ダイ(14)、前記少なくとも1つの下部ツール部材、及び前記少なくとも1つの上部ツール部材が前記ダイキャビティ(26)内の前記プリフォームの形状を集合的に画定する位置に移動可能であり、
前記少なくとも1つの上部ツール部材及び前記少なくとも1つの下部ツール部材のうちの少なくとも1つは複数のツール部材を含み、
前記複数のツール部材の第1のツール部材は、圧縮荷重の下で前記第1のツール部材の第1のプリフォーム接触表面の第1の量の位置変位をもたらす第1の弾性応答を有し、
前記複数のツール部材の第2のツール部材は、前記第2のツール部材の第2のプリフォーム接触表面の第2の量の位置変位をもたらす圧縮荷重の下で第2の弾性応答を有し、
前記第1の量の位置変位は、前記第2の量の位置変位とは異なり、
前記第1のツール部材及び前記第2のツール部材は、前記少なくとも1つの下部ツール部材に含まれ、
前記粉末金属(124)を圧縮するステップ中に、前記第1のツール部材の第1の上面が、圧縮荷重の下で前記ダイ(14)の上面(22)に対して前記第2のツール部材の第2の上面よりも低く前記ダイキャビティ(26)内に配置され、圧縮荷重が解放されると、前記第1のツール部材は前記第1の量の位置変位を弛緩し、前記第2のツール部材は前記第2の量の位置変位を弛緩して弛緩の際に前記第2のツール部材は前記プリフォームに力を加えず、
前記プリフォームが高さの異なる複数のセクションを含み、該複数のセクションのうちの高さの高いセクションが前記第1のツール部材に対応して、高さの低いセクションが前記第2のツール部材に対応してそれぞれ成形され、
前記プリフォーム上の前記第2のツール部材の前記第2のプリフォーム接触表面とは別の前記少なくとも1つの下部ツール部材の何れの下方のプリフォーム接触表面が圧縮荷重の解放で前記第2のツール部材の前記第2のプリフォーム接触表面よりも大きく変位する状態で、圧縮荷重が解放されると、前記第2のツール部材と前記第2のツール部材で成形されるセクションとの間に隙間が形成され、その結果、前記プリフォームが前記第2のツール部材から部分的に剥がれる、
ツール及びダイセット(10)。
【請求項9】
前記複数のツール部材は、第3のツール部材をさらに含み、前記第3のツール部材は、圧縮荷重の下で前記第3のツール部材における第3の量の位置変位をもたらす第3の弾性応答を有し、
前記第3の量の位置変位が前記第1の量の位置変位及び前記第2の量の位置変位と異なる、請求項8に記載のツール及びダイセット(10)。
【請求項10】
前記複数のツール部材は、第3のツール部材をさらに含み、前記第3のツール部材は、圧縮荷重の下で該第3のツール部材の第3の量の位置変位をもたらす第3の弾性応答を有し、前記第3の量の位置変位は、前記第1の量の位置変位及び前記第2の量の位置変位の一方と同じである、請求項8又は9に記載のツール及びダイセット(10)。
【請求項11】
前記第1の量の位置変位は、前記第2の量の位置変位よりも0.02mm~0.2mm大きい、請求項8~10の何れか一項に記載のツール及びダイセット(10)。
【請求項12】
前記第1及び第2の量の位置変位の差の結果として、前記第1のツール部材及び前記第2のツール部材の少なくとも一方が前記プリフォームと接触する、請求項8~11のいずれか一項に記載のツール及びダイセット(10)。
【請求項13】
前記下部ツールセットは、前記第1のツール部材を支持する第1のアダプタ及び前記第2のツール部材を支持する第2のアダプタを含み、前記第1のアダプタは前記第1の量の位置変位を少なくとも部分的に占め、前記第2のアダプタは前記第2のツール部材の前記第2の量の位置変位を少なくとも部分的に占める、請求項12に記載のツール及びダイセット(10)。
【請求項14】
前記第1のアダプタ及び前記第2のアダプタの少なくとも一方が積層造形により形成されるか、及び/又は前記第1のアダプタ及び前記第2のアダプタの少なくとも一方が三次元印刷により形成される、請求項13に記載のツール及びダイセット(10)。
【請求項15】
圧縮中、前記第1のツール部材の第1の上面は、圧縮荷重の下、前記ダイ(14)の上面に対して前記第2のツール部材の第2の上面よりも低い位置に前記ダイキャビティ(26)内に配置され、圧縮荷重が解放されると、前記第1のツール部材が第1の量の位置変位を弛緩し、前記第2のツール部材は第2の量の位置変位を弛緩して弛緩時に前記第2のツール部材が亀裂をもたらす力をプリフォームに加えない、請求項12に記載のツール及びダイセット(10)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの上部ツール部材及び前記少なくとも1つの下部ツール部材のうちの少なくとも一方のツール部材の少なくとも2つが、負荷に対して非対称の弾性応答を有する、請求項8~15の何れか一項に記載のツール及びダイセット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
この出願は、2017年2月8日に出願された「変位補償を有するツールセット」という名称の米国仮特許出願第62/456,495号の出願日の権益を主張する。該出願がその全体が本明細書に記載されているかのようにあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発の声明]
適用されない。
【0003】
本開示は、粉末金属部品の圧縮のための改善されたツールセット、及びこれらの改善されたツールセットを使用して粉末金属成形体を製造する関連方法に関する。
【背景技術】
【0004】
金属部品は様々な方法で形成できる。金属部品を製造するこれらの方法の1つが粉末冶金である。粉末金属を部品に成形するための様々な技術が存在するが、多くの部品はプレス及びダイでの粉末金属の単軸圧縮によって形成され、その後、射出及び焼結される。焼結後に部品に対していくつかの2次操作を行うことができるが、焼結後の部品は最終寸法に非常に近いことがよくある。従って、粉末冶金は、正味寸法に近い大量のコンポーネントを生産する経済的な方法を提供する。
【発明の概要】
【0005】
粉末金属部品の製造は表面的に単純そうに見えても、製造ステップをより詳細に検討する際に実際には多くの課題がある。
【0006】
例えば、プレスのツールとダイセットは、通常、ダイキャビティの上部と下部に挿入された複数のツール部材を含み、これらはプレスによって作動して粉末金属をプリフォームに圧縮し、金属プリフォームの排出を実現する。これらのツールは、しばしば別々に移動可能であり、粉末金属プリフォームの異なる表面に係合する。現在の最新技術では、これらの様々なツール部材は同一又はほぼ同一の弾性応答を示す。
【0007】
しかしながら、プリフォームの設計により、多くの場合、少なくともいくつかの様々なツール部材が異なる負荷条件にさらされる。一例として、粉末金属プリフォームは、多くの粉末金属カラムを必要とする形状を有することが多く、そのいくつかは異なる高さを有する。このタイプの形状のプリフォームを圧縮する場合、セクション全体のカラムの高さの違いは、異なるツール部材が異なる荷重及び/又は変位量を経験する可能性があることを意味する。例えば、圧縮中に粉末金属のより高い垂直カラムは、粉末金属の短い方の垂直カラムとは異なる反応をする。これには、粉末がダイ又は別のツール部材の側壁に圧縮される増加表面積を含む多くの理由がある。そのため、背の高いカラムを背の短いカラムの密度とほぼ同じ密度に圧縮するために、ツール部材は背の低いカラムよりも背の高いカラムに多くの圧力をかける必要がある。背の高いカラム―背の短いカラムの例が1つの例として提供されているが、高さベースの要求であるだけでなく、設計上の考慮事項が単に高さよりも複雑であることが多いことを理解されたい。別の例として、特定のカラムを圧縮する方法が側壁の接触量によって変わる。そのため、側壁接触の量が多い第2の特徴部よりも側壁接触の量が少ない第1の特徴部は、第1と第2の特徴部が互いに同じ高さであっても、同じ密度に圧縮するのに必要な圧力が小さくなる。
【0008】
何れにしても、現在の技術水準では、ツール部材が互いに同一又はほぼ同一の弾性応答を有しているにもかかわらず、様々なツール部材の実際の変位が互いに異なる場合がある。ツール部材の差分変位は、複数の上部ツール部材又は複数の下部ツール部材を備えたほぼ全てのツール構成で発生する。
【0009】
とりわけ、このツールの差分変位が意味するのは、粉末金属をプリフォームに圧縮するために加えられた荷重の下で、ツールは全て弾性変形中にある程度の差分変位を示し、その後、荷重が解放されると、ツールはすぐにストレスのない長さに戻る。この同等の弾力性しかし不均等な変位による設計上の1つの予見される結果として、部品を形成するツールの表面上の位置がプレスの負荷を取り除くと様々な程度に歪むことである。多くの場合、荷重が除去された後のこの差分変位は、プリフォームに応力を与えプリフォームに亀裂が形成される。
【0010】
本明細書では、プレス用の改善されたツール及びダイセット並びに関連する使用方法が開示される。改良されたツールとダイセットは、様々なツール部材の非対称の変位を提供して、圧縮荷重が除去されたときのプリフォームの前述の亀裂などの問題を回避する。本出願においてツール部材の弾性応答又は変位を説明するとき、この弾性応答又は変位は、ツール部材の機械的応答又は弾性変形のみに基づくだけでなく、ツール部材をサポートするアダプタなどのそれぞれのツールセットの他のコンポーネントの機械的応答又は弾性変形を含む。
【0011】
一態様によれば、プレスでツール及びダイセットを使用する方法が提供される。ツール及びダイセットは、ダイキャビティが中に形成されるダイと、ダイキャビティはその中でダイの上面から底面に延び、ダイの底面からダイキャビティに収容可能な下部ツールセットの1つ又は複数の下部ツール部材と、ダイの上面からダイキャビティ内に収容可能な上部ツールセットの1つ又は複数の上部ツール部材とを備える。ダイキャビティは、この方法に係る粉末金属で満たされる。次に、上部ツール部材をダイの上面からダイキャビティ内に降ろす。次に、ダイ、下部ツール部材、及び上部ツール部材が圧縮荷重の下でプリフォームの形状を集合的に画定するそれぞれの位置へのプレスによって、下部ツールセット及び上部ツールセットの作動により下部ツール部材と上部ツール部材の上面と底面が対向することで上部ツールセットと下部ツールセットによる圧縮荷重を加えることにより、粉末金属がダイキャビティ内で圧縮される。上部ツール部材がダイから持ち上げられ、それにより圧縮力が除去され、上部ツールセットと下部ツールセットが弛緩される。上部ツール部材及び下部ツール部材の少なくとも一方は、複数のツール部材を含み、複数のツール部材の第1のツール部材が、圧縮荷重の下で第1のツール部材の第1のプリフォーム接触表面の第1の量の位置変位をもたらす第1の弾性応答を有し、複数のツール部材の第2のツール部材が、圧縮荷重の下で第2のツール部材の第2のプリフォーム接触表面の第2の量の位置変位をもたらす第2の弾性応答を有する。第1の量の位置変位は、第2の量の位置変位とは異なる。
【0012】
上部ツール部材の群又は下部ツール部材の群内の少なくとも2つのツール部材は、圧縮荷重に対して非対称の弾性応答を有し得る。
【0013】
プリフォームは複数のセクションを含み、複数のセクションのうちの少なくとも2つは少なくとも1つのツール部材からの少なくとも1つのセクションの部分的な剥離をもたらす異なる高さ及び異なる変位を有する。これらの異なる高さのカラムを適切に形成するために、様々なツール部材によって様々な圧縮荷重が加えられる可能性があり、ツール部材の位置変位が等しくない場合、圧縮力が上げられたときにツールの1つが望ましくなく弛緩し、応力下でのプリフォームの亀裂を誘発する。従って、荷重が取り除かれた後、プリフォームの構造的完全性を維持するのを助けるのに非対称の変位が使用されてもよい。
【0014】
第1の量の位置変位は第2の量の位置変位よりも大きくてもよく、第1の量の位置変位は第2の量の位置変位と0.02mmから0.2mmの間で異なってもよい。
【0015】
複数のツール部材は、第3のツール部材をさらに含むことができ、第3のツール部材は、圧縮荷重の下で第3の弾性応答を有し、その結果、第3のツール部材に第3の量の位置変位をもたらす。この第3の量の位置変位は、第1の量の位置変位及び第2の量の位置変位と異なっていてもよく、又は2つのうちの一方と同じであってもよい。
【0016】
第1のツール部材及び第2のツール部材は、下部ツール部材の群に含まれてもよい。下部ツールセットは、第1のツール部材を支持する第1のアダプタと、第2のツール部材を支持する第2のアダプタとを含み得る。第1のアダプタは、第1のツール部材の第1の量の位置変位を少なくとも部分的に占め、第2のアダプタは、第2のツール部材の第2の量の位置変位を少なくとも部分的に占めてもよい。従って、ツール部材とそれぞれのアダプタは、特定のツール部材の全体的な弾性応答と位置変位を決定してもよい。
【0017】
粉末金属を圧縮するステップの間、第1のツール部材の第1の上面(即ち、第1のプリフォーム接触表面)が、圧縮荷重の下のダイの上面に対する第2のツール部材の第2の上面(即ち、第2のプリフォーム接触表面)よりも下のダイキャビティに位置付けられてもよい。圧縮荷重のリリース時に、第1のツール部材は第1の量の位置変位を弛緩し、第2のツール部材は第2の量の位置変位を弛緩し、その結果、弛緩時に第2のツール部材がプリフォームに力を加えない。
【0018】
この方法は、少なくとも1つの下部ツール部材の上面をダイの上面と同じ高さにすることにより、ダイキャビティからプリフォームを排出するステップをさらに含むことができる。さらに、それらは、第2のツール部材とプリフォームとの間にギャップが生成される程度に弛緩する場合がある。隙間は、例えば、0.02mmから0.2mmであってもよい。
【0019】
別の態様によれば、粉末金属をプリフォームに圧縮するためのプレスで使用するためのツール及びダイセットが提供される。ツールとダイセットには、ダイ、下部ツールセット、上部ツールセットが含まれる。ダイは、ダイ内に形成されたダイキャビティを有し、ダイキャビティは、ダイの上面から底面まで延びている。下部ツールセットは、ダイの底面からダイキャビティに収容可能な1つ又は複数の下部ツール部材を含み、上部ツールセットは、ダイの上面からダイキャビティに収容可能な1つ又は複数の上部ツール部材を含む。ダイ、下部ツールメンバ、及び上部ツールメンバは、プレスに収容され得、下部ツール部材及び上部ツール部材はそれぞれ、ダイ、下部ツール部材、及び上部ツール部材がプレスによる圧縮荷重の下でダイキャビティ内のプリフォームの形状を集合的に画定する位置に移動可能である。上部ツール部材と下部ツール部材の少なくとも一方は複数のツール部材を含む。複数のツール部材のうちの第1のツール部材は、圧縮荷重の下で第1の弾性応答を有し、その結果、第1のツール部材の第1の量の位置変位が生じる。複数のツール部材のうちの第2のツール部材は、圧縮荷重の下で第2の弾性応答を有し、第2のツール部材の第2の量の位置変位をもたらす。第1の量の位置変位は第2の量の位置変位とは異なる。
【0020】
別の言い方をすれば、上部ツール部材と下部ツール部材の少なくとも2つのツール部材は、荷重に対して非対称の弾性応答を持っていてもよい。
【0021】
複数のツール部材は、第3のツール部材をさらに含むことができ、第3のツール部材は、圧縮荷重の下で第3の弾性応答を有し、第3のツール部材に第3の量の位置変位をもたらす。第3の量の位置変位は、第1の量の位置変位及び第2の量の位置変位と異なっていてもよく、又は2つのうちの一方と同じであってもよい。
【0022】
第1の量の位置変位は、第2の量の位置変位より大きくてもよい。いくつかの形態では、第1の量の変位は、第2の量の位置変位と0.02mmから0.2mmの間で異なっていてもよい。
【0023】
第1のツール部材と第2のツール部材の少なくとも一方は、第1と第2の量の位置変位の差の結果としてプリフォームと接触することがある。下部ツールセットは、第1のツール部材を支持する第1のアダプタを含むことができ、第2のツール部材を支持する第2のアダプタをさらに含むことができる。第1のアダプタは、第1のツール部材の第1の量の位置変位を少なくとも部分的に占め、第2のアダプタは、第2のツール部材の第2の量の位置変位を少なくとも部分的に占めてもよい。
【0024】
1つ又は複数のアダプタがある場合、それらのアダプタは、非対称弾性応答を提供するのを助けるよういくつかの方法で形成されてもよい。例えば、1つ又は複数のアダプタは、積層造形及び/又は三次元印刷により形成され得る。
【0025】
複数の下部ツール部材がある場合、圧縮中に、第1のツール部材の第1の上面はダイキャビティ内で、第2ツール部材の第2上面よりも低い位置に配置されてもよい。次に、圧縮荷重が解放されると、第1のツール部材が第1の量の位置変位を弛緩し、第2のツール部材が第2の量の位置変位を弛緩して、亀裂が生じるプリフォームの弛緩の際に第2のツール部材が力を加えないようにする。
【0026】
従って、上部及び下部ツールセットの少なくとも一方に不均一又は非対称の弾性応答が提供されるツール及びダイセット並びに関連する使用方法が提供される。従来の方法及び最新技術のツール及びダイセットとは対照的に、圧縮及び弛緩中のツール部材の異なる位置変位は、プリフォーム内の亀裂、例えば、様々な高さの粉末カラムを圧縮した結果に1つのツールが他のツールよりも圧縮及び弛緩されて亀裂などを誘発するのを回避するのに役立つ。
【0027】
本発明のこれらの利点及びさらに他の利点は、詳細な説明及び図面から明らかになるであろう。以下は、本発明のいくつかの好ましい実施形態の単なる説明である。本発明の全範囲を評価するために、これらの好ましい実施形態は、特許請求の範囲内の唯一の実施形態であるようには意図されていないため、特許請求の範囲に注目すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】粉末金属からプリフォームを形成するための例示的なツール及びダイセットの断面側面図である。
図2図1のツール及びダイセットから作られたプリフォームの底面側斜視図である。
図3図3A~C別個の図のそれぞれにおけるツール部材及びそれらのそれぞれのアダプタの両方を含む、下部ツールセットの様々な構成要素の側面断面図である。
図4A図3からの例示的なツール及びダイセットの断面側面図で、ダイキャビティの上部にある上部ツールセットと共にダイキャビティの充填位置にある下部ツールセットを示す。
図4B図3からの例示的なツール及びダイセットの断面側面図で、ダイキャビティに充填された粉末金属を示す。
図4C図3からの例示的なツール及びダイセットの断面側面図で、上部ツールセットをダイキャビティに下げて圧縮荷重で粉末金属を圧縮し粉末金属からプリフォームを形成する。
図4D図3からの例示的なツール及びダイセットの断面側面図で、上部ツールセットを持ち上げて圧縮荷重と部材の非対称弛緩を除去する。
図4E図3からの例示的なツール及びダイセットの断面側面図で、下部ツールセットをダイの上部側面と一緒に排出位置レベルに移動する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初に図1及び2を参照すると、粉末金属からプリフォーム12を形成するためのツール及びダイセット10(図1)が示されている。ツール及びダイセット10は、以下により詳細に説明するように、ツール及びダイセット10を作動させるプレス(図示せず)に受けられて、圧縮荷重の下でプリフォーム12を形成する。
【0030】
例示的なツール及びダイセット10は、ダイ14、上部ツールセット16、及び下部ツールセット18を含む。これらの部品は一般に中心軸A-Aに沿って位置合わせされ、ツールとダイセット10の様々なコンポーネントがプレスによって個別に作動する(つまり、互いに対して上下する)1軸方向も定義する。
【0031】
最初にダイ14を見ると、ダイ14は、上面22から底面24まで延びるダイ本体20を含む。ダイキャビティ26は、ダイ14の上面22から底面24までダイ本体20を通って軸方向に延びている。ダイキャビティ26は、上面22から底面24までほぼ均一なプロファイルであり、プリフォーム12の外周に対応する中心軸A-Aに垂直な方向の断面を有する。ダイキャビティ26のこのプロファイルはまた、上面22及び底部24からの上部ツールセット16及び下部ツールセット18の収容に適用する。場合によっては、ダイ本体20は単一の材料から形成されてもよいが、しかし、多くの場合、ダイキャビティ26は、別の周囲セクションに収容されるインサートセクションによって確定されて、インサートが硬化材料で作られてもよい。
【0032】
次に、上部ツールセット16に目を向けると、例示的な実施形態に示されている上部ツールセット16は、(上部ツール部材として)単一の上部パンチ28を含む。上部パンチ28は、(プレスにより駆動されるアダプタの中への)クランプ用のフランジ30を含む上部を有し、上部パンチ28の下端が収容されるダイキャビティ26の周囲に対応する外周を有する下部プリフォーム接触表面32を有する。上部パンチ28はまた、下部ツールセット18のコアロッドを受け入れる中心軸方向に延びる開口部部34が形成されている。
【0033】
この時点で、単一の上部パンチ28は、例示的な構成からの単なる例示的なツール部材であり、他のツール及びダイセットでは、上部ツールセットに追加のツール部材があり得ることに留意されたい。さらに、ツールセットを参照する場合(ツールセットが上部ツールセットであるか下部ツールセットであるかに関係なく)、ツールセットは両方とも、例えばパンチ及びコアロッド、多くの場合、対応するアダプタとアダプタクランプなどの1つ又は複数のツール部材を含み得ることが理解され、これらツール部材は、機械的に取り付ける前に中間的にプレスの部品(プラテンなど)に接続できる。
【0034】
図1を引き続き参照しつつ、図3A~3Cへ追加参照して、下部ツールセット18は、4つの別個に可動な部分を含む。第1の外側部分36は、図3Aに別個に示され、下部外側パンチ38、対応する下部外側アダプタ40、及び下部外側クランプリング42を含む。第2の中間部分44は、図3Bに別個に示され、下部中間パンチ46、対応する下部中間アダプタ48、及び下部中間クランプリング50を含む。第3の内側部分52は、図3Cに別個に示され、下部内側パンチ54、対応する下部内側アダプタ56、及び下部内側クランプリング58を含む。第4の中心コアロッド部分は、図3A図3Cに示されていないが図1に示され、コアロッド60を含む。
【0035】
図1で最もよくわかるように、下部ツールセット18の様々なセクションは、隣接するツール部材の様々な対応する側面が互いに隣り合ってスライド可能に収容可能なように互いに入れ子になっている。例示的な配置を簡潔に要約すると、内側部分52がコアロッドセクションの周りに入れ子になって、コアロッド60の径方向外向表面62が下部内側パンチ54(下部ツール部材)の径方向内向表面64に隣接して配置される。中間部分44は内部部分52の周りに入れ子にされて、下部内側パンチ54の径方向外向表面66が下部中間パンチ46(下部ツール部材)の径方向内向表面68に隣接して配置される。外側部分36が中間部分44の周りに入れ子にされ、下部中間パンチ46の径方向外向表面70が下部外側パンチ38(下部ツール部材)の径方向内向表面72に隣接して配置される。下部外側パンチ38の径方向外向表面74は、ダイ14のダイキャビティ26の径方向内向表面76に隣接して配置される。
【0036】
下部外側パンチ38、下部中間パンチ46、及び下部内側パンチ54のそれぞれは、それらの異なるサイズ及び幾何形状にもかかわらず、同様の特徴を有するのが観察される。例えば、下部外側パンチ38、下部中間パンチ46、及び下部内側パンチ54はそれぞれ、対応するプリフォーム接触表面78、80、及び82を各パンチの上端に有し、各パンチ38、46、54をそれぞれのクランプリング42、50、58を介してそれぞれのアダプタ40、48、56にクランプするための対応するフランジ84、86、88を有する。
【0037】
この段階で、外側部分36、中間部分44、及び内側部分52のそれぞれは、それぞれのアダプタ40、48、及び56のそれぞれの下端90、92、及び94から荷重のかかっていない高さを有することに留意されたい。それぞれのパンチ38、46、54の上端のプリフォーム接触表面78、80、82に、開示されたツール及びダイセット10に1軸圧縮荷重を加えると、荷重のかかっていない高さと荷重のかかっている高さ(アダプタのそれぞれの底部から上部のプリフォーム接触表面まで)の間の様々な部分で変位量が異なる。これが効果的に意味するのは、少なくとも一部の部分での圧縮とその後の弛緩の下で発生する変位量が異なることである。
【0038】
ツール部材又はパンチ全体の位置変位のこれらの様々な程度を達成するには、アダプタ及び/又はパンチが、異なる弾性応答を持つように設計されてよい。例えば、下部外側アダプタ40は、弾性応答を変えるために使用できる壁に開口部が形成されていることが分かる。少なくともいくつかのツール間で弾性と位置変位のこの違いを作り出すために、ツール部材又はアダプタを様々な方法(例えば、積層造形又は三次元印刷)で形成してよいと考えられる。
【0039】
図2A及び2Bのプリフォーム12に戻ると、プリフォーム12の形状がより詳細に示されており、これはまた、プリフォーム12を形成するツール及びダイセット10の様々な表面を確定する。プリフォーム12は一般にパック形状であり、上方軸方向対向表面98と下方軸方向対向表面100とを有する上部ディスク状部分96を有する。円盤状セクション98は、その底面から軸方向対向内壁表面106及び軸方向対向外壁表面108までそれぞれ下方に延びる内方円形壁102及び外方円形壁104を有する。凹部110は、内方円形壁102の径方向外向対向表面112と、外方円形壁104の径方向内向対向表面114と、上部ディスク状部分96の下方軸方向対向表面100との間の空間によって画定されるプリフォーム12の底面に設けられる。径方向内向対向壁118を有する円形貫通孔116は、上方軸方向対向表面98から内方円形壁102を通って軸方向対向内壁表面106まで延びる。また、プリフォーム12は、プリフォーム12の外側水平周辺部を画定する外方円形壁104上に径方向外向対向表面120を有する。
【0040】
ツール及びダイセット10及びプリフォーム12が定義されたので、例示的なプリフォーム12を形成するための例示的なツール及びダイセット10を使用する方法を図4Aから図4Eを参照してより詳細に説明する。図4A~4Eを参照すると、ツール及びダイセット10は、プリフォーム12が圧縮される領域で詳細に示されている。
【0041】
図4Aでは、ツール及びダイセット10の様々な部材が充填位置で示されている。この位置で、上部パンチ28の下部プリフォーム接触表面32はダイ14のダイキャビティ26から引き出され、下部ツールセット18のツール部材は充填位置にある。より具体的には、コアロッド60の上面122は、ダイ14の上面22と同一平面であり、下部外側パンチ38、下部中間パンチ46、及び下部内側パンチ54のプリフォーム接触表面78、80、及び82がそれぞれ、ダイ14の上面22から垂直距離だけ下向きに離間している。
【0042】
この垂直方向の間隔は、プリフォーム12を形成するためにそれぞれの列ごとに粉末を充填するように確立される。例えば、各垂直間隔は、非圧縮粉末金属の流動性及び粉末金属の圧縮応答に応じて、プリフォーム12のそれぞれのカラムの最終高さ寸法の約1.8倍でもよい。本例示的実施形態では、特定のプリフォーム形状は、複雑なマルチパート上部ツールセットがないため、粉末金属カラムを上方に移動させる必要がないことを理解されたい。しかしながら、当業者は、最終的なプリフォーム形状を確立するために充填を実行する方法を知っているであろうし、例示的な場合に示されたものよりも複雑な充填パターンを引き受けることができると考えられる。
【0043】
また、この時点で、粉末金属124は非金属バインダー、ワックス、及び/又は潤滑剤をいくらか含んで、粉末金属124の流動性の調整を助け、圧縮後(プリフォーム12が焼結され、材料が焼失する可能性がある前)のプリフォーム12の形状の維持を支援し、及び以下でより詳細に説明するようにツール及びダイセット10からのプリフォーム12の排出を支援することができることができることも理解されよう。
【0044】
図4Aに示される位置にある様々なツールを用いて、ダイキャビティ26は、続いてプリフォーム12に圧縮される粉末金属124で満たされる。典型的には、図4Bに示すように、供給シュー(図示せず)がダイ14の上面22に沿って面一になり、ダイキャビティ26を越えてダイキャビティ26を粉末金属124で満たし、そして、ダイ14の平坦な上面22及びコアロッド60の上面122(これは、貫通する粉末金属が受け入れられないプリフォームの穴12となる垂直カラムを指す)と平らになるように粉末金属の上面を均す。これにより、ダイキャビティ26は、下部外側パンチ38、下部中間パンチ46、及び下部内側パンチ54のそれぞれのプリフォーム接触表面78、80、及び82からダイ14の上面22と同じ高さの上部粉末充填ラインまで粉末金属の垂直列で効果的に満たされる。
【0045】
図4Bに示されるように、ダイキャビティ26内に粉末金属が収容されている状態で、上部ツールセット16及び下部ツールセット18が互いに向かって移動して、粉末金属124に圧縮力を加え、プリフォーム12を図4Cに示すように形成する。この特定の例示的なケースでは、これは、上部パンチ28をダイキャビティ26内に下げて、下部外側パンチ38、下部中間パンチ46、及び下部内側パンチ54が同時に上昇して粉末金属124を上方に圧縮しながらコアロッド60が中心軸方向に延びる開口部34に入っている状態で粉末金属124を上方に圧縮することを含む。プリフォーム12の特定の形状に対して、下部外側パンチ38と下部内側パンチ54は同じ量だけ持ち上げられ、一方、それぞれのセクションにおけるプリフォーム12の所望の垂直コラム高さに応じて、下部中間パンチ46が他の2つの下部パンチとは異なる少ない量だけ持ち上げられることに留意されたい。
【0046】
この特定の構成では、プリフォーム12の様々な表面は、ツール部材の次の表面によって画定される。上方軸方向対向表面98は、上部パンチ28の下部プリフォーム接触表面32によって画定される。円形貫通孔116の径方向内向対向壁118は、コアロッド60の径方向外向対向表面によって形成される。外方円形壁104の径方向外向対向表面120は、ダイ14のダイキャビティ26の径方向内向対向表面76によって画定される。軸方向対向外壁表面108、下方軸方向対向表面100、及び軸方向対向内壁表面106は、下部外側パンチ38、下部中間パンチ46、及び下部内側パンチ54のそれぞれのプリフォーム接触表面78、80、及び82によって形成される。外方円形壁104の径方向内向対向表面114と内方円形壁102の径方向外向対向表面112はそれぞれ、底面中央パンチ46の径方向外向対向表面70と、下部中間パンチ46の径方向内向対向表面68とによって画定される。
【0047】
特に、粉末金属の圧縮を達成するために、様々な垂直カラム全体で様々な量の圧縮荷重が使用される。上記のように、上部ツールセットと下部ツールセットの少なくとも一方(ここでは、下部ツールセットのみ)のプリフォーム接触表面のツール部材全体の位置変位量を使用して、様々なツール部材の少なくとも一部の非対称弾性を達成する。本例示的実施例では、下部外側パンチ38のプリフォーム接触表面78及び82、並びにそれぞれのアダプタ40及び56を有する下部内側パンチ54は、圧縮と弛緩時にプリフォーム接触表面78及び82の等しい位置変位をもたらすように設計される。しかしながら、下部中間パンチ46のプリフォーム接触表面80は、下部外側パンチ38及び下部内側パンチ54のプリフォーム接触表面78及び82よりも位置変位が小さくなるように設計されている。例示的な実施形態では、内側パンチと外側パンチと中間パンチとの間に位置変位の差があるが、この差は、例えば0.02mmから0.2mmの範囲で、又は特にいくつかの形態では、互いに約0.2mm以内である。
【0048】
位置変位と非対称弾性におけるのこの違いは、図4Cの圧縮ステップ中に有意に見えないかもしれないが、この違いの利点が図4Dに視覚化され、図4Dでは、プリフォーム12が形成された後に圧縮力が抜去されている。図4Dに示すように、上部パンチ28を引き抜くと、下部パンチ38、46、及び54が弛緩する。設計された弾性応答の違いを考えると、下部外側パンチ38と下部内側パンチ54は、下部中間パンチ46の弾性弛緩よりも大きいほぼ同じ量を弛緩する。従って、下部外側パンチ38及び下部内側パンチ54が内側中間パンチ46に対してプリフォーム12を持ち上げると、ギャップ126がプリフォーム12と下部中間パンチ46のプリフォーム接触表面80との間に作られる。それにより、パンチのこの差分変位は、ツール、即ちパンチ46からプリフォームの部分的な剥離をもたらす。上記の状態として、ギャップ126は、例えば0.02mmから0.2mmであってもよい。
【0049】
様々なツール部材間の典型的なバランス弾性条件の下では、カラムの垂直高さの違いにより、内側中間パンチ46のより大きな弛緩が生じる可能性があることを理解されたい。内側及び外側パンチ54及び38とは対照的に、下部中間パンチ46のプリフォーム接触表面80のこの増加した弛緩及び位置変位、並びにダイ14の表面76上のプリフォーム12の可能な結合によって、プリフォーム12内で上方に歪む下部中間パンチ46が生じ得、表面80は、プリフォーム12の亀裂を開始する下方軸方向対向表面100にプリフォーム12に上方の力又は応力を加える可能性がある(当該亀裂は、典型的には側壁を水平に貫通する)。ツール部材の非対称弾性によりこの状態の発生が防止される。
【0050】
図4Dに示すように、圧縮荷重が抜去されツール部材が弛緩した後、次いで、プリフォーム12は、図4Eに示されるように排出され得る。図4Eで、全ての下部ツール部材の上面(即ち、パンチ38、46、及び54のプリフォーム接触表面78、80、及び82、及びコアロッド60の上面122)が全て持ち上げられてダイ14の上面22と面一になる。この排出位置では、プリフォーム12はツール及びダイセット10から取り外され、最終的に焼結された粉末金属部品を形成するために典型的には焼結された後に処理される。
【0051】
再び、このツーリング配置及び説明した配置は単なる例示であり、プリフォームの特定の形状は、様々なコンポーネントと上下のツールセットの数、種類、配置を決定する。様々な成形体な形態は、異なるツーリング配置を有し、本明細書で説明される方法及び原理は、様々なプリフォーム形状で実行可能であると考えられる。例えば、プリフォームに2つの貫通穴がある場合、2つのコアロッドと異なる数又は種類のパンチが存在してもよい。
【0052】
さらに、上記の差弾性を有する下部ツールセットが説明されたが、同じ差弾性が上部ツールセット又は上部ツールセット及び下部ツールセットで同時に使用され得ることがさらに理解されるであろう。場合によっては、ツール部材の瞬間的な弛緩が、上部ツール部材からであっても応力亀裂を引き起こす可能性があることが理解されよう。
【0053】
さらに、上記のツールセットで説明された微分変位を考慮する他の論理的構造があることが理解されよう。例えば、底面のツールセットの場合、圧縮及びその後の弛緩からの量の変位量は、別のツール部材の表面よりも上のプリフォーム接触表面を有するツール部材においてより低く設定され得る。
【0054】
また、上記の例では、2つの下部パンチ/ツールが同様の変位を示し3番目のパンチ/ツールは異なる量の変位を持っている3つの下部ツール部材があるが、それぞれの上部又は下部ツールセットに3つ以上のツール部材がある場合、これらの3つのメンバは3つの異なる位置変位量を持つことができる。これは、プリフォームの形状など、多くの考慮事項に基づいている可能性がある。例えば、特定の成形体に対して3つ以上の位置の高さが存在する場合、3つ以上の位置変位値がある場合がある。
【0055】
従って、粉末金属プリフォームの形成のためのツール及びダイセット、並びにその使用の関連方法が説明されている。ツールコンポーネント全体で弾性を均等化した従来のシステムとは対照的に、開示されたシステムは、プリフォームの割れを防ぐのを助けるために、少なくともいくつかのツール部材で意図的に異なる応答を生成する。
【0056】
本発明の精神及び範囲内で、好ましい実施形態に対する他の様々な修正及び変形を行うことができることを理解されたい。従って、本発明は、記載された実施形態に限定されるべきではない。本発明の全範囲を確認するために、以下の特許請求の範囲を参照すべきである。
【符号の説明】
【0057】
10 ツールとダイセット
12 プリフォーム
13 ダイ
16 上部ツールセット
18 下部ツールセット
20 ダイ本体
22 上面
24 底面
26 ダイキャビティ
28 上部パンチ
30 フランジ
32 下部プリフォーム接触表面
34 開口部
36 外側部分
38 下部外側パンチ
40 下部外側アダプタ
42 下部外側クランプリング
44 中間部分
46 下部中間パンチ
48 下部中間アダプタ
50 下部中間クランプリング
52 内側部分
54 下部内側パンチ
56 下部内側アダプタ
58 下部内側クランプリング
60 コアロッド
62 (コアロッド60の)外向表面
64 内向表面
66 (下部内側パンチ54の)外向表面
68 (下部中間パンチ46の)内向表面
70 (下部中間パンチ46の)外向表面
72 (下部外側パンチ38の)内向表面
74 (下部外側パンチ38の)外向表面
76 (ダイキャビティ26の)内向表面
78 (下部外側パンチ38の)プリフォーム接触表面
80 (下部中間パンチ46の)プリフォーム接触表面
82 (下部内側パンチ54の)プリフォーム接触表面
84 (下部外側パンチ38の)フランジ
86 (下部中間パンチ46の)フランジ
88 (下部内側パンチ54の)フランジ
90 (外側部分36の)下端
92 (中間部分分44の)下端
94 (内側部分52の)下端
96 上部ディスク状部分
98 上方軸方向対向表面
100 下方軸方向対向表面
102 内方円形壁
104 外方円形壁
106 軸方向対向内壁表面
108 軸方向対向外壁表面
110 凹部
112 径方向外向対向表面
114 径方向内向対向表面
116 貫通孔
118 径方向内向対向壁
120 径方向外向対向壁
122(コアロッド60の)上部表面
124 粉末金属
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E