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特開2022-71340シート束断裁装置、及び画像形成装置とシート束断裁装置を備えた画像形成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071340
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】シート束断裁装置、及び画像形成装置とシート束断裁装置を備えた画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/00 20060101AFI20220509BHJP
   B42C 19/02 20060101ALI20220509BHJP
   B42C 11/02 20060101ALI20220509BHJP
   B42C 9/00 20060101ALI20220509BHJP
   B26D 1/06 20060101ALI20220509BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20220509BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20220509BHJP
   B65H 35/04 20060101ALI20220509BHJP
   B41J 11/66 20060101ALI20220509BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220509BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20220509BHJP
   B65H 9/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B65H37/00
B42C19/02
B42C11/02
B42C9/00
B26D1/06 Z
B26D7/06 E
B26D5/00 Z
B65H35/04
B41J11/66
G03G15/00 431
B65H37/04 A
B65H9/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180241
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】笹本 進也
【テーマコード(参考)】
2C058
2H072
3C027
3F102
3F108
【Fターム(参考)】
2C058AC08
2C058AF51
2C058LA03
2C058LA43
2C058LB09
2C058LB17
2C058LC21
2H072GA09
3C027HH01
3C027HH05
3C027HH11
3C027HH12
3C027HH14
3F102AA09
3F102AB01
3F102BA03
3F102BB08
3F102CB02
3F102DA10
3F102EA16
3F108GA01
3F108GB01
3F108GB06
3F108HA13
(57)【要約】
【課題】シート束の端縁を断裁した後、切り離された屑紙片からはみ出した接着剤によって屑紙片が付着して断裁部に留まってしまうことを防止する。
【解決手段】接着剤の温度が十分に下がった状態で断裁動作が行われるように接着剤の塗布が終了した側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないことで接着剤が乾く時間を確保し、接着剤が屑紙片からはみ出してしまった場合においても屑紙片を確実に屑紙片収納部に向けて落下させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次供給されるシートを集積してシート束を形成する集積手段と、
前記集積手段によって形成されたシート束を接着剤塗布位置、表紙シート綴じ位置、断裁位置に順次所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記接着剤塗布位置に配置され、前記搬送手段によって前記接着剤塗布位置に搬送されたシート束の背部端縁に沿って接着剤を塗布し、前記接着剤塗布位置に搬送されたシート束の天部側、もしくは地部側で接着剤の塗布を終了する接着剤塗布手段と、
表紙シートを前記表紙シート綴じ位置に向けて前記搬送方向と交差する所定の表紙シート搬送方向に搬送する表紙シート搬送手段と、
前記表紙シート綴じ位置に配置され、前記搬送手段によって前記表紙シート綴じ位置に搬送されたシート束に前記表紙シート搬送手段によって搬送された前記表紙シートを綴じ合わせる表紙シート綴じ手段と、
前記断裁位置に配置され、前記搬送手段によって前記断裁位置に搬送されたシート束の角度姿勢を偏向する偏向手段と、
前記断裁位置に配置され、前記偏向手段によって角度姿勢を偏向したシート束の背部を除く天部、地部、小口部の少なくとも2つの端縁を断裁する断裁手段と、
前記接着剤塗布手段により接着剤の塗布が終了した天部側、もしくは地部側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないように前記断裁手段を制御する制御手段を備えたシート束断裁装置。
【請求項2】
前記接着剤塗布手段によってシート束の背部端縁に塗布された接着剤の塗布量を認識する接着剤塗布量認識手段を備え、
前記制御手段は、
前記接着剤塗布量認識手段によって認識される接着剤塗布量が所定値以上であると認識した場合、
前記接着剤塗布手段により接着剤の塗布が終了した天部側、もしくは地部側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないように前記断裁手段を制御する請求項1記載のシート束断裁装置。
【請求項3】
前記集積手段によって形成されたシート束の束厚さを認識する束厚さ認識手段を備え、
前記制御手段は、
前記束厚さ認識手段によって認識されるシート束の束厚さが所定値未満であると認識した場合、
前記接着剤塗布手段により接着剤の塗布が終了した天部側、もしくは地部側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないように前記断裁手段を制御する請求項1記載のシート束断裁装置。
【請求項4】
前記集積手段によって形成されたシート束の天部、地部、小口部の端縁の少なくとも1つ以上の長さを認識するシート長さ認識手段を備え、
前記制御手段は、
前記シート長さ認識手段によって認識されるシート束の天部、地部、小口部の端縁の少なくとも1つ以上の長さが所定値未満であると認識した場合、
前記接着剤塗布手段により接着剤の塗布が終了した天部側、もしくは地部側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないように前記断裁手段を制御する請求項1記載のシート束断裁装置。
【請求項5】
前記接着剤塗布手段によって接着剤が塗布されたシート束の背部端縁の長さを認識するシート幅認識手段と、
前記表紙シート搬送手段によって搬送される表紙シートの前記所定の搬送方向に直交するシート幅を認識する表紙シート幅認識手段を備え、
前記制御手段は、
前記表紙シート幅認識手段によって認識される表紙シートの幅が前記シート幅認識手段によって認識されるシート束の背部端縁の長さよりも所定値以上短いと認識した場合に
前記接着剤塗布手段により接着剤の塗布が終了した天部側、もしくは地部側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないように前記断裁手段を制御し、
所定値よりも長いと認識した場合にシート束の天部端縁を一番初めに断裁するように前記断裁手段を制御する請求項1記載のシート束断裁装置。
【請求項6】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
請求項1乃至請求項5に記載のシート束断裁装置を備えた画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート束の端縁を断裁するシート束断裁装置、及び画像形成装置とシート束断裁装置を備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の断裁装置は、束状に部揃え集積したシート束の背部を綴じ処理してシート束の端縁を断裁するシート束断裁装置として知られている。断裁方法としては、天部、地部、小口部のいずれか一方向を断裁する場合と、三方向を断裁する方法が採られている。また、断裁機構としては、紙載テーブルに載置したシート束を平板形状の平刃で断裁するギロチン断裁機構と、円板形状の回転刃をシート束の一端から他端に移動させて断裁するディスク断裁機構が採用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、回転テーブルに支持した偏向機構によって断裁するシート束の端縁を断裁位置にセットし、平板形状の断裁刃と刃受部材をシート束で挟んで対向する位置に配置し、断裁刃を待機位置から断裁刃位置に移動することによってシートを断裁する機構が開示されている。同文献の刃受部材はゴム等の軟質素材で構成され、刃先エッジの損耗を防止している。
【0004】
上述のように刃受部材と断裁刃を対向配置してシート束を断裁する機構は既に知られている。この場合に刃受部材は比較的軟質な素材で構成し、刃先の損耗を防止することも当然に行なわれている。またシート束を断裁した屑紙片は、その自重で落下させ屑紙片収納部に収容している。なお、一般に、天部、地部、小口部の三方向を断裁する場合、断裁処理は天部、地部、小口部の順番で行われる。
【0005】
また、特許文献1には断裁機構の上流側にシートを部揃え集積して、その背部に接着剤を塗布した後に表紙シートで綴じる機構が開示されている。一般に、部揃え集積したシート束の背部に接着剤塗布手段によって接着剤を塗布する場合、シート束の天部側から地部側に向けて接着剤が塗布される。この場合、接着剤塗布手段はシート束の天部側を待機位置とし、地部側に向けて接着剤を塗布した後、接着剤塗布の折り返し位置(以降、リターン位置とする)にて停止した後、再度リターン位置から待機位置へと移動し接着剤塗布動作を終了する。
【0006】
このような機構でシート束を断裁するとき、断裁した屑紙片が断裁部に引っ掛かって落下することなくその位置に留まって搬送不良を引き起こすことがある。これは刃受部材に生じた切断傷(溝)に屑紙片が引っかかることに原因する。そこで特許文献1には断裁位置の上流側に配置されているシート束の姿勢を偏向させる偏向機構を、断裁処理した後にシート束を保持した状態で下流側に移動させて刃受部材に付着した屑紙片を強制的に掃き落とすことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-82790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で提案されている技術では、刃受部材に生じた切断傷(溝)に屑紙片が引っかかってしまった屑紙片をシート束から切り離すことは可能だが、その後、切り離された屑紙片からはみ出した接着剤によって屑紙片が付着して断裁部に留まってしまうという課題があった。
【0009】
上述したように、シート束に接着剤塗布手段によって接着剤を塗布する場合、接着剤塗布手段はシート束の天部側から接着剤の塗布を開始し、シート束の天部側に配置された待機位置に戻って塗布動作を完了させているが、この時、接着剤の塗布量や温度等の条件によってはシート束の天部側から接着剤がはみ出てしまうことがある(例えば、図5に示すような糸引き状態などが考えられる)。
【0010】
さらに、上述したように、シート束の端縁を断裁する場合、接着剤の温度が十分に下がらない状態で天部を一番初めに断裁するため、断裁された屑紙片からはみ出した粘着性が強い接着剤が付着してしまい屑紙片が断裁部に留まってしまっていた。
【0011】
そこで、本発明では、接着剤の温度が十分に下がった状態で断裁動作が行われるように接着剤の塗布が終了した側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないことで、接着剤が屑紙片からはみ出してしまった場合においても屑紙片を確実に屑紙片収納部に向けて落下させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明では下記の構成を有する。
順次供給されるシートを集積してシート束を形成する集積手段と、
前記集積手段によって形成されたシート束を接着剤塗布位置、表紙シート綴じ位置、断裁位置に順次所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記接着剤塗布位置に配置され、前記搬送手段によって前記接着剤塗布位置に搬送されたシート束の背部端縁に沿って接着剤を塗布し、前記接着剤塗布位置に搬送されたシート束の天部側、もしくは地部側で接着剤の塗布を終了する接着剤塗布手段と、
表紙シートを前記表紙シート綴じ位置に向けて前記搬送方向と交差する所定の表紙シート搬送方向に搬送する表紙シート搬送手段と、
前記表紙シート綴じ位置に配置され、前記搬送手段によって前記表紙シート綴じ位置に搬送されたシート束に前記表紙シート搬送手段によって搬送された前記表紙シートを綴じ合わせる表紙シート綴じ手段と、
前記断裁位置に配置され、前記搬送手段によって前記断裁位置に搬送されたシート束の角度姿勢を偏向する偏向手段と、
前記断裁位置に配置され、前記偏向手段によって角度姿勢を偏向したシート束の背部を除く天部、地部、小口部の少なくとも2つの端縁を断裁する断裁手段と、
前記接着剤塗布手段により接着剤の塗布が終了した天部側、もしくは地部側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないように前記断裁手段を制御する制御手段を備えたシート束断裁装置である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、接着剤の温度が十分に下がった状態で断裁動作が行われるように接着剤の塗布が終了した側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないため、接着剤が屑紙片からはみ出してしまった場合においても屑紙片を確実に屑紙片収納部に向けて落下させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係わる画像形成装置H001とシート束断裁装置Bを組み合わせた全体構成を示した説明図。
図2】本発明に係わるシート束断裁装置Bの断裁部Aの構成を示した説明図。
図3】背部Sdを接着剤で綴じ処理されたシート束の三方向を断裁する断裁処理の説明図であり、(a)は断裁状態を示す斜視構成、(b)は断裁領域の説明図。
図4】接着剤塗布手段43の動作説明図。(a)は接着剤の塗布を開始する状態を、(b)は接着剤を塗布している途中の状態を、(c)は接着剤の塗布が完了した状態を示す。
図5】接着剤の糸引き状態を説明した説明図。
図6図1の装置構成における断裁・排出動作の手順を示すフローチャート。
図7図1の装置構成のおける断裁動作状態の説明図であり、(a)は断裁状態を、(b)は断裁後の掃き落とし動作状態を示す。
図8図1の装置構成における断裁順番決定処理を備えた断裁・排出動作の手順を示すフローチャート。
図9】断裁順番決定処理の手順を示すフローチャート。
図10】断裁順番決定処理の結果に基づき偏向手段10によって偏向されたシート束の角度姿勢の説明図。(a)は断裁位置Cpにセットされた時のシート束の角度姿勢を、(b)は地部Sb端縁断裁時のシート束の角度姿勢を、(c)は小口部Sc端縁断裁時のシート束の角度姿勢を、(d)は天部Sa端縁断裁時のシート束の角度姿勢を、(e)は排出経路48への排出時のシート束の角度姿勢を示す。
図11図1の全体構成における制御構成のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる画像形成装置H001とシート束断裁装置Bを備えた画像形成システムを示す全体構成図である。また、図2は、本発明に係わるシート束断裁装置Bの断裁部Aの構成説明図である。
【0016】
[画像形成装置]
画像形成装置H001について図1に従って説明する。この画像形成装置H001は、給紙部H002からシートを画像形成部H005に送り、画像形成部H005でシートに画像形成した後、本体排出口H011から排出するように構成されている。給紙部H002は複数サイズのシートが給紙カセットH003、H004に収納してあり、指定されたシートを1枚ずつ分離して画像形成部H005に給送する。
【0017】
画像形成部H005には例えば静電ドラムH006と、その周囲に配置されたレーザー発光器H007と現像器H008と、転写チャージャH009と定着器H010が配置されている。画像形成部H005は、静電ドラムH006上にレーザー発光器H007で静電潜像を形成し、これに現像器H008でトナーを付着し、転写チャージャH009でシート上に画像を転写し、定着器H010で加熱定着し画像形成する。このようにして画像形成されたシートは本体排出口H011から順次搬出される。また両面印刷の際は、定着器H010から表面側に画像形成したシートを、スイッチバック経路H013を介して表裏反転した後、循環経路H012を経由し、再び画像形成部H005に給送してシートの裏面側に画像形成する両面印刷の経路である。このように両面印刷されたシートはスイッチバック経路H013で表裏反転された後、本体排出口H011から搬出される。
【0018】
画像読取装置H014では、プラテンH015上にセットした原稿シートをスキャンユニットH016で走査し、光電変換素子(たとえばCCD)で電気的に読み取る。この画像データは画像処理部で例えばデジタル処理された後、データ記憶部H017に転送され、前記レーザー発光器H007に画像信号を送る。また、原稿送り装置H018では、原稿スタッカH019に収容した原稿シートをプラテンH015に給送する。また、画像形成装置H001には上記スキャンユニットH016で読み取った画像データ或いは外部のネットワークから転送された画像データがデータ貯蔵部H020に蓄積される。このデータ貯蔵部H020から画像データはバッファメモリH022に転送され、このバッファメモリH022から順次にレーザー発光器H007にデータ信号が移送されるように構成されている。
【0019】
[シート束断裁装置]
次にシート束断裁装置Bについて図1に従って説明する。このシート束断裁装置Bはケーシング30内にシートを束状に集積して部揃えする集積部40と、この集積部40からのシート束に接着剤を塗布する接着剤塗布手段43と、接着剤を塗布されたシート束に表紙シートを綴じ合わせる表紙シート綴じ手段45と後述する断裁部Aから構成されている。
【0020】
[搬送経路]
各シートの搬送経路について説明すると、上記ケーシング30内には画像形成装置H001の本体排出口H011に連なる搬入口26を有する搬入経路31が設けられ、この搬入経路31から中紙シート搬送経路32と表紙シート搬送経路34が経路切換フラッパ36を介して連結されている。そして中紙シート搬送経路32には集積部40を介して表紙シート綴じ経路33が連設されている。表紙シート綴じ経路33は略々鉛直方向にシート束断裁装置Bを縦断する方向に、表紙シート搬送経路34は略々水平方向にシート束断裁装置Bを横断する方向に配置されている。
【0021】
表紙シート綴じ経路33と表紙搬送経路34とは互いに交差(直交)し、その交差部に後述する表紙シート綴じ手段45が配置されるようになっている。搬入経路31は画像形成装置H001の本体排出口H011に連なり、画像形成装置H001から画像形成されたシートを受け入れる。この場合、画像形成装置H001からはコンテンツ情報が画像形成されたシート(中紙シート)と表紙カバーとして使用するタイトルなどが画像形成されたシート(表紙シート)とが搬送される。このように搬入経路31は中紙シート搬送経路32と表紙シート搬送経路34とに分岐され経路切換フラッパ36を介して画像形成されたシートをそれぞれの経路に振り分け搬送することとなる。
【0022】
一方、上記搬入経路31にはインサータ装置27が連結してあり、画像形成装置H001で画像形成処理しない表紙シートを給紙トレイ27aから1枚ずつ分離して搬入経路31に供給するように構成してある。このインサータ装置27は一段又は複数段の給紙トレイ27aを備え、このトレイ先端には積載されたシートを1枚ずつ分離して給送する給紙手段(不図示)と、この給紙手段の下流側に給紙経路28が設けられ、この給紙経路28は経路切換片29を介して搬入経路31に連結している。
【0023】
また上記搬入経路31には搬入ローラ31aが、中紙シート搬送経路32には中紙シート搬送ローラ32aが、表紙シート綴じ経路33にはシート束搬送手段41(以下、グリップ搬送手段41とする)と後述する断裁部Aと排出経路48が配置されている。また表紙シート搬送経路34には表紙シート搬送ローラ34aが配置され、それぞれ図示しない搬送モータに連結されている。
【0024】
[集積部]
集積部40に配置された集積トレイ42は中紙シート搬送経路32からのシートを束状に積載収納する。図1に示すように集積トレイ42は略々水平姿勢に配置されたトレイ部材で構成され、その上方には正逆転ローラ42aと搬入ガイド42bが設けられている。
【0025】
そして中紙シート搬送経路32からの中紙シートを搬入ガイド42bで集積トレイ42上に案内し、正逆転ローラ42aで収納する。この正逆転ローラ42aは正回転で中紙シートを集積トレイ42の先端側に移送し、逆回転で集積トレイ42後端側(図1右端)に配置された規制部材(不図示)に中紙シート後端を突き当て規制する。また集積トレイ42には図示しないシートサイド整合手段が設けられ集積トレイ42上に収納した中紙シートを基準位置に幅寄せ整合する。このような構成で中紙シート搬送経路32からの中紙シートは集積トレイ42上に順次積み上げられ束状に部揃えされる。
【0026】
[グリップ搬送手段]
前記表紙シート綴じ経路33には集積トレイ42からシート束を下流側の接着剤塗布位置Eに移送するグリップ搬送手段41が配置されている。このグリップ搬送手段41は図1に示すように集積トレイ42に集積したシート束を水平姿勢から鉛直姿勢に偏向し、このシート束を略々鉛直方向に配置された表紙シート綴じ経路33に沿って接着剤塗布位置Eに搬送セットする。このため、集積トレイ42は集積位置(図1実線)から引き渡し位置(図1破線)に移動し、この引き渡し位置で準備されたグリップ搬送手段41にシート束を引き渡すようになっている。
【0027】
[接着剤塗布手段]
前記表紙シート綴じ経路33の接着剤塗布位置Eには接着剤塗布手段43が配置されている。この接着剤塗布手段43は図4に示すように熱溶融性の接着剤を収容する接着剤容器43aと、塗布ロール43bと、図示しないロール回転モータとで構成されている。また、接着剤容器43aには、接着剤の残量を検出する接着剤センサ(不図示)が設けられている。接着剤センサは、接着剤の温度検出機能も兼ねており、シート束断裁装置制御部CPU55は接着剤容器43a内の検出温度に基づいて所定の溶融温度に温度調整する。塗布ロール43bは耐熱性の多孔質材で構成され、接着剤を含侵してロール周囲に接着剤の層が盛り上がるように構成されている。
【0028】
上述のように構成された接着剤容器43aはグリップ搬送手段41によって接着剤塗布位置Eに搬送されたシート束の背部Sdの端縁に沿って接着剤容器移動モータMSにより往復駆動する。接着剤容器43aの待機位置は、接着剤容器ホームポジションセンサShによって検出される。図4(a)は、接着剤塗布位置Eに搬送されたシート束の背部Sdの端縁に沿って接着剤を塗布するために、待機位置に待機する接着剤容器43aを接着剤容器移動モータMSにより図4(a)の矢印方向へ向けて駆動開始する状態を示した図である。以上より、本願明細書における実施形態では、接着剤は必ずシート束の天部Sa側から塗布されることになる。
【0029】
図4(b)は、接着剤容器43aが接着剤容器ホームポジションセンサShを抜けシート束の背部Sdの端縁に沿って接着剤を塗布している途中の状態を示した図である。その後、接着剤容器43aが接着剤塗布のリターン位置に到達すると、シート束断裁装置制御部CPU55は接着剤容器移動モータMSの駆動を停止する。リターン位置は基本的にはシート束の背部Sd端縁の長さによって決定するが、接着剤容器43aの位置は、接着剤容器ホームポジションセンサShを抜けてからの接着剤容器移動モータMSの駆動パルスをカウントすることにより検出することができるため任意に決定することも可能である。
【0030】
図4(c)は、接着剤容器43aが接着剤の塗布を終了し待機位置に戻ってきた状態を示した図である。上述したように接着剤容器43aがリターン位置に到達するとシート束断裁装置制御部CPU55は接着剤容器移動モータMSの駆動を停止する。その後、シート束断裁装置制御部CPU55は接着剤容器43aをリターン位置から待機位置に戻すため接着剤容器移動モータMSの逆回転駆動を開始し、接着剤容器43aが接着剤容器ホームポジションセンサShによって待機位置を検出すると接着剤の塗布は終了する。以上より、本願明細書における実施形態では、接着剤の塗布は必ずシート束の天部Sa側で終了することになる。
【0031】
[表紙綴じ手段]
前記表紙シート綴じ経路33の表紙シート綴じ位置F(図2参照)には表紙綴じ手段45が配置されている。この表紙シート綴じ手段45は図1に示すように背当てプレート46aと背折りプレート46bと折りロール47で構成される。この表紙シート綴じ位置Fには上述の表紙シート搬送経路34が配置され、画像形成装置H001又はインサータ装置27から表紙シートを給送する。
【0032】
背当てプレート46bは表紙シートをバックアップする板状部材で構成され、表紙シート綴じ経路33に進退自在に配置されている。この背当てプレート46bに支持された表紙シートにグリップ搬送手段41によって集積トレイ42から搬送されたシート束が逆T字状に接合される。背折りプレート46bは左右一対のプレス部材で構成され、逆T字状に接合された表紙シートの背部Sdを背折り成型するため、図示しない駆動手段で互いに接近及び離反するように構成されている。また折りロール47は背折り成型されたシート束を挟圧して表装仕上げする一対のローラで構成されている。
【0033】
[断裁部]
図2に従って本発明に係わるシート束断裁装置Bの断裁部Aについて説明する。断裁部Aは、シート束を保持した状態で所定角度方向に偏向する偏向手段10と、この偏向手段10を偏向する駆動手段(不図示)と、偏向手段10を屑紙片の落下方向に位置移動するシフト手段25と、所定の断裁位置Cpにシート束を保持するプレス手段17と、断裁位置Cpに保持されたシート束を断裁する断裁手段20と、断裁位置Cpで断裁された屑紙片を収納する図1に示す屑紙片収納部51で構成されている。
【0034】
上記偏向手段10は、シート束を保持した状態で偏向する一対の偏向部材、グリップ部材、ターンテーブルなどで構成する。偏向手段10は一対の偏向部材(第1グリップ部材10aと第2グリップ部材10b)で構成され、シート束を断裁位置Cpの上流側で偏向させる。その後、シフト手段25によりシート束を保持した状態で下流側に移動させ断裁端縁を断裁位置Cpに望ませる。
【0035】
上記断裁手段20は、平板形状の断裁刃22と、この断裁刃とシート束を挟んで対向する位置に配置された刃受部材21と、断裁刃22を待機位置(不図示)から断裁位置Cpに移動する断裁刃駆動モータMcで構成されている。
【0036】
図示の偏向手段10は、第1グリップ部材10aと第2グリップ部材10bで構成され、両部材はユニットフレーム15に偏向可能に軸受支持されている。第1グリップ部材10aはシート束をニップする方向(挟圧方向)に移動可能に支持され、グリップモータMgでシート束を第2グリップ部材10bとの間でニップおよびニップ解除するように構成されている。
【0037】
上記第1グリップ部材10aには第1偏向モータMt1が、第2グリップ部材10bには第2偏向モータMt2がそれぞれ連結され、両モータは同一の偏向速度で各グリップ部材を偏向するように構成されている。またユニットフレーム15は、上述の第1グリップ部材10aと第2グリップ部材10bを搭載した状態で断裁位置Cpに向けて位置移動可能に構成され、シフトモータMfとラックピニオン機構(不図示)でグリップしたシート束を断裁位置Cp方向に移送する。
【0038】
上記プレス手段17は、偏向手段10で断裁位置Cpに送られたシート束を断裁可能に保持する。このプレス手段17は、加圧部材19とこれを付勢する不図示の付勢スプリングと加圧解除部材(牽引部材、スクリューネジ部材なと)で構成する。
【0039】
上記断裁手段20は、板状の断裁刃22と、断裁刃作動部材(スクリュー機構)23と、断裁刃駆動モータMcで構成されている。刃受部材21は断裁位置Cpにシート束を挟んで断裁刃22と対向する位置に配置され、断裁刃22の刃先を損耗しない弾性部材で構成されている。
【0040】
上記偏向手段10には、屑紙片の落下方向に移動するシフト手段25が設けてある。シフト手段25は、偏向手段10で断裁位置Cpに向けて姿勢偏向させたシート束を断裁位置Cpに給送する搬送機構を兼ねている。図示の装置は、後述するように偏向手段10でシート束を偏向して姿勢偏向したのちに断裁位置Cp方向に束移動させ、シート束の断裁ラインと断裁刃22を一致させている。
【0041】
このような構成において、シート束断裁装置制御部CPU55は偏向手段10とプレス手段17と断裁手段20を次のように制御する。偏向手段10は上流側から送られたシート束を、第1グリップ部材10aと、第2グリップ部材10bとの間でニップする。この動作はグリップモータMgを偏向して、図示しないグリップセンサ(例えば第1グリップ部材10aに配置したシート接触センサ)からの信号でグリップモータMgを停止する。するとシート束は第1グリップ部材10aと第2グリップ部材10bで挟持され、その加圧力は図示しない加圧スプリングで付与されている。
【0042】
次にシート束断裁装置制御部CPU55は、第1偏向モータMt1と第2偏向モータMt2を同一方向に同一速度で回転する。図示の第1偏向モータMt1と第2偏向モータMt2はステッピングモータでその偏向角度をコントロール可能(例えばPWM制御)に構成されている。また、第1偏向モータMt1と第2偏向モータMt2の回転速度もモータドライバに供給するパルス電源のデューティ比で高速度から低速度まで調整可能となっている。
【0043】
続いて、シート束断裁装置制御部CPU55によって実行される断裁動作について説明する(本願明細書においては、図3(a)(b)に示すように背部Sdを接着剤で綴じ処理されたシート束の断裁について説明する)。断裁方法については、例えば、図3(a)(b)に示すような天部Saと地部Sbと小口部Scを断裁する三方向断裁や小口部Scのみを断裁する一方向断裁などがある。なお、図3(b)の斜線範囲は、それぞれ天部Sa、地部Sb、小口部Scの断裁領域を示している。画像形成制御部CPU53には給紙制御部58と入力部52が備えており、オペレータはこの入力部52に設けられたコントロールパネル54から三方向断裁するか、一方向断裁するか等の設定を行うことができる。また、コントロールパネル54からはシートサイズ、枚数情報、断裁処理後の仕上げサイズ等も任意に設定することが可能である。
【0044】
例えば、コントロールパネル54より三方向断裁が設定された場合、シート束断裁装置制御部CPU55は、背部Sdを断裁位置Cpに向けて(図1下方向)シート束を搬送し、90度偏向させて天部Saを断裁し、次に180度偏向させて地部Sbを断裁し、次いで90度偏向させて小口部Scを断裁し、最後に180度偏向させて背部Sdから排出経路48に排出する。また、シート束断裁装置制御部CPU55は、各断裁処理が終了する毎にシート束を保持した状態で偏向手段10を屑紙片の落下方向に移動させる「屑紙片掃き落し動作」を実行する。
【0045】
なお、各断裁端縁の断裁量は、シート束断裁装置制御部CPU55によって天部Saと地部Sbの場合には[(シートサイズ-仕上げサイズ)/2]で演算され、小口部Scの場合には[(シートサイズ-仕上げサイズ)]で演算される。またこれらの算出値が予め設定された最小断裁量より小さいときには、断裁量は最小断裁量に設定される。
【0046】
以下に、シート束を断裁部Aに搬送してから排出経路48に排出するまでの断裁・排出動作手順について図6に示すフローチャートと図7の断裁動作状態の説明図に従って説明する。なお、特に断りのない限り、以下の動作はシート束断裁装置制御部CPU55により実行される。
【0047】
まず、断裁部Aの上流側から断裁部Aに向けてシート束を給送する(St01)。次に偏向手段10でシート束を保持し(St02)、設定された断裁端縁が断裁位置Cpに望むようシート束を偏向する(St03)。
【0048】
次に偏向手段10で断裁端縁を断裁位置Cpの断裁線を基準に断裁量カットするようにセットする(St04)。次いでプレス手段17でシート束の断裁端縁を加圧保持し(St05)、断裁刃22を図示しない待機位置から図示しない断裁位置に移動して断裁端縁を断裁する(St06)。図7(a)は、断裁刃22によって天部Saを断裁した時に切断した屑紙片が切断部に引っ掛かって落下することなくその位置に留まっている状態を示している。
【0049】
次いでプレス手段17によるシート束の加圧を解除する(St07)。そして偏向手段10を屑紙片の落下方向に所定量移動する屑紙片掃き落し動作を実行する(St08)。この動作によって断裁動作で刃受部材21などに引っ掛かって滞留する屑紙片を強制的に落下させた(図7(b)の状態)後に、偏向手段10を上昇させ元の位置に復帰させる(St09)。断裁によって発生した屑紙片は、以上の動作で落下して屑紙片収納部51に回収される(St10)。
【0050】
続けて、コントロールパネル54より設定された断裁方法に基づいてSt11にて断裁動作を継続する否かを判定する。断裁動作を続行するとき(St11:YES)、シート束断裁装置制御部CPU55はSt03に戻って残りのシート端縁を断裁する。断裁終了後は先と同様に偏向手段10を所定量落下方向に移動する。以上の動作を繰り返してシート束の端縁を順次断裁する。断裁終了後は屑紙片掃き落し動作で屑紙片を屑紙片収納部51に回収する。予定されている全てのシート束の端縁の断裁が終了し、St11にて断裁動作を継続する必要がないと判定された場合(St11:NO)は、シート束を排出経路48を経由して収納スタッカ50に排出して(St12)断裁・排出動作を終了する。
なお、収納スタッカ50は図1に示すようにケーシング30に配置され、シート束断裁装置手前側に引出可能に構成されている。
【0051】
以上が、屑紙片掃き落し動作を備えた従来の断裁・排出動作の実行手順であり、断裁処理が終了する毎にシート束を保持した状態で偏向手段10を屑紙片の落下方向に移動させているため、刃受部材21に付着した屑紙片を強制的に掃き落とすことが可能である。
【0052】
しかし、上述した従来の断裁・排出動作では、刃受部材21に生じた切断傷(溝)に屑紙片が引っかかってしまった屑紙片をシート束から切り離すことは可能だが、その後、切り離された屑紙片からはみ出した接着剤によって屑紙片が付着して断裁部Aに留まってしまうという課題があった。
【0053】
上述したように、シート束に接着剤塗布手段43によって接着剤を塗布する場合、接着剤容器43aは待機位置(シート束の天部Sa側)に戻って塗布動作を完了させているが、この時、接着剤の塗布量や温度等の条件によってはシート束の天部Sa側から接着剤がはみ出てしまうことがある(例えば、図5に示すような糸引き状態などが考えられる)。
【0054】
さらに、上述したように、シート束の端縁を断裁する場合、接着剤の温度が十分に下がらない状態で天部Saを一番初めに断裁するため、断裁された屑紙片からはみ出した粘着性が強い接着剤が付着してしまい屑紙片が断裁部Aに留まってしまっていた。
【0055】
次に、上記問題を解決するための本発明の断裁順番決定処理を備えた断裁・排出動作について、天部Sa、地部Sb、小口部Scの三方向を断裁する三方向断裁を例に説明する。図8は断裁順番決定処理を備えた断裁・排出動作の手順を示すフローチャートを、図9は断裁順番決定処理の手順を示すフローチャートを示している。また、従来の断裁・排出動作についてはすでに説明しているため、本発明の断裁順番決定処理を備えた断裁・排出動作においては、特に従来の断裁・排出動作との制御差に特化して説明するものとする。なお、特に断りのない限り、以下の動作はシート束断裁装置制御部CPU55により実行される。
【0056】
本発明の断裁順番決定処理を備えた断裁・排出動作では、St02で偏向手段10によりシート束を保持した後、St21にて断裁順番決定処理を実行する。断裁順番決定処理については図9のフローチャートを用いて説明する。
【0057】
シート束断裁装置制御部CPU55は、接着剤塗布手段43によってシート束の背部Sd端縁に塗布された接着剤の塗布量を認識する接着剤塗布量認識手段を備えており、接着剤塗布量認識手段によって認識される接着剤の塗布量に基づいて断裁処理の順番を変更するか否かを判定することができる。接着剤塗布量認識手段によって認識される接着剤の塗布量については、例えば、コントロールパネル54から入力される断裁方法、シートサイズ、枚数情報、断裁処理後の仕上げサイズ等の情報等を元に認識される。
【0058】
St31では、接着剤塗布量認識手段によって認識される接着剤の塗布量が所定値以上であると判定した場合(St31:YES)は、断裁された屑紙片から接着剤がはみ出てしまう可能性が高いと判定して処理をSt35へ進める。また、接着剤塗布量認識手段によって認識される接着剤の塗布量が所定値未満であると判定した場合(St31:NO)は、断裁された屑紙片から接着剤がはみ出てしまう可能性が低いと判定して処理をSt32へ進める。
【0059】
また、シート束断裁装置制御部CPU55は、集積部40に部揃え集積したシート束の束厚さを認識する束厚さ認識手段を備えており、束厚さ認識手段によって認識されるシート束の束厚さに基づいて断裁処理の順番を変更するか否かを判定することができる。束厚さ認識手段によって認識されるシート束の束厚さについては、例えば、コントロールパネル54から入力される断裁方法、シートサイズ、枚数情報、断裁処理後の仕上げサイズ等の情報等を元に認識される。
【0060】
St32では、束厚さ認識手段によって認識されるシート束の束厚さが所定値未満であると判定した場合(St32:YES)は、束厚さ認識手段によって認識されるシート束の束厚さが所定値以上である場合と比べてシート束の端縁の断裁時間が短くなってしまうため、接着剤の温度が十分に下がらない状態で天部Saを一番初めに断裁してしまうと判定して(屑紙片からはみ出した接着剤が断裁部Aに付着してしまう可能性が高いと判定して)処理をSt35へ進める。また、束厚さ認識手段によって認識されるシート束の束厚さが所定値以上であると判定した場合(St32:NO)は、天部Saを一番初めに断裁したとしても接着剤の温度が十分に下がった状態で断裁を完了することができると判定して(屑紙片からはみ出した接着剤が断裁部Aに付着してしまう可能性が低いと判定して)処理をSt33へ進める。
【0061】
また、シート束断裁装置制御部CPU55は、集積部40に部揃え集積したシート束の天部Sa、地部Sb、小口部Scの端縁の少なくとも1つ以上の長さを認識するシート長さ認識手段を備えており、シート長さ認識手段によって認識されるシート束の天部Sa、地部Sb、小口部Scの端縁の少なくとも1つ以上の長さに基づいて断裁処理の順番を変更するか否かを判定することができる。シート長さ認識手段によって認識されるシート束の天部Sa、地部Sb、小口部Scの端縁の少なくとも1つ以上の長さについては、例えば、コントロールパネル54から入力される断裁方法、シートサイズ、枚数情報、断裁処理後の仕上げサイズ等の情報等を元に認識される。
【0062】
St33では、シート長さ認識手段によって認識されるシート束の天部Sa、地部Sb、小口部Scの端縁の少なくとも1つ以上の長さが所定値未満であると判定した場合(St33:YES)は、シート長さ認識手段によって認識されるシート束の天部Sa、地部Sb、小口部Scの端縁の少なくとも1つ以上の長さが所定値以上である場合と比べてシート束の端縁の断裁時間が短くなってしまうため、接着剤の温度が十分に下がらない状態で天部Saを一番初めに断裁してしまうと判定して(屑紙片からはみ出した接着剤が断裁部Aに付着してしまう可能性が高いと判定して)処理をSt35へ進める。また、シート長さ認識手段によって認識されるシート束の天部Sa、地部Sb、小口部Scの端縁の少なくとも1つ以上の長さが所定値以上であると判定した場合(St33:NO)は、天部Saを一番初めに断裁したとしても接着剤の温度が十分に下がった状態で断裁を完了することができると判定して(屑紙片からはみ出した接着剤が断裁部Aに付着してしまう可能性が低いと判定して)処理をSt34へ進める。
【0063】
また、シート束断裁装置制御部CPU55は、接着剤塗布手段43によって接着剤が塗布されたシート束の背部Sdの端縁の長さを認識するシート幅認識手段と表紙シート綴じ経路33の表紙シート綴じ位置Fに搬送された表紙シートのシート幅を認識する表紙シート幅認識手段を備えており、シート幅認識手段によって認識されるシート束の背部Sdの端縁の長さと表紙シート幅認識手段によって認識される表紙シートのシート幅に基づいて断裁処理の順番を変更するか否かを判定することができる。シート幅認識手段によって認識される接着剤塗布手段43によって接着剤が塗布されたシート束の背部Sdの端縁の長さと表紙シート幅認識手段によって認識される表紙シートのシート幅については、例えば、コントロールパネル54から入力される断裁方法、シートサイズ、枚数情報、断裁処理後の仕上げサイズ等の情報等を元に認識される。
【0064】
St34では、表紙シート幅認識手段によって認識される表紙シートのシート幅がシート幅認識手段によって認識されるシート束の背部Sdの端縁の長さよりも所定値以上短いと認識した場合(St34:YES)は、断裁された屑紙片から接着剤がはみ出てしまう可能性が高いと判定して処理をSt35へ進める。また、表紙シート幅認識手段によって認識される表紙シートのシート幅がシート幅認識手段によって認識されるシート束の背部Sdの端縁の長さよりも所定値以上短くないと認識した場合(St34:NO)は、例えば、接着剤塗布手段43によってシート束の背部Sdの端縁に接着剤を塗布した際に図5に示すような糸引き状態が発生したとしても、その後、上述した表紙シート綴じ手段45により表紙シートを綴じた際にはみ出した接着剤を包み隠すことで断裁された屑紙片から接着剤がはみ出してしまう可能性が低いと判定して処理をSt36へ進める。
【0065】
St36では、St31~St34のいずれの場合においても屑紙片からはみ出した接着剤が断裁部Aに付着してしまう可能性が低いと判定されたとして、断裁処理の順番を変更せず、従来通り1.天部Sa断裁、2.地部Sb断裁、3.小口部Sc断裁の順番で断裁処理を実行するように決定する。
【0066】
また、St35では、St31~St34のいずれかにて屑紙片からはみ出した接着剤が断裁部Aに付着してしまう可能性が高いと判定されたとして、断裁処理を1.地部Sb断裁、2.小口部Sc断裁、3.天部Sa断裁の順番で実行するように決定する。ただし、上述した例では、接着剤の塗布量やシート束の束厚さ等の条件によって断裁順番を変更するか否かを判定する判定手段について説明したが、判定基準はこれらに限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の判定基準を設けることが可能である。また、断裁順番についても、本願明細書における実施例では1.地部Sb断裁、2.小口部Sc断裁、3.天部Sa断裁の順番で決定したが、1.地部Sb断裁、2.天部Sa断裁、3.小口部Sc断裁の順番で決定しても良い。従って、断裁順番についても、これらに限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の断裁順番を決定することが可能である。
【0067】
St21の断裁順番決定処理にて断裁を実行する順番が決定すると、シート束断裁装置制御部CPU55は、断裁順番決定処理で決定した順番に従い偏向手段10によってシート束姿勢の偏向を実施する(St22)。
【0068】
図10は断裁順番決定処理の結果に基づき偏向手段10によって偏向されたシート束の角度姿勢の説明図を示している。この例では、断裁順番決定処理にてシート束の天部Sa側から接着剤がはみ出して断裁部Aに付着してしまう可能性が高いと判定され、断裁処理を1.地部Sb断裁、2.小口部Sc断裁、3.天部Sa断裁の順番で実行するように決定された場合について説明する。
【0069】
図10(a)は、プレス手段17にてシート束を断裁位置Cpにセットした時のシート束の角度姿勢を示している。この時、シート束の天部Sa側から接着剤がはみ出てしているものとする。
【0070】
続けて、シート束断裁装置制御部CPU55は、偏向手段10にてシート束を90°偏向して地部Sbの端縁を断裁する(この状態を図10(b)で示している)。この時、断裁順番決定処理により断裁順番が変更されずにシート束の天部Saを一番初めに断裁したとすると、屑紙片からはみ出した接着剤の温度が十分に下がっていないため、断裁部Aに付着してしまう可能性が高くなってしまう。
【0071】
次に、シート束断裁装置制御部CPU55は、図10(b)の状態から偏向手段10にてシート束を90°偏向して小口部Scの端縁を断裁する(この状態を図10(c)で示している)。
【0072】
さらに、シート束断裁装置制御部CPU55は、図10(c)の状態から偏向手段10にてシート束を90°偏向して天部Saの端縁を断裁する(この状態を図10(d)で示している)。ここで初めて接着剤がはみ出した天部Saの端縁が断裁され接着剤がはみ出した屑紙片が屑紙片収納部へ向けて落下するが、先に地部Sb、小口部Scの断裁処理を行ったことにより接着剤の温度が十分に下がっているため、断裁部Aに付着することなく屑紙片を確実に屑紙片収納部に向けて落下させることができる。天部Saの断裁処理が完了すると、シート束断裁装置制御部CPU55は、図10(d)の状態から偏向手段10にてシート束を90°偏向して排出経路48へ向けて排出動作を行い(この状態を図10(e)で示している)断裁処理を完了する。
【0073】
[制御構成の説明]
上述した画像形成装置のシステム制御構成を図11のブロック図に従って説明する。図1に示す画像形成装置のシステムは画像形成装置H001の画像形成制御部CPU53とシート束断裁装置Bのシート束断裁装置制御部CPU55を備えている。画像形成制御部CPU53は、給紙制御部58と入力部52を備えている。そしてこの入力部52に設けられたコントロールパネル54から「三方向裁断」「一方向裁断」等の設定を行う。
【0074】
シート束断裁装置制御部CPU55は、指定されたシート束断裁モード(三方向断裁や一方向裁断等)に応じてシート束断裁装置Bを動作させる。このシート束断裁装置制御部CPU55は、動作プログラムを記憶した不揮発性記憶部(ROM)57と、制御データを記憶する揮発性記憶部(RAM)56とを備えている。また、シート束断裁装置制御部CPU55には、各種センサ入力部59から接着剤容器43aの待機位置を検出する接着剤容器ホームポジションセンサShなどの信号が入力される。
【0075】
さらに、シート束断裁装置制御部CPU55は、搬入経路31に配置された搬入ローラ31aや中紙シート搬送経路32に配置された中紙シート搬送ローラ32aを駆動させる図示しない搬送モータなどを制御するシート搬送制御部55aと集積部40にシートを束状に積載収納する正逆転ローラ42aを駆動させる図示しない正逆転ローラ駆動モータなどを制御する集積部制御部55bと接着剤容器移動モータMSなどを制御する接着剤塗布手段制御部55cと表紙シートの背部Sdを背折り成型する背折りプレート46bを駆動させる図示しない背折りプレート駆動モータなどを制御する表紙綴じ手段制御部55dとグリップモータMg、第1偏向モータMt1、第2偏向モータMt2、シフトモータMf、断裁刃駆動モータMcなどを制御する断裁手段制御部55eも備えている。
【0076】
以上のように、上述した各実施態様によれば、接着剤の温度が十分に下がった状態で断裁動作が行われるように接着剤の塗布が終了した側のシート束の端縁を一番初めに断裁しないため、接着剤が屑紙片からはみ出してしまった場合においても屑紙片を確実に屑紙片収納部に向けて落下させることが可能となる。
【0077】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。これまでの実施の形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11