(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071109
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 119
B41J2/175 153
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031781
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2018044088の分割
【原出願日】2018-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(57)【要約】
【課題】カートリッジの容積に対して、貯留可能なインクの量を多くすることができる手段を提供する。
【解決手段】複合機10は、貯留室32を有するインクカートリッジ30と、インクカートリッジ30が接続可能であり、貯留室121を有するタンク103と、インクをノズル29から吐出する記録ヘッド21と、を備える。貯留室32は、上壁39から下方へ延びる隔壁38によって区画された第1室51及び第2室52と、隔壁38の下方において第1室51及び第2室52を連通する第3室53よ、を有する。第2室52は連通口35を有する。第3室52は流出口33を有する。貯留室121は、隔壁38の下端よりも下方に位置する第4室114と、第4室114の上方に位置して連通口124を有する第5室115と、を有する。記録ヘッド21の下面28は、隔壁38の下端よりも上方に位置している。体積V2aは、体積V4よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留する第1貯留室を有するカートリッジと、
上記カートリッジが接続可能であり、接続された上記カートリッジの上記第1貯留室から流出したインクを貯留する第2貯留室を有するタンクと、
上記タンクの上記第2貯留室に貯留されたインクをノズルから吐出する記録ヘッドと、を備えるシステムであって、
上記第1貯留室は、上記第1貯留室を区画する上壁から下方へ延びる隔壁によって区画された第1室及び第2室と、上記隔壁の下方において上記第1室及び上記第2室を連通する第3室と、を有しており、
上記第2室は、大気と連通する第1大気連通口を有しており、
上記第3室は、上記第1貯留室からインクが流出する流出口を有しており、
上記第2貯留室は、
上記カートリッジが接続された状態において、上記流出口と連通する流入口、及び上記記録ヘッドへインクを供給する供給口を有し、上記隔壁の下端よりも下方に位置する第4室と、
上記第4室の上方に位置しており、大気と連通する第2大気連通口を有する第5室と、を有しており、
上記記録ヘッドにおいて上記ノズルが開口する下面は、上記隔壁の下端よりも上方に位置しており、
上記第1貯留室に最大量のインクが貯留されており、且つ上記第1室に貯留されたインクの液面と上記第2室に貯留されたインクの液面とが同じ高さである状態において、上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室の体積よりも小さいシステム。
【請求項2】
上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室における上記供給口の上端から上方の体積よりも小さい請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室における上記供給口と上記流入口との間の所定高さ位置から上方の体積よりも小さい請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
上記第5室の体積は、上記第2室の体積よりも大きい請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
上記記録ヘッドの下面は、上記第1室の上端よりも下方に位置する請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
インクを貯留する第1貯留室を有するカートリッジと、
上記カートリッジが接続可能であり、接続された上記カートリッジの上記第1貯留室から流出したインクを貯留する第2貯留室を有するタンクと、
上記タンクの上記第2貯留室に貯留されたインクをノズルから吐出する記録ヘッドと、
コントローラと、を備えるシステムであって、
上記コントローラは、上記カートリッジと上記タンクとが接続されたときに、上記第1貯留室に貯留されたインクを上記記録ヘッドのノズルへ導入する初期インク導入を実行し、
上記第1貯留室は、上記第1貯留室を区画する上壁から下方へ延びる隔壁によって区画された第1室及び第2室と、上記隔壁の下方において上記第1室及び上記第2室を連通する第3室と、を有しており、
上記第2室は、大気と連通する第1大気連通口を有しており、
上記第3室は、上記第1貯留室からインクが流出する流出口を有しており、
上記第2貯留室は、
上記カートリッジが接続された状態において、上記流出口と連通する流入口、及び上記記録ヘッドへインクを供給する供給口を有し、上記隔壁の下端よりも下方に位置する第4室と、
上記第4室の上方に位置しており、大気と連通する第2大気連通口を有する第5室と、を有しており、
上記記録ヘッドにおいて上記ノズルが開口する下面は、上記隔壁の下端よりも上方に位置しており、
上記第1貯留室に最大量のインクが貯留されており、且つ上記第1室に貯留されたインクの液面と上記第2室に貯留されたインクの液面とが同じ高さである状態において、上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室の体積よりも大きく、且つ上記第4室の体積と上記初期インク導入に要するインク量との和よりも小さいシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジとタンクとの間でインクが流通するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、機器側に装着可能な液体収容体(カートリッジ)において、液体収容室を外部に連通する大気開放流路の液体収容室に開口する位置が、液体収容室の底壁内面付近である液体収容体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した液体収容体には、大気開放流路の途中に空気室が設けられている。例えば温度や気圧の変動によって、液体収容室の液体の液面が下がると、大気開放流路に液体が進入することがあるが、進入した液体が空気室に貯留されることによって、液体が外部へ漏れることが防止されている。しかしながら、液体が外部へ漏れることを確実に防止するには、空気室の体積を大きくせざるを得ない。そうすると、液体収容体に対して、収容可能な液体の量が少なくなる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カートリッジの容積に対して、貯留可能なインクの量を多くすることができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係るシステムは、インクを貯留する第1貯留室を有するカートリッジと、上記カートリッジが接続可能であり、接続された上記カートリッジの上記第1貯留室から流出したインクを貯留する第2貯留室を有するタンクと、上記タンクの上記第2貯留室に貯留されたインクをノズルから吐出する記録ヘッドと、を備えるシステムに関する。上記第1貯留室は、上記第1貯留室を区画する上壁から下方へ延びる隔壁によって区画された第1室及び第2室と、上記隔壁の下方において上記第1室及び上記第2室を連通する第3室と、を有している。上記第2室は、大気と連通する第1大気連通口を有している。上記第3室は、上記第1貯留室からインクが流出する流出口を有している。上記第2貯留室は、上記カートリッジが接続された状態において、上記流出口と連通する流入口、及び上記記録ヘッドへインクを供給する供給口を有し、上記隔壁の下端よりも下方に位置する第4室と、上記第4室の上方に位置しており、大気と連通する第2大気連通口を有する第5室と、を有している。上記記録ヘッドにおいて上記ノズルが開口する下面は、上記隔壁の下端よりも上方に位置している。上記第1貯留室に最大量のインクが貯留されており、且つ上記第1室に貯留されたインクの液面と上記第2室に貯留されたインクの液面とが同じ高さである状態において、上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室の体積よりも小さい。
【0007】
上記構成によれば、隔壁の下端の高さが、第1室に貯留されたインクの液面より低い位置にあるカートリッジに対して、隔壁の下端よりも下方に位置する第4室を有するタンクが設けられているので、カートリッジの第1貯留室に貯留可能なインクの最大量を増やすことができる。また、最大量のインクが貯留されたカートリッジがタンクに接続されたときに、第2室に貯留されたインクの液面から隔壁の下端までの体積が、第4室の体積よりも小さいので、第1貯留室から第2貯留室へインクが移動した後のインクの液面の位置が隔壁の下端となる。これにより、記録ヘッドの下面が隔壁の下端よりも上方に配置可能になるので、記録ヘッドのレイアウトの自由度が増す。
【0008】
(2) 好ましくは、上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室における上記供給口の上端から上方の体積よりも小さい。
【0009】
上記構成によれば、第4室の供給口の直上にインクの液面があるときに、カートリッジが交換されて、第1貯留室から第2貯留室へインクが移動した後に、タンクのインクの液面の位置が隔壁の下端となる。
【0010】
(3) 好ましくは、上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室における上記供給口と上記流入口との間の所定高さ位置から上方の体積よりも小さい。
【0011】
上記構成によれば、第4室の所定高さ位置にインクの液面があるときに、カートリッジが交換されて、第1貯留室から第2貯留室へインクが移動した後に、タンクのインクの液面の位置が隔壁の下端となる。
【0012】
(4) 好ましくは、上記第5室の体積は、上記第2室の体積よりも大きい。
【0013】
上記構成によれば、温度や大気圧の変動によって第1貯留室から第2貯留室へ移動したインクが第5室に確実に貯留される。
【0014】
(5) 好ましくは、上記記録ヘッドの下面は、上記第1室の上端よりも下方に位置する。
【0015】
上記構成によれば、記録ヘッドの下面よりも上方の位置に第1貯留室を配置することができる。
【0016】
(6) 本発明に係るシステムは、インクを貯留する第1貯留室を有するカートリッジと、上記カートリッジが接続可能であり、接続された上記カートリッジの上記第1貯留室から流出したインクを貯留する第2貯留室を有するタンクと、上記タンクの上記第2貯留室に貯留されたインクをノズルから吐出する記録ヘッドと、コントローラと、を備える。上記コントローラは、上記カートリッジと上記タンクとが接続されたときに、上記第1貯留室に貯留されたインクを上記記録ヘッドのノズルへ導入する初期インク導入を実行する。上記第1貯留室は、上記第1貯留室を区画する上壁から下方へ延びる隔壁によって区画された第1室及び第2室と、上記隔壁の下方において上記第1室及び上記第2室を連通する第3室と、を有している。上記第2室は、大気と連通する第1大気連通口を有している。上記第3室は、上記第1貯留室からインクが流出する流出口を有している。上記第2貯留室は、上記カートリッジが接続された状態において、上記流出口と連通する流入口、及び上記記録ヘッドへインクを供給する供給口を有し、上記隔壁の下端よりも下方に位置する第4室と、上記第4室の上方に位置しており、大気と連通する第2大気連通口を有する第5室と、を有している。上記記録ヘッドにおいて上記ノズルが開口する下面は、上記隔壁の下端よりも上方に位置している。上記第1貯留室に最大量のインクが貯留されており、且つ上記第1室に貯留されたインクの液面と上記第2室に貯留されたインクの液面とが同じ高さである状態において、上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室の体積よりも大きく、且つ上記第4室の体積と上記初期インク導入に要するインク量との和よりも小さい。
【0017】
上記構成によれば、隔壁の下端の高さが、第1室に貯留されたインクの液面より低い位置にあるカートリッジに対して、隔壁の下端よりも下方に位置する第4室を有するタンクが設けられているので、カートリッジの第1貯留室に貯留可能なインクの最大量を増やすことができる。また、最大量のインクが貯留されたカートリッジがタンクに接続されて初期導入が実行されるときに、第2室に貯留されたインクの液面から隔壁の下端までの体積が、第4室の体積よりも大きく、且つ第4室の体積と初期インク導入に要するインク量との和よりも小さいので、初期導入が実行され、且つ第1貯留室から第2貯留室へインクが移動した後のインクの液面の位置が隔壁の下端となる。これにより、カートリッジに貯留可能なインクの量を増やすとともに、記録ヘッドのレイアウトの自由度を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カートリッジを有するシステムにおいて、カートリッジの容積に対して、貯留可能なインクの量を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るプリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、インクカートリッジ30とタンク103とが接続された状態であって、第2室52のインクの液面が隔壁38の下端にある模式図である。
【
図3】
図3は、貯留室32に最大量のインクが貯留されている、使用姿勢と同じ姿勢のインクカートリッジ30の縦断面図である。
【
図4】
図4は、インクカートリッジ30とタンク103とが接続された状態であって、第2室52のインクの液面が隔壁38の下端より上方にある模式図である。
【
図5】
図5は、インクカートリッジ30とタンク103とが接続された状態であって、第2室52のインクの液面が隔壁38の下端より下方にある模式図である。
【
図6】
図6は、インクカートリッジ30とタンク103とが接続された状態であって、第4室114のインクの液面が供給口128の直上にある模式図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るキャリッジ22、キャップ44、及びポンプ45の模式図である。
【
図8】
図8は、インクカートリッジ60とタンク103とが接続された状態であって、第2室52のインクの液面が隔壁38の下端より上方にある模式図である。
【
図9】
図9は、インクカートリッジ60とタンク103とが接続された状態であって、第2室52のインクの液面が隔壁38の下端にある模式図である
【
図10】
図10は、変形例に係るインクカートリッジ30とタンク103とが接続された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、複合機10が使用可能に水平面に設置された姿勢(
図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上下方向7が定義され、複合機10の給送トレイ15からシート12が給送される方向を後方として前後方向8が定義され、複合機10を前面から見て左右方向9が定義される。本実施形態では、使用姿勢において、上下方向7が鉛直方向に相当し、前後方向8及び左右方向9が水平方向に相当する。前後方向8及び左右方向9は、直交している。
【0021】
[第1実施形態]
[複合機10の全体構成]
複合機10は、インクジェット記録方式でシート12に画像を記録するプリンタ部11を有している。また、複合機10は、ファクシミリ機能、スキャン機能、及びコピー機能などの各種の機能を有していてもよい。複合機10は、システムの一例である。
図1に示されるように、プリンタ部11は、給送トレイ15と、排出トレイ16と、給送ローラ23と、搬送ローラ対25と、排出ローラ対27と、記録部24と、プラテン26とを有する。
【0022】
[給送トレイ15、排出トレイ16、給送ローラ23]
図1に示されるように、給送トレイ15は、各々が積層された複数のシート12を支持する。排出トレイ16は、給送トレイ15の上方に配置されている。排出トレイ16は、記録部24及びプラテン26の間から排出ローラ対27によって排出されたシート12を支持する。給送ローラ23は、不図示のモータによって駆動されることによって、給送トレイ15に支持されたシート12を搬送路17へ給送する。
【0023】
[搬送路17]
搬送路17は、ガイド部材18、19、記録部24、プラテン26等によって形成される空間を指す。ガイド部材18、19と、記録部24及びプラテン26とは、それぞれがプリンタ部11の内部において所定間隔で対向する。搬送路17は、給送トレイ15の後端部から上方に延びつつUターンし、記録部24に対面する位置を経由して排出トレイ16に至る経路である。搬送向きは、
図1において一点鎖線の矢印で示されている。
【0024】
[搬送ローラ対25]
搬送ローラ対25は、記録部24より搬送向きの上流に配置されている。搬送ローラ対25は、互いに対向する搬送ローラ25A及びピンチローラ25Bを備える。搬送ローラ25Aは、不図示のモータによって駆動される。ピンチローラ25Bは、搬送ローラ25Aの回転に伴って連れ回る。シート12は、モータの正転駆動力が伝達されて正回転する搬送ローラ25A及びピンチローラ25Bに挟持されて、搬送向きに沿って搬送される。
【0025】
[排出ローラ対27]
排出ローラ対27は、記録部24より搬送向きの下流に配置されている。排出ローラ対27は、互いに対向する排出ローラ27A及び拍車27Bを備える。排出ローラ27Aは、不図示のモータによって駆動される。拍車27Bは、排出ローラ27Aの回転に伴って連れ回る。シート12は、モータの正転駆動力が伝達されて正回転する排出ローラ27A及び拍車27Bに挟持されて、搬送向きに沿って搬送される。
【0026】
[記録部24、プラテン26]
記録部24及びプラテン26は、
図1に示されるように、搬送向きにおける搬送ローラ対25及び排出ローラ対27の間に配置されている。より詳細には、記録部24及びプラテン26は、搬送ローラ対25より搬送向きの下流で、且つ排出ローラ対27より搬送向きの上流に配置されている。また、記録部24及びプラテン26は、上下方向7において互いに対向して配置されている。
【0027】
記録部24は、キャリッジ22と、キャリッジ22に搭載された記録ヘッド21とを備える。キャリッジ22は、不図示のモータの駆動力が伝達されて左右方向9に往復移動する。記録ヘッド21の下面28には、複数のノズル29が開口している。記録ヘッド21は、ピエゾ素子等の振動素子を振動させることによって、ノズル29からインク滴を吐出する。キャリッジ22が移動する過程において、プラテン26に支持されたシート12に対して記録ヘッド21がインク滴を選択的に吐出することによって、シート12に画像が記録される。使用姿勢における記録ヘッド21の下面28は、インクカートリッジ30及びタンク103内のインクの液面より上下方向7において上方にある。
【0028】
キャリッジ22には、インクチューブ20及びフレキシブルフラットケーブル(不図示)が接続されている。インクチューブ20は、タンク103と記録ヘッド21とを接続する。より詳細には、インクチューブ20は、タンク103に装着された各インクカートリッジ30(カートリッジの一例)に貯留されたインクを記録ヘッド21に供給する。インクチューブ20は、各色(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)のインクが流通する4本のチューブが束ねられたものである。フレキシブルフラットケーブルは、複合機10の動作を制御する制御基板と記録ヘッド21とを電気的に接続する。
【0029】
[タンク103]
タンク103は、
図2に示されるように、インクカートリッジ30から供給されたインクを貯留する。タンク103は、タンク103を構成する壁のうち、少なくとも後述する液面センサ55に対面する領域(プリズム)は、液面センサ55から出力させる光を透過する透光性を有する。
【0030】
タンク103は、内部に貯留室121を有する箱形状である。貯留室121は、第2貯留室の一例である。貯留室121は、供給口128を通じて、インクチューブ20に連通されている。供給口128は、貯留室121の下端を区画する下壁付近に形成されている。供給口128は、接続管107より上下方向7の下方に位置する。これにより、貯留室121に貯留されたインクが、供給口128から流出して、インクチューブ20を通じて記録ヘッド21へ供給される。
【0031】
貯留室121の上壁には連通口124が形成されている。連通口124は貯留室121の上壁を貫通している。連通口124を通じて、貯留室121とタンク103の外部とが連通される。なお、連通口124は、半透膜によって閉塞されていてもよい。連通口124は、第2大気連通口の一例である。
【0032】
貯留室121の側壁からは、接続管107が前後方向へ延びている。接続管107は、円管状の樹脂からなるものである。接続管107の内部空間は、タンクの側壁を貫通する流入口108を通じて、貯留室121と連通している。接続管107の突出先端は開口している。接続管107は、複合機10に装着されたインクカートリッジ30のインク供給部34(
図2参照)に対応する位置に配置されている。
【0033】
[液面センサ55]
液面センサ55は、貯留室121に貯留されたインクの液面が境界位置P1より高いとき、ローレベル信号を制御基板へ出力する。一方、液面センサ55は、貯留室121に貯留されたインクの液面が境界位置P1以下のとき、ハイレベル信号を制御基板へ出力する。液面センサ55は、貯留室121の側壁にインクが接触しているか否かによって異なる反射率を有するプリズムを利用して、貯留室121におけるインクの液面を光学的に検出するセンサである。
【0034】
なお、液面センサ55は、他の公知の構成が採用されてもよい。例えば、被検出部を有するアクチュエータが貯留室121に設けられ、インクの液面が境界位置P1未満になればアクチュエータが回動することによって被検出部の位置が変化してもよい。アクチュエータの被検出部が光学センサによって検知されるか否かによって、インクの液面が境界位置P1未満であるかを判定することができる。また、液面センサ55として、貯留室121に挿入された電極棒が採用されてもよい。また、液面センサ55は、省略されてもよい。
【0035】
[インクカートリッジ30]
インクカートリッジ30は、インクが貯留される容器である。インクカートリッジ30は、
図2に示されるように、筐体31及びインク供給部34を有する。筐体31は、略直方体形状である。なお、異なる色のインクが貯留される各インクカートリッジ30の外形形状は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。筐体31は、後壁40と、前壁41と、上壁39と、下壁42と、側壁37とで構成されている。筐体31の内部空間が貯留室32である。
【0036】
インク供給部34は、後壁40の下端付近から後方へ突出している。インク供給部34は、円筒形状の部材である。インク供給部34の内部空間は、後壁40を貫通する流出口33を通じて貯留室32と連通している。インク供給部34の突出端は、インクカートリッジ30の外部に開口している。なお、各図には示されていないが、インク供給部34の突出端の開口は、シール部材やバルブなどによって閉じられており、使用に際して開放されるように構成されていてもよい。
【0037】
貯留室32には、隔壁38が設けられている。隔壁38は、筐体31の上壁39から下壁42へ向かって下方へ延びている。隔壁38は、側壁37と連続している。隔壁38の下端は、インク供給部34の内部空間よりも高い位置にある。隔壁38の下端と下壁42との間には空間が存在する。
【0038】
隔壁38によって、貯留室32は上下方向7及び前後方向8に3つの部屋に区画されている。隔壁38と前壁41との間であって隔壁38の下端より上方の空間が第1室51と称される。隔壁38と後壁40との間であって隔壁38の下端より上方の空間が第2室52と称される。隔壁38の下端より下方の空間が第3室53と称される。したがって、インク供給部34の内部空間と通ずる流出口33は、第3室53にある。第3室53を通じて、第1室51と第2室52との間でインクが流通可能である。第1室51と第3室53との間、及び第2室52と第3室53との間には隔壁などは存在しておらず、第1室51と第3室53とは1つの空間として連続しており、また、第2室52と第3室53とは1つの空間として連続している。
図2には、第1室51、第2室52、及び第3室53の各境界が破線で示されている。
【0039】
第2室52において、上壁39には連通口35が形成されている。連通口35は筐体31の上壁39を貫通している。連通口35を通じて、第2室52とインクカートリッジ30の外部とが連通される。なお、連通口35は、半透膜によって閉塞されていてもよい。連通口35は、第1大気連通口の一例である。
【0040】
図2に示されるように、タンク103の接続管107が、インクカートリッジ30のインク供給部34の内部空間に挿入されることによって、インクカートリッジ30とタンクとが接続される。インクカートリッジ30とタンクとが接続された状態において、インク供給部34の内部空間を通じて、インクカートリッジ30の貯留室32と、タンク103の貯留室121との間でインクが流通可能になる。
【0041】
以下、インクカートリッジ30とタンク103とが接続されており、複合機10が使用される使用姿勢において、タンク103の貯留室121が、インクカートリッジ30の隔壁38の下端の高さよりも下方に位置する第4室114と、第4室114よりも上方の第5室115と、に分けて説明がされる。本実施形態において、第4室114と第5室115との間には、隔壁などは設けられておらず、第4室114と第5室115とは一つの空間として連続している。流入口108及び供給口128は、第4室114にある。連通口124は、第5室115にある。
【0042】
図1に示されるように、使用姿勢において、記録ヘッド21の下面28は、インクカートリッジ30の第1室51の上端よりも下方に位置する。また、記録ヘッド21の下面28は、インクカートリッジ30の隔壁38の下端よりも上方に位置する。
【0043】
図3に示されるように、新品のインクカートリッジ30には、貯留室32に最大量のインクが貯留されている。使用姿勢と同じ姿勢のインクカートリッジ30の貯留室32において、第1室51のインクの液面の高さと、第2室52のインクの液面の高さが同じ状態であるとする。この状態において、新品のインクカートリッジ30がタンク103に接続されて使用姿勢であるときの、第1室51及び第2室52のインクの液面の高さを位置P2とする。
【0044】
図2に示されるように、インクカートリッジ30の貯留室32において、第2室52に貯留されたインクの液面が位置P2であるときに、第2室52における位置P2から隔壁38の下端までの体積V2a(
図3で斜線で示される領域)は、タンク103の貯留室121の第4室114の体積V4よりも小さい(V2a<V4)。また、タンク103の貯留室121の第5室115の体積V5は、インクカートリッジ30の貯留室32の第2室52の体積V2よりも大きい(V5>V2)。
【0045】
以下、
図4から
図6を用いて、未使用の複合機10に新品のインクカートリッジ30が接続されたとき、及び記録ヘッド21からインクが排出されてカートリッジエンプティ又はインクエンプティになったときのインクカートリッジ30及びタンク103のインクの状態が説明される。
【0046】
図3に示されるように、新品のインクカートリッジ30の貯留室32には、貯留可能な最大量のインクが貯留されている。また、未使用の複合機10のタンク103の貯留室121には、インクが貯留されていない。貯留室121にインクが貯留されていないとは、未だインクカートリッジ30から貯留室121にインクが流入していない状態をいうものであり、例えば、複合機10の製造時における検査などにおいて一時的に貯留室121にインクが貯留され、その後に貯留室121からインクが除去されたときに、貯留室121に残存するインクなどは、貯留室121に貯留されているインクとはみなされないものとする。
【0047】
図4に示されるように、インクカートリッジ30とタンク103とが接続されると、接続管107の内部空間を通じて、貯留室32と貯留室121との間でインクが流通可能になる。その結果、貯留室32に貯留されたインクが水頭差によって貯留室121へ流出する。第1室51は外部と大気連通されていないので、貯留室32においてインクの液面が隔壁38の下端よりも下降しなければ、第1室51からインクは外部へ流出しない。
【0048】
貯留室32の第2室52は、連通口35を通じて外部と大気連通されているので、第3室53のインクが流出口33から流出すると、第2室52に貯留されているインクが第3室53へ移動する。
図4に示されるように、第3室53からインクが流出することによって、第2室52のインクの液面が下降する。
【0049】
タンク103の貯留室121にインクが流入すると、貯留室121においてインクの液面が上昇する。インクの液面が境界位置P1を超えると、液面センサ55が出力する信号がハイレベル信号からローレベル信号に変化する。
【0050】
さらに貯留室32の第3室53からインクが流出すると、第2室52においてインクの液面が下降して、隔壁38の下端と同じ高さにインクの液面が到達する。第2室52における位置P2から隔壁38の下端までの体積V2aは、タンク103の貯留室121の第4室114の体積V4よりも小さいので(V2a<V4)、第2室52に貯留されていたインクの全てが第3室53に移動しても、貯留室121におけるインクの液面(
図5に示される液面)は、第5室115へ到達しない。つまり、第2室52のインクの液面と、貯留室121のインクの液面とは、未だ水頭差が存在する。したがって、さらに、第3室53から貯留室121へインクが流出する。
【0051】
図5に示されるように、貯留室32のインクの液面が隔壁38の下端よりも下降すると、インクの液面と隔壁38の下端との間の空間から、第2室52の空気が第1室51へ進入し、第1室51へ進入した空気と同じ体積のインクが第1室51から第2室52へ流れ込む。これにより、第2室52におけるインクの液面が上昇する。つまり、第1室51と第2室52との間で、空気とインクが置換される(以下、気液置換とも称される)。このような気液置換が生じつつ、第3室53から貯留室121へインクが流出し、貯留室121におけるインクの液面が、隔壁38の下端まで上昇すると、第2室52のインクの液面と、貯留室121のインクの液面との間に水頭差がなくなり、第3室53から貯留室121へのインクの移動が終了する。また、このときの第1室51の液面は、位置P2よりも下方となっている。
【0052】
記録ヘッド21の下面28は、インクカートリッジ30の隔壁38の下端よりも上方に位置しているので、新品のインクカートリッジ30がタンク103に接続されて、貯留室32から貯留室121へのインクの移動が終了したとき、インクカートリッジ30の第2室52のインクの液面は、記録ヘッド21の下面28よりも下方となる。これにより、記録ヘッド21の下面28におけるノズル29の開口に形成されたインクのメニスカスに対して、負圧が生ずるので、ノズル29の開口においてインクのメニスカスが破壊され難い。
【0053】
記録ヘッド21からインクが排出されると、タンク103の貯留室121におけるインクの液面が下降して、第2室52のインクの液面と、貯留室121のインクの液面との間に水頭差が生じる。この水頭差によって、第3室53から貯留室121へインクが移動し、また、第1室51と第2室52との間で気液置換が生ずる。第1室51におけるインクの液面が隔壁38の下端に到達するまで、記録ヘッドの21からインクの排出される毎に、同様のインクの移動と気液置換とが生ずる。
【0054】
貯留室32におけるインクの液面、すなわち第1室51の液面及び第2室52の液面とが共にが隔壁38の下端より下降すると、連通口35及び隔壁38の下端とインクの液面との間の空間を通じて、第1室51も常に外部と大気連通される。したがって、記録ヘッド21からインクが排出されて水頭差が生ずると、第3室53から貯留室121へインクが流出する。そして、第3室53のインクの液面が流出口33、すなわち境界位置P1に到達すると、第3室53から貯留室121へインクが移動できなくなる。
【0055】
さらに記録ヘッド21からインクが排出されると、貯留室121におけるインクの液面が境界位置P1より下降する。これにより、液面センサ55が出力する信号がローレベル信号からハイレベル信号へ変化する。制御基板に実装されているコントローラは、液面センサ55からローレベル信号を受信した後にハイベル信号を受信したことに応じて、インクカートリッジ30の貯留室32に貯留されているインクがタンク103に供給できなくなったことを示すカートリッジエンプティの報知を、例えば、複合機10が有するディスプレイなどを通じてユーザに報知する。
【0056】
コントローラは、液面センサ55からハイレベル信号を受信した後、記録ヘッド21から排出されるインク量のカウントを実行する。そして、インク量のカウントが予め定められた閾値に到達すると、更なる画像記録が実行できないことを示すインクエンプティの報知を、ディスプレイなどを通じてユーザに報知する。また、コントローラは、更なる画像記録の指示の受付を禁止してもよい。予め定められた閾値は、
図6に示されるように、タンク103の貯留室121のインクの液面が、供給口128の上端に到達する直前となるように設定されている。インクエンプティが報知されることによって、貯留室121におけるインクの液面が供給口128の上端よりも下降して、供給口128に空気が進入することが防止される。
【0057】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態によれば、隔壁38の下端の高さが、第1室51に貯留されたインクの液面より低い位置にあるインクカートリッジ30に対して、隔壁38の下端よりも下方に位置する第4室114を有するタンクが設けられているので、インクカートリッジ30の貯留室32に貯留可能なインクの最大量を増やすことができる。また、最大量のインクが貯留されたインクカートリッジ30がタンク103に接続されたときに、第2室52に貯留されたインクの液面から隔壁38の下端までの体積V2aが、第4室114の体積V4よりも小さいので(V2a<V4)、貯留室32から貯留室121へインクが移動した後のインクの液面の位置が隔壁38の下端となる。これにより、記録ヘッド21の下面28が隔壁38の下端よりも上方に配置可能になるので、記録ヘッド21のレイアウトの自由度が増す。
【0058】
また、タンク103の第5室115の体積V5は、インクカートリッジ30の第2室52の体積V2よりも大きいので(V5>V2)、複合機10が使用される環境の温度や大気圧が変動して、インクカートリッジ30の貯留室32からタンク103の貯留室121へインクが移動したとしても、移動したインクが第5室115に確実に貯留される。
【0059】
また、記録ヘッド21の下面28は、タンク103に接続されたインクカートリッジ30の第1室51の上端よりも下方に位置するので、記録ヘッド21の下面28よりも上方の位置に、インクカートリッジ30の貯留室32を配置することができる。これにより、複合機10の上下方向7の高さを低くすることができる。
【0060】
[変形例]
第1実施形態では、第2室52に貯留されたインクの液面から隔壁38の下端までの体積V2aが、第4室114の体積V4よりも小さいが、体積V2aは、第4室114における供給口128の上端から上方の体積V4a(
図6で斜線で示される領域)よりも小さくてもよい(V2a<V4a)。
【0061】
インクエンプティであるときには、
図6に示されるように、タンク103の貯留室121におけるインクの液面は、供給口128の上端付近(上端の直上)にある。インクエンプティであるときに、インクカートリッジ30が交換されると、交換された新品のインクカートリッジ30の貯留室32からタンク103の貯留室121へインクが移動する。
【0062】
体積V2aが体積V4aよりも小さいので、貯留室32の第2室52からインクが流出して、第2室52においてインクの液面が下降して、隔壁38の下端と同じ高さにインクの液面が到達しても、第2室52のインクの液面と、貯留室121のインクの液面とは、未だ水頭差が存在した状態となる。したがって、インクカートリッジ30が交換された後、インクの移動が終了したときに、第2室52におけるインクの液面は、隔壁38の下端にあるので、記録ヘッド21の下面28より下方となる。
【0063】
また、体積V2aは、第4室114における供給口128と流入口108との間の所定高さ位置P3(
図6参照)から上方の体積V4bよりも小さくてもよい(V2a<V4b)。これにより、インクカートリッジ30が交換されて、貯留室32から貯留室121へインクが移動した後に、タンク103の貯留室121におけるインクの液面の位置が隔壁38の下端と同じ位置になる。
【0064】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態が説明される。
図7に示されるように、第2実施形態では、複合機10が、記録ヘッド21の下面28を覆うキャップ44及びキャップ44の内部空間を負圧にするポンプ45を有する。また、複合機10は、インクカートリッジ30に代えて、
図8,9に示されるように、インクカートリッジ60を有する。第2実施形態に係るインクカートリッジ60は、インクカートリッジ30と同様の構成であるが、体積V2aが体積V4よりも大きい(V2a>V4)。また、体積V2aは、体積V4と、初期インク導入に要するインク量Vipとの和よりも小さい(V2a<(V4+Vip))。その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下、詳細に説明する。
【0065】
図7に示されるように、キャップ44は、左右方向9に往復移動するキャリッジ22に搭載された記録ヘッド21が、記録領域の外側に位置するときに、記録ヘッド21の直下となる。キャップ44は、不図示のモータの駆動力が伝達されて、記録ヘッド21の下面28に対して接離するように、上下方向7に移動可能である。キャップ44が記録ヘッド21の下面28を覆うように接触した状態で、ポンプ45が駆動されることによって、記録ヘッド21のノズル29から気体又は液体がキャップ44の内部空間へ吸引される。キャップ44の内部空間に吸引された気体又は液体は、不図示のドレインチューブを通じてキャップ44の外部へ排出される。
【0066】
インクカートリッジ60は、例えば、新品の複合機10において、同梱包品として付属する。したがって、新品の複合機10を購入したユーザは、インクカートリッジ60を、複合機10に最初に装着するインクカートリッジとして使用する。
【0067】
インクカートリッジ60がタンク103と接続されると、コントローラは、初期インク導入を実行する。新品の複合機10のタンク103にはインクが存在しない。また、インクチューブ20や記録ヘッド21のノズル29などにもインクが存在しない。なお、製造時の検査に用いるインクなどがインクチューブ20や記録ヘッド21のノズル29などに残存したとしても、残存するインクが画像記録に使用されることなく、初期導入において排出される。
【0068】
インクカートリッジ60とタンク103とが接続されると、貯留室32に貯留されたインクが水頭差によって貯留室121へ流出する。
図8に示されるように、第2室52のインクの液面と、貯留室121のインクの液面との間に水頭差がなくなると、第2室52から貯留室121へのインクの移動が終了する。体積V2aが体積V4よりも大きいので(V2a>V4)、第3室53から貯留室121へのインクの移動が終了したときに、第2室52におけるインクの液面は、隔壁38の下端よりも上方である。
【0069】
コントローラが初期インク導入を実行すると、キャップ44が記録ヘッド21の下面28を覆うように接触し、ポンプ45が駆動されることによって、記録ヘッド21のノズル29から気体又はインクがキャップ44の内部空間へ吸引される。タンク103の貯留室121からインクチューブ20へインクが流れ込み、さらに記録ヘッド21からインクが排出されることによって、タンク103の貯留室121におけるインクの液面が下降して、第2室52のインクの液面と、貯留室121のインクの液面との間に水頭差が生じる。この水頭差によって、第3室53から貯留室121へインクが移動する。
【0070】
コントローラが、予め定められた時間だけポンプ45を駆動すると、記録ヘッド21から所定量のインクが排出される。この所定量のインクが、初期インク導入に要するインク量Vipである。体積V2aは、体積V4と、初期インク導入に要するインク量Vipとの和よりも小さいので(V2a<(V4+Vip))、初期インク導入が実行される過程において、第2室52のインクの液面が隔壁38の下端に到達する。そして、第1室51と第2室52との間で気液置換が生じつつ、初期導入が終了するまで、インクカートリッジ60の貯留室32のインクがタンク103の貯留室121に流出する。
【0071】
図9に示されるように、初期インク導入が終了したとき、インクカートリッジ30の第2室52のインクの液面は、隔壁38の下端となる。これにより、インクカートリッジ60に貯留可能なインクの量を増やすとともに、記録ヘッド21のレイアウトの自由度を確保することができる。なお、初期インク導入は、インクカートリッジ60がタンク103に接続された後、コントローラが、液面センサ55からハイレベル信号を受信した後ローレベル信号を受信したことに応じて開始されてもよい。
【0072】
[変形例]
前述された実施形態では、第1室51と第2室52とを区画する隔壁38は、筐体31の前壁41、後壁40と対向しているが、隔壁38の形状や第1室51及び第2室52の配置はこれに限らない。例えば、
図10に示されるように、前後方向8に分かれて対向する二つの隔壁36A,36Bによって、第1室51と第2室52とが区画されてもよい。この場合、第1室51は、後壁40と隔壁36Aとの間、並びに前壁41と隔壁36Bとの間の2つの空間として形成される。第2室52は、二つの隔壁36A,36Bの間に形成される。また、二つの隔壁36A,36Bは、それぞれが側壁37と連続していなくてもよい。例えば、上壁39から下方へ延びる円筒形状の隔壁によって第1室51と第2室52とが区画されており、円筒形状の隔壁の内部空間が第2室52であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10・・・複合機(システム)
21・・・記録ヘッド
28・・・下面
29・・・ノズル
30・・・インクカートリッジ(カートリッジ)
32・・・貯留室(第1貯留室)
33・・・流出口
35・・・連通口(第1大気連通口)
36A,36B,38・・・隔壁
51・・・第1室
52・・・第2室
60・・・インクカートリッジ(カートリッジ)
103・・・タンク
108・・・流入口
113・・・第3室
114・・・第4室
121・・・貯留室(第2貯留室)
124・・・連通口(第2大気連通口)
126・・・流入口
128・・・供給口
【手続補正書】
【提出日】2022-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留する第1貯留室と、
上記第1貯留室から流出したインクを貯留する第2貯留室と、
上記第2貯留室に貯留されたインクをノズルから吐出する記録ヘッドと、
上記第1貯留室を第1室及び第2室に区画する隔壁と、
上記隔壁の下方において上記第1室及び上記第2室と連通する第3室と、を備えるシステムであって、
上記第2室は、大気と連通する第1大気連通口を有しており、
上記第3室は、上記第1貯留室からインクが流出する流出口を有しており、
上記第2貯留室は、
上記流出口と連通する流入口、及び上記記録ヘッドへインクを供給する供給口を有し、上記隔壁の下端よりも下方に位置する第4室と、
上記第4室の上方に位置しており、大気と連通する第2大気連通口を有する第5室と、を有しており、
上記第1貯留室において上記隔壁の下端より上方に液面が位置しており、且つ上記第1室に貯留されたインクの液面と上記第2室に貯留されたインクの液面とが同じ高さである状態において、上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室の体積よりも小さいシステム。
【請求項2】
上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室における上記供給口の上端から上方の体積よりも小さい請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記第2室に貯留されたインクの液面から上記隔壁の下端までの体積は、上記第4室における上記供給口と上記流入口との間の所定高さ位置から上方の体積よりも小さい請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
上記第5室の体積は、上記第2室の体積よりも大きい請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
上記記録ヘッドの下面は、上記第1室の上端よりも下方に位置する請求項1から4のいずれかに記載のシステム。