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特開2022-71095オートフォーカス使用のための固定焦点距離かつ一定構造長さの対物レンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071095
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】オートフォーカス使用のための固定焦点距離かつ一定構造長さの対物レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
G02B13/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031530
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2019515238の分割
【原出願日】2017-09-18
(31)【優先権主張番号】102016117547.1
(32)【優先日】2016-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】597114889
【氏名又は名称】ライカ カメラ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】カマンス、シーグルン
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥイブレ、ディートマー
(72)【発明者】
【氏名】ロート、シュテファン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】固定焦点距離対物レンズにおいて種々の物体距離について迅速なフォーカシングを可能にし、更に、極めて大きな一定の画像品質を可能にする。
【解決手段】結像面IMに関し、物体側から見て、a)1番目のフロントレンズ群G1は位置固定的に、b)2番目のレンズ群は正の屈折力を有するフォーカシング前群G2として摺動可能に、c)その開口が調節可能に構成された位置固定的な虹彩絞りAPを含み正又は負の屈折力を有する3番目のレンズ群が中群G3として位置固定的に、d)4番目のレンズ群が負の屈折力を有するフォーカシング後群G4として摺動可能に、及び、e)5番目のリアレンズ群G5が位置固定的に対物レンズ鏡筒内に配置されている。フォーカシング前群G2もフォーカシング後群G4も、一緒に互いに対し及び位置固定的に配置された他のレンズ群G1、G3、G5に対し、相対的に可動に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5つのレンズ群から構成される固定焦点対物レンズであって、
3つのレンズ群(G1、G3、G5)は位置固定的に及び2つのレンズ群(G2、G4)は光軸に沿って摺動に支承されており、
結像面(IM)に関し、物体側から見て、
a)1番目のフロントレンズ群(G1)は位置固定的に、
b)2番目のレンズ群は正の屈折力を有するフォーカシング前群(G2)として摺動可能に、
c)その開口が調節可能に構成された位置固定的な虹彩絞り(AP)を含み正又は負の屈折力を有する3番目のレンズ群が中群(G3)として位置固定的に、
d)4番目のレンズ群が負の屈折力を有するフォーカシング後群(G4)として摺動可能に、及び、
e)5番目のリアレンズ群(G5)が位置固定的に
対物レンズ鏡筒内に配置されており、
フォーカシング前群(G2)もフォーカシング後群(G4)も、異なる物体距離にある複数の物体に対し対物レンズをフォーカシングするために、一緒に互いに対し及び位置固定的に配置された他のレンズ群(G1、G3、G5)に対し、相対的に可動に構成されている、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群(G1)及びリアレンズ群(G5)は負の屈折力を有するか、又は、
b)フロントレンズ群(G1)及びリアレンズ群(G5)は正の屈折力を有するか、又は、
c)フロントレンズ群(G1)は正の屈折力を有しかつリアレンズ群(G5)は負の屈折力を有するか、又は、
d)フロントレンズ群(G1)は負の屈折力を有しかつリアレンズ群(G5)は正の屈折力を有する、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群(G1)の焦点距離f1と対物レンズ全体の焦点距離fの比f1/fは-40~30であり、
b)フォーカシング前群(G2)の焦点距離f2と対物レンズ全体の焦点距離fの比f2/fは-10~20であり、
c)中群(G3)の焦点距離f3と対物レンズ全体の焦点距離fの比f3/fは-30~40であり、
d)フォーカシング後群(G4)の焦点距離f4と対物レンズ全体の焦点距離fの比f4/fは-10~20であり、
e)リアレンズ群(G5)の焦点距離f5と対物レンズ全体の焦点距離fの比f5/fは-40~30である、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の対物レンズにおいて、
対物レンズは、結像面(IM)におけるイメージサークル径に対する全体焦点距離fの比0.3~5を有する、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の対物レンズにおいて、
結像面(IM)におけるイメージサークル径(Bd)の3乗に対する各フォーカシング部材(G2、G4)の体積Vの比は0.1未満(V/Bd<0.1)又は0.08未満であり、又は、各フォーカシング群(G2、G4)の質量は15g(グラム)未満である、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群(G1)は4つのレンズ部材(G1L1、G1L2、G1L3、G1L4)から構成され、第1レンズ部材(G1L1)、第2レンズ部材(G1L2)及び第3レンズ部材(G1L3)は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材(G1L4)は負の屈折力を有し、第3レンズ部材(G1L3)と第4レンズ部材(G1L4)の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレット(G1L3、G1L4)を構成するか、又は、
b)フロントレンズ群(G1)は4つのレンズ部材(G1L1、G1L2、G1L3、G1L4)から構成され、第1レンズ部材(G1L1)及び第2レンズ部材(G1L2)は正の屈折力を有し、第3レンズ部材(G1L3)は負の屈折力を有しかつ第4レンズ部材(G1L4)は正の屈折力を有し、第3レンズ部材(G1L3)と第4レンズ部材(G1L4)の組み合わせが負の全体屈折力を有するレンズダブレット(G1L3、G1L4)を構成するか又は第2レンズ部材(G1L2)と第3レンズ部材(G1L3)と第4レンズ部材(G1L4)の組み合わせが正の全体屈折力を有する接合部材(G1L2、G1L3、G1L4)を構成するか、又は、
c)フロントレンズ群(G1)は4つのレンズ部材(G1L1、G1L2、G1L3、G1L4)から構成され、第1レンズ部材(G1L1)及び第2レンズ部材(G1L2)は負の屈折力を有し、第3レンズ部材(G1L3)は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材(G1L4)は負の屈折力を有し、第3レンズ部材(G1L3)と第4レンズ部材(G1L4)の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレット(G1L3、G1L4)を構成するか、又は、
d)フロントレンズ群(G1)は負又は正の屈折力を有する1つのレンズ部材(G1L1)から構成されるか、又は、
e)フロントレンズ群(G1)は2つのレンズ部材(G1L1、G1L2)から構成され、第1レンズ部材(G1L1)は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材(G1L2)は負の屈折力を有し、第1レンズ部材(G1L1)と第2レンズ部材(G1L2)の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレット(G1L1、G1L2)を構成し、又は、
f)フロントレンズ群(G1)は3つのレンズ部材(G1L1、G1L2、G1L3)から構成され、第1レンズ部材(G1L1)及び第2レンズ部材(G1L2)は負の屈折力を有しかつ第3レンズ部材(G1L3)は正の屈折力を有し、第2レンズ部材(G1L2)と第3レンズ部材(G1L3)の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレット(G1L2、G1L3)を構成する、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の対物レンズにおいて、
a)中群(G3)は正の屈折力を有するレンズ部材(G3L1)から構成され、虹彩絞り(AP)はレンズ部材(G3L1)の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
b)中群(G3)は2つのレンズ部材(G3L1、G3L2)から構成され、第1レンズ部材(G3L1)は負の屈折率を有しかつ第2レンズ部材(G3L2)は正の屈折率を有し、虹彩絞り(AP)は第1レンズ部材(G3L1)と第2レンズ部材(G3L2)との間に位置固定的に配置されているか、又は、
c)中群(G3)は3つのレンズ部材(G3L1、G3L2、G3L3)から構成され、第1レンズ部材(G3L1)は負の屈折率を有し、第2レンズ部材(G3L2)は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材(G3L3)は正の屈折率を有し、第1レンズ部材(G3L1)と第2レンズ部材(G3L2)の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレット(G3L1、G3L2)を構成し、虹彩絞り(AP)はレンズダブレット(G3L1、G3L2)と第3レンズ部材(G3L3)の間に位置固定的に配置されているか、又は、
d)中群(G3)は3つのレンズ部材(G3L1、G3L2、G3L3)から構成され、第1レンズ部材(G3L1)は負の屈折率を有し、第2レンズ部材(G3L2)は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材(G3L3)は負の屈折率を有し、第2レンズ部材(G3L2)と第3レンズ部材(G3L3)の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレット(G3L2、G3L3)を構成し、虹彩絞り(AP)は第1レンズ部材(G3L1)の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
e)中群(G3)は4つのレンズ部材(G3L1、G3L2、G3L3、G3L4)から構成され、第1レンズ部材(G3L1)は正の屈折率を有し、第2レンズ部材(G3L2)は負の屈折率を有し、第3レンズ部材(G3L3)は正の屈折率を有しかつ第4レンズ部材(G3L4)は正の屈折力を有し、第2レンズ部材(G3L2)と第3レンズ部材(G3L3)の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレット(G3L2、G3L3)を構成し、虹彩絞り(AP)は第1レンズ部材(G3L1)の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
f)中群(G3)は5つのレンズ部材(G3L1、G3L2、G3L3、G3L4、G3L5)から構成され、第1レンズ部材(G3L1)は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材(G3L2)は負の屈折率を有し、第1レンズ部材(G3L1)と第2レンズ部材(G3L2)の組み合わせは負の全体屈折率を有するレンズダブレット(G3L1、G3L2)を構成し、第3レンズ部材(G3L3)は負の屈折率を有しかつ第4レンズ部材(G3L4)は正の屈折力を有し、第3レンズ部材(G3L3)と第4レンズ部材(G3L4)の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレット(G3L3、G3L4)を構成し、第5レンズ部材(G3L5)は正の屈折率を有し、虹彩絞り(AP)は両レンズダブレットの間に位置固定的に配置されているか、又は、
g)中群(G3)は6つのレンズ部材(G3L1、G3L2、G3L3、G3L4、G3L5、G3L6)から構成され、第1レンズ部材(G3L1)は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材(G3L2)は負の屈折率を有し、第1レンズ部材(G3L1)と第2レンズ部材(G3L2)の組み合わせは負の全体屈折率を有するレンズダブレット(G3L1、G3L2)を構成し、第3レンズ部材(G3L3)は正の屈折率を有し、第4レンズ部材(G3L4)は負の屈折力を有しかつ第5レンズ部材(G3L5)は正の屈折力を有し、第4レンズ部材(G3L4)と第5レンズ部材(G3L5)の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレット(G3L4、G3L5)を構成し、第6レンズ部材(G3L6)は正の屈折力を有し、虹彩絞り(AP)は第1レンズダブレット(G3L1、G3L2)と第3レンズ部材(G3L3)との間に位置固定的に配置されている、
ことを特徴とする対物レンズ。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の対物レンズにおいて、
a)リアレンズ群(G5)は3つのレンズ部材(G5L1、G5L2、G5L3)から構成され、第1レンズ部材(G5L1)は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材(G5L2)は負の屈折力を有し、第1レンズ部材(G5L1)と第2レンズ部材(G5L2)の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレット(G5L1、G5L2)を構成し、第3レンズ部材(G5L3)は負の屈折力を有するか、又は、
b)リアレンズ群(G5)は3つのレンズ部材(G5L1、G5L2、G5L3)から構成され、第1レンズ部材(G5L1)は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材(G5L2)は負の屈折力を有し、第1レンズ部材(G5L1)と第2レンズ部材(G5L2)の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレット(G5L1、G5L2)を構成し、第3レンズ部材(G5L3)は正の屈折力を有するか、又は、
c)リアレンズ群(G5)は2つのレンズ部材(G5L1、G5L2)から構成され、第1レンズ部材(G5L1)は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材(G5L2)は負の屈折力を有するか、又は、
d)リアレンズ群(G5)は負の屈折力を有するレンズ部材(G5L1)から構成される、
ことを特徴とする対物レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念部に応じた交換可能な固定焦点距離対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような対物レンズは、写真撮影技術による画像撮影目的のためにアナログ式写真撮影技術から既知であり、同様にデジタル式画像撮影のためにも使用される。デジタルカメラは、写真撮影されるべき物体野を焦点合わせの目的で及び画像切り出し部(Bildausscnitt)の選択のためにプリズムを介してファインダへ偏向する画像撮影光路に旋回的に挿脱可能なミラーを最早使用しないことが増えており、画像の選択は、画像撮影センサによる持続的画像撮影によって及び該センサから得られカメラの背面のディスプレイに表示される物体切り出し部(Objektausschnitt)を用いて又は電子式ファインダ(Electronic View Finder)を用いて行われる。これらの対物レンズの焦点合わせ(フォーカシング)は、電子的オートフォーカス信号と対物レンズにおけるフォーカシング部材の相応の制御によって自動的に実行される。通常は、写真撮影用対物レンズは、良好な結像性能を生成するために、2つ以上のレンズ群から構成され、これらのレンズ群は位置固定的に又は光軸に沿って摺動可能に支承される個別レンズ素子(複数)を有する。種々異なる物体距離に対する対物レンズのフォーカシングのために、光軸に沿って摺動可能な1つのレンズ群を備えることは知られている。これは、例えば対物レンズヘッド即ち物体面に指向された前側の(上流側の)レンズ群又は完全な対物レンズであり得る。そのような構成は全体フォーカシング(Gesamtfokussierung)とも称される。しかしながら、この種のフォーカシングの場合、対物レンズの構造長さはフォーカシングの間に変化するため、緊密(コンパクト)性(Dichtigkeit)に関し欠点がある。このため、対物レンズ内で摺動可能に支承されるレンズ部材、いわゆるフォーカシング部材が光軸に沿って摺動される対物レンズも知られている。そのような構成はインナー(内焦式)フォーカシングとも称される。たしかに、この構造形式の対物レンズは、無限遠の物体距離から数メートルの、更には数センチメートルの近距離までの広い範囲でフォーカシングすることができる、即ち画像撮影面へ物体がシャープに結像されるが、まさに近距離において光学的結像性能は低下する。歪曲、像面湾曲、球面収差(開口収差:Oeffnungsfehler)、色収差及びコマ(収差)のような光学的画像エラーが大きくなる。この場合、画像の結果は、所望の物体距離に対しフォーカシングされているにも拘らず、現代の画像撮影システムの結像性能に対する要求には最早十分でないことが多い。それにも拘らず、大きな結像性能の達成が望まれる場合、多数の異なるレンズを有する複雑かつ高価な対物レンズ構造体が必要となる。或いは、とりわけ近距離において、全体フォーカシングを用いる対物レンズにおいて結像性能を高めるために、第2の可動のレンズ素子、いわゆるフロートエレメントを設けることが知られているが、フロートエレメントは結像エラーに対し対抗作用するが、通常はフォーカス距離(Fokuslage)に対し影響を及ぼさない。
【0003】
可変焦点距離対物レンズ(ズーム対物レンズ)を実現するために、大抵は、カムによって互いに対し相対的に位置調節可能な少なくとも2つのレンズ素子又はレンズ群が設けられる。フォーカシングは、依然として、フォーカシングのために位置調節可能なフォーカシング要素によって行われる。そのような既知の対物レンズの場合、従って、2つのレンズ群からなる1つの群が焦点距離変更の役割を担い、それとは独立に、更なるレンズ群がフォーカシングのために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 2013/0070124 A1
【特許文献2】US 8,619,374 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可変焦点距離を有するそのような対物レンズは例えばUS 2013/0070124 A1から知られている。この対物レンズは、焦点距離及びフォーカシング変更のために、3つの可動レンズ群を有する。
【0006】
US 8,619,374 B2からは、可変焦点距離を有する交換可能対物レンズが知られている。定置的なフロントレンズ群に続いて、焦点距離変更用の軸方向に位置調節可能な1つのレンズ群が配されている。定置的な2つの更なるレンズ群の間には、互いに対し独立に位置調節可能な2つのフォーカシングレンズ群が嵌め込まれている。これらの2つのフォーカシングレンズ群を用いることにより、焦点距離変更に依存して生じる結像エラーが補償されることが望まれる。
【0007】
本発明の課題は、固定焦点距離の交換可能対物レンズにおいて、無限遠から30cm未満の又は1:3までの結像倍率を有する至近距離に至るまでの種々の物体距離についてフォーカシングする際に、極めて大きな一定の画像品質を可能にすることであり、迅速かつ軽快なオートフォーカス動作を大きな加速度で達成可能にするために、フォーカシングのために必要なレンズは質量が小さくて単純な構造を有することが望まれる。更に、対物レンズは、フランジバック(Auflagemass)が短い遊びのない撮影システムへの使用に適合されること、短いバックフォーカス(Schnittweite)を有すること、同時に、対物レンズの射出瞳と結像面との間に十分に大きな距離を有することが望まれる。現代の画像(撮像)センサに適合するために、結像面における光入射角は、その垂線から見て、過大にならないことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明に応じ、請求項1の特徴部の特徴によって解決される。即ち、本発明の一視点により、5つのレンズ群から構成される固定焦点対物レンズが提供される。該対物レンズにおいて、3つのレンズ群は位置固定的に及び2つのレンズ群は光軸に沿って摺動に支承されており、
結像面に関し、物体側から見て、
a)1番目のフロントレンズ群は位置固定的に、
b)2番目のレンズ群は正の屈折力を有するフォーカシング前群として摺動可能に、
c)その開口が調節可能に構成された位置固定的な虹彩絞りを含み正又は負の屈折力を有する3番目のレンズ群が中群として位置固定的に、
d)4番目のレンズ群が負の屈折力を有するフォーカシング後群として摺動可能に、及び、
e)5番目のリアレンズ群が位置固定的に
対物レンズ鏡筒内に配置されており、
フォーカシング前群もフォーカシング後群も、異なる物体距離にある複数の物体に対し対物レンズをフォーカシングするために、一緒に互いに対し及び位置固定的に配置された他のレンズ群に対し、相対的に可動に構成されている(形態1・基本構成)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
有利な展開形態は従属請求項の特徴から明らかとなる。
(形態1)上記本発明の一視点参照。
(形態2)形態1の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群及びリアレンズ群は負の屈折力を有するか、又は、
b)フロントレンズ群及びリアレンズ群は正の屈折力を有するか、又は、
c)フロントレンズ群は正の屈折力を有しかつリアレンズ群は負の屈折力を有するか、又は、
d)フロントレンズ群は負の屈折力を有しかつリアレンズ群は正の屈折力を有することが好ましい。
(形態3)形態1又は2の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群の焦点距離f1と対物レンズ全体の焦点距離fの比f1/fは-40~30であり、
b)フォーカシング前群の焦点距離f2と対物レンズ全体の焦点距離fの比f2/fは-10~20であり、
c)中群の焦点距離f3と対物レンズ全体の焦点距離fの比f3/fは-30~40であり、
d)フォーカシング後群の焦点距離f4と対物レンズ全体の焦点距離fの比f4/fは-10~20であり、
e)リアレンズ群の焦点距離f5と対物レンズ全体の焦点距離fの比f5/fは-40~30であることが好ましい。
(形態4)形態1~3の何れかの対物レンズにおいて、対物レンズは、結像面におけるイメージサークル径に対する全体焦点距離fの比0.3~5を有することが好ましい。
(形態5)形態1~4の何れかの対物レンズにおいて、結像面におけるイメージサークル径Bdの3乗に対する各フォーカシング部材の体積Vの比は0.1未満(V/Bd<0.1)又は0.08未満であり、又は、各フォーカシング群の質量は15g(グラム)未満であることが好ましい。
(形態6)形態1~5の何れかの対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材、第2レンズ部材及び第3レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか、又は、
b)フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせが負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか又は第2レンズ部材と第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせが正の全体屈折力を有する接合部材を構成するか、又は、
c)フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか、又は、
d)フロントレンズ群は負又は正の屈折力を有する1つのレンズ部材から構成されるか、又は、
e)フロントレンズ群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、又は、
f)フロントレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第3レンズ部材は正の屈折力を有し、第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成することが好ましい。
(形態7)形態1~6の何れかの対物レンズにおいて、
a)中群は正の屈折力を有するレンズ部材から構成され、虹彩絞りはレンズ部材の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
b)中群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は正の屈折率を有し、虹彩絞りは第1レンズ部材と第2レンズ部材との間に位置固定的に配置されているか、又は、
c)中群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材は正の屈折率を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りはレンズダブレットと第3レンズ部材の間に位置固定的に配置されているか、又は、
d)中群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りは第1レンズ部材の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
e)中群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有し、第2レンズ部材は負の屈折率を有し、第3レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りは第1レンズ部材の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
f)中群は5つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折率を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折率を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は負の屈折率を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第5レンズ部材は正の屈折率を有し、虹彩絞りは両レンズダブレットの間に位置固定的に配置されているか、又は、
g)中群は6つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折率を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折率を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は正の屈折率を有し、第4レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第5レンズ部材は正の屈折力を有し、第4レンズ部材と第5レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第6レンズ部材は正の屈折力を有し、虹彩絞りは第1レンズダブレットと第3レンズ部材との間に位置固定的に配置されていることが好ましい。
(形態8)形態1~7の何れかの対物レンズにおいて、
a)リアレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は負の屈折力を有するか、又は、
b)リアレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は正の屈折力を有するか、又は、
c)リアレンズ群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有するか、又は、
d)リアレンズ群は負の屈折力を有するレンズ部材から構成されることが好ましい。
【0010】
請求の範囲に記載された解決手段的特徴については、現代の光学設計においては、通常、特定の課題のために最適な補正状態を有する機能可能な対物レンズシステムのための提案を予め与えられるレンズ列及び屈折力分布から計算して定める例えばOptical Research Associates社の“Code V”のような自動補正プログラムが使用されることに留意すべきである。光学設計者が所与のパラメータを目標を定めて変更することにより、自動的に達成された補正状態はその都度更に改善される。
【0011】
請求項1の特徴により、この方法で既に、半径、レンズ厚、レンズ間隔、使用されるべき光学ガラスの屈折率及びアッベ数についての構造データを得ることができる。従属請求項に与えられた特徴を考慮することにより、構造パラメータは段階的に目標を定めて改善されることができる。
【0012】
図面には、本発明の対物レンズの幾つかの実施例が所定の尺度で記載されており、構造データは夫々の図に割り当てられた表から見出すことができる。本発明の対物レンズの構造上のコストは、そのためにより小さい光学的結像性能が容認されれば、小さくなることは、当業者即ち光学設計者にとっては明らかである。
【0013】
本発明の対物レンズの本質的な解決手段的特徴は、結像面に関し光軸に沿って摺動可能に(可動に)支承(支持)された2つのフォーカシングレンズ群を対物レンズ鏡筒内に備え、レンズとアパーチャ絞り(虹彩絞りないしアイリス絞り)とを有し定置的な中群に対し、フォーカシング前群が物体側から見てその前方に、フォーカシング後群が物体側から見てその後方に配置されている点にある。これら2つのフォーカシングレンズ群を一緒に互いに対し相対的に(可動に)及び対物レンズ鏡筒内に位置固定的に配された残りのレンズ群に対して(相対的に可動に)制御することにより、異なる物体距離へのフォーカシングの際に入り込む一連の画像エラー(Gang der Bildfehler)が有利な態様で相互に補償される(打ち消される)。付加的に、本発明の対物レンズは、物体側から見て位置固定的なフロントレンズ群と、結像面に指向された位置固定的なリアレンズ群とを有する。このようにして、5つのレンズ群から構成され、そのうちの3つが位置固定的に支承されかつそのうちの2つがフォーカシング目的のために光軸に沿って摺動可能に支承されるよう構成された固定焦点距離の対物レンズが実現される。
【0014】
フローティングエレメント(機構)を備えた全体フォーカシングを用いる対物レンズとは異なり、本発明によるフォーカシング(以下においてはダブルフォーカシングとも称される)の場合、両者のフォーカシングレンズ群が一緒に、物体面を結像面にフォーカシングするためにフォーカス位置を摺動(シフト)する役割を担う(機能を有する)。無限遠から近距離設定へのフォーカシングのためのこれらのフォーカシング群のストローク(最大移動経路(距離)は全体ストロークに相当する)は、対物レンズの機械的構造長さとオートフォーカスのモータ/駆動機構のコンセプト(構成ないし態様)とによって制限される。両者の夫々の全体ストロークの互いに対する比率(割合)は、この場合、1であることが可能であり、或いは1に等しくないことも可能である。これは、構造上の条件による空間的制限から得られ、収差の最適化のために変更されることができる。本発明に応じ、この場合、フロントレンズ群とリアレンズ群は負の屈折力を有し、又は、フロントレンズ群とリアレンズ群は正の屈折力を有する。代替的な一実施形態では、フロントレンズ群が正の屈折力を有しかつリアレンズ群が負の屈折力を有するか、又は、フロントレンズ群が負の屈折力を有しかつリアレンズ群が正の屈折力を有する。
【0015】
対物レンズの特別な一実施形態では、フォーカシング前群G2もフォーカシング後群G4も正の屈折力を有し、無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面IMから離隔する。
【0016】
対物レンズの代替的一実施形態では、フォーカシング前群G2は正の屈折力を有しかつフォーカシング後群G4は負の屈折力を有し、フォーカシング前群は無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面IMから離隔し、フォーカシング後群は無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面に接近する。
【0017】
対物レンズの更なる一実施形態では、フォーカシング前群G2もフォーカシング後群G4も無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面IMに接近し、これら2つのフォーカシング群は負の屈折力を有する。
【0018】
本発明の対物レンズの更なる一実施形態では、フォーカシング前群G2は負の屈折力を有しかつフォーカシング後群G4は正の屈折力を有し、フォーカシング前群は無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面IMに接近し、フォーカシング後群は無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面から離隔する。
【0019】
例えば13mm~65mmの焦点距離を有する、既知の小判(35mm判:Kleinbildformat)(イメージサークル(像円)径(Bildkreisdurchmesser)43.3mm)のための対物レンズの場合、フロントレンズ群において正の屈折力を有するレンズよりも負の屈折力を有するレンズをより多く使用すること、ないしは、フロントレンズ群を全体として負の屈折力を有するよう構成することが、有利であることが判明した。例えば55mm~185mmの焦点距離を有する小判対物レンズの場合、フロントレンズ群には、負の屈折力を有するレンズよりも正の屈折力を有するレンズをより多く使用するのが有利であり、フロントレンズ群は正の全体屈折力を有する(全体として正の屈折力を有する)。
【0020】
本発明の対物レンズの中群が正の全体屈折力を有する場合、後側の構造群における屈折力(複数)の好都合な分布と、例えば対物レンズの予め設定される最大外寸(Aussenmassen)、予め設定される最大絞り径およびレンズ径から及びカメラバヨネット(マウント)の制限された寸法、とりわけその自由内径からもたらされる構造上の(予)設定(設計)値(所与の値)の順守とが保証される。
【0021】
そのような対物レンズの実施例は図面の図3図9に記載されており、5つのレンズ群についての焦点距離仕様値[f’]と屈折力値[Dpt.]を含む表を用いて更に詳細に説明される。
【0022】
このようにして、好ましくは例えば、(絞り)開放F値(Offenblendenzahl)2.0を有する24mm、50mm又は90mm対物レンズ、更には1.4の開放F値を有する50mm対物レンズをも実現することができる(この場合における焦点距離仕様値は小判(イメージサークル径43.3mm)に関するものである)。特許請求の範囲に規定されたパラメータを遵守しつつ、(例えば0.9までの)より小さい又は(例えば4.0の)より大きい開放F値を有する対物レンズを実現することは、当業者には可能である。開放F値がより小さい場合、光学的結像性能(収差)が過度に大きく低下しないことが望まれるのであれば、対物レンズ容積、必要なレンズの枚数及びレンズ径に対し不都合な影響を及ぼす構造上の規模ないし複雑性(Aufwand)は大きくなる。これに対し、開放F値がより大きい場合、通常は結像性能は維持又は悪化されるが、構造上の規模ないし複雑性は小さくなる。
【0023】
対物レンズの幾何学的データの他の画像(写真)フォーマット(Bildformate)へのスケール変更は、夫々の開放F値を維持しつつ可能であり、焦点距離の相応のスケール変更をもたらす。このようにして実現され、そのほかに本発明との関連において適合する構造的特徴を有する対物レンズは、同様に、本発明の対象である。
【0024】
本発明の対物レンズの特別な一実施形態では、a)フロントレンズ群の焦点距離f1と対物レンズ全体の焦点距離fの比f1/fは-40~30であり、フォーカシング前群の焦点距離f2と対物レンズ全体の焦点距離fの比f2/fは-10~20であり、中群の焦点距離f3と対物レンズ全体の焦点距離fの比f3/fは-30~40であり、フォーカシング後群の焦点距離f4と対物レンズ全体の焦点距離fの比f4/fは-10~20であり、リアレンズ群の焦点距離f5と対物レンズ全体の焦点距離fの比f5/fは-40~30である。
【0025】
比f1/fの第1の好適化(最適化)工程においては、-2.0と-0.8の間の又は0.4と5.0の間の範囲への限定が好都合であることが判明した。順守されるべき組立公差に関する過度な感度(敏感性)を回避するために、当該比を量的に(ないし絶対値で見て:betragsmaessig)下方向に(量的に小さな値に)限定すると格別に有利であり、可及的にコンパクトな構造寸法を達成するためには、比f1/fは量的に上方向に(量的に大きな値に)限定されることができる。従って、組立公差及び構造寸法について好適化された本発明の具体化例は、-1.7及び-1.0ないしそれらの間にある値(複数)又は0.5及び2.1ないしそれらの間にある値(複数)の比f1/fを有する。
【0026】
本発明の対物レンズの特別な一実施形態では、フォーカシング前群のフォーカシングストローク及び対物レンズの構造長さの減少は、比f2/fを-1.0と-0.3の間の又は1.0と10.0の間の範囲に限定することによって達成されることができる。一般的に、小さいフォーカシングストロークは、迅速なフォーカシングのために有利であるが、公差感度も大きくする。これに対し過度に大きなフォーカシングストロークは、一方では構造長さを大きくし、他方ではフォーカシングのために大きなエネルギ消費を伴う高出力かつ高速動作の駆動装置を必要とする。従って、本発明に応じたダブルフォーカシングのためには、比f2/fを-0.7及び-0.4又は1.3及び5.6ないし-0.7と-0.4の間又は1.3と5.6の間の範囲に限定すると格別に有利である。
【0027】
同様な方法でフォーカシング後群について実行される有利な好適化(最適化)は、比f4/fを-5.0と5.0の間の範囲に限定する場合に生じ、更なる好適化は、-1.9及び-0.8への又は0.6及び0.9への限定ないし-1.9と-0.8の間の又は0.6と0.9の間の範囲への限定によって達成されることができる。
【0028】
製造公差及び構造寸法に関する中群のレンズの有利な一実施形態は、比f3/fを-2.0と-0.5の間の又は0.2と5.0の間の範囲に限定することによって達成され、本発明の好適化例では、比f3/fは-1.2及び-1.0又は0.4及び3.4ないし-1.2と-1.0の間の又は0.4と3.4の間の範囲である。
【0029】
リアレンズ群の比f5/fの値が量的に大きい場合、不都合に大きな構造長さがもたらされ、その値が量的に小さい場合、(リア)レンズ群は組立公差に関し敏感になる。従って、有利な好適化例では、比f5/fは-28.0と-0.6の間の又は0.5と10.0の間の範囲に限定される。とりわけミラーレス写真撮影カメラ(このカメラでは光の(進行)方向に関し最終の(結像面の近くに配置された)レンズと結像面との間の距離は本発明に応じて極めて短い)の場合、光入射角を、結像面に対する垂線からみて、過度に大きくしないことが有利である。35°未満の入射角が有利であることが判明した。かくして、対物レンズは、短いフランジバックと短いバックフォーカス、例えば上記の小判に関しては夫々25mm未満、を有するカメラシステムについて格別に好適である。比f5/fの値が量的に過度に小さいと、従って、不都合な結果がもたらされる。なぜなら、それによって、光入射角が大きくなり、かくして、口径食も大きくなるからである。この問題に関して好適化された対物レンズの具体化例は、従って、比f5/fについて、-21.0及び-0.8又は0.8及び5.2の値ないし-21.0と-0.8の間の又は0.8と5.2の間の値を有する。
【0030】
本発明の一展開形態では、対物レンズは、結像面(IM)におけるイメージサークル径に対する全体焦点距離fの比0.3~5を有する。このようにして、射出瞳と結像面との間の十分に大きな距離(例えば40mm超)と13mm~216.5mmの焦点距離とを有する対物レンズを、上述の小判に関連して、実現することができる。
【0031】
大きなフォーカシング速度のために有利であるのは軽量なフォーカシング群である。結像面におけるイメージサークル径の3乗に対するフォーカシング前群及びフォーカシング後群の夫々の体積Vの比は0.1未満(V/Bd<0.1)であり、とりわけ0.08未満(V/Bd<0.08)である。格別に有利には、各フォーカシング群は10g(グラム)未満の質量を有する。
【0032】
相対体積の値0.08は、この場合、小判に関し、例えばショット(Schott)社のN-PSK53Aのような軽量ガラスの場合、23.2gの質量に相当し、例えばショット社のN-LASF31Aのような重量ガラスの場合、35.8gの質量に相当する。1.5倍より大きいイメージサークル径を有する中判システム(Mittelformatsystem)の場合、レンズの質量は、従って、軽量ガラスでは78.3gとなり、重量ガラスでは120.8gとなる。1.5倍より小さいイメージサークル径を有するAPSシステムの場合、レンズの質量は、従って、軽量ガラスでは6.9gとなり、重量ガラスでは10.6gとなる。
【0033】
小さな質量は、フォーカシング速度のために有利であり、モータ及びノイズとの関連において有利に作用する。
【0034】
本発明の対物レンズの特別な一実施形態では、フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材、第2レンズ部材及び第3レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力(Gesamtbrechkraft)を有するレンズダブレット(Linsenduplett)を構成する。本発明のフロントレンズ群の一実施例は、図面の図1及び図2に夫々対物レンズ1:2 90mm及び1:2 75mm(なお「1:2」は口径比(Oeffnungsverhaeltnis);「2」は開放(ないし開口)F値;「90mm」及び「75mm」は焦点距離。以下同様)として記載されているが、焦点距離仕様値[f’]と屈折力値[Dpt.]を含む対応する表を用いて更に詳細に説明される。
【0035】
フロントレンズ群は、対物レンズの代替的一例では、4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせが負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか又は第2レンズ部材と第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせが正の全体屈折力を有する接合部材(Kittglied)を構成する。図面には、これについて、図6及び図7においてより詳細に説明される実施例が記載されているが、これらは、1:2 90mm対物レンズとして、焦点距離仕様値[f’]と屈折力値[Dpt.]を含む対応する表を用いて更に詳細に説明される。
【0036】
他の一実施例では、フロントレンズ群は4つのレンズ部材からも構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は負の屈折力を有する。この例では、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせが負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成する。図面には、これについて、図5に、更に対応する表に、1:2.0 24mm対物レンズが詳細な群焦点距離(複数)及び屈折力値(複数)と共に示されている。
【0037】
フロントレンズ群は、1つの更なる対物レンズにおいては、負又は正の屈折力を有するただ1つのレンズ部材から構成される。この例について、図4に1:2.0 50mm対物レンズが、図8に1:1.4 50mm対物レンズが、それらについてのより詳細な値が夫々対応する表に示されている。
【0038】
本発明の対物レンズの更なる一実施形態では、フロントレンズ群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、両レンズ部材(第1レンズ部材と第2レンズ部材)の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成する。図面の図9は、1:1.4 50mm対物レンズとして対応する表を用いて一層より詳細に説明される相応の一実施例を示す。
【0039】
本発明の対物レンズの更なる一実施形態では、フロントレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第3レンズ部材は正の屈折力を有する。第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成する。図面には、図3において、1:2.0 50mm対物レンズの一実施例が対応する表によってより詳細に説明されている。
【0040】
本発明の対物レンズの有利な一形態では、中群は正の屈折力を有する1つのレンズ部材から構成され、虹彩絞りAPは当該レンズ部材の前方に位置固定的に配置されている。図面には、図7において、1:2.0 50mm対物レンズの一実施例が対応する表によってより詳細に説明されている。
【0041】
中群の一展開形態では、中群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は正の屈折率を有し、虹彩絞りAPは第1レンズ部材と第2レンズ部材との間に位置固定的に配置されている。図1及び図2はそのような中群の例を示している。
【0042】
中群の好適化された代替的一実施形態では、中群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材は正の屈折率を有する。第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りAPは、図5に示された一例では、当該レンズダブレットと第3レンズ部材の間に位置固定的に配置されている。
【0043】
3つのレンズ部材から構成される中群の更なる一例では、第1レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材は負の屈折率を有する。第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成する。図6に示した例では、虹彩絞りAPは第1レンズ部材の前方に位置固定的に配置されている。
【0044】
代替的一実施形態では、中群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有し、第2レンズ部材は負の屈折率を有しかつ第3レンズ部材と第4レンズ部材は正の屈折力を有する。第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りAPは第1レンズ部材の前方に位置固定的に配置されている。図3は、そのようなものの一実施例を示す。
【0045】
図4には、5つのレンズ部材から構成される中群の一例を有する一実施例が示されている。第1レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折率を有し、両者(第1レンズ部材と第2レンズ部材)の組み合わせは負の全体屈折率を有する(第1)レンズダブレットを構成する。この実施形態では、第3レンズ部材は負の屈折率を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、両者(第3レンズ部材と第4レンズ部材)の組み合わせは正の全体屈折力を有する(第2)レンズダブレットを構成する。第5レンズ部材は正の屈折率を有し、虹彩絞りAPは両レンズダブレット(第1レンズダブレットと第2レンズダブレット)の間に位置固定的に配置されている。
【0046】
代替的一実施形態では、中群は6つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折率を有し、両者(第1レンズ部材と第2レンズ部材)の組み合わせは負の全体屈折率を有する第1レンズダブレットを構成する。第3レンズ部材は正の屈折率を有し、第4レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第5レンズ部材は正の屈折力を有し、第4レンズ部材(素子)と第5レンズ部材(素子)の組み合わせは負の全体屈折力を有する第2レンズダブレットを構成する。第6レンズ部材は正の屈折力を有する。図8及び図9に示した例では、虹彩絞りAPは第1レンズダブレットと第3レンズ部材との間に位置固定的に配置されている。
【0047】
本発明の対物レンズの特別な一実施形態では、リアレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、両者(第1レンズ部材と第2レンズ部材)の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成する。第3レンズ部材は、図8及び図9に示された実施例の場合、負の屈折力を有する。
【0048】
本対物レンズの更なる一実施形態では、リアレンズ群は同様に3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有するが、両者(第1レンズ部材と第2レンズ部材)の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成する。図3に示された実施例では、第3レンズ部材は正の屈折力を有する。
【0049】
代替的一実施形態は、2つのレンズ部材を含むリアレンズ群を有する。図1図2及び図7に示された実施例では、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有する。
【0050】
負の屈折力を有するただ1つのレンズ部材から構成されるリアレンズ群の一例は、図4図5及び図6のそれぞれに例示的に示されている。
【0051】
格別に有利なことに、球面収差、コマ(収差)、非点収差、像面湾曲及び歪曲のようなモノクロマチックな結像エラー(単色収差)の補正のために、1つ以上のレンズ部材は、1つ又は2つの非球面を備えることができる。
【0052】
図面に示した実施例においては、これらの非球面は図3図9において記号「*」で特定されている。
【0053】
ミラーレス撮影システムに適合された短いバックフォーカス(例えば、小判について、25mm未満)及び画像撮影センサ(撮像センサ)に適合された射出瞳の位置を保証可能にするために、リアレンズ群は、1.8より大きい屈折力neを有する光学材料によるレンズを少なくとも1つ有することができる。このようにして、カメラシステムないし画像撮影システムによって予め規定される制限的な直径(例えばバヨネットの直径)に基づくレンズの最大径に対する制限も順守(維持)することができる。
【0054】
個別に図示され説明された5つのレンズ群は、対物レンズのバリエーションのすべてにおいて、何れもが不可欠でそれ自体で完結したコンポーネントである。これらのレンズ群の各々はそれ自体光学的に調整可能であり、このことは、とりわけ全体焦点距離に対する各レンズ群について定められる焦点距離の比によって表される。
【0055】
図面には、小判のための(小判に適合された)本発明の対物レンズの実施例(複数)が模式的に示されており、以下に、各図を用いてより詳細に説明される。なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】焦点距離90mm及び開放F値2を有する対物レンズの一例のレンズ断面図。
図2】焦点距離75mm及び開放F値2を有する対物レンズの一例のレンズ断面図。
図3】焦点距離24mm及び開放F値2を有する対物レンズの一例のレンズ断面図。
図4】焦点距離50mm及び開放F値2を有する対物レンズの一例のレンズ断面図。
図5】焦点距離24mm及び開放F値2を有する対物レンズの一例のレンズ断面図。
図6】焦点距離90mm及び開放F値2を有する対物レンズの一例のレンズ断面図。
図7】焦点距離90mm及び開放F値2を有する対物レンズの一例のレンズ断面図。
図8】焦点距離50mm及び開放F値1.4を有する対物レンズの一例のレンズ断面図。
図9】焦点距離50mm及び開放F値1.4を有する対物レンズの一例のレンズ断面図。
図10】結像面IMにおける画像センサの一例。
【実施例0057】
図1図9のレンズ断面図の紙面下側には、フォーカシングプロセスの際の各レンズ群の運動経路が記載されている。水平方向(紙面左右方向)の線はレンズ群G1、G2、G3、G4及びG5の位置を表している。これらの線のうち上側の線はフォーカス設定:無限遠の場合の位置、下側の線は最短物体距離に対するフォーカス設定の場合の位置、中間の線は中間のフォーカス設定の場合の位置を表している。垂直方向(紙面上下方向)の線は、位置固定的なレンズ群G1、G3及びG5に割り当てられており、斜めの線は摺動可能なフォーカシング群G2及びG4に割り当てられている。
【0058】
図面におけるレンズ断面図は縮尺通りに記載されており、そのため、例えば図1のレンズ部材G5L2におけるレンズ周縁部の材料厚みと比べたレンズ中央部の著しくより薄い材料厚みのような、相対的な仕様値(設計値:Angaben)は、従来の幾何学的手段によって、ヴィジュアル的に確認され、検査されることができる。このようにして、同様に、図1においてレンズ部材G1L2はレンズ中央部においてレンズ部材G1L1よりほぼ丁度2倍(2.11倍)より大きい材料厚みを有することが分かる。これらの関係は当業者であれば容易に分かるため、レンズの幾何学的形状も読み取ることができる。例えば、図1には、物体側から見て1番目のレンズ群G1は、光(進行)方向において結像面IMに向かって見た順序で、第1レンズG1L1の厚み程度で離隔配置された正の屈折力を有する2つの凸凹レンズと、より短い距離を以ってこれらに後置されており正の屈折力を有する両凸レンズと負の屈折力を有する両凹レンズとから構成される接合部材(接合素子)とから構成されていることが記載されている。
【0059】
具体的実施例は、90mm、75mm、50mm及び24mmの焦点距離と2の開放F値を有する対物レンズ(複数)と、50mm焦点距離及び開放F値1.4を有する2つの対物レンズについての以下の表から明らかとなる。なお、これらの焦点距離は夫々既知の小判(43.3mmのイメージサークル径)に関連付けられている。
【0060】
図1に関する表

【0061】
図2に関する表

【0062】
図3に関する表

【0063】
図4に関する表

【0064】
図5に関する表

【0065】
図6に関する表

【0066】
図7に関する表

【0067】
図8に関する表

【0068】
図9に関する表
【0069】
以下に本発明の態様を付記する。
(付記1)5つのレンズ群から構成される固定焦点対物レンズ。
3つのレンズ群は位置固定的に及び2つのレンズ群は光軸に沿って摺動に支承されている。
結像面に関し、物体側から見て、
a)1番目のフロントレンズ群は位置固定的に、
b)2番目のレンズ群はフォーカシング前群として摺動可能に、
c)その開口が調節可能に構成された位置固定的な虹彩絞りを含み正又は負の屈折力を有する3番目のレンズ群が中群として位置固定的に、
d)4番目のレンズ群がフォーカシング後群として摺動可能に、及び、
e)5番目のリアレンズ群が位置固定的に
対物レンズ鏡筒内に配置されている。
フォーカシング前群もフォーカシング後群も、異なる物体距離にある複数の物体に対し対物レンズをフォーカシングするために、一緒に互いに対し及び位置固定的に配置された他のレンズ群に対し、相対的に可動に構成されている。
(付記2)上記の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群及びリアレンズ群は負の屈折力を有するか、又は、
b)フロントレンズ群及びリアレンズ群は正の屈折力を有するか、又は、
c)フロントレンズ群は正の屈折力を有しかつリアレンズ群は負の屈折力を有するか、又は、
d)フロントレンズ群は負の屈折力を有しかつリアレンズ群は正の屈折力を有する。
(付記3)上記の対物レンズにおいて、
a)フォーカシング前群及びフォーカシング後群は正の屈折力を有するか、又は、
b)フォーカシング前群は正の屈折力を有しかつフォーカシング後群は負の屈折力を有するか、又は、
c)フォーカシング前群及びフォーカシング後群は負の屈折力を有するか、
d)フォーカシング前群は負の屈折力を有しかつフォーカシング後群は正の屈折力を有する。
(付記4)上記の対物レンズにおいて、フォーカシング前群もフォーカシング後群も、無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に、結像面から離隔する。
(付記5)上記の対物レンズにおいて、フォーカシング前群は無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面から離隔し、フォーカシング後群は無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面に接近する。
(付記6)上記の対物レンズにおいて、フォーカシング前群もフォーカシング後群も、無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に、結像面に接近する。
(付記7)上記の対物レンズにおいて、フォーカシング前群は無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面に接近し、フォーカシング後群は無限遠から近距離設定へのフォーカシングの際に結像面から離隔する。
(付記8)上記の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群の焦点距離f1と対物レンズ全体の焦点距離fの比f1/fは-40~30であり、
b)フォーカシング前群の焦点距離f2と対物レンズ全体の焦点距離fの比f2/fは-10~20であり、
c)中群の焦点距離f3と対物レンズ全体の焦点距離fの比f3/fは-30~40であり、
d)フォーカシング後群の焦点距離f4と対物レンズ全体の焦点距離fの比f4/fは-10~20であり、
e)リアレンズ群の焦点距離f5と対物レンズ全体の焦点距離fの比f5/fは-40~30である。
(付記9)上記の対物レンズにおいて、対物レンズは、結像面におけるイメージサークル径に対する全体焦点距離fの比0.3~5を有する。
(付記10)上記の対物レンズにおいて、結像面におけるイメージサークル径の3乗に対する各フォーカシング部材の体積の比は0.1未満、とりわけ0.08未満であり、又は、各フォーカシング群の質量は15g(グラム)未満である。
(付記11)上記の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材、第2レンズ部材及び第3レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか、又は、
b)フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせが負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか又は第2レンズ部材と第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせが正の全体屈折力を有する接合部材を構成するか、又は、
c)フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか、又は、
d)フロントレンズ群は負又は正の屈折力を有する1つのレンズ部材から構成されるか、又は、
e)フロントレンズ群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、又は、
f)フロントレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第3レンズ部材は正の屈折力を有し、第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成する。
(付記12)上記の対物レンズにおいて、
a)中群は正の屈折力を有するレンズ部材から構成され、虹彩絞りはレンズ部材の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
b)中群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は正の屈折率を有し、虹彩絞りは第1レンズ部材と第2レンズ部材との間に位置固定的に配置されているか、又は、
c)中群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材は正の屈折率を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りはレンズダブレットと第3レンズ部材の間に位置固定的に配置されているか、又は、
d)中群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りは第1レンズ部材の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
e)中群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有し、第2レンズ部材は負の屈折率を有し、第3レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りは第1レンズ部材の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
f)中群は5つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折率を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折率を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は負の屈折率を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第5レンズ部材は正の屈折率を有し、虹彩絞りは両レンズダブレットの間に位置固定的に配置されているか、又は、
g)中群は6つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折率を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折率を有する(第1)レンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は正の屈折率を有し、第4レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第5レンズ部材は正の屈折力を有し、第4レンズ部材と第5レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有する(第2)レンズダブレットを構成し、第6レンズ部材は正の屈折力を有し、虹彩絞りは第1レンズダブレットと第3レンズ部材との間に位置固定的に配置されている。
(付記13)上記の対物レンズにおいて、
a)リアレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は負の屈折力を有するか、又は、
b)リアレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は正の屈折力を有するか、又は、
c)リアレンズ群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有するか、又は、
d)リアレンズ群は負の屈折力を有するレンズ部材から構成される。
(付記14)5つのレンズ群から構成される固定焦点対物レンズ。
3つのレンズ群は位置固定的に及び2つのレンズ群は光軸に沿って摺動に支承されている。
結像面に関し、物体側から見て、
a)1番目のフロントレンズ群は位置固定的に、
b)2番目のレンズ群は正の屈折力を有するフォーカシング前群として摺動可能に、
c)その開口が調節可能に構成された位置固定的な虹彩絞りを含み正又は負の屈折力を有する3番目のレンズ群が中群として位置固定的に、
d)4番目のレンズ群が負の屈折力を有するフォーカシング後群として摺動可能に、及び、
e)5番目のリアレンズ群が位置固定的に
対物レンズ鏡筒内に配置されている。
フォーカシング前群もフォーカシング後群も、異なる物体距離にある複数の物体に対し対物レンズをフォーカシングするために、一緒に互いに対し及び位置固定的に配置された他のレンズ群に対し、相対的に可動に構成されている。
(付記15)上記の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群及びリアレンズ群は負の屈折力を有するか、又は、
b)フロントレンズ群及びリアレンズ群は正の屈折力を有するか、又は、
c)フロントレンズ群は正の屈折力を有しかつリアレンズ群は負の屈折力を有するか、又は、
d)フロントレンズ群は負の屈折力を有しかつリアレンズ群は正の屈折力を有する。
(付記16)上記の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群の焦点距離f1と対物レンズ全体の焦点距離fの比f1/fは-40~30であり、
b)フォーカシング前群の焦点距離f2と対物レンズ全体の焦点距離fの比f2/fは-10~20であり、
c)中群の焦点距離f3と対物レンズ全体の焦点距離fの比f3/fは-30~40であり、
d)フォーカシング後群の焦点距離f4と対物レンズ全体の焦点距離fの比f4/fは-10~20であり、
e)リアレンズ群の焦点距離f5と対物レンズ全体の焦点距離fの比f5/fは-40~30である。
(付記17)上記の対物レンズにおいて、対物レンズは、結像面におけるイメージサークル径に対する全体焦点距離fの比0.3~5を有する。
(付記18)上記の対物レンズにおいて、結像面におけるイメージサークル径Bdの3乗に対する各フォーカシング部材の体積Vの比は0.1未満(V/Bd<0.1)又は0.08未満であり、又は、各フォーカシング群の質量は15g(グラム)未満である。
(付記19)上記の対物レンズにおいて、
a)フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材、第2レンズ部材及び第3レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか、又は、
b)フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせが負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか又は第2レンズ部材と第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせが正の全体屈折力を有する接合部材を構成するか、又は、
c)フロントレンズ群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第4レンズ部材は負の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成するか、又は、
d)フロントレンズ群は負又は正の屈折力を有する1つのレンズ部材から構成されるか、又は、
e)フロントレンズ群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、又は、
f)フロントレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材及び第2レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第3レンズ部材は正の屈折力を有し、第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成する。
(付記20)上記の対物レンズにおいて、
a)中群は正の屈折力を有するレンズ部材から構成され、虹彩絞りはレンズ部材の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
b)中群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は正の屈折率を有し、虹彩絞りは第1レンズ部材と第2レンズ部材との間に位置固定的に配置されているか、又は、
c)中群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材は正の屈折率を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りはレンズダブレットと第3レンズ部材の間に位置固定的に配置されているか、又は、
d)中群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第3レンズ部材は負の屈折率を有し、第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りは第1レンズ部材の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
e)中群は4つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有し、第2レンズ部材は負の屈折率を有し、第3レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第2レンズ部材と第3レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、虹彩絞りは第1レンズ部材の前方に位置固定的に配置されているか、又は、
f)中群は5つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折率を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折率を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は負の屈折率を有しかつ第4レンズ部材は正の屈折力を有し、第3レンズ部材と第4レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第5レンズ部材は正の屈折率を有し、虹彩絞りは両レンズダブレットの間に位置固定的に配置されているか、又は、
g)中群は6つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折率を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折率を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折率を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は正の屈折率を有し、第4レンズ部材は負の屈折力を有しかつ第5レンズ部材は正の屈折力を有し、第4レンズ部材と第5レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第6レンズ部材は正の屈折力を有し、虹彩絞りは第1レンズダブレットと第3レンズ部材との間に位置固定的に配置されている。
(付記21)上記の対物レンズにおいて、
a)リアレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは負の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は負の屈折力を有するか、又は、
b)リアレンズ群は3つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有し、第1レンズ部材と第2レンズ部材の組み合わせは正の全体屈折力を有するレンズダブレットを構成し、第3レンズ部材は正の屈折力を有するか、又は、
c)リアレンズ群は2つのレンズ部材から構成され、第1レンズ部材は正の屈折力を有しかつ第2レンズ部材は負の屈折力を有するか、又は、
d)リアレンズ群は負の屈折力を有するレンズ部材から構成される。
【符号の説明】
【0070】
G1 フロントレンズ群
G2 フォーカシング前群
G3 中群
G4 フォーカシング後群
G5 リアレンズ群

IM 結像面
AP 虹彩絞りないしアイリス絞り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10