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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071110
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20220506BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20220506BHJP
   A47C 7/20 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/68
A47C7/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031823
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2017156655の分割
【原出願日】2017-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】石塚 喬
(72)【発明者】
【氏名】山部 篤史
(57)【要約】
【課題】衝突などの衝撃発生時に着座者の骨盤(腰部)の挙動を適切に制御し、着座者の脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことを抑制することが可能な乗物用シートの提供。
【解決手段】シートクッションS1を備えた乗物用シートSであって、前記シートクッションS1は、シートクッションフレーム10と、前記シートクッションフレーム10の上に載置されたクッションパッド1bと、前記クッションパッド1bの下方に設けられた前記クッションパッド1bの材質よりも硬度の高い高硬度部17と、を有し、前記高硬度部17は、前記乗物用シートSの上下方向において前記シートクッションフレーム又は車体に設けられる着座者の沈み込みを抑制するための沈み込み抑制部材16と少なくとも一部が重なるように配置されており、前記沈み込み抑制部材16は、前記高硬度部17よりも下方に配置されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを備えた乗物用シートであって、
前記シートクッションは、シートクッションフレームと、
前記シートクッションフレームの上に載置されたクッションパッドと、
前記クッションパッドの下方に設けられた前記クッションパッドの材質よりも硬度の高い高硬度部と、を有し、
前記高硬度部は、前記乗物用シートの上下方向において前記シートクッションフレーム又は車体に設けられる着座者の沈み込みを抑制するための沈み込み抑制部材と少なくとも一部が重なるように配置されており、
前記沈み込み抑制部材は、前記高硬度部よりも下方に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記シートクッションは、前記シートクッションフレームの後端に配置されたパイプフレームを有し、
前記沈み込み抑制部材は、前記乗物用シートの前後方向において前記シートクッションフレームの前端と前記パイプフレームの間に設けられたパイプ部材であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記シートクッションは、前記シートクッションフレームの後端に配置されたパイプフレームを有し、
前記沈み込み抑制部材は、前記乗物用シートの前後方向において前記シートクッションフレームの前端と前記パイプフレームの間に設けられたフレーム部材であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記高硬度部は、下方に変位したときに前記沈み込み抑制部材に接触することで着座者の腰部の沈み込みを抑制することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記高硬度部は、前記乗物用シートの上下方向において前記クッションパッドを支持する支持部材に対して少なくとも一部が重なるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記高硬度部は、前記乗物用シートの前後方向において前記沈み込み抑制部材をまたぐように配置された板状部材であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記高硬度部は樹脂成形品であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記高硬度部は前記クッションパッドと一体化されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記高硬度部は、前記乗物用シートの上下方向において前記クッションパッドに設けられた薄肉部と前記沈み込み抑制部材の間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
板状部材である前記高硬度部は、前記乗物用シートの幅方向に対して湾曲していることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に衝突などの衝撃発生時に着座者の腰部の沈み込みを抑制することが可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両が前突した際には、シートに着座した着座者(乗員)の体が、シートベルトに拘束された状態でシートの表面上を前下方に滑り落ちるサブマリン現象が発生することがある。サブマリン現象を抑制するための対策としては、例えば特許文献1に記載されているように、シートクッションの前部の下側に沈み込み抑制のためにパイプ部材を設けた車両用シートが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-34797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前突時に、乗員が沈み込んだ際に骨盤が回転しすぎることにより脊椎に圧縮荷重が生じるため乗員に負荷をかけてしまうことがあった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、衝突などの衝撃発生時に着座者の骨盤(腰部)の挙動を適切に制御し、着座者の脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことを抑制することが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションを備えた乗物用シートであって、前記シートクッションは、シートクッションフレームと、前記シートクッションフレームの上に載置されたクッションパッドと、前記クッションパッドの下方に設けられた前記クッションパッドの材質よりも硬度の高い高硬度部と、を有し、前記高硬度部は、前記乗物用シートの上下方向において前記シートクッションフレーム又は車体に設けられる着座者の沈み込みを抑制するための沈み込み抑制部材と少なくとも一部が重なるように配置されており、前記沈み込み抑制部材は、前記高硬度部よりも下方に配置されていることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明のシートクッションでは、高硬度部が沈み込み抑制部材と重なって配置されており、前突時に、高硬度部が沈み込み抑制部材に接触して荷重が分散し、高硬度部が下方へと変位することが阻止されて、着座者の沈み込みが抑制されるため、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎることによって脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが抑制される。
【0008】
また、上記の構成において、前記シートクッションは、前記シートクッションフレームの後端に配置されたパイプフレームを有し、前記沈み込み抑制部材は、前記乗物用シートの前後方向において前記シートクッションフレームの前端と前記パイプフレームの間に設けられたパイプ部材であるとよい。
上記の構成では、沈み込み抑制部材としてのパイプ部材がシートクッションフレームの前端と、シートクッションフレームの後端に配置されたパイプフレームの間という着座者の腰部に近い位置に設けられているため、前突時に、着座者の腰部の沈み込みが抑制されるため、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎることにより脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが効果的に抑制される。
【0009】
また、上記の構成において、前記シートクッションは、前記シートクッションフレームの後端に配置されたパイプフレームを有し、前記沈み込み抑制部材は、前記乗物用シートの前後方向において前記シートクッションフレームの前端と前記パイプフレームの間に設けられたフレーム部材であるとよい。
上記の構成では、沈み込み抑制部材としてのフレーム部材がシートクッションフレームの前端と、シートクッションフレームの後端に配置されたパイプフレームの間という着座者の腰部に近い位置に設けられているため、前突時に、着座者の沈み込みに伴って着座者の腰部(骨盤)が回転してしまうことが適切に抑制される。
【0010】
また、上記の構成において、前記高硬度部は、下方に変位したときに前記沈み込み抑制部材に接触することで着座者の腰部の沈み込みを抑制するとよい。
上記の構成では、前突時に、高硬度部が下方へと変位した際に、高硬度部が沈み込み抑制部材に接触して荷重が分散し、高硬度部がさらに下方へと変位することが阻止されるため、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことがより一層抑制される。
【0011】
また、上記の構成において、前記高硬度部は、前記乗物用シートの上下方向において前記クッションパッドを支持する支持部材に対して少なくとも一部が重なるように配置されているとよい。
上記の構成では、前突時に、高硬度部の下方への変位が支持部材によって阻止されるため、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことがより一層抑制される。
【0012】
また、上記の構成において、前記高硬度部は、前記乗物用シートの前後方向において前記沈み込み抑制部材をまたぐように配置された板状部材であるとよい。
上記の構成では、前突時に、板状部材の下方への変位が、板状部材の下面が沈み込み抑制部材と面接触することで阻止されるため、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことがより一層抑制される。
【0013】
また、上記の構成において、前記高硬度部は樹脂成形品であるとよい。
上記の構成では、乗物用シートの重量を高硬度部を設けないときよりも重量を大きく増加させることなく、前突時に着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことを抑制することが可能である。
【0014】
また、上記の構成において、前記高硬度部は前記クッションパッドと一体化されているとよい。
上記の構成では、高硬度部がクッションパッドと一体化されているため、別途高硬度部をクッションパッドに取り付ける必要がなく、作業性が向上する。
【0015】
また、上記の構成において、前記高硬度部は、前記乗物用シートの上下方向において前記クッションパッドに設けられた薄肉部と前記沈み込み抑制部材の間に配置されているとよい。
上記の構成では、高硬度部がクッションパッドの薄肉部と沈み込み抑制部材の間に配置されているため、前突時に、高硬度部が下方へと変位した際に、第二の沈み込み抑制部材によって適切に阻止される位置関係となるため、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことが適切に抑制される。
【0016】
また、上記の構成において、板状部材である前記高硬度部は、前記乗物用シートの幅方向に対して湾曲しているとよい。
上記の構成では、前突時に、板状部材である高硬度部が下方へと変位した際に、シート幅方向に湾曲した板状部材の中央部分または端部が、沈み込み抑制部材と接触して荷重が分散され、高硬度部の下方への変位が阻止されるため、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことが適切に抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乗物用シートによれば、高硬度部が沈み込み抑制部材と重なって配置されており、前突時に、高硬度部が沈み込み抑制部材に接触して荷重が分散し、高硬度部が下方へと変位することが阻止されて、着座者の沈み込みが抑制されるため、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎることによって脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、沈み込み抑制部材としてのパイプ部材がシートクッションフレームの前端と、シートクッションフレームの後端に配置されたパイプフレームの間という着座者の腰部に近い位置に設けられているため、前突時に、着座者の腰部の沈み込みが抑制されるため、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎることにより脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが効果的に抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、沈み込み抑制部材としてのフレーム部材がシートクッションフレームの前端と、シートクッションフレームの後端に配置されたパイプフレームの間という着座者の腰部に近い位置に設けられているため、前突時に、着座者の沈み込みに伴って着座者の腰部(骨盤)が回転してしまうことが適切に抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、前突時に、高硬度部が下方へと変位した際に、高硬度部が沈み込み抑制部材に接触して荷重が分散し、高硬度部がさらに下方へと変位することが阻止されるため、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことがより一層抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、前突時に、高硬度部の下方への変位が支持部材によって阻止されるため、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことがより一層抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、前突時に、板状部材の下方への変位が、板状部材の下面が沈み込み抑制部材と面接触することで阻止されるため、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことがより一層抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、乗物用シートの重量を高硬度部を設けないときよりも重量を大きく増加させることなく、前突時に着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことを抑制することが可能である。
また、本発明の乗物用シートによれば、高硬度部がクッションパッドと一体化されているため、別途高硬度部をクッションパッドに取り付ける必要がなく、作業性が向上する。
また、本発明の乗物用シートによれば、高硬度部がクッションパッドの薄肉部と沈み込み抑制部材の間に配置されているため、前突時に、高硬度部が下方へと変位した際に、第二の沈み込み抑制部材によって適切に阻止される位置関係となるため、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことが適切に抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、前突時に、板状部材である高硬度部が下方へと変位した際に、シート幅方向に湾曲した板状部材の中央部分または端部が、沈み込み抑制部材と接触して荷重が分散され、高硬度部の下方への変位が阻止されるため、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことが適切に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一及び第二の実施形態に係る車両用シートの外観図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る車両用シートのシートクッションフレームの斜視図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る車両用シートのパンフレームを除いた状態のシートクッションフレームの斜視図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係る車両用シートのシートクッションフレームの上面図である。
図5図1のA-A断面図であって、本発明の第一の実施形態に係る第一及び第二の沈み込み抑制部材の位置関係を示す説明図である。
図6図1のB-B断面図であって、本発明の第一の実施形態に係る第一及び第二の沈み込み抑制部材の位置関係を示す説明図である。
図7】本発明の第二の実施形態に係る車両用シートのシートクッションフレームの斜視図である。
図8】本発明の第二の実施形態に係る車両用シートのシートクッションフレームの上面図である。
図9図1のA-A断面図であって、本発明の第二の実施形態に係る第一及び第二の沈み込み抑制部材の位置関係を示す説明図である。
図10】本発明の第一の実施形態の変形例に係る車両用シートのシートクッションフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1乃至図10を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートについて説明する。本実施形態に係る乗物用シートとして、車両に搭載される車両用シートを例に挙げて説明することとするが、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
【0020】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0021】
本明細書における方向を示す用語に関し、図1のように各方向を定義する。具体的には、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味し、車両用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、車両用シートの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致している。
【0022】
[1.車両用シートSの構成]
本実施形態に係る車両用シートSは、図1に図示した外観を有している。なお、図1中、車両用シートSの一部(具体的には、シートクッションS1の前端角部)については、図示の都合上、トリムカバー1aを外した構成にて図示している。
【0023】
車両用シートSは、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッションS1、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバックS2、及び、シートバックS2の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレストS3を主な構成要素として有する。シートクッションS1は、図2に示す骨格となるシートクッションフレーム10にクッションパッド1bを載置し、更にクッションパッド1bをトリムカバー1aで覆うことで構成されている。シートバックS2は不図示のシートバックフレームに不図示のクッションパッドを載置して、トリムカバー1aで覆うことで構成されている。ヘッドレストS3は、不図示の芯材に不図示のパッド材を配して、トリムカバー1aで被覆して形成されている。
【0024】
シートクッションS1やシートバックS2のクッションパッドはウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材である。シートクッションS1のトリムカバー1aには、シートクッション右側に設けられ前後方向に延在する第一の吊りこみ部2a(右側吊りこみ部)、シートクッション左側に設けられ前後方向に延在する第二の吊りこみ部2b(左側吊りこみ部)、シートクッション前側に設けられシート幅方向に延在する第三の吊りこみ部2c(前側吊りこみ部)、シートクッション後側に設けられシート幅方向に延在する第四の吊りこみ部2d(後側吊りこみ部)がそれぞれ設けられている。また、後述するように、クッションパッド1bの各吊りこみ部2a~2dに対応する位置には、厚みが周囲よりも薄く形成された薄肉部がそれぞれ設けられている。
【0025】
[2.第一の実施形態のシートクッションフレーム]
図2及び3を参照しながら、本発明の第一の実施形態に係るシートクッションフレーム10の構成について説明する。シートクッションフレーム10は不図示の脚部で支持されており、この脚部には、インナレールが取り付けられ、車体フロアに設置されるアウタレールとの間で、前後方向において位置調整可能なスライド式に組み立てられている。またシートクッションフレーム10の後端部は、不図示のリクライニング機構を介して不図示のシートバックフレームと連結されている。
【0026】
本実施形態において、シートクッションフレーム10は、図2に示すように、上方から見たときに略方形枠状の外形形状をなす。そして、シートクッションフレーム10は、シート幅方向左右の端部をそれぞれ構成する一対のサイドフレーム11と、シートクッションフレーム10の前端部を構成するパンフレーム12と、左右のサイドフレーム11を後端部において連結する連結パイプ13(パイプフレーム)と、を主たる構成要素とする。
【0027】
2本(一対)のサイドフレーム11は、シートクッションフレーム10の幅を規定するため、左右方向に離間して配設されており、前後方向に延在するように配設されている。そして、サイドフレーム11の後方側に連結パイプ13が取り付けられており、連結パイプ13によって左右のサイドフレーム11が後方側で連結される。
【0028】
また、パンフレーム12は、一対のサイドフレーム11の前方側に固着接合されており、パンフレーム12によって左右のサイドフレーム11が前方側で連結される。より詳細には、パンフレーム12左右方向の端部は、それぞれ、溶接などの固定手段によってサイドフレーム11に設けられたフランジ11aに固定されている。
【0029】
パンフレーム12は、主として着座者(乗員)の大腿部を支持するためのものであり、その上面がほぼ平坦な略矩形形状に形成された金属製の板材から形成されるフレームである。パンフレーム12は、図2及び後述する図5に示すように、前方端部が下方に折曲された前方折曲部12aと、後端部12eにおいて下方に折曲された後方折曲部12bを備えている。また、前方折曲部12aと後方折曲部12bとの間には、上面がほぼ平坦である支持面12cが備えられている。なお、この支持面12cの左右方向の端部は、それぞれサイドフレーム11のフランジ11aに固定される(図2)。
【0030】
パンフレーム12の前方折曲部12aの下方端部には、トリムカバー1aの端部が係止される。なお、トリムカバー1aと前方折曲部12aとの係止手段は、トリムコード等、公知の手法が用いられる。なお、図2に示すように、パンフレーム12の上面には凸部12dが設けられている。
【0031】
次に、パンフレーム12を除いた状態のシートクッションフレーム10を示す図3図2とともに参照して、説明を行う。パンフレーム12の後端部12eよりも後方には、前方スプリング14a及び後方スプリング14b(支持部材)が配設されている。前方スプリング14a及び後方スプリング14bは、左右のサイドフレーム11間に横架されており、前方スプリング14a及び後方スプリング14bの両端部は、サイドフレーム11に設けられた係止部11bにそれぞれ係止される。係止部11bは、前後方向に離間した二つの孔の間の部分として形成されており、その孔によって挟まれる部分がサイドフレーム11の内側に向かって膨出するように構成されている。そして、一方の孔から前方スプリング14aまたは後方スプリング14bの端部を差し込み、膨出した部分にスプリングの一部を沿わせたのち、端部を他方の孔に挿通させている。
【0032】
前方スプリング14a及び後方スプリング14bは、シートクッションフレーム10を真上から見たとき(すなわち、平面視)、互いに所定距離離間し、延在方向が略平行となるように配設されている。また、前方スプリング14aと後方スプリング14bとの間(所定距離離間した空間)において、着座者の坐骨結節に相当する位置が支持されるように構成される。すなわち、前方スプリング14a及び後方スプリング14bは、少なくとも坐骨結節の直下位置に配設されない程度に、互いに離間して配設される。
【0033】
前方スプリング14a及び後方スプリング14bは、波状(ジグザグ形状)等に形成された線状の部材であり、主として着座者の臀部を支持する。そして、前方スプリング14a及び後方スプリング14bの端部はそれぞれ左右のサイドフレーム11に軸支されており、前方スプリング14a及び後方スプリング14bの上方にクッションパッド1bが載置される。つまり、前方スプリング14a及び後方スプリング14bはクッションパッド1bを支持する支持部材として機能する。
【0034】
図3に示すように、本実施形態のシートクッションフレーム10には、車両が前突した際に、車両用シートSに着座した着座者の体が前下方に滑り落ちるサブマリン現象を抑制するためのサブマリンパイプ15(第一の沈み込み抑制部材)が設けられている。サブマリンパイプ15は前方スプリング14aよりも前方の位置において、左右のサイドフレーム11の間に設けられている。また、サブマリンパイプ15はパンフレーム12の後端部12eおよび後方折曲部12bよりも前方の位置に配置されている。さらに、サブマリンパイプ15は、パンフレーム12の下方の位置、具体的にはパンフレーム12の支持面12cや凸部12dの下方の位置に配置されている。
【0035】
前突などの衝撃発生時には、着座者が沈み込み、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎることに伴い、脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことがある。本実施形態のシートクッションフレーム10には、前突などの衝撃発生時に、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことを抑制するために、第二の沈み込み抑制部材としての追加パイプ16が設けられている。追加パイプ16は、サブマリンパイプ15よりも後方かつ下方の位置であって、連結パイプ13よりも前方の位置において、左右のサイドフレーム11の間に設けられている。また、追加パイプ16は、パンフレーム12の後端部12e及び後方折曲部12bよりも後方の位置に配置されている。
【0036】
なお、図3では、前後方向において前方スプリング14aと後方スプリング14bとの間に追加パイプ16を設けた例を示しているが、前後方向における追加パイプ16の位置は、サブマリンパイプ15と連結パイプ13との間であって、前突時に着座者の骨盤(腰部)が回転することを抑制することが可能な位置であれば特に限定されるものではない。
【0037】
追加パイプ16を配置した本実施形態のシートクッションフレーム10によれば、前突時にクッションパッド1bが潰れて着座者が沈み込みこんだときに、左右方向(シート幅方向)に延在する追加パイプ16が存在していることによって、着座者に対して沈み込む方向に発生した衝撃が追加パイプ16によって吸収される。したがって、着座者の骨盤(腰部)の回転を抑制し、脊椎乗じる圧縮荷重を抑制することが可能となる。つまり、前突時に着座者の前下方への沈み込みをサブマリンパイプ15によって抑制するとともに、着座者の腰部(骨盤)の沈み込みを追加パイプ16によって抑制することが可能となる。また、追加パイプ16がパンフレーム12の後端部12eよりも後方の着座者の腰部に近い位置に設けられているため、前突時に、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことが効果的に抑制される。
【0038】
[3.シートクッションパッドに設けられる第二の沈み込み抑制部材(高硬度部)]
以下、本実施形態に係るシートクッションS1のクッションパッド1bに設けられる第二の沈み込み抑制部材(高硬度部)について、図4乃至6を参照しながら説明する。図4は、シートクッションフレーム10の上面図であり、図5図1のA-A断面図、図6図1のB-B断面図である。
【0039】
本実施形態に係るシートクッションS1のクッションパッド1bに設けられる第二の沈み込み抑制部材(高硬度部)の例として、板状の樹脂プレート17を例として説明する。樹脂プレート17は、クッションパッド1bの下面または下面に近い位置に設けられており、クッションパッド1bを構成する基材(ウレタン材料であるウレタン発泡体)よりも硬度の高い材料で形成された板状の樹脂成形品である。クッションパッド1bを構成する基材に樹脂プレート17がインサートされた状態で射出成型されている。樹脂プレート17はクッションパッド1bと一体成形されて一体化しているため、成形されたクッションパッド1bに樹脂プレート17を別途取り付ける必要がないため、作業性が向上するという利点を有する。
【0040】
図4にシートクッションフレーム10の上面図を示すように、樹脂プレート17は、前方の前端面17aと、後方の後端面17bと、右側のサイドフレーム11と対向する右端面17cと、左側のサイドフレーム11と対向する左端面17dと、を有している。また、図5に示すように、樹脂プレート17は上面部17e及び下面部17fを有している。
【0041】
シートクッションフレーム10を上側から見た平面視において、図4に示すように、樹脂プレート17が追加パイプ16よりも上方に配置されている。また、図4及び5に示すように、樹脂プレート17は、上下方向において追加パイプ16に対して少なくとも一部が重なるように配置されている。換言すると、樹脂プレート17のうち少なくとも一部は、追加パイプ16と前後方向において同じ位置にある。さらに、図4に示すように、樹脂プレート17は、上下方向においてクッションパッド1bを支持する支持部材である前方スプリング14a及び後方スプリング14bに対して少なくとも一部が重なるように配置されている。
【0042】
また、シート前後方向において、樹脂プレート17の前端面17aと後端面17bとの間に追加パイプ16が位置し、樹脂プレート17の前端面17aがサブマリンパイプ15の後端よりも後方に位置するように構成されている。また、樹脂プレート17のうち少なくとも一部は、追加パイプ16と左右方向(シート幅方向)において同じ位置にある。換言すると、樹脂プレート17は、前後方向において追加パイプ16をまたぐように配置されている。
【0043】
図5に示すように、樹脂プレート17は、上下方向においてクッションパッド1bに設けられた前方薄肉部1cと追加パイプ16の間に位置するように配置されている。また、図6に示すように、樹脂プレート17は、シート幅方向(シート左右方向)において、クッションパッド1bの左右の薄肉部、つまり右側薄肉部1eと左側薄肉部1fの間(左右の薄肉部に対してシート中央側)に設けられている。換言すると、樹脂プレート17は、シート幅方向(シート左右方向)において、トリムカバー1aに設けられた左右の吊りこみ部、つまり第一の吊りこみ部2aと第二の吊りこみ部2bの間(左右の吊りこみ部に対してシート中央側)に設けられている。
【0044】
本実施形態のシートクッションフレーム10では、樹脂プレート17がこのような位置に配置されているため、前突時に着座者が沈み込んだときに、樹脂プレート17の下方への変位が、樹脂プレート17の下面が追加パイプ16と面接触することで阻止されることで、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことが抑制される。詳細には、図5及び6に示すように、樹脂プレート17が下方へと変位した際に、下面部17fが追加パイプ16と接触することで荷重が分散され、樹脂プレート17の下方への変位が阻止される。したがって、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎることにより脊椎に圧縮荷重が生じてしまうことが抑制される。
【0045】
ここで、樹脂プレート17が衝突に伴って変位した際にサブマリンパイプ15と追加パイプ16のそれぞれに荷重を伝達するように構成されていると、荷重が分散されるため好ましい。例えば、図4において、樹脂プレート17の前端面17aがサブマリンパイプ15よりも前方に位置するように構成して、樹脂プレート17がサブマリンパイプ15と追加パイプ16にまたがるように設けることも可能である。このとき、衝突に伴って樹脂プレート17が変位した際に、サブマリンパイプ15と追加パイプ16のそれぞれに荷重が伝達されることで、荷重が分散されるため、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことを効果的に抑制することが可能となる。したがって、着座者の脊椎に生じる圧縮荷重を抑制することが可能となる。
【0046】
図5において、サブマリンパイプ15の上端と追加パイプ16の上端を結んだ線と樹脂プレート17の下面部17fとの間の距離が、後方に向かうにつれて広がっているが、これに限定されるものではなく、サブマリンパイプ15の上端と追加パイプ16の上端を結んだ線と樹脂プレート17の下面部17fとの間の距離が一定であったり、後方に向かうにつれて狭くなっているように構成されてもよい。
【0047】
シートクッションS1の高さ調整(上下調整)や前後位置調整(スライド調整)を行うことが可能な構成において、追加パイプ16が樹脂プレート17(高硬度部)と対向するように構成されていると、シートクッションS1の高さ(上下位置)や前後位置に影響されることなく着座者の沈み込みに伴って腰部が回転しすぎてしまうことを抑制することが可能となるため好ましい。
【0048】
また、シートクッションS1の高さ調整(上下調整)や前後位置調整(スライド調整)を行った際に、樹脂プレート17(高硬度部)が、追加パイプ16に対して上下方向や前後方向に追従して変位するように構成されていると、シートクッションS1の高さ(上下位置)や前後位置に影響されることなく着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことを抑制することが可能となるため好ましい。
【0049】
[4.第二の実施形態のシートクッションフレーム]
第一の実施形態に係る車両用シートのシートクッションフレームは、第一の沈み込み抑制部材としてサブマリンパイプを備えた例(例えばフロントシートのシートクッションフレーム)を説明したが、第二の実施形態では、サブマリンパイプを備えていないシートクッションフレーム(フロントシートのシートクッションフレームや、リアシートのシートクッションフレーム)を説明する。
【0050】
以下、本発明の第二の実施形態に係るシートクッションフレームについて図7乃至9を参照して説明する。第一の実施形態と異なる構成のみ説明し、それ以外の構成については、第一の実施形態の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
図7に、第二の実施形態に係る車両用シートのシートクッションフレーム10’の斜視図を示す。シートクッションフレーム10’はサブマリンパイプに相当する部材を備えていない点で第一の実施形態と異なっている。第二の実施形態に係るシートクッションフレーム10’は、クッションパッド1b’の下方にクッションパッド1b’の材質よりも硬度の高い高硬度部を有しており、前突時に、樹脂プレート17’(高硬度部)が下方へと変位した場合に、樹脂プレート17’が、シートクッションフレーム10’又は車体に設けられる沈み込み抑制部材と接触し、樹脂プレート17’の下方への変位が阻止されることで、着座者の沈み込みに伴って骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことが抑制されるように構成されている。
【0052】
シートクッションフレーム10’又は車体に設けられる沈み込み抑制部材の例としては、クッションパッド1b’に設けられた樹脂プレート17’(高硬度部)が下方へと変位することを抑制可能なものであればよく、フレーム片18’、追加パイプ16’、又は不図示の車体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0053】
図7に示すように、追加パイプ16’は、シート前後方向において、シートクッションフレーム10’の前端(フロントフレーム12’)とシートクッションフレーム10’の後端の連結パイプ13(パイプフレーム)の間に設けられている。また、フレーム片18’は左右のサイドフレーム11’の間に設けられ、シート幅方向において左右のサイドフレーム11’を接続するフレーム部材であり、シート前後方向において、シートクッションフレーム10’の前端(フロントフレーム12’)とシートクッションフレーム10’の後端の連結パイプ13(パイプフレーム)の間に設けられている。
【0054】
また、フレーム片18’は、前方スプリング14a’よりも前方の位置において左右のサイドフレーム11’の間に設けられており、追加パイプ16’は前方スプリング14a’よりも後方の位置において左右のサイドフレーム11’の間に設けられている。
【0055】
図8に示すように、シートクッションフレーム10’をシート上下方向の上側から見た平面視において、樹脂プレート17’がフレーム片18’及び追加パイプ16’よりも上方の位置に配置されている。また、シート前後方向において、樹脂プレート17’の前端面17a’がフレーム片18’よりも前方に位置し、樹脂プレート17’の後端面17bが追加パイプ16’よりも後方に位置するように構成されている。
【0056】
第二の実施形態に係る車両用シートのシートクッションフレーム10’によれば、前突時に着座者が沈み込んだときに、樹脂プレート17’の下方への変位が沈み込み抑制部材(フレーム片18’や追加パイプ16’又は不図示の車体)によって阻止されることで、着座者の骨盤(腰部)が回転しすぎてしまうことが抑制される。詳細には、図9に示すように、樹脂プレート17’の下面部17f’が下方への変位が、沈み込み抑制部材(フレーム片18’や追加パイプ16’又は不図示の車体)に阻止されることで、着座者の沈み込みに伴って腰部が回転しすぎてしまうことが抑制される。
【0057】
[5.変形例]
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。以下においては、本実施形態に係るシートクッションフレーム及びシートクッションの変形例について説明する。
【0058】
上記実施形態では、図2に示すように、クッションパッド1bを支持する支持部材(前方スプリング14a及び後方スプリング14b)の端部がそれぞれ左右のサイドフレーム11に取り付けられて配置された例を示したが、支持部材の配置はこれに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、支持部材としてのスプリング14’がシート前後方向に延在するように配置されていてもよい。具体的には、スプリング14’の前方の端部をパンフレーム12の凸部12dに取り付け、スプリング14’の後方の端部を連結パイプ13に取り付けることで、シート前後方向にスプリング14’(支持部材)を配置することも可能である。
【0059】
上記実施形態では、図5に示すように、2つの沈み込み抑制部材(サブマリンパイプ15と追加パイプ16)の高さ位置(上下方向における位置)に関して、サブマリンパイプ15が追加パイプ16よりも上方に設けられている例を示したが、これに限定されるものではなく、衝撃発生時に適切に着座者(乗員)の骨盤(腰部)の回転が抑制されるのであれば、サブマリンパイプ15と追加パイプ16の高さ位置を同じ位置としてもよく、追加パイプ16をサブマリンパイプ15よりも上方の位置に設けてもよい。
【0060】
また、図5に示す実施形態では、追加パイプ16はパンフレーム12の後端部12eや後方折曲部12bよりも下方に設けられていたが、パンフレーム12の後端部12e及び/又は後方折曲部12bが追加パイプ16よりも下方に設けられていてもよい。パンフレーム12の後端部12e及び後方折曲部12bが追加パイプ16よりも下方に設けられていると、着座者の腰部が沈み込んだ際に、後端部12e及び後方折曲部12bがトリムカバー1aやクッションパッド1bを介して着座者に接触することが抑制される。
【0061】
さらに、図5に示す実施形態では、パンフレーム12の後端部12e及び後方折曲部12bが追加パイプ16よりも前方に設けられていたが、パンフレーム12の後端部12eや後方折曲部12bが追加パイプ16よりも後方の位置に延出するように構成してもよい。
【0062】
上記実施形態では、図3乃至5に示すように、第一の沈み込み抑制部材と第二の沈み込み抑制部材(サブマリンパイプ15と追加パイプ16)を別体として構成したが、2つの沈み込み抑制部材を一体化したり、連結したりして形成することも可能である。
【0063】
また、上記実施形態では、追加パイプ16(第二の沈み込み抑制部材)を直線状のパイプ部材として形成した例を示したが、パイプ部材のシート前後方向の後方に凸部を設けたり、パイプ部材のシート上下方向の上方に凸部を設けたり、断面形状の一辺が他の辺に対してシート前後方向の後方又は前方に向かうに従い傾斜するように構成してもよい。また、パイプ部材を、2つの部材を連結して形成したり、2つの半割形状の部材を接合したりして形成してもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、第一の沈み込み抑制部材と第二の沈み込み抑制部材(サブマリンパイプ15と追加パイプ16)の2つのパイプの直径および肉厚が異なる例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、サブマリンパイプ15の直径をD1、肉厚をd1とし、追加パイプ16の直径をD2、肉厚をd2とした場合、衝撃発生時に適切に着座者の腰部の沈み込みが抑制される範囲であれば、直径はD1>D2、D1=D2、D1<D2の何れであってもよく、肉厚もd1>d2、d1=d2、d1<d2の何れであってもよく、直径と肉厚の組み合わせも適宜選択することが可能である。
【0065】
上記実施形態では、クッションパッドと樹脂プレート(高硬度部)を一体成形により一体化した例を示したが、これに限定されるものではなく、クッションパッドに凹部を設け、該凹部に樹脂プレートを収容するようしてもよい。また、高硬度部として樹脂プレートを用いると軽量化の観点から好ましいが、樹脂の代わりに金属製のプレートを用いてもよい。高硬度部を構成する材料として金属を採用した場合、高硬度部(金属プレート)を小型化しても必要な剛性を確保することが容易となる。
【0066】
上記実施形態では、板状の高硬度部(樹脂プレート17,17’)をクッションパッド1b,1b’と一体成形することで一体化した例を示したが、クッションパッドへの取り付けの手法は、これに限定されるものではなく、クッションパッドの下面に貼着された裏打ち材としての粗毛布に板状の高硬度部を取り付けてもよい。このとき、板状の高硬度部のクッションパッドと接する側の面(上面)や端部に細かな凹凸を設けることで、板状の高硬度部がクッションパッドの下面から脱落してしまうことが抑制される。
【0067】
さらに、高硬度部を構成する材料として、通常は柔らかく、衝撃を受けた際に硬くなるダイラタンシ物性を示す物質を用いることも可能である。ダイラタンシ物性を示す物質を用いた場合、通常時は柔らかく着座者に違和感を与えることなく、前突時など衝撃を受けた際に硬くなり着座者の沈み込みおよび沈み込みに伴う骨盤(腰部)の回転を効果的に抑制することが可能となる。
【0068】
樹脂プレート17などの高硬度部の形状は、扁平なものに限定されることなく、左右方向(シート幅方向)に湾曲する湾曲形状を有していてもよい。具体的には、樹脂プレート17の右端面17c及び左端面17dが樹脂プレート17の中央部分よりも下方または上方に位置するように湾曲する形状としてもよい。また、樹脂プレート17が前後方向に湾曲する湾曲形状を有していてもよい。具体的には、樹脂プレート17の前端面17a及び後端面17bが樹脂プレート17の中央部分よりも下方または上方に位置するように湾曲する形状としてもよい。樹脂プレート17が湾曲していると、前突時に、板状部材である高硬度部が下方へと変位した際に、樹脂プレート17の中央部分または端部が、追加パイプ16と接触して荷重が分散され、樹脂プレート17の下方への変位が阻止されるため、着座者の腰部が回転しすぎてしまうことが適切に抑制される。さらに、樹脂プレート17などの高硬度部の左右の側部(右端面17c及び左端面17d)を薄くしたり、中央部分を薄くすることも可能である。
【0069】
上記実施形態では、板状の高硬度部(樹脂プレート17,17’)がクッションパッド1b,1b’に設けられる例を示したが、高硬度部がクッションパッド以外に設けられていてもよい。具体的には、板状の高硬度部の左右の端部をそれぞれ左右のサイドフレーム11に引っ掛けるなどして取り付け、板状の高硬度部の下面を前方スプリング14aや後方スプリング14bによって支持することでシートクッションに設置してもよい。
【0070】
上記実施形態では、クッションパッドに設けられる高硬度部として樹脂プレートを用いた例を説明したが、高硬度部の態様はこれに限定されるものではない。例えば、クッションパッドの下面に貼着された、ウレタン基材よりも硬度の高い裏打ち材としての粗毛布を高硬度部としてもよい。また、高硬度部が下方へと変位したときに、沈み込み抑制部材(追加パイプや、フレーム部材、車体など)と接触する部分、具体的には、粗毛布などの裏打ち材の追加パイプや、フレーム部材、車体などと対向する部分の硬度を高くしてもよい。裏打ち材としては粗毛布、フェルト、プレスフェルト、又は不織布が用ることが可能であるが、これらの裏打ち材の一部の領域に樹脂など、ウレタンよりも硬度の高い材料を吹き付けたり、含浸させたりすることで硬度を高くすればよい。
【0071】
以上、本実施形態に係るシートクッションを車両に搭載される車両用シートのシートクッションを例として説明した。本実施形態に係るシートクッションは、車両用シートのシートクッションに限定されるものではなく、着座者に衝撃が発生しうるシート、特に、衝撃発生時に着座者の腰部に対して沈み込みが発生し得るシートのシートクッションであれば、特に用途についての制限はない。例えば、本発明のシートクッションは、車両以外の乗物内で使用される乗物用シートのシートクッションとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートクッション
1a トリムカバー
1b クッションパッド
1c 前方薄肉部
1d 後方薄肉部
1e 右側薄肉部
1f 左側薄肉部
2a 第一の吊りこみ部(右側吊りこみ部)
2b 第二の吊りこみ部(左側吊りこみ部)
2c 第三の吊りこみ部(前側吊りこみ部)
2d 第四の吊りこみ部(後側吊りこみ部)
S2 シートバック
S3 ヘッドレスト
10,10’ シートクッションフレーム
11,11’ サイドフレーム
11a,11a’ フランジ
11b,11b’ 係止部
12 パンフレーム
12a 前方折曲部
12b 後方折曲部
12c 支持面
12d 凸部
12e 後端部
12’ フロントフレーム
13,13’ 連結パイプ
14a,14a’ 前方スプリング(支持部材)
14b,14b’ 後方スプリング(支持部材)
14’ スプリング(支持部材)
15 サブマリンパイプ(第一の沈み込み抑制部材)
16,16’ 追加パイプ(第二の沈み込み抑制部材)
17,17’ 樹脂プレート(第二の沈み込み抑制部材、高硬度部)
17a,17a’ 前端面(前端部)
17b,17b’ 後端面(後端部)
17c,17c’ 右端面(右端部)
17d,17d’ 左端面(左端部)
17e,17e’ 上面部(上端部)
17f,17f’ 下面部(下端部)
18’ フレーム片(沈み込み抑制部材、フレーム部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10