(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071106
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】ニコチン粒子および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/465 20060101AFI20220506BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220506BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220506BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220506BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
A61K31/465
A61K9/72
A61K9/14
A61K47/18
A61K47/26
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031716
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2018563781の分割
【原出願日】2017-06-14
(31)【優先権主張番号】16177163.9
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ズベール ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルペ ニコロ
(57)【要約】
【課題】簡単に形成および処理されうるニコチン粒子および組成物を提供する。
【解決手段】組成物は多数の粒子で形成されている。これらの粒子は、ニコチン、糖、およびアミノ酸または短鎖ペプチドを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンと、
糖と、
アミノ酸または短鎖ペプチドを含む、粒子。
【請求項2】
前記粒子が、約0.5~約10マイクロメートルの範囲のサイズ、または約0.5~約5マイクロメートルの範囲のサイズを有する、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記アミノ酸が、ロイシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンを含む、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項4】
前記糖がトレハロース、またはマンニトールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
前記ニコチンが、乳酸ニコチン、ピルビン酸ニコチン、クエン酸ニコチン、およびアスパラギン酸ニコチンを含む群から選択されるニコチン塩を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
前記アミノ酸がロイシンを含み、かつ前記糖がトレハロースを含み、かつ前記ニコチンが乳酸ニコチンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項7】
前記ニコチンが、クエン酸ニコチンまたはアスパラギン酸ニコチンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
前記粒子が、約25wt%以下のニコチンまたは約5~約15wt%のニコチンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
前記粒子が、約60wt%~約95wt%の糖または約70~約90wt%の糖を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項10】
前記粒子が、約1wt%~約10wt%のアミノ酸または約3~約7wt%のアミノ酸を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子を複数含む組成物であって、約90%の前記複数の粒子が約4.5マイクロメートル以下の粒子サイズを有し、かつ約50%の前記複数の粒子が約2.5マイクロメートル未満の粒子サイズを有する、組成物。
【請求項12】
ニコチン、糖、およびアミノ酸または短鎖ペプチドを液体担体中で混合して液体混合物を形成する工程と、
前記液体混合物を噴霧乾燥して、約0.5~約10マイクロメートルの範囲または約0.5~約5マイクロメートルの範囲のサイズを有する複数の粒子を形成する工程とを含む、方法。
【請求項13】
前記混合工程が、鎮咳剤を前記ニコチン、糖、およびアミノ酸またはペプチドと前記液体担体中で混合して前記液体混合物を形成する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ニコチンが、乳酸ニコチン、ピルビン酸ニコチン、クエン酸ニコチン、およびアスパラギン酸ニコチンから成る群から選択されるニコチン塩であり、かつ前記糖がトレハロース、マンニトール、ショ糖、またはラクトースを含み、かつ前記アミノ酸がロイシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記糖がトレハロースを含み、かつ前記アミノ酸がロイシンを含み、かつ前記乾燥粉末組成物が約25wt%以下のニコチンまたは約5~約15wt%のニコチンを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸入に適したニコチン粒子および組成物に関連する。これらのニコチン粒子および組成物は、ニコチン、糖、およびアミノ酸を含む。
【背景技術】
【0002】
乾燥粉末吸入器(DPI)が周知であり、薬学的に活性の化合物を含む乾燥粉末をエアロゾルの形態で、吸入によって患者の気道に送達することによって、呼吸器疾患を治療するために使用される。医薬品乾燥粉末において、医薬品有効成分(API)は、より大きい担体粒子(ラクトースなど)の表面上にいつも凝集している。DPIは複雑な機構で動作して、こうした凝集が分散、粉砕、または脱凝集されることを確実にし、その後、APIを肺の中へと吸い込まれるようになる。
【0003】
従来的な喫煙法の吸入量または空気流量の範囲内の吸入量または空気流量でニコチン粒子を肺に送達することは困難な場合がある。ニコチン粒子は、特にニコチン粒子のサイズが減少するにつれて、凝集して、吸入器または処理表面に粘着する傾向を有することがある。MMADが約10マイクロメートル未満のニコチン粒子は、表面積対体積比が大きいため、次第に熱力学的に不安定になる傾向があり、これがこの減少する粒子サイズとともに界面自由エネルギーの増大をもたらし、粒子が凝集する傾向および凝集の強度を結果的に増大する。ニコチン粒子の形成は、困難でありかつ高くつくことがありうる。
【0004】
簡単に形成および処理されうるニコチン粒子および組成物を提供することが望ましいであろう。ニコチン粒子および組成物は、処理表面に粘着したり、凝集したりせず、かつ安定した粒子サイズ分布を示すことが望ましいであろう。また、ニコチン粒子および組成物は、従来的な喫煙方法での吸入または空気流量の範囲内での空気流量で肺に送達されうることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ニコチン、糖およびアミノ酸を含む粒子を対象とする。粒子は、約0.5~約10マイクロメートル、または約0.5~約5マイクロメートルの範囲のサイズを有することが好ましい。粒子は、約25wt%以下のニコチンまたは約5~約15wt%のニコチンを含むことが好ましい。自由流動性組成物は、粒子によって形成されうる。
【0006】
粒子は、ニコチン、糖、およびアミノ酸を液体担体中で混合して液体混合物を形成することによって形成されうる。この液体混合物は、噴霧乾燥されて約0.5~約10マイクロメートルの範囲のサイズまたは約0.5~約5マイクロメートルの範囲のサイズを有する多数の粒子を形成する。多数の粒子は、均質の粒子であることが好ましい。
【0007】
有利なことに、本明細書に記載のニコチン粒子および粉末製剤は、従来的な喫煙方法での吸入量または空気流量の範囲内の吸入量または空気流量でニコチンを消費者の肺に送達するのに十分な、均質かつ安定した粒子サイズのために提供されている。本明細書に記載のニコチン粒子および粉末製剤は、噴霧乾燥によって粒子が形成されて、特定の制御された粒子サイズ分布を達成することを可能にする一方で、処理装置表面などの表面への凝集または付着を最小化する。噴霧乾燥は、拡張可能な、正確で低コストの粒子形成単位操作を提供しうる。
【0008】
「ニコチン」という用語は、ニコチンおよび任意の形態のニコチン誘導体を意味し、これは遊離塩基ニコチン、ニコチン塩、または糖基質または有機金属化合物などの基質に含有されるものなどを含むがこれに限定されない。
【0009】
「アミノ酸」という用語は、無修飾または修飾された単一のアミノ酸部分を意味し、無修飾が好ましい。
【0010】
「短鎖ペプチド」という用語は、アミノ酸2個または3個を含むペプチドを意味する。
【0011】
本明細書に記載の通り、粒子のサイズは、粒子の空気動力学的粒子径を意味することが好ましい。粉末システムの空気動力学的粒子径は、カスケードインパクターで測定することが好ましい。「MMAD」という用語は、質量中央空気動力学的直径を意味する。
【0012】
本開示は、ニコチン、糖およびアミノ酸を含む粒子に関連する。特定の粒子サイズ分布を有する粒子が形成されうる。例示的な実施例において、粒子の約90%、または約95%、または約98%は、約5マイクロメートル以下、または約4.5マイクロメートル以下、または約4.2マイクロメートル以下のサイズを有し、粒子の約50%は、約2.5マイクロメートル以下、または約2.1マイクロメートル以下のサイズを有する。数多くの実施例において、粒子の約10%は約820ナノメートル以下のサイズを有する。粒子は、約1~約4マイクロメートルの範囲の質量中央空気動力学的直径を有しうる。実質的にすべての粒子は、約500ナノメートル~約5マイクロメートルの範囲の粒子サイズを有しうる。
【0013】
粒子の組成物は、特定の粒子サイズ分布を持つ。例示的な実施例において、組成物の粒子の約90%、または約95%、または約98%は、約5マイクロメートル以下、または約4.5マイクロメートル以下、または約4.2マイクロメートル以下のサイズを有し、粒子の約50%は、約2.5マイクロメートル以下、または約2.1マイクロメートル以下のサイズを有する。数多くの実施例において、粒子の約10%は約820ナノメートル以下のサイズを有する。組成物の粒子は、約1~約4マイクロメートルの範囲の質量中央空気動力学的直径を有しうる。組成物を形成する実質的にすべての粒子は、約500ナノメートル~約5マイクロメートルの範囲の粒子サイズを有しうる。本明細書に記載の粒子サイズ分布に関連するパーセンテージは、粒子体積に基づくものである(体積パーセント)。
【0014】
粒子のニコチン成分は、遊離塩基ニコチン、ニコチン塩、またはその組み合わせとしうる。ニコチン成分は、ニコチンまたはニコチン遊離塩基を酸と組み合わせることによって形成されるニコチン塩であってもよい。酸は、ニコチン遊離塩基に対する酸の理論量としうるか、または酸の化学量論超過がニコチン遊離塩基と組み合わせられうるか、またはニコチン遊離塩基の化学量論超過が酸と組み合わせられうる。遊離塩基ニコチンは、酸を追加することなく利用されうる。
【0015】
酸は、有機酸、無機酸、またはルイス酸としうる。無機酸の非限定的な例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、ヘキサフルオロリン酸、およびこれに類するものである。有機酸の非限定的な例は、レブリン酸、クエン酸、グルコン酸、安息香酸、プロピオン酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アムソン酸、パモ酸、メシル酸、アスパラギン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、フマル酸、イセチオン酸、乳酸、粘液酸、p-トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、ピルビン酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸塩)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸、およびこれに類するものである。ルイス酸の非限定的な例は、塩化亜鉛または臭化亜鉛(ZnCl2/ZnBr2)である。これらはニコチンと反応して、有機金属錯体を形成できる。
【0016】
有用なニコチン塩には例えば、ピルビン酸ニコチン、クエン酸ニコチン、アスパラギン酸ニコチン、乳酸ニコチン、重酒石酸ニコチン、サリチル酸ニコチン、フマル酸ニコチン、モノ-ピルビン酸ニコチン、グルタミン酸ニコチン、またはニコチン塩酸塩が含まれるが、これに限定されない。好ましいニコチン塩には、乳酸ニコチン、ピルビン酸ニコチン、クエン酸ニコチン、アスパラギン酸ニコチン、またはその組み合わせが含まれる。
【0017】
粒子(水中に溶解)のpHは、約5~約9の範囲としうる。pHは、約7.0以上または7.0~9.0の範囲が好ましい。pH 9は、有機酸を含まない粒子で到達でき、一方でpH 5.0はニコチン塩を形成する時に強酸または二価酸を使用して得ることができる。
【0018】
粒子は、アミノ酸またはペプチド(好ましくはアミノ酸3個以下で形成される)を含みうる。アミノ酸またはペプチドは、組成物を形成する粒子の接着力を低減し、組成物を形成する粒子の凝集を軽減または阻止する。従って、本明細書に記載の組成物を形成する粒子は、自由流動性の材料であり、処理中、搬送中および貯蔵中に安定した相対的粒子サイズ分布を有しうる。アミノ酸は単一のアミノ酸であるか、またはペプチドなどのアミノ酸2個以上を含む分子を含みうる。
【0019】
有用なアミノ酸は、ロイシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、またはその組み合わせを含みうる。好ましい一つのアミノ酸は、ロイシンまたはロイシン異性体(L-ロイシンなど)である。有用なペプチドは、例えばトリロイシンを含む。
【0020】
粒子は糖を含みうる。糖は、単純な糖、単糖類、二糖類、および多糖類を意味する。限定されないが、適切な糖の例は、ラクトース、ショ糖、ラフィノース、トレハロース、果糖、右旋糖、グルコース、麦芽糖、マンニトール、またはその組み合わせである。好ましい糖は、トレハロースまたはマンニトールを含む。
【0021】
粒子は、約30wt%未満のニコチンを含みうる。粒子は、約25wt%以下のニコチンまたは約15~約25wt%のニコチンを含みうる。粒子は、約1~約20wt%のニコチンまたは約10~約20wt%のニコチン、または約5~15wt%のニコチンを含みうる。粒子は、約1~約10wt%のニコチンまたは約5~約10wt%のニコチンを含みうる。一部の実施形態において、約30wt%以上のニコチンを含む粒子は、噴霧乾燥器を通して処理される時に処理表面に凝集または付着した。
【0022】
組成物を形成する粒子は、約30wt%未満のニコチンを含みうる。組成物を形成する粒子は、約25wt%以下のニコチン、または約15~約25wt%のニコチンを含みうる。組成物を形成する粒子は、約1~約20wt%のニコチン、または約10~約20wt%のニコチン、または約5~15wt%のニコチンを含みうる。組成物を形成する粒子は、約1~約10wt%のニコチンまたは約5~約10wt%のニコチンを含みうる。一部の実施形態において、約30wt%以上のニコチンを含む組成物を形成する粒子は、噴霧乾燥器を通して処理された時に、凝集したまたは粘着性のある組成物を生成した。
【0023】
粒子は、約1~約10wt%のアミノ酸を含みうる。粒子は、約3~約7wt%のアミノ酸を含みうる。粒子は、約5wt%のアミノ酸を含みうる。粒子にアミノ酸、例えば特にL-ロイシンを追加することは、凝集または処理表面への接着を低減しうる。
【0024】
組成物を形成する粒子は、約1~約10wt%のアミノ酸を含みうる。組成物を形成する粒子は、約3~約7wt%のアミノ酸を含みうる。組成物を形成する粒子は、約5wt%のアミノ酸を含みうる。アミノ酸、例えば特に組成物を形成する粒子にL-ロイシンを追加することは、噴霧乾燥器を通して処理される時に、組成物の凝集または粘着性を低減させうる。
【0025】
粒子は、約60~約95wt%の糖を含みうる。粒子は、約70~約90wt%の糖を含みうる。粒子は、約80~約85wt%の糖を含みうる。
【0026】
組成物を形成する粒子は、約60~約95wt%の糖を含みうる。組成物を形成する粒子は、約70~約90wt%の糖を含みうる。組成物を形成する粒子は、約80~約85wt%の糖を含みうる。
【0027】
有用な粒子製剤は、アミノ酸(ロイシン)、糖(トレハロース)、およびニコチン塩(乳酸ニコチン)を含む。ニコチン含有量は、約5~約15wt%または約9.5wt%としうる。ロイシン含有量は、約1~約10wt%としうる。ロイシン含有量は、約3~約7wt%または約5wt%としうる。酸とニコチンとのモル比は約1:1としうる。
【0028】
有用な粒子製剤は、アミノ酸(ロイシン)、糖(トレハロース)、およびニコチン塩(クエン酸ニコチン)を含む。ニコチン含有量は、約5~約15wt%または約9.6wt%としうる。ロイシン含有量は、約1~約10wt%としうる。ロイシン含有量は、約3~約7wt%または約5wt%としうる。酸とニコチンとのモル比は約0.25:1としうる。
【0029】
有用な粒子製剤は、アミノ酸(ロイシン)、糖(トレハロース)、およびニコチン塩(ピルビン酸ニコチン)を含む。ニコチン含有量は、約5~約15wt%または約9.8wt%としうる。ロイシン含有量は、約1~約10wt%としうる。ロイシン含有量は、約3~約7wt%または約5wt%としうる。酸とニコチンとのモル比は約0.6:1としうる。
【0030】
有用な粒子製剤は、アミノ酸(ロイシン)、糖(トレハロース)、およびニコチン塩(アスパラギン酸ニコチン)を含む。ニコチン含有量は、約5~約15wt%または約9.3wt%としうる。ロイシン含有量は、約1~約10wt%としうる。ロイシン含有量は、約3~約7wt%または約5wt%としうる。酸とニコチンとのモル比は約0.6:1としうる。
【0031】
粒子は、次によって形成されうる。(1)ニコチン、糖およびアミノ酸またはペプチドを液体担体中で混合して、液体混合物を形成し、(2)液体混合物を噴霧乾燥して、約0.5~約10マイクロメートルの範囲のサイズまたは約0.5~約5マイクロメートルの範囲のサイズを有する粒子を形成する。
【0032】
例示的な実施例は、液体担体中で混合した20%のニコチン遊離塩基および酸(例えば、乳酸、ピルビン酸またはクエン酸)を含む調製品を含む。モル比は、ニコチン対アスパラギン酸、ピルビン酸または乳酸で1.00:1.20の範囲内、およびニコチン対クエン酸で0.33:0.50の範囲内としうる。液体混合物は約30℃で、例えば約1~約15分にわたり保温して、安定したニコチン塩溶液の形成を可能にする。医薬品として許容可能な糖、(例えば、トレハロースまたはマンニトール)およびロイシンを追加して液体混合物を形成しうる。液体混合物は、ノズルを使用して液体を霧化して小滴を形成し、小滴を暖かい空気と接触させて乾燥させて、乾燥した粒子を形成し、粒子を収集することによって、噴霧乾燥されうる。この実施形態において、噴霧乾燥後、10%の粒子(体積比)は約0.82マイクロメートルより小さいサイズとすることができ、50%の粒子は約2.1マイクロメートルより小さいサイズとすることができ、90%の粒子は約4.1マイクロメートルより小さいサイズとすることができる。粒子は実質的に0.5~4.2マイクロメートルの範囲内である。
【0033】
液体担体は、例えば水であってもよい。液体混合物は流動性を有する。液体混合物は、霧化ノズルまたはアトマイザーノズルを通して流れて、正確なまたは管理された粒子サイズ分布を形成するように構成されている。粒子または組成物は、正確なサイズ分布の粒子を形成するために、噴霧乾燥によって処理されうる。本明細書に記載の粒子および組成物は、凝集したり、噴霧乾燥装置の表面に粘着したりしない傾向がありうる。
【0034】
本明細書に記載の粒子および組成物は、結果的に製品損失が低減されうる(従来的なニコチン粒子と比較して)低い温度で処理されてもよい。例えば、本明細書に記載の粒子および組成物は、約50~85℃の範囲の温度で噴霧乾燥されうる。
【0035】
鎮咳剤を組成物と混合してもよい。鎮咳剤は例えば、メントール、樟脳、テレピン油(例えば、アルファ-ピネン、ベータ-ピネン)およびメントール誘導体(例えば、乳酸メンチル、およびサリチル酸メンチル)を含む。
【0036】
本明細書に記載の粒子および組成物はその後、消費用にパッケージ化されうる。本明細書に記載の粒子および組成物は、吸入送達消耗要素内にパッケージ化されてもよく、吸入送達消耗要素内に含まれてもよい。吸入送達消耗要素は、例えばカプセルであってもよい。カプセルは、乾燥粉末吸入器などの吸入装置内に配置されることによるものでもよい。吸入装置がカプセルを刺し通してもよく、また微細な粒子は吸入空気に混入されて、消費者の肺へと送達されてもよい。
【0037】
本明細書に記載の粒子および組成物、および吸入送達消耗要素は、担体粒子を含まないか、または実質的に含まなくてもよい。本明細書に記載の粒子組成物および吸入送達消耗要素は、約20マイクロメートルを超える、または約50マイクロメートルを超える、または約100マイクロメートルを超える粒子を含まないか、または実質的に含まなくてもよい。
【0038】
ニコチンは液体担体内で溶解されて液体混合物を形成しうる。糖は液体担体内で溶解されて液体混合物を形成しうる。アミノ酸は液体担体内で溶解されて液体混合物を形成しうる。液体混合物は、約20% w/v以下の全固形分、または約15% w/v以下の全固形分、または約5~15% w/vの範囲の全固形分を有しうる。
【0039】
本明細書に記載のニコチン粒子は、結果的に製品損失が低減されうる(従来的なニコチン粒子と比較して)低い温度で処理されてもよい。噴霧乾燥の入口温度および出口温度は低くされてもよい。噴霧乾燥アトマイゼーション圧力は、約3~約7バール、または4~約6バールの範囲、または約5バールとしうる。
【0040】
噴霧乾燥の入口温度は、約140℃以下、または約135℃以下、または約130℃以下、または約100~約1500℃の範囲、または約110~約140℃の範囲、または約125~約135℃の範囲としうる。噴霧乾燥の出口温度は、約100℃以下、または約95℃以下、または約90℃以下、約85℃以下、または約80℃以下、または約30~約90℃の範囲、または約40~約90℃の範囲、または約50~約85℃の範囲としうる。
【0041】
具体的な実施例を下記の表に記載する。
【0042】
本明細書で使用されるすべての科学的および技術的な用語は、別途指定のない限り、当業界で一般に使用される意味を持つ。本明細書で提供した定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供されている。
【0043】
本明細書で使用される単数形(「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」)は、複数形の対象を有する実施形態を含蓄するが、その内容によって明らかに別途定められている場合はその限りではない。
【0044】
本明細書で使用される「または」は一般的に、「および/または」を含む意味で使用されるが、その内容によって明らかに別途定められている場合はその限りではない。「および/または」という用語は、列挙された要素の一つまたはすべて、または列挙された要素のうちの任意の二つ以上の組み合わせを意味する。
【0045】
本明細書で使用される「有する、持つ(have)」、「有している、持っている(having)」、「含む(include)」、「含まれる(including)」、「備える(comprise)」、「備える(comprising)」、またはこれに類するものは制約のない意味で使用され、一般的に「含むが、これに限定されない」を意味する。「から本質的に成る」、「から成る」、およびこれに類する用語は、「含む」およびこれに類するものに包摂されることが理解されるであろう。
【0046】
「好ましい」および「好ましくは」という語は、ある特定の状況下で、ある特定のメリットをもたらし得る本発明の実施形態を指す。ただし、同一またはその他の状況下で、その他の実施形態もまた好ましいものでありうる。その上、一つ以上の好ましい実施形態の列挙は、その他の実施形態が有用ではないことを暗に意味するものではなく、請求の範囲を含む本開示の範囲からその他の実施形態を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、粒子125を形成する例示的な方法100の概略的流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
方法100は、ニコチン102、糖104、およびアミノ酸またはペプチド106を液体担体中で混合して、ブロック110で液体混合物115を形成する工程を含む。次に、ブロック120で、液体混合物115は、噴霧乾燥されて多数の粒子125を形成する。
【実施例0049】
すべての実施例(表3の実施例を除く)は、ニコチン遊離塩基および酸を水中で(特定の比で)混合して、安定したニコチン塩溶液を形成することによって公式化される。次に、糖およびアミノ酸(ロイシン)が、ニコチン塩溶液と混合されて液体混合物が形成される。次に、液体混合物が噴霧化・乾燥されて、乾燥粒子を形成し、この乾燥粒子が回収されて組成物を形成する。
【0050】
表3の実施例は、ニコチン遊離塩基を糖およびアミノ酸(ロイシン)と混合して液体混合物を形成することによって公式化される。次に、液体混合物が噴霧化・乾燥されて、乾燥粒子を形成し、この乾燥粒子が回収されて組成物を形成する。
【0051】
噴霧乾燥器は、Buchi B-290噴霧乾燥器(Buchi Corp.(米国デラウェア州)から入手可能)であった。液体混合物が、2ml/分の流量、5バールのアトマイゼーション圧力で噴霧乾燥器に供給された。出口温度は、トレハロースを利用した実施例では、約80℃であった。下記の表1は、乳酸製剤を説明するものである。下記の表2は、ピルビン酸製剤を説明するものである。下記の表3は、酸を含まない製剤を説明するものである。表4および表5は、各実施例の粒子サイズ分布を報告するものである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
X
10は、体積比で10%の粒子がこのサイズ未満である粒子のサイズを意味する。
X
50は、体積比で50%の粒子がこのサイズ未満である粒子のサイズを意味する。
X
90は、体積比で90%の粒子がこのサイズ未満である粒子のサイズを意味する。
VMDは体積平均径を意味する。
【表5】
前記ニコチン塩が、乳酸ニコチン、ピルビン酸ニコチン、クエン酸ニコチン、およびアスパラギン酸ニコチンを含む群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子。
請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子を複数含む組成物であって、90%の前記複数の粒子が4.5マイクロメートル以下の粒子サイズを有し、かつ50%の前記複数の粒子が2.5マイクロメートル未満の粒子サイズを有する、組成物。
前記ニコチン塩が、乳酸ニコチン、ピルビン酸ニコチン、クエン酸ニコチン、およびアスパラギン酸ニコチンから成る群から選択され、かつ前記糖がトレハロース、マンニトール、ショ糖、またはラクトースを含む、請求項12または13に記載の方法。