(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071299
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/26 20060101AFI20220509BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G06F1/26 306
H02J7/00 Q
H02J7/00 S
G06F1/26 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180184
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮地 基好
【テーマコード(参考)】
5B011
5G503
【Fターム(参考)】
5B011DA06
5B011EB01
5B011KK01
5B011MB16
5G503BB01
5G503EA09
5G503FA14
(57)【要約】
【課題】洪水発生後に早期に使用することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器10は、情報を入出力する入出力部(通信部16)と、入出力部が入力した情報に基づいて電子機器10の水没又は水没の予兆を検知する検知部36と、電池18からメモリ14へのバックアップ電圧の供給と遮断とを切り換える切換部20と、検知部36が水没又は水没の予兆を検知した場合に、切換部20に遮断制御信号を出力してメモリ14へのバックアップ電圧の供給を遮断させる非常時制御部40と、を備える。切換部20は、遮断制御信号が供給された後は、メモリ14へのバックアップ電圧の供給の遮断を維持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリにバックアップ電圧を供給する電池を備える電子機器であって、
情報を入出力する入出力部と、
前記入出力部が入力した情報に基づいて前記電子機器の水没又は水没の予兆を検知する検知部と、
前記電池から前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給と遮断とを切り換える切換部と、
前記検知部が水没又は水没の予兆を検知した場合に、前記切換部に遮断制御信号を出力して前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給を遮断させる非常時制御部と、
を備え、
前記切換部は、前記遮断制御信号が供給された後には、前記遮断制御信号の供給がなくても、前記非常時制御部から接続制御信号が送られてくるまでは前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給の遮断を維持する、電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記切換部は、前記電池から前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給と遮断とを切り換えるラッチングリレーを備える、電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記検知部は、前記電子機器の外に設けられた水没センサの検出信号、インターネットから取得した洪水情報、及び、オペレータに操作される操作ボタンからの操作信号、のうちの少なくとも1つを取得することによって、前記電子機器の水没又は水没の予兆を検知する、電子機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記非常時制御部が行う制御以外の制御を行う主制御部を備え、
前記検知部、前記切換部、前記主制御部、前記非常時制御部及び前記入出力部は、外部電源から供給される電力によって稼働するものであり、
前記電池は、前記外部電源からの電力の供給が遮断された場合に、前記検知部、前記切換部、前記非常時制御部及び前記入出力部に電力を供給する、電子機器。
【請求項5】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記入出力部は、
第1入出力部と第2入出力部とを有し、
前記検知部は、
前記第1入出力部が入力した情報に基づいて前記電子機器の水没又は水没の予兆を検知する第1検知部と、
前記第2入出力部が入力した情報に基づいて前記電子機器の水没又は水没の予兆を検知する第2検知部と、を有し、
前記非常時制御部は、
前記第1検知部が水没又は水没の予兆を検知した場合に、前記第1入出力部を用いて、前記メモリに記録されるデータのバックアップデータを前記電子機器の外部のサーバに出力させる第1制御部と、
前記第2検知部が水没又は水没の予兆を検知した場合に、前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給を遮断させる第2制御部と、を有する、電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器であって、
前記第1制御部及び前記第2制御部が行う制御以外の制御を行う主制御部を備え、
前記第1検知部と前記第1制御部と前記第1入出力部と前記主制御部は、外部電源から供給される電力によって稼働するものであり、
前記第2検知部と前記第2制御部と前記第2入出力部と前記切換部は、前記電池から供給される電力によって稼働するものであり、
前記第2制御部は、前記バックアップデータが前記サーバに送信された後に、前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給を遮断させる、電子機器。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記メモリを保持する第1保持部と、
前記電池と前記切換部を保持する第2保持部と、を備え、
前記第2保持部は、前記第1保持部に対して取り付けと取り外しが可能である、電子機器。
【請求項8】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記メモリ、前記検知部、前記主制御部、前記非常時制御部及び前記入出力部を保持する第1保持部と、
前記電池と前記切換部を保持する第2保持部と、を備え、
前記第2保持部は、前記第1保持部に対して取り付けと取り外しが可能である、電子機器。
【請求項9】
請求項5又は6に記載の電子機器であって、
前記メモリ、前記第1検知部、前記第1制御部及び前記第1入出力部を保持する第1保持部と、
前記電池、前記切換部、前記第2検知部、前記第2制御部及び前記第2入出力部を保持する第2保持部と、を備え、
前記第2保持部は、前記第1保持部に対して取り付けと取り外しが可能である、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリにバックアップ電圧を供給する電池を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
洪水発生時に電子機器ごと水没することがある。電子機器が水没すると、通電部分に電蝕が発生する虞がある。電蝕が発生すると、電子機器の修理が必要となる。その結果、電子機器の復旧に時間がかかる。こうした事態を避けるために、電子機器には電蝕の発生を抑制する仕組みを設けることが求められる。特許文献1には、水没時に電池から電気負荷に放電し、電蝕が発生しないようにする技術が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水没を検出してから電池に蓄積された電荷を電気負荷に放電したとしても、電池の放電が完了するとは限らず、電池に電荷が残った状態で電子機器が水没してしまう可能性がある。電子機器に電飾が発生すると、修理が難しくなり、電子機器の復旧に時間がかかったり、電子機器が使用できなくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、洪水発生後に早期に使用することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、メモリにバックアップ電圧を供給する電池を備える電子機器であって、情報を入出力する入出力部と、前記入出力部が入力した情報に基づいて前記電子機器の水没又は水没の予兆を検知する検知部と、前記電池から前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給と遮断とを切り換える切換部と、前記検知部が水没又は水没の予兆を検知した場合に、前記切換部に遮断制御信号を出力して前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給を遮断させる非常時制御部と、を備え、前記切換部は、前記遮断制御信号が供給された後には、前記遮断制御信号の供給がなくても、前記非常時制御部から接続制御信号が送られてくるまでは前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給の遮断を維持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洪水発生後に電子機器を早期に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る電子機器と周辺機器の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態のプロセッサが行う処理を示すフローチャートである。
【
図3】第2実施形態に係る電子機器と周辺機器の構成を示すブロック図である。
【
図4】第3実施形態に係る電子機器と周辺機器の構成を示すブロック図である。
【
図5】第4実施形態に係る電子機器と周辺機器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による電子機器について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0010】
[1 第1実施形態]
[1.1 電子機器10と周辺機器の構成]
図1は、第1実施形態に係る電子機器10と周辺機器の構成を示すブロック図である。電子機器10は、揮発性メモリを使用するマイクロコンピュータを備える装置、例えば工作機械、パルスコーダ(エンコーダ)、車両等である。以下で説明する各実施形態では、電子機器10として工作機械を想定する。
【0011】
電子機器10は、プロセッサ12、メモリ14、通信部16、電池18及び切換部20を備える。電子機器10は、その他に、モータ等のアクチュエータの駆動回路(いずれも不図示)を備える。電子機器10は、外部電源22から供給される電力によって稼働する。
【0012】
電子機器10の外部には、水没センサ26、操作ボタン28及びサーバ32が設けられる。電子機器10と水没センサ26、及び、電子機器10と操作ボタン28は、有線、無線通信(例えば、近距離無線通信、又は、遠距離無線通信)、又は、インターネットで通信可能に接続される。電子機器10とサーバ32は、インターネット又は専用線を介して通信可能に接続される。
【0013】
水没センサ26は、所定の位置に設けられ、浸水を検出すると、水没した旨を示す検出信号を出力する。従って、電子機器10より水没しやすい場所に水没センサ26を設置することで、電子機器10は、水没を事前に検出することができる。操作ボタン28は、洪水発生時にオペレータが操作するボタンである。操作ボタン28は、オペレータがボタン操作した場合に、操作信号を出力する。サーバ32は、電子機器10からバックアップデータを取得して保存する。
【0014】
プロセッサ12は、基板34に設けられる。プロセッサ12は、メモリ14又は他のメモリに記憶されるプログラムを実行することによって各種機能を実現する。第1実施形態において、プロセッサ12は、検知部36、主制御部38及び非常時制御部40として機能する。
【0015】
検知部36は、水没センサ26が出力する検出信号及び操作ボタン28が出力する操作信号のうちの少なくとも1つを、通信部16を介して取得することによって、電子機器10の水没又は水没の予兆を検知する。なお、通信部16は、インターネットを介して気象情報を取得することが可能である。この場合、検知部36は、気象情報に洪水情報が含まれる場合に、通信部16を介してその気象情報を取得することで、電子機器10の水没又は水没の予兆を検知することができる。
【0016】
主制御部38は、電子機器10の主たる制御、例えばアクチュエータの制御等を行う。つまり、主制御部38は、非常時制御部40が行う制御以外の制御を行う。
【0017】
非常時制御部40は、メモリ14に記憶されるデータのバックアップに関する一連の制御を行う。非常時制御部40は、切換部20に制御信号(例えばパルス信号)を供給して電池18からメモリ14への電圧(バックアップ電圧)の供給と遮断とを切り換える。非常時制御部40は、検知部36によって水没又は水没の予兆が検知されるまでは、メモリ14へのバックアップ電圧が供給される状態を維持する。また、非常時制御部40は、検知部36が水没又は水没の予兆を検知した場合に、メモリ14に記憶されるデータのバックアップを行った後に、切換部20に遮断制御信号を出力してメモリ14へのバックアップ電圧の供給を遮断させる。
【0018】
メモリ14は、基板34に設けられる。メモリ14は、揮発性メモリを有する。メモリ14は、導線44及び切換部20を介して電池18に電気的に接続される。メモリ14は、電子機器10の主たる制御に関わるデータを記憶する。
【0019】
通信部16は、基板34に設けられる。通信部16は、情報を入出力する入出力部として機能する。通信部16は、水没センサ26、操作ボタン28及びサーバ32と通信可能に接続される各種の通信機を有する。通信部16は、水没センサ26が出力する検出信号と操作ボタン28が出力する操作信号を入力してプロセッサ12に送る。また、通信部16は、メモリ14に記憶されるデータのバックアップデータをサーバ32に出力する。なお、通信部16は、インターネットを介して気象情報を取得し、プロセッサ12に送ることも可能である。
【0020】
電池18は、一次電池又は二次電池である。電池18は、メモリ14に対して導線44及び切換部20を介して電圧(バックアップ電圧)を供給する。電池18は、電池保持器42で保持される。電池保持器42は、基板34に設けられる。
【0021】
切換部20は、非常時制御部40が供給する制御信号に応じて、電池18からメモリ14への電圧の供給と遮断とを切り換える装置である。切換部20は、電池18側の導線44aとメモリ14側の導線44bとの電気的な接続と切断とを切り換える。例えば、切換部20は、接続制御信号(例えばパルス信号)が供給されることによってオープン状態からクローズ状態に切り換わり、遮断制御信号(例えばパルス信号)が供給されることによってクローズ状態からオープン状態に切り換わるラッチングリレーである。切換部20は、非常時制御部40から遮断制御信号が供給された後は、遮断制御信号の供給がなくても、接続制御信号が供給されるまではメモリ14への電圧の供給の遮断を維持する。水没時に切換部20が電池18とメモリ14とを切り離すため、メモリ14に電蝕が発生することはない。
【0022】
洪水が発生していない状態であって、主電源がオフ状態であるとき、外部電源22は電子機器10に電力を供給しない。このとき、切換部20がクローズ状態であるため、メモリ14に記憶されるデータは維持される。
【0023】
[1.2 洪水発生時の電子機器10の動作]
図2は、第1実施形態のプロセッサ12が行う処理を示すフローチャートである。洪水発生時に、水没センサ26は検出信号を出力する。又は、オペレータは操作ボタン28を操作する。又は、洪水情報が出される。通信部16は、水没センサ26が出力する検出信号、操作ボタン28が出力する操作信号及び洪水情報の少なくとも1つを入力して検知部36に送る。
【0024】
ステップS1において、検知部36は、水没情報の有無を監視する。水没情報というのは、水没センサ26が出力する検出信号、操作ボタン28が出力する操作信号又は洪水情報である。
【0025】
ステップS2において、検知部36は、電子機器10の水没が発生したか否か、又は、電子機器10が水没する予兆があるか否かを判定する。検知部36は、ステップS1において水没情報を検知した場合に、電子機器10が水没したか、又は、電子機器10が水没する予兆があると判定する。この場合(ステップS2:YES)、処理はステップS3に移行する。一方、検知部36は、ステップS2において水没情報を検知しない場合に、電子機器10が水没していないか、又は、電子機器10が水没する予兆がないと判定する。この場合(ステップS2:NO)、処理はステップS1に戻る。
【0026】
ステップS3において、非常時制御部40は、メモリ14に記憶されるデータのバックアップを行う。ここでは、非常時制御部40は、バックアップデータを作成する。通信部16は、作成されたバックアップデータをサーバ32に出力する。
【0027】
ステップS4において、非常時制御部40は、ステップS3で行うデータのバックアップが終了した後に、切換部20に遮断制御信号を出力してメモリ14へのバックアップ電圧の供給を遮断させる。遮断制御信号を入力した切換部20は、クローズ状態からオープン状態に切り換わり、メモリ14へのバックアップ電圧の供給を遮断する。バックアップ電圧の遮断後、切換部20は、オープン状態を維持する。
【0028】
電子機器10の水没が解消すると、電子機器10の復旧作業が行われる。この際に、非常時制御部40は、オープン状態の切換部20に接続制御信号を出力する。すると、切換部20がオープン状態からクローズ状態に切り換わり、電池18からメモリ14に電圧が供給される。
【0029】
第1実施形態によれば、電子機器10が水没したとしても、電池18からメモリ14に電圧が供給されることはない。このため、メモリ14に電蝕が発生することはなく、電蝕に起因するメモリ14の修理は不要となる。従って、洪水発生後に電子機器10を早期に使用することができる。
【0030】
ところで、切換部20としては、ラッチングリレーでなく、外部電源22から通電され続けることによってオープン状態を維持するノーマルクローズのリレーが使用されても良い。しかし、外部電源22からの電力が供給されなくなると、ノーマルクローズのリレーはオープン状態からクローズ状態に切り換わる。すると、電池18とメモリ14が電気的に接続されるため、メモリ14に電蝕が発生する虞がある。対して、ラッチングリレーは、クローズ状態からオープン状態に切り換わった後に、接続制御信号を入力しないかぎり、電力の有無にかかわらずクローズ状態に切り換わることはない。このため、電池18とメモリ14が電気的に接続されることはなく、メモリ14に電蝕が発生することもない。
【0031】
[2 第2実施形態]
第1実施形態においては、メモリ14に電蝕が発生することがない一方で、電池18の周辺に電蝕が発生する虞がある。電池18の周辺に電蝕が発生した場合には、電池保持器42の修理が必要となる。電池保持器42を修理している間、電子機器10は使用できなくなる。第2実施形態は、電池18の周辺に電蝕が発生した場合であっても、電子機器10を早期に使用することができるようにするものである。
【0032】
図3は、第2実施形態に係る電子機器10と周辺機器の構成を示すブロック図である。第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。第2実施形態の特徴的な部分は、電池保持器42にある。第2実施形態において、電池保持器42(第2保持部)は、基板34(第1保持部)に対して取り付けと取り外しが可能である。
【0033】
第2実施形態に係る電子機器10の動作は、第1実施形態に係る電子機器10の動作と同じである。
【0034】
第2実施形態によれば、電池18の周辺に電蝕が発生した場合に、基板34から電池保持器42を取り外し、基板34に新しい電池保持器42を取り付けることによって、電子機器10を使用することができる。従って、洪水発生後に電子機器10を早期に使用することができる。
【0035】
[3 第3実施形態]
洪水等によって外部電源22が故障すると、電子機器10に電力が供給されなくなる。第1実施形態及び第2実施形態においては、非常時制御部40が切換部20をオープン状態に切り換える前に、外部電源22からの電力の供給がなくなると、非常時制御部40は切換部20をオープン状態に切り換えることができない。そもそも、外部電源22からの電力の供給がなくなると、非常時制御部40と通信部16が機能しなくなる。第3実施形態は、外部電源22からの電力の供給がない場合であっても、バックアップに関わる処理を行うことができるようにするものである。
【0036】
図4は、第3実施形態に係る電子機器10と周辺機器の構成を示すブロック図である。第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。第3実施形態の特徴的な部分は、第1実施形態のプロセッサ12の機能を主プロセッサ12aとバックアップ用プロセッサ12bとに分けた点、及び、バックアップ用プロセッサ12bと通信部16が電池18の電力で駆動可能である点にある。
【0037】
主プロセッサ12aは、主制御部38として機能する。バックアップ用プロセッサ12bは検知部36及び非常時制御部40として機能する。バックアップ用プロセッサ12bと通信部16は、メモリ14と同様に、導線44及び切換部20を介して電池18に電気的に接続される。バックアップ用プロセッサ12b、メモリ14、通信部16、電池18及び切換部20は、電池駆動部46を構成する。
【0038】
バックアップ用プロセッサ12bと通信部16は、常に電池18と電気的に接続されても良いし、通常時に外部電源22と電気的に接続され、外部電源22からの電力の供給がなくなった際に、電池18と電気的に接続されても良い。
【0039】
第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、電池保持器42(第2保持部)は、基板34(第1保持部)に対して取り付けと取り外しが可能であっても良い。
【0040】
第3実施形態に係る電子機器10の動作は、第1実施形態に係る電子機器10の動作と同じである。
【0041】
第3実施形態によれば、外部電源22から電力の供給がない場合であっても、電池18からバックアップ用プロセッサ12bと通信部16に電力を供給することができる。従って、通信部16は情報の入出力を行うことができる。また、非常時制御部40は、メモリ14に記憶されるデータのバックアップデータを作成することができ、また、切換部20をオープン状態に切り換えることができる。
【0042】
[4 第4実施形態]
図5は、第4実施形態に係る電子機器10と周辺機器の構成を示すブロック図である。第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。第4実施形態の特徴的な部分は、第1実施形態の非常時制御部40の機能を、第1制御部40aと第2制御部40bとして基板34側と電池保持器42側とに分けた点にある。
【0043】
基板34には、第1プロセッサ12c、第1メモリ14a及び第1通信部16aが設けられる。一方、電池保持器42には、第2プロセッサ12d、第2メモリ14b、第2通信部16b、電池18及び切換部20が設けられる。
【0044】
第1プロセッサ12cは、第1メモリ14aに記憶されるプログラムを実行することによって第1検知部36a、主制御部38、第1制御部40aとして機能する。第1検知部36aは、第1実施形態の検知部36と同じ機能を有する。第1制御部40aは、第1メモリ14aに記憶されるデータのバックアップの制御を行う。
【0045】
第1メモリ14aは、揮発性メモリを有する。第1メモリ14aは、電子機器10の主たる制御に関わるデータを記憶する。第1通信部16aは、水没センサ26、操作ボタン28及びサーバ32と通信可能に接続される各種の通信機を有する。
【0046】
第2プロセッサ12dは、第2メモリ14bに記憶されるプログラムを実行することによって第2検知部36b、第2制御部40bとして機能する。第2検知部36bは、第1実施形態の検知部36と同じ機能を有する。第2制御部40bは、電池保持器42の切換部20に制御信号(例えばパルス信号)を供給して電池18から第1メモリ14aへの電圧(バックアップ電圧)の供給と遮断とを切り換える。
【0047】
第2メモリ14bは、第2プロセッサ12dが使用するプログラムを記憶する。第2通信部16bは、水没センサ26及び操作ボタン28と通信可能に接続される各種の通信機を有する。
【0048】
第4実施形態においても、第2実施形態と同様に、電池保持器42(第2保持部)は、基板34(第1保持部)に対して取り付けと取り外しが可能であっても良い。
【0049】
第4実施形態に係る電子機器10の動作は、第1実施形態に係る電子機器10の動作と同じである。但し、第4実施形態では、第1実施形態と異なり、第1制御部40aがバックアップ処理(ステップS3の処理)を行い、第2制御部40bが遮断処理(ステップS4の処理)を行う。このため、第2制御部40bは、バックアップ処理が終了した後に遮断処理を行う必要がある。
【0050】
そこで、第4実施形態において、第2メモリ14bは、予めバックアップ処理に必要な時間としてバックアップ時間を記憶する。第2制御部40bは、第2検知部36bが水没情報を検知したときに計時を開始し、バックアップ時間が経過した後に遮断処理を行う。
【0051】
また、第1制御部40a又は第2制御部40bは、外部電源22からの電力の供給が遮断される前に、電子機器10のシャットダウン時の処理を行っても良い。第1制御部40a又は第2制御部40bは、シャットダウン時の処理として、例えば第1メモリ14aに記憶されるデータをサーバ32あるいは第2メモリ14bにバックアップすることができる。これによって、外部電源22からの電力の供給がない状態で洪水が発生した場合でも、電子機器10は、主たる制御に関わるデータのバックアップを保つことができる。
【0052】
第4実施形態によれば、外部電源22からの電力の供給がない場合であっても、第2通信部16bは情報の入出力を行うことができる。また、第2制御部40bは、切換部20をオープン状態に切り換えることができる。また、第4実施形態によれば、切換処理を行うための構成が基板34側に不要である。
【0053】
[5 実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0054】
本発明の態様は、メモリ(14)にバックアップ電圧を供給する電池(18)を備える電子機器(10)であって、情報を入出力する入出力部(16)と、前記入出力部が入力した情報に基づいて前記電子機器の水没又は水没の予兆を検知する検知部(36)と、前記電池から前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給と遮断とを切り換える切換部(20)と、前記検知部が水没又は水没の予兆を検知した場合に、前記切換部に遮断制御信号を出力して前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給を遮断させる非常時制御部(40)と、を備え、前記切換部は、前記遮断制御信号が供給された後には、前記遮断制御信号の供給がなくても、前記非常時制御部から接続制御信号が送られてくるまでは前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給の遮断を維持する。
【0055】
上記態様において、前記切換部は、前記電池から前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給と遮断とを切り換えるラッチングリレーを備えても良い。
【0056】
上記態様において、前記検知部は、前記電子機器の外に設けられた水没センサ(26)の検出信号、インターネットから取得した洪水情報、及び、オペレータに操作される操作ボタン(28)からの操作信号、のうちの少なくとも1つを取得することによって、前記電子機器の水没又は水没の予兆を検知しても良い。
【0057】
上記態様において、前記非常時制御部が行う制御以外の制御を行う主制御部(38)を備え、前記検知部、前記切換部、前記主制御部、前記非常時制御部及び前記入出力部は、外部電源(22)から供給される電力によって稼働するものであり、前記電池は、前記外部電源からの電力の供給が遮断された場合に、前記検知部、前記切換部、前記非常時制御部及び前記入出力部に電力を供給しても良い(第3実施形態)。
【0058】
上記態様において、前記入出力部は、第1入出力部(16a)と第2入出力部(16b)とを有し、前記検知部は、前記第1入出力部が入力した情報に基づいて前記電子機器の水没又は水没の予兆を検知する第1検知部(36a)と、前記第2入出力部が入力した情報に基づいて前記電子機器の水没又は水没の予兆を検知する第2検知部(36b)と、を有し、前記非常時制御部は、前記第1検知部が水没又は水没の予兆を検知した場合に、前記第1入出力部を用いて、前記メモリに記録されるデータのバックアップデータを前記電子機器の外部のサーバ(32)に出力させる第1制御部(40a)と、前記第2検知部が水没又は水没の予兆を検知した場合に、前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給を遮断させる第2制御部(40b)と、を有しても良い(第4実施形態)。
【0059】
上記態様において、前記第1制御部及び前記第2制御部が行う制御以外の制御を行う主制御部を備え、前記第1検知部と前記第1制御部と前記第1入出力部と前記主制御部は、外部電源から供給される電力によって稼働するものであり、前記第2検知部と前記第2制御部と前記第2入出力部と前記切換部は、前記電池から供給される電力によって稼働するものであり、前記第2制御部は、前記バックアップデータが前記サーバに送信された後に、前記メモリへの前記バックアップ電圧の供給を遮断させても良い。
【0060】
上記態様において、前記メモリを保持する第1保持部(34)と、前記電池と前記切換部を保持する第2保持部(42)と、を備え、前記第2保持部は、前記第1保持部に対して取り付けと取り外しが可能であっても良い(第2~第4実施形態)。
【0061】
上記態様において、前記メモリ、前記検知部、前記主制御部、前記非常時制御部及び前記入出力部を保持する第1保持部(34)と、前記電池と前記切換部を保持する第2保持部(42)と、を備え、前記第2保持部は、前記第1保持部に対して取り付けと取り外しが可能であっても良い(第2、第3実施形態)。
【0062】
上記態様において、前記メモリ、前記第1検知部、前記第1制御部及び前記第1入出力部を保持する第1保持部(34)と、前記電池、前記切換部、前記第2検知部、前記第2制御部及び前記第2入出力部を保持する第2保持部(42)と、を備え、前記第2保持部は、前記第1保持部に対して取り付けと取り外しが可能であっても良い(第4実施形態)。
【0063】
なお、本発明に係る電子機器は、前述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0064】
10…電子機器 14…メモリ
16…通信部(入出力部) 16a…第1通信部(第1入出力部)
16b…第2通信部(第2入出力部) 18…電池
20…切換部 22…外部電源
26…水没センサ 28…操作ボタン
32…サーバ 34…基板(第1保持部)
36…検知部 36a…第1検知部
36b…第2検知部 38…主制御部
40…非常時制御部 40a…第1制御部
40b…第2制御部 42…電池保持器(第2保持部)