(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071338
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】シート綴じ装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20220509BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220509BHJP
B65H 31/34 20060101ALI20220509BHJP
B65H 7/20 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B65H37/04 D
G03G15/00 432
B65H31/34
B65H7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180239
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 修
【テーマコード(参考)】
2H072
3F048
3F054
3F108
【Fターム(参考)】
2H072FB06
2H072GA08
2H072HB07
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA04
3F048BB03
3F048EB40
3F054AA01
3F054AB01
3F054AC01
3F054BA04
3F054BB09
3F054BH00
3F054DA14
3F108GA01
3F108GB01
3F108HA02
3F108HA32
3F108HA43
(57)【要約】
【課題】シート綴じ装置の大型化、装置構成の複雑化及びコストアップをすることなく、綴じ処理の箇所数にかかわらず、シート束の綴じ処理に要する時間を短縮し、生産性を向上させる。
【解決手段】綴じ部を構成する上顎部301Uと下顎部301Lとの間に順次進入して積重ねられたシート束を挟み込んで綴じるステイプラ301と、前記綴じ部301U,301L間に進入したシートを引き込む引き込み手段と、整合するための整合手段と、を有するフィニッシャ600であって、前記ステイプラ301の上顎部301Uの下降開始をシート束の最終シートの引き込み動作中または、整合動作中に開始する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送されるシートを積載してシート束を形成する積載手段と、
前記積載手段によって形成されるシート束の最上シートの積載終了を認識する積載終了認識手段と、
前記積載手段によって形成されるシート束を綴じる綴じ処理を施す綴じ手段と、
前記積載終了認識手段によってシート束の積載終了を認識する前に前記綴じ処理を開始する早期綴じ処理を実施すべく前記綴じ手段を制御する制御手段と、
を備えたシート綴じ装置。
【請求項2】
シートを所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送されるシートを積載してシート束を形成する積載手段と、
前記積載手段によって形成されるシート束を整合する整合手段と、
前記整合手段によって整合されるシート束の整合終了を認識する整合終了認識手段と、
前記整合手段によって整合されるシート束を綴じる綴じ処理を施す綴じ手段と、
前記整合終了認識手段によってシート束の整合終了を認識する前に
前記綴じ処理を開始すべく前記綴じ手段を制御する制御手段と、
を備えたシート綴じ装置。
【請求項3】
前記積載手段によって形成されるシート束の厚さを認識する厚さ認識手段とを備え、
前記制御手段は、
前記厚さ認識手段によって認識されるシート束の厚さが所定量未満であると認識される場合、前記厚さ認識手段によって認識されるシート束の厚さが所定量以上と認識される場合よりも前記綴じ処理の開始を早くすべく前記綴じ手段を制御する
請求項1又は2記載のシート綴じ装置。
【請求項4】
前記積載手段によって形成されるシート束のカール量を認識するカール量認識手段とを備え、
前記制御手段は、
前記カール量認識手段によって認識されるカール量が所定量以上であると認識される場合、前記カール量認識手段によって認識されるカール量が所定量未満であると認識される場合よりも前記綴じ処理の開始を遅くすべく前記綴じ手段を制御する
請求項1又は2記載のシート綴じ装置。
【請求項5】
前記積載手段によって形成されるシート束の紙種を認識する紙種認識手段とを備え、
前記制御手段は、
前記紙種認識手段によって認識される紙種の坪量が所定量未満であると認識される場合、前記早期綴じ処理を禁止すべく前記綴じ処理を制御する
請求項1又は2記載のシート綴じ装置。
【請求項6】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
請求項1乃至5に記載の前記シート綴じ装置を備えた画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート束を綴じることが可能なシート綴じ装置及びこのシート綴じ装置を備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来画像形成装置に用いられるシート綴じ装置は、中間処理トレイ上に積載整合されたシート束に対して、綴じ処理を行うものが公知である。綴じ処理を行う印刷ジョブの場合は、画像形成装置本体の処理時間に対して、シート綴じ装置の綴じ処理時間が上回ってしまっている為に、画像形成システム全体としての生産性が低下する課題があった。
【0003】
従来、綴じ処理時間を短縮するために以下の特許文献1、特許文献2が提案されている。たとえば、特許文献1では2か所綴じ処理を行う際に1か所目を綴じ処理した後、2か所目を綴じ処理する際、2か所目に向けてステイプラを移動させる方向と相反する方向に整合板を同時に移動させて動作させるシート綴じ装置が提案されている。また、特許文献2では綴じ処理を行う際に綴じ部の上顎部と下顎部の間口距離をシート束に合わせるように変更する綴じ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-220055号公報
【特許文献2】特開2007-70119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の画像形成装置に用いられるシート綴じ装置の綴じ処理において、綴じ処理時間が画像形成装置本体の処理時間に対して上回っている為に、画像形成システム全体の生産性が低下する課題に対し、特開2001-220055や特開2007-70119を適用しても、画像形成システム全体の生産性が低下する課題に対してシート束の形成中やシート束の整合中の動作と綴じ処理を並列して処理していなかったため、綴じ処理時間を短縮する課題に対して改善の余地がある。
【0006】
本発明は、綴じ処理を行う際に、シート束の積載中や整合中に綴じ処理を開始し、シート束の積載開始または整合開始から綴じ処理を終了するまでの時間を減らし、画像形成システム全体の生産性の低下を改善することが出来るシート綴じ装置及びこのシート綴じ装置を用いた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、
シートを所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送されるシートを積載してシート束を形成する積載手段と、
前記積載手段によって形成されるシート束の最上シートの積載終了を認識する積載終了認識手段と、
前記積載手段によって形成されるシート束を綴じる綴じ処理を施す綴じ手段と、
前記積載終了認識手段によってシート束の積載終了を認識する前に前記綴じ処理を開始する早期綴じ処理を実施すべく前記綴じ手段を制御する制御手段と、
を備えたシート綴じ装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、綴じ処理の箇所数にかかわらず、シート束の綴じ処理に要する時間を短縮し、画像形成システム全体としての生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】シート綴じ装置を備えた画像形成装置の全体を示す模式断面図。
【
図2】シート綴じ装置における平綴じ処理部の概略上視図。
【
図3】シート綴じ装置における平綴じ処理部の概略断面図。
【
図4】平綴じ処理部におけるステイプラユニットの移動機構の概略上視図。
【
図6】シート束整合時の綴じ処理時の動作の流れを示すフローチャート図。
【
図7】画像形成装置全体の制御を司る制御手段の構成を示すブロック図。
【
図8】シート束積載時の綴じ処理時の動作の流れを示すフローチャート図。
【
図9】シート束が厚い場合のステイプラの間口距離を示す概略断面図。
【
図10】シート束のカール量が大きい場合のステイプラの間口距離を示す概略断面図。
【
図11】シート綴じ装置の制御を司る制御手段の構成を示すブロック図。
【
図12】整合動作と綴じ処理動作の処理を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るシート綴じ装置を備えた画像形成装置の模式断面図である。
【0011】
図1に示す画像形成装置は、白黒/カラー画像形成装置本体100と、中綴じ処理部200と平綴じ処理部300を有するシート綴じ装置としてのフィニッシャ600と、から構成されている。画像形成装置本体100はイメージリーダ120とプリンタ110から構成され、イメージリーダ120には原稿給送装置130が装着されている。原稿給送装置130によって一枚ずつ分離給送された原稿は、イメージリーダ120によってその画像が読み取られる。
【0012】
画像形成装置本体100内のカセット107a~107dから選択的に給送されたシートは、画像形成手段に送り込まれる。画像形成手段では、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が各感光体ドラム101a~101dに形成される。そして前記シートは、各感光体ドラム101a~101dから4色のトナー像が順次重ねて転写され、定着器111によってトナー像が定着され、装置本体外に排出される。画像形成装置本体100から排出されたシートはフィニッシャ600に送られる。
【0013】
フィニッシャ600は、画像形成装置から排出されたシートを順に取り込み、所定の処理を選択的に行うことができる。本実施形態に係るフィニッシャ600では、取り込んだシートの後端付近に孔あけをするパンチ処理を行うことができる。また、取り込んだ複数枚のシートを整合して1つのシート束に束ねる整合処理、束ねたシート束の後端を綴じる綴じ処理を行うことができる。また、取り込んだ複数枚のシートを整合して1つのシート束に束ねる整合処理、束ねたシート束の中央を綴じる中綴じ処理、中綴じされたシート束を2つ折りにする折り処理を行うことができる。なお、シート束を仕分けて排出するソート処理や、仕分けずに排出するノンソート処理を行うことも可能であるが、既知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0014】
フィニッシャ600は、画像形成装置本体100から排出されたシートを内部に導くための入口ローラ対602を有する。この入口ローラ対602の下流には、シートを平綴じ製本パスXまたは中綴じ製本パスSYに導くための切換フラッパ601が設けられている。
【0015】
まず、平綴じ処理部300の動作を簡単に説明する。平綴じ製本パスXに導かれたシートは、搬送ローラ対603を介してバッファローラ605に向けて送られる。搬送ローラ対603とバッファローラ605は、正逆転可能に構成されている。
【0016】
なお、搬送ローラ対603とバッファローラ605の間には、パンチユニット650が設けられている。パンチユニット650は必要に応じて動作し、搬送されてきたシートの後端付近に穿孔する。
【0017】
バッファローラ605は、その外周に送られたシートを所定枚数積層して巻き付け可能なローラである。バッファローラ605に巻き付けられたシートは、下流に配置された切換フラッパ611によって、サンプルトレイ621側に導かれ、もしくは平綴じ処理部300内の中間トレイ(以下、処理トレイという)330側に導かれる。
【0018】
サンプルトレイ605側に導かれたシートは、第2排出ローラ対609によりサンプルトレイ621上に排出され積載される。
【0019】
処理トレイ330側に導かれたシートは、第1排出ローラ対320により処理トレイ330上に排出され積載される。処理トレイ330上に積載されたシートは、必要に応じて整合処理、平綴じ処理などが施された後に、束排出ローラ380a,380bによりスタックトレイ622上に排出される。処理トレイ330上に束状に積載されたシートを綴じる綴じ処理には、綴じ手段としてのステイプラ301が用いられ、シート束の角部、背部の綴じ処理を行う。尚、このステイプラ301を有するステイプラユニットによる一連の平綴じ処理に関しては、後で詳細に説明する。
【0020】
次に、中綴じ処理部200の動作を簡単に説明する。中綴じ製本パスSYに導かれたシートは、搬送ローラ対213によって収納ガイド220内に収納され、さらにシート先端が可動式のシート位置決め部材に接するまで搬送される。また、収納ガイド220の途中位置には、2対のサドルステイプラ218が設けられており、このサドルステイプラ218はそれに対向するアンビル219と協働してシート束の中央を綴じるように構成されている。
【0021】
サドルステイプラ218の下流位置には、折りローラ対226a,226bが設けられている。折りローラ対226の対向位置には、突出し部材225が設けられている。サドルステイプラ218で綴じられたシート束を折る場合には、綴じ処理終了後にシート束の綴じ位置が折りローラ対226の中央位置になるように前記シート位置決め部材を所定距離分下降させる。次に、突出し部材225をシート束に向けて突き出すことにより、このシート束は折りローラ対226間に押し出され、折りローラ対226によってシート束が二つ折り状に折り畳まれた中綴じ製本束となる。
【0022】
ここで、画像形成装置全体の制御を司る制御手段の構成について
図7を参照しながら説明する。
図7は
図1の画像形成装置全体の制御を司る制御手段の構成を示すブロック図である。
【0023】
図7に示すように、制御手段としてのCPU回路部150は、CPU151、ROM152、RAM153を有している。そして、CPU回路部150は、ROM152に格納されているプログラム及び操作部154の設定に従って、原稿給送装置制御部155、イメージリーダ制御部156、画像信号制御部157、プリンタ制御部158、フィニッシャ制御部159、外部インターフェイス160を統括的に制御する。それぞれ、原稿給送装置制御部155は原稿給送装置130を、イメージリーダ制御部156はイメージリーダ120を、プリンタ制御部158はプリンタ110を、フィニッシャ制御部159はフィニッシャ600を制御する。なお、本実施の形態においては、フィニッシャ600がフィニッシャ制御部159を介して画像形成装置本体側のCPU回路部150に間接的に制御される構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、フィニッシャ600が制御手段としてのフィニッシャ制御部159のみで制御されるようにしてもよいし、あるいはフィニッシャ600が画像形成装置本体側のCPU回路部150によって直接制御されるようにしてもよい。
【0024】
RAM153は制御データを一時的に保持する領域や、制御に伴う演算の作業領域として用いられる。外部インターフェイス160はコンピュータ161からのインターフェイスであり、プリントデータを画像に展開して画像信号制御部157へ出力する。イメージリーダ制御部156から画像信号制御部157へはイメージセンサで読み取られた画像が出力され、画像信号制御部157からプリンタ制御部158へ出力された画像は露光制御部へ入力される。
【0025】
また
図11に示すように、フィニッシャ制御部159は、CPU551、ROM552、RAM553を有している。CPU551は、ROM552に格納されているプログラム及びフィニッシャ制御部159の設定に従って、パンチ制御部554、整合制御部555、綴じ制御部556、中綴じ制御部557、折り制御部558、ソート制御部559を統括的に制御する。
【0026】
次に、フィニッシャ600における平綴じ処理部300の構成及びその動作について詳しく説明する。平綴じ処理部300は、ステイプラ301を有するステイプラユニットと、処理トレイ330を含む処理トレイユニットを有している。
【0027】
まず
図2及び
図3を用いて、平綴じ処理部300のステイプラユニットについて説明する。
図2はステイプラユニットの上面図、
図3はステイプラユニットの正面図である。
【0028】
図2及び
図3に示すように、ステイプラ(綴じ手段)301は、スライド支台303上に固定されている。スライド支台303の下方部には転動コロ304,305が係合され、この転動コロ304,305はステイプル移動台306上のガイドレール溝307に案内されるようになっている。これにより、ステイプラ301は、処理トレイ330上に積載されるシートの後端縁に沿って略平行に移動する。なお、ステイプラ301は、
図2に示すように、処理トレイ330上のシートの角部(位置A,D)においては、シートの後端縁に対して所定角度αだけ傾斜された姿勢に維持されることになる。本実施形態においては、所定角度α≒30°で構成されているが、ガイドレール溝307の形状を変えることによって、αの角度は変更可能である。
【0029】
また、前記ステイプラユニットには、ステイプラ301のホームポジションを検知する不図示の位置センサが設けられている。この位置センサはステイプル移動台306上に設けられている。ステイプラ301は、装置手前側にあたる
図2中位置Aがホームポジションに設定されており、装置停止中等のスタンバイ状態においてはこの位置Aで待機している。なお、本実施形態に係るステイプラ301は、設定に応じて、シートの角部(位置A,D)や背部(位置B,C)に移動し綴じ処理を行うことが可能となっている。
【0030】
次に
図4を用いて、前記ステイプラ301の矢印Y方向への移動機構について説明する。ステイプラ301の移動機構は、正逆回転可能な駆動モータ310と、駆動モータ310によって回転するベルトプーリ309a,309b間に張架された移動ベルト308を有している。移動ベルト308はスライド支台303の下方部に設けたベルト支持部311と係合している。これにより、駆動モータ310の正逆回転駆動によって移動ベルト308が回転し、ステイプラ301は移動ベルト308と一体となって矢印Y方向に移動する。
【0031】
次に
図2及び
図3を用いて、前記処理トレイ330を含む処理トレイユニットについて説明する。
【0032】
処理トレイユニットは、処理トレイ330、後端ストッパ331、左右端の整合手段340,341、揺動ガイド350、引込みパドル360、及び束排出ローラ対380によって構成されている。なお、シートを整合させるための整合手段としては、後端ストッパ331と引込みパドル360がシートの搬送方向の整合を行う整合手段として機能し、左右端の整合手段340,341がシートの幅方向の整合を行う整合手段として機能する。
【0033】
処理トレイ330は、シート束の排出方向下流側(
図3の左側)から上流側(
図3の右側)に向けて下方に傾斜した状態に設定されている。処理トレイ330の上流側端部には、後端ストッパ331が配置されている。また、処理トレイ330の中間部には、左右端の整合手段340、341が配置されている。また、処理トレイ330の上方領域部分には、引込みバドル360と揺動ガイド350が配置されている。
【0034】
なお、後端ストッパ331は、
図3に示すようにシートPの後端縁を突き当て支持する突当て支持面331aを有し、処理トレイ330の下面側で支持ピン331bを中心に矢印Z方向へ揺動可能に構成されている。
【0035】
本実施形態では、後端ストッパ331は、
図2に示すように4箇所(
図2中の331A,331B,331C,331D)設けられ、それぞれが単独で揺動可能に支持されている。各後端ストッパ331A~331Dは、ステイプラ301の所定の綴じ位置(
図2中のA,B,C,D)において、クリンチ領域(シート束を挟み込む領域)内に進入する位置で機能する。このため、ステイプラ301の綴じ位置にある後端ストッパがシートの後端縁を突き当てる位置で残存すると、ステイプラ301のクリンチによって後端ストッパを挟み込んでしまうことになる。そこで、これを防止するために、ステイプラ301の綴じ位置に位置する後端ストッパのみ矢印Z方向に回避し、残りの3つの後端ストッパで処理トレイ330上に入ってくるシートPの後端縁を突き当てるようにしている。例えば、
図2で、ステイプラ301が位置Aで綴じ処理を行う場合、後端ストッパ331Aのみクリンチ領域外(矢印Z方向)に回避したポジションをとり、残りの3つの後端ストッパ331B,331C,331DでシートPの後端縁を突き当て支持する。
【0036】
そして、第1排出ローラ対320から処理トレイ330上に排出されるシートPは、自身の自重及び引込みパドル360の作用によって、シートPの後端縁が後端ストッパ331の突当て支持面331aに突き当てられる。更に前記シートPは、左右端の整合手段340,341によって、シートの左右端(シート搬送方向と直交する幅方向の端部)が整合される。これにより、処理トレイ330上に収容されたシートは順次整合され、1つのシート束として束ねられる。
【0037】
さらに、処理トレイ330の下流側端部には、束排出ローラ対380を構成する一方の下部排出ローラ380aが配置されている。また揺動ガイド350の下面前端部には、下部排出ローラ380aに離接自在に当接される他方の上部排出口一ラ380bが配置されている。これら各排出ローラ380a,380bは、駆動モータにて正逆回転可能に構成されている。
【0038】
揺動ガイド350は、支持紬351を中心にして揺動自在に駆動制御され、下部排出ローラ380aに上部排出ローラ380bを当接させた閉口状態がホームポジションとなっている。そして、シートPが処理トレイ330上に排出される際には、束排出ローラ対380を開口状態に移行する。この開口状態とは、揺動ガイド350の上方への揺動により、上部排出ローラ380bが下部排出ローラ380aから離間した状態である。そして、処理トレイ330上での処理を終了したシート束を前記スタックトレイ622上へ排出する際には、束排出ローラ対380を閉口状態に移行する。この閉口状態とは、揺動ガイド350の下方への揺動により、上部排出ローラ380bと下部排出ローラ380aとによりシート束を挟持した状態である。または、シート束がない場合には、上部排出ローラ380bが下部排出ローラ380aに当接した状態である。
【0039】
次に、平綴じ処理部300のステイプラユニットによる一連の平綴じ処理に関して詳細に説明する。
【0040】
ステイプラ301は、綴じモード(本実施形態では1箇所綴じモード又は2箇所綴じモード)に応じて、シート束に対する所望のクリンチ位置(
図2に示す綴じ位置A~Dのいずれか)に予め待機している。そしてステイプラ301は、束の最終シートPの排出とその整合が完了した時点で、そのシート束を針綴じするものである。なお、本実施形態に係るステイプラユニットは、綴じモード(シート束の角部1箇所に綴じ処理を行う1箇所綴じモード、シート束の背部2箇所に綴じ処理を行う2箇所綴じモード)に応じた綴じ処理が可能であるが、以下の説明では1箇所綴じモードを例示する。
【0041】
ここで、ステイプラ301の構成について説明する。
図5に示すように、ステイプラ301は、第1の綴じ部としての移動側の上顎部301Uと、第2の綴じ部としての固定側の下顎部301Lで構成されている。ステイプラ301は、この上顎部301Uと下顎部301Lでシート束を挟み込んで綴じる。詳しくは、上顎部301Uが降下して下顎部301Lと共にシート束をクリンチすることで、下顎部301Lから突出するステイプル針がシート束を貫通し、針端部が上顎部301Uで内曲げされ、針でシート束をホールドするようにシート束が針綴じされる。クリンチ終了後、上顎部301Uは再び上昇し、下顎部301Lとの間口距離Lを保った状態で、次のクリンチ動作に備える。
【0042】
次に、
図2、
図5及び
図8を用いて、前述の綴じモード設定で1箇所綴じモードが選択された場合、フィニッシャ制御部159が制御する処理について説明する。
【0043】
まず1箇所綴じモードが選択されると、ステイプラ301は
図8に示されるように、シート束の所定の綴じ位置(本実施形態では
図2の位置A,Dのいずれか)に移動する(S301)。そして処理トレイ330上へシートが排出され(S302)、順次シートを後端ストッパ331へ引き込む(S303)。ステイプラ301は、前記所定の綴じ位置(
図2の位置A,Dのいずれか)で待機している。このとき、ステイプラ301は、前述した綴じ部301U、301Lの間口距離(第1の間口距離)Lで待機している。
【0044】
次に、処理トレイ330上に最終シートPが排出されたかどうかを判断する(S304)。シート束の最終シートPが排出されたと判断された場合(S304:Yes)、処理トレイ330上に排出された最終シートPは、引込みパドル360などの引き込みによりシート後端が後端ストッパ331に突き当てられる(S305)。さらに最終シートPの引き込み動作中にステイプラ301の上顎部301Uが下降を開始する(S306)。シート束の最終シートPが排出されていないと判断された場合(S304:No)再度処理トレイ330へのシート排出を行う(S302)。
【0045】
ステイプラ301の上顎部301Uの下降開始は、上顎部301Uと最終シートP間の距離Xと、上顎部301Uの下降速度Vによって変更することが出来る。距離Xを上顎部301Uの下降速度Vで除算することで、上顎部301Uが下降開始してから最終シートPの上面に上顎部301Uが当接するまでの時間XTを求めることが出来る。最終シートPの引き込み動作開始から引き込み終了までの時間HTと上顎部301Uが下降開始してから最終シートPの上面に上顎部301Uが当接するまでの時間XTを使用し上顎部301Uの下降開始時間を決定する(S306)。
【0046】
そして、最終シートPの引き込みが終了しステイプラ301が、シート束をクリンチして、クリンチ動作が完了したかを判断する(S307)。最終シートPの引き込みが終了しステイプラ301が、シート束をクリンチして、クリンチ動作が完了した場合(S307:Yes)、シート束は束排出ローラ対380によってスタックトレイ622上へ排出される(S308)。最終シートPの引き込みが終了していないまたはステイプラ301が、シート束をクリンチして、クリンチ動作が完了していない場合(S307:No)、再度、最終シートPの引き込みが終了しステイプラ301が、シート束をクリンチして、クリンチ動作が完了したかを判断する(S307)。
【0047】
上述した実施の形態によって、最終シートPの引き込み動作中にステイプラ301の上顎部301Uが下降を開始することで、処理トレイ330上に排出された最終シートPが後端ストッパ331に突き当てられた後、ステイプラ301が、シート束をクリンチして、針綴じがなされるよりも、針綴じに要する時間を短縮できるため、画像形成システム全体の生産性を向上させることができる。
【0048】
次に、
図2、
図5及び
図6を用いて、前述の綴じモード設定で1箇所綴じモードが選択された場合、フィニッシャ制御部159が制御する処理について説明する。
【0049】
まず1箇所綴じモードが選択されると、ステイプラ301は
図6に示されるように、シート束の所定の綴じ位置(本実施形態では
図2の位置A,Dのいずれか)に移動する(S201)。そして処理トレイ330上へシートが排出され(S202)、順次整合される(S203)。この整合動作中、ステイプラ301は、前記所定の綴じ位置(
図2の位置A,Dのいずれか)で待機している。このとき、ステイプラ301は、前述した綴じ部301U,301L間の間口距離(第1の間口距離)Lで待機している。このため、処理トレイ330上に排出されたシートを整合する際に、シートは綴じ部301U,301L間に進入する。
【0050】
処理トレイ330上へシート束の最終シートPが排出されたかどうかを判断する(S204)、シート束の最終シートPが排出されたと判断された場合(S204:Yes)。処理トレイ330上に排出された最終シートPは、まず引込みパドル360などの作用によりシート後端が後端ストッパ331に突き当てられる。次いで、整合手段340,341によってシート幅方向端部の整合動作が開始される(S205)。このシート幅方向端部の整合動作が開始されると、整合動作を開始してから整合動作を終了するまでに、前記ステイプラ301の上顎部301Uが下降を開始する(S206)。すなわち、ステイプラ301は前記所定の綴じ位置(
図2の位置A,Dのいずれか)で、処理トレイ330上に排出された最終シートPの後端が後端ストッパ331に突き当てられるまで、第1の間口距離Lを保った状態で待機している。そして、最終シートPの幅方向端部の整合動作中にステイプラ301の上顎部301Uが下降を開始する。シート束の最終シートPが排出されていないと判断された場合(S204:No)再度処理トレイ330へのシート排出を行う(S202)。
【0051】
そして、最終シート束の整合動作が終了し、ステイプラ301がシート束をクリンチして、クリンチ動作が完了したかを判断する(S207)。最終シート束の整合動作が終了しステイプラ301が、シート束をクリンチして、クリンチ動作が完了した場合(S207:Yes)、シート束は束排出ローラ対380によってスタックトレイ622上へ排出される(S208)。最終シート束の整合動作が終了していないまたはステイプラ301が、シート束をクリンチして、クリンチ動作が完了していない場合(S207:No)、再度、最終シート束の整合動作が終了しステイプラ301が、シート束をクリンチして、クリンチ動作が完了したかを判断する(S207)。
【0052】
上述した実施の形態によって、最終シートPの整合中にステイプラ301の上顎部301Uが下降を開始する(S205)ことで、処理トレイ330上に排出された最終シートPが整合手段340,341によってシート幅方向端部の整合動作が開始された後、ステイプラ301が、シート束をクリンチして、針綴じがなされる(S206)よりも、針綴じに要する時間を短縮できるので、画像形成システム全体の生産性を向上させることが出来る。
【0053】
前述のステイプラ301の上顎部301Uが下降を開始する(S206、S306)動作は、シート束の厚さによりシート束の最終シートPの排出を完了してから上顎部301Uが下降を開始する時間を変更するよう制御されても良い。シート束が厚い場合、上顎部301Uと最終シートP間の距離X2は小さくなる。
図12(b)に示すようにシート束が厚い場合の上顎部301Uの下降開始時間をTL、これに比べて
図12(a)に示すようにシート束が薄い場合の上顎部301Uの下降開始時間をTSとすると、TL>TSのような関係になり、シート束が薄い場合の方が上顎部301Uの下降開始を早めることが出来るため、シート束が厚い場合よりも画像形成システム全体の生産性を向上させることが出来る。
【0054】
また前述のステイプラ301の上顎部301Uが下降を開始する(S206、S306)動作は、シート束の枚数、シート束の印字率、シート束への印字範囲等の条件より算出されるシート束のカール量によりシート束の最終紙の排出を完了してから上顎部301Uが下降を開始する時間を変更するよう制御されても良い。シート束のカール量が大きい場合、上顎部301Uと最終シートP間の距離X3は小さくなる。
図12(b)に示すようにシート束のカール量が大きい場合の上顎部301Uの下降開始時間をCL、これに比べて
図12(a)に示すようにシート束のカール量が小さい場合の上顎部301Uの下降開始時間をCSとすると、CL>CSのような関係になり、カール量が小さい場合の方が上顎部301Uの下降開始を早めることが出来るため、カール量が大きい場合よりも画像形成システム全体の生産性を向上させることが出来る。
【0055】
本実施形態では、前記ステイプラ301の上顎部301Uが下降を開始する時間制御は、フィニッシャ制御部159内における演算結果に基づいて行われる。
【0056】
また前述のステイプラ301の上顎部301Uが下降を開始する(S206、S306)動作は、シート束の紙種の坪量により上顎部301Uが下降を開始する時間を変更するよう制御されても良い。最終シートPの坪量が小さい場合、積載動作や整合動作が終了しても、最終シートPの用紙の挙動が落ち着かないため、最終シートPの整合終了した後または、最終シートPの引き込みが終了した後に上顎部301Uが下降を開始することで、シート束が形成された後に綴じ処理動作を行うことが可能になる。坪量が大きい場合、制裁動作中、整合動作中に上顎部301Uが下降を開始することで坪量が小さい場合よりも画像形成システム全体の生産性を向上させることが出来る。
【0057】
前述したように、引込みパドル360による最終シートPの引き込み動作中、または整合手段340,341による最終シートPの整合動作中にステイプラ301の上顎部301Uの下降動作を開始出来るのは、引き込み動作または整合動作が終了した後にシート束に上顎部301Uが当接するように制御しているからである。
【0058】
前述したようにステイプラ301の上顎部301Uの下降動作を早くする制御を行うことで、針綴じに要するシート処理時間が短縮できる。このようにシート処理時間を短縮できるので、画像形成システム全体の生産性を向上させることが出来る。
【0059】
また本実施形態によれば、シート束の束厚やカール量、紙種などに応じて、綴じ動作の開始を早められる。これにより、シート束が少数枚である場合やカール量が少ない場合に、生産性を更に向上することが可能になる。
【0060】
また上述した実施の形態では、上顎部301Uが可動するタイプのステイプラを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、下顎部301Lのみが可動するタイプのステイプラであっても良いし、もしくは、上下両方の顎部301U,301Lが可動するタイプのステイプラであっても良く、同様の効果を得ることが出来る。
【0061】
また上述した実施の形態では、画像形成装置として複写機を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばプリンタ、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置であっても良い。或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成システムであっても良い。
【0062】
また上述した実施の形態では、画像形成装置本体に対して着脱自在なシート綴じ装置を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば画像形成装置が一体的に有するシート綴じ装置であっても良く、該シート綴じ装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることが出来る。