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特開2022-71049臨床使用に適した無血清懸濁細胞培養システムにおいて組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを産生するスケーラブルな方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071049
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】臨床使用に適した無血清懸濁細胞培養システムにおいて組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを産生するスケーラブルな方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20220506BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220506BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220506BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N5/10 ZNA
C12N15/63 Z
C12M1/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022029167
(22)【出願日】2022-02-28
(62)【分割の表示】P 2018527766の分割
【原出願日】2016-12-01
(31)【優先権主張番号】62/261,815
(32)【優先日】2015-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518138077
【氏名又は名称】スパーク セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPARK THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クー, グアン
(72)【発明者】
【氏名】リュー, リン
(72)【発明者】
【氏名】ライト, ジョン フレーザー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】形質導入細胞を産生するための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】成分:(a)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミド;(b)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミド;並びに(c)ポリエチレンイミン(PEI)溶液を含むプラスミド/PEI混合物を含む組成物であって、前記プラスミドが、約1:0.01~約1:100のモル比範囲、又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲であり、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物が、任意選択で約10秒~約4時間の期間インキュベートされたものである、組成物を提供する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分:
(a)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミド;
(b)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミド;並びに
(c)ポリエチレンイミン(PEI)溶液
を含むプラスミド/PEI混合物を含む組成物であって、
前記プラスミドが、約1:0.01~約1:100のモル比範囲、又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲であり、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物が、任意選択で約10秒~約4時間の期間インキュベートされたものである、組成物。
【請求項2】
細胞をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の前記プラスミド/PEI混合物と接触している、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
遊離PEIをさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞が、前記遊離PEIと接触している、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物と少なくとも約4時間接触していたものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物と約4時間~約140時間の範囲の期間接触していたものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物と約4時間~約96時間の範囲の期間接触していたものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物並びに前記遊離PEIと少なくとも約4時間接触していたものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物と約4時間~約140時間の範囲の期間接触していたものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物と約4時間~約96時間の範囲の期間接触していたものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞が、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するものである、請求項6~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、容器を含み、
前記容器が、任意選択でフラスコ、プレート、バッグ、若しくはバイオリアクターを含む、前記容器が、任意選択で無菌である、及び/又は前記容器が、任意選択で細胞の生存若しくは成長を維持するために適している、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
AAVカプシドタンパク質をコードする核酸を含むプラスミドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記成分(a)、(b)及び(c)の前記プラスミド/PEI混合物と接触している細胞並びにAAVカプシドタンパク質をコードする核酸を含む前記プラスミドをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
遊離PEIをさらに含み、前記細胞が、前記遊離PEIと接触している、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸を含む前記プラスミド、並びに前記遊離PEIと少なくとも約4時間接触していたものである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸を含む前記プラスミド、並びに前記遊離PEIと約4時間~約140時間の範囲の期間接触していたものである、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記細胞が、前記成分(a)、(b)及び(c)の混合物、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸を含む前記プラスミド、並びに前記遊離PEIと約4時間~約96時間の範囲の期間接触していたものである、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
(a)プラスミドを用意するステップ;
(b)ポリエチレンイミン(PEI)を含む溶液を用意するステップ;
(c)(a)のプラスミドを(b)のPEI溶液と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生し、任意選択で前記プラスミド/PEI混合物を約10秒~約4時間の範囲の期間インキュベートするステップ;
(d)細胞をステップ(c)の前記プラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(e)ステップ(d)において産生した前記核酸/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;及び
(f)ステップ(e)の前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートし、それにより、形質移入細胞を産生するステップ
を含む、形質移入細胞を産生する方法。
【請求項21】
前記プラスミドが、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する形質移入細胞を産生する方法であって、
(a)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミドを用意するステップ;
(b)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドを用意するステップ;
(c)ポリエチレンイミン(PEI)を含む溶液を用意するステップ;
(d)ステップ(a)及び(b)のプラスミドをステップ(c)のPEI溶液と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生し、任意選択で前記プラスミド/PEI混合物を約10秒~約4時間の範囲の期間インキュベートするステップであって、前記プラスミドが、約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲である、ステップ;
(e)細胞をステップ(d)の前記プラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(f)ステップ(e)で産生した前記プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;並びに
(g)ステップ(f)の前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートし、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する形質移入細胞を産生するステップ
を含む、方法。
【請求項23】
ステップ(f)若しくは(g)で産生した前記形質移入細胞及び/又はステップ(f)若しくは(g)で産生した前記形質移入細胞からの培養培地を収集して、細胞及び/又は培養培地収集物を産生するステップをさらに含む、請求項20又は22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(g)の前記細胞及び/又は培養培地収集物から組換えAAVベクターを単離及び/又は精製し、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する方法であって、
(a)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミドを用意するステップ;
(b)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドを用意するステップ;
(c)ポリエチレンイミン(PEI)を含む溶液を用意するステップ;
(d)ステップ(a)及び(b)の前記プラスミドをステップ(c)の前記PEI溶液と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生し、任意選択でプラスミド/PEI混合物を約10秒~約4時間の範囲の期間インキュベートするステップであって、前記プラスミドが、約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲である、ステップ;
(e)細胞をステップ(d)で産生した前記プラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(f)ステップ(e)で産生した前記プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(g)ステップ(e)の前記プラスミド/PEI細胞培養物又はステップ(f)の前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートして、形質移入細胞を産生するステップ;
(h)ステップ(g)で産生した前記形質移入細胞及び/又はステップ(g)で産生した形質移入細胞からの培養培地を収集して、細胞及び/又は培養培地収集物を産生するステップ;並びに
(i)ステップ(h)で産生した前記細胞及び/又は培養培地収集物から組換えAAVベクターを単離及び/又は精製し、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するステップ
を含む、方法。
【請求項26】
目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する形質移入細胞を産生する方法であって、
(a)成分(i)、(ii)及び(iii):
(i)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミド;
(ii)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミド;並びに
(iii)ポリエチレンイミン(PEI)溶液
の混合物を用意するステップ、
(b)前記プラスミド(i)及び(ii)が、約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲となるように、前記プラスミドを前記PEI溶液(iii)と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生し、任意選択で前記プラスミド/PEI混合物を約10秒~約4時間の範囲の期間インキュベートするステップ;
(c)細胞をステップ(b)で産生した前記プラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(d)ステップ(c)で産生した前記プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(e)ステップ(c)の前記プラスミド/PEI細胞培養物又はステップ(d)の前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートして、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する形質移入細胞を産生するステップ
を含む、方法。
【請求項27】
ステップ(e)で産生した形質移入細胞及び/若しくはステップ(e)で産生した形質移入細胞からの培養培地を収集して、細胞及び/若しくは培養培地収集物を産生するステップ;並びに/又はステップ(e)の細胞及び/若しくは培養培地収集物から組換えAAVベクターを単離及び/若しくは精製し、それにより、目的のタンパク質をコードする若しくは目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するステップをさらに含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する方法であって、
(a)成分(i)、(ii)及び(iii):
(i)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミド;
(ii)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミド;並びに
(iii)ポリエチレンイミン(PEI)溶液
の混合物を用意するステップ、
(b)前記プラスミド(i)及び(ii)が、約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲となるように、前記プラスミドを前記PEI溶液(iii)と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生し、任意選択で前記プラスミド/PEI混合物を約10秒~約4時間の期間インキュベートするステップ;
(c)細胞をステップ(b)で産生した前記プラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(d)ステップ(c)で産生した前記プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(e)ステップ(c)の前記プラスミド/PEI細胞培養物又はステップ(d)の前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートして、形質移入細胞を産生するステップ;
(f)ステップ(e)で産生した前記形質移入細胞及び/又はステップ(e)で産生した形質移入細胞からの培養培地を収集して、細胞及び/又は培養培地収集物を産生するステップ;並びに
(g)ステップ(f)で産生した細胞及び/又は培養培地収集物から組換えAAVベクターを単離及び/又は精製し、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するステップ
を含む、方法。
【請求項29】
目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する方法であって、
(a)成分(i)、(ii)及び(iii):
(i)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミド;
(ii)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミド;並びに
(iii)ポリエチレンイミン(PEI)溶液
の混合物を用意するステップであって、
前記プラスミド(i)及び(ii)が、約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲であり、成分(i)、(ii)及び(iii)の混合物が、任意選択で約10秒~約4時間の期間インキュベートされたものである、ステップ;
(b)細胞を、ステップ(a)で産生した混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(c)ステップ(b)で産生した前記プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;
(d)ステップ(b)の前記プラスミド/PEI細胞培養物又はステップ(c)の前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートして、形質移入細胞を産生するステップ;
(e)ステップ(d)で産生した前記形質移入細胞及び/又はステップ(d)で産生した形質移入細胞からの培養培地を収集して、細胞及び/又は培養培地収集物を産生するステップ;並びに
(f)ステップ(e)で産生した細胞及び/又は培養培地収集物から組換えAAVベクターを単離及び/又は精製し、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するステップ
を含む、方法。
【請求項30】
前記プラスミド/PEI細胞培養物、又は前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物、又は前記核酸/PEI細胞培養物が、約4時間~約140時間の範囲の期間インキュベートされる、請求項3~29のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項31】
前記プラスミド/PEI細胞培養物、又は前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物が、約4時間~約96時間の範囲の期間インキュベートされる、請求項3~30のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項32】
前記プラスミド/PEI混合物が、約0.1:1~約5:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有するか、約5:1~約0.1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有するか、前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物が、約0.1:1~約5:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有するか、約5:1~約0.1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項33】
前記プラスミド/PEI混合物が、約1:1~約5:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有するか、約5:1~約1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有するか;前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物が、約1:1~約5:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有するか、約5:1~約1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項34】
前記プラスミド/PEI混合物及び/又は遊離PEIのPEIが、加水分解直鎖状ポリエチレンイミンを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項35】
前記プラスミド/PEI混合物及び/又は前記遊離PEIのPEIが、約4,000~約160,000の範囲の分子量及び/又は遊離塩基形態で約2,500~約250,000の範囲の分子量を有する加水分解直鎖状ポリエチレンイミンを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項36】
前記プラスミド/PEI混合物及び/又は前記遊離PEIのPEIが、分子量約40,000及び/又は遊離塩基形態で分子量約25,000の加水分解直鎖状ポリエチレンイミンを含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項37】
総PEI中の窒素(N)とプラスミド中のリン酸(P)とのモル比が、前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物において約1:1~約50:1(N:P)の範囲である、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項38】
総PEI中の窒素(N)とプラスミド中のリン酸(P)とのモル比が、前記遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物において約5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1(N:P)である、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項39】
前記プラスミド/PEI混合物が、約30秒~約4時間の範囲の期間インキュベートされる、請求項1~38のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項40】
前記プラスミド/PEI混合物が、約1分~約30分の範囲の期間インキュベートされる、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項41】
遊離PEIの量が、総PEIの約10%~約90%の範囲である、請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項42】
遊離PEIの量が、総PEIの約25%~約75%の範囲である、請求項1~41のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項43】
遊離PEIの量が、総PEIの約50%である、請求項1~42のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項44】
前記プラスミド/PEI混合物が前記細胞と接触する前、同時、又は後に、前記遊離PEIが、前記細胞に添加される、請求項4、5及び9~43のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項45】
前記細胞が、懸濁培養中である、請求項2~44のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項46】
前記細胞が、無血清培養培地中で成長又は維持される、請求項2~44のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項47】
前記プラスミド/PEI混合物及び/又は前記遊離PEIと接触するときに、前記細胞が、細胞約1×10個/mL~約1×10個/mLの範囲の密度である、請求項2~46のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項48】
前記プラスミド/PEI混合物若しくは前記遊離PEIと接触するときに、前記細胞の生存率が、約60%若しくは60%超であるか、前記プラスミド/PEI混合物と接触するときに、前記細胞が、対数期成長中である、請求項2~47のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項49】
前記プラスミド/PEI混合物若しくは前記遊離PEIと接触するときに、前記細胞の生存率が、約90%若しくは90%超であるか、前記プラスミド/PEI混合物若しくは前記遊離PEIと接触するときに、前記細胞が、対数期成長中である、請求項2~48のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項50】
コードされるAAVパッケージングタンパク質が、AAV rep及び/又はAAV capを含む、請求項1~49のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項51】
コードされるAAVパッケージングタンパク質が、任意のAAV血清型のAAV rep及び/又はAAV capタンパク質を含む、請求項50に記載の組成物又は方法。
【請求項52】
コードされるヘルパータンパク質が、アデノウイルスE2及び/若しくはE4、VARNAタンパク質、並びに/又は非AAVヘルパータンパク質を含む、請求項1~51のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項53】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項2~52のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項54】
前記細胞が、HEK293E細胞又はHEK293F細胞である、請求項2~52のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項55】
目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドと、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミドとの合計量が、細胞1mLあたり約0.1μg~約15μgの範囲である、請求項2~54のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項56】
目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドと、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミドとのモル比が、約1:5~約1:1の範囲又は約1:1~約5:1の範囲である、請求項1~55のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項57】
前記1種又は複数種のプラスミドが、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸を含む第1のプラスミド及びヘルパータンパク質をコードする核酸を含む第2のプラスミドを含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項58】
目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドと、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸を含む第1のプラスミドと、ヘルパータンパク質をコードする核酸を含む第2のプラスミドとのモル比が、約1~5:1:1、又は1:1~5:1、又は1:1:1~5の範囲である、請求項57に記載の組成物又は方法。
【請求項59】
組換えAAVベクターが、AAV血清型1~12、AAV VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質、又は改変若しくはバリアントAAV VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質、又は野生型AAV VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質のうちのいずれかを含む、請求項1~58のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項60】
AAVベクターが、AAV血清型又はAAV偽型を含み、前記AAV偽型が、ITR血清型と異なるAAVカプシド血清型を含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項61】
AAVベクターが、イントロン、発現制御エレメント、1つ若しくは複数のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)及び/又はフィラーポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1~60のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項62】
イントロンが、目的のタンパク質をコードする若しくは目的の転写物に転写される核酸の内部にある若しくはそれに隣接しているか、発現制御エレメントが、目的のタンパク質をコードする若しくは目的の転写物に転写される核酸に作動可能に連結しているか、AAV ITR(複数可)が、目的のタンパク質をコードする若しくは目的の転写物に転写される核酸の5’若しくは3’末端に隣接しているか、フィラーポリヌクレオチド配列が、目的のタンパク質をコードする若しくは目的の転写物に転写される核酸の5’若しくは3’末端に隣接している、請求項61に記載の組成物又は方法。
【請求項63】
発現制御エレメントが、構成的若しくは調節可能制御エレメント、又は組織特異的発現制御エレメント若しくはプロモーターを含む、請求項61に記載の組成物又は方法。
【請求項64】
発現制御エレメントが、肝臓における発現を付与するエレメントを含む、請求項61に記載の組成物又は方法。
【請求項65】
ITRが、AAV2若しくはAAV6血清型、又はその組合せのうちのいずれかの1つ又は複数のITRを含む、請求項61に記載の組成物又は方法。
【請求項66】
AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV10、AAV11、若しくはAAV-2i8のVP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質のうちのいずれかと75%以上の配列同一性を有するVP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質を含むか、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV10、AAV11、及びAAV-2i8のAAV血清型のうちのいずれかから選択される改変若しくはバリアントVP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質を含む、請求項1~65のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項67】
細胞が、前記プラスミド/PEI混合物と接触する前に、減少した細胞密度に継代培養される、請求項3~65のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項68】
細胞が、前記プラスミド/PEI混合物と接触する前に、細胞約0.1×10個/ml~約5.0×10個/mlの範囲の細胞密度に継代培養される、請求項3~65のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項69】
細胞が、継代培養の後に、前記プラスミド/PEI混合物と2日~5日の間の期間接触する、請求項67又は68に記載の組成物又は方法。
【請求項70】
細胞が、継代培養の後に、前記プラスミド/PEI混合物と3日~4日の間の期間接触する、請求項67又は68に記載の組成物又は方法。
【請求項71】
前記形質移入細胞に導入されるプラスミドの量が、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのない状態と比較して、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのある状態で、少なくとも50%大きい、請求項20に記載の方法。
【請求項72】
産生した組換えAAVベクターの量が、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのない状態と比較して、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのある状態で、少なくとも50%以上である、請求項22~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
産生した組換えAAVベクターの量が、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのない状態と比較して、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのある状態で1~5、5~10又は10~20倍である、請求項22~71のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002]本発明は、核酸、例えばプラスミドを用いた細胞の形質導入(形質移入)の分野に関する。より詳細には、本発明は、形質導入細胞を産生するための組成物及び方法を提供し、前記細胞は、任意選択でアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを産生する。
【発明の概要】
【0002】
[緒言]
[0003]本発明が属する技術の現状を説明するために、本明細書全体にわたりいくつかの刊行物及び特許文書が引用されている。これらの引用のそれぞれは、全部が明記されているかのように、参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
[0004]本発明は、任意選択で細胞と組み合わせた、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸などの核酸(プラスミド)と、ポリエチレンイミン(PEI)との組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、複数種の成分、すなわち(a)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミド;(b)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミド;並びに(c)ポリエチレンイミン(PEI)溶液を有する、プラスミド/PEI混合物を含む。特定の態様では、プラスミドは、約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲であり、成分(a)、(b)及び(c)の混合物は、任意選択で約10秒~約4時間の期間インキュベートされたものである。
【0004】
[0005]さらなる実施形態では、核酸(プラスミド)とポリエチレンイミン(PEI)との組成物は、細胞をさらに含む。特定の態様では、細胞は、成分(a)、(b)及び/又は(c)のプラスミド/PEI混合物と接触している。
【0005】
[0006]追加的な実施形態では、任意選択で細胞と組み合わせた、核酸(プラスミド)とポリエチレンイミン(PEI)との組成物は、遊離PEIをさらに含む。特定の態様では、細胞は、遊離PEIと接触している。
【0006】
[0007]様々なさらなる実施形態では、細胞は、成分(a)、(b)及び/又は(c)の混合物と少なくとも約4時間、又は約4時間~約140時間、又は約4時間~約96時間接触していたものである。特定の態様では、細胞は、成分(a)、(b)及び/又は(c)並びに任意選択で遊離PEIの混合物と少なくとも約4時間接触していたものである。
【0007】
[0008]本発明の組成物は、容器に存在し得る。特定の態様では、容器は、フラスコ、プレート、バッグ、若しくはバイオリアクターである、任意選択で無菌である、及び/又は容器は、任意選択で細胞の生存若しくは成長を維持するために適している。
【0008】
[0009]本発明のプラスミド、組成物及び方法は、AAVカプシドタンパク質などのウイルスタンパク質をコードする核酸をとりわけ含む。そのようなプラスミド及び細胞は、遊離PEIと接触している場合がある。特定の態様では、プラスミド及び/又は細胞は、遊離PEIと少なくとも約4時間、又は約4時間~約140時間、又は約4時間~約96時間接触していたものである。
【0009】
[0010]プラスミドを用意するステップ;ポリエチレンイミン(PEI)を含む溶液を用意するステップ;及び核酸(プラスミド)をPEI溶液と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生するステップを含む、形質移入細胞を産生する方法も提供されている。特定の態様では、そのような混合物は、約10秒~約4時間の範囲の期間インキュベートされる。そのような方法では、次に、細胞をプラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生し;次に、産生した核酸/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生し;次に、産生した遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物が、少なくとも約4時間インキュベートされ、それにより、形質移入細胞を産生する。特定の態様では、プラスミドは、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む。
【0010】
[0011]組換えAAVベクターを産生する形質移入細胞を産生する方法であって、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミドを用意するステップ;目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドを用意するステップ;ポリエチレンイミン(PEI)を含む溶液を用意するステップ;前記プラスミドをPEI溶液と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生する(及び任意選択でプラスミド/PEI混合物を約10秒~約4時間の範囲の期間インキュベートする)ステップであって、プラスミドが、約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲であるステップ;細胞をプラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;産生したプラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;並びに遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートし、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する形質移入細胞を産生するステップを含む方法が、さらに提供される。
【0011】
[0012]目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する方法であって、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミドを用意するステップ;目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドを用意するステップ;ポリエチレンイミン(PEI)を含む溶液を用意するステップ;前記プラスミドをPEI溶液と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生する(及び任意選択でプラスミド/PEI混合物を約10秒~約4時間の範囲の期間インキュベートする)ステップであって、プラスミドが、約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲であるステップ;細胞を、記載されたように産生したプラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;記載されたように産生したプラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;産生したプラスミド/PEI細胞培養物又は遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートして、形質移入細胞を産生するステップ;産生した形質移入細胞及び/又は産生した形質移入細胞からの培養培地を収集して、細胞及び/又は培養培地収集物を産生するステップ;並びに産生した細胞及び/又は培養培地収集物から組換えAAVベクターを単離及び/又は精製し、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するステップを含む方法が、追加的に提供される。
【0012】
[0013]目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を有する組換えAAVベクターを産生する形質移入細胞を産生する方法が、なおさらに提供される。一実施形態では、方法は、成分(i)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミド、(ii)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミド;並びに(iii)ポリエチレンイミン(PEI)溶液の混合物を用意するステップ;プラスミドが約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲となるように、プラスミド(i)及び(ii)をPEI溶液(iii)と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生するステップ(並びに任意選択でプラスミド/PEI混合物を約10秒~約4時間の範囲の期間インキュベートするステップ);細胞を、産生したプラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;並びにプラスミド/PEI細胞培養物又は遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートして、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する形質移入細胞を産生するステップを含む。
【0013】
[0014]本発明の方法及び組成物は、1つ又は複数のステップ又は特徴を含む可能性がある。例示的なステップ又は特徴は、限定されないが、細胞及び/又は培養培地収集物を産生するために、産生した形質移入細胞を収集する及び/又は産生した形質移入細胞から培養培地を収集するステップを含む。追加の例示的なステップ又は特徴は、限定されないが、細胞及び/又は培養培地収集物から組換えAAVベクターを単離及び/又は精製し、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するステップを含む。
【0014】
[0015]目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する方法が、なおさらに提供される。一実施形態では、方法は、成分(i)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミド、(ii)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミド;並びに(iii)ポリエチレンイミン(PEI)溶液の混合物を用意するステップ、プラスミドが、約1:0.01~約1:100のモル比範囲、又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲となるように、プラスミド(i)及び(ii)をPEI溶液(iii)と混合して、プラスミド/PEI混合物を産生する(並びに任意選択でプラスミド/PEI混合物を約10秒~約4時間の期間インキュベートする)ステップ;細胞を産生したプラスミド/PEI混合物と接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;産生したプラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;プラスミド/PEI細胞培養物又は遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートして、形質移入細胞を産生するステップ;産生した形質移入細胞及び/又は産生した形質移入細胞からの培養培地を収集して、細胞及び/又は培養培地収集物を産生するステップ;並びに産生した細胞及び/又は培養培地収集物から組換えAAVベクターを単離及び/又は精製し、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するステップを含む。
【0015】
[0016]目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生する方法が、なお追加的に提供される。一実施形態では、方法は、成分(i)AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミド;(ii)目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミド;並びに(iii)ポリエチレンイミン(PEI)溶液の混合物を用意するステップであって、プラスミド(i)及び(ii)が、約1:0.01~約1:100のモル比範囲又は約100:1~約1:0.01のモル比範囲であり、成分(i)、(ii)及び(iii)の混合物が、任意選択で約10秒~約4時間の期間インキュベートされたものである、ステップ;産生した混合物と細胞を接触させて、プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;産生したプラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加して、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を産生するステップ;プラスミド/PEI細胞培養物又は遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物を少なくとも約4時間インキュベートして、形質移入細胞を産生するステップ;産生した形質移入細胞及び/又は産生した形質移入細胞からの培養培地を収集して、細胞及び/又は培養培地収集物を産生するステップ;並びに産生した細胞及び/又は培養培養培地収集物から組換えAAVベクターを単離及び/又は精製し、それにより、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含む組換えAAVベクターを産生するステップを含む。
【0016】
[0017]組成物及び方法は、1つ又は複数の追加的なステップ又は特徴も含む場合がある。そのようなステップ又は特徴は、限定されないが、プラスミド/PEI細胞培養物、又は遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物、又は核酸/PEI細胞培養物が、約4時間~約140時間の範囲の期間又は約4時間~約96時間の範囲の期間インキュベートされるものを含む。そのようなステップ又は特徴は、限定されないが、プラスミド/PEI混合物が、約0.1:1~約5:1の範囲のPEI:プラスミド重量比若しくは約5:1~約0.1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有する、又は遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物が、約0.1:1~約5:1の範囲のPEI:プラスミド重量比若しくは約5:1~約0.1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有するものを含む。そのようなステップ又は特徴は、限定されないが、プラスミド/PEI混合物が、約1:1~約5:1の範囲のPEI:プラスミド重量比若しくは約5:1~約1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有する、又は遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物が、約1:1~約5:1の範囲のPEI:プラスミド重量比若しくは約5:1~約1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有するものを含む。
【0017】
[0018]本発明の組成物及び方法に適用可能なPEIの形態(遊離PEI、総PEI、プラスミド/PEI混合物、又はプラスミド/PEI混合物と接触した細胞)は、加水分解直鎖状ポリエチレンイミンを含む。特定の態様では、PEI(遊離PEI、総PEI、プラスミド/PEI混合物、又はプラスミド/PEI混合物と接触した細胞)は、約4,000~約160,000の範囲の分子量及び/若しくは遊離塩基形態で約2,500~約250,000の範囲の分子量を有する加水分解直鎖状ポリエチレンイミン、又は分子量約40,000及び/若しくは遊離塩基形態で分子量約25,000を有する加水分解型直鎖状ポリエチレンイミンを含む。
【0018】
[0019]様々な実施形態では、総PEI中の窒素(N)とプラスミド中のリン酸(P)とのモル比は、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物において約1:1~約50:1(N:P)の範囲である。他の実施形態では、総PEI中の窒素(N)とプラスミド中のリン酸(P)とのモル比は、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物において約5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1(N:P)である。
【0019】
[0020]本発明による組成物及び方法は、ある期間インキュベートされたプラスミド/PEI混合物を有する可能性がある。特定の態様では、インキュベーションは、約30秒~約4時間の範囲である。より特定の態様では、プラスミド/PEI混合物のインキュベーションは、約1分~約30分の範囲である。
【0020】
[0021]本発明による組成物及び方法は、モル比又は重量(質量)のいずれかの様々なパーセント量でPEIを有する可能性がある。特定の実施形態では、遊離PEIの量は、総PEIの約10%~約90%の範囲である、又は遊離PEIの量は、総PEIの約25%~約75%の範囲である、又は遊離PEIの量は、総PEIの約50%である。
【0021】
[0022]本発明による組成物及び方法は、PEIを様々な時点でプラスミド及び/又は細胞に添加させる可能性がある。特定の実施形態では、遊離PEIは、プラスミド/PEI混合物が細胞と接触する前、同時、又は後に細胞に添加される。
【0022】
[0023]本発明による組成物及び方法は、哺乳動物細胞(例えば、HEK293E又はHEK293F細胞)を含む。そのような細胞は、接着性又は懸濁培養中であり得る。特定の態様では、細胞は、無血清培養培地で成長又は維持される。
【0023】
[0024]本発明による組成物及び方法は、特定の密度及び/又は細胞成長期及び/又は生存率の細胞を有し得る。特定の実施形態では、細胞は、プラスミド/PEI混合物及び/又は遊離PEIと接触するときに、細胞約1×10個/mL~約1×10個/mLの範囲の密度である。追加的な特定の実施形態では、プラスミド/PEI混合物若しくは遊離PEIと接触するときに、細胞の生存率は約60%若しくは60%超であり、又はプラスミド/PEI混合物と接触するときに、細胞は対数期成長中であり、又はプラスミド/PEI混合物若しくは遊離PEIと接触するときに、細胞の生存率は、約90%若しくは90%超であり、又はプラスミド/PEI混合物若しくは遊離PEIと接触するときに、細胞は対数期成長中である。
【0024】
[0025]コードされるAAVパッケージングタンパク質は、例えば、AAV rep及び/又はAAV capを含む。そのようなAAVパッケージングタンパク質は、例えば、任意のAAV血清型のAAV rep及び/又はAAV capタンパク質を含む。
【0025】
[0026]コードされるヘルパータンパク質は、例えば、アデノウイルスE2及び/若しくはE4、VARNAタンパク質、並びに/又は非AAVヘルパータンパク質を含む。
【0026】
[0027]本発明による組成物及び方法は、核酸(プラスミド)を特定の量又は比で有し得る。特定の実施形態では、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドと、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミドとの合計量は、細胞1mLあたり約0.1μg~約15μgの範囲である。追加的な特定の実施形態では、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドと、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミドとのモル比は、約1:5~約1:1の範囲又は約1:1~約5:1の範囲である。
【0027】
[0028]プラスミドは、異なる又は同じプラスミドに核酸を含み得る。一実施形態では、第1のプラスミドは、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸を含み、第2のプラスミドは、ヘルパータンパク質をコードする核酸を含む。より特定の実施形態では、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドと、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸を含む第1のプラスミドと、ヘルパータンパク質をコードする核酸を含む第2のプラスミドとのモル比は、約1~5:1:1、又は1:1~5:1、又は1:1:1~5の範囲である。
【0028】
[0029]本発明による組成物及び方法は、任意の血清型のAAVベクター又はそのバリアントを含む。一実施形態では、組換えAAVベクターは、AAV血清型1~12、AAV VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質、又は改変若しくはバリアントAAV VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質、又は野生型AAV VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質のうちのいずれかを含む。追加的な特定の実施形態では、AAVベクターは、AAV血清型又はAAV偽型を含み、その際、AAV偽型は、ITR血清型と異なるAAVカプシド血清型を含む。
【0029】
[0030]AAVベクターを提供する又は含む本発明による組成物及び方法は、他のエレメントも含み得る。そのようなエレメントの例には、限定されないが、イントロン、発現制御エレメント、1つ若しくは複数のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)及び/又はフィラーポリヌクレオチド配列が含まれる。そのようなエレメントは、目的のタンパク質をコードする若しくは目的の転写物に転写される核酸の内部にある若しくはそれに隣接している可能性があり、又は発現制御エレメントは、目的のタンパク質をコードする若しくは目的の転写物に転写される核酸に作動可能に連結している可能性があり、又はAAV ITR(複数可)は、目的のタンパク質をコードする若しくは目的の転写物に転写される核酸の5’若しくは3’末端に隣接している可能性があり、又はフィラーポリヌクレオチド配列は、目的のタンパク質をコードする若しくは目的の転写物に転写される核酸の5’若しくは3’末端に隣接している可能性がある。
【0030】
[0031]発現制御エレメントは、組織特異的発現制御エレメント又はプロモーター(例えば肝臓で発現を実現する)などの構成的又は調節可能制御エレメントを含む。
【0031】
[0032]ITRは、AAV2若しくはAAV6血清型、又はその組合せのうちのいずれかであり得る。AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV10、AAV11、若しくはAAV-2i8のVP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質のうちのいずれかと75%以上の配列同一性を有する任意のVP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質を含む可能性があり、又はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV10、AAV11、及びAAV-2i8のAAV血清型のうちのいずれかから選択される改変若しくはバリアントVP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質を含む。
【0032】
[0033]本発明の組成物及び方法では、細胞は、培養物からの細胞の希釈又は除去によって減少した細胞密度などに継代培養することができる。一実施形態では、細胞は、プラスミド/PEI混合物と接触する前に、減少した細胞密度に継代培養される。
【0033】
[0034]本発明の組成物及び方法では、細胞は、様々な密度で採用することができる。一実施形態では、細胞は、プラスミド/PEI混合物と接触する前に、細胞約0.1×10個/ml~約5.0×10個/mlの範囲の細胞密度に培養又は継代培養される。
【0034】
[0035]本発明の組成物及び方法では、細胞は、PEI(遊離PEI、総PEI、プラスミド/PEI混合物)と短期間又は長期間接触している可能性がある。一実施形態では、細胞は、継代培養の後に、プラスミド/PEI混合物と2日~5日の間の期間接触している。別の実施形態では、細胞は、継代培養の後に、3日~4日の間の期間プラスミド/PEI混合物と接触している。
【0035】
[0036]本発明の組成物及び方法は、高い細胞形質移入効率及び/又は細胞によるベクターの組換え産生を提供する。一実施形態では、形質移入細胞に導入されるプラスミドの量は、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのない状態と比較して、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのある状態で、少なくとも50%大きい。別の実施形態では、産生した組換えAAVベクターの量は、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのない状態と比較して、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIと添加するステップのある状態で、少なくとも50%以上である。さらなる実施形態では、産生した組換えAAVベクターの量は、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIを添加するステップのない状態と比較して、プラスミド/PEI細胞培養物に遊離PEIと添加するステップのある状態で、1~5、5~10又は10~20倍である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】プラスミドDNAを2.8、5.6及び11.2μg/mLで使用した場合の、トリスHC1又はHOのいずれかに溶解したPEI「Max」40KDa(A)及びPEI 25KDa(B)の形質移入効率を示す図である。PEI「Max」40KDaは、PEI 25KDaと比較して一貫して高い形質移入効率を示した。
図2A】12ウェルプレートにおける形質移入効率及びrAAVベクター産生に及ぼす遊離PEIの効果を示す図である。A)12ウェルプレートにおける無血清懸濁培養物への3種のプラスミド(pAAV-eGFP-WRPE、pAAV-Rep2/Cap2、pAD2-Helper)を用いた293F細胞の形質移入。B)rAAV力価に及ぼす遊離PEIの効果。遊離PEIを添加する又は添加しない形質移入時のPEI/DNA重量比は、2:1又は4:1であった。3種のプラスミドについてモル比1:1:1でDNA量2.8μg/mLを使用した。希釈したPEIを、希釈したDNAと重量比1:1で最初に混合して、複合体を形成させた。過剰のPEIを培養培地50μL中に希釈し、次に細胞に直接添加した。
図2B】12ウェルプレートにおける形質移入効率及びrAAVベクター産生に及ぼす遊離PEIの効果を示す図である。A)12ウェルプレートにおける無血清懸濁培養物への3種のプラスミド(pAAV-eGFP-WRPE、pAAV-Rep2/Cap2、pAD2-Helper)を用いた293F細胞の形質移入。B)rAAV力価に及ぼす遊離PEIの効果。遊離PEIを添加する又は添加しない形質移入時のPEI/DNA重量比は、2:1又は4:1であった。3種のプラスミドについてモル比1:1:1でDNA量2.8μg/mLを使用した。希釈したPEIを、希釈したDNAと重量比1:1で最初に混合して、複合体を形成させた。過剰のPEIを培養培地50μL中に希釈し、次に細胞に直接添加した。
図3A】形質移入効率及びスピナーフラスコにおけるrAAV力価に及ぼす遊離PEIの効果を示す。遊離PEIを使用することによって形質移入効率が増加した。
図3B】形質移入効率及びスピナーフラスコにおけるrAAV力価に及ぼす遊離PEIの効果を示す。rAAV力価に及ぼす遊離PEIの効果。PEI/DNA重量比は2:1であり、DNA量は2.8μg/mLであった。PEI量の1/2及び1/3を遊離PEIとして形質移入時に使用した。
図4】バイオリアクターにおける293F細胞の成長曲線及び生存率を示す図である。細胞を細胞0.25×10個/mL(ユニット1)、細胞0.35×10個/mL(ユニット2)及び細胞0.5×10個/mL(ユニット3)で播種した。バイオリアクターで7日間細胞培養する間に細胞密度(N)及び生存率(V)を12時間毎に記録した。
図5A】バイオリアクターでの細胞形質移入を示す図である。293F細胞に3種のプラスミドを最大72時間形質移入した。GFP陽性細胞を倒立蛍光顕微鏡で検出した。
図5B】バイオリアクターでの細胞形質移入を示す図である。形質移入効率をフローサイトメトリーで測定した。GFP陽性細胞の50%~60%を形質移入の48~72時間後に検出した。形質移入効率は、3日目の形質移入と4日目の形質移入との間で類似していた。
図6A】rAAV力価及びベクター機能アッセイを示す図である。ベクター力価は、qPCRによって評価した3日目よりも4日目の形質移入の方が有意に高かった。最高力価は、4日目の形質移入条件及び撹拌速度150rpmで1.38E+11vg/mLであった。
図6B】rAAV力価及びベクター機能アッセイを示す図である。形質導入アッセイによってベクター機能を測定した。同体積の細胞溶解物をHEK293細胞に添加した。倒立蛍光顕微鏡を用いてGFP陽性細胞を検出した。形質導入の結果は、rAAVの力価と矛盾しなかった。換言すれば、より高い力価は、より高い形質導入率と相関した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0043]細胞に核酸(例えばプラスミド)などの分子を高効率で形質導入する組成物及び方法が、本明細書において開示されている。そのような高効率で形質導入された細胞は、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される配列を含む核酸が形質導入されると、タンパク質及び/又は転写物を高効率で産生することができる。追加的に、そのような細胞は、ウイルスパッケージングタンパク質及び/又はヘルパータンパク質をコードするプラスミドなどの配列が形質導入されると、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される配列を含む核酸を含む組換えベクターを産生することができ、そして次に組換えウイルスベクターを高収率で産生する。
【0038】
[0044]本発明は、現行の「業界標準」ウイルス(例えばAAV)ベクター産生工程と区別する特徴を含む細胞形質導入及び/又はウイルス(例えばAAV)ベクター産生プラットフォームを提供する。本発明の組成物及び方法は、PEIを核酸とある特定の条件で混合することによって特徴付けられる。PEIを核酸と混合する結果として、PEIが誘導する核酸の効率的な圧密が生じて、ポリプレックスと呼ばれる安定な複合体を形成させる。核酸を細胞に導入する方法は、ある特定の条件でPEIと混合された核酸を提供するステップ、及び結果として生じた混合物を細胞に適用するステップを含む。さらに、本発明の組成物及び方法は、細胞にPEI/核酸混合物を適用するステップに対して特定の順序で、遊離PEIと接触した細胞、又は細胞を遊離PEIと接触させることによって特徴付けられる。本発明の組成物及び方法は、1)高効率の核酸の細胞形質導入/形質移入;3)ベクターの予想外の実質的な収率を付与する試薬と工程ステップとの独特な組合せ;及び4)異なるAAV血清型/カプシドバリアントの産生のために使用することができるモジュール式プラットフォームによって特徴付けられる。
【0039】
[0045]用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)を含めた全ての形態の核酸、オリゴヌクレオチドを表すために本明細書において互換的に使用される。核酸及びポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA及びアンチセンスDNA、並びにスプライス又は非スプライスmRNA、rRNA、tRNA及び阻害性DNA又はRNA(RNAi、例えば、低分子若しくは短鎖ヘアピン(sh)RNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子若しくは短鎖干渉(si)RNA、トランススプライシングRNA、又はアンチセンスRNA)を含む。核酸及びポリヌクレオチドは、天然、合成、及び意図的に改変又は変更された配列(例えばバリアント核酸)を含む。
【0040】
[0046]核酸又はプラスミドは、タンパク質をコードする配列を表すこともできる。そのようなタンパク質は、野生型又はバリアント、改変若しくはキメラタンパク質であり得る。「バリアントタンパク質」は、野生型タンパク質と比較してアミノ酸変更を有するような改変タンパク質を意味し得る。
【0041】
[0047]核酸又はプラスミドによってコードされるタンパク質は、治療用タンパク質を含む。非限定的な例は、血液凝固因子(例えば、第XIII因子、第IX因子、第X因子、第VIII因子、第VIIa因子、又はプロテインC)、CFTR(嚢胞性線維症膜貫通制御タンパク質)、抗体、網膜色素上皮特異65kDaタンパク質(RPE65)、エリスロポエチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β-グロビン、α-グロビン、スペクトリン、α-アンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、金属輸送体(ATP7A又はATP7)、スルファミダーゼ、ライソゾーム蓄積症に関係する酵素(ARSA)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β-25グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼ、分枝鎖ケト酸脱水素酵素、ホルモン、成長因子(例えば、インスリン様成長因子1及び2、血小板由来成長因子、上皮成長因子、神経成長因子、神経栄養因子3及び4、脳由来神経栄養因子、グリア細胞由来成長因子、形質転換成長因子α及びβなど)、サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、インターフェロンγ、インターロイキン2、インターロイキン4、インターロイキン12、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、リンホトキシンなど)、自殺遺伝子産物(例えば、単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、シトクロムP450、デオキシシチジンキナーゼ、腫瘍壊死因子など)、薬剤耐性タンパク質(例えば、がん治療に使用される薬物に対する耐性をもたらすもの)、腫瘍抑制タンパク質(例えば、p53、Rb、Wt-1、NF1、フォンヒッペル-リンダウ(VHL)、腺腫性結腸ポリポーシス(APC))、免疫調節性を有するペプチド、寛容原性若しくは免疫原性ペプチド性若しくはタンパク質性Tレジトープ(Tregitope)、又はhCDR1、インスリン、グルコキナーゼ、グアニル酸シクラーゼ2D(LCA-GUCY2D)、Rabエスコートタンパク質1(コロイデレミア)、LCA5(LCA-レベルシリン(Lebercilin))、オルニチンケト酸アミノトランスフェラーゼ(脳回転状萎縮症)、レチノスキシン1(X連鎖性網膜分離症)、USH1C(アッシャー症候群1C)、X連鎖性網膜色素変性GTPアーゼ(XLRP)、MERTK(AR型のRP:網膜色素変性)、DFNB1(コネキシン26難聴)、ACHM2、3及び4(色盲)、PKD-1又はPKD-2(多発性嚢胞腎疾患)、TPP1、CLN2、ライソゾーム蓄積症の原因遺伝子欠損(例えば、スルファターゼ、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ、カテプシンA、GM2-AP、NPC1、VPC2,スフィンゴ脂質活性化因子タンパク質など)、ゲノム編集のための1種若しくは複数種のジンクフィンガーヌクレアーゼ、又はゲノム編集のための修復鋳型として使用されるドナー配列を含む。
【0042】
[0048]核酸又はプラスミドは、転写された場合に転写物を産生する配列も表すことができる。そのような転写物は、阻害性RNA(RNAi、例えば、低分子若しくは短鎖ヘアピン(sh)RNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子若しくは短鎖干渉(si)RNA、トランススプライシングRNA、又はアンチセンスRNA)などのRNAであり得る。
【0043】
[0049]非限定的な例は、ハンチンチン(HTT)遺伝子、歯状核赤核淡蒼球ルイ体委縮症関連遺伝子(例えばアトロフィン1、ATN1)、球脊髄性筋萎縮症におけるX染色体のアンドロゲン受容体、ヒトアタキシン(Ataxin)1,2,3及び7、(CACNA1A)によってコードされる電位依存性カルシウムチャネルCa2.1 P/Q、TATA結合タンパク質、ATXN8OSとしても公知のアタキシン8逆鎖、脊髄小脳失調(1、2、3、6、7、8、12、17型)におけるセリン-トレオニンタンパク質ホスファターゼ2Aの55kDa調節サブユニットBベータアイソフォーム、脆弱性X症候群におけるFMR1(脆弱性X精神遅滞1)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群におけるFMR1(脆弱性X精神遅滞1)、脆弱性XE精神遅滞におけるFMR1(脆弱性X精神遅滞2)若しくはAF4/FMR2ファミリーメンバー2;筋強直性ジストロフィー症におけるミオトニンタンパク質キナーゼ(MT-PK);フリートライヒ運動失調症におけるフラタキシン;筋萎縮性側索硬化症におけるスーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異体;パーキンソン病及び/若しくはアルツハイマー病の病態形成に関与する遺伝子;アポリポタンパク質B(APOB)及び前駆タンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、高コレステロール血症;HIV Tat、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染におけるHIV転写トランス活性化因子遺伝子;HIV TAR、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染におけるHIVトランス活性化因子応答エレメント遺伝子;HIV感染におけるC-Cケモカイン受容体(CCR5)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)感染におけるRSVヌクレオカプシドタンパク質、C型肝炎ウイルス感染における肝臓特異的マイクロRNA(miR-122);p53、急性腎損傷若しくは腎移植における移植腎機能発現遅延若しくは腎損傷急性腎不全;進行した再発性若しくは転移性の固形悪性腫瘍におけるタンパク質キナーゼN3(PKN3);転移性黒色腫におけるプロテアソームサブユニットベータ9型(PSMB9)としても知られるLMP2;転移性黒色腫におけるプロテアソームサブユニットベータ8型(PSMB8)としても知られるLMP7;転移性黒色腫におけるプロテアソームサブユニットベータ10型(PSMB10)としても知られるMECL1;固形腫瘍における血管内皮成長因子(VEGF);固形腫瘍におけるキネシン紡錘体タンパク質、慢性骨髄性白血病におけるアポトーシス抑制B細胞CLL/リンパ腫(BCL-2);固形腫瘍におけるリボヌクレオチド還元酵素M2(RRM2);固形腫瘍におけるフューリン(Furin);肝臓腫瘍におけるポロ様キナーゼ1(PLK1)、C型肝炎感染におけるジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1(DGAT1)、家族性大腸腺腫症におけるベータ-カテニン、緑内障におけるベータ2アドレナリン受容体;糖尿病性黄斑浮腫(DME)若しくは加齢性黄斑変性症におけるDNA損傷誘導性転写物4タンパク質としても知られるRTP801/Redd1;加齢性黄斑変性症若しくは脈絡膜血管新生における血管内皮成長因子受容体I(VEGFR1)、非動脈炎性虚血性視神経症におけるカスパーゼ2;先天性爪肥厚症におけるケラチン6A N17K変異型タンパク質、インフルエンザ感染におけるA型インフルエンザウイルスのゲノム/遺伝子配列;重症急性呼吸器症候群(SARS)感染におけるSARSコロナウイルスのゲノム/遺伝子配列;呼吸器合胞体ウイルス感染における呼吸器合胞体ウイルスのゲノム/遺伝子配列;エボラ感染におけるエボラフィロウイルスのゲノム/遺伝子配列;B型及びC型肝炎感染におけるB型及びC型肝炎ウイルスのゲノム/遺伝子配列;単純ヘルペスウイルス(HSV)感染におけるHSVウイルスのゲノム/遺伝子配列、コクサッキーウイルスB3感染におけるコクサッキーウイルスB3のゲノム/遺伝子配列;原発性筋失調症におけるトルシンA(TOR1A)様遺伝子の病原性対立遺伝子のサイレンシング(対立遺伝子特異的サイレンシング)、移植における汎クラスI及びHLA対立遺伝子特異的;常染色体優性遺伝性網膜色素変性症(adRP)における変異型ロドプシン遺伝子の発現を阻害する阻害性核酸;又は前記の遺伝子若しくは配列のうちのいずれかの転写物と結合する阻害性核酸を含む。
【0044】
[0050]核酸(プラスミド)は、一、二、又は三重鎖、直鎖状又は環状であり得、任意の長さであり得る。核酸(プラスミド)を論じる上で、特定のポリヌクレオチドの配列又は構造が、本明細書において5’から3’の方向に配列を提供するという慣例により記載される場合がある。
【0045】
[0051]「プラスミド」は、プラスミドの発現(例えば、転写、複製など)又は繁殖(複製)のための追加的なエレメントを概して有する、核酸又はポリヌクレオチドの一形態である。本明細書に使用されるプラスミドは、そのような核酸又はポリヌクレオチド配列を参照するために使用することもできる。したがって、全ての態様では、本発明の組成物及び方法は、例えば、核酸又はポリヌクレオチドを細胞に導入して、細胞に核酸又はポリヌクレオチドを形質導入(形質移入)して、核酸又はポリヌクレオチドを有する形質導入(形質移入)細胞を産生して、ウイルス(例えばAAV)ベクターを産生する細胞を産生するため、ウイルス(例えばAAV)ベクターを産生するため、ウイルス(例えばAAV)ベクターを有する細胞培養培地を産生するためなどに、核酸及びポリヌクレオチドに適用することができる。
【0046】
[0052]本発明の組成物及び方法は、ポリエチレンイミン(PEI)を含む。PEIは、カチオンポリマーであり、ポリプレックスと呼ばれる核酸との安定な複合体を形成することができる。任意の理論に縛られることを望むわけではないが、ポリプレックスは、エンドサイトーシスを経て細胞に導入されると考えられている。
【0047】
[0053]PEIは、直鎖状PEI又は分岐PEIであり得る。PEIは、塩形態又は遊離塩基であり得る。特定の実施形態では、PEIは、任意選択で加水分解型直鎖状PEIなどの直鎖PEIである。加水分解型PEIは、完全加水分解型又は部分加水分解型の場合がある。加水分解型直鎖状PEIは、非加水分解型直鎖状PEIと比べて高い比率の遊離(プロトン化可能)窒素、典型的には非加水分解直鎖状PEIと比べて少なくとも1~5%多い遊離(プロトン化可能)窒素、より典型的には非加水分解直鎖状PEIと比べて5~10%多い遊離(プロトン化可能)窒素、又は最も典型的には非加水分解直鎖状PEIと比べて10~15%多い遊離(プロトン化可能)窒素を有する。
【0048】
[0054]特定の実施形態では、PEIは、約4,000~約160,000の範囲の分子量及び/又は遊離塩基形態で約2,500~約250,000の範囲の分子量を有し得る。さらに特定の実施形態では、PEIは、分子量約40,000及び/又は遊離塩基形態で分子量約25,000を有し得る。具体的には、分子量約40,000及び/又は遊離塩基形態で分子量約25,000を有する直鎖状PEI。加えて、化学改変直鎖状PEI又は分岐PEIも使用することができる。PEIは、市販されている(例えば、Polysciences、Inc.、Warrington、PA、USA)。
【0049】
[0055]本発明の組成物及び方法において、プラスミドなどの核酸がPEIと混合されて、PEI混合物又は溶液を形成する。そのような混合物又は溶液は、「プラスミド/PEI混合物」又は「核酸/PEI混合物」と呼ぶことができる。したがって、用語「プラスミド/PEI混合物」及び「核酸/PEI混合物」は、PEIが核酸/プラスミドと混合されたことを意味する。したがって、本明細書に示されるPEIは、形質導入のために細胞と接触する前又は実質的に同時に核酸(プラスミド)と混合される場合がある。
【0050】
[0056]本明細書に使用される用語「遊離PEI」は、核酸(プラスミド)を実質的に又は完全に有さないPEIを意味する。したがって、本明細書に示されるPEIは、遊離PEIの形態でもあり得る。したがって、「プラスミド/PEI混合物」又は「核酸/PEI混合物」は、遊離PEIとは異なる。遊離PEIが実質的に遊離であるならば、存在する核酸(プラスミド)配列の量は、分子量又は質量によって決定されたときに約5%以下である。当然、その量は、5%未満、例えば、約4.5%以下、約4%以下、約3.5%以下、約3%以下、約2.5%以下、約2%以下、約1.5%以下、約1%以下、又は約0.5%以下であり得る。
【0051】
[0057]本明細書に使用される用語「総PEI」は、PEI/プラスミド混合物中に存在するPEIと遊離PEIとの合計を意味する。したがって、総PEIは、プラスミドと混合されたPEI及びプラスミドなどの核酸配列を実質的に又は全く有さないPEIを含む。
【0052】
[0058]PEIの量、比、組成物、溶液、溶媒及び緩衝液、pH、塩、並びに細胞接触及びインキュベーションのタイミング及び持続期間の開示は、1)プラスミド/PEI混合物又は核酸/PEI混合物中のPEI;2)遊離PEIとしてのPEI(すなわち、プラスミドなどの核酸又はポリヌクレオチド配列を実質的に又は全く有さないPEI);及び3)総PEI(プラスミド/PEI混合物又は核酸/PEI混合物中のPEI+遊離PEI)のうちの任意の1つ、任意の2つ、又は3つ全てに適用される。
【0053】
[0059]特定の実施形態では、PEIは、水性(例えば水)溶液などの溶液である。追加的な特定の実施形態では、PEIは、酸性化又は中和されたPEIである。用語「酸性化されたPEI」は、酸性溶媒にPEIを溶解させることによって調製されたPEI溶液を意味する。酸性化PEI溶液の酸性度は、典型的には、pH約0~約3.0、より典型的にはpH約0.5~約2.0である。用語「中和されたPEI」は、PEIを中性溶媒又は緩衝液中に溶解させることによって調製されたPEI溶液を意味する。中和されたPEI溶液は、約6.0~約8.0の範囲のpH、典型的には約6.5~約7.5の範囲のpH、より典型的には約6.8~約7.2の範囲のpH、最も典型的には約7.0~約7.2の範囲のpH、例えば約7.1を有し得る。
【0054】
[0060]PEIの形質移入活性を破壊せずにPEI溶液のpHを前記範囲内に樹立又は維持するために、任意の溶媒又は緩衝液を使用することができる。酸性溶媒の例は、塩酸(HCI)などの鉱酸及びグリシン-塩酸溶液のようにpHが酸性領域の有機酸を含む。中性溶媒/緩衝液の非限定的な例は、トリス(トリズマ(trizma)塩基)及びHEPESを含む。緩衝液は、約1mM~約100mM、より典型的には約2mM~約50mM、最も典型的には約5mM~約20mMの範囲であり得る。
【0055】
[0061]PEI溶液は、任意選択で塩を含み得る。塩の非限定的な例は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)及びマグネシウム(Mg)塩を含む。特定の態様では、PEI溶液の塩濃度は、約50mM~約500mM、より典型的には約100mM~約250mM、最も典型的には約125mM~約175mMの範囲である。
【0056】
[0062]核酸(プラスミド)とPEIとの混合は、溶液中で核酸(プラスミド)とPEIとを混合することによって実施される。混合は、PEIに基づく細胞形質導入に適合する任意の溶液中で起こることができる。非限定的な例は、本明細書に示される通りである。混合の後、核酸(プラスミド)/PEI混合物を約1分~約8時間;約10秒~約4時間;約1分~約60分;約1分~約30分;約10分~約45分;約10分~約30分;及び/又は約20分~約30分の期間インキュベートすることができる。典型的な時間は、約1分、約5分、約10分、約15分、約20分及び約30分を含む。
【0057】
[0063]PEI及び核酸(プラスミド)は、限定されない比で混合される。プラスミド/PEI混合物を産生するために典型的な比は、約1:0.01~約1:100のモル(若しくは重量)比範囲、又は約100:1~約1:0.01のモル(若しくは重量)比範囲のプラスミド混合物を含む。プラスミド/PEI混合物を産生するためにより典型的なモル(若しくは重量)比は、約1:1~約1:5のモル(若しくは重量)比範囲、又は約1:2~約1:4のモル(若しくは重量)比範囲のプラスミド混合物を含む。追加的な実施形態では、PEI:プラスミド重量比は、約0.1:1~約5:1の範囲又は約5:1~約0.1:1の範囲である。さらなる実施形態では、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物は、約0.1:1~約5:1の範囲のPEI:プラスミド重量比又は約5:1~約0.1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有する。特定の実施形態では、プラスミド/PEI混合物は、約1:1~約5:1の範囲又は約5:1~約1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有する。他の特定の実施形態では、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物は、約1:1~約5:1の範囲又は約5:1~約1:1の範囲のPEI:プラスミド重量比を有する。
【0058】
[0064]細胞形質導入の組成物及び方法を産生するために使用される核酸(プラスミド)の量は、様々である。特定の実施形態では、総PEI中の窒素(N)とプラスミド中のリン酸(P)とのモル比は、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物において約1:1~約50:1(N:P)の範囲である、又は総PEI中の窒素(N)とプラスミド中のリン酸(P)とのモル比は、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物において約1:1~10:1(N:P)である、又は総PEI中の窒素(N)とプラスミド中のリン酸(P)とのモル比は、遊離PEI/プラスミド/PEI細胞培養物において約5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、若しくは10:1(N:P)である。追加的な特定の実施形態では、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を含むプラスミドと、AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸及び/又はヘルパータンパク質をコードする核酸を含む1種又は複数種のプラスミドとの合計量は、細胞1mLあたり約0.1μg~約15μgの範囲である。
【0059】
[0065]細胞に核酸(プラスミド)/PEIの混合物を適用することは、細胞に核酸(プラスミド)/PEI混合物を添加することにより、核酸(プラスミド)/PEIの混合物が細胞と接触することによって実施される。核酸(プラスミド)/PEI溶液の混合物が添加(接触)される細胞は、接着細胞又は懸濁細胞であり得る。そのような細胞は、他の細胞との共培養物を含む可能性がある。
【0060】
[0066]細胞形質導入を達成するために、細胞は、限定されない核酸(プラスミド)/PEI混合物とある期間接触している。細胞と遊離PEIとの接触は、細胞が核酸(プラスミド)/PEI混合物と接触したのと同時(若しくは直後)又はその後に概して起こる。核酸(プラスミド)/PEI混合物と細胞の接触と、遊離PEIと細胞の接触との間に時間間隔があるならば、この時間間隔は、約1秒~約140時間、典型的には約1秒~約96時間、より典型的には約1秒~約48又は約72時間、最も典型的には約1秒~約24時間以下、例えば約16、約12、約8、又は約6時間以下であり得る。
【0061】
[0067]長期接触について、細胞は、死(非生存)細胞の量の増加を招くPEIの細胞毒性によって影響され、それにより、形質移入効率が減少する場合がある。細胞が総PEIと接触した後のインキュベーション時間は、数秒から数日の範囲であり得る。具体的には、細胞を核酸(プラスミド)/PEI又は総PEIと、例えば約1分~約48時間;約1分~約24時間;約1分~約16時間;約1分~約8時間;約1分~約4時間;約1分~約120分;約5分~約60分;約10分~約45分;又は約10分~約30分の期間接触させることができる。
【0062】
[0068]PEIの細胞毒性を減少させるために、細胞を核酸(プラスミド)/PEIと接触させた後に、培養培地が新鮮培養培地と交換される場合がある。形質移入後の培養培地交換は、細胞形質移入効率を顕著に減少させずにPEIの細胞毒性を最小化することができる。
【0063】
[0069]プラスミド/PEI混合物と接触するとき又は遊離PEIと接触するときに、形質移入用の細胞は、プラスミド/PEI混合物又は遊離PEIとの接触前又は接触時のいずれかに、細胞約1×10個/mL~約1×10個/mLの範囲の密度を有する。典型的には、細胞は、細胞約2×10個/mL~約5×10個/mLの範囲の密度を有する。より典型的には、細胞は、細胞約3×10個/mL~約3×10個/mL、例えば、細胞約4×10個/mL~約2×10個/mL、又は細胞約3×10個/mL~約1×10個/mLの範囲の密度を有する。
【0064】
[0070]形質移入用の細胞は、プラスミド/PEI混合物又は遊離PEIとの接触前又は接触時のいずれかに、任意選択で対数(指数)成長期であり得る。形質移入用の細胞は、プラスミド/PEI混合物及び/又は遊離PEIとの接触前又は接触時のいずれかに、任意選択で60%又は60%超の生存率、例えば70%、80%、若しくは90%又は90%超の生存率を有する可能性がある。
【0065】
[0071]本明細書記載のように接触し得る細胞は、ヒト細胞などの哺乳動物細胞を含む。そのような細胞は、in vitroで成長する若しくは生存率を維持することが可能な、又はin vitro組織培養に適応された、初代細胞又は細胞株であり得る。細胞株の例は、HEK293F(293F)細胞及びHEK293T(293T)細胞などのHEK293細胞を含むHEK(ヒト胎児腎臓)細胞を含む。
【0066】
[0072]より一般的には、本明細書記載のように接触した、そのような細胞を、「宿主細胞」と呼ぶことができる。「宿主細胞」は、AAVパッケージングタンパク質などのパッケージングタンパク質をコードする核酸(プラスミド)、ヘルパータンパク質をコードする核酸(プラスミド)、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸(プラスミド)、又は他の移入核酸(プラスミド)のレシピエントとして使用することができる又は使用されてきた、例えば、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞を意味する。この用語は、形質導入又は形質移入された本来の細胞の子孫を含む。したがって、本明細書に使用される「宿主細胞」は、外因性核酸配列を形質導入又は形質移入されている細胞を一般的に表す。単一の親細胞の子孫は、自然変異、偶発変異、又は意図的変異が原因で、本来の親と形態又はゲノム核酸若しくは総核酸の相補体が必ずしも完全に同一でない場合があることが理解されている。
【0067】
[0073]細胞の生存を持続させる又は細胞成長及び/若しくは増殖を実現するために適切な数多くの細胞成長培地が市販されている、又はそれを容易に製造することができる。そのような培地の例は、哺乳動物(例えばヒト)細胞の生存を持続させる又は成長を実現するための培地などの、無血清真核細胞成長培地を含む。非限定的な例は、ハムのF12又はF12K培地(Sigma-Aldrich)、FreeStyle(FS)F17培地(Thermo-Fisher Scientific)、MEM、DMEM、RPMI-1640(Thermo-Fisher Scientific)及びその混合物を含む。そのような培地にビタミン及び/又は微量無機物及び/又は塩及び/又は哺乳動物(例えばヒト)細胞用の必須アミノ酸などのアミノ酸を補充することができる。
【0068】
[0074]用語「形質導入する」及び「形質移入する」は、核酸(プラスミド)などの分子を宿主細胞に導入することを表す。細胞は、外因性核酸が細胞膜内部に導入されている場合に「形質導入」又は「形質移入」されている。したがって、「形質導入細胞」は、「核酸」若しくは「ポリヌクレオチド」が導入されている細胞、又は外因性核酸が導入されているその子孫である。特定の実施形態では、「形質導入」細胞(例えば、哺乳動物における細胞又は組織又は器官細胞など)は、外因性分子、例えば核酸(例えば導入遺伝子)の組込み後の細胞における遺伝的変化である。「形質導入」細胞(複数可)を繁殖させる、導入された核酸を転写させる、及び/又はタンパク質を発現させることができる。
【0069】
[0075]「形質導入」又は「形質移入」細胞において、核酸(プラスミド)は、レシピエント細胞のゲノム核酸に組み込まれる場合又は組み込まれない場合がある。導入された核酸がレシピエント細胞又はレシピエント生物の核酸(ゲノムDNA)に組み込まれるようになるならば、導入された核酸は、細胞又は生物に安定的に維持され、レシピエント細胞又はレシピエント生物の子孫細胞又は子孫生物によってさらに受け継がれる又は遺伝することができる。最終的に、導入された核酸は、レシピエント細胞又は宿主生物に染色体外で又は単に一過性に存在し得る。いくつかの技法が公知である(例えば、Grahamら(1973)Virology、52:456、Sambrookら(1989)Molecular Cloning, a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier、及びChuら(1981)Gene 13:197を参照されたい)。そのような技法を使用して、1つ又は複数の外因性DNA部分を適切な宿主細胞に導入することができる。
【0070】
[0076]用語「ベクター」は、小型担体核酸分子、プラスミド、ウイルス(例えばAAVベクター)、又は核酸の挿入若しくは組込みによって操作することができる他の媒体を表す。そのようなベクターを、遺伝子操作(すなわち「クローニングベクター」)のために使用して、細胞にポリヌクレオチドを導入/移入すること、及び挿入されたポリヌクレオチドを細胞において転写又は翻訳させることができる。「発現ベクター」は、宿主細胞における発現に必要とされる必要な調節領域を有する遺伝子配列又は核酸配列を含有する専門化されたベクターである。ベクター核酸配列は、少なくとも細胞における繁殖のための複製起点及び任意選択で異種ポリヌクレオチド配列、発現制御エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー)、イントロン、ITR(複数可)、選択マーカー(例えば抗生物質耐性)、ポリアデニル化シグナルなどの追加的なエレメントを一般的に含有する。本発明の目的のために、本明細書に示されるような「ベクター」は、本明細書に使用されるところの用語「プラスミド」の範囲内である。
【0071】
[0077]ウイルスベクターは、ウイルスゲノムを含む1つ又は複数の核酸エレメントに由来する又はそれに基づく。特定のウイルスベクターは、レンチウイルス、偽型レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのパルボウイルスベクターを含む。
【0072】
[0078]組換えウイルス、例えばレンチウイルス又はパルボウイルス(例えばAAV)ベクターなどのベクターの修飾語並びに組換えポリヌクレオチド及びポリペプチドの配列の修飾語としての用語「組換え」は、組成物が自然界に一般的に存在しない方式で操られた(すなわち操作された)ことを意味する。AAVベクターなどの組換えベクターの特定の例は、野生型ウイルス(例えばAAV)ゲノムに通常は存在しないポリヌクレオチドがウイルスゲノムに挿入される場合、すなわち異種の場合である。用語「組換え」は、本明細書においてウイルスベクター及びAAVベクターなどのベクターを参照して必ずしも使用されるわけではないものの、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む組換え形態などの配列が、そのような省略にかかわらず明白に含まれる。
【0073】
[0079]組換えウイルス「ベクター」又は「AAVベクター」は、分子的方法を使用して、ウイルス(例えばAAV)から野生型ゲノムを除去すること、及び転写物に転写される核酸又はタンパク質をコードする核酸などの非天然核酸により置換することによって、AAVなどのウイルスの野生型ゲノムから得られる。概して、AAVについて、AAVゲノムの一方又は両方の逆位末端反復(ITR)配列がAAVベクターに保持される。ウイルス(例えばAAV)ゲノム核酸に関して、ウイルスゲノムの全部又は一部が非天然(すなわち異種)配列により置換されているので、「組換え」ウイルス(例えばAAV)ベクターは、ウイルス(例えばAAV)ゲノムと区別される。したがって、非天然配列の組込みがウイルスベクター(例えばAAV)を「組換え」ベクターと規定し、AAVの場合、組換えベクターを「rAAVベクター」と呼ぶことができる。
【0074】
[0080]組換えベクター(例えば、レンチ-、パルボ-、AAV)配列を、細胞の後続のex vivo、in vitro又はin vivo感染(形質導入)のために本明細書において呼ばれるところの「粒子」にパッケージングすることができる。組換えベクター配列がカプシドに被包される又はAAV粒子にパッケージングされる場合、粒子を「rAAV」とも呼ぶことができる。そのような粒子は、ベクターゲノムをカプシドに被包する又はパッケージングするタンパク質を含む。特定の例は、ウイルスエンベロープタンパク質、並びにAAVの場合、AAV VP1、VP2及びVP3などのカプシドタンパク質を含む。
【0075】
[0081]ベクター「ゲノム」は、最終的にパッケージング又はカプシドに被包されて、ウイルス(例えばAAV)粒子を形成する組換えプラスミド配列の部分を表す。組換えプラスミドを使用して、組換えベクターが構築又は製造される場合、ベクターゲノムは、組換えプラスミドのベクターゲノム配列に対応しない「プラスミド」部分を含まない。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分は「プラスミド骨格」と呼ばれ、プラスミド骨格は、繁殖及び組換えウイルス産生に必要な工程であるプラスミドのクローニング及び増幅に重要であるが、それ自体はウイルス(例えばAAV)粒子にパッケージングもカプシドに被包もされない。したがって、ベクター「ゲノム」は、ウイルス(例えばAAV)によってパッケージング又はカプシドに被包される核酸を表す。
【0076】
[0082]用語「空のカプシド」及び「空の粒子」は、AAVタンパク質外殻を含むAAVビリオンであるが、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される、AAV ITRに隣接する核酸を全部又は一部欠如するAAVビリオンを表す。したがって、空のカプシドは、目的のタンパク質をコードする又は目的の転写物に転写される核酸を宿主細胞に移入するように機能しない。しかし、空のカプシド製剤は、ELISAなどの他の適用に有用性を有する。
【0077】
[0083]用語「パッケージングタンパク質」は、AAVがその複製を依存する非AAV由来のウイルス機能及び/又は細胞機能を表す。したがって、この用語は、AAV遺伝子の転写活性化、AAV mRNAの段階特異的スプライシング、AAVのDNA複製、Cap発現産物の合成及びAAVカプシドの集合に関与する部分を含む、AAVの複製に必要なタンパク質及びRNAを捕捉する。ウイルスに基づく補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)及びワクシニアウイルスなどの公知のヘルパーウイルスのうちのいずれかに由来し得る。
【0078】
[0084]本明細書に使用される「AAVパッケージングタンパク質」は、生産的なAAV複製のためにトランスで機能するAAV由来配列を表す。したがって、AAVパッケージングタンパク質は、AAVの主オープンリーディングフレーム(ORF)、rep及びcapによってコードされる。repタンパク質は、AAVのDNA複製起点の認識、結合及びニッキング;DNAヘリカーゼ活性;並びにAAV(又は他の異種)プロモーターからの転写のモジュレーションをとりわけ含む多数の機能を有することが示されている。cap(カプシド)タンパク質は、必要なパッケージング機能を供給する。AAVパッケージングタンパク質は、AAVベクターから消えたAAV機能をトランスで相補するために本明細書において使用される。
【0079】
[0085]「AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸」は、形質導入組換えAAVベクターを産生するために使用されるべきAAVベクターから欠失したAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子を一般的に表す。AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸は、AAVの複製に必要な、消えたAAV機能を相補するためにAAVのrep及び/又はcap遺伝子の一過性発現を提供するために一般的に使用されるが、核酸構築物は、AAV ITRを欠如し、それ自体を複製もパッケージングもできない。AAVパッケージングタンパク質をコードする核酸は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、又はビリオンの形態であり得る。Rep及びCap発現産物の両方をコードする、一般に使用されるプラスミドpAAV/Ad及びpIM29+45などのいくつかの核酸構築物が、記載されている。例えば、Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822~3828;及びMcCartyら(1991)J.Virol.65:2936~2945を参照されたい。Rep及び/又はCap発現産物をコードするいくつかのベクターが、記載されている(例えば、米国特許第5,139,941号及び同第6,376,237号)。
【0080】
[0086]用語「ヘルパータンパク質をコードする核酸」は、ヘルパー機能(複数可)を提供するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子(複数可)を一般的に表す。ヘルパータンパク質(複数可)をコードする核酸(複数可)を有するベクターを適切な宿主細胞に形質移入することができ、その際、ベクターは、次に宿主細胞においてAAVビリオンの産生を支援することができる。アデノウイルス、ヘルペスウイルス又はワクシニアウイルス粒子などの自然界に存在するような感染性ウイルス粒子は、この用語から明白に除外される。
【0081】
[0087]したがって、ヘルパータンパク質ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン又はコスミドの形態であり得る。特に、アデノウイルス遺伝子の完全相補体はヘルパー機能に必要とされないことが実証されている。例えば、DNA複製及び後期遺伝子合成ができないアデノウイルス変異体は、AAV複製に許容性であることが示されている。Itoら、(1970)J.Gen.Virol.9:243;Ishibashiら、(1971)Virology 45:317。
【0082】
[0088]E2B領域及びE3領域内の変異体は、AAVの複製を支援することが示されており、これは、E2B領域及びE3領域がおそらくヘルパー機能の実現に関与しないことを示している。Carterら、(1983)Virology 126:505。しかし、El領域を欠損している、又は欠失したE4領域を有するアデノウイルスは、AAVの複製を支援することができない。したがって、アデノウイルスヘルパータンパク質について、EIA領域及びE4領域は、直接的又は間接的のいずれかでAAVの複製に必要な可能性がある。Laughlinら、(1982)J.Virol.41:868;Janikら、(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1925;Carterら、(1983)Virology 126:505。他の特徴付けられたAd変異体は、EIB(Laughlinら(1982)、上記;Janikら(1981)、上記;Ostroveら、(1980)Virology 104:502);E2A(Handaら、(1975)J.Gen.Virol.29:239;Straussら、(1976)J.Virol.17:140;Myersら、(1980)J.Virol.35:665;Jayら、(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2927;Myersら、(1981)J.Biol.Chem.256:567);E2B(Carter、Adeno-Associated Virus Helper Functions、I CRC Handbook of Parvovirusesより(P.Tijssen編、1990));E3(Carterら(1983)、上記);及びE4(Carterら(1983)、上記;Carter(1995))を含む。
【0083】
[0089]E1Bに変異を有するアデノウイルスによって提供されるヘルパータンパク質の研究により、ElB 55kがAAVビリオンの産生に必要であるが、E1B 19kは必要ないことが報告された。加えて、国際公開第97/17458号及びMatshushitaら、(1998)Gene Therapy 5:938~945は、様々なAd遺伝子をコードするヘルパー機能ベクターを記載している。ヘルパーベクターの一例は、アデノウイルスVA RNAコード領域、アデノウイルスE4 ORF6コード領域、アデノウイルスE2A 72kDコード領域、アデノウイルスE1Aコード領域、及び無傷のEIB S5kコード領域を欠如するアデノウイルスE1B領域(例えば、国際公開第01/83797号参照)を含む。
【0084】
[0090]「導入遺伝子」は、細胞又は生物に導入することが意図される又は導入された核酸を好都合に表すために本明細書において使用される。導入遺伝子は、転写物に転写される又はポリペプチド若しくはタンパク質をコードする遺伝子などの任意の核酸を含む。
【0085】
[0091]「発現制御エレメント」は、作動可能に連結された核酸の発現に影響する核酸配列(複数可)を表す。制御エレメントは、プロモーター及びエンハンサーなどの、本明細書に示される発現制御エレメントを含む。AAVベクターを含むベクター配列は、1つ又は複数の「発現制御エレメント」を含む可能性がある。概して、そのようなエレメントは、適正な異種ポリヌクレオチドの転写及び適切ならば翻訳を促すために含まれる(例えばプロモーター、エンハンサー、イントロン、遺伝子の正しいリーディングフレームを維持してmRNAのフレーム内翻訳を許容するスプライシングシグナル及び停止コドンなど)。そのようなエレメントは、概してシスで作用し、「シス作用」エレメントと呼ばれるが、トランスでも作用し得る。
【0086】
[0092]発現制御は、転写、翻訳、スプライシング、メッセージ安定性などのレベルであり得る。概して、転写をモジュレートする発現制御エレメントは、転写される核酸の5’末端近く(すなわち「上流」)に並べられる。発現制御エレメントは、転写される配列の3’末端(すなわち「下流」)又は転写物内(例えばイントロン)に位置する可能性もある。発現制御エレメントは、転写される配列に隣接して又はそれとかなりの間隔であっても間隔を空けて(例えば、ポリヌクレオチドから1~10、10~25、25~50、50~100、100~500個、又はこれ超のヌクレオチド)位置する可能性がある。それにもかかわらず、AAVベクターなどのある特定のベクターの長さの制限のせいで、発現制御エレメントは、転写される核酸から概してヌクレオチド1~1000個以内である。
【0087】
[0093]機能的に、作動的に連結された核酸の発現は、エレメントが核酸の転写及び必要に応じて転写物の翻訳をモジュレートするように、エレメント(例えばプロモーター)によって少なくとも部分的に制御可能である。発現制御エレメントの具体例は、転写される配列の5’に通常位置するプロモーターである。プロモーターは、プロモーターが存在しない場合に発現される量と比較して、作動的に連結された核酸から発現される量を概して増加させる。
【0088】
[0094]本明細書に使用される「エンハンサー」は、異種ポリヌクレオチドに隣接して位置する配列を表すことができる。エンハンサーエレメントは、典型的にはプロモーターエレメントの上流に位置するが、核酸配列の下流又は核酸配列内でも機能を果たし、位置する可能性がある。したがって、エンハンサーエレメントは、核酸の100塩基対、200塩基対、又は300以上の塩基対の上流又は下流に位置し得る。エンハンサーエレメントは、プロモーターエレメントによって与えられる発現を超えて作動的に連結された核酸の発現を概して増加させる。
【0089】
[0095]発現構築物は、特定の細胞又は組織型において発現を推進するように役立つ調節エレメントを含む場合がある。発現制御エレメント(例えばプロモーター)は、本明細書において「組織特異的発現制御エレメント/プロモーター」と呼ばれる特定の組織又は細胞型において活性なものを含む。組織特異的発現制御エレメントは、特異的細胞又は組織(例えば肝臓)において概して活性である。発現制御エレメントは、特異的細胞、組織又は器官型に独特な転写活性化因子タンパク質又は他の転写調節因子によって認識されるので、特定の細胞、組織又は器官において概して活性である。そのような調節エレメントは、当業者に公知である(例えば、Sambrookら(1989)及びAusubelら(1992)参照)。
【0090】
[0096]本発明のプラスミドへの組織特異的調節エレメントの組込みは、核酸の発現のための部分的な組織向性を少なくとも提供する。肝臓において活性なプロモーターの例は、とりわけ、TTRプロモーター、ヒトアルファ1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーター;アルブミン、Miyatakeら、J.Virol.、71:5124~32(1997);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandigら、Gene Ther.3:1002~9(1996);アルファ-フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnotら、Hum.Gene.Ther.、7:1503~14(1996)]である。肝臓において活性なエンハンサーの例は、アポリポタンパク質E(apoE)HCR-1及びHCR-2(Allanら、J.Biol.Chem.、272:29113~19(1997))である。
【0091】
[0097]発現制御エレメントは、多数の異なる細胞型におけるポリヌクレオチドの発現を推進することができる遍在性の又は雑多なプロモーター/エンハンサーも含む。そのようなエレメントは、限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター/エンハンサー配列、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター/エンハンサー配列及び多様な哺乳動物細胞型に活性な他のウイルスプロモーター/エンハンサー、又は自然界に存在しない合成エレメント(例えば、Boshartら、Cell、41:521~530(1985)参照)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、細胞質β-アクチンプロモーター及びホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターを含む。
【0092】
[0098]発現制御エレメントは、調節可能な方法で発現を付与することもでき、すなわち、シグナル又は刺激が、作動的に連結される異種ポリヌクレオチドの発現を増加又は減少させる。シグナル又は刺激に応答して作動的に連結されるポリヌクレオチドの発現を増加させる調節可能なエレメントは、「誘導性エレメント」とも呼ばれる(すなわちシグナルによって誘導される)。特定の例は、限定されないが、ホルモン(例えばステロイド)誘導性プロモーターを含む。典型的には、そのようなエレメントによって付与される増加又は減少の量は、存在するシグナル又は刺激の量と比例し;シグナル又は刺激の量が大きいほど、発現における増加又は減少は大きい。特定の非限定的な例は、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオネイン(metallothionine)(MT)プロモーター;ステロイドホルモン誘導性マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター;T7ポリメラーゼプロモーターシステム(国際公開第98/10088号);テトラサイクリン抑制システム(Gossenら.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547~5551(1992));テトラサイクリン誘導性システム(Gossenら、Science.268:1766~1769(1995);Harveyら、Curr.Opin.Chem.Biol.2:512~518(1998)も参照されたい);RU486誘導システム(Wangら、Nat.Biotech.15:239~243(1997)及びWangら、Gene Ther.4:432~441(1997)];並びにラパマイシン誘導システム(Magariら、J.Clin.Invest.100:2865~2872(1997);Riveraら、Nat.Medicine.2:1028~1032(1996))を含む。これに関連して有用であり得る他の調節可能な制御エレメントは、特異的生理状態、例えば、温度、急性期、発生によって調節される制御エレメントである。
【0093】
[0099]発現制御エレメントは、核酸用の天然エレメント(複数可)も含む。異種ポリヌクレオチドの発現が自然の発現を模倣することが望まれる場合、天然制御エレメント(例えばプロモーター)が使用される場合がある。異種ポリヌクレオチドの発現が時間的に又は発生的に、又は組織特異的に又は特異的転写刺激に応答して調節されるべき場合、天然エレメントが使用され得る。イントロン、ポリアデニル化部位又はコザックコンセンサス配列などの他の天然発現制御エレメントが使用される場合もある。
【0094】
[0100]用語「作動的に連結された」は、コード配列の発現をもたらすように、コード配列の発現に必要な調節配列が、コード配列に対して適切な位置にされることを意味する。まさにこの定義は、発現ベクターへのコード配列及び転写制御エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー、及び終止エレメント)の配置に適用されるときがある。この定義は、雑種核酸分子が生成する第1及び第2の核酸分子の核酸配列の配置に適用されるときもある。
【0095】
[0101]核酸と作動的に連結されている発現制御エレメントの例では、関係は、制御エレメントが核酸の発現をモジュレートするような関係である。より具体的には、例えば、作動的に連結された2つのDNA配列は、2つのDNAが、DNA配列の少なくとも一方が他方の配列に生理学的効果を発揮することができる関係で(シス又はトランスに)配置されていることを意味する。
【0096】
[0102]したがって、ベクター用の追加的なエレメントは、限定することなく、発現制御(例えばプロモーター/エンハンサー)エレメント、転写終結シグナル又は終止コドン、AAV ITR配列の1つ又は複数のコピーなどの配列に隣接する5’若しくは3’非翻訳領域(例えば、ポリアデニル化(ポリA)配列)、又はイントロンを含む。
【0097】
[0103]例えば、さらなるエレメントは、例えばパッケージングを向上させ、混入している核酸の存在を減らすためのフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列を含む。AAVベクターは、一般的に約4kb~約5.2kb、又はわずかにそれよりも大きいサイズ範囲を有するDNA挿入物を概して許容する。したがって、より短い配列について、ウイルス粒子へのAAVベクターのパッケージングに許容されるウイルスゲノム配列の正常サイズ近く又は正常サイズに長さを調整するために、スタッファー又はフィラーの包含。様々な実施形態では、フィラー/スタッファー核酸配列は、核酸の非翻訳(タンパク質をコードしない)セグメントである。4.7Kb未満の核酸配列について、フィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列は、配列と組み合わせた(例えばベクターに挿入した)場合に約3.0~5.5Kbの間、又は約4.0~5.0Kbの間、又は約4.3~4.8Kbの間の合計長を有する長さを有する。
【0098】
[0104]イントロンは、ウイルス粒子へのAAVベクターのパッケージングのための長さを実現するためにフィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列としても機能することができる。フィラー又はスタッファーポリヌクレオチド配列として機能するイントロン及びイントロン断片も発現を増強することができる。
【0099】
[0105]「核酸」又は「プラスミド」によってコードされる「ポリペプチド」、「タンパク質」及び「ペプチド」は、天然野生型タンパク質のような完全長天然配列、並びに機能的部分配列、改変形態又は配列バリアントが天然完全長タンパク質の機能性をある程度保持するかぎり、部分配列、改変形態又はバリアントを含む。例えば、タンパク質は、欠失、置換又は付加を有する可能性及び部分的な機能又は活性を少なくとも保持する可能性がある。
【0100】
[0106]用語「改変する」又は「バリアント」及びその文法的変形は、核酸又はポリペプチドが参照配列から逸脱していることを意味する。したがって、改変配列及びバリアント配列は、参照配列と実質的に同じ、より大きい又はより少ない発現、活性又は機能を有する場合があるが、参照配列の部分的な活性又は機能を少なくとも保持する。
【0101】
[0107]改変の非限定的な例は、1つ又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸置換(例えば、1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100、100~150、150~200、200~250、250~500、500~750、750~850個又はこれ超のヌクレオチド又は残基)を含む。
【0102】
[0108]アミノ酸改変の例は、参照配列の保存的アミノ酸置換又は欠失(例えば部分配列又は断片)である。特定の実施形態では、改変配列又はバリアント配列は、未改変の配列の機能又は活性の少なくとも一部を保持する。
【0103】
[0109]転写される核酸及びタンパク質をコードする核酸の全ての哺乳動物形態及び非哺乳動物形態が含まれる。したがって、本発明は、遺伝子及びタンパク質がヒトの遺伝子及びタンパク質と実質的に類似の方法で機能する、非哺乳動物、ヒト以外の哺乳動物、及びヒト由来の遺伝子及びタンパク質を含む。
【0104】
[0110]本明細書に示される組換えウイルス(例えばAAV)ベクターの産生後、所望により、多様な従来方法を用いて宿主細胞からウイルス(例えばrAAV)ビリオンを精製及び/又は単離することができる。そのような方法は、カラムクロマトグラフィー、CsCI勾配などを含む。例えば、陰イオン交換カラム、アフィニティーカラム及び/又は陽イオン交換カラムによる精製などの、複数のカラム精製ステップを用いることができる。(例えば、国際公開第02/12455号及び米国特許出願公開第20030207439号参照)。代替的又は追加的に、CsCl勾配ステップを用いることができる。(例えば、米国特許出願公開第20120135515号;及び同第20130072548号参照)。さらに、感染性ウイルスを利用して、パッケージングタンパク質及び/又はヘルパータンパク質を発現させる場合、様々な方法を用いて残留ウイルスを不活性化させることができる。例えば、温度約60℃に、例えば20分以上加熱することによってアデノウイルスを不活性化することができる。AAVが熱に安定である一方で、ヘルパーアデノウイルスが熱に不安定であることから、この処理は、ヘルパーウイルスを効果的に不活性化する。
【0105】
[0111]組成物の修飾語として使用される場合の用語「単離された」は、組成物がヒトの手で作られた、又は天然in vivo環境から完全に又は少なくとも部分的に分離されたことを意味する。一般的に、単離された組成物は、組成物が自然界で通常関連する1種又は複数種の物質、例えば、タンパク質、核酸、脂質、糖質、細胞膜などの1種又は複数種の混入物を実質的に含まない。
【0106】
[0112]RNA分子に関して、用語「単離された」は、上に定義されたような単離されたDNA分子によってコードされるRNA分子を主として表す。或いは、この用語は、自然な状態で(すなわち、細胞又は組織において)関連するRNA分子と十分に分離されていることにより、「実質的に純粋な」形態で存在するRNA分子を表し得る(用語「実質的に純粋な」は、下に定義される)。
【0107】
[0113]タンパク質に関して、用語「単離されたタンパク質」又は「単離及び精製されたタンパク質」が、本明細書に使用されるときがある。この用語は、単離された核酸分子の発現によって産生されるタンパク質を主として表す。或いは、この用語は、「実質的に純粋な」形態で存在するように、自然に関連する他のタンパク質から十分に分離されているタンパク質を表し得る。
【0108】
[0114]用語「単離された」は、ヒトの手によって産生された組合せ、例えば組換えベクター(例えばrAAV)配列、又はベクターゲノムをパッケージング若しくはカプシドで被包するウイルス粒子及び医薬品製剤を排除しない。用語「単離された」は、雑種/キメラ、マルチマー/オリゴマー、改変(例えばリン酸化、グリコシル化、脂質化)若しくは誘導体化形態、又はヒトの手によって産生された宿主細胞において発現された形態などの、組成物の代替物理形態も排除しない。
【0109】
[0115]用語「実質的に純粋な」は、目的の化合物(例えば核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質など)を少なくとも50~60重量%含む調製物を表す。調製物は、目的の化合物を少なくとも75重量%又は約90~99重量%含む可能性がある。純度は、目的の化合物に適切な方法(例えば、クロマトグラフィー法、アガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析など)によって測定される。
【0110】
[0116]核酸分子、発現ベクター(例えば、ベクターゲノム)、プラスミドは、組換えDNA技法を用いて調製される場合がある。ヌクレオチド配列情報を利用できることは、単離された核酸分子の調製を多様な手段によって可能にする。例えば、多様な標準的なクローニング、組換えDNA技法を用いて、細胞発現又はin vitro翻訳及び化学合成技法により核酸(例えばプラスミド)を製造することができる。配列決定、ゲル電気泳動などにより純度を決定することができる。例えば、ハイブリダイゼーション技法又はコンピューターベースのデータベーススクリーニング技法を用いて核酸を単離することができる。そのような技法は、限定されないが、(1)相同ヌクレオチド配列を検出するための、ゲノムDNA又はcDNAライブラリーとプローブとのハイブリダイゼーション;(2)例えば発現ライブラリーを用いて共通の構造特徴を有するポリペプチドを検出するための抗体スクリーニング;(3)目的の核酸配列とアニーリングすることができるプライマーを用いた、ゲノムDNA又はcDNAに対するポリメラーゼ連鎖反応(PCR);(4)関連配列に関する配列データベースのコンピューター検索;及び(5)サブトラクション核酸ライブラリーのディファレンシャルスクリーニングを含む。
【0111】
[0117]核酸は、任意の好都合なクローニングベクターにDNAとして維持される場合がある。一実施形態では、核酸は、プラスミドに維持される。或いは、核酸は、哺乳動物細胞における発現に適したベクターに維持される場合がある。
【0112】
[0118]本発明の核酸、ベクター、発現ベクター(例えばrAAV)、及び組換えウイルス粒子、方法及び使用は、遺伝疾患の治療を可能にする。欠乏状態の疾患に関して、遺伝子導入を用いて、代償療法のために正常な遺伝子を罹患組織にもたらす他に、アンチセンス変異を用いた、疾患の動物モデルを生み出すことができる。不均衡な疾患状態に関して、遺伝子導入を用いてモデルシステムで疾患状態を生み出すことができ、次に、疾患状態と対抗しようとして、モデルシステムを使用することができる。欠損を修正するために核酸配列の部位特異的組込みを使用することも可能である。
【0113】
[0119]レンチウイルスベクター並びにAAV血清型及びそのバリアントを含むパルボウイルスベクターなどのウイルスベクターは、タンパク質をコードする核酸をex vivo、in vitro及びin vivoで細胞に送達することにより、コードされるタンパク質を細胞が発現する手段をもたらす。AAVは、細胞に浸透し、核酸/遺伝物質が細胞に安定的に維持され得るように核酸/遺伝物質を導入することができるので、AAVは、遺伝子療法ベクターとして有用なウイルスである。加えて、これらのウイルスは、核酸/遺伝物質を例えば特定の部位に導入することができる。AAVは、ヒトにおける病原性疾患と関連しないので、AAVベクターは、実質的なAAVの病理発生又は疾患を引き起こさずにヒト患者に異種ポリヌクレオチド配列(例えば、治療用タンパク質及び作用物質)を送達することができる。
【0114】
[0120]使用され得るウイルスベクターは、限定されないが、複数の血清型(例えばAAV-1~AAV-12及びその他)のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター及び雑種/キメラAAVベクター、レンチウイルスベクター及び偽型レンチウイルスベクター(例えばエボラウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、及びネコ免疫不全ウイルス(FIV))、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター(組織特異的プロモーター/エンハンサーを有する又は有さない)、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、非ウイルス性ベクター及びその他を含む。
【0115】
[0121]AAV粒子及びレンチウイルス粒子は、効果的な遺伝子送達用の媒体として有利に使用される場合がある。そのようなビリオンは、分裂細胞及び非分裂細胞に対する向性を含む、そのような適用のために望ましいいくつかの特徴を有する。これらのベクターを用いた初期の臨床実験により、持続しない毒性も実証され、免疫応答は最小限又は検出不能であった。AAVは、受容体介在性エンドサイトーシス又はトランスサイトーシスによってin vivo及びin vitroで多種多様な細胞型に感染することが知られている。これらのベクターシステムは、ヒトにおいて網膜上皮、肝臓、骨格筋、気道、脳、関節及び造血幹細胞を標的化して試験されてきた。例えばプラスミドDNA又はミニサークルに基づく非ウイルス性ベクターも、適切な遺伝子導入ベクターである。
【0116】
[0122]したがって、本発明の様々な実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクターなどのレンチウイルスベクター又はパルボウイルスベクターを含む。特定の実施形態では、組換えベクターは、パルボウイルスベクターである。パルボウイルスは、1本鎖DNAゲノムを有する小型ウイルスである。「アデノ随伴ウイルス」(AAV)は、パルボウイルス科である。
【0117】
[0123]AAVベクター及びレンチウイルスベクターは、病理発生と関連するウイルス遺伝子を概して含まない。そのようなベクターは、野生型AAV遺伝子のうちの1つ又は複数、例えばrep及び/又はcap遺伝子を、概して全体的又は部分的に欠失しているが、必要に応じて組換えベクターの救出、複製、及びAAVベクター粒子へのパッケージングのために少なくとも1つの機能的隣接ITR配列を保持する。例えば、ベクターの必須の部分のみ、例えばそれぞれITRエレメント及びLTRエレメントが含まれる。したがって、AAVベクターゲノムは、複製及びパッケージングのためにシスで必要とされる配列(例えば機能的ITR配列)を含む。
【0118】
[0124]組換えAAVベクター、並びにその方法及び使用は、任意のウイルス株又は血清型を含む。非限定的な例として、組換えAAVベクターは、例えばAAV-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、又はAAV-2i8などの任意のAAVゲノムに基づく可能性がある。そのようなベクターは、同じ株若しくは血清型(又は亜群若しくはバリアント)に基づく又は相互に異なる可能性がある。非限定的な例として、1つの血清型ゲノムに基づく組換えAAVベクターは、ベクターをパッケージングするカプシドタンパク質のうちの1種又は複数種と同一であり得る。加えて、組換えAAVベクターゲノムは、ベクターをパッケージングするAAVカプシドタンパク質のうちの1種又は複数種と異なるAAV(例えばAAV2)血清型ゲノムに基づき得る。例えば、AAVベクターゲノムは、AAV2に基づき得るのに対して、3種のカプシドタンパク質のうちの少なくとも1種は、例えばAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、若しくはAAV-2i8又はそのバリアントであり得る。AAVバリアントは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12及びAAV-2i8カプシドのバリアント及びキメラを含む。
【0119】
[0125]特定の実施形態では、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、例えば、国際公開第2013/158879号(国際出願PCT/US2013/037170)、国際公開第2015/013313号(国際出願PCT/US2014/047670)及び米国特許出願公開第2013/0059732号(米国特許出願第13/594,773号、LK01、LK02、LK03などを開示している)に示されるようなAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びAAV-2i8、並びにそのバリアント(例えば、アミノ酸挿入、付加、置換及び欠失などのカプシドバリアント)を含む。
【0120】
[0126]AAV及びAAVバリアント(例えばカプシドバリアント)の血清型(例えば、VP1、VP2、及び/又はVP3配列)は、例えばAAV1~AAV12を含む他のAAV血清型と異なる場合又は異ならない場合がある(例えば、AAV1~AAV12血清型のうちのいずれかのVP1、VP2、及び/又はVP3配列と異なる)。
【0121】
[0127]本明細書に使用される用語「血清型」は、他のAAV血清型と血清学的に異なるカプシドを有するAAVを表すために使用される特質である。血清学的特質性は、別のAAVと比較した、抗体と1つのAAVとの間の交差反応性の欠如に基づき決定される。そのような交差反応性の差は、通常、カプシドタンパク質配列/抗原決定基における差による(例えば、AAV血清型のVP1、VP2、及び/又はVP3配列の差による)。カプシドバリアントを含むAAVバリアントが、参照AAV血清型又は他のAAV血清型と血清学的に異ならない場合があるにもかかわらず、AAVバリアントは、参照AAV血清型又は他のAAV血清型と比較して少なくとも1つのヌクレオチド又はアミノ酸残基が異なる。
【0122】
[0128]伝統的な定義では、血清型は、目的のウイルスが既存の及び特徴付けられた全ての血清型に特異的な血清に対して中和活性が試験され、目的のウイルスを中和する抗体が見出されなかったことを意味する。より多くの天然ウイルス単離株が発見され、及び/又はカプシド変異体が作製されるので、現在存在する血清型のうちのいずれかと血清学的な差がある場合又はない場合がある。したがって、新しいウイルス(例えばAAV)が血清学的な差を有さない場合、この新しいウイルス(例えばAAV)は、対応する血清型の亜群又はバリアントである。多くの場合、カプシド配列の改変を有する変異体ウイルスが、血清型の従来の定義により別の血清型であるかどうかを判定するために、変異体ウイルスに中和活性の血清学的試験をまだ行わなければならない。したがって、便宜上及び繰り返しを避けるために、用語「血清型」は、血清学的に異なるウイルス(例えばAAV)と、所与の血清型の亜群又はバリアントに入り得る、血清学的に異ならないウイルス(例えばAAV)との両方を広く表す。
【0123】
[0129]様々な例示的な実施形態では、参照血清型に関係するAAVベクターは、1つ又は複数のAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、又はAAV-2i8(例えば、ITR、又はVP1、VP2、及び/又はVP3配列など)と少なくとも80%以上(例えば85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など)同一の配列を含む又はそれからなる、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、又はその部分配列を有する。
【0124】
[0130]本発明の組成物、方法及び使用は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、又はAAV-2i8などの参照AAV血清型と100%未満の配列同一性を示すが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、又はAAV-2i8の遺伝子又はタンパク質などのような公知のAAV遺伝子又はタンパク質と異なる及び同一でないAAV配列(ポリペプチド及びヌクレオチド)及びその部分配列を含む。一実施形態では、AAVポリペプチド又はその部分配列は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、又はAAV-2i8(例えば、VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシド又はITR)などの任意の参照AAV配列又はその部分配列と少なくとも75%以上、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%など同一、最大100%同一の配列を含む又はそれからなる。特定の態様では、AAVバリアントは、1、2、3、4、5、5~10、10~15、15~20個又はこれ超のアミノ酸置換を有する。
【0125】
[0131]AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12又はAAV-2i8並びにバリアント配列、関連配列、雑種配列及びキメラ配列を含む組換えAAVベクターは、当業者に公知の組換え技法を用いて、1つ又は複数の機能的AAV ITR配列に隣接する1つ又は複数の核酸配列(導入遺伝子)を含むように構築することができる。
【0126】
[0132]核酸(プラスミド)、ベクター、組換えベクター(例えばrAAV)、及び組換えウイルス粒子は、医薬組成物に組み込むことができる。そのような医薬組成物は、対象へのin vivo又はex vivo投与及び送達にとりわけ有用である。特定の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体又は賦形剤を含有する。そのような賦形剤は、組成物の投与を受けている個体に有害な免疫応答をそれ自体で誘導しない任意の医薬品であって、過度の毒性なしに投与され得る医薬品を含む。
【0127】
[0133]本明細書に使用される用語「薬学的に許容される」及び「生理学的に許容される」は、1つ又は複数の投与経路、in vivo送達又は接触に適した、生物学的に許容される気体、液体若しくは固体の製剤、又はその混合物を意味する。「薬学的に許容される」又は「生理学的に許容される」組成物は、生物学的に又はその他の点で望ましくないわけではない物質であり、例えば、この物質は、実質的な望ましくない生物学的作用を引き起こさずに対象に投与され得る。したがって、そのような医薬組成物は、例えば核酸、ベクター、ウイルス粒子又はタンパク質を対象に投与することに使用される場合がある。
【0128】
[0134]薬学的に許容される賦形剤は、限定されないが、水、食塩水、グリセロール、糖及びエタノールなどの液体を含む。薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩もその中に含まれる可能性がある。追加的に、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質がそのような溶剤中に存在する場合がある。
【0129】
[0135]医薬組成物は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがそれらに限定されない多数の酸と形成することができる塩として提供され得る。塩は、対応する遊離塩基形態よりも水溶媒又は他のプロトン溶媒の方に多く溶解する傾向がある。他の場合、調製物は、以下、すなわち1~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、及び2~7%マンニトールのうちのいずれか又は全てを、4.5~5.5のpH範囲で含有し得る凍結乾燥粉末であって、使用前に緩衝液と混合される凍結乾燥粉末の場合がある。
【0130】
[0136]医薬組成物は、医薬品の投与又はin vivo接触若しくは送達に適合性の溶媒(水性又は非水性)、溶液(水性又は非水性)、乳剤(例えば、水中油型又は油中水型)、懸濁液、シロップ剤、エリキシル剤、分散媒及び懸濁媒、コーティング剤、等張化剤及び吸収促進又は吸収遅延剤を含む。水性及び非水性の溶媒、溶液及び懸濁液は、懸濁化剤及び増粘剤を含む場合がある。そのような薬学的に許容される担体は、錠剤(コーティング又は非コーティング)、カプセル(硬又は軟)、マイクロビーズ、粉末、顆粒及び結晶を含む。補助的な活性化合物(例えば、保存剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤及び抗真菌剤)も組成物に組み入れることができる。
【0131】
[0137]医薬組成物は、特定の投与経路又は送達経路と適合するように製剤化することができる。したがって、医薬組成物は、様々な経路による投与に適した担体、希釈剤、又は賦形剤を含む。
【0132】
[0138]組成物及び方法は、無菌であり得る。そのような工程に適した容器の中で組成物が製造される場合及び方法が行われる場合がある。そのような容器は、皿、フラスコ、ローラーボトル、バッグ、バイオリアクター、器(vessel)、チューブ、バイアルなどを含む。容器は、限定されないが、ガラス、プラスチック及びポリスチレン、ポリブチレン、ポリプロピレンなどのポリマーを含む材料からできている場合がある。
【0133】
[0139]組成物及び方法のステップは、計画された順序又は再配列された順序で行われ得る。方法のステップは、段階的に又は介在期間を置いて間隔を空けて行うことができる。言い換えると、方法のステップを行うことができ、それから次のステップとの間に時間間隔が存在する可能性があり、そのような間隔は、例えば約1秒~約60秒;約1分~約60分;約1時間~約24時間;約1日~約7日;又は約1週間~約48週間の範囲である。
【0134】
[0140]アデノウイルスベクターの作製のためのプロトコールは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,998,205号;同第6,228,646号;同第6,093,699号;及び同第6,100,242号;並びに国際公開第94/17810号及び同第94/23744号に記載されている。
【0135】
[0141]本発明は、ヒトの医学適用及び獣医学適用のための細胞及びベクターを産生するのに有用である。したがって、適切な対象は、ヒトなどの哺乳動物及び非ヒト哺乳動物を含む。用語「対象」は、動物、概してヒト、非ヒト霊長類(類人猿、テナガザル、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、マカク)などの哺乳動物、家畜(イヌ及びネコ)、農用動物(ニワトリ及びアヒルなどの家禽、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、及び実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)を表す。ヒト対象は、胎児、新生児、乳児、若年及び成人対象を含む。対象は、動物疾患モデル、例えばHemA及び当業者に公知のその他などの血液凝固疾患のマウス及び他の動物モデルを含む。
【0136】
[0142]本明細書に使用される「単位投薬形態」は、処置されるべき対象に単位投薬量として適合する物理的に別個の単位であって、各単位が、1つ又は複数の用量で投与された場合に、所望の効果(例えば予防効果又は治療効果)を生じると計算される予め決定された量を、任意選択で医薬担体(賦形剤、希釈剤、溶剤又は増量剤)と関連して含有する単位を表す。単位投薬形態は、液体組成物、又はフリーズドライ若しくは凍結乾燥された状態の組成物を含み得る例えばアンプル及びバイアル内にあることがあり;例えば無菌液体担体をin vivo投与又は送達の前に添加することができる。個別の単位投薬形態は、多回投与用キット又は容器に含まれる可能性がある。組換えベクター(例えばrAAV)配列、組換えウイルス粒子、及びその医薬組成物は、投与を簡単にし、投薬量を均一にするために単回又は多回投薬形態としてパッケージすることができる。
【0137】
[0143]本発明は、パッケージング材料及びその中の1つ又は複数の成分を有するキットを提供する。キットは、その中の成分の説明又は成分の使用説明書を含むラベル又は添付文書を概して含む。キットは、そのような成分、例えば核酸(プラスミド)、PEI、細胞の集合を含有する可能性がある。
【0138】
[0144]キットは、キットの1つ又は複数の成分を収容する物理構造を表す。パッケージング材料は、成分を無菌に維持することができ、そのような目的に通例使用される材料(例えば紙、段ボール、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプル、バイアル、チューブなど)でできている可能性がある。
【0139】
[0145]ラベル又は添付文書は、その中の1つ又は複数の成分の識別情報を含み得る。ラベル又は添付文書は、製造業者、ロット番号、製造場所及び製造日、有効期限を識別する情報を含み得る。ラベル又は添付文書は、製造業者の情報、ロット番号、製造業者の所在地及び製造日を識別する情報を含みうる。ラベル又は添付文書は、方法、使用、又は製造プロトコールにキットの成分のうちの1つ又は複数を使用するための説明書を含み得る。説明書は、組成物を生産させるため又は本明細書記載の方法のうちのいずれかを実施するための説明書を含み得る。
【0140】
[0146]ラベル又は添付文書は、成分、キット若しくは梱包材(例えば箱)と別の若しくはそれに添付した、又はキットの成分を含有するアンプル、チューブ若しくはバイアルに付属した、「印刷物」、例えば紙又はボール紙を含む。ラベル又は添付文書は、コンピューター可読媒体、例えばバーコードが印刷されたラベル、ディスク、CD-若しくはDVD-ROM/RAM、DVDなどの光ディスク、MP3、磁気テープ、又はRAM及びROMなどの電気的記憶媒体又は磁気/光記憶媒体などのこれらのハイブリッド、FLASH媒体又はメモリー型カードを追加的に含み得る。
【0141】
[0147]特に定義しないかぎり、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の専門家によって通例理解されるものと同じ意味を有する。本明細書記載の方法と類似又は等価の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるものの、適切な方法及び材料が、本明細書に記載されている。
【0142】
[0148]本明細書に引用される全ての特許、特許出願、刊行物、及び他の参考文献、GenBankの引用及びATCCの引用は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0143】
[0149]本発明の生体分子に関する様々な用語は、本明細書上記だけでなく、明細書及び特許請求の範囲の全体にわたっても使用される。
【0144】
[0150]本明細書開示の特徴のうちの全てを任意の組合せで組み合わせることができる。本明細書に開示される各特徴が、同一、等価、又は類似の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えられる場合がある。したがって、特に明白に述べないかぎり、開示された特徴(例えばPEI、プラスミド、ベクター(例えばrAAV、又は組換えウイルス粒子)は、等価又は類似の特徴の属の一例である。
【0145】
[0151]本明細書に使用される単数形「a」、「and」、及び「the」は、文脈が明らかに他のことを示さないかぎり、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「プラスミド」又は「核酸」への参照は、複数のそのようなプラスミド又は核酸を含み、「ベクター」への参照は、複数のそのようなベクターを含み、「ウイルス」又は「粒子」への参照は、複数のそのようなウイルス/粒子を含む。
【0146】
[0152]本明細書に使用される全ての数値又は数値域は、文脈が明らかに他のことを示さないかぎり、そのような範囲内の整数及び範囲内の値又は整数の分数を含む。したがって、例えば80%以上の同一性への参照は、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%などに加えて、81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%など、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%など及びその他を含む。
【0147】
[0153]超(より大きい)又は未満を伴う整数への参照は、それぞれ参照値を超える又は参照値未満の任意の数を含む。したがって、例えば、100未満への参照は、99、98、97などから、ずっと下に数1までを含み、10未満は、9、8、7などから、ずっと下に数1までを含む。
【0148】
[0154]本明細書に使用される全ての数値又は範囲は、文脈が明らかに他のことを示さないかぎり、そのような範囲内の値及び整数の分数並びにそのような範囲内の整数の分数を含む。したがって、例えば1~10などの数値範囲への参照は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10に加えて、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、及びその他を含む。したがって、範囲1~50への参照は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などから最大で50まで、及び1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5など、及びその他を含む。
【0149】
[0155]一連の範囲への参照は、その一続きの中の異なる範囲の境界値を組み合わせる範囲を含む。したがって、例えば一連の範囲、例えば1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~850への参照は、1~20、1~30、1~40、1~50、1~60、10~30、10~40、10~50、10~60、10~70、10~80、20~40、20~50、20~60、20~70、20~80、20~90、50~75、50~100、50~150、50~200、50~250、100~200、100~250、100~300、100~350、100~400、100~500、150~250、150~300、150~350、150~400、150~450、150~500などの範囲を含む。
【0150】
[0156]本発明は、数多くの実施形態及び態様を説明するために肯定的な言い回しを使用して本明細書に一般的に開示される。本発明は、物質若しくは材料、方法のステップ及び条件、プロトコール、又は手順などの特定の主題が全体的又は部分的に除外される実施形態も具体的に含む。例えば、本発明のある特定の実施形態又は態様では、材料及び/又は方法のステップが排除される。したがって、本発明は、本発明が含まないものに関して本明細書において全般的に表現されないにもかかわらず、それでもなお本発明において明白には除外されない態様が、本明細書に開示される。
【0151】
[0157]本発明のいくつかの実施形態が記載されている。それでもなお、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、本発明を様々な使用法及び条件に適応させるために本発明の様々な変更及び改変を行うことができる。したがって、以下の実施例は、請求された発明の範囲を何らかの方法で限定するのでなく、例示することが意図される。
【実施例0152】
実施例1
[0158]本実施例は、様々な材料及び方法の説明を含む。
【0153】
[0159]細胞培養物:Thermo Fisher Scientific(Thermo Fisher Scientificによるインビトロゲン(Invitrogen)(商標)、R790-07)から購入したフリースタイル(FreeStyle)(商標)293F(293F)細胞を、4mM GlutaMAX(Life Technologies、カタログ番号35050-061)を補充したフリースタイル(商標)F17(F17)発現培地(Gibcoカタログ番号A13835-01)又はフリースタイル(商標)293(FS)発現培地(Gibcoカタログ番号12338-018)に入れて培養した。スピナーフラスコ及びバイオリアクターを含む様々な細胞培養物装置に入れて細胞を培養した。スピナーフラスコ培養(Bellco Glass、カタログ1965-83100又はCorning、カタログ3152)について、撹拌70rpm及び8%CO2の加湿雰囲気で細胞を37℃のインキュベーターで培養した;バイオリアクター((DASGIP Parallel Bioreactor system、Eppendorf)について、プログラムされたパラメーター(DO 30%、pH7.2、170又は150rpm)によって細胞培養を制御した。概して、細胞を0.25~0.5×10/mLで播種し、細胞密度が約1.6~2×10/mLに達したときに新鮮細胞培養培地を添加することによって2~3日毎に継代培養した。トリパンブルー染色後に血球計を使用して細胞密度及び生存率を決定した。
【0154】
[0160]プラスミド:組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)を産生するために3種のプラスミド、すなわち1)ITRに隣接するeGFPを含む導入遺伝子プラスミド;2)AAV血清型2のrep及びcap遺伝子を含むパッケージングプラスミド;並びに3)アデノウイルスE2、E4及びVARNA遺伝子を含むアデノウイルスヘルパープラスミドを使用した。全てのプラスミドをAldevron.Pから購入し、Aldevron.Pが製造した。
【0155】
[0161]PEI溶液の調製:直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)25KDa(Polysciences、カタログ番号23966-2)、PEI「Max」40KDa((Polysciences、カタログ番号24765-2、25KDa直鎖状PEIの塩酸塩)及びPEIpro(Polyplus、カタログ115-010)を形質移入試薬として使用した。大部分の形質移入試験について、PEI「Max」を5mMトリスに溶解して、0.5mg/mL溶液を作り、pHを7.10に調整した。PEI 25KDaを最初に80℃の熱水に溶解し、冷却後、トリス緩衝液を添加して、5mMトリス緩衝溶液(pH7.10)中にPEIが0.5mg/mLになるようにした。形質移入に関してPEI「Max」40KDaをPEI 25KDaと比較したいくつかの研究について、PEI 40KDa及び25KDaを、150mM NaClを含む若しくは含まない5mMトリス緩衝液又は150mM NaClを含む若しくは含まない水のいずれかに溶解させ、pH7.10に調整した。
【0156】
[0162]形質移入:293F細胞をスピナーフラスコの中で4mMグルタマックス(GlutaMAX)(商標)補充物を加えたFS培地又はF17培地のいずれかに入れて成長させた。形質移入の1日前に新鮮培地を添加することによって細胞を継代培養し、形質移入の日に、血球計を使用して細胞密度を決定し、新鮮FS培地又はF17培地で細胞の最終密度0.35~1×10個/mLにさらに希釈し、懸濁細胞培養ウェル又はスピナーフラスコのいずれかで形質移入を行った。
【0157】
[0163]上記3種のプラスミドをモル比1:1:1で形質移入に使用した。形質移入のために使用した総DNA量は、0.7~11.2μg/mlの細胞培養物であった。PEI/DNA複合体を異なる比のPEI及びDNAで調製し、室温で1分~最大30分インキュベートし、次にDNA/PEI複合体を細胞培養物に滴下した。形質移入効率及びrAAVの生産性に及ぼす遊離PEIの効果を調べるために、DNAと共にインキュベーションせずに上記と同じ方法でPEI分子を調製し、DNA/PEI複合体を添加した直後にこれを細胞培養物に添加した。形質移入効率及び他のアッセイのために、細胞及び細胞培養培地を含む試料を形質移入の24、48及び72時間後に採取し、形質移入の72時間後に細胞培養物を収集した。
【0158】
[0164]倒立蛍光顕微鏡(Leica)又はフローサイトメーター(Becton Dickinson Biosciences)のいずれかを用いて形質移入効率を評価した。蛍光顕微鏡を用いてeGFP陽性細胞を検出した。BD FACS Cantoフローサイトメーターを用いてGFP陽性細胞の率を評価した。
【0159】
[0165]バイオリアクターにおけるrAAVベクターの産生:2つの傾斜翼インペラーを備える2L型DASGIP Parallelバイオリアクターシステム(Eppendorf)を用いて、ベクター生産工程の規模を拡大した。研究では、最終運転容量を400mLに調整した。撹拌を150rpm又は170rpmに設定し、細胞培養の間に温度37℃及びpH7.2に維持した。酸素、二酸化炭素及び空気の混合気体を補充することによって溶存酸素を30%に維持した。DASGIP Control 4.0ソフトウェアを備えるDASGIP制御システムによってこれらのパラメーター全てを監視及び制御した。F17培地中で培養した293F細胞を細胞0.4×10個/mLの細胞密度及び95%超の生存率で播種した。播種後の2又は3日目に新鮮培地を添加することによって細胞を継代し、継代培養後に細胞密度は、細胞約0.4~0.7×10個/mLであった。継代培養の24時間後に、凡例に記載したように細胞にPEI/DNA複合体を形質移入したが、細胞密度は、形質移入時に細胞約1×10個/mLである。形質移入時に、PEI/DNAの重量比は2:1であり、PEIの1/2は遊離PEIであった。試料を24時間毎に最大72時間集めた。
【0160】
[0166]rAAVベクターの定量:形質移入された293F細胞収集物から凍結/融解を3サイクル又はマイクロフルイダイザー(Microfluidizer)(商標)(Microfluidics)を3回通過させることによってrAAVベクターを放出させた。遠心分離によって細胞の残骸をペレットにし、リアルタイムPCR及び形質導入アッセイのために上清を集めた。
【0161】
[0167]TaqManマスターミックス(カタログ4304437、Life technologies)を使用するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)(QuanStudio 7、Life Technologies)を用いてAAVベクターゲノムのコピー数を決定した。DNアーゼI(カタログ#79254、Qiagen)7.6Uで細胞溶解物10μLを処理して、混入している未パッケージングDNAを消化させ、次に0.2% SDS/5mM EDTA/0.2M NaClを用いて95℃で10分処理して、DNアーゼIを不活性化し、ベクターDNAを放出させた。プライマー及びプローブは、導入遺伝子のeGFP配列を検出した。フォワードプライマー:5’-GCACAAGCTGGAGTACAACTA-3’、リバースプライマー5’-TGTTGTGGCGGATCTTGAA-3’及びプローブ5’-/56-FAM/AGCAGAAGA/ZEN/ACGGCATCAAGGTGA/3IABkFQ/-3’。標準曲線を作製するために、HindIII-HF消化によりpAAV-eGFP-WRPEプラスミドを直鎖化し、1×10から1.28×10遺伝子コピーへ1:5系列希釈するのに使用した。全ての試料を3つ組で行った。
【0162】
[0168]48ウェルプレートに播種したHEK293細胞に細胞溶解物50μLを添加することによって形質導入アッセイを行った。形質導入時に各ウェルにエトポシドを終濃度3uMになるように添加した。48時間インキュベーション後に、倒立蛍光顕微鏡を用いてGFP陽性細胞を評価した。
【0163】
実施例2
[0169]本実施例は、様々な結果の説明を含む。
【0164】
[0170]形質移入効率及びrAAV産生に及ぼす形質移入培地の効果:rAAVベクターを大規模生産するためのスケーラブルな無血清懸濁培養システムを開発するために、293F細胞を成長させるためにFS培地、F17培地、SFM4Transfx-293及びその他を含む懸濁細胞培養に適したいくつかの培地を調べた。研究により、FS293培地及びF17培地が良好な細胞成長を支援し、スピナーフラスコで細胞密度が細胞2.5~3×10個/mLに達したことが明らかとなっている。これらの2種の培地は、293F細胞への効率的な遺伝子形質移入も支援する。
【0165】
[0171]形質移入効率及びrAAV産生に及ぼす遊離PEIの効果:高い形質移入効率は、高いrAAV産生を達成することに向けたステップである。形質移入試薬としてポリエチレンイミン(PEI)を採用して、懸濁培養で293F細胞に形質移入した。
【0166】
[0172]調べた数多くのパラメーターのうち、PEI分子の窒素(N)とDNAのリン酸(P)とのモル比(N:P比)は、形質移入効率に劇的に影響し、低いN:P比から高いN:P比に変化させた場合、非常に低い形質移入から高度に効率的な形質移入になった。形質移入のために使用した場合、N:P比が30などの高いN:P比では、細胞毒性も見出された。
【0167】
[0173]PEI「Max」40KDa、PEI 25KDa、PEIPro及びその他を含む、いくつかの異なるPEI分子を検討した。150mM NaClを有する又は有さないpH7.1のトリス緩衝液又はDI水のいずれかを用いてPEI分子を調製した。適切な量のプラスミドDNAを一定のN:P比でPEI分子と混合し、室温で1分、5分、10分、15分、20分及び最大30分などの異なる期間インキュベートし、次にこれを使用して細胞に形質移入した。
【0168】
[0174]データは、PEI「Max」40KDa及びPEI 25KDaの両方が高い効率の細胞形質移入を実現し、PEI「Max」40KDaが一貫して高い形質移入効率を実現したことを示している(図1)。したがって、形質移入試薬としてPEI「Max」40KDaを用いて大部分のデータを生成させた。
【0169】
[0175]材料及び方法に記載した3種のプラスミドを使用する293F細胞の形質移入によってrAAVベクターを産生した。12ウェルプレート、細胞培養用スピナーフラスコ及びバイオリアクターを含む異なる細胞培養装置を使用して、293F細胞を培養し、rAAVベクターを産生した。PEI/DNA混合物を重量比2:1及び4:1で調製して、細胞に形質移入した。形質移入効率のために細胞培養物1mlあたり異なるDNA量を試験し、3種のプラスミドの間のモル比1:1:1を形質移入のために概して使用した。FS培地及びF17培地を使用する無血清懸濁培養で293F細胞を培養した。
【0170】
[0176]PEI介在性遺伝子導入は、細胞受容体への結合を伴う非常に複雑な細胞生物学的工程であり、エンドサイトーシス、細胞内輸送、核移行及び遺伝子発現は、主要なステップのうちのほんの少数である。いかなる理論に縛られることを望むわけでなく、遊離PEI分子の適切な量は、形質移入効率を高め、今度はrAAV産生を増加させる場合がある。
【0171】
[0177]図2Aに示すように、細胞培養物にDNA/PEI複合体を添加した直後に、細胞培養物に遊離PEI分子を添加したとき、細胞形質移入の効率は、DNA/PEI複合体のみの場合の形質移入効率と比べて有意に改善した。遊離PEIがPEI形質移入効率を押し上げたというこの現象は、12ウェル細胞培養プレート(図2A)、細胞培養スピナーフラスコ及びバイオリアクターにおいて観察された。加えて、形質移入において遊離PEI分子が添加された場合に、rAAVベクターの産生が相応して増加し、2~3倍のrAAVベクターが産生された(図2B)。
【0172】
[0178]遊離PEIが形質移入効率及びrAAV産生を高めるという発見を、より大きな細胞培養の規模、スピナーフラスコ及びバイオリアクターでさらに試験した。遊離PEIを有する又は有さないスピナーフラスコにおける形質移入の結果(図3)は、12ウェルプレートで見出されたものと一致し、すなわち、遊離PEIが形質移入に使用された場合、形質移入効率が有意に増大し、rAAVの生産性は、遊離PEIを有さないで細胞溶解物1mlあたり1.3E+10ベクターゲノム(VG)から遊離PEIを有して約2.4E+10VG/mLまで2~3倍に増加した。
【0173】
[0179]形質移入での細胞の成長状態も、バイオリアクターにおけるrAAVベクター産生に有意な影響を有した。rAAV産生を改善するための方法をさらに調べるために、細胞の成長状態を試験して、rAAVベクターの収率に及ぼす影響を判定した。懸濁細胞培養において、細胞を細胞0.25×10個/mL、細胞0.35×10個/mL及び細胞0.5×10個/mLで播種し、2Lバイオリアクターの7日にわたる細胞培養(図4)で細胞成長曲線を確定した。細胞成長期を大まかに規定し、指数成長期は48h~84hの間と決定された。細胞密度のピークは、6日目に細胞4.8~5.8×10個/mLであり、それから細胞密度は減少し始めた。培養の間の細胞の生存率は、90%超であった。
【0174】
[0180]形質移入及びrAAV産生のために、運転容量約400mlの2Lバイオリアクターに生存率95%超の293F細胞を細胞密度0.4×10個/mLで接種した。プラスミド形質移入及びrAAV産生に最良の細胞培養域(複数可)を特定しようとするうち、異なる細胞培養状態の細胞の形質移入がrAAVの収率にも有意な効果を有することが発見された。
【0175】
[0181]次に、細胞播種の2又は3日後のいずれかに、新鮮細胞培養培地を添加することによって細胞を継代培養して、細胞密度を減らした。細胞密度は、細胞0.4~0.7×10個/mLの範囲である。次に、継代培養の24時間後に、記載したようなPEI介在性形質移入方法を用いて細胞に形質移入した。概して、形質移入時の細胞密度は、培地1mlあたり細胞7E+05個~1.3E+06個に達する。2つの独立した実験の条件及び対応する結果を表1に示す。
【0176】
【表1】

[0182]播種の3日後に細胞を継代培養し、播種の4日後に細胞に形質移入することは、播種の2日後に継代培養し、播種の3日後に形質移入された細胞と比べて有意に高いrAAV産生を招いたように見える。
【0177】
[0183]図5のデータに示されるように、比較されたこれらの2つの条件の間で形質移入効率は異ならないように見えることに注目すると興味深い。eGFPの遺伝子発現によって示される形質移入効率の比較を図5Aに示し、図5Bは、試験された全ての条件で約50%の細胞が形質移入されたことを示唆する、より定量的なFACSデータである。しかし、qPCRによって評価したベクター力価は、3日目の形質移入と比較して4日目の形質移入の方が有意に高く(図6A)、4日目の形質移入条件では、2倍、5倍、7~8倍高いときさえあった。4日目の形質移入及び撹拌速度150rpmの条件で最高力価は、1.38E+11vg/mLであった。
【0178】
[0184]qPCR分析と一致するHEK293細胞の形質導入によってこれらの実験からのrAAV-GFPの形質導入機能を評価した。各産生条件から同体積の細胞溶解物をHEK293細胞に添加した場合、3日目の形質移入の試料と比較して4日目の形質移入の試料からより高い形質導入が観察された(図6B)。これらのデータは、細胞成長段階及び代謝状態がrAAVの産生に重要な役割を果たす場合があること並びに形質移入効率に加えてrAAVの生合成により透過性の高い細胞代謝域があり得ることを示している。
【0179】
[0185]新たに開発されたPEI媒介rAAV産生システムは、十分にスケーラブルで、cGMPに準拠し、多用途のrAAV産生プラットフォームであって、無血清懸濁細胞培養において任意の血清型のrAAVベクターを産生するために使用することができるプラットフォームである。高効率PEI「Max」40KDa分子のような形質移入試薬としてのPEI、形質移入工程への遊離PEIの添加、及び形質移入のための発見された準備刺激済み(primed)細胞成長段階と組み合わせて、懸濁細胞培養条件でrAAVの非常に高い生産性が達成されたが、この生産性は、文献で報告されている類似の無血清懸濁培養システムの約10倍である(表2に要約)。
【0180】
【表2】

[0186]本発明の実施形態のうちのいくつかを説明し、上に具体的に例示したものの、本発明がそのような実施形態に限定されることは意図されない。本発明の範囲及び精神から逸脱せずに、以下の特許請求の範囲に示されるように実施形態に様々な改変が加えられる場合がある。
【0181】
[関連出願]
[0001]本特許出願は、その全体が参照により本明細書に明白に組み込まれている、2015年12月1日に出願された米国特許出願第62/261,815号の利益を主張する。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
【配列表】
2022071049000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に明細書に記載された発明。
【外国語明細書】