(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071311
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】自律走行作業装置、作業プランの修正方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220509BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20220509BHJP
A47L 11/293 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G05D1/02 H
A47L9/28 E
A47L11/293
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180200
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】下郡 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】仲野 綾華
【テーマコード(参考)】
3B057
5H301
【Fターム(参考)】
3B057DE02
3B057DE06
5H301AA10
5H301BB11
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD02
5H301GG09
5H301QQ06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業プランにオペレータの意図を反映させて、作業効率及び作業の質を高めることができる自律走行作業装置、作業プランの修正方法、プログラムを提供する。
【解決手段】自律走行作業装置(装置本体10)は、作業プランに従って自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する。自律走行作業装置には、作業プランに従って作業したときの作業済みの既作業軌跡及び/又は作業予定の仮想作業軌跡を作成する作業軌跡作成部39、40と、撮像部から取得した撮像画像内の被作業面に既作業軌跡及び/又は仮想作業軌跡を重ねて表示する表示制御部41と、既作業軌跡及び/又は仮想作業軌跡に関する変更操作を受けたときに作業プランを修正する作業プラン修正部45と、が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業プランに従って自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置であって、
作業プランに従って作業したときの作業済みの既作業軌跡及び/又は作業予定の仮想作業軌跡を作成する作業軌跡作成部と、
撮像部から取得した撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡を重ねて表示する表示制御部と、
前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡に関する変更操作を受けたときに作業プランを修正する作業プラン修正部と、を備えたことを特徴とする自律走行作業装置。
【請求項2】
前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡を複数の分割軌跡に分割する作業軌跡分割部を備え、
前記表示制御部は、撮像画像内の被作業面に複数の前記分割軌跡を重ねて表示し、
前記作業プラン修正部は、前記分割軌跡に対する変更操作を受けたときに作業プランを修正することを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項3】
手動操作に従って作業プランを学習し、学習済みの作業プランに従って自律走行しながら被作業面に対して作業を実施し、
前記表示制御部は、作業プランの学習後に撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡を重ねて表示し、
前記作業プラン修正部は、前記既作業軌跡に関する変更操作を受けたときに前記学習済みの作業プランを修正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自律走行作業装置。
【請求項4】
手動操作に従って作業プランを学習し、学習済みの作業プランに従って自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置であって、
作業プランの学習中に手動操作に従って作業したときの作業済みの既作業軌跡及び当該既作業軌跡から予測される作業予定の仮想作業軌跡を作成する作業軌跡作成部と、
作業プランの学習中に撮像部から取得した撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡及び前記仮想作業軌跡を重ねて表示する表示制御部と、
作業プランの学習中に未学習箇所である前記仮想作業軌跡に対する作業プランを作成する作業プラン作成部と、を備えたことを特徴とする自律走行作業装置。
【請求項5】
前記作業軌跡作成部は、作業の開始地点から現在地点までの走行経路に基づいて前記既作業軌跡を作成し、現在地点から作業の終了地点までの走行経路に基づいて前記仮想作業軌跡を作成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項6】
自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置の作業プランの修正方法であって、
作業プランに従って作業したときの作業済みの既作業軌跡及び/又は作業予定の仮想作業軌跡を作成するステップと、
撮像部から取得した撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡を重ねて表示するステップと、
前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡に関する変更操作を受けたときに作業プランを修正するステップと、を有することを特徴とする作業プランの修正方法。
【請求項7】
作業プランに従って自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置のプログラムであって、
作業プランに従って作業したときの作業済みの既作業軌跡及び/又は作業予定の仮想作業軌跡を作成するステップと、
撮像部から取得した撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡を重ねて表示するステップと、
前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡に関する変更操作を受けたときに作業プランを修正するステップと、を前記自律走行作業装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行作業装置、作業プランの修正方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被作業面の作業状態を可視化する自律走行作業装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の自律走行作業装置は携帯端末に通信可能に接続されており、自律走行作業装置にはゴミ検出センサが設けられ、携帯端末にはカメラが設けられている。SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等によって被作業面のマップが作成され、ゴミ検出センサの検出結果がマップに付加される。そして、自律走行作業装置から携帯端末に作業状態が反映されたマップが送信され、このマップがカメラの撮像画像に重ねられて携帯端末のディスプレイに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の自律走行作業装置では、被作業面の撮像画像上に作業状態を反映したマップが重ねられて、被作業面の作業状態を可視化することができる。被作業面の作業状態をオペレータに認識させることができるが、オペレータの意図を反映した作業結果が得られるように自律走行作業装置を動かすことまではできない。
【0005】
そこで、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、作業プランにオペレータの意図を反映させて、作業効率及び作業の質を高めることができる自律走行作業装置、作業プランの修正方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自律走行作業装置は、作業プランに従って自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置であって、作業プランに従って作業したときの作業済みの既作業軌跡及び/又は作業予定の仮想作業軌跡を作成する作業軌跡作成部と、撮像部から取得した撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡を重ねて表示する表示制御部と、前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡に関する変更操作を受けたときに作業プランを修正する作業プラン修正部と、を備えている。
【0007】
本発明の作業プランの修正方法は、自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置の作業プランの修正方法であって、作業プランに従って作業したときの作業済みの既作業軌跡及び/又は作業予定の仮想作業軌跡を作成するステップと、撮像部から取得した撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡を重ねて表示するステップと、前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡に関する変更操作を受けたときに作業プランを修正するステップと、を有している。
【0008】
これらの構成によれば、撮像画像内の被作業面上の既作業軌跡及び/又は仮想作業軌跡をオペレータに視認させて、既作業軌跡及び/又は仮想作業軌跡に関するオペレータの変更操作を受け付けている。既作業軌跡及び/又は仮想作業軌跡に関する変更操作によって自律走行作業装置の作業プランが修正され、オペレータの意図を作業プランに反映させて作業効率及び作業の質を高めることができる。
【0009】
上記の自律走行作業装置は、前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡を複数の分割軌跡に分割する作業軌跡分割部を備え、前記表示制御部は、撮像画像内の被作業面に複数の前記分割軌跡を重ねて表示し、前記作業プラン修正部は、前記分割軌跡に対する変更操作を受けたときに作業プランを修正する。この構成によれば、オペレータの意図をより細かく作業プランに反映させることができる。
【0010】
上記の自律走行作業装置は、手動操作に従って作業プランを学習し、学習済みの作業プランに従って自律走行しながら被作業面に対して作業を実施し、前記表示制御部は、作業プランの学習後に撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡を重ねて表示し、前記作業プラン修正部は、前記既作業軌跡に関する変更操作を受けたときに前記学習済みの作業プランを修正する。この構成によれば、手動操作によって自律走行作業装置に学習を繰り返すことなく、学習済みの作業プランにオペレータの意図を反映させることができる。
【0011】
本発明の他の自律走行作業装置は、手動操作に従って作業プランを学習し、学習済みの作業プランに従って自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置であって、作業プランの学習中に手動操作に従って作業したときの作業済みの既作業軌跡及び当該既作業軌跡から予測される作業予定の仮想作業軌跡を作成する作業軌跡作成部と、作業プランの学習中に撮像部から取得した撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡及び前記仮想作業軌跡を重ねて表示する表示制御部と、作業プランの学習中に未学習箇所である前記仮想作業軌跡に対する作業プランを作成する作業プラン作成部と、を備えている。
【0012】
この構成によれば、作業プランの学習中に撮像画像内の被作業面上の仮想作業軌跡をオペレータに視認させているので、未学習箇所である仮想作業軌跡が適切か否かをオペレータに確認させて、オペレータの意図に反した作業プランの生成が抑えられ、手動操作によって自律走行作業装置に学習を繰り返させることなく、仮想作業軌跡に対する作業プランにオペレータの意図を反映させることができる。
【0013】
上記の自律走行作業装置において、前記作業軌跡作成部は、作業の開始地点から現在地点までの走行経路に基づいて前記既作業軌跡を作成し、現在地点から作業の終了地点までの走行経路に基づいて前記仮想作業軌跡を作成する。この構成によれば、既作業軌跡と仮想作業軌跡を容易に作成することができる。
【0014】
本発明のプログラムは、作業プランに従って自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置のプログラムであって、作業プランに従って作業したときの作業済みの既作業軌跡及び/又は作業予定の仮想作業軌跡を作成するステップと、撮像部から取得した撮像画像内の被作業面に前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡を重ねて表示するステップと、前記既作業軌跡及び/又は前記仮想作業軌跡に関する変更操作を受けたときに作業プランを修正するステップと、を前記自律走行作業装置に実行させる。この構成によれば、自律走行作業装置にプログラムをインストールすることで、撮像画像内の被作業面上の既作業軌跡及び/又は仮想作業軌跡をオペレータに視認させて、オペレータに作業プランの修正を促す機能を追加することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業プランにオペレータの意図を反映させて、作業効率及び作業の質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】本実施形態の装置本体の制御ブロック図である。
【
図4】本実施形態の表示画面の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態の清掃前の表示画面の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態の重点清掃領域の指定処理の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態の重点清掃領域の指定処理の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態の清掃プランの学習後の清掃装置の位置関係を示す図である。
【
図9】本実施形態の学習後の表示画面の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態の清掃プランの学習中の表示画面の一例を示す図である。
【
図11】本実施形態の清掃プランの修正処理のフローチャートの一例である。
【
図12】本実施形態の学習中の清掃プランの生成処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の清掃装置について説明する。
図1は本実施形態の清掃装置の斜視図である。
図2は本実施形態の清掃装置の模式図である。なお、以下の説明では、自律走行作業装置として自律走行式の清掃装置を例示して説明するが、自律走行作業装置は自律走行によって被作業面に対して、掃除作業、研磨作業、艶出し作業、ワックス塗布作業等の各種作業を実施する作業装置でもよい。
【0018】
図1に示すように、清掃装置1は、商業施設、製造工場、鉄道駅コンコース等の床面(被作業面)Fを自律走行で清掃可能に構成されている。清掃装置1の装置本体10の下部には、駆動輪としての前輪12と補助輪としての後輪13が設けられている。前輪12と後輪13の間に洗浄パッドや洗浄ブラシ等の清掃部材16が設けられ、清掃部材16の後側にはスキージ17が設けられている。装置本体10の上部後側にはハンドル28が設けられ、ハンドル28の前側には表示部22が設けられている。装置本体10の上部前側には撮像部21が設けられ、撮像部21の下方の窪みには障害物センサ26が設けられている。
【0019】
図2に示すように、清掃装置1の装置本体10には、走行部11、清掃部15、無線通信部19、撮像部21、表示部22、計測部25、操作部27、記憶部50、電源部29、制御部30が設けられている。走行部11は、上記した前輪12、後輪13、走行モータ(不図示)、エンコーダ(不図示)等によって構成されている。走行部11は、走行モータによって前輪12を駆動させて清掃装置1を走行させている。なお、本実施形態には前輪駆動の清掃装置1を例示しているが、走行部11によって後輪13だけが駆動されてもよいし、走行部11によって両輪が駆動されてもよい。
【0020】
清掃部15は、例えば、湿式清掃によって床面Fを清掃するものであり、上記した清掃部材16及びスキージ17、洗浄モータ(不図示)、アクチュエータ(不図示)、洗浄液供給部(不図示)、汚水回収部(不図示)等によって構成されている。清掃部15は、アクチュエータによって清掃部材16を床面Fに押し付けて、清掃モータによって床面Fに対して清掃部材16を回転させている。このとき、洗浄液供給部によって洗浄液タンクから床面Fに洗浄液が散布されて、スキージ17に集められた汚水が汚水回収部によって汚水タンクに回収される。
【0021】
無線通信部19は、装置本体10と管理端末(不図示)を無線通信によって接続している。例えば、装置本体10と管理端末はWiFi(登録商標)等の無線LANによって接続されている。撮像部21は、床面Fを撮像可能なドーム型カメラである。なお、撮像部21は、床面Fを撮像可能であればよく、パノラマ画像が撮像可能な全天球カメラでもよいし、清掃装置1の前方を撮像可能な固定カメラでもよい。また、本実施形態では、清掃装置1が撮像部21を備えているが、商業施設等に設置された監視カメラから無線通信によって清掃装置1が床面Fの画像を取得してもよい。
【0022】
表示部22は、タッチパネル式の表示画面を有している。表示部22の表示画面には撮像部21に撮像された撮像画像(主に動画)が表示されると共に、清掃装置1に対するオペレータの操作を受け付ける操作画面が表示される。操作画面によって清掃装置1の動作モードが選択され、清掃装置1に対して各種設定が入力される。なお、表示部22としては、装置本体10に対して着脱可能なタブレット型端末やスマートフォン等の携帯端末を用いることもできる。表示部22として携帯端末が用いられた場合には、無線通信部19の代わりに携帯端末の無線通信機能が用いられてもよい。
【0023】
計測部25は、上記した障害物センサ26を備えている。障害物センサ26は、例えば、障害物や壁面からの距離及び角度を計測するLRF(Laser Range Finder)によって構成されている。障害物センサ26から周囲にレーザー光が出射され、物体からの反射光を受光することで周辺の障害物センサ26から障害物までの距離及び角度が計測されて、清掃装置1の周辺環境を認識することが可能になっている。また、障害物センサ26は、レーザー光を用いた障害物検出の代わりに、周辺環境の撮像画像を用いた障害物検出を実施してもよい。
【0024】
操作部27は、オペレータの手動操作を受け付けており、上記したハンドル28(
図1参照)、スロットル等によって構成されている。操作部27は、ハンドル28の操舵量やスロットルの捻り量を電気信号に変換して、装置本体10の走行モータの制御基板に出力して走行モータを駆動させる。操作部27の操作によって、装置本体10の走行速度の調整、左旋回、右旋回が実施される。また、装置本体10の操作部27付近には、電源のON/OFFを行う電源スイッチ(不図示)と、装置本体10の動作を全停止させる緊急停止スイッチ(不図示)が設けられている。
【0025】
記憶部50は、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成されている。ROMには、例えば、清掃装置1を制御するためのプログラムが記憶されている。HDDやフラッシュメモリには、例えば、走行経路、走行速度、洗浄液の散布量、清掃部材16の接触圧等を各種清掃条件が設定された清掃プランや、その他のパラメータが記憶されている。電源部29は、バッテリ(不図示)及び充電回路等によって構成されている。電源部29から装置各部に電力が供給されている。
【0026】
制御部30は、装置各部を統括制御している。制御部30の各種処理は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサが記憶部50に記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)が使用される。なお、制御部30及び記憶部50の制御ブロックの詳細については後述する。
【0027】
このような清掃装置1には、手動モード、学習モード、再現モードの3つの動作モードが用意されている。手動モードは、オペレータによる清掃装置1の手動操作によって床面Fを清掃するモードである。学習モードは、オペレータによる手動操作によって清掃装置1に清掃プランを学習させるモードである。再現モードは、清掃プランを再現するように、清掃装置1が清掃エリア内を自律走行しながら清掃するモードである。また、清掃装置1は、学習モードで学習された清掃プランに従って清掃する他、事前に作成された清掃プランに従って清掃することも可能である。
【0028】
しかしながら、学習済みの清掃プランや事前作成済みの清掃プランが適切であるとは限らない。例えば、清掃装置1の清掃軌跡から壁までの距離が安全距離よりも長過ぎたり、隣り合う清掃軌跡のラップ幅が大き過ぎたりすると清掃効率が低下する。また、床面Fの汚れ具合によっては、清掃プランに従った清掃だけでは汚れを十分に落としきれない場合がある。そこで、本実施形態の清掃装置1は、撮像画像内の床面F上の清掃軌跡をオペレータに視認させて、清掃効率及び清掃の質が高められるように、オペレータの意図を反映した清掃プランに修正している。
【0029】
以下、装置本体の制御部及び記憶部の詳細構成について説明する。
図3は本実施形態の装置本体の制御ブロック図である。なお、ここでは、
図1及び
図2の符号を適宜使用して説明する。
【0030】
図3に示すように、制御部30には、学習清掃制御部31、学習走行制御部32、SLAM制御部33、走行経路作成部34、環境地図作成部35、清掃プラン作成部36、再現清掃制御部37、再現走行制御部38、既清掃軌跡作成部39、仮想清掃軌跡作成部40、AR表示制御部41、既清掃軌跡算出部42、仮想清掃軌跡算出部43、未清掃領域算出部44、清掃プラン修正部45、清掃軌跡分割部46が設けられている。記憶部50には、清掃条件記憶部51、走行経路記憶部52、環境地図記憶部53、清掃プラン記憶部54、清掃軌跡記憶部55、装置設定記憶部56が設けられている。
【0031】
学習清掃制御部31は、学習モード中にオペレータの操作に従った清掃装置1の手動清掃を制御している。学習清掃制御部31による制御内容は、ティーチングデータとして清掃条件記憶部51に記憶される。このティーチングデータには、例えば洗浄液の散布量、清掃部材16の接触圧、汚水の吸引力が含まれている。学習走行制御部32は、学習モード中にオペレータの操作に従った清掃装置1の手動走行を制御している。学習走行制御部32による制御内容は、ティーチングデータとして清掃条件記憶部51に記憶される。このティーチングデータには、例えば走行速度が含まれている。
【0032】
SLAM制御部33は、リアルタイムでSLAMを実行して、計測部25に計測された清掃装置1の周囲の障害物からの距離及び角度に基づいて、清掃装置1の自己位置を推定すると共に局所地図を作成する。走行経路作成部34は、時系列に並んだ複数の自己位置を繋ぎ合わせて清掃装置1の走行経路L(
図6(A)参照)を作成する。環境地図作成部35は、時系列に並んだ複数の局所地図を繋ぎ合わせて環境地
図M(
図6(A)参照)を作成する。走行経路Lはティーチングデータとして走行経路記憶部52に記憶され、環境地
図Mはティーチングデータとして環境地図記憶部53に記憶される。
【0033】
なお、計測部25には、障害物センサ26として2次元タイプのLRFが用いられてもよいし、3次元タイプのLRFが用いられてもよい。2次元タイプのLRFによって2次元データが取得されてもよいし、3次元タイプのLRF又は2次元タイプのLRFの揺動によって3次元データが取得されてもよい。すなわち、走行経路作成部34によって2次元の走行経路が作成されてもよいし、3次元の走行経路が作成されてもよい。また、環境地図作成部35によって2次元の環境地図が作成されてもよいし、3次元の環境地図が作成されてもよい。
【0034】
清掃プラン作成部36は、各種ティーチングデータを学習モードの開始から終了までの所定時間間隔のステップ毎に関連付けて清掃プランを作成する。この場合、環境地
図Mに清掃装置1の走行経路Lが反映されて、走行経路Lの開始地点P1から終了地点P2(
図6(A)参照)までの各地点における洗浄液の散布量、清掃部材16の接触圧、汚水の吸引力、走行速度が設定されて清掃プランが作成される。清掃プランは清掃プラン記憶部54に記憶されて、再現モード中に使用される。清掃プラン記憶部54には、学習モードで学習された清掃プランの他にも、事前に作成された清掃プランが記憶されている。
【0035】
再現清掃制御部37は、再現モード中に清掃プラン記憶部54から清掃プランを読み込み、清掃プランに従って清掃装置1の自動清掃を制御している。再現走行制御部38は、再現モード中に清掃プラン記憶部54から清掃プランを読み込み、清掃プランに従って清掃装置1の自律走行を制御している。清掃装置1が走行経路Lに沿って自律走行しながら、洗浄液を床面Fに散布して清掃部材16によって床面Fを洗浄している。このように、再現清掃制御部37及び再現走行制御部38によって清掃装置1が制御されることで、清掃プラン記憶部54から読み込まれた清掃プランが再現される。
【0036】
既清掃軌跡作成部(作業軌跡作成部)39は、清掃の開始地点P1から現在地点までの走行経路Lに基づいて、清掃プランに従って清掃したときの清掃済みの既清掃軌跡T1(
図4(B)参照)を作成する。この場合、既清掃軌跡作成部39によって走行経路記憶部52から走行経路Lが読み込まれると共に、装置設定記憶部56から清掃部材16の幅が読み込まれる。そして、清掃の開始地点P1から現在地点までの走行経路Lと清掃部材16の幅に基づいて、既清掃軌跡作成部39によって床面Fに対する清掃済みの既清掃軌跡(既作業軌跡)T1が作成される。既清掃軌跡T1は清掃軌跡記憶部55に記憶される。
【0037】
仮想清掃軌跡作成部(作業軌跡作成部)40は、現在地点から清掃の終了地点P2(
図6(A)参照)までの走行経路Lに基づいて、清掃プランに従って清掃したときの清掃予定の仮想清掃軌跡T2(
図4(B)参照)を作成する。この場合、仮想清掃軌跡作成部40によって走行経路記憶部52から走行経路Lが読み込まれると共に、装置設定記憶部56から清掃部材16の幅が読み込まれる。そして、現在地点から清掃の終了地点P2までの走行経路Lと清掃部材16の幅に基づいて、仮想清掃軌跡作成部40によって床面Fに対する清掃予定の仮想清掃軌跡(仮想作業軌跡)T2が作成される。仮想清掃軌跡T2は清掃軌跡記憶部55に記憶される。
【0038】
AR表示制御部(表示制御部)41は、撮像部21から入力された撮像画像内の床面Fに既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2を重ねて表示部22に表示させる。例えば、環境地
図Mの特徴点と撮像画像の特徴点がマッチングされて、撮像画像の撮像座標系(カメラ座標系)における清掃装置1の現在地点が特定される。この清掃装置1の現在地点を基準にした既清掃軌跡T1と仮想清掃軌跡T2が撮像画像内の床面Fに重ねられる。既清掃軌跡T1と仮想清掃軌跡T2は直線形状に限らず、既清掃軌跡T1と仮想清掃軌跡T2は清掃装置1の旋回箇所で円弧状に形成されてもよい。
【0039】
なお、撮像画像内の床面Fの認識は、画像セグメンテーション(セマンティック・セグメンテーション)によって実現される。画像セグメンテーションは、撮像画像の画素毎に物体を判別して識別可能に表示する技術であり、画像の各画素がどのカテゴリーに属するかが求められる。同一カテゴリーの画素が同一ラベルとして扱われて、床面Fが天井や壁面等と区別して認識されて、床面F上に既清掃軌跡T1と仮想清掃軌跡T2が重ねられる。床面F上の既清掃軌跡T1と仮想清掃軌跡T2は色付けされた領域で表されてもよいし、各領域がそれぞれ異なる表示色で表されていてもよい。
【0040】
既清掃軌跡算出部42は、環境地
図M上に既清掃軌跡T1を反映させることで、計測部25に計測された壁面等の障害物から既清掃軌跡T1までの距離や面積、既清掃軌跡T1のラップ幅を算出する。仮想清掃軌跡算出部43は、環境地
図M上に仮想清掃軌跡T2を反映させることで、計測部25に計測された壁等の障害物から仮想清掃軌跡T2までの距離や面積、仮想清掃軌跡T2のラップ幅、既清掃軌跡T1と仮想清掃軌跡T2のラップ幅を算出する。未清掃領域算出部44は、既清掃軌跡T1の隙間を未清掃領域として、この未清掃領域の縦横寸法及び面積を算出する。
【0041】
清掃プラン修正部(作業プラン修正部)45は、既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2に関する変更操作を受けたときに清掃プランを修正する。例えば、壁面から清掃軌跡までの距離、清掃軌跡のラップ幅の変更操作を受けたときに、清掃プラン修正部45によって清掃プランの走行経路Lがオフセットされる。走行経路Lは、環境地
図Mにおける清掃装置1の自己位置を示すX、Y座標値の集合である。壁面から清掃軌跡までの距離や清掃軌跡のラップ幅の設定値をXY方向の変位量に変換した上で、走行経路LのX、Y座標値にXY方向の変位量を加えることで走行経路Lがオフセットされる。
【0042】
また例えば、清掃軌跡に対する清掃条件の変更操作を受けたときに、清掃プラン修正部45によって清掃プランの清掃条件が変更される。清掃部材16の接触圧等の増加によって床面Fの一部を重点的に清掃することができる。清掃条件の変更の代わりに、清掃プラン修正部45によって清掃プランの走行経路Lの一部に往復経路が設定されてもよい。往復経路で清掃装置1によって往復清掃が繰り返されることで、床面Fの一部を重点的に清掃することができる。走行経路Lや清掃条件の変更によって、オペレータの意図を反映した清掃プランに修正される。
【0043】
清掃軌跡分割部(作業軌跡分割部)46は、既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2を直線軌跡と旋回軌跡からなる複数の分割軌跡70c(
図6(B)参照)に分割する。この場合、AR表示制御部41によって複数の分割軌跡70cが撮像画像上に重ねて表示され、オペレータのタッチ操作によって複数の分割軌跡70cが個別に選択される。分割軌跡70cの選択によって個々の分割軌跡70cに対する清掃条件等の変更操作が可能になっている。また、選択中の分割軌跡70cに対する縮小操作を受けると分割軌跡70cが縮小されて、より狭い範囲に対して清掃条件の変更操作が可能になっている(
図7(B)参照)。
【0044】
この清掃装置1には、手動操作によって学習された清掃プランと管理端末等で事前に作成された清掃プランが使用可能である。清掃プランの学習時には、オペレータによって清掃装置1が手動操作された状態で、SLAM制御部33によってSLAMが実行され、清掃装置1の自己位置が推定されると共に局所地図が作成される。走行経路作成部34によって自己位置が繋ぎ合わされて走行経路Lが作成され、環境地図作成部35によって局所地図が繋ぎ合わされて環境地
図Mが作成される。清掃プラン作成部36によって環境地
図Mに走行経路Lが反映されて、走行経路Lに清掃条件が関連付けられることで清掃プランが作成される。
【0045】
清掃プランの事前作成時には、事前に用意された図面データから環境地
図Mが作成される。また、事前に入力された清掃の開始地点P1、終了地点P2、壁面からの安全距離、清掃部材16の幅等の設定値に基づいて、清掃軌跡を一定幅でラップさせたジグザグの走行経路Lが作成される。環境地
図Mに走行経路Lが反映されて、事前に入力された清掃条件が走行条件に関連付けられることで清掃プランが作成される。図面データを用いる代わりに、オペレータによって清掃装置1が壁際に沿って手動走行されながら、SLAMが実行されて環境地
図Mが作成されてもよい。
【0046】
学習済みの清掃プラン及び事前作成済みの清掃プランを用いた清掃時には、SLAMによって清掃装置1の自己位置を推定しつつ、清掃プランの走行経路Lに従って清掃装置1が動かされることで床面Fが清掃される。このとき、SLAMによって局所地図が作成されるが、この局所地図によって環境地
図Mが更新されてもよい。表示部22の表示画面には、オペレータの操作によって床面F上に既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2が表示される。表示画面がオペレータに視認されて、既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2に関する変更操作を受けたときに清掃プランが修正される。
【0047】
ここで、清掃中の清掃プランの修正処理について説明する。
図4は本実施形態の表示画面の一例を示す図であり、(A)はAR表示を無効にした表示画面、(B)は本実施形態のAR表示を有効にした表示画面の一例を示す図である。なお、清掃プランは、学習された清掃プランでもよいし、事前に作成された清掃プランでもよい。ここでは、
図2及び
図3の符号を適宜使用して説明する。
【0048】
図4(A)に示すように、清掃プランに従った清掃中に清掃装置1が一時的に停止される。AR表示が無効な場合には、撮像部21に撮像された清掃装置1の前方の室内画像が表示部22の表示画面に表示される。室内画像からは適切な清掃プランか否かが判断し難く、オペレータに対して清掃プランの修正を促すことができない。このため、表示画面には、黒色背景に白字で「AR表示」と記載された切替ボタン73aが表示されている。オペレータによって切替ボタン73aがタッチ操作されることで、表示画面のAR表示が無効から有効に切り替えられる。
【0049】
図4(B)に示すように、AR表示が有効になると、室内画像の床面Fに既清掃軌跡T1及び仮想清掃軌跡T2が重ねられて表示される。また、室内画像上には、既清掃軌跡T1のラップ幅73b、仮想清掃軌跡T2のラップ幅73c、右壁面から仮想清掃軌跡T2までの距離73d、直進経路数73e等の設定値が表示されている。これら設定値のうち、白色背景に黒字で記載された既清掃軌跡T1に関する設定値は変更不能であり、黒色背景に白字で記載された仮想清掃軌跡T2に関する設定値は変更可能である。オペレータが表示画面を視認することで、以降の清掃プランを修正するか否かが判断される。
【0050】
仮想清掃軌跡T2に関する設定値の変更によって、走行経路L(
図6(A)参照)がオフセットされて仮想清掃軌跡T2が室内画像上に再表示される。設定値の変更操作が繰り返されて、オペレータの意図に沿った仮想清掃軌跡T2になった時点で確定ボタン(不図示)が押されて、清掃プランに対してオフセット後の走行経路Lが反映される。このようにして、床面Fの清掃中に清掃プランが修正される。なお、設定値の確定後には、表示画面に設定値が表示されなくてもよい。これにより、オペレータの意図に沿った清掃プランに修正されたとことを、オペレータに認識させることができる。
【0051】
次に、清掃前の清掃プランの修正処理について説明する。
図5は本実施形態の清掃前の表示画面の一例を示す図であり、(A)は設定変更前の表示画面、(B)は設定変更後の表示画面を示している。
図6は本実施形態の重点清掃領域の指定処理の一例を示す図であり、(A)は1段階目の分割状態、(B)は2段階目の分割状態を示している。
図7は本実施形態の重点清掃領域の指定処理の一例を示す図であり、(A)は分割軌跡の選択状態、(B)は分割軌跡の縮小状態を示している。なお、清掃プランは、学習された清掃プランでもよいし、事前に作成された清掃プランでもよい。ここでは、
図2及び
図3の符号を適宜使用して説明する。
【0052】
図5(A)に示すように、床面Fの清掃前にAR表示が有効にされると、室内画像の床面Fに仮想清掃軌跡T2が重ねられて表示される。また、室内画像上には、仮想清掃軌跡T2のラップ幅73f、右壁面から仮想清掃軌跡T2までの距離73g、直進経路数73h等の設定値が表示されている。さらに、室内画像上には、黒色背景に白字で「重点清掃領域指定」と記載された指定ボタン73iが表示されている。オペレータによって指定ボタン73iがタッチ操作されることで、
図5(B)に示すように、仮想清掃軌跡T2に対して重点清掃領域72が指定される。
【0053】
まず
図6(A)に示すように、仮想清掃軌跡T2が直線軌跡の集合領域70aと旋回軌跡の集合領域70bに分割され、さらに
図6(B)に示すように、集合領域70a、70bが1直線軌跡、1旋回軌跡毎の複数の分割軌跡70cに分割される。複数の分割軌跡70cは、オペレータのタッチ操作によって選択可能に表示画面に表示されている。複数の分割軌跡70cから任意の分割軌跡70cが選択され、この選択された分割軌跡70cが重点清掃領域72に指定される。なお、複数の分割軌跡70cから1つの分割軌跡70cが重点清掃領域72に指定されてもよいし、2以上の分割軌跡70cが重点清掃領域72に指定されてもよい。
【0054】
図7(A)に示すように、分割軌跡70cが重点清掃領域72に指定されると、重点清掃領域72の走行経路Lに関連付けられた清掃部材16の接触圧等の清掃条件が高めに変更される。なお、接触圧の変更に代えて、重点清掃領域72の走行経路Lを清掃装置1が往復清掃してもよい。この場合には、重点清掃領域72に対応した走行経路Lの端点で清掃装置1が信地旋回し、清掃装置1の進行方向が逆転されて往復清掃されてもよい。
図7(B)に示すように、分割軌跡70cはオペレータのタッチ操作に応じて1ステップ毎に縮小(短縮)されてもよい。これにより、縮小後の分割軌跡70cに対して重点清掃領域72を指定することができる。
【0055】
また、室内画像上の各設定値(
図5(B)参照)の変更によって修正プランが修正されてもよい。各設定値が変更されることで、走行経路Lがオフセットされて仮想清掃軌跡T2が表示画面に再表示される。そして、清掃プランに対してオフセット後の走行経路Lが反映されることで床面Fの清掃前に修正プランが修正される。ここでは、床面Fの清掃前に清掃プランを修正する一例について説明したが、床面Fの清掃後に清掃プランが修正されてもよい。修正後の清掃プランを別プランとして清掃プラン記憶部54に記憶させて次回以降の清掃に使用することができる。
【0056】
次に、学習後の清掃プランの修正処理について説明する。
図8は本実施形態の清掃プランの学習後の清掃装置の位置関係を示す図である。
図9は本実施形態の学習後の表示画面の一例を示す図であり、(A)は設定変更前の表示画面、(B)は設定変更後の表示画面を示している。ここでは、
図2及び
図3の符号を適宜使用して説明する。
【0057】
図8に示すように、清掃プランの学習後には清掃装置1が清掃の終了地点P2に位置付けられる。終了地点P2では清掃装置1が壁側を向いているため、オペレータによって清掃装置1が室内を向くように手動で方向転換される。
図9(A)に示すように、清掃装置1の方向転換後にAR表示が有効にされると、室内画像の床面Fに既清掃軌跡T1が重ねられて表示される。また、室内画像上には、右壁面から既清掃軌跡T1までの距離73j、未清掃領域73kが表示されている。未清掃領域73kの表示によって清掃漏れがオペレータに認識される。
【0058】
図9(B)に示すように、オペレータによって右壁面から既清掃軌跡T1までの距離73jが変更されることで、清掃プラン修正部45によって走行経路L(
図8参照)がオフセットされて経路間隔が狭められる。走行経路Lがオフセットされることで、室内画像の床面Fに既清掃軌跡T1が重ねられて再表示される。オペレータによって表示画面から未清掃領域が無くなったことが確認されると、清掃プランに対してオフセット後の走行経路Lが反映されて学習済みの修正プランが修正される。なお、既清掃軌跡T1のラップ幅が変更されることで走行経路Lがオフセットされてもよい。
【0059】
既清掃軌跡T1の一部の選択によって、走行経路Lが部分的にオフセットされてもよい。この場合、既清掃軌跡T1が直線軌跡及び旋回軌跡からなる複数の分割軌跡70c(
図6(B)参照)に分割される。オペレータによって分割軌跡70cが選択されて、分割軌跡70cに対応した走行経路Lが直にオフセットされる。このとき、未選択の分割軌跡70cに対応した走行経路Lについても自動的にオフセットされてもよい。走行経路Lのオフセットによって右壁面から既清掃軌跡T1までの距離73jが大きくなり過ぎる場合には、走行経路Lに直進経路が追加されてもよい。直進経路の追加は、オペレータによる手動操作によって行われる。
【0060】
上記には清掃プランの修正処理について説明したが、本実施形態の清掃装置は学習中に清掃プランを自動生成することも可能である。学習中の清掃プランの生成処理について説明する。
図10は本実施形態の清掃プランの学習中の表示画面の一例を示す図であり、(A)は設定変更前の表示画面、(B)は設定変更後の表示画面を示している。なお、ここでは、
図2及び
図3の符号を適宜使用して説明する。
【0061】
図10(A)に示すように、清掃プランの学習中に清掃装置1が一時的に停止され、AR表示が有効にされると、AR表示制御部41によって室内画像の床面Fに既清掃軌跡T1及び仮想清掃軌跡T2が重ねられて表示される。清掃プランの学習中には清掃の開始地点P1(
図8参照)から現在地点までしか走行経路Lが作成されていない。仮想清掃軌跡T2を表示するためには、現在地点から清掃の終了地点P2(
図8参照)までの走行経路Lを作成する必要がある。そこで、清掃装置1によって、清掃の開始地点P1から現在地点までの走行経路Lから、現在地点から清掃の終了地点P2までの走行経路Lが予測されている。
【0062】
より詳細には、既清掃軌跡作成部(作業軌跡作成部)39によって清掃プランの学習中に手動操作に従って清掃したときの既清掃軌跡T1が作成される。このとき、清掃の開始地点P1から現在地点までの走行経路Lの経路間隔及び直線長さ等が求められる。仮想清掃軌跡作成部(作業軌跡作成部)40によって走行経路Lの経路間隔及び直線長さ等から、現在地点から清掃の終了地点P2まで清掃したときの走行経路Lが予測される。そして、現在地点から清掃の終了地点P2までの走行経路Lに基づいて仮想清掃軌跡T2が作成される。このように、既清掃軌跡T1から仮想清掃軌跡T2が予測されている。
【0063】
また、室内画像上には、既清掃軌跡T1及び仮想清掃軌跡T2の他に、既清掃軌跡T1のラップ幅73l、仮想清掃軌跡T2のラップ幅73m、右壁面から仮想清掃軌跡T2までの距離73n、直進経路数73o等の設定値が表示されている。オペレータによって表示画面が視認されて、既清掃軌跡T1、仮想清掃軌跡T2、各設定値等に基づいて仮想清掃軌跡T2が適切か否か判断される。例えば、仮想清掃軌跡T2のラップ幅73mと許容ラップ幅の比較、右壁面から仮想清掃軌跡T2までの距離73nと安全距離との比較等に基づいて適切な仮想清掃軌跡T2か否かが判断される。
【0064】
仮想清掃軌跡T2が適切な場合には、清掃プラン作成部(作業プラン作成部)36によって、清掃の開始地点P1から現在地点までの走行経路Lに、手動操作時に実施された清掃条件が関連付けられて既清掃軌跡T1に対する清掃プランが作成される。また、清掃プラン作成部36によって、現在地点から清掃の終了地点P2までの走行経路Lに、既に手動操作時に実施された清掃条件が関連付けられて仮想清掃軌跡T2に対する清掃プランが作成される。そして、既清掃軌跡T1に対する清掃プランに仮想清掃軌跡T2に対する清掃プランが組み合わされて全体的な清掃プランが完成される。
【0065】
図10(B)に示すように、仮想清掃軌跡T2が不適切な場合には、仮想清掃軌跡T2に関する設定値の変更によって、走行経路Lがオフセットされて仮想清掃軌跡T2が再表示される。設定値の変更操作が繰り返されて、オペレータの意図に沿った仮想清掃軌跡T2になった時点で確定ボタン(不図示)が押される。清掃プラン作成部36によって、オフセット後の走行経路Lに、既に手動操作時に実施された清掃条件が関連付けられて仮想清掃軌跡T2に対する清掃プランが作成される。そして、既清掃軌跡T1に対する清掃プランに仮想清掃軌跡T2に対する清掃プランが組み合わされて全体的な清掃プランが完成される。
【0066】
清掃装置の処理動作について説明する。
図11は本実施形態の清掃プランの修正処理のフローチャートの一例である。
図12は本実施形態の学習中の清掃プランの生成処理のフローチャートの一例である。なお、ここでは、
図2及び
図3の符号を適宜使用して説明する。
【0067】
図11に示すように、撮像部21によって室内画像が撮像され、表示部22に室内画像が表示される(ステップS01)。次に、既清掃軌跡作成部39によって清掃プランに従って清掃したときの既清掃軌跡T1が作成され、仮想清掃軌跡作成部40によって清掃プランに従って清掃したときの仮想清掃軌跡T2が作成される(ステップS02)。次に、AR表示が有効にされると、AR表示制御部41によって既清掃軌跡T1、仮想清掃軌跡T2、清掃軌跡のラップ幅等の設定値が室内画像に重ねられて表示される(ステップS03)。オペレータによって表示画面が視認されて、清掃プランを修正するか否かが判断される。
【0068】
既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2に関する設定値等の変更操作を受けない場合には(ステップS04でNo)、オペレータによってAR表示が無効にされるまで変更操作を受け付けている(ステップS08でNo)。既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2に関する設定値等の変更操作を受けた場合には(ステップS04でYes)、清掃プラン修正部45によって走行経路Lがオフセットされる。そして、AR表示制御部41によって既清掃軌跡T1、仮想清掃軌跡T2、清掃軌跡のラップ幅等の設定値が室内画像に重ねられて再表示される(ステップS05)。
【0069】
オペレータによって表示画面が視認されて、既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2に関する変更内容が確定されるまで、ステップS04、S05の処理が繰り返される(ステップS06でNo)。既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2に関する変更内容が確定されると(ステップS06でYes)、清掃プラン修正部45によって変更内容が清掃プランに反映されて清掃プランが修正される(ステップS07)。そして、オペレータによってAR表示が無効にされるまで、ステップS04-S07の処理が繰り返される(ステップS08でNo)。
【0070】
図12に示すように、清掃プランの学習中に撮像部21によって室内画像が撮像され、表示部22に室内画像が表示される(ステップS11)。次に、既清掃軌跡作成部39によって手動操作に従って清掃したときの既清掃軌跡T1が作成される(ステップS12)。次に、仮想清掃軌跡作成部40によって既清掃軌跡T1から予測される清掃予定の仮想清掃軌跡T2が作成される(ステップS13)。次に、AR表示が有効にされると、AR表示制御部41によって既清掃軌跡T1、仮想清掃軌跡T2、清掃軌跡のラップ幅等の設定値が室内画像に重ねられて表示される(ステップS14)。オペレータによって表示画面が視認されて、仮想清掃軌跡T2が適切か否か判断される。
【0071】
仮想清掃軌跡T2に関する設定値等の変更操作を受けない場合には(ステップS15でNo)、オペレータによって仮想清掃軌跡T2に関する設定が確定されるまで変更操作を受け付けている(ステップS17でNo)。仮想清掃軌跡T2に関する設定値等の変更操作を受けた場合には(ステップS15でYes)、仮想清掃軌跡T2に対応する走行経路Lがオフセットされる。そして、AR表示制御部41によって既清掃軌跡T1、仮想清掃軌跡T2、清掃軌跡のラップ幅等の設定値が室内画像に重ねられて再表示される(ステップS16)。
【0072】
オペレータによって表示画面が視認されて、仮想清掃軌跡T2に関する設定が確定されるまで、ステップS15、S16の処理が繰り返される(ステップS17でNo)。仮想清掃軌跡T2に関する設定が確定されると(ステップS17でYes)、清掃プラン作成部36によって未学習箇所である仮想清掃軌跡T2に対する清掃プランが作成される(ステップS18)。そして、清掃プラン作成部36によって既清掃軌跡T1に対する清掃プランと仮想清掃軌跡T2に対する清掃プランが組み合わされて全体な清掃プランが作成される(ステップS19)。
【0073】
以上、本実施形態によれば、撮像画像内の床面F上の既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2をオペレータに視認させて、既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2に関するオペレータの変更操作を受け付けている。既清掃軌跡T1及び/又は仮想清掃軌跡T2に関する変更操作によって清掃装置1の清掃プランが修正され、オペレータの意図を清掃プランに反映させて清掃効率及び清掃の質を高めることができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、清掃プランの学習中に撮像画像内の床面F上の仮想清掃軌跡T2をオペレータに視認させている。未学習箇所である仮想清掃軌跡T2が適切か否かをオペレータに確認させて、オペレータの意図に反した清掃プランの生成が抑えられる。手動操作によって清掃装置1に学習を繰り返させることなく、仮想清掃軌跡T2に対する清掃プランにオペレータの意図を反映させることができる。
【0075】
なお、本実施形態では、自律走行作業装置として清掃作業を実施する清掃装置を例示したが、自律走行作業装置は清掃装置に限定されない。自律走行作業装置は、乾式の掃除作業、研磨作業、艶出し作業、ワックス塗布作業等の他の作業を実施する作業装置でもよい。すなわち、自律走行作業装置はロボット清掃機、ポリッシャー、バフィングマシン、ワックス塗布機でもよい。したがって、自律走行作業装置にはパッド等の洗浄部材の代わりに、掃除ブラシ、研磨ブラシ、艶出しブラシ、塗布部材が用いられてもよいし、さらに洗浄液として研磨剤や艶出し剤、コーティング剤が用いられてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、被清掃面として床面を例示しているが、被作業面は壁面、天井面、窓面、鏡面等でもよい。
【0077】
また、本実施形態では、SLAMによって環境地図が作成される構成にしたが、V-SLAMやLiDAR-SLAMによって環境地図が作成されてもよいし、オペレータによって事前に環境地図が用意されてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、オペレータが清掃装置のハンドルを持って手動操作しているが、オペレータが表示端末によって清掃装置を遠隔手動操作してもよい。
【0079】
また、本実施形態では、撮像画像内の床面上の既清掃軌跡及び/又は仮想清掃軌跡をタッチ操作させる際に、壁面や天井が選択不能に設定されていてもよいし、壁面や天井が選択可能に設定されていてもよい。壁面が選択可能な場合には、清掃装置に壁面への消毒液の噴霧やUV照射機能を持たせてもよい。オペレータの壁面のタッチ操作に応じて、清掃装置から表示報知や音声報知によってオペレータに意図が確認され、床面の清掃から壁面への消毒液の噴霧やUV照射に作業が切り替えられてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、表示画面には変更不能な設定値と変更可能な設定値の両方が表示されるが、表示画面に変更可能な設定値だけが表示されてもよい。
【0081】
また、本実施形態において、清掃装置にプログラムをインストールすることによって、撮像画像内の床面上の既清掃軌跡及び/又は仮想清掃軌跡をオペレータに視認させて、オペレータに清掃プランの修正を促す機能が追加されてもよい。また、清掃装置にプログラムをインストールすることによって、清掃プランの学習中に撮像画像内の床面上の仮想清掃軌跡をオペレータに視認させて、仮想清掃軌跡に対する清掃プランを生成させる機能が追加されてもよい。これらのプログラムは記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体であってもよい。
【0082】
なお、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0083】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明の技術は自律走行式の洗浄装置等の作業エリアの自動作業に好適な産業用ロボットに有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 :清掃装置(自律走行作業装置)
36 :清掃プラン作成部(作業プラン作成部)
39 :既清掃軌跡作成部(既作業軌跡作成部)
40 :仮想清掃軌跡作成部(仮想作業軌跡作成部)
41 :AR表示制御部(表示制御部)
45 :清掃プラン修正部(作業プラン修正部)
46 :清掃軌跡分割部(作業軌跡分割部)
70c:分割軌跡
F :床面(被作業面)
L :走行経路
P1 :開始地点
P2 :終了地点
T1 :既清掃軌跡(既作業軌跡)
T2 :仮想清掃軌跡(仮想作業軌跡)