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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007130
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/053 20210101AFI20220105BHJP
【FI】
A61B5/05 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109877
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】児玉 美幸
(72)【発明者】
【氏名】永濱 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 良雄
(72)【発明者】
【氏名】谷田 千里
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA06
4C127GG09
4C127GG15
(57)【要約】
【課題】
本発明は、体組成の測定に消極的な人の利用を促すことができる、人の身体の測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
測定装置は、被測定者の身体の一以上の部位の電気抵抗値を取得する電気抵抗値取得部と、前記電気抵抗値を用いて、一以上の所定の観点で前記被測定者の身体特性を表すタイプを判定するタイプ判定部と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の身体の一以上の部位の電気抵抗値を取得する電気抵抗値取得部と、
前記電気抵抗値を用いて、一以上の所定の観点で前記被測定者の身体特性を表すタイプを判定するタイプ判定部と、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記タイプ判定部は、
前記被測定者の実際の身体特性に合致するか否かとは関係しないタイプを、前記電気抵抗値を用いて判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記タイプ判定部は、
被測定者を所定の観点から判定するための判定項目において設定された前記タイプを、前記電気抵抗値を用いて判定する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記判定項目は、
性別、人種・民族、進化のうち少なくとも一以上を含む指標である、
ことを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記判定項目は、
ゲームキャラクタ、アニメキャラクタ、歴史上の人物のうち少なくとも一以上を含む指標である、
ことを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項6】
前記タイプ判定部は、
被測定者を所定の観点から判定するための判定項目において設定された前記タイプのうち、前記被測定者の身体がどのタイプに属するかの度合いで表示する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定装置は、
前記電気抵抗値と、前記判定したタイプに応じたアルゴリズムとを用いて、前記被測定者の体組成の値を算出する体組成算出部、
を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の測定装置。
【請求項8】
前記測定装置は、
前記判定したタイプを報知せずに、前記体組成の値を報知する、
ことを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記測定装置は、
前記被測定者から選択を受け付けた体型に対応する体組成の値と、前記算出した体組成の値とを比較し、前記選択を受け付けた体型との乖離を判定する乖離判定部、
を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の測定装置。
【請求項10】
前記測定装置は、
前記算出した体組成の値を表示せずに、前記判定した乖離を報知する、
ことを特徴とする請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
コンピュータを、
被測定者の身体の電気抵抗値を測定する測定装置から前記電気抵抗値を取得し、前記電気抵抗値を用いて、一以上の所定の観点で前記被測定者の身体特性を表すタイプを判定するタイプ判定部、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の身体の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の身体の体組成を測定する方法として、BIA(Bioelectrical impedance analysis:生体インピーダンス法)を用いた測定装置が知られている(例えば、特許文献1)。この測定装置では、身体に微弱な電流を流し、その電気抵抗値を測定することで体組成を推定(測定)する。この推定のために、被測定者の身長、体重等が必要となり、また、性別、年齢等の情報があることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-220855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、体組成の推定には、被測定者の身長、体重、性別、年齢等の詳細な情報が必要となるため、たとえばイベント会場などの多くの人が集まる場において測定装置の体験イベントを開催したとしても、詳細な情報を入力(申告)したくない人は、測定装置を利用することに消極的であった。測定装置の利用に消極的な人には、健康意識の高くない人、身体に自信のない人などがいる。
【0005】
身長、体重等の入力をしない場合には、測定装置を利用して電気抵抗値を測定したとしても、精度のよい体組成推定はできない。そのため、結果的に測定装置の利用が消極的となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは上記課題に鑑み、体組成の測定に消極的な人であっても、測定装置の利用を促すことができる測定装置を発明した。また、その結果、多様なデータを収集することにつなげることもできる。
【0007】
一態様の測定装置は、被測定者の身体の一以上の部位の電気抵抗値を取得する電気抵抗値取得部と、前記電気抵抗値を用いて、一以上の所定の観点で前記被測定者の身体特性を表すタイプを判定するタイプ判定部と、を有している。
【0008】
このように構成することで、被測定者は、性別や年齢だけの情報では一律にわからない、身体特性のタイプの判定結果を知ることもできる。これにより、タイプに応じて回帰式を使い分けたり組み合わせたりすることができる。また、被測定者は、ゲーム感覚で測定装置を利用することができるため、体組成の測定に消極的な人に測定装置の利用を促すことができる。
【0009】
上記の測定装置において、前記タイプ判定部は、前記被測定者の実際の身体特性に合致するか否かとは関係しないタイプを、前記電気抵抗値を用いて判定してよい。
【0010】
被測定者の実態の身体特性とは関係しないタイプを判定することによって、被測定者のゲーム感覚での測定装置の利用を促すことができる。
【0011】
上記の測定装置において、前記タイプ判定部は、被測定者を所定の観点から判定するための判定項目において設定された前記タイプを、前記電気抵抗値を用いて判定してよい。
【0012】
上記の測定装置において、前記判定項目は、性別、人種・民族、進化のうち少なくとも一以上を含む指標としてよい。
【0013】
上記の測定装置において、前記判定項目は、ゲームキャラクタ、アニメキャラクタ、歴史上の人物のうち少なくとも一以上を含む指標としてよい。
【0014】
上記の測定装置において、前記タイプ判定部は、被測定者を所定の観点から判定するための判定項目において設定された前記タイプのうち、前記被測定者の身体がどのタイプに属するかの度合いで表示してよい。
【0015】
これらのように、被測定者の属するタイプを判定、表示することで、被測定者が測定に対する抵抗を感じにくくなる。
【0016】
上記の測定装置は、前記電気抵抗値と、前記判定したタイプに応じたアルゴリズムとを用いて、前記被測定者の体組成の値を算出する体組成算出部を有していてよい。
【0017】
このように構成することで、被測定者の身体特性に応じて精度よく体組成を算出することが可能となる。
【0018】
上記の測定装置は、前記判定したタイプを報知せずに、前記体組成の値を報知してよい。
【0019】
被測定者としてはタイプよりも体組成の値を知ることがより重要な場合もある。その場合には、タイプを報知せずに、体組成の値を報知するようにしてもよい。
【0020】
上記の測定装置は、前記被測定者から選択を受け付けた体型に対応する体組成の値と、前記算出した体組成の値とを比較し、前記選択を受け付けた体型との乖離を判定する乖離判定部を有していてよい。
【0021】
このように構成することで、被測定者は、自らと理想の体型との乖離を把握することができる。
【0022】
上記の測定装置において、前記測定装置は、前記算出した体組成の値を表示せずに、前記判定した乖離を報知してよい。
【0023】
被測定者としては体組成の値よりも、自らの理想との乖離がどれだけあるかを知ることがより重要な場合もある。その場合には、体組成の値を表示せずに、体組成の値を報知するようにしてもよい。
【0024】
上記の測定装置は、一態様のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち、コンピュータを、被測定者の身体の電気抵抗値を測定する測定装置から前記電気抵抗値を取得し、前記電気抵抗値を用いて、一以上の所定の観点で前記被測定者の身体特性を表すタイプを判定するタイプ判定部、として機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の測定装置を利用することで、体組成の測定に消極的な人であっても、測定装置の利用を促すことができる。また、その結果、多様な条件の人のデータを収集することにつなげることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施の形態の測定装置の概略構成図である。
図2図2は、年代特性に応じた判定項目の画面の一例である。
図3図3は、性別特性に応じた判定項目の画面の一例である。
図4図4は、進化特性に応じた判定項目の画面の一例である。
図5図5は、本発明の測定装置における処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施例2における測定装置の概略構成図である。
図7図7は、実施例2における測定装置における処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図8図8は、実施例3における測定装置の概略構成図である。
図9図9は、実施例3における測定装置の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図10図10は、被測定者が選択する理想の体形の選択を行う画面の一例である。
図11図11は、被測定者の体組成の値と理想の体型の体組成の値との乖離を示す画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態の測定装置の概略構成図の一例を図1に示す。測定装置1は、被測定者に微弱電流を流すことで、インピーダンス、リアクタンス、レジスタンスなどの身体の電気抵抗値を測定する装置である。
【0028】
測定装置1は、本体部2と右ハンドグリップ3Rと左ハンドグリップ3Lとを備える。本体部2は、被測定者が載る載台20と表示部21と体重測定部22と電気抵抗値取得部23とタイプ判定部24と記憶部25とを備える。被測定者は、裸足で載台20の上に立ち、右手で右ハンドグリップ3Rを、左手で左ハンドグリップ3Lをそれぞれ把持することで、体組成を測定することが好ましいが、載台20のみを用い右ハンドグリップ3Rおよび左ハンドグリップ3Lを用いない、あるいは載台20を用いずに右ハンドグリップ3Rおよび左ハンドグリップ3Lのみを用いるようにしてもよい。
【0029】
載台20には右足通電電極201Rと右足測定電極202Rと左足通電電極201Lと左足測定電極202Lとを備えている。また、右ハンドグリップ3Rは右手通電電極31Rと右手測定電極32Rとを備えており、左ハンドグリップ3Lは、左手通電電極31Lと左手測定電極32Lとを備えている。
【0030】
表示部21は、タイプ判定部24などで演算処理をした結果を表示する表示装置であって、たとえば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0031】
体重測定部22は、被測定者の体重を測定するためのロードセルを備えている。ロードセルは荷重に応じて変形する金属部材の起歪体と、起歪体に貼られる歪みゲージとによって構成される。被測定者が載台20の上に載ると、被測定者の荷重によってロードセルの起歪体が撓んで歪みゲージが伸縮する。歪みゲージの抵抗値(出力値)は、その伸縮に応じて変化する。
【0032】
電気抵抗値取得部23は、各通電電極から被測定者の身体の所定部位に所定の周波数の微弱電流を流すことにより測定された電流経路に生じる電位差と、電流とに基づいて電気抵抗値を測定し、取得する。
【0033】
被測定者の全身および各身体部位のインピーダンス(生体インピーダンス)などの電気抵抗値の測定は、たとえば以下のようにして行う。
(1)全身の生体インピーダンスの測定では、左手通電電極31L及び左足通電電極201Lを用いて電流を供給し、左手、左腕、胸部、腹部、左脚部、左足を流れる電流経路において、その左手に接触している左手測定電極32Lと左足に接触している左足測定電極202Lとの間の電位差を測定する。
(2)右脚の生体インピーダンスの測定では、右手通電電極31R及び右足通電電極201Rを用いて電流を供給し、右手、右腕、胸部、腹部、右脚部、右足を流れる電流経路において、その左足に接触している左足測定電極202Lと右足に接触している右足測定電極202Rとの間の電位差を測定する。
(3)左脚の生体インピーダンスの測定では、左手通電電極31L及び左足通電電極201Lを用いて電流を供給し、左手、左腕、胸部、腹部、左脚部、左足を流れる電流経路において、その左足に接触している左足測定電極202Lと右足に接触している右足測定電極202Rとの間の電位差を測定する。
(4)右腕の生体インピーダンスの測定では、右手通電電極31R及び右足通電電極201Rを用いて電流を供給し、右手、右腕、胸部、腹部、右脚部、右足を流れる電流経路において、その左手に接触している左手測定電極32Lと右手に接触している右手測定電極32Rとの間の電位差を測定する。
(5)左腕の生体インピーダンスの測定では、左手通電電極31L及び左足通電電極201Lを用いて電流を供給し、左手、左腕、胸部、腹部、左脚部、左足を流れる電流経路において、その左手に接触している左手測定電極32Lと右手に接触している右手測定電極32Rとの間の電位差を測定する。
【0034】
電気抵抗値取得部23は、一つの周波数の微弱電流を流すほか、低周波電流、高周波電流のように複数の周波数の電流を流してもよい。また、測定する電気抵抗値も、インピーダンスのみならず、リアクタンスとレジスタンスとを別々に電気抵抗値として測定してもよい。
【0035】
タイプ判定部24は、本体部2における所定の演算処理装置が所定のコンピュータプログラムを実行することで実現される。また記憶部25も本体部2に内蔵されており、演算処理装置で実行するコンピュータプログラムやそのコンピュータプログラムの処理で演算するためのデータなどを記憶している。記憶部25は、SSD、HDDなどの記憶媒体によって構成される。記憶部25は、本体部2に対して着脱可能な可搬型の記憶媒体であってもよい。演算処理装置は、記憶部25に対して情報の読出し、書き込みを行う。なお、表示部21、演算処理装置および記憶装置は、一体となってタブレット型コンピュータ、スマートフォンなどで構成されていてもよい。コンピュータプログラムは、あらかじめ記記憶部25に記憶されていてもよいし、演算処理装置がネットワークを介してダウンロードして記憶部25に記憶してもよいし、可搬型の記憶媒体を介して記憶部25に記憶させてもよい。
【0036】
タイプ判定部24は、電気抵抗値取得部23で測定した、被測定者の一部または複数部位の電気抵抗値を用いて、被測定者をある側面から判定するための判定項目において、被測定者がどのタイプに属するかを判定する(タイプ判定)。
【0037】
ここで、判定項目とは、性別、年代、人種・民族、進化など、被測定者をある側面から判定するための、一または複数の項目である。タイプとは、ある判定項目において、電気抵抗値に応じて分類されたグループである。たとえば性別の判定項目では被測定者を性別の側面から分類するために男性、女性などのタイプが設定され、年代の判定項目では被測定者を年代の側面から分類するために若年、中年、老年などのタイプが設定され、人種・民族の判定項目では被測定者を人種や民族の側面から分類するためにアジア系、北欧系、アフリカンアメリカン系、アラブ系などのタイプが設定され、進化の判定項目では、被測定者を進化段階の側面から分類するために猿人、原人、旧人、新人、現代人などのタイプが設定される。
【0038】
すなわち、身体に微弱電流を流した際の電気抵抗の特性は、手足の長さ、筋肉の断面積、水分比率、筋繊維の密度などの身体特性によって異なるため、体格の特徴や筋肉と脂肪のバランスに差があるグループを判定項目におけるタイプ(身体特性、より好ましくは体格特性の分類によるグループ)として分類できるのであれば、被測定者の実際の年齢、性別、身長、体重などの情報の入力がなくとも、測定された電気抵抗値を用いて、被測定者が判定項目のどのタイプに属するかを判定することができる。
【0039】
したがって、タイプ判定部24は、被測定者の一部または複数部位について、複数の周波数で測定した、インピーダンス、リアクタンス、レジスタンスなどの電気抵抗値に基づいて、あらかじめ作成した各種の身体特性の判別式を用いて演算した値と、後述する記憶部に記憶した判定項目におけるタイプごとの閾値とを比較し、被測定者が判定項目におけるどのタイプに属するのかを判定する。
【0040】
身体特性の判別式としては、たとえば細い部分の長さと胴体の長さ比率から来る特性、手足の筋肉断面積バランスによる特性、筋繊維の密度による特性、脂肪層の水分量、筋肉中の水分分布の特性などについての判別式など、各種の身体特性の判別式を用いることができる。
【0041】
判定項目としては、上述のように、年代に応じた判定項目、性別に応じた判定項目、進化に応じた判定項目、人種・民族に応じた判定項目などがその一例としてあるが、これらに限定されるものではない。タイプ判定部24は、被測定者の一部または複数部位から測定された電気抵抗値を用いて、判定項目ごとに設定される複数のタイプから被測定者の身体特性を表すタイプを判定する。タイプとは、上述のように、ある判定項目において、電気抵抗値に応じて分類されたグループであればよいので、たとえば体組成の観点から見た被測定者を分類するグループなどであってもよい。判定される被測定者のタイプは必ずしも、生物学上の性別や人種などを含む実際の身体特性と合致する場合に限られるものではなく、実際の身体特性と合致しない場合もある。たとえば、被測定者が実際には男性であるのに、性別の判定項目では女性のタイプに判定される、被測定者が実際には20代であるのに、年齢の判定項目では老年のタイプに判定される、といったこともある。男性である、20代である、アジア人であるなどの、事実が客観的に明らかであることを敢えて判定することで、客観的な事実と体組成から見たタイプとのギャップを楽しめるので、測定装置1を利用することに消極的な人にも、ゲーム感覚での測定装置1の利用を促すことができる。また、男性であるか女性であるかを判定することはその事実が明らかであるから無意味であるようにも思えるが、生物学的には男性であるが女性的な身体特性を目指している者などにとっては、男性的な身体であるか女性的な身体であるかを判定することには意味がある。さらに、同じ日本人でも色黒の人と色白の人がいたり、華奢な体格の女性と筋肉質な女性がいるなど、同じ人種や性別でも体のつくりはさまざまであり、生物学上ではそれを日本人女性と見かけのタイプでひとくくりにしてしまうが、体組成(電気抵抗値)から被測定者のタイプを判定することで、被測定者に自分の体に対して新たな気づきを与えることもできる。判定項目およびそのタイプは、実際には存在しないものであってよいので、たとえばアニメキャラクタ,ゲームキャラクタのように、実際には存在しないキャラクタの身体特性に基づいてもよい。また、歴史上の人物のようにすでに生存していない人物の身体特性に基づいてもよい。
【0042】
タイプ判定部24におけるタイプ判定では、上述のように、被測定者の属するタイプが男性、女性のように明確に分けられていてもよいが、これに代えて、たとえば、性別の判定項目について男性30%、女性70%のように、比率をもって行われてもよく、年代の判定項目について0~100歳の年齢をもって行われてもよい。このように男性相当度、女性相当度、若年相当度、中年相当度、老年相当度、アジア系女性相当度、欧米系男性相当度といった、各タイプに相当する度合いを判定することもできる。すなわち、タイプ判定部24におけるタイプ判定は、あらかじめ用意されたどのタイプに属するかという判定のほか、これに代えて、あらかじめ用意されたタイプの相当度を判定するものであってもよい。
【0043】
タイプ判定部24は、被測定者が判定項目におけるどのタイプに属するのかを、表示部21に表示させてもよい。この表示の一例を図2乃至図4に示す。図2は、若年、中年、老年などの年代に応じた判定項目の画面の一例である。図3は、男性、女性などの性別に応じた判定項目の画面の一例である。図4は、猿人、原人、旧人、新人、現代人などの進化に応じた判定項目の画面の一例である。なお、猿人、原人、旧人、新人などは骨格標本からモデル化して電気抵抗値を計算することができる。なお、図2乃至図4の例では、各判定項目について、1次元のパラメータでタイプを判定したが、タイプを判定するためのパラメータは2次元以上であってもよい。
【0044】
タイプ判定部24は、被測定者から、年齢、性別、身長などの入力を受け付けていた場合には、それらを用いて上述の演算を行ってもよい。また体重測定部22で測定した体重を用いて、上述の演算を行ってもよい。
【0045】
記憶部25は、本発明の測定装置1における処理を実行するために必要な各種のデータを記憶している。たとえば、タイプ判定部24における演算処理を実行するためのコンピュータプログラムのほか、タイプ判定部24における判定項目ごとのタイプの閾値などを記憶している。たとえば判定項目が年代であれば、若年のタイプにおける閾値、中年のタイプにおける閾値、老年のタイプにおける閾値を記憶している。また、判定項目が性別であれば男性のタイプにおける閾値、女性のタイプにおける閾値を記憶している。さらに判定項目が進化であれば猿人のタイプにおける閾値、原人のタイプにおける閾値、旧人のタイプにおける閾値、新人のタイプにおける閾値、現代人のタイプにおける閾値を記憶している。
【0046】
なお、測定装置1は、サーバなどのほかの情報処理装置との通信機能を有していてもよい。また、測定装置1は、両手両足に用いる8極の電極を備えているが、両足のみの4極の電極を備えたものであってよく、両手のみの4極の電極を備えたものであってよく、あるいは、8極より多くの電極を備えたものであってもよい。
【実施例0047】
つぎに、本発明の測定装置1を用いた場合の処理の一例を図5のフローチャートを用いて説明する。
【0048】
測定装置1においては、表示部21に判定項目を表示させ、どの判定項目で判定を行うかの選択を受け付ける(S100)。
【0049】
被測定者は、測定装置1の載台20に、右足を右脚通電電極と右脚測定電極の上に、左足を左足通電電極201Lと左足測定電極202Lの上に位置するように裸足でのる。また右手では右ハンドグリップ3Rを握り、左手では左ハンドグリップ3Lを握る。電気抵抗値取得部23は、各通電電極から被測定者の身体の所定部位に一または複数の周波数の微弱電流を流し、電流経路に生じる電位差を測定する(S110)。そして測定した電位差および電流に基づいて電気抵抗値を算出する。さらに、必要に応じて、体重測定部22で体重を測定する。
【0050】
タイプ判定部24では、電気抵抗値取得部23で測定した電気抵抗値を、場合によっては体重も、記憶部25に記憶した各判別式に代入することで、それぞれの判別式に基づく演算結果を出力する(S120)。そして記憶部25を参照することで、S100で選択を受け付けた判定項目におけるタイプの閾値と、S120の演算結果とに基づいて、被測定者が当該判定項目においてどのタイプに属するかを判定する(S130)。
【0051】
たとえばS100で選択を受け付けた判定項目が年代であり、タイプ判定部24における判別式での判定の結果、老年のタイプと判定された場合には、図2に示すようにその判定画面を表示部21で表示させる(S140)。
【0052】
なお、S100において特定の判定項目の選択を受け付けず、あらかじめ定めている複数の判定項目においてそれぞれ、被測定者の属するタイプの判定を行ってもよい。この場合、たとえば年代、性別、時代、人種・民族などのそれぞれの判定項目について、被測定者がどのタイプに属するかを判定し、表示をする。また、S100で特定の判定項目の選択を受け付けず、電気抵抗値取得部23における電気抵抗値の測定の後に、被測定者に判定項目を選択させることで、判定項目を受け付けてもよい。
【0053】
以上のような処理を実行することで、測定装置1の利用に消極的な人にも、ゲーム感覚で自主的な測定を促すことができる。その結果、これまで収集が困難であった消極的な人のデータも収集することができる。
【実施例0054】
つぎに、本発明の測定装置1の別の実施態様を説明する。本実施態様では、たとえば実施例1で判定した判定項目のタイプに応じた回帰式を用いることで、被測定者の体組成の値を算出する場合である。
【0055】
本実施態様における測定装置1の概略構成図の一例を図6に示す。本実施態様の測定装置1では、図1の測定装置1に、さらに体組成算出部26を備えている。
【0056】
体組成算出部26は、タイプ判定部24で判定した被測定者の判定項目におけるタイプに応じた回帰式を用いて、被測定者の体組成の値を算出する。タイプ判定部24で一つのタイプを判定している場合にはその判定項目におけるタイプの回帰式を用いて体組成の値を算出する。また、タイプ判定部24が複数の判定項目においてタイプを判定している場合には、それぞれの判定項目におけるタイプの回帰式をどの程度用いるかの重み付けを行い、被測定者の体組成の値を算出する。
【0057】
記憶部25には、各判定項目におけるタイプごとの回帰式を記憶している。この回帰式は、体組成を得るためにさまざまな人の身体の測定、たとえば身体の所定の部位間の電気抵抗値の測定を行って、その測定値(電気抵抗値)に基づいて算出した回帰式が、各判定項目におけるタイプに応じて記憶されているものである。回帰式は各判定項目におけるタイプごとに記憶されていてもよいし、複数の判定項目と複数のタイプに応じて回帰式が記憶されていてもよい。たとえばアジア人女性(人種・民族の判定項目において「アジア人」のタイプと、性別の判定項目において「女性」のタイプに属する)の回帰式、アジア人男性(人種・民族の判定項目において「アジア人」のタイプと、性別の判定項目において「男性」のタイプに属する)の回帰式、北欧系女性(人種・民族の判定項目において「北欧系」のタイプと、性別の判定項目において「女性」のタイプに属する)の回帰式、北欧系男性(人種・民族の判定項目において「北欧系」のタイプと、性別の判定項目において「男性」のタイプに属する)の回帰式、アフリカンアメリカン系女性(人種・民族の判定項目において「アフリカンアメリカン系」のタイプと、性別の判定項目において「女性」のタイプに属する)の回帰式、アフリカンアメリカン系男性(人種・民族の判定項目において「アフリカンアメリカン系」のタイプと、性別の判定項目において「男性」のタイプに属する)の回帰式、アラブ系女性(人種・民族の判定項目において「アラブ系」のタイプと、性別の判定項目において「女性」のタイプに属する)の回帰式、アラブ系男性(人種・民族の判定項目において「アラブ系」のタイプと、性別の判定項目において「男性」のタイプに属する)の回帰式のように、複数の判定項目におけるタイプを組み合わせた、その組み合わせごとに回帰式が記憶されていてもよい。
【0058】
体組成算出部は、タイプ判定部24で判定した被測定者のタイプに応じた所定のアルゴリズムを用いて、被測定者の体組成の値を算出すればよい。このアルゴリズムには、上述した測定した電気抵抗値を用いて体組成の値を算出する回帰式のほか、測定した電気抵抗値を入力値とし、体組成の値を出力値として出力する機械学習モデルを用いることもできる。
【0059】
つぎに、本実施態様における測定装置1を用いた場合の処理の一例を図7のフローチャートを用いて説明する。なお、S200乃至S230までの処理は、実施例1のS100乃至S130までの処理と同一なので説明を省略する。
【0060】
S230において、タイプ判定部24が被測定者の属する判定項目ごとのタイプを判定すると、記憶部25に記憶する判定項目におけるタイプごとの回帰式を特定する。そして特定した回帰式を用いて、被測定者の体組成の値を算出する(S250)。
【0061】
たとえば性別の判定項目のみについて判定をしていた場合、体組成算出部26は、性別の判定項目における、被測定者が属するタイプの回帰式を用いて、被測定者の体組成の値を算出する。
【0062】
また複数の判定項目、たとえば性別の判定項目と人種・民族の判定項目の判定を行っている場合、被測定者のタイプについて、アジア人女性80%、アジア人男性15%、アラブ系女性5%のようにタイプ判定部24が判定していた場合、その比率をそれぞれ重み付けとして回帰式に用いて、体組成の値を算出してもよい。すなわちアジア人女性の回帰式による値80%、アジア人男性の回帰式による値を15%、アラブ系女性の回帰式による値5%として重み付けをした値を合計するなど所定の演算をすることで、被測定者の体組成の値を算出する。
【0063】
そして、体組成算出部26は、判定した被測定者の体組成の値を表示部21で表示させる(S250)。
【0064】
以上のような処理を実行することで、実施例1で判定した判定項目におけるタイプに応じた回帰式を用いて、被測定者の体組成の値を算出し、表示することができる。すなわち、年齢、性別、身長、体重などの入力を受け付けない場合であっても、タイプ判定部24が被測定者の一部または複数部位について、複数の周波数で測定した各電気抵抗値を用いて、被測定者を判定項目におけるタイプに分類することで、体組成算出部26がその判定項目におけるタイプに応じた回帰式を用いて演算処理して、被測定者の体組成の値を算出することができる。
【0065】
本実施例では、実施例1で判定した判定項目におけるタイプに応じた回帰式を用いていたが、これに限らない。たとえば、具体的に名付けられるようなタイプを示さずとも、身体的特性を判定し、それに応じた回帰式を用いて被測定者の体組成の値を算出してもよい。また、タイプは必ずしも判定項目において判定されなくてもよい。さらに、判定したタイプを報知せずに、被測定者の体組成の値を表示部21に報知して、表示部21で表示させるようにしてもよい。
【実施例0066】
つぎに、本発明の測定装置1の別の実施態様を説明する。本実施態様では、実施例2で算出した被測定者の体組成の値を用いて、被測定者の理想とする体型との乖離(距離)を判定する場合である。
【0067】
本実施態様における測定装置1の概略構成図の一例を図8に示す。本実施態様の測定装置1では、図6の測定装置1に、さらに乖離判定部27を備えている。
【0068】
乖離判定部27は、測定装置1で判定した体組成の値を用いて、被測定者が理想として選択した体型における体組成の値との乖離を判定する。
【0069】
記憶部25は、さらに、モデルとしての複数の理想の体型の体組成の値を記憶している。また、性別、年代、人種・民族、職業ごとなど、判定項目やタイプごと、あるいは所定の基準に基づく体組成の値の平均的範囲、著名人、歴史上の人物、キャラクタなどの体組成の値などを記憶していてもよい。
【0070】
つぎに、本実施態様における測定装置1を用いた場合の処理の一例を図9のフローチャートを用いて説明する。なお、S300乃至S340までの処理は、実施例2のS200乃至S240までの処理と同一なので説明を省略する。
【0071】
なお、被測定者は、S350までの処理のいずれかの段階において、自らが理想とする体型の選択を行い、それを乖離判定部27は受け付けておく。たとえば図10に示す体型選択画面から理想となる体型の選択を受け付ける。図10では、被測定者が選択した理想となる体型を、破線を付した領域で示している。
【0072】
そして、体組成算出部26において被測定者の体組成の値を算出すると、被測定者が選択をした理想の体型の体組成の値、たとえば体脂肪の値や筋肉量の値を記憶部25から抽出し、S340で算出した体組成の値、たとえば体脂肪の値、筋肉量の値と比較し、その乖離を算出する。乖離の算出にはたとえば差分を算出する方法がある。乖離判定部27は、以上のように算出した乖離を図11に示すように表示部21に表示させる(S360)。図11は、体組成の値のうち、体脂肪率について、被測定者の体脂肪率と、被測定者が選択した理想の体型との乖離をグラフで示す模式図である。なお、図11では性別ごとの体組成の値の平均的範囲を併せて表示した場合を示しているが、年代、人種・民族、職業ごとなどの判定項目やタイプごとの体組成の値の平均的範囲、著名人などの体組成の値などを合わせて表示してもよい。
【0073】
これによって、被測定者は、理想の体型に対しての自らの体組成の値の乖離を知ることができる。
【0074】
また、図11では被測定者の体脂肪率を表示するようにしたが、単に乖離のみを表示するようにしてもよい。たとえば図11の場合では、被測定者の体脂肪率が21%、被測定者が選択した理想とする体型の体脂肪率が27%であったとき、「理想の体型まで6%不足です。」といったように、理想の体型までの乖離(距離)のみを表示するようにしてもよい。これによって、自らの体脂肪率などの体組成の値を表示せずに済み、被測定者も利用しやすくなる。
【0075】
また、算出した体組成の値を表示せずに、乖離判定部27で判定した乖離の情報を報知し、表示部21で表示させるようにしてもよい。
【実施例0076】
上述の各実施態様の別の例として、タイプ判定部24、体組成算出部26、乖離判定部27、記憶部25などの機能については、測定装置1に備えるのではなく、測定装置1で測定した測定値を取得することで、測定装置1とは異なる装置、たとえばスマートフォンやタブレット型コンピュータなどの可搬型通信端末を含むコンピュータなどにおいて、アプリケーションプログラムとして実現してもよい。この場合、測定装置1には電気抵抗値取得部23を備え、電気抵抗値取得部23で測定した電気抵抗値を、上述のコンピュータで取得し、そのコンピュータのアプリケーションプログラムで実現するタイプ判定部24、体組成算出部26、乖離判定部27などにおいて上述と同様の処理を実行する。
【0077】
また上述の各実施態様の別の例として、被測定者の生年月日、血液型などと組み合わせて、あたかも占いのような処理を設けてもよい。この場合、たとえば被測定者のある判定項目におけるタイプや体組成の値などと被測定者の生年月日、血液型などの情報を組み合わせて所定の演算を行うことで、占いのように特定の結果を出力するようにしてもよい。
【0078】
さらに、上述の各実施態様の別の例として、被測定者の運動能力を取得し、その取得結果をさらに組み合わせてタイプ判定部24などの処理を行わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の測定装置1を利用することで、体組成の測定に消極的な人であっても、測定装置1の利用を促すことができる。また、その結果、多様な条件の人のデータを収集することにつなげることもできる。
【符号の説明】
【0080】
1:測定装置
2:本体部
3R:右ハンドグリップ
3L:左ハンドグリップ
20:載台
21:表示部
22:体重測定部
23:電気抵抗値取得部
24:タイプ判定部
25:記憶部
26:体組成算出部
27:乖離判定部
31R:右手通電電極
31L:左手通電電極
32R:右手測定電極
32L:左手通電電極
201R:右足通電電極
201L:左足通電電極
202R:右足測定電極
202L:左足測定電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11