(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071265
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】プログラムおよびプリンタ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20220509BHJP
B41J 3/54 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G06F3/12 341
G06F3/12 305
G06F3/12 308
G06F3/12 324
G06F3/12 347
G06F3/12 352
G06F3/12 381
B41J3/54 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180128
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 希如
【テーマコード(参考)】
2C055
【Fターム(参考)】
2C055KK00
2C055KK05
2C055KK06
2C055KK13
(57)【要約】
【課題】複数の印刷エンジンを搭載するプリンタ用の印刷データを生成するプログラムであって、各印刷エンジンの利点を発揮させることができる技術を提供すること。
【解決手段】レーザ方式での印刷を行うモノクロレーザ部351と、インク方式での印刷を行うカラーインクジェット部352と、を備え、用紙の同一面に対して両方を用いた印刷が可能なプリンタ3に接続されるPC1にて実行されるプリンタドライバ23は、プリンタ3に印刷させる画像の印刷命令を受け付け、受け付けた印刷命令に含まれる描画関数の種類あるいは入力パラメータに基づいて、印刷オブジェクトの種類についてモノクロレーザ部351に適したレーザ用オブジェクトであるかカラーインクジェット部352に適したインク用オブジェクトであるかを判定し、判定結果に基づいて、レーザ用PDLデータとインク用PDLデータとを生成する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置のコンピュータによって実行可能なプログラムであって、
前記コンピュータに、
プリンタに印刷させる画像の描画命令を受け付ける描画受付処理を実行させ、前記プリンタは、第1の印刷方式による印刷を行う第1印刷エンジンと、前記第1の印刷方式と異なる第2の印刷方式による印刷を行う第2印刷エンジンと、を備え、用紙の同一面に対して前記第1印刷エンジンと前記第2印刷エンジンとの両方を用いた印刷が可能であり、
さらに前記コンピュータに、
前記描画受付処理にて受け付けた前記描画命令の種類あるいは入力パラメータに基づいて、前記描画命令によって示される印刷オブジェクトの種類について、前記第1印刷エンジンに適した第1種であるか、前記第2印刷エンジンに適した第2種であるか、を判定する判定処理と、
前記判定処理での判定結果に基づいて、前記第1種の印刷オブジェクトを前記第1印刷エンジンに印刷させる第1印刷データと、前記第2種の印刷オブジェクトを前記第2印刷エンジンに印刷させる第2印刷データと、を生成する生成処理と、
を実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載するプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記描画受付処理にて受け付けた前記描画命令に基づいて、前記描画命令によって示される前記印刷オブジェクトが描かれた画像を示す一時的な描画データを生成する一時描画処理を実行させ、
さらに前記判定処理では、
前記一時描画処理にて前記描画データを生成した後、前記描画命令によって示される前記印刷オブジェクトであって前記描画データに描かれた前記印刷オブジェクトの種類について、前記第1種であるか前記第2種であるかを判定する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するプログラムにおいて、
前記生成処理では、
前記判定処理での判定結果に基づいて、前記第1種の印刷オブジェクトを、電子写真方式であってモノクロ印刷が可能な前記第1の印刷方式による前記第1印刷エンジンに印刷させる第1印刷データと、前記第2種の印刷オブジェクトを、インクジェット方式であってカラー印刷が可能な前記第2の印刷方式による前記第2印刷エンジンに印刷させる第2印刷データと、を生成する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項3に記載するプログラムにおいて、
前記判定処理では、
前記第2種と判定した印刷オブジェクトと印字領域が重複する印刷オブジェクトについて、前記第1印刷エンジンに適した印刷オブジェクトであっても、前記第2種と判定する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項4に記載するプログラムにおいて、
前記判定処理ではさらに、
前記第2種と判定した印刷オブジェクトと印字領域が近接する印刷オブジェクトについて、前記第1印刷エンジンに適した印刷オブジェクトであっても、前記第2種と判定する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1つに記載するプログラムにおいて、
前記判定処理では、
印刷オブジェクトの種類が写真の場合、前記第2種と判定する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれか1つに記載するプログラムにおいて、
前記判定処理では、
印刷オブジェクトの種類がテキストもしくは図形の場合、判定対象の印刷オブジェクトにカラーの要素が含まれれば前記第2種と判定し、判定対象の印刷オブジェクトにカラーの要素が含まれなければ前記第1種と判定する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載するプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記情報処理装置のユーザインタフェースを介して、印刷オブジェクトの種類ごとに、前記第1種とするか前記第2種とするかの選択を受け付け、受け付けた種類を示す種類情報を設定する種類設定処理を実行させ、
前記判定処理では、前記種類設定処理にて設定されている前記種類情報を用いて、前記描画命令によって示される印刷オブジェクトの種類について、前記第1種であるか前記第2種であるかを判定する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載するプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記第1印刷エンジンを用い、前記第2印刷エンジンを用いない第1モードと、前記第2印刷エンジンを用い、前記第1印刷エンジンを用いない第2モードと、前記第1印刷エンジンと前記第2印刷エンジンとの両方の利用を可能にする混在モードと、のいずれかの選択を受け付け、受け付けたモードを設定するモード設定処理を実行させ、
さらに前記コンピュータに、
前記混在モードが設定されている場合、前記判定処理および前記生成処理を実行させ、
前記第1モードが設定されている場合、前記描画受付処理にて受け付けた前記描画命令に基づいて、前記第1印刷データを生成させ、
前記第2モードが設定されている場合、前記描画受付処理にて受け付けた前記描画命令に基づいて、前記第2印刷データを生成させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1つに記載するプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記生成処理にて生成した前記第1印刷データと前記第2印刷データとを含む1つの印刷ジョブを出力する出力処理を実行させ、前記印刷ジョブを受信した前記プリンタは、同一用紙の同一面に対して、受信した前記印刷ジョブに含まれる前記第1印刷データを前記第1印刷エンジンに印刷させ、受信した前記印刷ジョブに含まれる前記第2印刷データを前記第2印刷エンジンに印刷させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項11】
第1の印刷方式による印刷を行う第1印刷エンジンと、
第2の印刷方式による印刷を行う第2印刷エンジンと、
コンピュータと、
を備え、
用紙の同一面に対して前記第1印刷エンジンと前記第2印刷エンジンとの両方を用いた印刷が可能なプリンタであって、
前記コンピュータは、
プリンタに印刷させる画像を示す画像データを取得する取得処理を実行し、前記画像データはラスタライズされていないデータであり、
さらに前記コンピュータは、
前記画像データに含まれる印刷オブジェクトの種類について、前記印刷オブジェクトの種類あるいはパラメータに基づいて、前記第1印刷エンジンに適した第1種であるか、前記第2印刷エンジンに適した第2種であるか、を判定する判定処理と、
前記判定処理での判定結果に基づいて、前記第1種の印刷オブジェクトを前記第1印刷エンジンに印刷させる第1印刷データと、前記第2種の印刷オブジェクトを前記第2印刷エンジンに印刷させる第2印刷データと、を生成する生成処理と、
同一用紙の同一面に対して、前記生成処理にて生成した前記第1印刷データを前記第1印刷エンジンに印刷させ、前記生成処理にて生成した前記第2印刷データを前記第2印刷エンジンに印刷させる印刷処理と、
を実行する、
ことを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術分野は、印刷データを生成するプログラムおよびプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数台のプリンタと情報処理装置とを備えるシステムにおいて、情報処理装置によって1つの印刷ジョブをページ単位や部数単位で分割し、分割された印刷ジョブを各プリンタに分散して実行させる分散印刷が知られている。例えば、特許文献1には、パーソナルコンピュータによって分割された印刷ジョブを、同一形式のプリンタデータに対応する複数台のプリンタに実行させる場合であって、印刷ジョブを分割する前に、印刷ジョブを一括してプリンタデータに変換する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子写真方式の印刷エンジンとインクジェット方式の印刷エンジンとの2つの印刷エンジンを搭載し、用紙の同一面に対して上述の2つの印刷エンジンを用いた印刷が可能なプリンタの実用化が検討されている。一方で、これまでプリンタドライバ等の印刷データを生成するプログラムでは、複数の印刷エンジンを利用することが想定されていないため、各印刷エンジンの利点をより発揮させるには改善の余地がある。特許文献1には、印刷データを生成するプログラムに関する技術として、複数のプリンタを利用するために印刷ジョブを分割する技術が開示されているが、1つのプリンタの複数の印刷エンジンを利用する技術については開示されていない。
【0005】
本明細書は、複数の印刷エンジンを搭載するプリンタ用の印刷データを生成するプログラムであって、各印刷エンジンの利点を発揮させることができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされたプログラムは、情報処理装置のコンピュータによって実行可能なプログラムであって、前記コンピュータに、プリンタに印刷させる画像の描画命令を受け付ける描画受付処理を実行させ、前記プリンタは、第1の印刷方式による印刷を行う第1印刷エンジンと、前記第1の印刷方式と異なる第2の印刷方式による印刷を行う第2印刷エンジンと、を備え、用紙の同一面に対して前記第1印刷エンジンと前記第2印刷エンジンとの両方を用いた印刷が可能であり、さらに前記コンピュータに、前記描画受付処理にて受け付けた前記描画命令の種類あるいは入力パラメータに基づいて、前記描画命令によって示される印刷オブジェクトの種類について、前記第1印刷エンジンに適した第1種であるか、前記第2印刷エンジンに適した第2種であるか、を判定する判定処理と、前記判定処理での判定結果に基づいて、前記第1種の印刷オブジェクトを前記第1印刷エンジンに印刷させる第1印刷データと、前記第2種の印刷オブジェクトを前記第2印刷エンジンに印刷させる第2印刷データと、を生成する生成処理と、を実行させる、ことを特徴としている。
【0007】
本明細書に開示されるプログラムは、描画命令の種類あるいは入力パラメータに基づいて、印刷オブジェクトが第1印刷エンジンに適した第1種か第2印刷エンジンに適した第2種かを判定し、第1種の印刷オブジェクト用の第1印刷データと、第2種の印刷オブジェクト用の第2印刷データと、をそれぞれ生成する。この印刷データに基づいて、第1印刷エンジンと第2印刷エンジンとの両方での印刷が可能なプリンタに印刷を行わせた場合、各印刷オブジェクトがそれぞれ適した印刷エンジンで印刷される。その結果として、複数の印刷エンジンを搭載するプリンタにおいて、各印刷エンジンの利点を発揮させることができる。
【0008】
上記プログラムの機能を実現するための制御方法、プログラムの機能を実現するプリンタ、プログラムを格納するコンピュータ読取可能な記憶媒体も、新規で有用である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の印刷エンジンを搭載するプリンタ用の印刷データを生成するプログラムであって、各印刷エンジンの利点を発揮させることができる技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態にかかるPCとプリンタの概略構成図である。
【
図2】プリンタの内部構成の例を示す説明図である。
【
図3】印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】印刷設定の編集画面の一部の例を示す説明図である。
【
図5】自動判定による判定の例を示す説明図である。
【
図6】印字領域による判定変更の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、プログラムを具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、プリンタと通信可能なパーソナルコンピュータ(以下、「PC」とする)にて実行されるプログラムを開示するものである。
【0012】
本形態のPC1は、
図1に示すように、プリンタ3に接続され、プリンタ3に印刷コマンドを送信可能な装置である。PC1は、
図1に示すように、CPU11と、メモリ12と、を含むコントローラ10を備えている。さらに、PC1は、ユーザインタフェース(以下、「ユーザIF」とする)13と、通信インタフェース(以下、「通信IF」とする)14と、を備え、これらがコントローラ10に電気的に接続されている。PC1は、情報処理装置の一例である。
【0013】
CPU11は、メモリ12から読み出したプログラムに従って、また、ユーザの操作に基づいて、各種の処理を実行する。CPU11は、コンピュータの一例である。メモリ12は、例えば、ROM、RAM、HDD、フラッシュメモリであり、各種のプログラム、画像データや文書データ、設定情報等のデータ、を記憶する領域として利用される。CPU11が備えるバッファも、メモリの一例である。
【0014】
メモリ12など、各装置のメモリの一例は、装置に内蔵されるROM、RAM、HDD等に限らず、CPU11が読み取り可能かつ書き込み可能なストレージ媒体であってもよい。コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体とは、non-transitoryな媒体である。non-transitoryな媒体には、上記の例の他に、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体も含まれる。また、non-transitoryな媒体は、tangibleな媒体でもある。一方、インターネット上のサーバなどからダウンロードされるプログラムを搬送する電気信号は、コンピュータが読み取り可能な媒体の一種であるコンピュータが読み取り可能な信号媒体であるが、non-transitoryなコンピュータが読み取り可能なストレージ媒体には含まれない。
【0015】
ユーザIF13は、情報を画面に表示するハードウェアと、ユーザによる入力操作を受け付けるハードウェアと、を含む。ユーザIF13は、表示用のディスプレイと、キーボード、マウス等との組み合わせであっても良いし、表示機能と入力受付機能とを備えるタッチパネルであっても良い。
【0016】
通信IF14は、プリンタ3等の外部装置との通信を行うためのハードウェアを含む。通信IF14の通信方式は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、USBである。通信IF14は、どのような規格の方式でもよい。また、PC1は、複数の通信方式に対応する複数の通信IF14を有していても良い。
【0017】
本形態のPC1のメモリ12には、
図1に示すように、オペレーティングシステム(以下、「OS」とする)21と、印刷アプリ22と、プリンタドライバ23と、が組み込まれている。OS21は、例えば、Windows(登録商標)、macOS(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)、Linux(登録商標)である。
【0018】
印刷アプリ22は、印刷に関するユーザの指示を受け付けるプログラムである。印刷アプリ22は、ユーザの操作によって、例えば、印刷を行わせる装置の指定、印刷対象の画像の指定、印刷設定の編集指示、印刷実行の指示、を受け付ける。
【0019】
プリンタドライバ23は、プリンタ3のモデルに対応するプログラムであり、プリンタ3の動作を制御する機能を含むプログラムである。プリンタドライバ23は、プログラムの一例である。プリンタドライバ23は、例えば、印刷アプリ22等にてプリンタ3での印刷実行の指示や詳細な印刷設定の編集指示を受け付けた場合に実行される。プリンタドライバ23は、例えば、受け付けた印刷命令にて指定されている画像データに基づいて、プリンタ3に印刷させるための印刷データを生成する。
【0020】
本形態のプリンタ3は、少なくとも、印刷機能と、PC1との通信を行う通信機能と、を有する装置である。本形態のプリンタ3は、
図1に示すように、CPU31と、メモリ32と、を含むコントローラ30を備えている。さらに、プリンタ3は、ユーザIF33と、通信IF34と、画像形成部35と、を備え、これらがコントローラ30に電気的に接続されている。なお、
図1中のコントローラ10、30は、PC1やプリンタ3の制御に利用されるハードウェアやソフトウェアを纏めた総称であって、実際にPC1やプリンタ3に存在する単一のハードウェアを表すとは限らない。
【0021】
CPU31は、メモリ32から読み出したプログラムに従って、また、ユーザの操作に基づいて、各種の処理を実行する。CPU31は、コンピュータの一例である。メモリ32は、各種のプログラム、画像データや文書データ、設定情報等のデータ、を記憶する領域として利用される。本形態のプリンタ3のメモリ32には、印刷プログラム41が記憶されている。
【0022】
ユーザIF33は、情報を画面に表示するハードウェアと、ユーザによる入力操作を受け付けるハードウェアと、を含む。ユーザIF33は、表示用のディスプレイと、入力ボタン等との組み合わせであっても良いし、表示機能と入力受付機能とを備えるタッチパネルであっても良い。
【0023】
通信IF34は、PC1等の外部装置との通信を行うためのハードウェアを含む。通信IF34の通信方式は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、USBである。プリンタ3は、複数の通信方式に対応していても良い。
【0024】
画像形成部35は、
図1と
図2とに示すように、モノクロレーザ部351と、カラーインクジェット部352と、を含む。本形態のプリンタ3には、例えば、
図2に概略を示すように、モノクロレーザエンジン51を含むモノクロレーザ部351と、その上部に配置され、カラーインクジェットエンジン52を含むカラーインクジェット部352とが、一体的に設けられている。モノクロレーザエンジン51は、第1印刷エンジンの一例であり、カラーインクジェットエンジン52は、第2印刷エンジンの一例である。
【0025】
モノクロレーザ部351は、モノクロレーザエンジン51を用いて電子写真方式により用紙に黒色トナーによるトナー像を形成する。電子写真方式は、第1の印刷方式の一例である。なお、本形態のプリンタ3は、電子写真方式でのカラー印刷用の構成は有していない。モノクロレーザエンジン51にて形成されたトナー像は、定着部53によって用紙に定着される。なお、以下では、モノクロレーザ部351を利用して印刷する方式を、「レーザ方式」とする。
【0026】
カラーインクジェット部352は、カラーインクを備えており、複数の吐出ヘッドを有するカラーインクジェットエンジン52にてインク滴を吐出することで、インクジェット方式により用紙にカラー画像を形成する。インクジェット方式は、第2の印刷方式の一例である。以下では、カラーインクジェット部352を利用して印刷する方式を、「インク方式」とする。なお、モノクロレーザエンジン51やカラーインクジェットエンジン52の内部的な構成は一般的なもので良く、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0027】
本形態のプリンタ3は、1枚の用紙に対して、モノクロレーザ部351のみを利用した印刷と、カラーインクジェット部352のみを利用した印刷と、モノクロレーザ部351とカラーインクジェット部352との両方を利用した印刷と、を実行可能である。プリンタ3は、例えば、
図2に一点鎖線で示すように、モノクロレーザ部351とカラーインクジェット部352とをこの順に通るように、用紙を搬送することができる。
【0028】
モノクロレーザ部351のみを利用した印刷を実行する場合、プリンタ3は、最下部の給紙トレイ55から用紙を給紙し、モノクロレーザエンジン51に対向させてトナー像を形成する。そして、プリンタ3は、定着部53にてトナー像を定着させた用紙を、排紙トレイ56に排紙する。
【0029】
カラーインクジェット部352のみを利用した印刷を実行する場合、プリンタ3は、モノクロレーザエンジン51を駆動させず、給紙トレイ55から給紙した用紙を一旦排紙トレイ56の近傍まで搬送する。さらに、プリンタ3は、用紙を排出せずにスイッチバックさせ、Uターン経路を介してカラーインクジェットエンジン52に対向させて印刷し、印刷済みの用紙を排紙トレイ56に排紙する。
【0030】
モノクロレーザ部351とカラーインクジェット部352との両方を利用した印刷を実行する場合、プリンタ3は、まず用紙の一面にモノクロレーザ部351によるレーザ方式による印刷を行い、続けて、同じ用紙の印刷済みの面をカラーインクジェット部352に対向させて、同じ面にインク方式での印刷を行う。具体的には、プリンタ3は、給紙トレイ55から給紙した用紙に、モノクロレーザエンジン51にてトナー像を形成し、定着部53にて定着させた後、一旦排紙トレイ56の近傍まで搬送する。さらに、プリンタ3は、用紙を排出せずにスイッチバックさせ、印刷済みの面をカラーインクジェットエンジン52に対向させる。
【0031】
本形態のプリンタ3は、高価、高品質、高速となる電子写真方式ではモノクロのみの印刷を行い、さらに、比較的低価格なインクジェット方式でのカラー印刷も可能である。本形態のプリンタ3によれば、例えば、普段はモノクロ印刷が中心であって、たまにカラー印刷を行う、あるいは、ページ中の一部だけカラー印刷を行う、といったユーザに好適な印刷環境を提供できる。
【0032】
続いて、本形態のPC1のプリンタドライバ23による処理の手順について、フローチャートを参照して説明する。なお、以下の処理およびフローチャートの各処理ステップは、基本的に、プログラムに記述された命令に従ったCPU11の処理を示す。すなわち、以下の説明における「判断」、「抽出」、「選択」、「算出」、「決定」、「特定」、「取得」、「受付」、「制御」等の処理は、CPU11の処理を表している。CPU11による処理は、OS21のAPIを用いたハードウェア制御も含む。本明細書では、OSの記載を省略して各プログラムの動作を説明する。すなわち、以下の説明において、「プログラムBがハードウェアCを制御する」という趣旨の記載は、「プログラムBがOSのAPIを用いてハードウェアCを制御する」ことを指してもよい。また、プログラムに記述された命令に従ったCPU11の処理を、省略した文言で記載することがある。例えば、「CPU11が行う」のように記載することがある。また、プログラムに記述された命令に従ったCPU11の処理を、「プログラムAが行う」のようにCPUを省略した文言で記載することがある。
【0033】
なお、「取得」は要求を必須とはしない概念で用いる。すなわち、CPU11が要求することなくデータを受信するという処理も、「CPU11がデータを取得する」という概念に含まれる。また、本明細書中の「データ」とは、コンピュータに読取可能なビット列で表される。そして、実質的な意味内容が同じでフォーマットが異なるデータは、同一のデータとして扱われるものとする。本明細書中の「情報」についても同様である。また、「要求する」、「指示する」とは、要求していることを示す情報や、指示していることを示す情報を相手に出力することを示す概念である。また、要求していることを示す情報や指示していることを示す情報のことを、単に、「要求」、「指示」とも記載する。
【0034】
また、CPU11による、情報Aは事柄Bであることを示しているか否かを判断する処理を、「情報Aから、事柄Bであるか否かを判断する」のように概念的に記載することがある。CPU11による、情報Aが事柄Bであることを示しているか、事柄Cであることを示しているか、を判断する処理を、「情報Aから、事柄Bであるか事柄Cであるかを判断する」のように概念的に記載することがある。
【0035】
以下、プリンタドライバ23による印刷処理の手順について、
図3のフローチャートを参照して説明する。印刷処理は、プリンタドライバ23が印刷命令を受け取ったことを契機に、PC1のCPU11にて実行される。なお、印刷命令は、例えば、印刷アプリ22等のアプリにて、プリンタ3が選択された状態で印刷の実行指示を受け付けたことによって、印刷アプリ22等から直接またはOS21を介してプリンタドライバ23に渡される。印刷命令には、印刷オブジェクトの描画を指示する描画命令が含まれる。プリンタドライバ23が印刷命令を受け取る処理は、描画受付処理の一例である。
【0036】
印刷処理では、CPU11は、印刷命令に含まれる印刷設定の情報を取得する(S101)。印刷命令には、ユーザの指定またはデフォルトの設定に基づく印刷設定であって、この印刷に適用する各種の印刷設定の情報が含まれる。本形態のプリンタ3は、前述したように、2つの印刷エンジンを有して2つの印刷方式による印刷が可能であることから、印刷設定には、使用する印刷方式の情報が含まれる。
【0037】
プリンタドライバ23は、印刷実行の指示を受け付ける前に、ユーザによる印刷設定の編集を受け付け可能である。プリンタドライバ23は、印刷設定の編集指示を受け付けると、ユーザIF13に編集画面を表示させ、ユーザによる入力を受け付ける。印刷設定の編集画面には、例えば、
図4に示すように、使用する印刷方式の選択を受け付ける印刷方式選択項目61が含まれる。印刷方式選択項目61では、プリンタドライバ23は、モノクロレーザ部351のみを利用してレーザ方式のみで印刷するレーザモード、カラーインクジェット部352のみを利用してインク方式のみで印刷するインクモード、両方の印刷方式を併用する併用モード、の3つから1つのモードの選択を受け付ける。
【0038】
印刷方式選択項目61にて印刷方式の選択を受け付ける処理は、モード設定処理の一例である。レーザモードは、第1モードの一例であり、インクモードは、第2モードの一例であり、併用モードは、混在モードの一例である。モードの選択を受け付けることで、ユーザの意図する印刷エンジンを用いた印刷をプリンタ3に実行させることができ、ユーザの意図する印刷物を作成できる可能性が高まる。なお、レーザモードまたはインクモードが選択された場合の処理は、既存の処理であり、本明細書では説明を省略する。
図3では、併用モードが選択された場合の処理のみを示している。
【0039】
併用モードでは、プリンタドライバ23は、印刷対象の画像に含まれる印刷オブジェクトごとに使用する印刷方式を判定する。プリンタドライバ23は、印刷方式選択項目61にて併用モードの選択を受け付けた場合、例えば、
図4に示すように、判定方法設定項目62にて、自動判定と、手動設定と、のうちからユーザの選択を受け付ける。自動判定が選択された場合、プリンタドライバ23は、後述するように、印刷オブジェクトごとの印刷方式を自動的に判定する。
【0040】
一方、手動設定の選択を受け付けた場合、プリンタドライバ23は、さらに、印刷オブジェクトの種類ごとに使用する印刷方式のユーザによる指定を受け付ける。プリンタドライバ23は、手動設定が選択されると、例えば、
図4に示すように、詳細設定項目63を選択可能に表示し、文字、図形、写真等の印刷オブジェクトの種類ごとにそれぞれ、レーザ方式またはインク方式のいずれかの選択を受け付ける。詳細設定項目63にて印刷方式の選択を受け付ける処理は、種類設定処理の一例であり、印刷オブジェクトの種類ごとの印刷方式の種類の情報は、種類情報の一例である。印刷オブジェクトの種類ごとに印刷方式の選択を受け付けることで、ユーザの意図する印刷物を作成できる可能性が高まる。
【0041】
図3の印刷処理の説明に戻る。印刷処理では、CPU11は、印刷設定を取得した後、受け取った印刷命令に含まれる画像データに基づいて、レンダリングを実行し、描画データを生成する(S102)。S102は、一時描画処理の一例であり、S102にて生成される描画データは、一時的な描画データの一例である。なお、本形態のプリンタドライバ23は、カラー印刷用の印刷データを生成する可能性があることから、S102にて、24BPP(8ビットRGB)でのレンダリングを行う。一旦、全ての印刷オブジェクトを描画することで、後の手順にて、他の印刷オブジェクトとの位置関係等の判断を行うことが可能になる。
【0042】
さらに、CPU11は、画像データに含まれる印刷オブジェクトごとに、印刷オブジェクトの種類と入力パラメータとを取得する(S103)。そして、CPU11は、その印刷オブジェクトが、レーザ方式を適用するレーザ用オブジェクトであるか、インク方式を適用するインク用オブジェクトであるか、を判定する(S104)。S104は、判定処理の一例である。レーザ用オブジェクトは、第1種の印刷オブジェクトの一例であり、インク用オブジェクトは、第2種の印刷オブジェクトの一例である。
【0043】
S104では、CPU11は、S101にて取得した印刷設定に手動設定が選択されていることを示す情報が含まれていれば、印刷設定に含まれる情報に基づいて、その印刷オブジェクトの印刷方式を判定する。具体的には、印刷設定には、前述した詳細設定項目63にて受け付けた指示に基づいて、印刷オブジェクトの種類ごとに指定された印刷方式の情報が含まれ、CPU11は、S103にて取得した印刷オブジェクトの種類に基づいて、その印刷オブジェクトの印刷方式を判定する。
【0044】
一方、S101にて取得した印刷設定に自動判定が選択されていることを示す情報が含まれていれば、CPU11は、予め記憶している判定条件の情報とS103にて取得した情報とに基づいて、レーザ用オブジェクトとするかインク用オブジェクトとするかの判定を行う。プリンタドライバ23は、判定条件の情報として、例えば、
図5に示すように、印刷オブジェクトの種類と印刷オブジェクトの色と背景の色との組み合わせに応じて、判定される印刷方式を記憶している。
【0045】
自動判定が選択されている場合、CPU11は、まず、描画関数の種類に応じて、
図5に示すように、判定対象の印刷オブジェクトの種類をテキスト(文字)、図形、写真のいずれかと判断する。CPU11は、例えば、描画関数が「TextOut」であれば、その印刷オブジェクトを文字オブジェクトであると判断する。CPU11は、描画関数が「FillPath」、「StrokePath」、「StrokeAndFillPath」のいずれかであれば、その印刷オブジェクトを図形オブジェクトであると判断する。CPU11は、描画関数が「BitBlt」または「StretchBlt」であれば、その印刷オブジェクトを写真オブジェクトであると判断する。
【0046】
さらに、CPU11は、入力パラメータに基づいて、印刷オブジェクトの色と背景の色とを取得する。そして、CPU11は、印刷オブジェクトの種類が文字または図形であって、印刷オブジェクトの色と背景の色とのいずれにも、白、黒、グレー以外のカラーの要素が含まれない場合、その印刷オブジェクトをレーザ用オブジェクトとすると判定する。文字や図形の場合は、エッジが強調され易いレーザ方式を使う方が高画質の印刷が期待できる。
【0047】
また、CPU11は、印刷オブジェクトの種類が文字または図形であっても、文字の色や文字の背景の色、図形の色として白、黒、グレー以外の色が設定されている場合、その印刷オブジェクトをインク用オブジェクトとすると判定する。また、CPU11は、印刷オブジェクトの種類が写真であれば、色の設定に関わらず、インク用オブジェクトとすると判定する。写真の場合は、白黒であってもインク方式を使う方が高画質の印刷が期待できる。
【0048】
S104の判定後、CPU11は、1枚の用紙の1つの面に印刷するページに含まれる全ての印刷オブジェクトについて、判定が終了したか否かを判断する(S105)。終了していないと判断した場合(S105:NO)、CPU11は、S103に戻って、次の印刷オブジェクトについて適用する印刷方式の判定を行う。
【0049】
ページ内の全ての印刷オブジェクトについての判定が終了したと判断した場合(S105:YES)、CPU11は、このページに、レーザ用オブジェクトと判定された印刷オブジェクトと、インク用オブジェクトと判定された印刷オブジェクトと、の両方が含まれるか否かを判断する(S110)。両方が含まれると判断した場合(S110:YES)、CPU11は、印刷オブジェクトの印字領域同士の重複や近接に基づいて、判定を変更する(S111)。
【0050】
前述したように、本形態のプリンタ3は、1枚の用紙の1つの面に対して、レーザ方式での印刷の後にインク方式での印刷を行う。用紙上で、レーザ方式でトナーが定着された箇所には、インクが染みこみ難く、適切な印刷とならない可能性が高い。そのため、CPU11は、レーザ用オブジェクトとインク用オブジェクトとの印字領域が重複している場合、または、レーザ用オブジェクトとインク用オブジェクトとの印字領域の間隔が所定距離以下である場合、レーザ用オブジェクトの印刷方式をインク方式に変更する。所定距離は、メカ的な誤差による重複が発生する可能性のある距離であり、例えば、1mmである。CPU11は、プリンタ3が有する位置ずれ量、例えば、キャリブレーションに基づく補正値、を取得して、所定距離を決定してもよい。
【0051】
CPU11は、印刷オブジェクトの外接矩形の範囲を印刷オブジェクトの印字領域として、印刷オブジェクト同士の重複や近接の判断を行う。CPU11は、印刷オブジェクトの外接矩形の座標を、例えば、S102にてレンダリングによって生成された描画データに基づいて取得できる。
【0052】
例えば、
図6(A)に示すように、文字オブジェクト71、72、図形オブジェクト73、写真オブジェクト74、を含むページでは、図中に破線で示すように、印刷オブジェクトごとにその外接矩形が設定される。印刷設定にて自動判定が選択されている場合、文字オブジェクト71、72はレーザ用オブジェクトと判定され、図形オブジェクト73と写真オブジェクト74はインク用オブジェクトと判定される。
図6(A)では、どの印刷オブジェクトも互いに所定距離よりも大きく離れて配置されており、CPU11は、いずれの印刷オブジェクトの印刷方式も変更しない。なお、
図6の例の図形オブジェクト73には、内部に白、黒、グレー以外の色が設定されており、文字オブジェクト71、72、75、76は、文字色にも背景にも白、黒、グレーのみが使用されているものとする。
【0053】
図6(B)は、図形オブジェクト73の印字領域の一部と文字オブジェクト75の印字領域の一部とが、重複する位置に配置されている例である。CPU11は、
図6(B)の例では、S111にて、文字オブジェクト75をレーザ用オブジェクトからインク用オブジェクトに変更する。また、
図6(C)は、写真オブジェクト74の印字領域の一部と文字オブジェクト76の印字領域の一部との間隔が所定距離以下となっている例である。CPU11は、
図6(C)の例では、S111にて、文字オブジェクト76をレーザ用オブジェクトからインク用オブジェクトに変更する。レーザ用オブジェクトとインク用オブジェクトとが重複あるいは近接している場合に、いずれもインク方式で印刷するとすることで、品質低下を抑制できる。
【0054】
さらに、CPU11は、各印刷オブジェクトの判定結果に基づいて、描画データを、レーザ用の描画データとインク用の描画データとに分離する(S112)。つまり、CPU11は、レーザ用オブジェクトと判定されたすべての印刷オブジェクトを含むレーザ用の描画データと、インク用オブジェクトと判定されたすべての印刷オブジェクトを含むインク用の描画データと、を生成する。
【0055】
CPU11は、例えば、
図6(A)に示した例では、
図7に示すように、文字オブジェクト71と文字オブジェクト72とを含むレーザ用描画データ(
図7(B))と、図形オブジェクト73と写真オブジェクト74とを含むインク用描画データ(
図7(C))とを生成する。また、
図6(B)に示した例では、CPU11は、文字オブジェクト71のみを含むレーザ用描画データと、図形オブジェクト73と写真オブジェクト74と文字オブジェクト75とを含むインク用描画データとを生成する。
図6(C)に示した例では、CPU11は、文字オブジェクト71のみを含むレーザ用描画データと、図形オブジェクト73と写真オブジェクト74と文字オブジェクト76とを含むインク用描画データとを生成する。
【0056】
そして、CPU11は、生成した描画データが、印刷対象の画像データの先頭ページであるか否かを判断する(S120)。先頭ページであると判断した場合(S120:YES)、CPU11は、ジョブ開始コマンドをプリンタ3に送信する(S121)。なお、S121等のプリンタ3へのデータの送信は、プリンタドライバ23が直接行っても良いし、OS21のスプーラ機能等を介して行っても良い。
【0057】
S121の後、または、先頭ページではないと判断した場合(S120:NO)、CPU11は、S112にて分離した描画データに基づいて、モノクロレーザ部351に印刷を行わせるためのレーザ用PDLデータと、カラーインクジェット部352に印刷を行わせるためのインク用PDLデータと、を生成する(S123)。S123は、生成処理の一例である。レーザ用PDLデータは、第1印刷データの一例であり、インク用PDLデータは、第2印刷データの一例である。
【0058】
CPU11は、レーザ用描画データに基づいて、例えば、カラー要素を除いた8BPPデータへの変換とディザリング等の画処理とを行うことで、レーザ用PDLデータを生成する。また、CPU11は、インク用描画データに基づいて、例えば、インク用の画処理を行って、インク用PDLデータを生成する。
【0059】
さらに、CPU11は、生成したレーザ用PDLデータとインク用PDLデータとを含む1面分のデータを印刷ジョブとし、プリンタ3を宛先として出力する(S124)。S124は、出力処理の一例である。この印刷ジョブを受信することで、プリンタ3は、レーザ用PDLデータに基づいてモノクロレーザ部351による印刷を行った後、同一用紙の同一面に対して、インク用PDLデータに基づいてカラーインクジェット部352による印刷を行う。
【0060】
2つのPDLデータをまとめて出力することで、プリンタ3は、1枚の用紙に印刷するデータであることが把握でき、プリンタ3自身のタイミングでそれぞれのデータを使用できる。なお、プリンタドライバ23は、1枚の用紙のデータであることを示す情報を付加して、2つのPDLデータを別々に送信しても良い。
【0061】
そして、CPU11は、送信したデータが、印刷対象の画像データの最終ページであるか否かを判断する(S125)。最終ページではないと判断した場合(S125:NO)、CPU11は、S102に戻り、次のページのデータの処理を実行する。最終ページであると判断した場合(S125:YES)、CPU11は、ジョブ終了コマンドをプリンタ3に送信し(S126)、印刷処理を終了する。
【0062】
図3では、PC1のプリンタドライバ23がPDLデータを生成してプリンタ3に送信する印刷処理について説明したが、同様の処理をプリンタ3にて実行する構成とすることもできる。例えば、プリンタ3は、PC1等の外部装置から、ラスタライズされていない画像データとその印刷命令とを受け取った場合、印刷プログラム41(
図1参照)による処理を実行するとしても良い。印刷プログラム41は、プリンタ3のCPU31に、前述した印刷処理と同様の処理を実行させるプログラムである。
【0063】
印刷プログラム41によれば、プリンタ3のCPU31は、取得した画像データに基づいて、印刷処理のS101~S105およびS110~S112と同様の処理を実行する。CPU31が画像データを取得する処理は、取得処理の一例である。また、CPU31が実行する場合も、S104は、判定処理の一例である。
【0064】
そして、印刷オブジェクトごとの印刷方式に基づいて、CPU31は、印刷処理のS123と同様に、レーザ用PDLデータとインク用PDLデータとを生成する。CPU31が実行する場合も、S123は、生成処理の一例である。さらに、CPU31は、生成したPDLデータの印刷を画像形成部35に行わせる。つまり、CPU31は、レーザ用PDLデータに基づく印刷をモノクロレーザ部351に行わせ、インク用PDLデータに基づく印刷をカラーインクジェット部352に行わせる。画像形成部35に印刷を行わせる処理は、印刷処理の一例である。
【0065】
以上、詳細に説明したように、本形態のプリンタドライバ23は、画像に含まれる描画関数の種類とその入力パラメータとに基づいて、各印刷オブジェクトがレーザ用オブジェクトであるかインク用オブジェクトであるかを判定し、その判定結果に基づいて、レーザ用PDLデータとインク用PDLデータとを生成する。生成された各PDLデータに基づく印刷を、モノクロレーザ部351とカラーインクジェット部352とを備えるプリンタ3にて行わせれば、両方の印刷エンジンの利点を発揮させることができる。
【0066】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。従って、本明細書に開示される技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、情報処理装置は、PCに限らず、スマートフォン、タブレットコンピュータ等でも良い。また、プリンタは、印刷単機能のものに限らず、複合機、複写機、FAX装置等、2種類の印刷方式での印刷機能を備えるものであれば適用可能である。また、プリンタは、2以上の給紙トレイを備えていても良く、例えば、カラーインクジェット部352に直接給紙できる給紙トレイや手差しトレイがあっても良い。
【0067】
また、例えば、本形態では、印刷設定にてモードの選択や手動設定の選択を受け付けるとしたが、受け付けなくても良い。つまり、プリンタドライバ23は、プリンタ3に印刷させる印刷命令では、併用モードとし自動判定を行う、としても良い。このようにしても、例えば、黒文字のみを含む画像は、自動的にレーザ方式のみで印刷されることになる。
【0068】
また、例えば、本形態では、自動判定の判定条件として、写真オブジェクトはモノクロ写真であってもインク方式と判定するとしたが、モノクロ写真であればレーザ方式と判定しても良い。また、判定条件の編集を受け付けても良い。
【0069】
また、本形態では、手動設定が選択された場合に、印刷オブジェクトの種類のみに対応して印刷方式の指定を受け付けるとしたが、さらに詳細な設定を受け付けても良い。例えば、カラー要素の有無に基づいて印刷方式を指定できるようにしても良い。
【0070】
また、本形態では、一旦24BPPでレンダリングして一時的な描画データを生成するとしたが、これに限らない。例えば、ビット数は24ビットでなくても良い。また、描画データを生成しなくても印字領域を確認できるのであれば、一時的な描画データを生成する必要はない。また、印字領域の重複や近接の判断を行わないとしても良く、その場合も、一時的な描画データを生成する必要はない。
【0071】
また、例えば、本形態では、印刷オブジェクト同士が近接している場合にも、判定を変更するとしたが、しなくても良い。つまり、印刷オブジェクト同士が重複している場合に限って、判定を変更するとしても良い。また、例えば、用紙の種類や画像の解像度に応じて、近接の判断を行うか否か、および行う場合にはその判断基準となる所定距離、を変更可能としても良い。
【0072】
また、実施の形態に開示されている任意のフローチャートにおいて、任意の複数のステップにおける複数の処理は、処理内容に矛盾が生じない範囲で、任意に実行順序を変更できる、または並列に実行できる。
【0073】
また、実施の形態に開示されている処理は、単一のCPU、複数のCPU、ASICなどのハードウェア、またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また、実施の形態に開示されている処理は、その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体、または方法等の種々の態様で実現することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 PC
3 プリンタ
11、31 CPU
13 ユーザIF
351 モノクロレーザ部
352 カラーインクジェット部