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特開2022-71179琥珀色~赤色の発光を有するIII族窒化物半導体発光LED
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  • 特開-琥珀色~赤色の発光を有するIII族窒化物半導体発光LED 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071179
(43)【公開日】2022-05-13
(54)【発明の名称】琥珀色~赤色の発光を有するIII族窒化物半導体発光LED
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/06 20100101AFI20220506BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20220506BHJP
【FI】
H01L33/06
H01L33/32
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022036024
(22)【出願日】2022-03-09
(62)【分割の表示】P 2018517812の分割
【原出願日】2016-10-07
(31)【優先権主張番号】62/239,122
(32)【優先日】2015-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/287,384
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507349503
【氏名又は名称】オステンド・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】イェ,イャ-チュアン・ミルトン
(72)【発明者】
【氏名】エル-ゴロウリー,フセイン・エス
(72)【発明者】
【氏名】リ,シン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジ-チァ
(72)【発明者】
【氏名】チュアン,チー-リ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】相分離の問題を生じることなく、高出力の琥珀色~赤色の光を放出するために、十分に高いインジウム濃度を保持する。
【解決手段】インジウム含有III族窒化物発光領域が、n型及びp型III族窒化物クラッド層との間に挟まれ、多重量子井戸(MQW)の複数のセットを含む。n型クラッド層上に形成される第1のMQWセットは、相対的に低いインジウム濃度を有する。第2のMQWセットは、相対的に中程度のインジウム濃度を含む。上記p型クラッド層に隣接する第3のMQWセットは、3つのMQWセットのうち相対的に最も高いインジウム濃度を取り込む。最初2つのMQWセットは、予歪み層として利用される。MQWセットとMQWセットの間に、中間歪補償層(ISCL)が追加される。最初の2つのMQWセットとISCLとの組み合わせにより、相分離が防止され、上記第3のMQWセットのインジウム取り込みが強化される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にスタックされた複数の多重量子井戸セットを備え、
第1の前記多重量子井戸セットは、前記基板に隣接し、低いインジウム濃度を有し;
前記第1の多重量子井戸セットの上方の各前記多重量子井戸セットは、漸進的に上昇する濃度を有し;
最上部の前記多重量子井戸セットは、琥珀色~赤色の光を放出するよう選択された最も高いインジウム濃度を有し;
隣接する前記多重量子井戸セットは、AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層によって隔てられ、各前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層は、前記最上部多重量子井戸セットにおける総歪みを低減するために、各前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層の上下にバリア層を有する、III族窒化物半導体LED。
【請求項2】
前記第1の多重量子井戸セットの下のバリア層;
前記最上部多重量子井戸セットの上の電子ブロック層;
前記電子ブロック層の上のクラッド層;及び
前記クラッド層の上のコンタクト層
を更に備える、請求項1に記載のIII族窒化物半導体LED。
【請求項3】
前記第1の多重量子井戸セット及び第2の多重量子井戸セットは、予歪み効果を生成する、請求項1に記載のIII族窒化物半導体LED。
【請求項4】
前記基板上にスタックされた前記複数の多重量子井戸セットは、前記基板上にスタックされた3つ以上の前記多重量子井戸セットを備える、請求項1に記載のIII族窒化物半導体LED。
【請求項5】
低いインジウム濃度を有する前記第1の多重量子井戸セットのインジウム濃度は、17%以下である、請求項4に記載のIII族窒化物半導体LED。
【請求項6】
前記第1の多重量子井戸セットと前記最上部多重量子井戸セットとの間の前記多重量子井戸セットのインジウム濃度は、20%超である、請求項4に記載のIII族窒化物半導体LED。
【請求項7】
前記最上部多重量子井戸セットのインジウム濃度は、30%超である、請求項4に記載のIII族窒化物半導体LED。
【請求項8】
前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層のAl濃度は変動し、前記基板に最も近い前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層が、他の前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層より高いAl濃度を有する、請求項4に記載のIII族窒化物半導体LED。
【請求項9】
前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層のうちの少なくとも1つのAl濃度は、前記層内の複数の離散的ステップとして、又は連続的変動として、変動する、請求項4に記載のIII族窒化物半導体LED。
【請求項10】
各前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層はGaNで構成され、各前記多重量子井戸セットはInGaNで構成される、請求項4に記載のIII族窒化物半導体LED。
【請求項11】
III族窒化物半導体LEDを形成する方法であって、前記方法は:
複数の多重量子井戸セットを有する活性領域を基板上に形成するステップ
を含み、
前記ステップは:
あるインジウム濃度を有する多重量子井戸の第1のセットを基板上に形成するステップ;
多重量子井戸の少なくとも1つの追加のセットを、前記多重量子井戸の第1のセット上に形成するステップであって、前記多重量子井戸の追加のセットそれぞれの形成の前に、多重量子井戸の先行するセット上におけるAlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層の形成を行う、ステップ
によって実施され;
多重量子井戸の最上部セットは、前記多重量子井戸の第1のセットより高いインジウム濃度を有する、方法。
【請求項12】
前記多重量子井戸の最上部セットのインジウム濃度は、琥珀色~赤色の光を放出するために選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記多重量子井戸セットの数は少なくとも3つである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
各前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層の上下にバリア層を形成するステップであって、各前記バリア層はGaNで構成され、各前記多重量子井戸セットはInGaNで構成される、ステップを更に含み;
前記基板に最も近い第1の前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層は、第2の前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層より高いAl濃度を有し;
前記第1の多重量子井戸セットは17%以下のインジウム濃度を有し、第2の前記多重量子井戸セットは20%超のインジウム濃度を有し、第3の又は最上部の前記多重量子井戸セットは30%超のインジウム濃度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
多層III族窒化物半導体LEDであって:
前記多層III族窒化物半導体LEDは、第1の層状多重量子井戸セット、第2の層状多重量子井戸セット、及び第3の層状多重量子井戸セットを備え;
前記層状多重量子井戸の第1のセットは第1のインジウム濃度を有し;
前記層状多重量子井戸の第2のセットは前記第1のインジウム濃度より高い第2のインジウム濃度を有し;
前記層状多重量子井戸の第3のセットは前記第2のインジウム濃度より高い第3のインジウム濃度を有し;
前記多層III族窒化物半導体LEDは:
前記第1の層状多重量子井戸セットと前記第2の層状多重量子井戸セットとの間に配置される、AlxGa1-xN(0<x≦1)で構成された第1の中間歪補償層;
前記第2の層状多重量子井戸セットと前記第3の層状多重量子井戸セットとの間に配置される、AlxGa1-xN(0<x≦1)で構成された第2の中間歪補償層
を備え、
前記第1の中間歪補償層及び前記第2の中間歪補償層はそれぞれ2つのバリア層の間に配置され、
前記第3の層状多重量子井戸セットは、およそ600nm~およそ660nmの範囲の波長においてピーク発光を有する光を放出するよう構成される、多層III族窒化物半導体LED。
【請求項16】
前記第1のインジウム濃度はおよそ17%未満である、請求項15に記載の多層III族窒化物半導体LED。
【請求項17】
前記第2のインジウム濃度はおよそ20%超である、請求項15に記載の多層III族窒化物半導体LED。
【請求項18】
前記第3のインジウム濃度はおよそ30%超であり、前記第3の層状多重量子井戸セットに琥珀色~赤色の光を放出させるよう選択される、請求項15に記載の多層III族窒化物半導体LED。
【請求項19】
前記中間歪補償層のうちの少なくとも1つのAlxGa1-xN(0<x≦1)の組成は変動し、前記第1の中間歪補償層は前記第2の中間歪補償層より高いAl濃度を有する、請求項15に記載の多層III族窒化物半導体LED。
【請求項20】
前記AlxGa1-xN(0<x≦1)中間歪補償層のうちの少なくとも1つのAl濃度は、前記層内の複数の離散的ステップとして、又は連続的変動として、変動する、請求項15に記載の多層III族窒化物半導体LED。
【請求項21】
前記バリア層のうちの少なくとも1つはGaNで構成され、前記層状多重量子井戸セットのうちの少なくとも1つはInGaNで構成される、請求項15に記載の多層III族窒化物半導体LED。
【請求項22】
琥珀色~赤色の光を放出するIII族窒化物半導体LEDを製造する方法であって、前記方法は:
第1のバリア層を画定するステップ;
前記第1のバリア層上に、第1のインジウム濃度を有する第1の層状多重量子井戸セットを画定するステップ;
前記第1の層状多重量子井戸セット上に第2のバリア層を画定するステップ;
前記第2のバリア層上に、AlxGa1-xN(0<x≦1)で構成された第1の中間歪補償層を画定するステップ;
前記第1の中間歪補償層上に第3のバリア層を画定するステップ;
前記第3のバリア層上に、前記第1のインジウム濃度より高い第2のインジウム濃度を有する第2の層状多重量子井戸セットを画定するステップ;
前記第2の層状多重量子井戸セット上に第4のバリア層を画定するステップ;
前記第4のバリア層上に、AlxGa1-xN(0<x≦1)で構成された第2の中間歪補償層を画定するステップ;
前記第2の中間歪補償層上に第5のバリア層を画定するステップ;
およそ600nm~およそ660nmの範囲の波長においてピーク発光を有する光を放出するよう構成された、前記第2のインジウム濃度より高い第3のインジウム濃度を有する、第3の層状多重量子井戸セットを画定するステップ
を含む、方法。
【請求項23】
前記バリア層のうちの少なくとも1つはGaNで構成され、前記層状多重量子井戸セットのうちの少なくとも1つはInGaNで構成され、前記第1の中間歪補償層は前記第2の中間歪補償層より高いAl濃度を有し、前記第1の層状多重量子井戸セットはおよそ17%以下のインジウム濃度を有し、前記第2の層状多重量子井戸セットはおよそ20%超のインジウム濃度を有し、前記第3の層状多重量子井戸セットはおよそ30%超のインジウム濃度を有する、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2015年10月8日出願の米国仮特許出願第62/239,122号及び2016年10月6日出願の米国特許出願第15/287,384号の便益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書において本発明は一般に、琥珀色~赤色領域の可視光を放出するIII族窒化物半導体発光デバイスに関する。これを製造する方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
発光ダイオード(LED)及びレーザダイオード(LD)(簡潔さのために、本明細書中ではLED及びLDをそれぞれLEDと呼ぶ場合がある)といった従来技術のIII族窒化物系青色発光構造体は、市販されており、ピーク外部量子効率(external quantum efficiency:EQE)が80%超である。緑色スペクトル領域において動作する場合、従来技術のLEDのEQEは青色LEDのEQEの半分未満に低下する。III族窒化物半導体発光素子のEQEはなおさら、琥珀色及び赤色スペクトル領域に向かって非常に急激に低下する。III族窒化物発光素子の効率損失に関して、2つの一般的な原因がある:(1)III族窒化物発光構造体のInGaN層とGaN層との間の大きな格子不整合(混和性が顕著になり、比較的長い波長のために遥かに高いインジウム濃度が必要となる);及び(2)c面極性GaN上に成長させたInGaN QWが、強い圧電場から生じる量子閉じ込めシュタルク効果(quantum-confined Stark effect:QCSE)を不可避的に受け、これが、特に比較的インジウム濃度が必要とされる長波長域における放射再結合速度の低下を引き起こす。
【0004】
例えばLED等のIII族窒化物発光デバイスにおいてInGaN系長波長(600nm超の波長の琥珀色~赤色)を達成するのは困難であるが、このようなデバイスは、シングルチップの、ソリッドステート照明及びモノリシックマルチカラー光変調デバイス(Ref[1])を実現するために極めて望ましい。更に、LED及びLD等のInGaN系発光構造体のデバイス性能は、AlInGaP材料系をベースとする発光素子等の他の長波長発光構造体よりもバンドギャップオフセットが大きいため、温度依存性が低い。更に、GaN系赤色波長発光LED材料構造は有益には、GaN系青色LED及び緑色LEDと温度膨張が一致し、これにより、ウェハ結合を用いてマルチカラーソリッドステート発光素子(Ref[2-4])を生成するGaN系スタックLED発光構造体に適合する。よって、LED及びLD等のInGaN系長波長発光構造体は、多くの用途において優れたものとなり得る。
【0005】
結晶のc軸に沿って成長する従来技術のInGaN系赤色波長発光素子(LED又はLD等)の分野において、これらは全て、不十分な材料品質により「相分離(phase separation)」(当業者にはインジウム偏析としても公知)を呈する。例えばR.Zhangらによる特許文献1(発明の名称:“Method for forming a GaN-based quantum well LED with red light”)、Jong-ll Hwangらによる非特許文献1(タイトル:“Development of InGaN-based red LED grown on (0001) polar surface”)を参照のこと。この相分離は、スペクトル上の比較的短い波長域における1つ又は複数の追加の発光ピークとして現れ、図2(b)、(c)に示すように色純度を不可避的に低下させる。従って、材料品質及びデバイス性能について妥協せずにインジウムの取り込みを増やすためのアプローチが、LED及びLD等の長波長発光、琥珀色~赤色、III族窒化物系発光構造体を得るためには必須である。本明細書において開示される方法及びデバイスは、ソリッドステート照明システム、ディスプレイシステム、及び600nm超の波長のソリッドステート発光素子を必要とする多数の他の用途において使用される、高性能長波長III族窒化物半導体発光デバイスへの道を開く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20110237011A1号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Appl. Phys. Express 7, 071003 (2015)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、図面を参照して様々な実施形態を説明する。図面において同一の参照符号は、複数の図にわたり同一の又は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示によるIII族窒化物半導体LEDデバイス10の例示的な、ただし非限定的な実施形態の一部分の断面図である。
図2a図2aは、30mAの電流注入で琥珀色光及び赤色光を放出する図1のIII族窒化物半導体LEDデバイス10のELスペクトルを示すグラフである。挿入図は、30mA及び100mAの注入電流での短波長スペクトル領域内の、図1の琥珀色LED及び赤色LED10の両方のELスペクトルを示す。
図2b図2bは、従来技術:米国特許出願公開第20110237011A1号における光ルミネセンス(photoluminescence:PL)スペクトルを示す。
図2c図2cは、従来技術:Appl. Phys. Express 7, 071003 (2015)における電流依存性ELスペクトルを示す。
図3図3は、赤色光を放出する図1のIII族窒化物半導体LEDデバイス10に関する、電流の関数としての出力電力及び相対EQE(オンウェハ構成で実施された測定)を示すグラフである。
図4図4は、赤色光を放出する図1のIII族窒化物半導体LEDデバイス10に関する、電流の関数としてのピーク波長シフト及び半値全幅(full width at half maximum:FWHM)を示すグラフである。
図5図5は、琥珀色光を放出する図1のIII族窒化物半導体LEDデバイス10に関する、電流の関数としての出力電力及び相対EQEを示すグラフである。
図6図6は、琥珀色光を放出する図1のIII族窒化物半導体LEDデバイス10に関する、電流の関数としてのピーク波長シフト及びFWHMを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、エピタキシャル成長プロセス中に構造体の発光活性領域内の結晶歪みを操作することにより製作される、LED、LD等の長波長発光III族窒化物系半導体発光構造体に関する。本明細書中では限定することなく、本発明のIII族窒化物半導体発光構造体は、LEDデバイス構造体の文脈において例示される。しかしながら当業者は、LDを含むがこれに限定されない他のIII族窒化物半導体発光素子の設計に本発明の方法を応用する方法を認識するであろう。
【0011】
本発明は、過度の相分離を受けず、従って高いスペクトル純度で琥珀色~赤色の光を放出できる、LED又はLD等のIII族窒化物系発光構造体を製作する革新的な方法を開示する。本発明の更なる利点及び他の特徴は、以下の説明において記載され、またその一部は、以下を考察することにより当業者に明らかとなるか、又は本発明の実践から学ぶことができる。これらの利点は、本出願に対する優先権を主張するいずれの出願の後続の請求項において指摘されるように、実現及び獲得され得る。
【0012】
本発明の一実施形態によると、III族窒化物半導体発光ダイオード(LED)構造体では、第1のクラッド層はn型III族窒化物半導体層で構成される。発光活性領域は、インジウム含有III族窒化物層を含むn型クラッド層上に形成される。p型AlGaNは発光活性領域上に形成され、電子ブロック層(electron blocking layer:EBL)として機能する。そして第2のp型III族窒化物クラッド層はAlGaN層上に形成される。
【0013】
本発明の更なる実施形態によると、III族窒化物発光素子の発光領域は、結晶歪みを最小化するために1つ又は複数の中間歪補償層(以下ISCLと呼ぶ)によって隔てられた、複数の多重量子井戸(MQW)セットを備える。複数のMQWセット及び/又はISCLは、基板の表面上に垂直にスタックしてよく、これにより基板上にMQWセットの多層スタックが形成される。多層スタックは、低いインジウム濃度を有するGaN/InGaNを含む第1のMQWセットと、中程度の、上記第1のMQWセットのインジウム濃度より高いインジウム濃度を有するGaN/InGaNを含む第2のMQWセットと、所望の琥珀色~赤色の波長光を放出できる最も高いインジウム濃度を有するGaN/InGaNを含む第3のMQWセットとを含んでよい。最初の2つのMQWセットを利用して、III族窒化物発光構造体の上記III族窒化物半導体層上に予歪み効果を生成する。しかしながらここでは、様々なインジウム濃度を有する3つ以上のMQWセットを用いて、2つのMQWセットが生成するのと同等の予歪み効果を生成でき、これは本開示における非限定的な例として示される。更に、AlGaN層を中間歪補償層(intermediate strain compensation layer:ISCL)として挿入することによって、発光領域における全歪みを最小化する。(本例示的実施形態においては)2つ、又は3つ以上の、予歪みを与えられたMQW GaN/InGaNセットと、これらのセットを隔てるAlGaN ISCLとの組み合わせにより、III族窒化物LEDの発光波長を高いスペクトル純度及び高い出力電力を有する琥珀色及び赤色の領域まで拡張できる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のIII族窒化物発光構造体の発光領域は、1つ又は複数のIII族窒化物バリア層及び低インジウム多重量子井戸層(第1のMQWセット)と、1つ又は複数のIII族窒化物バリア層及び中程度インジウム多重量子井戸層(第2のMQWセット)を内包する第1のISCLと、第2のISCLと、1つ又は複数のバリア層及び琥珀色~赤色の光を放出する高インジウム含有多重量子井戸層(第3のMQWセット)と、最上部バリア層とを備え、各上記バリア層は主にGaNで構成され;各上記インジウム含有量子井戸層はInGaNで構成され;各上記ISCLはAlGaNで構成される。
【0015】
本発明の第1の態様では、多層III族窒化物半導体LEDが開示され、これは、層状MQWセットの第1のセット、第2のセット、第3のセットを備えてよい。上記第1のセットは第1のインジウム濃度を有してよい。上記第2のセットは、上記第1のインジウム濃度より高い第2のインジウム濃度を有してよい。上記第3のセットは、上記第2のインジウム濃度より高い第3のインジウム濃度を有してよい。上記第1のセット及び第2のセットのうちの少なくとも一方は、予歪み層として機能するよう構成してよい。第1の中間歪補償層を設けてよく、これは、上記第1のセットと上記第2のセットとの間に配置されるAlxGa1-xN(0<x≦1)で構成されてよい。第2の中間歪補償層を設けてよく、これは、上記第2のセットと上記第3のセットとの間に配置されるAlxGa1-xN(0<x≦1)で構成されてよい。上記第1及び第2の中間歪補償層は2つのバリア層の間に配置してよく、上記第3のセットは、琥珀色~赤色の可視域の、約600nm~約660nmの範囲の波長を有する光を放出するよう構成してよい。
【0016】
本発明の第2の態様では、上記第1のインジウム濃度は約17%未満であってよい。
【0017】
本発明の第3の態様では、上記第2のインジウム濃度は約20%超であってよい。
【0018】
本発明の第4の態様では、上記第3のインジウム濃度は、約30%超であってよく、また約600nm~約660nmの範囲の波長を有する琥珀色~赤色の光を放出するよう構成してよい。
【0019】
本発明の第5の態様では、上記中間歪補償層のうちの少なくとも1つはAlxGa1-xNを含んでよく、x値は0より大きくかつ1以下である。
【0020】
本発明の第6の態様では、上記中間歪補償層のうちの少なくとも1つのAl濃度を変更してよく、上記第1の中間歪補償層は上記第2の中間歪補償層より高いAl濃度を有してよい。
【0021】
本発明の第7の態様では、上記バリア層のうちの少なくとも1つはGaNで構成されてよく、上記セットのうちの少なくとも1つはInGaNで構成されよく、上記中間歪補償層のうちの少なくとも1つはAlxGa1-xN(0<x≦1)で構成されてよい。
【0022】
本発明の第8の態様では、琥珀色~赤色の光を放出するIII族窒化物半導体LEDを製造する方法が開示され、上記方法は:第1のバリア層を画定するステップ;上記第1のバリア層上に、第1のインジウム濃度を有するMQWセットの第1のセットを画定するステップ;上記第1のセット上に第2のバリア層を画定するステップ;上記第2のバリア層上に、AlxGa1-xN(0<x≦1)で構成された第1の中間歪補償層を画定するステップ;上記第1の中間歪補償層上に第3のバリア層を画定するステップ;上記第3のバリア層上に、上記第1のインジウム濃度より高い第2のインジウム濃度を有するMQWセットの第2のセットを画定するステップ;上記第2のセット上に第4のバリア層を画定するステップ;上記第4のバリア層上に、AlxGa1-xN(0<x≦1)で構成された第2の中間歪補償層を画定するステップ;上記第2の中間歪補償層上に第5のバリア層を画定するステップ;約600nm~約660nmの範囲の波長を有する光を放出するよう構成された、上記第2のインジウム濃度より高い第3のインジウム濃度を有する、MQWセットの第3のセットを画定するステップを含む。
【0023】
本発明の第9の態様では、本方法によって作製される上記バリア層のうちの少なくとも1つはGaNで構成されてよく、上記セットのうちの少なくとも1つはInGaNで構成されてよく、上記第1の中間歪補償層は上記第2の中間歪補償層より高いAl濃度を有してよく、上記第1のセットは約17%以下のインジウム濃度を有してよく、上記第2のセットは約20%超のインジウム濃度を有してよく、上記第3のセットは琥珀色~赤色の光を放出するために約30%超のインジウム濃度を有してよい。
【0024】
本発明は、革新的なLEDデバイス、及び琥珀色~赤色波長光を放出するLED又はLD等のIII族窒化物ソリッドステート発光構造体を製造するための方法を提供する。III族窒化物ソリッドステート発光素子は、本発明の方法を用いてエピタキシャル成長させられるため、高い出力電力及び高いスペクトル純度を呈する琥珀色及び赤色波長発光を独自に達成し、従来技術のIII族窒化物発光構造体において問題であった、長波長における相分離を引き起こさない。
【0025】
本発明のIII族窒化物半導体琥珀色~赤色波長発光素子について、本発明の例示的実施形態として図1に示すLEDデバイス構造体の文脈において説明する。図1は、本発明による琥珀色~赤色III族窒化物LED10の例示的実施形態の一部分の断面図である。琥珀色~赤色III族窒化物LEDデバイス10は、従来のエピタキシャル法、例えば有機金属化学蒸着(metalorganic chemical vapor deposition:MOCVD)としても公知である有機金属気相成長(metalorganic vapor phase epitaxy:MOVPE)によって製造できる。図1に示すように、およそ2μmのGaNバッファ層2を基板1(例えばサファイア基板)上に成長させ、間に核生成層(図示せず)を挿入する。Siでドープしたおよそ3μm厚のn型GaNクラッド層3を、GaNバッファ層2上に成長させる。琥珀色~赤色III族窒化物LED10の例示的実施形態は、好適な基板1の結晶方位を用いて、極性、半極性又は非極性結晶方位にエピタキシャル成長させることができる。
【0026】
図1を参照すると、III族窒化物LED構造体は、発光領域又は多重量子井戸(MQW)活性領域4を備え、これは、n型GaNクラッド層3上に成長させたインジウム含有III族窒化物半導体層を備える。図1に示すように、活性領域4は3タイプのMQWセットを備えてよく、底部MQWセット4Aから最上部MQWセット4Hへとインジウム濃度が漸進的に増大する。各MQWセットは、1つ又は複数の2~3nm厚の(結晶方位に応じて更に厚くてもよい)InGaN量子井戸層(4A2、...、4E2、...、4H2...)と、主にGaNで構成された1つ又は複数の5~20nm厚のバリア層(4A1、...、4B、4E1、...、4F、4H1、...、4I)とを含み、上記バリア層は1つずつ交互にスタックされ、各InGaN量子井戸層が2つのバリア層の間に挟まれる。従って、図1に示すように、MQWセット4A、4E、4Hを垂直にスタックしてMQWセット4の多層スタックを生成してよい。III族窒化物系バリア層(4A1、...、4B、4E1、...、4F、4H1、...、4I)は、上記III族窒化物系バリア層の各量子井戸層(4A2、...、4E2、...、4H2...)の量子閉じ込めレベルを調整するために、必要に応じて追加量のインジウム及び/又はアルミニウムを含んでよい。第1のMQWセット4A及び第2のMQWセット4Eのインジウム濃度は好ましくは、図示した例ではそれぞれ7~13%及び20~25%の範囲である。最初の2つのMQWセット4A、4Eは、琥珀色~赤色の発光に好ましい30%超のインジウム濃度を有し得る最上部MQWセット4Hのための予歪み効果を生成する。
【0027】
本発明の一実施形態では、図1のIII族窒化物琥珀色~赤色発光構造体の最上部MQWセット4Hの高インジウム含有量子井戸層(4H2、...)の歪みの慎重な制御により、相分離を引き起こすことなく高いインジウム濃度が達成される。この実施形態では、インジウム濃度が漸進的に上昇する下側の2つのMQWセット4A、4Eを導入することにより、バリア層上に予歪み効果が生成されるため、最上部MQWセット4H内の多量のインジウムの取り込みが促進される。インジウム濃度が低いMQWセットをIII族窒化物発光構造体内に1つだけ又は2つ含めても、高いスペクトル純度及び高い出力電力で琥珀色~赤色の領域において発光する、完全に機能するIII族窒化物半導体LEDは生成できないことを強調しておく。従って、本発明の別の実施形態によると、図1に示すように、中間歪補償層(ISCL)4C、4Gはそれぞれ、2つの連続するMQWセットの間に挿入される。
【0028】
ISCLはそれぞれ、2つの連続するMQWセットのバリア層の間に挟まれ、また好ましくは約17%~約25%の範囲でAl濃度xが変動するAlxGa1-xN(0<x≦1)合金からなる。好ましくは、ISCL 4C、4Gの厚さ及びAl濃度は異なる。本発明の一実施形態では、下側ISCL 4CのAl濃度xを上側ISCL 4GのAl濃度xより高くすることによって、層に亀裂が発生するのを防ぐことができ、またこれらの層によるLEDデバイス10の過度の直列抵抗を回避できる。本発明の別の実施形態では、下側ISCL 4CのAl濃度xを上側ISCL 4GのAl濃度xより低くすることによって、下側の2つの低インジウム濃度MQWセット4A、4Eへのキャリア注入を抑制でき、これは高インジウム濃度の最上部MQWセット4Hへの、より高いレベルのキャリア注入を促進するのに有利であり、これによって最上部MQWセット4HからのLEDデバイス発光の比率が増大し、従って本発明のIII族窒化物半導体発光素子の琥珀色~赤色の発光の半値全幅(FWHM)が減少する。一般に、Al濃度はISCL毎に変動するが、代替として、個々の中間歪補償層のAl濃度は、当該中間歪補償層内において、層内の複数の離散的ステップとして(段階的に)又は各層内での連続的変動として、変動してもよい。
【0029】
当業者は、本発明の上述の方法の使用法を認識して、III族窒化物半導体発光素子の琥珀色~赤色の発光の標的性能パラメータに応じたISCL 4C、4Gの最適な厚さ及びAl濃度を選択するであろう。
【0030】
図1に戻ると、LEDデバイス10の重なっているMQW活性領域4は、約200nmの総厚さをそれぞれ有し、またMgドープAlGaN電子ブロック層(electron blocking layer:EBL)5、MgドープGaNクラッド層6、MgドープGaNコンタクト層7を含む、p型層である。p型AlGaN及びGaNクラッド層のMgの原子濃度は好ましくは、例えば1E19cm-3~1E20cm-3の範囲である。p型GaNコンタクト層のMg原子濃度は好ましくは、例えば1E21cm-3である。
【0031】
従来技術のIII族窒化物発光素子におけるように、本発明のIII族窒化物半導体琥珀色~赤色発光デバイスは、まずエピタキシャル処理済みウェハの上面p-GaN層7上にオーミックコンタクト金属スタックを堆積させてp側電極8を形成し、続いて側部トレンチをエッチングしてn-GaN層3を露出させ、続いてエッチングした上記トレンチ内にオーミックコンタクト金属スタックを堆積させてn側電極9を形成することにより、形成される。続いて上記エピタキシャル処理済みウェハをダイシングして、それぞれ図1に示した断面を実質的に有する個別のLEDチップを形成し、その後これらをパッケージ化し、それぞれのp電極及びn電極にワイヤボンディングして、本発明のLEDデバイスを形成する。実験室での試験のために、p側電極(又はオーミックコンタクト金属スタック)8、例えば(迅速な試験における簡略化のための)インジウムボールを、p型GaNコンタクト層7上に形成する。
【0032】
更に、デバイス10の一方の側部を、p型GaNコンタクト層7からn型GaNクラッド層3の一部までエッチングする。続いてn側電極(又はオーミックコンタクト金属スタック)9、例えば(迅速な試験における簡略化のための)インジウムボールを、n型GaNクラッド層の露出部分上に形成する。
【0033】
正のp側電極8を通したn側電極9への電流注入下で、電子・正孔再結合プロセスにより、活性領域4から可視光が放出される。本発明の方法に従ってエピタキシャル成長させたIII族窒化物半導体LEDデバイス10は好ましくは、最上部MQWセット4Hのみが光を放出し、その一方で底部の2つのMQWセット4A、4Eが主に予歪み層として機能するように構成される。約30mAの電流注入下で琥珀色~赤色(琥珀色-赤色)可視スペクトル領域内の光を放出する面積が~1mm2のIII族窒化物半導体LEDデバイス10は、強い琥珀色-赤色発光を放出する。
【0034】
図2aは、約30mAで駆動される図1の琥珀色-赤色LED10の典型的なELスペクトルを示すグラフである。挿入図は、30mA及び100mAの注入電流での短波長スペクトル領域内の、本発明の図1のIII族窒化物LED10の琥珀色LED及び赤色両方の例示的実施形態のELスペクトルを示す。図2(a)の挿入図に見られるように、100mAの比較的高い駆動電力下でさえ、比較的短い波長域に追加のピークが存在せず、これは本発明のLEDに相分離が存在しないことを示唆している。対照的に、従来技術のLEDの性能を示す図2b、2cに示すように、相分離によって誘発される追加の発光ピーク(~440nm)及び実質的により広いFWHM発光が、従来技術のLED:米国特許出願公開第20110237011A1号及びApp. Phys. Express 7, 071003 (2015)それぞれにおいて容易に観察される。
【0035】
図3図6は、本発明の琥珀色-赤色III族窒化物発光素子10の性能を実証している。図3図4は、デバイス10の活性領域4が赤色(~625nm)発光(~45%インジウム濃度)のために設計された本発明の一例示的実施形態の性能を実証しており、図5図6は、琥珀色(~615nm)発光(~40%インジウム濃度)のために設計されたデバイス10の活性領域構造を有する本発明の別の例示的実施形態の性能を実証している。
【0036】
図3は、赤色(~625nm)発光においてピークに達するよう設計された活性領域4を有する本発明の赤色発光III族窒化物LEDデバイス10に関する、出力電力及び相対EQEの測定された電流依存を示すグラフである。全ての測定は、p側電極8及びn側電極9両方としてインジウムボールを用いたオンウェハ試験構成において実施される。特別な表面処理及び/又は冷却ユニットを用いずに、図示した試験を行った。光はLED10の下に配置された積分球によって集光され、従って全ての光が集光されたわけではなかった。図3に示すように、出力電力は、他のIII族窒化物半導体系LEDにおいて観察されるように、電力規則(power rule)に従って印加された電流と共に増大する。30mAでは、赤色III族窒化物半導体LED10の出力電力は約211μWに達する。赤色III族窒化物半導体LED10の相対EQEはおよそ11mAで約35%のピークに達し、その後電流の増大と共に単調に低下し始める。100mAで、相対EQEはピーク値と比較して約26%だけ低下した。電流の増大に伴うEQE低下の真の機序は、LED設計分野においてまだよく理解されていない。この現象に関して2つの説明が基本的に存在する:(1)オージェ再結合;及び(2)不十分な正孔輸送による電子の漏れ(これに関する詳細な説明は本開示の範囲を超える)。
【0037】
図4は、図1の赤色III族窒化物LED10に関する、測定された発光ピーク波長シフト及びFWHMの例を電流と共に示すグラフである。発光ピーク波長は、注入電流の増大と共に青色シフトを示す。この挙動は、III族窒化物系半導体LEDにおける圧電場のキャリアスクリーニングの特性である。バンド充填効果(band-filling effect)もまた、青色シフトの別の原因である。発光ピーク波長は、強いバンド充填により低い電流でシフトするが、100mAで徐々に飽和して617nmとなる。~1mm2の面積を有するデバイスに関して、発光ピーク波長は30mAで625nm(赤色)であり、FWHMは同一の電流レベルで49nmの最小値に達する。出願人が知る限りでは、これは、これまでに達成されたIII族窒化物発光素子からの最高の赤色発光性能を示す。
【0038】
図5は、琥珀色発光においてピークに達するよう設計された活性領域4を有する本発明の図1のIII族窒化物半導体LEDデバイス10の、出力電力及び相対EQEの電流依存を示すグラフである。~1mm2の領域を有するデバイスに関する、1つ前の例示的実施形態の赤色III族窒化物半導体LEDの挙動と同様の挙動において、琥珀色III族窒化物半導体LEDの相対EQEは、およそ9mAで45%のピークに達し、100mAで約33%まで低下する。琥珀色III族窒化物LEDに関して測定された出力電力は、30mAで約266μWであった。
【0039】
図6は、図1の琥珀色III族窒化物半導体LED10に関する、測定された発光ピーク波長及びFWHMの変動の例を、印加された電流と共に示すグラフである。赤色III族窒化物LEDと同様の傾向に従って、波長は低い電流でシフトするが、100mAで飽和して599nmとなる。30mAでピーク波長は617nm(琥珀色)であり、FWHMは54nmである。
【0040】
先行するいくつかの段落に記載したように、本発明による高い出力電力及び高いスペクトル純度を有する琥珀色~赤色の光を放出するIII族窒化物半導体LEDは、材料の歪みを慎重に制御にすることにより容易に製造できる。エピタキシャル成長法は、III-V化合物半導体を得るための技法に適合する。本開示を実践する際に使用する好適なエピタキシャル堆積技法としては、MOVPE、分子線エピタキシ(molecular beam epitaxy:MBE)、及びハイドライド気相成長(hydride vapor phase epitaxy:HVPE)が挙げられるがこれらに限定されない。III族窒化物系半導体層は例えば、AlxGayIn1-x-yNで構成でき、ここで0≦x≦1及び0≦y≦1である。基板1の面方位は、c面、半極性及び非極性結晶面であってよい。
【0041】
更に、本開示によるLEDデバイス10は、従来のIII-V化合物半導体の製造方式及び技術を使用して容易に製作できる。
【0042】
以上の開示を例として記載したが、本開示はこれに限定されないことを理解されたい。幅広い修正及び同様の構成を含むことが意図されている。本開示の特徴又は構成要素の修正は、本開示の中核となるコンセプトから逸脱することなく実施できる。その結果として、本開示の範囲は以上の記載によって限定されることはなく、本明細書中で述べたように添付の請求項によってのみ限定される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にスタックされた複数の多重量子井戸セットを備え、前記複数の多重量子井戸セットは、第1の多重量子井戸セットと、第2の多重量子井戸セットと、最上部の多重量子井戸セットとを含み、各多重量子井戸セットは、2つのバリア層の間に挟まれた1つ以上の量子井戸層を備え、
前記第1の多重量子井戸セットは、前記基板に近接し、低いインジウム濃度を有する1つまたは複数の量子井戸層を有し;
前記第1の多重量子井戸セットの上方の各前記多重量子井戸セットは、その中に1つまたは複数の量子井戸層を有し、各前記多重量子井戸セットは、漸進的に上昇するインジウム濃度を有する1つまたは複数の量子井戸層を有し;
最上部の多重量子井戸セットは、琥珀色~赤色の可視光領域で光を放出するよう選択された最も高いインジウム濃度を有する1つまたは複数の量子井戸層を有し;
前記複数の多重量子井戸セットのうちの隣接する複数の多重量子井戸セットは、AlxGa1-xN(0<x≦1)間歪補償層によって隔てられ、各Al x Ga 1-x N(0<x≦1)中間歪補償層は、各Al x Ga 1-x N(0<x≦1)中間歪補償層の上下にバリア層を有して、前記最上部の多重量子井戸セットにおける総歪みを低減し、
Al x Ga 1-x N(0<x≦1)中間歪補償層におけるAl濃度は変動し、前記基板に最も近いAl x Ga 1-x N(0<x≦1)中間歪補償層が、他のAl x Ga 1-x N(0<x≦1)中間歪補償層より高いAl濃度を有する
III族窒化物半導体LED。
【外国語明細書】