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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071319
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】過酸化水素発生器
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20220509BHJP
   C01B 15/01 20060101ALI20220509BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220509BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20220509BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B01J35/02 J
C01B15/01
A61L9/01 E
A61L9/12
A61L9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180210
(22)【出願日】2020-10-28
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】597002139
【氏名又は名称】NDE株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻井 太一
(72)【発明者】
【氏名】百井 春夫
(72)【発明者】
【氏名】香川 公司
(72)【発明者】
【氏名】奥畑 博史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 恒典
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180CA06
4C180CC03
4C180CC17
4C180DD09
4C180EA33X
4C180EA34X
4C180EA53X
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH19
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA48A
4G169CB81
4G169DA05
4G169HA01
4G169HB01
4G169HB06
4G169HB10
4G169HE20
4G169HF02
4G169HF05
(57)【要約】
【課題】光触媒の作用を向上させ、過酸化水素の発生が効率的となる過酸化水素発生器を提供する。
【解決手段】過酸化水素を発生する過酸化水素発生器100において、板状のメッシュ形状の担体20と、担体20上に積層されたベーマイトアルミナ層22と、ベーマイトアルミナ層22上に積層された光触媒層21とを有するメッシュ部2を備え、光触媒の作用を向上させ、過酸化水素の発生が効率的となる過酸化水素発生器100としたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素を発生する過酸化水素発生器において、
板状のメッシュ形状の担体と、
前記担体上に積層されたベーマイトアルミナ層と、
前記ベーマイトアルミナ層上に積層された光触媒層とを有するメッシュ部を備えた過酸化水素発生器。
【請求項2】
前記担体と前記ベーマイトアルミナ層との間に、シロキサンおよび過酸化チタン層を備えた請求項1に記載の過酸化水素発生器。
【請求項3】
前記ベーマイトアルミナ層は、粒径が2nmから5nmのベーマイトアルミナにて形成される請求項1または請求項2に記載の過酸化水素発生器。
【請求項4】
前記ベーマイトアルミナ層は、100nmから1000nmの厚みにて積層される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の過酸化水素発生器。
【請求項5】
前記光触媒層は、500nmから1000nmの厚みにて積層される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の過酸化水素発生器。
【請求項6】
前記担体は、可撓性を有する金属材、ガラス状繊維、炭素繊維、または樹脂のいずれかにて形成された請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の過酸化水素発生器。
【請求項7】
前記金属材は、リン酸皮膜処理を行ったステンレス材にて形成された請求項6に記載の過酸化水素発生器。
【請求項8】
前記担体のメッシュ形状は、空間率が35%以上50%未満にて形成される請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の過酸化水素発生器。
【請求項9】
前記メッシュ部を保持する筐体と、
前記メッシュ部に光を照射する照射部とを備えた請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の過酸化水素発生器。
【請求項10】
前記メッシュ部に気体を供給する供給部を備えた請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の過酸化水素発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、過酸化水素発生器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気清浄機は、吸気口と、排気口と、前記吸気口から前記排気口に空気が流れる流路とを有する筐体と、前記筐体の前記流路に前記空気を流すファンと、前記流路内に配置された光触媒部材と、前記光触媒部材に光を照射する光照射部材とを備え、前記筐体は、互いに向かい合う底面および天面を含み、前記底面と前記天面とが互いに向かい合う方向において、前記ファンと、前記光触媒部材および前記光照射部材とが並んで配置されており、前記光触媒部材は、前記底面と前記天面とが互いに向かい合う方向に前記空気が流れるように配置されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-62334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空気清浄機の光触媒部材は、底面と天面とが互いに向き合う方向に空気が流れるように配置されており、空気の流れが一方向であり半導体を積層した構造の光電極の光触媒の作用が十分に発揮されていない、さらに、過酸化水素の発生について考慮されていないという問題点があった。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、半導体を積層した構造の光電極の光触媒の作用を向上させ、過酸化水素の発生が効率的となる過酸化水素発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される過酸化水素発生器は、
過酸化水素を発生する過酸化水素発生器において、
板状のメッシュ形状の担体と、
前記担体上に積層されたベーマイトアルミナ層と、
前記ベーマイトアルミナ層上に積層された光触媒層とを有するメッシュ部を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される過酸化水素発生器によれば、
光触媒の作用を向上させ、過酸化水素の発生が効率的となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による過酸化水素発生器と保持体との構成を示す断面図である。
図2図1に示した過酸化水素発生器の筐体の部分の構成を示す断面図である。
図3図1に示した過酸化水素発生器の筐体の構成を示す斜視図である。
図4図1に示した過酸化水素発生器の使用例を示す図である。
図5図1に示した過酸化水素発生器内のカルマン渦の状態を示す断面図である。
図6図1に示した過酸化水素発生器のメッシュ部の製造方法を示したフローチャートである。
図7A図1に示した過酸化水素発生器のメッシュ部の構成を示した図である。
図7B図7Aの丸Wにて囲んだ部分のメッシュ部の構成を示した拡大断面図である。
図8】実施の形態1による過酸化水素発生器の実施例1と比較例1と比較例2との実験結果を示す図である。
図9図8に示した実験結果の実施例1と比較例1と比較例2とにおける比較値を示した図である。
図10】実施の形態2による過酸化水素発生器の構成を示す図である。
図11】実施の形態2による過酸化水素発生器の他の構成を示す図である。
図12】光触媒における反応行程を示す解説図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願は、光触媒を用いた過酸化水素発生器に関するものであり、光触媒の作用により発生する過酸化水素を、より効率的に発生させることを目的とする。大気中において、当該光触媒の作用により発生する過酸化水素は、一般的に、蒸気化過酸化水素、または、過酸化水素蒸気などと称されているものと同一である。そして、この蒸気化過酸化水素、または、過酸化水素蒸気は、清浄化、除染、殺菌などの分野で有効性を有していることが知られている。
【0010】
空気清浄機などに必要とされる機能は、吸入した空気に含まれる浮遊菌を吸着して増殖を防ぐことである。従来の空気清浄機には吸入部に浮遊菌の吸着する吸着型のフィルタが設置され、さらに、内部に高密度の吸着型のフィルタが設置されている場合がある。これら吸着型のフィルタで、100μm以下の微粒子および細菌などの浮遊菌を吸着して捕集する。しかしながら、フィルタに吸着した浮遊菌は殺菌または滅菌されず、増殖する可能性が高い。
【0011】
さらに、空気清浄機に空気が循環されることにより、空気清浄機内にて増殖した浮遊菌がフィルタから剥がれ再び空気中に送出される可能性が懸念されていた。よって、本願は、これらのことを解消するために、光触媒の作用により過酸化水素を発生させ、上記に示した、蒸気化過酸化水素、または、過酸化水素蒸気の有効性的使用である、清浄化、除染、殺菌などを行うものである。
【0012】
本願においては、先に示した光触媒の作用により発生する過酸化水素の有効性を十分に発揮することができる過酸化水素発生器を提供する。まず、図12を用いて光触媒の作用により発生する過酸化水素について説明する。図12に示すように、光触媒200に酸素および水が接触すると、酸化還元反応により、過酸化水素が発生する。このように水と酸素との存在化では、当該反応がドミノ的に行われる。そして、この中でも、過酸化水素を発生させるためには、水の存在が重要となる。このことは、例えば、再公表2018/74456号公報からも明らかなように、光触媒が水中、液相状態に設置することにより過酸化水素を発生させることが示されている。
【0013】
当該公報には、光触媒にて過酸化水素を発生させるためには、光触媒に水を常時供給する必要があり、光触媒が水中、液相状態に存在することのみにて達成できるとされている。しかしながら、この条件下では、過酸化水素発生器を常に水中に載置する必要があり、コンパクトに携帯することは困難であり、メンテナンス的にも有効的でない。
【0014】
このことを解決するために、本願は、ベーマイトアルミナを用いることを見出した。ベーマイトアルミナは空気中の微量の水分を吸着するという吸湿効果である親水性を有するものである。さらに、多孔層を形成し、反応を生じさせるための表面積量の増加に寄与する。これらにより、励起により生成する正孔の水分解で生じる・OHと、H2Oとの反応を恒常的に行わせることができることを発見した。これにより、気相状態においても、H2O2の発生を安定的に得ることができる。そして、H2O2がその分子状態を保ちつつ過酸化水素発生器から排気できるものである。
【0015】
実施の形態1.
図1は実施の形態1による過酸化水素発生器と保持体との構成を示す断面図である。図2図1に示した過酸化水素発生器の筐体部分の構成を示す断面図である。図3図1に示した過酸化水素発生器の筐体の構成を示す斜視図である。図4図1に示した過酸化水素発生器の使用例を示す図である。図5図1に示した過酸化水素発生器内のカルマン渦の状態を示す断面図である。
【0016】
図6図1に示した過酸化水素発生器のメッシュ部の製造方法を示したフローチャートである。図7A図1に示した過酸化水素発生器のメッシュ部の構成を示した図である。図7B図7Aの丸Wにて囲んだ部分のメッシュ部の構成を示した拡大断面図である。図8は実施の形態1による過酸化水素発生器の実施例1と比較例1と比較例2との実験結果を示す図である。図9図8に示した実験結果の実施例1と比較例1と比較例2とにおける比較値を示した図である。
【0017】
図1から図3に示すように、過酸化水素発生器100は、筐体1、メッシュ部2、供給部3、LED(light emitting diode)部4、入力部5を備える。そして、過酸化水素発生器100が保持体101内に設置されている。筐体1は、中空の貫通箇所10を有する。そして、貫通箇所10の一端側11から気体が供給され、他端側12から気体が排出される。
【0018】
筐体1は、全光線透過率が1%以下、および、反射率が95%以上の樹脂材にて形成される。これは、LED部4にて照射されたLED光が筐体1内にて反射し、筐体1外に露出しないために選定されたものである。具体的に、例えば、ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社、ユーピロン、EHR3100を用いることが考えられる。
【0019】
筐体1は、筐体1の貫通箇所10の中心軸Qを含む平面に対向する位置にLED光を導入するための開口部13を備える。開口部13には、配光角の120度および中心波長が395nmを有するLED部4を備える。LED部4の配光角の120度は、筐体1の貫通箇所10の全域にわたって所定の1mW/cm2エネルギを照射するために選定されたものである。また、LED部4の中心波長が395nmは、メッシュ部2の表面に積層した光触媒の結晶(ルチル型)の励起に必要とするバンドギャップエネルギに相応したものとして選定されたものである。
【0020】
図7において、メッシュ部2は、板状のメッシュ形状の担体20に光触媒層21およびベーマイトアルミナ層22が積層される。具体的には、メッシュ部2は、担体20上に、ベーマイトアルミナ層22が積層され、ベーマイトアルミナ層22上に光触媒層21が積層されている。
【0021】
担体20は、金属材、ガラス状繊維、炭素繊維、または樹脂のいずれかにて形成される。これは、担体20上に積層される各層の密着性および定着性を向上させ、確実に形成するためである。さらに、担体20のメッシュ形状は、望ましくは、リン酸皮膜処理を行ったステンレス材にて形成される。これは、リン酸皮膜処理によりステンレス材の表面に凹凸が形成可能となり、担体20上に積層される層と、担体20との密着性および定着性の向上が可能となる。
【0022】
担体20のメッシュ形状は、空間率が35%以上50%未満にて形成される。担体20の空間率が50%より大きいと、担体20上に積層する物質が目詰まりする可能性がある。そして、担体20の空間率が35%以上50%未満は、光触媒層21の担持量、圧力損失、風圧などに対する強度等の様々な面を考慮して選定されたものである。
【0023】
図7Bに示すように、メッシュ部2の厚みH1は、0.44mm程度有する。さらに、担体20とベーマイトアルミナ層22との間にはシロキサンおよび過酸化チタン層23を備えている。シロキサンおよび過酸化チタン層23は、ベーマイトアルミナ層22と担体20との相互間の密着性および定着性を高めるために選定されたものである。
【0024】
ベーマイトアルミナ層22は、2nmから5nmの粒径を有するベーマイトアルミナを用いる。これは、ベーマイトアルミナの粒径のサイズが大きくなると、乾燥後に剥がれやすくなる。そして、シロキサンおよび過酸化チタン層23によるアンカー効果を有効とするためには、2nmから5nmの粒径のベーマイトアルミナを用いることが選定されたものである。
【0025】
また、ベーマイトアルミナ層22は、100nmから1000nmの厚みH2にて積層される。これは、ベーマイトアルミナ層22を多孔層に形成し、水分保持層としての効果を十分に発揮させることを考慮して選定されたものである。さらに、下層のシロキサンおよび過酸化チタン層23、並びに、上層の光触媒層21の密着性および定着性を向上させることを考慮して選定されたものである。
【0026】
光触媒層21は、500nmから1000nmの厚みH3にて積層される。例えば、光触媒層21は、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化チタン(TiO2)などにて形成される。尚、本実施の形態1では二酸化チタンの例にて示す。そして、二酸化チタンは、メッシュ部2に接する気体との摩擦による経年劣化を考慮して500nm以上の厚みにて形成し、乾燥後の剥がれやすさを防止するために1000nm以下にて形成するように選定されたものである。
【0027】
そして、メッシュ部2は、図2に示すように、2枚の傾斜メッシュ部61、62が貫通箇所10に間隔を隔てて設置される。各傾斜メッシュ部61、62は、貫通箇所10の一端側11から他端側12に向けて筐体1の貫通箇所10の中心軸Qを含む平面に近づくように傾斜する。各傾斜メッシュ部61、62は、中心軸Qを含む平面に対して対称に配置される。これは後述するカルマン渦を効率的に発生させるためである。そして、各傾斜メッシュ部61、62の中心軸Qを含む平面から傾斜する角度θは、4度から5度にて形成される。これは、後述するカルマン渦を発生させつつ、気体を筐体1の貫通箇所10の他端から排気させるために有効となる角度が選定されたものである。
【0028】
さらに、メッシュ部2は、筐体1の貫通箇所10の中心軸Qを含む平面に沿って配置された中心メッシュ部63を備える。そして、図3に示すように、筐体1の貫通箇所10に形成された第1溝部111、第2溝部112、および第3溝部113にそれぞれ挿入されて筐体1内に設置される。
【0029】
ここで、傾斜メッシュ部61、62を選定した理由について、図5に基づいて説明する。図5に示すように、筐体1の貫通箇所10に傾斜メッシュ部61、62が存在すると、貫通箇所10の一端側11から挿入した気体の通過可能箇所は、貫通箇所10の一端側11から連続的に他端側12に向かい狭くなり、気体への圧損が大きくなり、気体の流速が加速される。これにより気体の流速の周波数が上昇し、気体にカルマン渦が発生する。よって、気体を傾斜メッシュ部61、62および中心メッシュ部63に効率的に接触させることができる。これにより、筐体1の貫通箇所10の中心軸Q方向の長さを短くしても、効率的な作用が可能となる。すなわち、過酸化水素発生器100自体の大きさを小さく形成できる。
【0030】
図1に示すように、供給部3は、筐体1の内部、すなわち、貫通箇所10に気体を供給する。例えば、供給部3として、筐体1の一端側11にファンが設置される。入力部5は、供給部3およびLED部4に電力を外部から供給する。例えば、入力部5は、外部からUSBを用いて電力を入力可能に形成される。
【0031】
上記のように構成された実施の形態1の過酸化水素発生器のメッシュ部2の製造方法の1例について図6に基づいて説明する。まず、板状のメッシュ形状のステンレス材(SUS305)の担体20の表面のリン酸皮膜処理を行う(図6のステップST1)。次に、担体20上にシロキサンおよび過酸化チタンを塗布する(図6のステップST2)。次に、担体20を120℃で乾燥して、シロキサンおよび過酸化チタン層23を形成する(図6のステップST3)。
【0032】
次に、担体20上にベーマイトアルミナを塗布する(図6のステップST4)。次に、担体20を200℃で乾燥して、ベーマイトアルミナ層22を形成する(図6のステップST5)。次に、担体20上に例えば、柱状結晶構造で電荷分離構造を有するルチル型水溶液の光触媒(二酸化チタン)を塗布する(図6のステップST6)。次に、担体20を300℃で乾燥して、光触媒層21を形成する(図6のステップST7)。
【0033】
このように、担体20上にベーマイトアルミナ層22および光触媒層21が積層されたメッシュ部2を形成する。そして、当該メッシュ部2を適宜大きさに加工して、筐体1の貫通箇所10に設置し、上記に示した過酸化水素発生器100を形成する。
【0034】
上記のように構成された実施の形態1の過酸化水素発生器100の動作について説明する。まず、入力部5には例えば図4に示すように外部からUSBコード103を用いて充電池102から電力が入力される。そして、LED部4が点灯すると共に供給部3が駆動する。そして、供給部3の駆動により、筐体1の貫通箇所10の一端側11から気体を供給し、メッシュ部2を介して他端側12から排出する。この際、供給される気体は、メッシュ部2にカルマン渦にて接触することにより、光触媒層21およびベーマイトアルミナ層22の作用により、消臭および除菌されるとともに、過酸化水素を含んだ気体として排出される。
【0035】
このように形成された過酸化水素発生器100は小型に形成することが可能であり、例えば、図4の例であれば、保持体101の中心軸Q方向の全長は5.5cm程度、筐体1の他端側12の保持体101の外径は2.4cm程度にて形成可能となる。さらに、保持体101を含む過酸化水素発生器100の総重量が27g程度にて形成可能となる。よって、持ち運びに大変優れており、使用者が被服等にクリップ104(図4参照)にて止め使用可能である。
【0036】
次に、本願の有効性を示すため、以下に示す実験結果を用いて説明する。実験方法としては、密閉容器内に、実施例1、実施例2、比較例1の装置をそれぞれ設置し、過酸化水素の発生量を定量した。過酸化水素の発生量の定量方法は、密封容器内に吸収液(リン酸緩衝液)を載置し、当該吸収液中に過酸化水素を吸収させる。そして、実験が終了した後に、当該吸収液を酵素+pヒドロキシルフェニル酢酸で反応させ、蛍光分析(大気中のHOOH定量で用いられる方法)を行い、過酸化水素の定量を行う。
【0037】
密封容器の大きさは、15cm×8cm×5cmを用い、吸収液は10mlを用いた。そして、実施例1、実施例2、比較例1の装置をそれぞれ設置し、35℃で1時間運転し、運転停止して2時間後に吸収液に吸収されている過酸化水素の定量を上記に示した方法で行った。
【0038】
ここで、実験を行った実施例1、比較例1、比較例2の装置の構造などの条件について図8を交えて説明する。実施例1の装置は、上記図1において示した構造の過酸化水素発生器を用いたものであり、メッシュ部は、3枚の板状のメッシュ形状の担体に光触媒層およびベーマイトアルミナ層が上記に示したように積層されたものである。そして、フィルタ有効面積は1188mm2、光触媒の担持量は200g/m2、LEDは40mA・3.1V×2、風量は0.52m3/h、流速は1m/s、断面積は12mm×12mmである。
【0039】
比較例1の装置は、上記図1において示した構造の過酸化水素発生器を用いたものであるが、実施例1の装置と以下の点が相違する。メッシュ部は、3枚の板状のメッシュ形状の担体に光触媒層およびベーマイトアルミナ層に代えてγアルミナ層が積層されたものである。そして、メッシュ部有効面積は1188mm2、光触媒の担持量は200g/m2、LEDは40mA・3.1V×3、風量は0.70m3/h、流速は1.45m/s、断面積は11.6mm×11.6mmである。
【0040】
比較例2の装置は、本願とは異なり、2枚のフィルタを気体の流れの方向に平行に設置した構造を用いたものであり、2枚の板状のフィルタに光触媒層のみが積層されたものである。そして、メッシュ部有効面積は2688mm2、光触媒の担持量は200g/m2、LEDは50mA・3.1V×2、風量は0.62m3/h、流速は0.95m/s、断面積は29.5mm×6.2mmである。
【0041】
そして、それぞれの過酸化水素の定量結果、実施例1は発生量が3.235nmol/h、体積濃度が152.5ppt、比較例1は発生量が1.792nmol/h、体積濃度が62.16ppt、比較例2は発生量が2.203nmol/h、体積濃度が86.81pptであった。
【0042】
そして、図9に示すように、実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれの単位面積あたりの過酸化水素の発生量を換算する。尚、流速に対する過酸化水素濃度(単位:pptV)の近似式y=90・x-1(xは、流速(m/s))とする。図9から明らかなように、実施例1と、比較例1とを比較すると、ベーマイトアルミナ層22とγーアルミナ層との比較が可能となる。その結果、実施例1の過酸化水素の発生量が、比較例1の過酸化水素の発生量のほぼ2倍となり、ベーマイトアルミナ層22の有効性が確認できる。
【0043】
また、直接的ではないものの、比較例1と、比較例2とを比較すると、カルマン渦が発生するか否かの比較が可能となる。その結果、比較例1の過酸化水素の発生量が、比較例2の過酸化水素の発生量のほぼ2倍となり、カルマン渦の有効性が確認できる。
【0044】
尚、上記実施の形態1においては、入力部5を外部から電力を供給するように形成したが、これに限られることはなく、例えば、入力部を、電池または充電池にて形成することも可能である。
【0045】
上記のように構成された実施の形態1によれば、
過酸化水素を発生する過酸化水素発生器において、
板状のメッシュ形状の担体と、
前記担体上に積層されたベーマイトアルミナ層と、
前記ベーマイトアルミナ層上に積層された光触媒層とを有するメッシュ部を備えたので、
ベーマイトアルミナ層により常に光触媒層に水分の供給が可能となり、光触媒層の作用により発生する過酸化水素の発生量を確実に確保できる。
【0046】
また、前記担体と前記ベーマイトアルミナ層との間に、シロキサンおよび過酸化チタン層を備えたので、
担体とベーマイトアルミナ層との密着性および定着性を向上できる。
【0047】
また、前記ベーマイトアルミナ層は、粒径が2nmから5nmのベーマイトアルミナにて形成されるので、
ベーマイトアルミナ層の密着性および定着性が確実となる。
【0048】
また、前記ベーマイトアルミナ層は、100nmから1000nmの厚みにて積層されるので、
ベーマイトアルミナ層の密着性および定着性が確実となる。
【0049】
また、前記光触媒層は、500nmから1000nmの厚みにて積層されるので、
光触媒層の密着性および定着性が確実となる。
【0050】
また、前記担体は、可撓性を有する金属材、ガラス状繊維、炭素繊維、または樹脂のいずれかにて形成されたので、
担体上の各層の密着性および定着性が容易となる。さらに、生産性に優れたフィルタ部のメッシュ形状を形成できる。
【0051】
また、前記金属材は、リン酸皮膜処理を行ったステンレス材にて形成されたので、
担体上の各層の密着性および定着性が確実となる。
【0052】
また、前記担体のメッシュ形状は、空間率が35%以上50%未満にて形成されるので、
担体上に積層される各層の密着性および定着性が確実となるとともに、担体のメッシュ形状の目詰まりが防止できる。
【0053】
また、前記メッシュ部を保持する筐体と、
前記メッシュ部に光を照射する照射部とを備えたので、
メッシュ部に光を効率的に供給できる。
【0054】
また、前記メッシュ部に気体を供給する供給部を備えたので、
メッシュ部に気体を効率的に供給できる。
【0055】
実施の形態2.
上記実施の形態1においては、メッシュ部2として、2枚の傾斜メッシュ部および中心メッシュ部63を備える例を示したが、これに限られることはなく、本実施の形態2においては、他の例について説明する。
【0056】
図10または図11は実施の形態2による過酸化水素発生器の構成を示す断面図である。上記実施の形態1においては、傾斜メッシュ部61、62を形成する例を示したが、図10に示すように、メッシュ部2として、中心メッシュ部63のみにて形成する場合、または、図11に示すように、メッシュ部2として、平行に設置した2つの平行メッシュ部81、82を形成することも考えられる。この場合であっても、過酸化水素発生量は異なるものの、メッシュ部2のベーマイトアルミナ層22の作用により、過酸化水素を発生させることが可能であり、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0057】
上記のように構成された実施の形態2の過酸化水素発生器によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、使用状態に応じて、適宜、フィルタ部を形成することが可能である。
【0058】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0059】
1 筐体、10 貫通箇所、100 過酸化水素発生器、101 保持体、
102 充電池、103 USBコード、104 クリップ、11 一端側、
111 第1溝部、112 第2溝部、113 第3溝部、12 他端側、
13 開口部、2 メッシュ部、20 担体、200 光触媒、21 光触媒層、
22 ベーマイトアルミナ層、23 シロキサンおよび過酸化チタン層、3 供給部、4 LED部、5 入力部、61 傾斜メッシュ部、62 傾斜メッシュ部、
63 中心メッシュ部、81 平行メッシュ部、82 平行メッシュ部、Q 中心軸。
図1
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