(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071382
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】乗客コンベアのハンドレール殺菌装置
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B66B31/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180306
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】大恵 淳
(72)【発明者】
【氏名】本田 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321HA23
3F321HA25
3F321HA31
(57)【要約】
【課題】ハンドレールの表面の紫外線照射対象領域全域に十分な照射強度で紫外線を照射することができ、ひいては、当該領域全域において十分な殺菌効果を得ることができる乗客コンベアのハンドレール殺菌装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るハンドレール殺菌装置6は、長尺なフレキシブル基板61と、フレキシブル基板61の一方の面に、フレキシブル基板61の長手方向に所定間隔で実装される複数の紫外線源62,…と、フレキシブル基板61が一方の面を内側にしてハンドレール50を取り囲むように、かつ、フレキシブル基板61がハンドレール50の横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板61を湾曲させて支持する支持部材63とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なフレキシブル基板と、
フレキシブル基板の一方の面に、フレキシブル基板の長手方向に所定間隔で実装される複数の紫外線源と、
フレキシブル基板が一方の面を内側にしてハンドレールを取り囲むように、かつ、フレキシブル基板がハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板を湾曲させて支持する支持部材とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項2】
紫外線源は、フレキシブル基板の一方の面のうち、ハンドレールの中央部及び側部に対応する部位に実装される
請求項1に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項3】
紫外線源は、フレキシブル基板の一方の面のうち、ハンドレールの折返し端部に対応する部位にも実装される
請求項2に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項4】
フレキシブル基板は、支持部材に対し、着脱自在である
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項5】
基板と、
基板の一方の面に実装される紫外線源と、
基板の一方の面がハンドレールの表面と対向するように基板を支持する支持部材と、
紫外線源とハンドレールの表面との相対位置関係を定める位置決め手段とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項6】
乗客コンベアのトラスに取り付けられ、ハンドレールの下辺部に対して設けられる
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアのハンドレール殺菌装置に関する。なお、殺菌とは、細菌の殺菌、ウイルスの不活性化を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアのハンドレールは、移動手摺とも呼ばれ、利用者が手で掴む部分である。利用者は不特定多数であり、ハンドレールの表面には種々の細菌やウイルスが付着する。特に、昨今は、いかにして新型コロナウイルスの感染を予防できるかが関心事となっている。
【0003】
対策の一つとして、紫外線を用いるハンドレール殺菌装置が提案されている。一例として、特許文献1に記載のハンドレール殺菌装置は、ハンドレールの下辺部の下方に設けられる殺菌灯と、ハンドレールの下辺部の一部を囲い込むように設けられ、殺菌灯からの紫外線をその内面で反射することにより、紫外線をハンドレールの表面全体に照射する殺菌部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のハンドレール殺菌装置においては、ハンドレールの表面のうち、紫外線源から離れる領域ほど、紫外線の照射強度が低下して照射強度不足となり、殺菌効果が十分でなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、ハンドレールの表面の紫外線照射対象領域全域に十分な照射強度で紫外線を照射することができ、ひいては、当該領域全域において十分な殺菌効果を得ることができる乗客コンベアのハンドレール殺菌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの本発明に係る乗客コンベアのハンドレール殺菌装置は、
長尺なフレキシブル基板と、
フレキシブル基板の一方の面に、フレキシブル基板の長手方向に所定間隔で実装される複数の紫外線源と、
フレキシブル基板が一方の面を内側にしてハンドレールを取り囲むように、かつ、フレキシブル基板がハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板を湾曲させて支持する支持部材とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置である。
【0008】
ここで、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール殺菌装置の一態様として、
紫外線源は、フレキシブル基板の一方の面のうち、ハンドレールの中央部及び側部に対応する部位に実装される
との構成を採用することができる。
【0009】
また、この場合、
紫外線源は、フレキシブル基板の一方の面のうち、ハンドレールの折返し端部に対応する部位にも実装される
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール殺菌装置の他態様として、
フレキシブル基板は、支持部材に対し、着脱自在である
との構成を採用することができる。
【0011】
また、別の本発明に係る乗客コンベアのハンドレール殺菌装置は、
基板と、
基板の一方の面に実装される紫外線源と、
基板の一方の面がハンドレールの表面と対向するように基板を支持する支持部材と、
紫外線源とハンドレールの表面との相対位置関係を定める位置決め手段とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置である。
【0012】
また、これらの本発明に係る乗客コンベアのハンドレール殺菌装置は、
乗客コンベアのトラスに取り付けられ、ハンドレールの下辺部に対して設けられる
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
一つの本発明によれば、ハンドレールの側部のような曲面部分であっても、紫外線源が一定の距離以内に配置されることとなる。したがって、一つの本発明によれば、ハンドレールの表面の紫外線照射対象領域全域に十分な照射強度で紫外線を照射することができ、ひいては、当該領域全域において十分な殺菌効果を得ることができる。
【0014】
また、別の本発明によれば、ハンドレールの循環移動に伴い、紫外線源とハンドレールの表面とが相対的に離間する状況が生じようとしても、位置決め手段により規制され、当該領域における紫外線の照射強度の低下が阻止される。したがって、別の本発明によれば、ハンドレールの表面の紫外線照射対象領域全域に十分な照射強度で紫外線を照射することができ、ひいては、当該領域全域において十分な殺菌効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るエスカレータの概略断面側面図である。
【
図2】
図2(a)は、同エスカレータのトラスのうち、本発明の第1実施形態に係るハンドレール殺菌装置が設けられる部分の拡大図である。
図2(b)は、
図2(a)のA-A線断面図である。
図2(c)は、
図2(a)のB-B線断面図である。
【
図3】
図3(a)は、同ハンドレール殺菌装置の正面図である。
図3(b)は、
図3(a)のC-C線断面図である。
図3(c)は、同ハンドレール殺菌装置のフレキシブル基板を取り外した状態の正面図である。
図3(d)は、同フレキシブル基板の平面図である。
【
図4】
図4(a)は、同ハンドレール殺菌装置の正面図である。
図4(b)及び
図4(c)は、同ハンドレール殺菌装置を取り外す状態の説明図である。
【
図5】
図5(a)は、第1実施形態の変形例に係るハンドレール殺菌装置の正面図である。
図5(b)は、同ハンドレール殺菌装置のフレキシブル基板の平面図である。
【
図6】
図6(a)は、第1実施形態の別の変形例に係るハンドレール殺菌装置の正面図である。
図6(b)は、同ハンドレール殺菌装置のフレキシブル基板の平面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の第2実施形態に係るハンドレール殺菌装置の平面図である。
図7(b)は、
図7(a)のD-D線断面図である。
【
図8】
図8(a)は、第2実施形態の変形例に係るハンドレール殺菌装置の横断面図である。
図8(b)及び
図8(c)は、同ハンドレール殺菌装置を取り外す状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<エスカレータの全体構成>
以下、本発明に係る一実施形態として、乗客コンベアの一つであり、ハンドレール殺菌装置を備えるエスカレータについて、
図1及び
図2を参酌して説明する。
【0017】
図1に示すように、エスカレータ1は、トラス2と、乗降口3と、搬送部4と、ハンドレール部5とを備える。トラス2は、エスカレータ1の自重及び積載荷重を支える構造体である。乗降口3は、トラス2の両端部の上部に設けられる。搬送部4は、トラス2に支持され、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。ハンドレール部5も、トラス2に支持され、通路の左右に通路に沿って設けられる。本実施形態においては、エスカレータ1は、乗客を左から右(階下から階上)に搬送する設定となっている。このため、エスカレータ1は、左から右に、乗り口3A、搬送部4、降り口3Bを備える。設定を逆に切り替えると、乗り口3Aは降り口に、降り口3Bは乗り口に切り替わり、乗客を右から左(階上から階下)に搬送する設定となる。
【0018】
トラス2は、等辺山形鋼(等辺アングル)、不等辺山形鋼(不等辺アングル)、角形鋼管(角パイプ)、平鋼、溝形鋼、I鋼、H鋼、又はこれらの組合せからなる上弦材20、下弦材21、縦材22、斜材23及び横桁(図示しない)を適宜組み合わせた骨組構造である。
【0019】
トラス2は、上部水平部2aと、下部水平部2bと、傾斜部2cとを備える。上部水平部2a及び下部水平部2bのそれぞれは、上端縁に沿ってアングルからなる支持部材24を備える。上部水平部2aの支持部材24は、建築物における階上の支持架台Uに掛けられ、下部水平部2bの支持部材24は、階下の支持架台Dに掛けられる。これにより、トラス2、ひいてはエスカレータ1は、建築物に設置される。
【0020】
乗降口3は、上部水平部2a及び下部水平部2bのそれぞれ上方に設けられる。乗降口3は、フロアプレート30を備える。フロアプレート30は、乗降口3の床を構成し、通路の端部(始端部及び終端部)を構成する。フロアプレート30の先端縁は、乗降口3と搬送部4との境界を画する。
【0021】
搬送部4は、無端搬送体40を備える。無端搬送体40は、複数の踏段(ステップ)41,…が無端状に連結されたもので、循環駆動される。搬送部4の駆動機構42は、駆動モータ43と、減速機44と、一対のスプロケット45,45と、踏段チェーン46とを備える。駆動モータ43及び減速機44は、上部水平部2aに設けられる。一方のスプロケット45も、上部水平部2aに設けられ、減速機44及びチェーンやベルト等の伝達手段を介して駆動モータ43の駆動が伝達される。他方のスプロケット45は、下部水平部2bに設けられる。踏段チェーン46は、複数の踏段41,…を無端状に連結する手段であって、一対のスプロケット45,45に巻き掛けられる。無端搬送体40は、駆動モータ43の駆動に伴って踏段チェーン46が循環駆動されることにより、一方向又は反対方向に循環駆動される。
【0022】
ハンドレール部5は、ハンドレール50と、欄干パネル51とを備える。ハンドレール50は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、循環駆動される。欄干パネル51は、下辺部がトラス2に支持され、ハンドレール50を循環移動可能に支持する。ハンドレール部5の駆動機構52は、駆動ローラ53を備える。駆動ローラ53は、傾斜部2cの上部又は上部水平部2aに設けられ、チェーンやベルト等の伝達手段を介して駆動モータ43の駆動が伝達される。これにより、ハンドレール50は、無端搬送体40と連動して循環移動する。ハンドレール50及び欄干パネル51は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0023】
ハンドレール50の下辺部(復路部分)及び欄干パネル51の下辺部は、遮蔽部54により覆い隠される。遮蔽部54は、デッキカバーと、スカートガードと、外装板と、インレットガードとで構成される。デッキカバーは、上面側に配置され、内デッキカバーと、外デッキカバーとを備える。スカートガードは、通路に接する側に配置される。外装板は、スカートガードと反対側に配置される。インレットガードは、長手方向の両端部(ハンドレール50の折り返し部が通過する部分)を覆うように配置される。遮蔽部54は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0024】
図2に示すように、エスカレータ1は、ハンドレール殺菌装置6を備える。ハンドレール殺菌装置6は、トラス2(の上弦材20)に取り付けられ、ハンドレール50の下辺部(復路部分)に対して設けられる。ハンドレール殺菌装置6は、ハンドレール50の表面に紫外線を照射して、ハンドレール50の表面に付着した種々の細菌やウイルスを殺菌する。ハンドレール殺菌装置6は、ハンドレール50が循環移動している間に限り、ハンドレール50に紫外線を照射する。すなわち、利用者がいない待機状態では運転を停止する仕様のエスカレータでは、ハンドレール50の停止に伴い、ハンドレール殺菌装置6も紫外線の照射を停止する。ただし、ハンドレール殺菌装置6は、ハンドレール50の動作と関係なく、メンテナンス用として、照射のON-OFFのスイッチを備える。
【0025】
<ハンドレール殺菌装置6の第1実施形態>
以下、ハンドレール殺菌装置6の第1実施形態について、
図2ないし
図4を参酌して説明する。
【0026】
図3に示すように、ハンドレール殺菌装置6は、フレキシブル基板61と、紫外線源62と、支持部材63とを備える。
【0027】
フレキシブル基板61は、長尺な帯状であり、湾曲可能な可撓性を有し、紫外線源62の回路基板を構成する。紫外線源62は、フレキシブル基板61の一方の面に実装される。本実施形態においては、紫外線源62は、ピーク波長が100nm以上280nm以下の範囲内の深紫外光を照射する紫外線LED(UV-LED)である。
【0028】
支持部材63は、フレキシブル基板61が一方の面を内側にしてハンドレール50を取り囲むように、かつ、フレキシブル基板61がハンドレール50の横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板61を湾曲させて支持する。支持部材63は、ハンドレール50の横断面外形状と同様、端部63a,63aが離間して端部63a,63a間に開放部が形成されるようなC字形状を有する。本実施形態においては、支持部材63は、バネ性を有する金属板を湾曲して形成される。したがって、ある程度の範囲において、端部63a,63aの間隔を変更することができる。端部63aは、折り曲げられ、フレキシブル基板61の端部を係止する係止部となっている。
【0029】
フレキシブル基板61は、支持部材63の内面の長さと一致する長さを有する。フレキシブル基板61は、他方の面が支持部材63の内面と対向するように、支持部材63の内面に沿って配置される。フレキシブル基板61は、ビス、粘着剤、接着剤等の公知の固定手段により、支持部材63の内面に固定される。しかし、フレキシブル基板61は、固定手段の固定を解除することにより、支持部材63に対し、着脱自在である。
【0030】
紫外線源62は、フレキシブル基板61の一方の面に、フレキシブル基板61の長手方向に所定間隔で複数実装される。より詳しくは、紫外線源62は、フレキシブル基板61の一方の面に、フレキシブル基板61の一端から他端に亘って複数実装される。さらに詳しくは、紫外線源62は、フレキシブル基板61の一方の面のうち、ハンドレールの中央部50a、左右の側部50b,50b及び左右の折返し端部50c,50cに対応する部位に実装される。ハンドレール50の中央部50aは、平坦面であり、左右の側部50b,50bは、曲面である。そこで、紫外線源62は、フレキシブル基板61の一方の面のうち、ハンドレール50の中央部50aに対応する中央部は密、ハンドレール50の左右の側部50b,50b及び左右の折返し端部50c,50cに対応する両端部は疎、となるように実装される。これにより、ハンドレール50の表面全体に十分かつ均一な照射強度で紫外線を照射することができる。
【0031】
図2及び
図3に示すように、支持部材63は、取付部材64を介してトラス2(の上弦材20)に取り付けられる。したがって、紫外線源62を実装したフレキシブル基板61及び支持部材63は、トラス2に対して不動である。これに対し、ハンドレール50は、移動方向と交差する方向(幅方向や上下方向)に遊動可能である。したがって、ハンドレール50の循環移動に伴い、紫外線源62とハンドレール50の表面とが相対的に離間する状況が発生し得る。そして、この状況が発生すると、ハンドレール50の表面の当該領域における紫外線の照射強度が低下し、当該領域において十分な殺菌効果が得られないおそれがある。
【0032】
そこで、ハンドレール殺菌装置6は、紫外線源62とハンドレール50の表面との相対位置関係を定める位置決め手段を備える。位置決め手段は、ハンドレール50のうち、フレキシブル基板61及び支持部材63を通る部分を含むハンドレール50の所定長さ範囲でハンドレール50の内部に挿入されるハンドレールガイド65である。ハンドレールガイド65は、両側に、ハンドレール50の内面と当接する当接部(たとえば、ハンドレール50の長手方向に沿って長尺な帯状部)を備え、ハンドレール50が移動方向と交差する方向(幅方向や上下方向)に遊動するのを規制する規制手段である。ハンドレールガイド65は、トラス2の隣り合う縦材22,22に取付部材66,66を介して取り付けられる。
【0033】
なお、
図4に示すように、支持部材63の開放部の幅(支持部材63の端部63a,63a間の距離)Wは、ハンドレール50及びハンドレールガイド65の合計厚みTよりも大きい。したがって、ハンドレールガイド65をハンドレール50から外すことなく、また、ハンドレール殺菌装置6を分解することなく、ハンドレール殺菌装置6をハンドレール50から外すことができる。
【0034】
以上のとおり、本実施形態に係るハンドレール殺菌装置6によれば、ハンドレール50の側部50bのような曲面部分や折返し端部50cであっても、紫外線源62が一定の距離以内に配置されることとなる。したがって、本実施形態に係るハンドレール殺菌装置6によれば、ハンドレール50の表面の紫外線照射対象領域全域(本実施形態においては、ハンドレール50の折返し端部50cの表面を含むハンドレール50の表面全体)に十分な照射強度で紫外線を照射することができ、ひいては、当該領域全域において十分な殺菌効果を得ることができる。
【0035】
また、本実施形態に係るハンドレール殺菌装置6によれば、ハンドレール50の循環移動に伴い、紫外線源62とハンドレール50の表面とが相対的に離間する状況が生じようとしても、位置決め手段(ハンドレールガイド65)により規制され、当該領域における紫外線の照射強度の低下が阻止される。したがって、本実施形態に係るハンドレール殺菌装置6によれば、ハンドレール50の表面の紫外線照射対象領域全域に十分な照射強度で紫外線を照射することができ、ひいては、当該領域全域において十分な殺菌効果を得ることができる。
【0036】
<ハンドレール殺菌装置6の第1実施形態の変形例>
上記実施形態においては、紫外線源62は、不等間隔でフレキシブル基板61に実装される。しかし、
図5に示すように、紫外線源62は、等間隔でフレキシブル基板61に実装されるようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、紫外線源62は、フレキシブル基板61のうち、ハンドレール50の中央部50a、側部50b及び折返し端部50cに対応する部位に実装される。しかし、利用者がハンドレール50の折り返し端部50cまで接触する頻度は低いと考えられる。このことから、
図6に示すように、紫外線源62は、折返し端部50cを除き、ハンドレールの中央部50a及び側部50bに対応する部位に実装されるようにしてもよい。
【0038】
<ハンドレール殺菌装置6の第2実施形態>
以下、ハンドレール殺菌装置6の第2実施形態について、
図7及び
図8を参酌して説明する。なお、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、第1実施形態についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0039】
図7に示すように、ハンドレール殺菌装置6は、ベース60と、中央部ローラ67と、側部ローラ68とを備える。支持部材63は、ベース60の中間部に取り付けられる。中央部ローラ67及び側部ローラ68は、ベース60に回転自在に支持される。
【0040】
中央部ローラ67は、ハンドレール50の中央部50aに接触し、転動する。側部ローラ68は、一対設けられ、ハンドレール50の左右の側部50b,50bに接触し、転動する。一対の側部ローラ68,68は、互いの回転中心が交差するように傾斜配置されることにより、ハンドレール50の側部50bのうち、折返し端部50c側に寄った部位に接触し、転動する。これにより、ハンドレール50は、中央部ローラ67及び一対の側部ローラ68,68の3つのローラに3方向から挟持される。
【0041】
中央部ローラ67及び一対の側部ローラ68,68の組は、間に支持部材63を挟んでベース60の前後に一対設けられる。これらは、紫外線源62とハンドレール50の表面との相対位置関係を定める位置決め手段を構成する。この手段は、第1実施形態のハンドレールガイド65といった規制手段を設けて、ハンドレール50の遊動そのものを規制することができない場合に有効である。なお、この手段においては、ハンドレール50の遊動に追従してベース60が可動する必要があることから、ベース60とトラス2への取付部材64との間には、バネ、ゴムといった緩衝材69が設けられる。
【0042】
<ハンドレール殺菌装置6の第2実施形態の変形例>
第2実施形態のハンドレール殺菌装置6の取り外し性(メンテナンス性)を向上させるために、
図8に示すように、ベース60及び支持部材63は、分割構造ないし可変構造であるのが好ましい。ベース60が分割構造ないし可変構造であることにより、一対の側部ローラ68,68間を広げることができ、また、支持部材63が分割構造ないし可変構造であることにより、支持部材63の端部63a,63a間を広げることができ、ハンドレール殺菌装置6をハンドレール50から外すことができる。一例として、ベース60のうち、一方側の2つの側部ローラ68,68をそれぞれ支持する部分が分割体60aとされ、分割体60aとベース60の本体とがヒンジ70等により開閉可能に連結されるとともに、支持部材63の一端側が分割体63bとされ、分割体63bと支持部材63の残りの部分とがヒンジ70等により開閉可能に連結される構造を採用することができる。なお、この場合、常時は閉状態(
図8(a)の取付状態)が維持され、不用意に開状態(
図8(b)の取り外し準備状態)とならないよう、ベース60には、閉状態を維持するロック構造が設けられる。
【0043】
また、このような構造とすることにより、ハンドレール殺菌装置6は、トラス2に固定されるのではなく、作業員がハンドレール50の上辺部(往路部分)にセットし、殺菌作業を行うといった使い方(可搬式)も可能となる。なお、この場合、作業性の観点から、ベース60には、ハンドル(図示しない)が設けられる。
【0044】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
上記各実施形態においては、ハンドレール殺菌装置6の取り外し性(メンテナンス性)の観点から、支持部材63の開放部の幅(支持部材63の端部63a,63a間の距離)Wは、ハンドレール50及びハンドレールガイド65の合計厚みTよりも大きいなるように設定される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。支持部材がバネ性を有することにより、支持部材の端部間を弾性復元的に広げることができ、広げた間隔がハンドレール及びハンドレールガイドの合計厚みよりも大きくなるのであれば、支持部材の開放部の幅は、ハンドレール及びハンドレールガイドの合計厚みよりも小さくてもよい。なお、この場合、第2実施形態に関して言えば、ベースのみを分割構造ないし可変構造とすることができる。
【0046】
また、上記第2実施形態においては、側部ローラ68は、ハンドレール50の側部50bのうち、折返し端部50c側に寄った部位に接触するように、傾斜配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。側部ローラは、他方の側部ローラと平行に配置されるようにしてもよい。あるいは、側部ローラは、ハンドレールの側部のうち、中央部側に寄った部位に接触するように、逆方向に傾斜配置されるようにしてもよい。
【0047】
また、上記第2実施形態においては、側部ローラ68は、一対設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。紫外線源とハンドレールの表面との相対位置関係を維持することができるのであれば、側部ローラは、片側だけであってもよい。
【0048】
また、上記第2実施形態においては、中央部ローラ67が設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、側部ローラとして、周面がハンドレールの側部の曲面形状に対応した凹状(すなわち、側部ローラの幅の中央ほど径が小さく、端部に向かって径が次第に大きくなる形状)を有するものを使用すれば、ハンドレールの幅方向の遊動と上下方向の遊動の両方を規制することができる。したがって、この場合は、中央部ローラを無くすことができる。
【0049】
また、上記各実施形態においては、紫外線源62の実装基板として、長尺なフレキシブル基板61が用いられ、このフレキシブル基板61は、支持部材63により、ハンドレール50を取り囲むように湾曲されるとともに、少なくともハンドレール50の中央部50a及び左右の側部50b,50bに対応する部位に、紫外線源62を備える。しかし、上記別の本発明の観点からすると、紫外線源62の実装基板がフレキシブル基板61であること、紫外線源62が複数であること、紫外線源62がハンドレールの側部50b(や折返し端部50c)に対応する部位に設けられることは、必須ではない。たとえば、紫外線源の実装基板が剛体で変形不能な基板であったり、紫外線源がハンドレールの中央部に対応する部位にだけ設けられる形態であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータ1である。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1…エスカレータ、2…トラス、2a…上部水平部、2b…下部水平部、2c…傾斜部、20…上弦材、21…下弦材、22…縦材、23…斜材、24…支持部材、3…乗降口、3A…乗り口、3B…降り口、30…フロアプレート、4…搬送部、40…無端搬送体、41…踏段、42…駆動機構、43…駆動モータ、44…減速機、45…スプロケット、46…踏段チェーン、5…ハンドレール部、50…ハンドレール、50a…中央部、50b…側部、50c…折返し端部、51…欄干パネル、52…駆動機構、53…駆動ローラ、54…遮蔽部、6…ハンドレール殺菌装置、60…ベース、60a…分割体、61…フレキシブル基板、62…紫外線LED(紫外線源)、63…支持部材、63a…端部、63b…分割体、64…取付部材、65…ハンドレールガイド、66…取付部材、67…中央部ローラ、68…側部ローラ、69…緩衝材、70…ヒンジ、D…階下の支持架台、T…ハンドレール50及びハンドレールガイド65の合計厚み、U…階上の支持架台、W…支持部材63の開放部の幅(支持部材63の端部63a,63a間の距離)
【手続補正書】
【提出日】2021-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なフレキシブル基板と、
フレキシブル基板の一方の面に、フレキシブル基板の長手方向に所定間隔で実装される複数の紫外線源と、
ハンドレールの横断面外形状と同様に両端部が離間して両端部間に開放部が形成されるように、かつ、ハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように湾曲されたバネ性を有する金属板からなる支持部材であって、フレキシブル基板が一方の面を内側にしてハンドレールを取り囲むように、かつ、フレキシブル基板がハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板を内面に沿って湾曲させて支持する支持部材とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項2】
フレキシブル基板は、支持部材の内面の長さと一致する長さを有し、
支持部材の両端部は、フレキシブル基板の端部を係止する折曲げ端部となっている
請求項1に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項3】
長尺なフレキシブル基板と、
フレキシブル基板の一方の面に、フレキシブル基板の長手方向に所定間隔で実装される複数の紫外線源であって、フレキシブル基板の一方の面のうち、ハンドレールの中央部及び側部に対応する部位に実装されるとともに、ハンドレールの中央部に対応する部位において間隔が密となり、ハンドレールの側部に対応する部位において間隔が疎となるように実装される複数の紫外線源と、
フレキシブル基板が一方の面を内側にしてハンドレールを取り囲むように、かつ、フレキシブル基板がハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板を湾曲させて支持する支持部材とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項4】
紫外線源は、フレキシブル基板の一方の面のうち、ハンドレールの折返し端部に対応する部位にも実装される
請求項3に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項5】
フレキシブル基板は、支持部材に対し、着脱自在である
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項6】
基板と、
基板の一方の面に実装される紫外線源と、
基板の一方の面がハンドレールの表面と対向するように基板を支持する支持部材と、
紫外線源とハンドレールの表面との距離が変動するのを規制し、紫外線源とハンドレールの表面との相対位置関係を定める位置決め手段とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項7】
乗客コンベアのトラスに取り付けられ、ハンドレールの下辺部に対して設けられる
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
一つの本発明に係る乗客コンベアのハンドレール殺菌装置は、
長尺なフレキシブル基板と、
フレキシブル基板の一方の面に、フレキシブル基板の長手方向に所定間隔で実装される複数の紫外線源と、
ハンドレールの横断面外形状と同様に両端部が離間して両端部間に開放部が形成されるように、かつ、ハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように湾曲されたバネ性を有する金属板からなる支持部材であって、フレキシブル基板が一方の面を内側にしてハンドレールを取り囲むように、かつ、フレキシブル基板がハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板を内面に沿って湾曲させて支持する支持部材とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置である。
また、この場合、
フレキシブル基板は、支持部材の内面の長さと一致する長さを有し、
支持部材の両端部は、フレキシブル基板の端部を係止する折曲げ端部となっている
との構成を採用することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、もう一つの本発明に係る乗客コンベアのハンドレール殺菌装置は、
長尺なフレキシブル基板と、
フレキシブル基板の一方の面に、フレキシブル基板の長手方向に所定間隔で実装される複数の紫外線源であって、フレキシブル基板の一方の面のうち、ハンドレールの中央部及び側部に対応する部位に実装されるとともに、ハンドレールの中央部に対応する部位において間隔が密となり、ハンドレールの側部に対応する部位において間隔が疎となるように実装される複数の紫外線源と、
フレキシブル基板が一方の面を内側にしてハンドレールを取り囲むように、かつ、フレキシブル基板がハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板を湾曲させて支持する支持部材とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、別の本発明に係る乗客コンベアのハンドレール殺菌装置は、
基板と、
基板の一方の面に実装される紫外線源と、
基板の一方の面がハンドレールの表面と対向するように基板を支持する支持部材と、
紫外線源とハンドレールの表面との距離が変動するのを規制し、紫外線源とハンドレールの表面との相対位置関係を定める位置決め手段とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置である。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なフレキシブル基板と、
フレキシブル基板の一方の面に、フレキシブル基板の長手方向に所定間隔で実装される複数の紫外線源と、
ハンドレールの横断面外形状と同様に両端部が離間して両端部間に開放部が形成されるように、かつ、ハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように湾曲されたバネ性を有する金属板からなる支持部材であって、フレキシブル基板が一方の面を内側にしてハンドレールを取り囲むように、かつ、フレキシブル基板がハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板を内面に沿って湾曲させて支持する支持部材とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項2】
フレキシブル基板は、支持部材の内面の長さと一致する長さを有し、
支持部材の両端部は、フレキシブル基板の端部を係止する折曲げ端部となっている
請求項1に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項3】
長尺なフレキシブル基板と、
フレキシブル基板の一方の面に、フレキシブル基板の長手方向に所定間隔で実装される複数の紫外線源であって、フレキシブル基板の一方の面のうち、ハンドレールの中央部及び側部に対応する部位に実装されるとともに、ハンドレールの中央部に対応する部位において間隔が密となり、ハンドレールの側部に対応する部位において間隔が疎となるように実装される複数の紫外線源と、
フレキシブル基板が一方の面を内側にしてハンドレールを取り囲むように、かつ、フレキシブル基板がハンドレールの横断面外形状のオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板を湾曲させて支持する支持部材とを備える
乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【請求項4】
紫外線源は、フレキシブル基板の一方の面のうち、ハンドレールの折返し端部に対応する部位にも実装される
請求項3に記載の乗客コンベアのハンドレール殺菌装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】