(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071252
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/40 20060101AFI20220509BHJP
C07C 33/22 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C07C29/40
C07C33/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180099
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
(72)【発明者】
【氏名】中谷 仁郎
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC41
4H006FC50
4H006FE11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールを、安価に製造する方法の提供。
【解決手段】塩素含有芳香族化合物とマグネシウムを、塩素含有芳香族化合物に対し0.1~2.0当量の塩化リチウムの存在下で反応させグリニャール試薬を合成し、グリニャール試薬とケトン化合物を15~40℃で反応させた後、pKaが2以上の酸を含む水溶液を用いて加水分解処理して合成する、一般式(3)で示される第3級アルコールの製造方法。
(R
1、R
2、R
3、R
4はアルキル基を示す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1、R
2はアルキル基を示す)
で示される塩素含有芳香族化合物とマグネシウムを、前記塩素含有芳香族化合物に対し0.1~2.0当量の塩化リチウムの存在下で、反応させグリニャール試薬を合成し、該グリニャール試薬と下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
3、R
4はアルキル基を示す)
で示されるケトン化合物を15~40℃で反応させた後、pKaが2以上の酸を含む水溶液を用いて加水分解処理して合成する下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4はアルキル基を示す)
で示される2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの製造方法。
【請求項2】
前記一般式(1)で示される塩素含有芳香族化合物のR1とR2がメチル基である請求項1記載の第3級アルコールの製造方法。
【請求項3】
前記pKaが2以上の酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸またはリン酸二水素ナトリウム二水和物であることを特徴とする請求項1または2記載の第3級アルコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの工業的に優れた製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールは、医薬原料、塗料原料、光学材料などの原料として有用な化合物である。例えばアドレナリン作動薬の一つあるメデトミジンの構造には2,3-ジメチル基を有する芳香族環を保有しており、その原料には2,3-ジメチル芳香族を持つ第3級アルコールが必要である(特許文献1参照)。
【0003】
この医薬や塗料などの原料として有用な第3級アルコールの製造方法として、3-ブロモ-o-キシレンを出発原料にグリニャール試薬を合成し、合成したグリニャール試薬とアセトンとを反応させて合成する例が報告されている。しかしこの製造方法には一般的に高価な臭素原料を用いており、第3級アルコールを安価に供給することは難しい状況であった。
【0004】
また、一般的に製造した第3級アルコールは容易に脱水反応を起こしやすく、2,3-ジメチル-α-メチルスチレンが生成する。この化合物は重合性の化合物であり容易に重合が起こりポリスチレンになる可能性がある。このことから、反応で得られた2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールは脱水反応を抑制しなければならない。
これらのことから、安価な2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの製造方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、安価な原料を使用し、工業的に生産が可能となる2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの製造方法は、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1、R
2はアルキル基を示す)
で示される塩素含有芳香族化合物とマグネシウムを、前記塩素含有芳香族化合物に対し0.1~2.0当量の塩化リチウムの存在下で、反応させたグリニャール試薬を合成し、該グリニャール試薬と下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
3、R
4はアルキル基を示す)
で示されるケトン化合物を15~40℃で反応させた後、pKaが2以上の酸を含む水溶液を用いて加水分解処理して合成する下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4はアルキル基を示す)
で示される2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの製造方法は、原料価格が安価な塩素基を有する塩素含有芳香族化合物を出発原料に用いており、2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールを、工業的に安価に製造することが出来る。
【0009】
また、本発明により得られた2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコール類はファインケミカル、医農薬原料、樹脂・プラスチック原料、電子材料・光学材料として用いることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の製造方法の詳細を記載する。
本発明の2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコール類の製造方法は、2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物を出発物質とする。この2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物は、安価で入手が容易な工業原料で、下記一般式(1)
【化4】
(式中、R
1、R
2はアルキル基を示す)
で示される塩素含有芳香族化合物である。式中R
1、R
2は互いに独立したアルキル基であり、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6、更に好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。アルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基などを挙げることができる。アルキル基R
1とR
2は同じでも別々でも構わない。この2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物は立体的に込み合っており、原料入手の容易さからR
1,R
2として、メチル基、エチル基、n-プロピル基が好ましく、R
1およびR
2がメチル基であるとよい。
【0011】
出発物質である2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物とマグネシウムを、塩化リチウムの存在下で、反応させグリニャール試薬を合成する。使用するマグネシウムは、切削屑、リボン状、粉末状の金属マグネシウムを用いることが出来るが、金属の表面が多い切削屑、粉末状の金属マグネシウムが好ましい。金属マグネシウムの使用量は2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物に対して1.0から3.0モル倍が好ましく、使用量が多いと後工程で未反応の金属マグネシウムを分解しなければならないため、1.0から1.5モル倍がさらに好ましい。
【0012】
反応溶媒としては、エーテル溶媒が用いられ、一般的なジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどの炭化水素基を有するエーテルやテトラヒドロフランなどの環状エーテルを用いることができるが、原料の入手を考慮するとテトラヒドロフランが好ましい。溶媒の使用量は、グリニャール試薬の溶解度やスラリー濃度に調整する必要があるが、2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物に対して2から10モル倍が好ましく、2から5モル倍がさらに好ましい。
【0013】
グリニャール試薬製造において、2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物と金属マグネシウムとを反応させてグリニャール試薬を合成する際、塩化リチウムを共存させるとグリニャール試薬の収率が向上する。塩化リチウムの添加量は2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物に対して0.1~2.0当量、好ましくは0.2から2.0当量がよく、更に好ましくは0.2から1.0当量がよい。塩化リチウムが、2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物に対し、0.1当量より少ないとグリニャール試薬の収率を十分に高くすることができない。また、2.0当量より多いと、グリニャール試薬の製造コストが高くなり、更に過剰な塩化リチウムが析出してグリニャール試薬の撹拌ができなくなる。
【0014】
グリニャール試薬製造において、2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物と金属マグネシウムとを反応させてグリニャール試薬を合成する反応温度は、50℃以上の温度が好ましく、反応が確実に進行する60℃以上の反応温度がさらに好ましい。反応温度が50℃未満であるとグリニャール試薬の反応が進行しなくなる可能性がある。
【0015】
反応開始には、反応性を高めるため、少量のヨウ素、臭素あるいはこれらを含む安価な化合物を添加することが好ましい。このような化合物の例としては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、臭化エチル、1,2-ジブロモエタンなどが好ましい。
【0016】
グリニャール試薬調製は、通常の方法で行うことができる。例えば、フラスコ等の反応容器にマグネシウムと反応溶媒を仕込み、必要であれば、ヨウ素などの反応活性化剤を入れておくことができる。その後、グリニャール反応を開始させるため、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、臭化エチル、1,2-ジブロモエタンから選ばれる化合物を加えることができる。これら化合物の投入量はマグネシウムに対して0.005から0.1モル倍が好ましく、0.01から0.05モル倍がさらに好ましい。化合物を投入した後、発熱が発生し、グリニャール反応の開始を確認してから、2,3-ジアルキルクロロ芳香族化合物を滴下するとよい。滴下終了後の熟成時間は、目的とするグリニャール試薬の合成に時間がかかることから、6時間以上が好ましく、12時間以上がさらに好ましい。反応液を少量採取しガスクロマトグラフィーで反応の進行を確認することが好ましい。また、熟成温度は、50℃以上の温度が好ましく、反応が確実に進行する60℃以上の熟成温度がさらに好ましい。熟成温度が50℃未満になるとグリニャール試薬の反応が進行しなくなる可能性がある。
【0017】
次に、グリニャール試薬合成後、得られたグリニャール試薬と下記一般式(2)で示されるケトン化合物との反応を行う。
【化5】
(式中、R
3、R
4はアルキル基を示す)
式中、R
3、R
4は互いに独立したアルキル基であり、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6、更に好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。アルキル基R
3、R
4は、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。アルキル基R
3、R
4として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基などを挙げることができる。アルキル基R
3とR
4は同じでも別々でも構わない。一般式(2)で示されるケトン化合物として、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-iso-プロピルケトン、メチル-iso-ブチルケトンなどが挙げられる。一般的に安価で入手可能な、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトンがさらに好ましい。
【0018】
グリニャール試薬とケトン化合物との反応では、15から40℃で反応させるとよい。反応温度が15℃未満では、付加反応が十分に進行しないため好ましくない。また反応温度が40℃を超えると、副反応が進行し収率が低下するため好ましくない。また、反応が発熱反応であるので、反応を制御しやすい15℃から35℃がさらに好ましい。
【0019】
グリニャール試薬とケトン化合物との反応後、pKaが2以上の酸および水からなる酸性水溶液を加えて加水分解処理を行う。反応後に水をそのまま投入すると溶媒不溶の水酸化マグネシウムが生成し、反応缶内が撹拌できなくなるため、pKaが2以上の酸を含む水溶液を投入するとよい。投入する酸はpKaが2以上の酸であり、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、2-メチルプロパン酸、ペンタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、フェニルエタン酸などのカルボン酸化合物が挙げられ、ハロゲン原子が結合したクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸でも良い。また、リン酸、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムなどのリン酸化合物でもよい。用いる酸のpKaは、好ましくは2~7であるとよい。酸のpKaが2未満だと、製造した第3級アルコールが脱水反応を起こし、スチレン誘導体が生成する。このスチレン誘導体は重合性化合物で容易に重合しポリスチレンとなるため好ましくない。また酸のpKaが7を超えると、グリニャール試薬が加水分解して生成した水酸化マグネシウムを中和することができない。さらに安価で工業的に入手可能なギ酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸二水素ナトリウム二水和物がさらに好ましい。
【0020】
加水分解の反応温度は、0から30℃が好ましく、0から20℃がさらに好ましい。加水分解の温度が高いと得られた第3級アルコール部分が脱水反応を起こし、重合性の高いスチレン誘導体に変化するため、好ましくない。
【0021】
加水分解で使用する酸の量は、グリニャール試薬のマグネシウムに対して1.0モル倍から3.0モル倍が好ましく、さらに1.5から2.5モル倍使用することが好ましい。酸性水溶液投入後は反応溶液のpHが7以下の中性から酸性になっていることを確認しなければならない。
【0022】
また加水分解後は反応液のpHが2未満の酸性の場合は、そのまま精製を進めると脱水反応が生じスチレン誘導体に変化する可能性があるため、一度pHを7以上の中性もしくはアルカリ性にしなければならない。酸性の場合はアルカリ性水溶液、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの水溶液を加え水溶液のpHを7以上の中性からアルカリ性側にした後、洗浄することが好ましい。
【0023】
反応液を洗浄後、溶媒を濃縮し、炭化水素系溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの溶媒に溶媒を置き換え、冷却して再結晶させることで、目的の2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールを入手することができる。
【0024】
得られた2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールは、下記一般式(3)
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4はアルキル基を示す)
で示される。式(3)中、R
1、R
2、R
3、R
4はアルキル基であり、式(1)中のR
1、R
2、および式(2)中のR
3、R
4と同様である。得られた2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールは、多岐に渡る分野で有用な化合物であることから、効率的よく工業的に安価に製造できることの意義は大きい。
【実施例0025】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
実施例において、一般式(3)で示される2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの含有率と純度は下記GC(ガスクロマトグラフィー)で分析した。
<純度分析>
カラム:DB-5(0.25mm×30m×0.25μm)(Agilent J&W社製)
キャリアガス:ヘリウム
注入口温度:300℃
検出器温度:300℃
カラム温度:50℃(2minHold)→10℃/min→300℃(3minHold)
カラム流量:3.65mL/min
パージ流量:5.0min/min
スプリット比:20
サンプル量:1μL
サンプル調製:サンプル0.5gを10mLのメスフラスコに秤量し、アセトニトリルでメスアップする。
また、実験に使用した試薬類は市販の試薬を用いた。
【0026】
[実施例1]
撹拌、冷却器を備えた300mLのフラスコにテトラヒドロフラン61.5g(0.853モル)とマグネシウム5.39g(0.221モル)、塩化リチウム3.62g(0.0854モル、後に添加する3-クロロ-o-キシレンのモル数に対し0.4当量)を仕込み撹拌を開始した。そこに臭化エチル0.465g(0.00427モル)を加えた。しばらく撹拌すると発熱が確認され、5℃以上の発熱が確認できた。その後、加熱し反応温度60から65℃で3-クロロ-o-キシレン30g(0.213モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後トルエン9gを添加した。滴下終了後60から65℃で15時間熟成を行った。反応終了後、冷却しガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、グリニャール試薬への反応収率は94.7%であった。
引き続き、反応液を水浴で冷却しアセトン17.3g(0.299モル)を反応温度20から30℃の範囲で滴下し、そのままの温度で2時間熟成した。
【0027】
反応終了後、反応液を15℃以下に冷却し、酢酸26.6g(0.444モル)を水80gで希釈した溶液を、20℃を超えない温度で滴下し、そのまま1時間撹拌した。その後水層を排出し、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pHが7以上の中性からアルカリ性になっていることを確認後、水で洗浄を2回行い、溶媒を留去し黄色結晶を得た。粗結晶をガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、目的物の含有量は25.5g(0.155モル)で収率は72.7%(3-クロロ-o-キシレンに対して)であった。また、目的物が脱水反応を起こして得られる2,3-ジメチル-α-メチルスチレンの比率は、目的物に対して8.5%であった。
【0028】
その後、ヘプタン25g加えて再結晶を行い、-10℃以下まで冷却し結晶を濾別して19.1gの白色結晶を得た。採取した白色結晶をガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、純度は99.7%の2-(2,3-ジメチルフェニル)プロパン-2-オールであった。収率は54.4%(3-クロロ-o-キシレンに対して)であった。
【0029】
[実施例2]
実施例1記載の内容でグリニャール試薬の合成反応を実施し、その後、実施例1記載のとおりアセトンと反応させた。その後、酢酸に換え、リン酸二水素ナトリウム二水和物69.2g(0.444モル)を水100gで希釈した溶液を、20℃を超えない温度で滴下し、そのまま1時間撹拌した。その後、実施例1記載の条件で中和、水洗浄および溶媒留去を実施し黄色結晶を得た。粗結晶をガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、目的物の含有量は24.2g(0.147モル)で収率は69.1%(3-クロロ-o-キシレンに対して)であった。また、目的物が脱水反応を起こして得られる2,3-ジメチル-α-メチルスチレンの比率は、目的物に対して9.3%であった。
【0030】
その後、ヘプタン25g加えて再結晶を行い、-10℃以下まで冷却し結晶を濾別して17.7gの白色結晶を得た。採取した白色結晶をガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、純度は99.7%の2-(2,3-ジメチルフェニル)プロパン-2-オールであった。収率は50.5%(3-クロロ-o-キシレンに対して)であった。
【0031】
[比較例1]
実施例1記載の内容のグリニャール試薬の合成を、塩化リチウムを加えずに実施し、アセトンとの反応以降、実施例1記載どおりの操作を行い、黄色の粗結晶を得た。粗結晶をガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、目的物の含有量は20.5g(0.125モル)で収率は58.4%(3-クロロ-o-キシレンに対して)であった。また、目的物が脱水反応を起こして得られる2,3-ジメチル-α-メチルスチレンの比率は、目的物に対して8.5%であった。
【0032】
その後、ヘプタン25g加えて再結晶を行い、-10℃以下まで冷却し結晶を濾別して14.6gの白色結晶を得た。採取した白色結晶をガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、純度は99.7%の2-(2,3-ジメチルフェニル)プロパン-2-オールであった。収率は41.7%(3-クロロ-o-キシレンに対して)であった。
【0033】
[比較例2]
実施例1記載の内容でグリニャール試薬を合成し、アセトンとの反応を実施した。反応後、反応液を15℃以下に冷却し35%塩酸水溶液69.2g(0.444モル)を、20℃を超えない範囲で滴下した。その後実施例1記載どおり操作を行い、黄色溶液を得た。粗結晶をガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、目的物の含有量は13.5g(0.0819モル)で収率は38.4%(3-クロロ-o-キシレンに対して)であった。また、目的物が脱水反応を起こして得られる2,3-ジメチル-α-メチルスチレンの比率は、目的物に対して68.8%で、脱水反応が進行していた。
そのままヘプタンを入れて再結晶を行ったが、-20℃まで冷却したが、結晶を得ることは出来なかった。
【0034】
[比較例3]
実施例1記載の内容でグリニャール試薬を合成し、反応温度5から10℃でアセトンを滴下し、滴下終了後、そのままの温度で熟成を2時間実施した。その後実施例1記載どおり操作を行い、黄色結晶を得た。粗結晶をガスクロマトグラフィーで分析を行ったところ、目的物の含有量は18.0g(0.0790モル)で収率は51.4%(3-クロロ-o-キシレンに対して)であった。また、目的物が脱水反応を起こして得られる2,3-ジメチル-α-メチルスチレンの比率は、目的物に対して8.6%であった。
【0035】
その後、ヘプタン25g加えて再結晶を行い、-10℃以下まで冷却し結晶を濾別して13.0gの白色結晶を得た。採取した白色結晶をガスクロマトグラフィーで分析を行った結果、純度は99.6%の2-(2,3-ジメチルフェニル)プロパン-2-オールであった。収率は37.0%(3-クロロ-o-キシレンに対して)であった。
【0036】
上記実施例1、2および比較例1から3の結果を、以下の表1に記載する。
【表1】
本発明の2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの製造方法は、安価な塩素化物である2,3-ジアルキルクロロ芳香族を出発原料に、塩化リチウム存在下、グリニャール試薬を合成し、次いでアルキルケトン類と15から40℃で反応させた後、pKa2以上の酸を含む水溶液で加水分解することで目的の第3級アルコールを合成する製造法である。本発明の2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールは、工業的に優れた製造法である。
本発明の2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコールの製造方法により製造された2,3-ジアルキル芳香族を有する第3級アルコール類は、ファインケミカル、医農薬原料、樹脂・プラスチック原料、電子情報材料、光学材料などとして用いることができる。