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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071269
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】火災感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/06 20060101AFI20220509BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G08B17/06 K
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180133
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】秋山 信幸
(72)【発明者】
【氏名】大下 剛
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AB01
5C085AC03
5C085BA12
5C085CA30
5C085DA07
5C085DA10
5C085FA11
5C085FA12
5C085FA17
5G405AA01
5G405AB01
5G405CA60
5G405DA07
5G405DA10
5G405FA09
5G405FA30
(57)【要約】
【課題】配線接続の作業性を低下させることなく筐体の小型化を図ることができる火災感知器を提供する。
【解決手段】外部からの配線の差込み穴を有し、差し込まれた配線が接触される端子を内蔵する複数の端子台を備えた火災感知器において、複数の端子台のうち2つの端子台は、ハの字状であって端子台の差込み穴が形成されている面の延長面が感知器中心付近で交わるよう所定の角度を有した状態で配設した。より具体的には、本体ケースには、底板の周縁部の一部を切り欠いた切欠き部を設け、切欠き部に対応して本体ケースには、外部からの配線の差込み穴を有し差し込まれた配線が接触される端子を内蔵する2つの端子台を配設し、2つの端子台の差込み穴が形成されている面が60度~120度の範囲で所定の角度をなすように2つの端子台を配設するようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの配線の差込み穴を有し、差し込まれた配線が接触される端子を内蔵する複数の端子台を備えた火災感知器であって、
前記複数の端子台のうち2つの端子台は、ハの字状であって端子台の差込み穴が形成されている面の延長面が感知器中心付近で交わるよう所定の角度を有した状態で配設されていることを特徴とする火災感知器。
【請求項2】
有底筒形の本体ケースと、該本体ケースの開口側を覆うカバー部材とからなる筐体の内部に、火災検知用素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納されている火災感知器であって、
前記本体ケースには、底板の周縁部の一部を切り欠いた切欠き部が設けられ、
前記切欠き部に対応して、前記本体ケースには、外部からの配線の差込み穴を有し、差し込まれた配線が接続される端子を内蔵する2つの端子台が配設され、
前記2つの端子台の前記差込み穴が形成されている面が、60度~120度の範囲で所定の角度をなすように前記2つの端子台が配設されていることを特徴とする火災感知器。
【請求項3】
前記切欠き部は、前記2つの端子台の前記差込み穴が形成されている面に対応して形成され、
前記本体ケースの底板の前記切欠き部の縁には、前記差込み穴が形成されている面よりも前記底板の延長方向へ突出する庇部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の火災感知器。
【請求項4】
前記2つの端子台のうち少なくとも一方には複数の差込み穴が設けられ、
前記複数の差込み穴が設けられた端子台の差込み穴の形成面には段差が形成され、
前記複数の差込み穴は、前記端子台の異なる段差面にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の火災感知器。
【請求項5】
前記カバー部材には、水抜き穴および所定の隙間を有して当該水抜き穴を覆う突起が設けられていることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の火災感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災の発生を検知する火災感知器に関し、例えば火災発生に伴う熱を検知する熱感知器に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火災感知器には、サーミスタのような熱感知素子を使用した熱感知器、火災に伴い発生する煙を検知する光電素子を備えた煙感知器、炎から発する赤外線を検知する赤外線センサを備えた赤外線感知器などの種々の形式のものが提供されている。さらに、同一形式の火災感知器であっても、防水型と非防水型のものがある。また、火災感知器は建造物の天井面等に取り付けられ、感知器の筐体内部の回路基板に電源を供給したり信号を伝達したりするための配線(リード線)が天井裏等に配設され、天井面には配線を通すための開口が形成されている。
【0003】
そのため、非防水型の火災感知器にあっては、天井裏で結露等により生じた水が配線を伝わって感知器の筐体内部へ侵入することがある。そのため、従来の火災感知器には、一般に、検知用素子や検出回路を覆うカバーに水抜き穴が設けられている。カバーに水抜き穴を設けた火災感知器に関する発明としては、例えば特許文献1や2に記載されているものがある。
また、火災感知器の筐体には配線の端部を接続するための端子台が設けられており、感知器を天井面等に設置する際には、予め天井裏等に配設されている配線の端部を感知器の端子に接続する作業が行なわれる。
【0004】
従来、配線の端部を接続するための端子台は、配線の接続作業をやり易くするため、図8(A) に示すように、配線端部の挿入方向が同一になるように端子台20A,20Bを設けることが一般であった。また、図8(B) に示すように、配線端部の挿入面が筐体の半径方向外向きとなるように端子台20A,20Bを設けることも考えられる。さらに、図8(C) に示すように、配線端部の挿入面が互いに向かい合うように端子台20A,20Bを設けた感知器もある。他にも、配線端部の挿入面が背中合わせになるように端子台を設けることも考えられる。なお、図8(A) に示すような向きに設けられた端子台を備えた感知器の発明としては、例えば特許文献3に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-88201号公報
【特許文献2】特開2018-206218号公報
【特許文献3】特開2003-272058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、天井面等に設置された感知器において、接続する配線を見えないようにするには、端子に接続した配線を湾曲させて中央に集めてから天井面の開口に挿通させる必要がある。そのため、回路基板の大きさが同一の場合、図8(A) や(B) に示すような端子台を設けた感知器は筐体の外形を大きく設計しなくてはならず、感知器の小型化が困難であった。かかる観点では、図8(C)のような端子台を設けた感知器が最も筐体の小型化が可能である。
【0007】
しかし、図8(C)に記載されている感知器は、筐体の小型化が可能である一方、配線端部の挿入面同士が近接しているため、配線端部の挿入作業の際に指を挿入方向へ動かす空間幅が狭くなり、作業性が低下してしまうという課題がある。
また、非防水型の火災感知器にあっては、天井裏で結露等により生じた水が上記配線を伝わって端子台に至り、異なる電位の配線間で短絡を起こすおそれがあるという課題があった。
【0008】
また、配線は0.9mmや1.2mmなどの単線が用いられるが、電気的且つ物理的に端子へ確実に結線させるため、配線の被膜を端部から0.8cm~1.2cmほど剥がした状態で配線を感知器の端子へ差し込む。このとき、端子台にも配線との電気的接触を確実にするための機構や配線が抜けないようにするための機構を設ける必要がある。従って、小型化が望まれる感知器において、端子台の必要容積は従来と然程変わらず、感知器内で占める割合が大きいため、その端子台の配置等に工夫を設ける必要があった。
【0009】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、配線接続の作業性を低下させることなく筐体の小型化を図ることができる火災感知器を提供することにある。
本発明の他の目的は、天井裏で結露等により生じた水が上記配線を伝わって端子台まで流れたとしても配線間の短絡を起こしにくくすることができる火災感知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、
外部からの配線の差込み穴を有し、差し込まれた配線が接触される端子を内蔵する複数の端子台を備えた火災感知器において、
前記複数の端子台のうち2つの端子台は、ハの字状であって端子台の差込み穴が形成されている面の延長面が感知器中心付近で交わるよう所定の角度を有した状態で配設したものである。
【0011】
より具体的には、有底筒形の本体ケースと、該本体ケースの開口側を覆うカバー部材とからなる筐体の内部に、火災の検知用素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納されている火災感知器において、
前記本体ケースには、底板の周縁部の一部を切り欠いた切欠き部が設けられ、
前記切欠き部に対応して、前記本体ケースには、外部からの配線の差込み穴を有し、差し込まれた配線が接続される端子を内蔵する2つの端子台が配設され、
前記2つの端子台の前記差込み穴が形成されている面が、60度~120度の範囲で所定の角度をなすように前記2つの端子台が配設されているように構成したものである。
【0012】
上記のような構成を有する火災感知器によれば、2つの端子台に配線端部を挿入する方向が異なるため配線接続作業が容易であるとともに、端子台の差込み穴形成面が大きく筐体の外側を向くことがないため、端部を差し込んだ配線を大きく変形させる必要がないので、配線の変形に伴う外側への張り出しが少なくて済み、その分筐体を小型化することができるようになる。
【0013】
また、本体ケースが切欠き部を有し、切欠き部に対応して2つの端子台が配設されているため、切欠き部を利用して配線を本体ケースの中央側へ集めて取り付け面(天井面等)に形成されている開口に挿通させることができ、配線接続作業が容易となる。
なお、2つの端子台の差込み穴が形成されている面がなす角度の望ましい範囲は、80度~100度であり、より望ましくはほぼ90度の角度となるように配設する。
【0014】
また、望ましくは、前記切欠き部は、前記2つの端子台の前記差込み穴が形成されている面に対応して形成され、
前記本体ケースの底板の前記切欠き部の縁には、前記差込み穴が形成されている面よりも前記底板の延長方向へ突出する庇部が形成されているようにする。
かかる構成によれば、本体ケースの切欠き部の縁に設けた庇部によって、端子台に接続される配線の折曲箇所を差込み穴から遠ざけることができ、それによって配線を伝わって流れて来た水滴が端子台の内部に入り込んで短絡や錆の発生による接触不良などの不具合な事象を引き起こすのを防止することができる。
【0015】
また、望ましくは、前記2つの端子台のうち少なくとも一方には複数の差込み穴が設けられ、
前記複数の差込み穴が設けられた端子台の差込み穴の形成面には段差が形成され、
前記複数の差込み穴は、当該端子台の異なる段差面にそれぞれ形成されているように構成する。
かかる構成によれば、複数の差込み穴同士の距離が長くなるため、複数の配線を伝わって流れて来た水滴が端子台の差込み穴形成面に達したとしても水滴同士がくっつきにくくなり、端子間が短絡するのを防止することができる。
【0016】
さらに、望ましくは、前記カバー部材には、水抜き穴および所定の隙間を有して当該水抜き穴を覆う突起が設けられているように構成する。
かかる構成によれば、水抜き穴から筐体内部の部品や構造が見えてしまうのを防止するとともに、虫などの異物の侵入を防止することができるようになる。また、筐体外部の光が水抜き穴より目隠し用突起の表面(下面)に当たることで、カバーの表面の明るさと遜色のない明るさになり、水抜き穴が黒く見えてしまい感知器の見映えが悪くなるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る火災感知器によれば、配線接続の作業性を低下させることなく筐体の小型化を図ることができる。また、天井裏で結露等により生じた水が上記配線を伝わって端子台まで流れたとしても配線間の短絡を起こしにくくすることができる。さらに、感知器のカバーに設けられた水抜き穴から虫などの異物が進入したり内部構造が見えて外観を損ねたりすることがないようにすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用した熱感知器の一実施形態を示すもので、(A)は感知器を正面側から見たときの外観を示す斜視図、(B)は(A)の感知器のカバーを外した状態を示す斜視図である。
図2図1の実施形態の熱感知器のカバーを外した状態を示す正面図である。
図3】実施形態の熱感知器を構成する本体ケースの背面側の構造を示すもので、(A)は本体ケースの外観を示す斜視図、(B)は本体ケースに配線を接続した状態を示す斜視図である。
図4】実施形態の熱感知器を構成する本体ケース背部の端子台に対応して設けられている庇部の作用を説明するための図である。
図5】実施形態の熱感知器を構成する端子台に設けられている段差の作用を説明するための図である。
図6】(A)は実施形態の熱感知器を構成する化粧カバーに設けられている水抜き穴の位置を示す正面図、(B)は水抜き穴に対応して外カバーに設けられている目隠し用突起の位置を示す正面図である。
図7図6(A)に示されている水抜き穴と図6(B)に示されている目隠し用突起との関係を示す断面側面図である。
図8】(A)~(C)は従来の火災感知器における端子台の差込み穴を有する面の配置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る火災感知器を熱感知器に適用した場合の一実施形態について説明する。図1(A)には実施形態の熱感知器を前面側から見た斜視図が、図1(B)には実施形態の熱感知器の化粧カバーを外した状態の斜視図が示されている。なお、図1(A)および(B)に示す感知器は、配線を接続する前の状態である。以下の図面を用いた説明では、感知器を天井面に設置した状態で床を向く側を下、天井を向く側を上として説明する。
【0020】
なお、本実施形態の熱感知器10は、熱感知素子としてサーミスタを用い火災に伴い発生した熱によって熱せられた空気がサーミスタに接触することで生じる電気抵抗の変化を検出して火災を検知可能な感知器であり、建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。
【0021】
本実施形態の熱感知器10は、図1(B)に示すように、建造物の天井面に取り付けられる有底筒形の本体ケース11と、中央にサーミスタの先端部を覆うプロテクタ部12Aを有し前記本体ケース11の開口側の中央部分を覆う外カバー12と、該外カバー12の周縁部を覆いつつ天井面の取り付けネジや配線を隠すための化粧カバー13(図1(A)参照)とを備え、本体ケース11と外カバー12と化粧カバー13とにより内部に収容空間を有する筐体が形成される。
【0022】
また、本実施形態の熱感知器10は、前記筐体内に収容された回路基板14(図7参照)に実装されたサーミスタ15と、該サーミスタ15が挿通可能な挿通孔を有し上端が回路基板14の表面に接するように配設されたすり鉢状をなす内カバー16を備える。
内カバー16はポリカーボネート樹脂等の透光性材料で形成されているとともに、回路基板14上には動作状態報知用のLED(発光ダイオード)が実装されており、LEDの光が内カバー16に導光されて内カバー16全体から光が出射され、感知器が作動中であることを表示することができるようになっている。
【0023】
筐体内に収容された回路基板14は、上面および下面に火災感知のための電子回路を構成する抵抗や容量、IC(半導体集積回路)などの電子部品が実装されるプリント配線基板により構成され、回路基板のほぼ中央にサーミスタ15のリード端子の先端が半田付け等によって接続されている。
【0024】
サーミスタ15は、筐体の中央に下向きとなるように配設されており、外カバー12にはこれを保護するプロテクタ部12Aが設けられている。また、熱気流をとらえやすくするため、プロテクタ部12Aにはサーミスタを中心にして放射状の複数(例えば6個)のフィン12bが設けられ、外カバー12の中央には、上記フィン12bの端部を連結するリング状のヘッド部12cが設けられ、該ヘッド部12cの近傍まで上記サーミスタ15の頭部が達するように、サーミスタ15が配設されている。
【0025】
本体ケース11は、図2に示すように、上面視でほぼ円形をなしているが、外部からの配線を挿通するために底板の周縁部の一部が切り欠かれているとともに、図3(A)および(B)に示すように、中央に上記切欠きと連続するようにU字状の凹部11Aが形成されている。そして、本体ケース11には、図1(B)に示すように、上記切欠きに対応して、外部からの配線を接続するための端子台(ボックス)20A,20Bが設けられている。具体的には、端子台20A,20Bは、それぞれ配線の芯線端部を差し込むための端子差込口20a,20bを備えており、端子差込口20a,20bが切欠きの内側を向くように配設されている。
【0026】
なお、端子台20A,20Bの内部には、導電性材料からなりバネ性を有する端子が設けられており、差込口20a,20bから挿入された配線の芯線が接触されこれを挟み込むことで電気的な導通状態を確保するように構成されている。また、端子台20A,20B内の端子は、図示しないリード線もしくはネジ等によって、前記回路基板の所定の部位または端子に電気的に接続されている。
【0027】
本実施形態の熱感知器においては、図2に示すように、端子台20A,20Bの端子差込口を有する面が90度の角度をなすように設定されている。2つの面がこのような角度に設定されることで、端子差込口(20a,20b)に配線の芯線端部を差し込む際に、差込み方向が90度ずれることで、操作スペースが確保されて、差込み作業が容易になる。
【0028】
また、端子差込口20a,20bに芯線端部を差し込んだ後、配線21は、図3(B)に示すように、中央にU字状の凹部11Aに集まるように変形されて束ねられた状態で、天井面等に設けられている開口30(図1(B)参照)に挿通されることになるが、端子台20A,20Bの端子差込口20a,20bを有する面のなす角度が90度に設定されることで、端子台20A,20Bに差し込まれた配線21の折り曲げ部21aが外周方向外側へ膨らむのが抑えられ、それによって感知器の小型化が可能になる。
【0029】
なお、端子台20A,20Bの端子差込口20a,20bを有する面のなす角度は90度に限定されるものでなく、ハの字状であって端子台の差込み穴が形成されている面の延長面が感知器中心付近で交わるような角度であれば上記と同様な効果が得られる。つまり、端子台20A,20Bの端子差込口20a,20bを有する面のなす角度は、筐体の径の大きさにもよるが、180度よりも小さいつまり180度以上でなければ良く、望ましくは60度~120度のような範囲、より望ましい角度範囲は80度~100度である。
【0030】
さらに、本実施形態の熱感知器においては、図1(B)および図2に示されているように、一方の端子台20Aに対応して、本体ケース11の上記切欠きの縁に、切欠きの内側へ向かって突出する上面視で三角形(山形)をなす庇部11Bが形成されている。この庇部11Bが設けられていることで、端子台20Aに差し込まれた配線21が天井面等に設けられている開口に向かうように変形された際に、上記切欠きの縁から端子差込口(20a,20b)までの距離が充分に確保されるようになる。
【0031】
そのため、庇部11Bがない場合には、図4(A)に示すように、天井側から配線21を伝わって流れて来た水滴Dが端子差込口(20a,20b)に達して2つの端子間を短絡させるおそれがあるが、庇部11Bがある場合には、図4(B)に示すように、配線21を伝わって流れて来た水滴Dは端子差込口(20a,20b)に達する前に下方へ落下して、短絡を生じるおそれが少なくなる。
なお、他方の端子台20Bに対応して切欠きの縁に庇部11Bが設けられていないのは、本実施形態の熱感知器においては、端子台20B内の2つの端子は同電位の端子であるため、短絡しても回路の動作に影響しないためである。
【0032】
さらに、本実施形態の熱感知器においては、図1(B)および図2に示されているように、端子台20Aには、2つの端子差込口20a,20bのある面に段差22が形成されている。このように段差22が形成されていることにより、段差22がない場合には、図5(A)に示すように、天井側から2本の配線21A,21Bを伝わって流れて来た水滴Dが端子差込口(20a,20b)の近傍でくっついて2つの端子間を短絡させるおそれがあるが、段差22がある場合には、図5(B)に示すように、2本の配線21A,21Bを伝わって流れて来た水滴Dが端子差込口(20a,20b)の近傍でくっつきにくくなり、短絡が発生しにくくなる。
なお、他方の端子台20Bに段差が設けられていないのは、前述したように本実施形態の熱感知器においては、端子台20B内の2つの端子は同電位の端子のためである。
【0033】
また、本実施形態の熱感知器においては、図6(A)に示すように、上記庇部11Bに対応して、化粧カバー13の上記庇部11Bの下方位置に相当する部位に、水抜き穴13aが形成されており、配線21を伝わって流れて来て庇部11Bの近傍にて落下した水滴を上記水抜き穴13aから速やかに外部へ排出できるように構成されている。
さらに、図6(B)に示すように、上記水抜き穴13aに対応して外カバー12の円筒部の外周面には、径方向外側へ向かって突出する目隠し用突起12aが設けられている。
【0034】
なお、目隠し用突起12aの大きさは水抜き穴13aよりも一回り大きな寸法に設定されるとともに、目隠し用突起12aと水抜き穴13aとは、僅かな隙間(例えば数mm)を有するように形成されている。その結果、突起12aによって水抜き穴13aから筐体内部の部品や構造が見えてしまうのを防止するとともに、虫などの異物の侵入を防止することができるようになる。また、筐体外部の光が水抜き穴13aより目隠し用突起12aの表面(下面)に当たることで、カバーの表面の明るさと遜色のない明るさになり、水抜き穴13aが黒く見えてしまうのを回避することができる。
【0035】
特に制限されるものでないが、化粧カバー13には、上記水抜き穴13aと同様な水抜き穴13b,13cが、120度の間隔をおいて形成されている。そして、水抜き穴13b,13cは外カバー12によって目隠しされている。
さらに、上記水抜き穴13aは、図7に示すように、外カバー12のプロテクタ部12Aのフィン12bの延長線上に位置するように形成されている。水抜き穴13b,13cも同様である。これにより、水抜き穴13a,13b,13cから流れ出た水が外カバー12の表面に貼りついたとしても、近傍にフィン12bがあるため、そのフィンを伝わって流下することによって感知器の筐体から速やかに落下させることができる。
【0036】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、本体ケース11の背面側に2個の端子台20A,20Bを設けた熱感知器を示したが、端子台の数は2個に限定されず、3個以上であっても良い。そして、その場合、任意の2個の端子の前記差込み穴が形成されている面が60度~120度の範囲で所定の角度をなすように、端子台が配設されていれば良い。さらに、水抜き穴の数も、水抜きが必要な端子差込口の数以上あればよい。
【0037】
また、水抜き穴が複数存在する場合、図3に示すように、係合部11cも水抜き穴と同じ数だけ設けることで、どの位置から外カバーを取り付けたとしても、水抜き穴が所定の位置となるように設定できる。本実施例においては、水抜き穴13a~13cと係合部11cがそれぞれ120度ずつ等間隔に配置されることによって、どの位置から外カバーを取り付けたとしても水抜きが必要な端子台に対応する位置に水抜き穴が配設され、感知器内部が見えないように覆い隠すことができる。このような構成以外にも、水抜き穴2つと係合部2つがそれぞれ180度離れて配置された構成等であってもよい。
【0038】
さらに、例えば本実施例における端子差込口20bが、水抜きが必要な端子台になった場合においては、端子差込口20aと20bのそれぞれに対応する位置として30度ほど離して水抜き穴を配置し、それを各係合部に合わせて120度ずつ離して合計6つの水抜き穴を配置することによって、どの位置から外カバーを取り付けたとしても水抜き穴が端子差込口に対応する位置に配設され、感知器内部を覆い隠すことができる。
なお、上記実施形態では、本発明を熱感知器に適用したものを説明したが、煙感知器や赤外線式感知器など他のタイプの火災感知器に利用することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 火災感知器
11 本体ケース
11A 凹部
11B 庇部
11c 係合部
12 外カバー(カバー部材)
12A プロテクタ部
12a 目隠し用突起
12b フィン
13 化粧カバー(カバー部材)
13a 水抜き穴
15 サーミスタ(火災検知用素子)
16 内カバー
20A,20B 端子台
20a,20b 端子差込口
21A,21B 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8