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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071272
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】電子機器及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
H02J7/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180138
(22)【出願日】2020-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】518133201
【氏名又は名称】富士通クライアントコンピューティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】特許業務法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 基樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕道
(72)【発明者】
【氏名】小山 朋史
(72)【発明者】
【氏名】久保田 透
(72)【発明者】
【氏名】森田 晃
(72)【発明者】
【氏名】福田 秀夫
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA02
5G503CA04
5G503CA14
5G503CC02
5G503DA13
5G503EA05
5G503GB03
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】NVDC方式の昇降圧回路を含む電子機器において、低電力電源によって給電及び内蔵バッテリの充電を行う際の不具合の発生を抑制する。
【解決手段】NVDC方式の昇降圧回路11は、外部電源15から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力する。内蔵バッテリ12は、第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに充電電流が第1の値より小さい第2の値となる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される。制御装置13は、過放電状態である内蔵バッテリ12のバッテリ電圧が、予備充電モードによる充電により、過放電状態を脱する所定の値に達しても、定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力するNVDC方式の昇降圧回路と、
前記第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに前記充電電流が前記第1の値より小さい第2の値となる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される内蔵バッテリと、
前記過放電状態である前記内蔵バッテリのバッテリ電圧が、前記予備充電モードによる充電により、前記過放電状態を脱する所定の値に達しても、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる制御装置と、
を有する電子機器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記バッテリ電圧が前記所定の値に達した場合、前記充電電流を前記第2の値以上、かつ、前記第1の値よりも小さい電流に維持させる制御を行うことで、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御装置は、前記定電流充電モードが開始されるまで、前記電子機器の起動を抑止する、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御装置は、前記外部電源と前記電子機器とが接続した状態で、前記電子機器の起動中に、前記内蔵バッテリの前記バッテリ電圧が前記所定の値よりも大きい他の所定の値以下に低下した場合、前記電子機器に含まれる負荷回路における電力負荷を抑制する制御、または前記充電電流を前記定電流充電モードにおける前記第1の値より小さく、かつ、前記第2の値よりも大きい電流に維持させる制御を行う請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
外部電源から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力するNVDC方式の昇降圧回路と、前記第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに前記充電電流が前記第1の値より小さい第2の値となる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される内蔵バッテリと、を含む電子機器に、
前記過放電状態である前記内蔵バッテリのバッテリ電圧が、前記予備充電モードによる充電により、前記過放電状態を脱する所定の値に達しても、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる、
処理を実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
外部より供給される電源電圧が広い範囲で変動する場合でも、電源電圧を適宜、昇降圧することで電子機器の駆動用の電源電圧を一定に保ち、電子機器を駆動可能な昇降圧式の回路方式として、NVDC(Narrow Voltage Direct Charging)方式が知られている。幅広い電源電圧を採り得る給電規格であるUSB(Universal Serial Bus) PD(Power Delivery)の普及に伴い、NVDC方式の昇降圧回路は、様々な電子機器において採用されている。たとえば、USB PD 3.0では、5V、9V、15V、20Vの電源電圧を採り得る。
【0003】
また、近年、USB Type-Cの普及に伴い、USB Type-CコネクタのVbus端子より電源電圧を受電することや、その電源電圧により内蔵バッテリの充電を実施できる仕様の電子機器が普及している(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、NVDC方式の昇降圧回路を用いた電子機器では、外部より供給される電源電圧はそのまま電子機器の駆動用の電源電圧としてバイパスせずに、適切な電圧へと昇降圧される。特に、リチウムイオン式の内蔵バッテリを搭載した電子機器では電子機器の駆動用電源が内蔵バッテリの充電用電源を兼ねるため、電子機器の駆動用の電源電圧は、内蔵バッテリのバッテリ電圧に近い値へと昇降圧される。このような内蔵バッテリを備えた電子機器において、内蔵バッテリの残容量が著しく低い「デッドバッテリ状態」のとき、バッテリ電圧に合わせる形で、電子機器の駆動用の電源電圧が非常に低い状態になる。
【0005】
このとき、従来の携帯電話などで利用されてきた5V充電器などの給電能力の低い外部電源(以下、低電力電源という場合もある)によって給電及び内蔵バッテリの充電を行う際に、以下に示すような不具合が発生することがある。
【0006】
5V充電器は、旧来のUSB3.0の仕様にしたがった、電圧が5V、電流が0.9Aである4.5Wの出力仕様をもつ。USB PD 3.0では、4.5Wの給電を許容しているが、このような低い電力を受電している状態では、電子機器の電力負荷の急変動が発生すると、供給電力不足からNVDC方式の昇降圧回路による昇圧が追い付かなくなる場合がある。このような場合、NVDC方式の昇降圧回路の出力電圧、すなわち、電子機器の駆動用の電源電圧が必要最低限の電圧以下までドロップする可能性がある。
【0007】
また、リチウムイオン電池においては、その残容量によって、予備充電モード、定電流充電モード、定電圧充電モードの3つの充電モードを使い分けて充電されることが多い。予備充電モードでは、トリクル充電とプリチャージの2段階の大きさの充電電流を用いて行われる。予備充電モードから定電流充電モードへ移行する際には、充電電流量が急激に増大する(後述の図1参照)。このときも、供給電力の不足からNVDC方式の昇降圧回路による昇圧が追い付かなくなる場合がある。このような場合にも、NVDC方式の昇降圧回路の出力電圧、すなわち、電子機器の駆動用の電源電圧が必要最低限の電圧以下までドロップする可能性がある。
?このように、電子機器の駆動用の電源電圧が必要最低限の電圧値以下になった場合、電子機器のシステムがシャットダウンしてしまう可能性がある。
【0008】
従来の電子機器では、上記のような不具合を避けるために、特に、内蔵バッテリの残容量が著しく低いデッドバッテリ状態のとき、外部からの供給電力が低い場合、受電を許可しないように受電回路を制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-133976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、デッドバッテリ状態のとき、上記のような不具合を避けるために低電力電源による受電を許可しないように受電回路を制御する場合、5V充電器などの低電力電源によって、給電することも、内蔵バッテリを充電することもできない。つまり、5V充電器しか手元にない場合はデッドバッテリ状態となった装置はもはや起動ができなくなってしまう。
【0011】
1つの側面では、NVDC方式の昇降圧回路を含む電子機器において、低電力電源によって給電及び内蔵バッテリの充電を行う際の不具合の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの案では、NVDC方式の昇降圧回路と、内蔵バッテリと、制御装置を有する電子機器が提供される。
NVDC方式の昇降圧回路は、外部電源から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力する。内蔵バッテリは、第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに充電電流が第1の値より小さい第2の値となる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される。制御装置は、過放電状態である内蔵バッテリのバッテリ電圧が、予備充電モードによる充電により、過放電状態を脱する所定の値に達しても、定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる。
【発明の効果】
【0013】
1態様によれば、低電力電源によって給電及び内蔵バッテリの充電を行う際の不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態の電子機器の一例を示す図である。
図2】予備充電モードから定電流充電モードへの移行時に電力負荷の急変動が生じた場合のバッテリ電圧、電子機器の駆動用の電源電圧、充電電流の時間変化の例を示す図である。
図3】第1の実施の形態の電子機器の制御処理の一例の流れを示すフローチャートである。
図4】第2の実施の形態の電子機器の制御処理の一例の流れを示すフローチャートである。
図5】第3の実施の形態の電子機器の制御処理の1つ目の例を示すフローチャートである。
図6】第3の実施の形態の電子機器の制御処理の2つ目の例を示すフローチャートである。
図7】第3の実施の形態の電子機器の制御処理の3つ目の例を示すフローチャートである。
図8】第3の実施の形態の電子機器の制御処理の4つ目の例を示すフローチャートである。
図9】第3の実施の形態の電子機器の制御処理の5つ目の例を示すフローチャートである。
図10】第3の実施の形態の電子機器の制御処理の4つ目の例を適用した場合の効果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の電子機器の一例を示す図である。
【0016】
電子機器10は、たとえば、PC(Personal Computer)、ノートPC、タブレット端末、スマートフォン、撮像装置などであるが、これらの機器に限定されるものではない。
電子機器10は、NVDC方式の昇降圧回路11、内蔵バッテリ12、制御装置13、負荷回路14を有する。
【0017】
NVDC方式の昇降圧回路11は、外部電源15から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力する。外部電源15は、たとえば、USB PDに対応した充電器である。外部電源15として、5V充電器などの低電力電源を用いることもできる。昇降圧回路11は、外部電源15から供給された第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を、電子機器10の駆動用の電源電圧として用いるために、第1の電源電圧を、たとえば、負荷回路14の動作電圧に合わせて昇圧または降圧する。昇降圧回路11が出力する第2の電源電圧は、内蔵バッテリ12の充電用の電圧としても用いられる。
【0018】
内蔵バッテリ12は、たとえば、リチウムイオン電池などの2次電池である。内蔵バッテリ12は、上記の第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに充電電流が第1の値より小さい第2の値となる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される。なお、図示が省略されているが、内蔵バッテリ12は、バッテリ電圧に基づいて各充電モードの切り替えを制御する制御回路を含む。内蔵バッテリ12は、制御装置13と通信する機能も有する。内蔵バッテリ12は、たとえば、バッテリ電圧やバッテリ残量などのバッテリ情報を、制御装置13に送信する。
【0019】
図1には、内蔵バッテリの充電モードの一例が示されている。図1のグラフにおいて、縦軸は電圧[V]または電流[mA]を示し、横軸はバッテリ残量を示す。
リチウムイオン電池など内蔵バッテリ12は、バッテリ電圧が所定の値(図1の例では電圧値V2)に達するまで過放電状態(デッドバッテリ状態を含む)となり、予備充電モードによる充電が行われる。予備充電モードでは、内蔵バッテリ12に含まれる不良バッテリセルの検出処理も行われる。なお、図1の例では、予備充電モードは、バッテリ電圧が電圧値V1に達するまでのトリクル充電とバッテリ電圧が電圧値V2に達するまでのプリチャージとがある。トリクル充電における充電電流は電流値I1であり、プリチャージにおける充電電流は電流値I2(>I1)である。前述の充電電流の第2の値は、図1の例では、電流値I1または電流値I2に相当する。
【0020】
バッテリ電圧が電圧値V2に達すると、内蔵バッテリ12内の図示しない制御回路の通常の制御では、充電モードは定電流充電モードとなり、充電電流は電流値I2から大幅に増加し、前述の第1の値(図1の例では電流値I3)となる。
【0021】
バッテリ電圧がさらに上昇し電圧値V3に達すると、定電圧充電モードによる充電が行われ、バッテリ電圧は電圧値V3のままで、充電電流が徐々に減少していく。
上記のように、内蔵バッテリ12における通常の制御では、予備充電モードから定電流充電モードへ移行する際には充電電流量は、急激に増大する。このとき、外部電源15として、5V充電器などの低電力電源を用いている場合、電力負荷の急変動が生じバッテリ電圧が低下すると、供給電力の不足から、NVDC方式の昇降圧回路11による昇圧が追い付かなくなる場合がある。このような場合、NVDC方式の昇降圧回路11の出力電圧、すなわち、電子機器10の駆動用の電源電圧が必要最低限の電圧(以下安定動作下限値という場合もある)以下までドロップする可能性がある。
【0022】
図2は、予備充電モードから定電流充電モードへの移行時に電力負荷の急変動が生じた場合のバッテリ電圧、電子機器の駆動用の電源電圧、充電電流の時間変化の例を示す図である。縦軸は電圧または電流を示し、横軸は時間を示す。
【0023】
予備充電モードから定電流充電モードへの移行時に、電力負荷の急変動(たとえば、100μs程度の間に瞬間的に生じる電力負荷の変動)が生じると、図2の例では電子機器10の駆動用の電源電圧が、安定動作下限値以下に下がってしまっている(図2の時刻t1)。この場合、電子機器10のシステムがシャットダウンしてしまう可能性がある。電力負荷の急変動は、たとえば、負荷回路14がCPU(Central Processing Unit)の場合、ターボブースト機能により動作周波数を引き上げるときに生じ、負荷回路14がUSBデバイスの場合、USBデバイスへの給電開始時に生じる。
【0024】
制御装置13は、上記のような不具合を解消するための制御を行う。なお、図示が省略されているが、制御装置13に対しても、外部電源15または内蔵バッテリ12から電力が供給される。
【0025】
制御装置13は、たとえば、マイクロコントローラであり、記憶部13aと処理部13bを有する。
記憶部13aは、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリを含む。記憶部13aは、処理部13bが実行する電子機器10を制御するための制御プログラムや、制御プログラムを実行する際に用いる各種の情報(たとえば、後述の所定期間などの情報)を記憶する。
【0026】
処理部13bは、CPUやDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサにより実現される。ただし、処理部13bは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの特定用途の電子回路を含んでもよい。プロセッサは、RAMなどのメモリに記憶されたプログラムを実行する。たとえば、制御プログラムが実行される。
【0027】
制御装置13は、電子機器10の起動前に、前述の過放電状態である内蔵バッテリ12のバッテリ電圧が、予備充電モードによる充電により、過放電状態を脱する所定の値に達しても、定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる。たとえば、制御装置13は、内蔵バッテリ12から受信したバッテリ情報に基づいて、バッテリ電圧が図1の電圧値V2に達したことを検出した場合、定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる。
【0028】
遅延させる手法として、たとえば、以下の2つがある。
1つ目の遅延手法は、内蔵バッテリ12に予備充電モードをそのまま継続させる手法である。つまり、制御装置13は、バッテリ電圧が上記の所定の値(図1の例では電圧値V1)に達した場合、充電電流を上記の第2の値(図1の例では電流値I2)に維持させる。これにより、予備充電モードから定電流充電モードへの切り替えが遅延(または抑制)される。この場合、たとえば、所定期間経過後に定電流充電モードの充電が開始されたときに、バッテリ電圧は電圧値V2よりも上昇しており、これに伴って電子機器10の駆動用の電源電圧もバッテリ電圧が電圧値V2に達したときよりも上昇している。そのため、電力負荷の急変動が生じても、電子機器10の駆動用の電源電圧が上記の安定動作下限値以下に引き下がることを抑制できる。
【0029】
2つ目の遅延手法は、内蔵バッテリ12に充電電流を上記の第2の値(図1の例では電流値I2)より大きく第1の値(図1の例では電流値I3)よりも小さい電流に維持させる手法である。つまり、制御装置13は、充電電流を絞る。これにより、充電電流の急激な増大が抑制されるため、NVDC方式の昇降圧回路11による昇圧が追い付かなくなる、という問題の発生を抑制できる。このため、電力負荷の急変動によりバッテリ電圧が低下しても、電子機器10の駆動用の電源電圧が上記の安定動作下限値以下に引き下がることを抑制できる。なお、制御装置13は、電流値I2から電流値I3まで段階的に充電電流の値を引き上げるように内蔵バッテリ12を制御するようにしてもよい。
【0030】
定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる期間は、上記のような電力負荷の急変動により生じる可能性のある電子機器10の駆動用の電源電圧の低下の大きさなどに基づいて、適宜設定してもよい。また、制御装置13は、負荷回路14の電力負荷の大きさを検出し、電力負荷の大きさが所定の閾値以上である間、または電子機器10が起動中である場合は、上記の遅延を行うようにしてもよい。
【0031】
なお、制御装置13は、定電流充電モードが開始されるまで、電子機器10の起動を抑止するようにしてもよい。たとえば、制御装置13は、負荷回路14に対して動作の開始を許可しない旨の信号を送る。これにより、定電流充電モードが開始されるまでは、電力負荷変動が発生しなくなるため、上記のような不具合の発生をより抑制できる。なお、制御装置13は、定電流充電モードが開始されるまで、負荷回路14の電力負荷を抑制させてもよい。たとえば、負荷回路14がCPUの場合、制御装置13は、負荷回路14に対して、動作周波数を低下させる旨の信号を通知してもよい。
【0032】
また、制御装置13はバッテリ情報に基づいて、昇降圧回路11に対して充電のオンオフを指示する処理などを行う。
負荷回路14は、CPU、USBデバイスなど電力負荷が生じる各種の回路である。負荷回路14には、昇降圧回路11によって昇圧または降圧された上記の第2の電源電圧が供給される。また、負荷回路14は、昇降圧回路11内の図示しないスイッチ素子を介して内蔵バッテリ12に接続されている。このスイッチ素子は、昇降圧回路11内の図示しないプロセッサによりオンまたはオフされる。このスイッチ素子は充電時にオンされるとともに、たとえば、外部電源15が電子機器10に接続されていないときには負荷回路14が、内蔵バッテリ12からの電力供給を受けるためにオンされる。
【0033】
以下、制御装置13の処理部13bが制御プログラムを実行することで行われる制御処理の一例を説明する。
図3は、第1の実施の形態の電子機器の制御処理の一例の流れを示すフローチャートである。以下に示す処理は、電子機器10に外部電源15が接続され、内蔵バッテリ12への充電が開始された場合に行われる処理の例である。
【0034】
制御装置13は、内蔵バッテリ12から受信するバッテリ情報に基づいて、バッテリ電圧が図1の電圧値V2より小さいか否かを判定する(ステップS10)。
制御装置13は、バッテリ電圧が電圧値V2より小さいと判定した場合、電子機器10の起動を抑止する(ステップS11)。
【0035】
その後、制御装置13は、内蔵バッテリ12から受信するバッテリ情報に基づいて、バッテリ電圧が電圧値V2に達したか否かを判定する(ステップS12)。制御装置13は、バッテリ電圧が電圧値V2に達していないと判定した場合、ステップS12の処理を繰り返す。
【0036】
制御装置13は、バッテリ電圧が電圧値V2に達したと判定した場合、内蔵バッテリ12が定電流充電モードによる充電を開始することを、たとえば、所定期間遅延させる(ステップS13)。ステップS13の処理では、たとえば、前述の2つの遅延手法の何れかによる処理が行われる。
【0037】
所定期間経過後、内蔵バッテリ12において定電流充電モードによる充電が開始されるため、制御装置13は、電子機器10の起動の抑止を解除する(ステップS14)。
ステップS10の処理で、バッテリ電圧が電圧値V2以上であると判定された場合、またはステップS14の処理後は、電子機器10から外部電源15が切断されるまで内蔵バッテリ12において充電が継続される(ステップS15:NO)。電子機器10から外部電源15が切断されると(ステップS15:YES)、充電が終了する。
【0038】
なお、上記の処理の順序は一例であり適宜処理の順序を入れ替えてもよい。また、ステップS11,S14の処理はなくてもよい。
以上のような電子機器10によれば、過放電状態である内蔵バッテリ12のバッテリ電圧が、予備充電モードによる充電により、過放電状態を脱する所定の値に達しても、定電流充電モードによる充電が開始されることが遅延される。これにより、低電力電源を用いた給電及び内蔵バッテリの充電を行う際の、予備充電モードから定電流充電モードへの切り替え時の充電電流の増大に起因する不具合の発生を抑制できる。すなわち、低電力電源によって給電及び内蔵バッテリ12の充電を行う際の不具合の発生を抑制することができる。このため、5V充電器のような、供給電力が小さい充電器しか手元にない場合でも、給電や充電を許容することができ、内蔵バッテリ12がデッドバッテリ状態となった電子機器10を起動できるようになる。
【0039】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の電子機器は、図1に示した電子機器10と同じハードウェア構成をもつが、以下に示すような電子機器の制御処理を行う。以下、図1に示した電子機器10の要素と同じ符号を用いて、第2の実施の形態における制御処理を説明する。
【0040】
図4は、第2の実施の形態の電子機器の制御処理の一例の流れを示すフローチャートである。以下に示す処理は、電子機器10に外部電源15が接続され、内蔵バッテリ12への充電が開始されるとともに、電子機器10が起動した場合に行われる処理の例である。
【0041】
制御装置13は、内蔵バッテリ12から受信するバッテリ情報に基づき、バッテリ電圧が、所定の値(以下電圧値V4という)以下であるか否かを判定する(ステップS20)。電圧値V4は、過放電状態を脱する所定の値(図1の電圧値V2)よりも大きく、図1に示した定電圧充電モードにおけるバッテリ電圧の電圧値V3よりも小さい値である。
【0042】
制御装置13は、バッテリ電圧が、電圧値V4以下であると判定した場合、負荷回路14における電力負荷を抑制する制御、または充電電流を減少させる制御を行う(ステップS21)。負荷回路14における電力負荷を抑制する制御が行われる場合、制御装置13は、たとえば、負荷回路14がCPUの場合、動作周波数を低下させる旨の信号を負荷回路14に通知する。充電電流を減少させる制御が行われる場合、制御装置13は、充電電流を、定電流充電モードにおける充電電流の第1の値(図1の電流値I3)より小さい電流に維持させる。維持する電流の値は、第1の実施の形態において説明した2つ目の遅延手法(充電電流を絞る手法)で維持される電流と同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
【0043】
その後、制御装置13は、バッテリ電圧が電圧値V4を上回ったか否かを判定する(ステップS22)。制御装置13は、バッテリ電圧が電圧値V4を上回っていないと判定した場合、ステップS22の処理を繰り返す。なお、この場合、制御装置13は、電力負荷の抑制の度合いを大きくしてもよいし、充電電流を減少する大きさを大きくしてもよい。
【0044】
制御装置13は、バッテリ電圧が電圧値V4を上回ったと判定した場合、負荷回路14における電力負荷を抑制する制御、または充電電流を減少させる制御を解除する(ステップS23)。
【0045】
ステップS20の処理において、バッテリ電圧が電圧値V4以下ではないと判定された場合、またはステップS23の処理後、たとえば、電子機器10の動作終了ボタンが押下されるまではステップS20からの処理が繰り返される(ステップS24:NO)。電子機器10の動作終了ボタンが押下された場合(ステップS24:YES)、電子機器10の動作が終了する。
【0046】
第2の実施の形態の電子機器10によれば、電子機器10の起動中に、バッテリ電圧が過放電状態を脱する所定の値(上記の例では電圧値V2)より大きい他の所定の値(上記の例では電圧値V4)以下に低下した場合、電力負荷を抑制する制御が行われる。または、定電流充電モードにおける充電電流の第1の値(上記の例では電流値I3)より小さい電流に維持させる制御が行われる。これにより、低電力電源を用いて給電及び内蔵バッテリの充電を行う際の、電力負荷の急変動によるバッテリ電圧の低下の度合いを抑えられ、NVDC方式の昇降圧回路11による昇圧が適切に機能し、不具合の発生を抑制できる。このため、5V充電器のような、供給電力が小さい充電器しか手元にない場合でも、給電や充電を許容することができ、内蔵バッテリ12がデッドバッテリ状態となった電子機器10を起動できるようになる。
【0047】
なお、第1の実施の形態における電子機器10の制御処理と、第2の実施の形態における電子機器10の制御処理とを組み合わせてもよい。
(第3の実施の形態)
以下に示す第3の実施の形態では、図1に示した電子機器10の制御装置13による電子機器10の制御処理の他の例を5例、説明する。
【0048】
図5は、第3の実施の形態の電子機器の制御処理の1つ目の例を示すフローチャートである。
制御装置13は動作を開始すると、内蔵バッテリ12が接続されているか否かを判定する(ステップS30)。制御装置13は、内蔵バッテリ12が接続されていないと判定した場合、ステップS30の処理を繰り返す。
【0049】
制御装置13は、内蔵バッテリ12が接続されていると判定した場合、内蔵バッテリ12が正常に認識できるか否かを判定する(ステップS31)。
制御装置13は、内蔵バッテリ12が、たとえば、調整中などにより正常に認識できないと判定した場合、変数nが所定の閾値Nthよりも大きいか否かを判定する(ステップS32)。制御装置13は、変数nが所定の閾値Nthよりも大きいと判定した場合、内蔵バッテリ12が認識不可であるものとして、制御処理を終了する。閾値Nthは、特に限定されるわけではないが、たとえば、Nth=10などに設定される。
【0050】
制御装置13は、n>Nthではないと判定した場合、時間Tだけ待機し(ステップS33)、その後、n=n+1とし(ステップS34)、ステップS31からの処理を繰り返す。時間Tは、特に限定されるわけではないが、たとえば、1000msなどである。
【0051】
制御装置13は、ステップS31の処理において、内蔵バッテリ12が正常に認識されたと判定した場合、内蔵バッテリ12に異常がないか否かを判定する(ステップS35)。制御装置13は、内蔵バッテリ12に異常があると判定した場合、内蔵バッテリ12に異常があるものとして、制御処理を終了する。
【0052】
制御装置13は、ステップS35の処理において、内蔵バッテリ12に異常がないと判定した場合、電子機器10の起動ボタンが、たとえば、ユーザによって押下されたか否かを判定する(ステップS36)。
【0053】
制御装置13は、起動ボタンが押下されたと判定した場合、たとえば、負荷回路14の動作を開始させることで、電子機器10を起動させる(ステップS37)。
制御装置13は、ステップS36の処理において起動ボタンが押下されていないと判定した場合、またはステップS37の処理後、バッテリ電圧が、図1に示した電圧値V2より小さいか否か(予備充電が必要であるか否か)を判定する(ステップS38)。
【0054】
制御装置13は、バッテリ電圧<V2ではないと判定した場合、たとえば、負荷回路14による電力負荷の大きさが所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS39)。
【0055】
制御装置13は、ステップS38の処理においてバッテリ電圧<V2であると判定した場合、またはステップS39の処理において電力負荷≧閾値であると判定した場合、内蔵バッテリ12に予備充電モードによる充電を実施させる(ステップS40)。
【0056】
制御装置13は、電力負荷の大きさが所定の閾値以上ではないと判定した場合、内蔵バッテリ12に定電流充電モードによる充電を実施させる(ステップS41)。
ステップS40,S41の処理後、制御装置13は、内蔵バッテリ12との定期通信を行い(ステップS42)、ステップS36からの処理を繰り返す。ステップS42の処理では、制御装置13は、たとえば、内蔵バッテリ12からバッテリ情報を受信する。
【0057】
上記のような制御処理では、バッテリ電圧が電圧値V2に達しても、電力負荷≧閾値である間は、予備充電モードによる充電が実施されるため、定電流充電モードによる充電が開始されることが遅延される。このため、第1の実施の形態において説明した制御装置13の制御処理を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0058】
図6は、第3の実施の形態の電子機器の制御処理の2つ目の例を示すフローチャートである。図6において、図5に示した制御処理と同じ処理については、同じステップ番号が付されており、これらの処理については説明を省略する。
【0059】
図6に示す制御処理において、制御装置13は、ステップS38の処理において、バッテリ電圧<V2ではないと判定した場合、電子機器10が起動中であるか否かを判定する(ステップS39a)。
【0060】
そして、制御装置13は、電子機器10が起動中であると判定した場合には、内蔵バッテリ12に予備充電モードによる充電を実施させる(ステップS40)。制御装置13は、電子機器10が起動中ではないと判定した場合、内蔵バッテリ12に定電流充電モードによる充電を実施させる(ステップS41)。
【0061】
上記のような制御処理では、バッテリ電圧が電圧値V2に達しても、電子機器10が起動中の場合には、予備充電モードから定電流充電モードには切り替わらない。このため、電力負荷の変動が予備充電モードから定電流充電モードへの切り替わりタイミング(充電電流が急増するタイミング)に重なることを抑制できる。このように、定電流充電モードによる充電が開始されることが遅延されることで、第1の実施の形態において説明した制御装置13の制御処理を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0062】
図7は、第3の実施の形態の電子機器の制御処理の3つ目の例を示すフローチャートである。図7において、図5に示した制御処理と同じ処理については、同じステップ番号が付されており、これらの処理については説明を省略する。
【0063】
図7に示す制御処理では、制御装置13は、ステップS39の処理において電力負荷≧閾値であると判定した場合、内蔵バッテリ12に対して充電電流を絞った充電を行わせる(ステップS41a)。ステップS41aの処理では、制御装置13は、充電電流を、たとえば、図1の電流値I2より大きく、電流値I3よりも小さい値にさせる。ステップS41aの処理後、前述のステップS42の処理が行われる。
【0064】
上記のような制御処理では、予備充電モードから定電流充電モードへと切り替わる際に、充電電流の急激な増大が抑制されるため、第1の実施の形態において説明した制御装置13の制御処理を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0065】
図8は、第3の実施の形態の電子機器の制御処理の4つ目の例を示すフローチャートである。図8において、図5に示した制御処理と同じ処理については、同じステップ番号が付されており、これらの処理については説明を省略する。
【0066】
図8に示す制御処理では、制御装置13は、ステップS36の処理において、起動ボタンが押下されたと判定した場合、バッテリ電圧が電圧値V4以下であるか否かを判定する(ステップS36a)。電圧値V4は、第2の実施の形態において説明したように、図1の過放電状態を脱する電圧値V2よりも大きく、定電圧充電モードにおけるバッテリ電圧の電圧値V3よりも小さい値である。
【0067】
制御装置13は、ステップS36aの処理において、バッテリ電圧≦V4であると判定した場合、負荷回路14における電力負荷を抑制する制御を行う(ステップS36b)。ステップS36bの処理では、制御装置13は、たとえば、負荷回路14がCPUの場合、動作周波数を低下させる旨の信号を負荷回路14に通知する。
【0068】
ステップS36aの処理において、バッテリ電圧≦V4ではないと判定された場合、または、ステップS36bの処理後、前述のステップS37の処理が行われる。
また、制御装置13は、ステップS38の処理において、バッテリ電圧<V2ではないと判定した場合、バッテリ電圧が電圧値V4以下であるか否かを判定する(ステップS39b)。
【0069】
制御装置13は、ステップS39bの処理において、バッテリ電圧が電圧値V4以下であると判定した場合、電力負荷の抑制を継続させたまま、内蔵バッテリ12に対して、定電流充電モードによる充電を実施させる(ステップS41b)。
【0070】
制御装置13は、バッテリ電圧が電圧値V4以下ではないと判定した場合、内蔵バッテリ12に対して、定電流充電モードによる充電を実施させ(ステップS41c)、負荷回路14における電力負荷の抑制を解除する(ステップS41d)。ステップS41dの処理では、制御装置13は、たとえば、負荷回路14がCPUの場合、動作周波数の低下を解除させる旨の信号の負荷回路14に通知する。
【0071】
ステップS41b,S41dの処理後、前述のステップS42の処理が行われる。
上記のような制御処理では、内蔵バッテリ12のバッテリ電圧が電圧値V4以下に低下した場合、負荷回路14における電力負荷を抑制する制御が行われる。これにより、低電力電源を用いて給電及び内蔵バッテリの充電を行う際の、電力負荷の急変動によるバッテリ電圧の低下の度合いを抑えられ、第2の実施の形態において説明した制御装置13の制御処理を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0072】
図9は、第3の実施の形態の電子機器の制御処理の5つ目の例を示すフローチャートである。図9において、図5に示した制御処理と同じ処理については、同じステップ番号が付されており、これらの処理については説明を省略する。
【0073】
図9に示す制御処理では、制御装置13は、ステップS38の処理において、バッテリ電圧<V2ではないと判定した場合、バッテリ電圧が電圧値V4以下であるか否かを判定する(ステップS39b)。
【0074】
制御装置13は、ステップS39bの処理において、バッテリ電圧が電圧値V4以下であると判定した場合、内蔵バッテリ12に対して、充電電流を絞って(減少させて)充電を実施させる(ステップS41e)。ステップS41eの処理では、制御装置13は、充電電流を、定電流充電モードにおける充電電流の第1の値(図1の電流値I3)より小さい電流に維持させる。維持される電流の値は、第1の実施の形態において説明した2つ目の遅延手法(充電電流を絞る手法)で維持される電流の値と同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
【0075】
制御装置13は、バッテリ電圧が電圧値V4以下ではないと判定した場合、内蔵バッテリ12に対して、定電流充電モードによる充電を実施させる(ステップS41c)。
ステップS41c,S41eの処理後、前述のステップS42の処理が行われる。
【0076】
上記のような制御処理では、内蔵バッテリ12のバッテリ電圧が電圧値V4以下に低下した場合、充電電流を減少させる制御が行われる。これにより、低電力電源を用いて給電及び内蔵バッテリの充電を行う際の、電力負荷の急変動によるバッテリ電圧の低下の度合いを抑えられ、第2の実施の形態において説明した制御装置13の制御処理を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0077】
なお、図5図9に示した制御処理の順序は一例であり適宜処理の順序を入れ替えてもよい。
図10は、第3の実施の形態の電子機器の制御処理の4つ目の例を適用した場合の効果の一例を示す図である。図10は、図2と同様に、予備充電モードから定電流充電モードへの移行時に電力負荷の急変動が生じた場合のバッテリ電圧、電子機器の駆動用の電源電圧、充電電流の時間変化の例を示す図である。縦軸は電圧または電流を示し、横軸は時間を示す。
【0078】
図10に示した制御処理では、予備充電モードから定電流充電モードへの移行時に、バッテリ電圧が電圧値V2より上がっても、電圧値V4を超えるまで、負荷回路14における電力負荷を抑制する制御が行われる。これにより、電力負荷の急変動によるバッテリ電圧の低下の度合いを抑えられ、NVDC方式の昇降圧回路11による昇圧が適切に機能し、電子機器10の駆動用の電源電圧は一定に保たれている。これにより、不具合の発生が抑制される。
【0079】
なお、前述のように、制御処理の処理内容は、制御装置13の処理部13bにプログラム(制御プログラム)を実行させることで実現できる。
プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。記録媒体として、たとえば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどを使用できる。磁気ディスクには、FD(Flexible Disk)及びHDD(Hard Disk Drive)が含まれる。光ディスクには、CD(Compact Disc)、CD-R(Recordable)/RW(Rewritable)、DVD(Digital Versatile Disc)及びDVD-R/RWが含まれる。プログラムは、可搬型の記録媒体に記録されて配布されることがある。その場合、可搬型の記録媒体から他の記録媒体(たとえば、半導体メモリ)にプログラムをコピーして実行してもよい。
【0080】
以上、実施の形態に基づき、本発明の電子機器及び制御プログラムの一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0081】
10 電子機器
11 昇降圧回路
12 内蔵バッテリ
13 制御装置
13a 記憶部
13b 処理部
14 負荷回路
15 外部電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2020-11-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
また、リチウムイオン電池においては、その残容量によって、予備充電モード、定電流充電モード、定電圧充電モードの3つの充電モードを使い分けて充電されることが多い。予備充電モードでは、トリクル充電とプリチャージの2段階の大きさの充電電流を用いて行われる。予備充電モードから定電流充電モードへ移行する際には、充電電流量が急激に増大する(後述の図1参照)。このときも、供給電力の不足からNVDC方式の昇降圧回路による昇圧が追い付かなくなる場合がある。このような場合にも、NVDC方式の昇降圧回路の出力電圧、すなわち、電子機器の駆動用の電源電圧が必要最低限の電圧以下までドロップする可能性がある。
このように、電子機器の駆動用の電源電圧が必要最低限の電圧値以下になった場合、電子機器のシステムがシャットダウンしてしまう可能性がある。
【手続補正書】
【提出日】2021-02-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力するNVDC方式の昇降圧回路と、
前記第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに前記充電電流が前記第1の値より小さい第2の値となる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される内蔵バッテリと、
前記過放電状態である前記内蔵バッテリのバッテリ電圧が、前記予備充電モードによる充電により、前記過放電状態を脱する所定の値に達しても、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる制御装置と、
を有する電子機器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記バッテリ電圧が前記所定の値に達した場合、前記充電電流を前記第2の値以上、かつ、前記第1の値よりも小さい電流に維持させる制御を行うことで、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御装置は、前記定電流充電モードが開始されるまで、前記電子機器の起動を抑止する、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御装置は、前記外部電源と前記電子機器とが接続した状態で、前記電子機器の起動中に、前記内蔵バッテリの前記バッテリ電圧が前記所定の値よりも大きい他の所定の値以下に低下した場合、前記電子機器に含まれる負荷回路における電力負荷を抑制する制御、または前記充電電流を前記定電流充電モードにおける前記第1の値より小さく、かつ、前記第2の値よりも大きい電流に維持させる制御を行う請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
外部電源から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力するNVDC方式の昇降圧回路と、前記第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに前記充電電流が前記第1の値より小さい第2の値となる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される内蔵バッテリと、を含む電子機器に、
前記過放電状態である前記内蔵バッテリのバッテリ電圧が、前記予備充電モードによる充電により、前記過放電状態を脱する所定の値に達しても、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる、
処理を実行させる制御プログラム。
【請求項6】
外部電源から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力するNVDC方式の昇降圧回路と、
前記第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに前記充電電流が前記第1の値より小さい第2の値及び第3の値となる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される内蔵バッテリと、
前記過放電状態である前記内蔵バッテリのバッテリ電圧が、前記予備充電モードによる充電により、前記過放電状態を脱する所定の値に達しても、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる制御装置と、
を有する電子機器。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力するNVDC方式の昇降圧回路と、
前記第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに前記充電電流が前記第1の値より小さい第2の値となる第1のモードと前記充電電流が前記第1の値より小さく前記第2の値よりも大きい第3の値となる第2のモードからなる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される内蔵バッテリと、
前記過放電状態である前記内蔵バッテリのバッテリ電圧が、前記予備充電モードによる充電により、前記予備充電モードに含まれる前記第2のモードを終了させる値であり、かつ、前記過放電状態を脱する所定の値に達しても、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを、前記バッテリ電圧が前記所定の値に達したときに前記定電流充電モードによる充電を開始させた場合の前記第2の電源電圧の低下の大きさに基づいて設定された期間、または前記昇降圧回路に接続される負荷回路の電力負荷の大きさが所定の閾値以上である期間、遅延させる制御装置と、
を有する電子機器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記バッテリ電圧が前記所定の値に達した場合、前記充電電流を前記第2の値以上、かつ、前記第1の値よりも小さい電流に維持させる制御を行うことで、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを遅延させる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御装置は、前記定電流充電モードが開始されるまで、前記電子機器の起動を抑止する、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御装置は、前記外部電源と前記電子機器とが接続した状態で、前記電子機器の起動中に、前記内蔵バッテリの前記バッテリ電圧が前記所定の値よりも大きい他の所定の値以下に低下した場合、前記負荷回路における電力負荷を抑制する制御、または前記充電電流を前記定電流充電モードにおける前記第1の値より小さく、かつ、前記第2の値よりも大きい電流に維持させる制御を行う請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
外部電源から供給される第1の電源電圧を昇圧または降圧した第2の電源電圧を出力するNVDC方式の昇降圧回路と、前記第2の電源電圧によって充電される際に、充電電流が第1の値となる定電流充電モードと、過放電状態のときに前記充電電流が前記第1の値より小さい第2の値となる第1のモードと前記充電電流が前記第1の値より小さく前記第2の値よりも大きい第3の値となる第2のモードからなる予備充電モードと、を含む複数の充電モードにより充電される内蔵バッテリと、を含む電子機器に、
前記過放電状態である前記内蔵バッテリのバッテリ電圧が、前記予備充電モードによる充電により、前記予備充電モードに含まれる前記第2のモードを終了させる値であり、かつ、前記過放電状態を脱する所定の値に達しても、前記定電流充電モードによる充電が開始されることを、前記バッテリ電圧が前記所定の値に達したときに前記定電流充電モードによる充電を開始させた場合の前記第2の電源電圧の低下の大きさに基づいて設定された期間、または前記昇降圧回路に接続される負荷回路の電力負荷の大きさが所定の閾値以上である期間、遅延させる、
処理を実行させる制御プログラム。