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特開2022-71418エポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071418
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220509BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220509BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20220509BHJP
   C08G 18/68 20060101ALI20220509BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20220509BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/038
C08G59/40
C08G18/68
C08G18/08 019
H05K3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180372
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加賀 大樹
(72)【発明者】
【氏名】水口 貴文
(72)【発明者】
【氏名】竹田 麻央
【テーマコード(参考)】
2H225
4J034
4J036
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC57
2H225AC58
2H225AC72
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2H225AD15
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2H225AN79P
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5E314GG26
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、活性エネルギー線に対する感光性に優れ、微細な画像を希アルカリ水溶液による現像によりパターン形成できると共に、高絶縁性で密着性、現像性、耐熱性、無電解金メッキ耐性を有しつつ、優れた柔軟性、弾性率の強靭な膜を形成できる感光性脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【解決手段】
カルボキシ基含有感光性樹脂、架橋剤、光重合開始剤及び硬化剤を含み、硬化剤としてエポキシ樹脂が一般式(1)の構造を有する化合物を用いて得られた感光性樹脂組成物は、紫外線により露光硬化することによる塗膜の形成において、光感度に優れ、現像可能であり、得られた硬化物は、耐熱性、弾性率、柔軟性に優れている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基含有感光性樹脂(A)、架橋剤(B)、光重合開始剤(C)及び硬化剤として下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(D)を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、複数存在するArは、独立して式(X)
【化2】
または式(Y)
【化3】
(式(Y)中Rは独立して、水素原子、炭素数1~2のアルキル基、アリル基またはフェニル基を表し、少なくとも1つは水素原子以外である。)
で表される結合基を示し、式(X)と式(Y)は任意に選択可能であるが、1分子中に式(X)と式(Y)を少なくとも1個含む。nは繰り返し数の平均値であり、1≦n<20である。)
【請求項2】
カルボキシ基含有感光性樹脂(A)が、1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(b)とを反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)と、ジイソシアネート化合物(d)、1分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸(e)及び、必要に応じて任意のポリエステルジオール化合物(f)を反応させて得られるポリウレタン化合物(A1)である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
カルボキシ基含有感光性樹脂(A)が、ポリウレタン化合物(A1)に多塩基酸無水物(g)を反応させて得られる酸変性型ポリウレタン化合物(A2)である請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
カルボキシ基含有感光性樹脂(A)が、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a’)と1分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(b)とを反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c’)と、多塩基酸無水物(g)との反応生成物(A3)である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
両末端のArが式(Y)である請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
式(1)中、Rが全てメチル基である請求項1~5のいずれか一項に記載のエポキシ感光性樹脂組成物。
【請求項7】
レジスト用材料である請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子情報機器の小型化に伴い、回路基板として軽い・薄い・柔軟である等の特徴から、所謂フレキシブルプリント基板の使用が増大している。フレキシブルプリント基板は文字通りにフレキシブルであるために、これに用いられる材料には、アルカリ現像による光パターニングの特性を有し、高い感度、密着性、耐傷性、高い機械的・熱的・電気的強度等の必要特性を持ちながら、フレキシブル基板に追従できる高い柔軟性と配線を保護しうる弾性率を有した強靭な皮膜の形成が要求される。
【0003】
一般的に優れた感度や硬化性、耐薬品性、耐熱性等の特性は、剛直な骨格を有する主鎖に、より多くの反応性基を導入し、高い架橋密度を付与することで達成される。通常のソルダーレジスト、ディスプレイ用のカラーレジストやハードコート等の用途においては、このような樹脂が好適に用いられてきた。しかしながら、これではフレキシブル基板に求められるような柔軟性を付与することはできない。
【0004】
一方、柔軟性を付与するためには、柔軟な主鎖骨格の導入もしくは反応性基を控えめに導入する、即ち、架橋密度を適度に低減することで達成されてきた。しかしながら、このような樹脂は耐熱性、弾性率が不十分であり、折り曲がったフレキシブル基板に追従した際に基板を保護できる強靭性が足りない。このように、これらの特性はそれぞれ相反するものであり、フレキシブル基板等のソルダーレジスト材料にはこれらの特性を融合する材料が求められ、従来はエポキシアクリレート系材料が主に用いられてきた。しかしながら、この材料は耐薬品性、耐熱性等の特性には優れるものの、柔軟性は不十分であった。従って、フレキシブル基板に適用できるような耐熱性、高い弾性率、柔軟性を併せ持つ強靭な皮膜を得ることは困難であり、更なる皮膜形成材料が望まれていた。
【0005】
これらの問題を解決する試みとして、二官能の不飽和エポキシカルボキシレート化合物、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシ基を併せ持つ化合物、ジイソシアネート化合物を反応させ得られる反応性ウレタン化合物が特許文献1に記載されている。この反応性ウレタン化合物は、従来のエポキシアクリレート系材料と比較すれば良好な柔軟性と耐熱性を有するが、現在求められている更に高い柔軟性を発揮させることはできない。
【0006】
又、柔軟性の付与を目的として特許文献2では硬化剤に1分子中に1個以上の内部エポキシド基を有するポリブタジエンを使用した組成物が提案されている。この組成物は伸度、耐熱性には優れているが弾性率が低下してしまい、十分な強靭性を得ることができない。
【0007】
【特許文献1】特開平9-52925号公報
【特許文献2】特開2002-293882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、活性エネルギー線に対する感光性に優れ、微細な画像を希アルカリ水溶液による現像によりパターン形成できると共に、高絶縁性で密着性、耐熱性を有しつつ、優れた柔軟性、弾性率の強靭な膜を形成できる樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、感光性樹脂組成物について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記(1)~(10)に関する。
(1)カルボキシ基含有感光性樹脂(A)、架橋剤(B)、光重合開始剤(C)及び硬化剤として下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(D)を含有する感光性樹脂組成物。
【0010】
【化1】
(式(1)中、複数存在するArは、独立して式(X)
【0011】
【化2】
または式(Y)
【0012】
【化3】
(式(Y)中Rは独立して、水素原子、炭素数1~2のアルキル基、アリル基またはフェニル基を表し、少なくとも1つは水素原子以外である。)
で表される結合基を示し、式(X)と式(Y)は任意に選択可能であるが、1分子中に式(X)と式(Y)を少なくとも1個含む。nは繰り返し数の平均値であり、1≦n<20である。)
【0013】
(2)カルボキシ基含有感光性樹脂(A)が、1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(b)とを反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)と、ジイソシアネート化合物(d)、1分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸(e)及び、必要に応じて任意のポリエステルジオール化合物(f)を反応させて得られるポリウレタン化合物(A1)である上記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
【0014】
(3)カルボキシ基含有感光性樹脂(A)が、ポリウレタン化合物(A1)に多塩基酸無水物(g)を反応させて得られる酸変性型ポリウレタン化合物(A2)である上記(2)に記載の感光性樹脂組成物。
【0015】
(4)カルボキシ基含有感光性樹脂(A)が、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a’)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(b)とを反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c’)と、多塩基酸無水物(g)との反応生成物(A3)である上記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
【0016】
(5)両末端のArが式(Y)である上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【0017】
(6)式(1)中、Rが全てメチル基である上記(1)~(5)のいずれか一項に記載のエポキシ感光性樹脂組成物。
【0018】
(7)レジスト用材料である(1)~(6)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【0019】
(8)上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0020】
カルボキシ基含有感光性樹脂、架橋剤、光重合開始剤及び硬化剤を含み、硬化剤としてエポキシ樹脂が一般式(1)の構造を有する化合物を用いて得られた感光性樹脂組成物は、紫外線により露光硬化することによる塗膜の形成において、光感度に優れ、現像可能であり、得られた硬化物は、耐熱性、弾性率、柔軟性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明で硬化剤として用いられるエポキシ樹脂(D)は下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0022】
【化4】
(式(1)中、複数存在するArは、独立して式(X)
【0023】
【化5】
または式(Y)
【0024】
【化6】
(式(Y)中Rは独立して、水素原子、炭素数1~2のアルキル基、アリル基またはフェニル基を表し、少なくとも1つは水素原子以外である。)
で表される結合基を示し、式(X)と式(Y)は任意に選択可能であるが、1分子中に式(X)と式(Y)を少なくとも1個含む。nは繰り返し数の平均値であり、1≦n<20である。)
【0025】
本発明に用いるエポキシ樹脂(D)は前記式(1)で表され、通常は常温で固体の樹脂状である。繰り返し単位数の大きな高分子量体である方が、応力が分散しやすく、より強靭になりやすい。前記式(1)中のnの平均値はGPCのチャートの面積比によって求めることができる。nの平均値は1≦n<50が好ましく、より好ましくは1≦n<20であり、さらに好ましくは1≦n<10である。nの平均値が1より小さい場合、硬化物は脆くなりやすく、20より大きい場合樹脂がゲル化する可能性が有る。
また、軟化点は40~200℃が好ましく、より好ましくは40~180℃である。40℃以下である場合、半固形で取り扱いが難しい。200℃を超える場合、組成物を調整する際に混練が困難である等の問題が生じるおそれがある。
さらに、エポキシ当量は300~2000g/eqが好ましく、より好ましくは、300~1000g/eqである。エポキシ当量が300g/eqより小さい場合は、架橋密度が高いが故に硬化物が脆くなりやすく、2000g/eqより大きい場合は、耐熱性が発揮されないおそれがある。
【0026】
前記式(1)で表されるエポキシ樹脂(D)は、市販の高分子量のエポキシ樹脂を用いてもよく、また、公知の2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール樹脂を反応させたエポキシ樹脂を用いても良い。
【0027】
公知の2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール樹脂を反応させる場合、下記式(2)
【0028】
【化7】
(式中、Rは前述の式(1)中Rと同じ意味を表す。)
で表される2官能のフェノール化合物と、下記式(3)
【0029】
【化8】
(式中、Rは前述の式(1)中Rと同じ意味を表す。)
で表される2官能のエポキシ化合物を用いることができる。仕込み割合としては、前記式(2)で表されるフェノール化合物に対して前記式(3)で表されるエポキシ化合物を等モルより多く仕込み、触媒存在下、反応させることで得ることができる。
一般式(2)で表されるフェノール化合物の具体例としては、4,4’-ビフェノール(以下、単にビフェノールということもある。)、3,3’-ジメチルビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチルビフェノール3,3’-ジエチルビフェノール3,3’,5,5’-テトラエチルビフェノール、3,3’-ジフェニルビフェノール等が挙げられる。一般(3)で表されるエポキシ化合物は、一般式(2)のフェノール化合物に公知の方法でエピハロヒドリンを反応させて得られるが、これらに限定されるものではない。前記式(2)で表されるフェノール化合物および前記式(3)で表されるエポキシ化合物は単一で用いても、複数種類を併用してもよい。
【0030】
溶解性を付与する観点から、前記式(2)で表されるフェノール化合物または前記式(3)で表されるエポキシ化合物中に記載のRのうち少なくとも1つに炭素数1~2のアルキル基を含む化合物を、20モル%以上併用することが好ましく、前記式(2)で表されるフェノール化合物としてビフェノール、前記式(3)で表されるエポキシ化合物として3,3’,5,5’-テトラメチルビフェノールのエポキシ化物を組み合わせた反応物を好適に用いることができる。本反応における前記式(2)で表されるフェノール化合物の使用量は、前記式(3)で表されるエポキシ化合物のエポキシ基1モルに対して通常0.05~0.8モルであり、好ましくは0.1~0.7モルであり、特に好ましくは0.2~0.6モルである。
【0031】
本反応は必要により、触媒を使用することができる。使用できる触媒としては具体的にはテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;トリフェニルエチホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスフォニウム塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属塩;2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類;トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類;オクチル酸スズなどの金属化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これら触媒は、その触媒の種類にもよるが、一般に前記式(2)で表されるフェノール化合物と前記式(3)で表されるエポキシ化合物の総重量に対して通常10~30000ppmであり、好ましくは100~5000ppmが必要に応じて用いられる。後反応においては触媒を添加しなくても反応は進行するので、触媒は反応温度、反応溶剤量を勘案して適宜使用する。
【0032】
本反応において、溶剤は使用してもよい。溶剤を使用する場合は反応に影響を与えない溶剤であればいずれの溶剤でも使用でき、例えば以下に示すような溶剤を用いることができる。極性溶剤、エーテル類;ジメチルスルホキシド、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等、エステル系の有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、γ-ブチロラクトン等、ケトン系有機溶剤;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等芳香族系有機溶剤;トルエン、キシレン等溶剤の使用量は前記式(2)で表されるフェノール化合物と前記式(3)で表されるエポキシ化合物の総重量に対し通常0~300重量%であり、好ましくは0~100重量%である。
【0033】
本反応における反応温度、反応時間は、使用する溶媒量や触媒の種類と量によるが、反応時間は通常1~200時間であり、好ましくは1~100時間である。生産性の問題からは反応時間が短いことが好ましい。また反応温度は通常0~250℃であり、好ましくは80~150℃である。
【0034】
反応終了後、必要に応じて水洗などにより触媒等を除去し、あるいは残したまま、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明に用いるエポキシ樹脂(D)が得られる。用途によってはそのまま溶剤の濃度を調整し、エポキシ樹脂ワニスとして用いることも可能である。
【0035】
本発明におけるカルボキシ基含有感光性樹脂(A)は、例えば1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と1分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(b)とを反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)と、ジイソシアネート化合物(d)、1分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸(e)及び、必要に応じて任意のポリエステルジオール化合物(f)を反応させて得られるポリウレタン化合物(A1)を使用することができる。
【0036】
即ち、本発明におけるポリウレタン樹脂(A1)は二つの反応工程をもって製造される。まず、1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)に、1分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(b)を反応させて不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)を得る工程である。本発明ではこの工程をカルボキシレート化工程とする。
次いで、こうして得られた不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)、1分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸(e)、ジイソシアネート化合物(d)及び必要に応じて任意のポリエステルジオール化合物(f)を反応させる工程である。本発明ではこの工程をウレタン化工程とする。
【0037】
カルボキシレート化工程で得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)は、1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)のエポキシ基に由来する2個の水酸基を有するカルボキシレート化合物である。
【0038】
続くウレタン化工程では、不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)の2個の水酸基、1分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸(e)、ジイソシアネート化合物(d)及び必要に応じて任意のポリエステルジオール化合物(f)を反応させポリウレタン樹脂(A1)を得る。
【0039】
先ず、カルボキシレート化工程について詳述する。
本発明におけるポリウレタン樹脂(A)の製造に使用される1分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)(以下、単に「エポキシ化合物(a)」とも表す。)としては、1分子中に2個のエポキシ基を有していれば特に限定されない。単官能エポキシ化合物ではウレタン化工程により得られるポリウレタン樹脂(A)の分子量を調整することができず、又、3官能以上のエポキシ化合物では多分岐構造となるため好適な硬化物の物性を得ることが困難である。
【0040】
該エポキシ化合物(a)としては、例えば、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Fジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Sジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル等のビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールグリシジルエーテル等のビフェニル系グリシジルエーテル類等の芳香族系ジグリシジルエーテル化合物;ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のアルキルジオールジグリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル等のシクロアルキルジオールジグリシジルエーテル類等の飽和炭化水素系ジグリシジルエーテル化合物;3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート((株)ダイセル製セロキサイド2021)、1,2,8,9-ジエポキシリモネン((株)ダイセル製セロキサイド3000)等の所謂2官能脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【0041】
これらのうち、芳香族系ジグリシジルエーテル化合物が良好な耐熱性を有しているために好適である。
【0042】
又、該エポキシ化合物(a)としては、水酸基を持たないものが好ましい。これは、エポキシカルボキシレート化工程で得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)が3官能以上のポリオール化合物となりポリウレタン樹脂(A1)の分子量の制御等が難しくなる。
【0043】
本発明におけるポリウレタン樹脂(A1)の製造に使用される1分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(b)(以下、単に「化合物(b)」とも表す。)は、反応性ポリウレタン樹脂(A1)にエチレン性不飽和基を導入するとともに、エポキシ化合物(a)をイソシアネート基と反応可能なジオール化合物へ変換させる目的をもつ。該化合物(b)のエチレン性不飽和基数は1~4個が好ましい。
【0044】
該化合物(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α-シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは、飽和又は不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類を除く不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。
該(メタ)アクリル酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸、β-フルフリル(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応生成物、(メタ)アクリル酸二量体、飽和又は不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体との当モル反応物である半エステル類、飽和又は不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0045】
これらのうち、感光性樹脂組成物としたときの感度の点から(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応生成物又は桂皮酸が好ましい。
【0046】
又、該化合物(b)としては、化合物中に水酸基を持たないものが好ましい。
【0047】
カルボキシレート化工程においては、前記エポキシ化合物(a)1当量に対して化合物(b)が90~120当量%であることが好ましい。この範囲であれば比較的安定な条件での製造が可能である。これよりも化合物(b)の仕込み量が多い場合には、カルボキシ基を持つ化合物(b)が残存してしまうために好ましくない。又、少なすぎる場合には、未反応のエポキシ化合物(a)が残留してしまうため、樹脂の安定性に問題が生じる。
【0048】
カルボキシレート化工程は無溶剤若しくは溶剤で希釈して反応させることができる。溶剤を使用する場合には、カルボキシレート化反応に対してイナートな溶剤であれば特に限定されない。又、次工程であるウレタン化工程や必要に応じて用いられる後記の酸付加工程においてイナートな溶剤を用いることが好ましい。
【0049】
溶剤を使用する場合、その使用量としては得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率が99~30重量%、より好ましくは99~45重量%となるように用いればよい。反応に使用する化合物が高粘度である場合は粘度が抑えられ、好適に反応が進行する。
【0050】
該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、それらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。又、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤を使用してもよい。
【0051】
該エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ-ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート等のモノ若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジメチル等のグルタル酸ジアルキル、コハク酸ジメチル等のコハク酸ジアルキル、アジピン酸ジメチル等のアジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸ジアルキルエステル類等が挙げられる。
【0052】
該エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0053】
該ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0054】
このほかにも、反応にイナートであれば、後記の架橋剤(B)等を溶剤として単独又は混合して使用してもよい。この場合、硬化型組成物としてそのまま使用することもできる。
【0055】
カルボキシレート化工程においては、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましい。該触媒を使用する場合、その使用量は、反応物、即ち前記エポキシ化合物(a)、化合物(b)及び、溶剤を使用する場合は溶剤を加えた総量に対して0.1~10重量%程度である。その際の反応温度は60~150℃、反応時間は好ましくは5~60時間である。
該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等の一般の塩基性触媒等が挙げられる。
【0056】
又、熱重合禁止剤を使用してもよく、該熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2-メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン等を使用するのが好ましい。
【0057】
カルボキシレート化工程は、適宜サンプリングしながらサンプルの酸価が5mg・KOH/g以下、好ましくは2mg・KOH/g以下となった時点を終点とする。
【0058】
次にウレタン化工程について詳述する。
本発明におけるポリウレタン樹脂(A1)の製造に使用される1分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸(e)(以下、単に「化合物(e)」とも表す。)は、該ポリウレタン樹脂(A1)にカルボキシ基を導入し、光パターニングに必要なアルカリ水溶液可溶性とする。該化合物(e)中のカルボキシ基数としては1~4個が好ましい。
【0059】
該化合物(e)としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール吉草酸等が好ましく、中でも原材料の入手を考慮してジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が特に好ましい。
【0060】
本発明におけるポリウレタン樹脂(A1)の製造に必要に応じて使用される任意のポリエステルジオール化合物(f)を用いることで、感度、耐熱性、耐薬品性等と柔軟性のバランスの優れたポリウレタン樹脂(A1)を得ることができる。ポリエステルジオール化合物(f)は、1分子中に2個の水酸基を有し、更に主骨格中にエステル結合を有することを特徴とする。
【0061】
該ポリエステルポリエステルジオール化合物(f)としては、例えば、ジオール化合物とジカルボン酸類をエステル結合でつないだジオールジカルボン酸エステルジオール類、環状エステル類をジオール化合物で開環重合して得られるポリラクトンジオール類、アルキルカーボネートとジオール化合物との反応等により得られるカーボネート結合を有するポリカーボネートジオール類、更にこれらを複合的に組み合わせたポリエステルジオール類等が挙げられる。これらのポリエステルジオール化合物は前記の不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)や化合物(e)以外の水酸基二個を有する化合物であれば特に限定されない。
【0062】
ジオール化合物とジカルボン酸化合物をエステル結合でつないだジオールジカルボン酸エステルジオール類としては、例えば、エチレングリコールアジピン酸エステルジオール、プロピレングリコールアジピン酸エステルジオール、ブチレングリコールアジピン酸エステルジオール、ネオペンチルグリコールアジピン酸エステルジオール、メチルぺンタンジオールアジピン酸エステルジオール、ヘキサンジオールアジピン酸エステルジオール、エチレングリコールセバシン酸エステルジオール、ヘキサンジオールドデカン二酸エステルジオール、エチレングリコールフタル酸エステルジオール、エチレングリコールアゼライン酸エステルジオール、エチレングリコールセバシン酸ポリエステルジオール、プロピレングリコールセバシン酸ポリエステルジオール、ブチレングリコールセバシン酸ポリエステルジオール、ネオペンチルグリコールセバシン酸ポリエステルジオール、メチルぺンタンジオールセバシン酸ポリエステルジオール、ヘキサンジオールセバシン酸ポリエステルジオール、エチレングリコールセバシン酸ポリエステルジオール、エチレングリコールダイマー酸ポリエステルジオール、プロピレングリコールダイマー酸ポリエステルジオール、ヘキサンジオールドデカン二酸エステルジオール、エチレングリコールドデカン二酸エステルジオール、エチレングリコールアドデカン二酸エステルジオール等が挙げられる。
【0063】
環状エステル類を開環重合して得られるポリラクトンジオール化合物としては、例えば、ポリブチロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0064】
ポリカーボネートジオール化合物としては、例えば、ポリプロピレンカーボネートジオール、ポリブチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリオクタメチレンカーボネートジオール、ポリノナンジオールカーボネートジオール、ポリシクロヘキサンカーボネートジオール、ポリシクロヘキサンジメタノールカーボネートジオール等が挙げられる。
【0065】
これらの内、ポリエステルジオール化合物(f)としては、特にポリカプロラクトンジオール類、ポリカーボネートジオール類が好適な硬化物性を示すことから好ましい。特に、ポリカーボネートジオール類は強靭な硬化膜を与えるポリウレタン樹脂(A1)を誘導できるので更に好ましい。
【0066】
ポリエステルジオール化合物(f)の好適な分子量としては250~5000の範囲が好ましく、更に好ましくは650~3000である。この範囲よりも分子量が小さい場合、柔軟性の付与効果が低く、この範囲よりも大きい場合、耐熱性の低下が大きくなる。
【0067】
本発明におけるポリウレタン樹脂(A1)の製造に使用されるジイソシアネート化合物(d)(以下、単に「イソシアネート化合物(d)」とも表す。)は、不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)化合物(e)、及び必要に応じて使用される任意のポリエステルジオール化合物(f)とのウレタン化工程に使用され、該ポリウレタン樹脂(A1)に好適な柔軟性を与える。
【0068】
該イソシアネート化合物(d)としては、例えば、脂肪族直鎖状ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、芳香族系イソシアネート類等が挙げられる。
【0069】
脂肪族直鎖状ジイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
脂環式ジイソシアネート類としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0071】
芳香族系ジイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビスフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0072】
これらの内、柔軟性を高める場合には脂肪族あるいは脂環式ジイソシアネートが好ましく、脂肪族直鎖状ジイソシアネート類が特に好ましい。
【0073】
ウレタン化工程は、不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)、1分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸(e)、及び必要に応じて使用される任意のポリエステルジオール化合物(f)の混合物と、イソシアネート基を有する化合物(d)とを混合して行う。
【0074】
ポリウレタン樹脂(A1)の製造では、(不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)のモル数+化合物(e)のモル数+ポリエステルジオール化合物(f)のモル数)÷(イソシアネート化合物(d)のモル数)で示される値、即ち、反応系中の水酸基とイソシアネート基の比が1.05~2の範囲が好ましく、1.15~1.6の範囲が特に好ましい。即ち、ポリウレタン樹脂(A1)の保存安定性の点から、ウレタン化工程では少なくともイソシアネート基よりも水酸基が多くなるように仕込み、イソシアネート基が最終的に残留しないようにする。
更に、この範囲よりも大きい場合、得られるポリウレタン樹脂(A1)の分子量が小さくなりすぎ強靭な硬化物を得ることが難しくなりやすく、小さすぎる場合、得られるポリウレタン樹脂(A1)の分子量が大きくなりすぎて現像性等に悪影響が出る場合がある。
【0075】
本発明におけるポリウレタン樹脂(A1)の製造において、不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c)の重量、化合物(e)の重量、必要に応じて使用されるポリエステルジオール化合物(f)の重量、イソシアネート化合物(d)の重量の好ましい重量比は、樹脂組成物総重量を100部とした場合、不飽和エキシカルボキシレート化合物(c)は5~65重量部、化合物(e)は5~25重量部、ポリエステルジオール化合物(f)は0~60重量部、イソシアネート化合物(d)は20~40重量部である。この範囲において、光パターニング、アルカリ水溶液による現像性を有しており、レジスト材料として好適な特性を有するポリウレタン樹脂(A1)が得られ、高い耐熱性、耐薬品性、卓越した柔軟性を特に高い次元でバランスよく有する硬化物を得ることができる。
【0076】
ウレタン化工程は無溶剤若しくは溶剤で希釈して反応させることができる。溶剤を使用する場合には、ウレタン化反応に対してイナートな溶剤であれば特に限定されない。
【0077】
溶剤を使用する場合、その使用量は得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率が99~30重量%、より好ましくは90~45重量%となるように用いればよい。双方の工程でイナートであることを条件に、前記カルボキシレート化工程で使用した溶剤をそのまま用いることも可能である。
【0078】
該溶剤としては、例えば、前記カルボキシレート化工程に例示した溶剤と同様のものが挙げられる。又、反応にイナートであれば、後記の反応性化合物(B)等を溶剤として単独又は混合して使用してもよい。この場合、硬化型組成物としてそのまま使用することもできる。
【0079】
ウレタン化工程は熱重合禁止剤等を使用してもよく、前記カルボキシレート化工程において例示した化合物と同様の化合物を使用することができる。
【0080】
ウレタン化工程は実質的に無触媒で反応させることもできるが、反応を促進させるために触媒を使用することもできる。触媒を使用する場合、その使用量は反応物の総量に対して0.01~1重量%程度である。該触媒としては一般の塩基性触媒、例えば、エチルヘキサン酸スズ等のルイス塩基触媒が挙げられる。
【0081】
ウレタン化工程の反応温度は40~150℃が好ましく、反応時間は好ましくは5~60時間である。
【0082】
ウレタン化工程の反応はイソシアネート基がほぼ残留していないことをもって反応終点とする。反応の終点決定は、赤外吸収スペクトル測定法によりイソシアネート基由来の2250cm-1近辺のピークの観測若しくはJIS K1556:1968等に示される滴定法により行う。
【0083】
こうして得られた本発明におけるポリウレタン樹脂(A1)の好ましい分子量範囲は、GPCにおけるポリスチレン換算重量平均分子量が1000~30000の範囲、より好ましくは3000~25000の範囲である。この分子量よりも小さい場合には硬化物の強靭性が充分に発揮されない、又、これよりも大きすぎる場合には粘度が高くなり塗工等が困難となるばかりではなく現像性も低下しやすい。
【0084】
又、本発明におけるカルボキシ基含有感光性樹脂(A)には、必要に応じて反応性ポリウレタン樹脂(A1)に多塩基酸無水物(g)を反応させて得られる酸変性型ポリウレタン樹脂(A2)も含まれる。これにより、アルカリ現像に必要な酸価を、1分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸(e)だけではなく、求められる樹脂の特性に応じて適宜付加することが可能となる。本発明ではこの反応工程を酸付加工程とする。
【0085】
次に、酸付加工程について詳細に説明する。酸付加工程は、前記ウレタン化反応後に残存した水酸基に多塩基酸無水物(g)を反応させ、エステル結合を介してカルボキシ基を導入する工程である。従って、ウレタン化工程終了後に残存した水酸基の当量以上に酸付加させることはできない。
【0086】
該多塩基酸無水物(g)としては、例えば、1分子中に環状酸無水物構造を有する化合物が挙げられ、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等から無水コハク酸(SA)、無水フタル酸(PAH)、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、無水イタコン酸、3-メチル-テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸又は無水マレイン酸等が好ましい。
【0087】
酸付加工程は、前記ポリウレタン樹脂(A1)に多塩基酸無水物(g)を加えることにより行う。
【0088】
本発明のポリウレタン樹脂(A1)及び/又は酸変性型ポリウレタン樹脂(A2)をアルカリ現像型のレジストとして用いる場合、最終的に得られるポリウレタン樹脂の固形分酸価(JIS K5601-2-1:1999に準拠)を30~120mg・KOH/g、より好ましくは40~105mg・KOH/gとするのが好ましい。固形分酸価がこの範囲である場合、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はアルカリ水溶液による良好な現像性を示す。即ち、活性エネルギー線非照射部の良好な溶解性と活性エネルギー線照射部の不溶解性のバランスを発揮させることができる。
【0089】
酸付加工程は反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、その使用量は反応物の総量に対して0.1~10重量%程度である。その際の反応温度は60~150℃、反応時間は好ましくは5~60時間である。
該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0090】
酸付加工程は無溶剤若しくは溶剤で希釈して反応させることができる。溶剤を使用する場合、該溶剤としては酸付加反応においてイナートな溶剤であれば特に限定はない。又、前工程であるウレタン化工程で溶剤を用いて製造した場合には、両反応にイナートであれば溶剤を除くことなく酸付加反応を行えばよい。
【0091】
該溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率が90~30重量%、より好ましくは80~50重量%になるように用いればよい。
該溶剤としては、前記カルボキシレート化反応やウレタン化工程において例示した溶剤と同様のものを使用すればよい。
【0092】
又、反応にイナートであれば、後記の架橋剤(B)等を溶剤として単独又は混合して使用してもよい。この場合、硬化型組成物としてそのまま使用することもできる。
【0093】
酸付加工程は熱重合禁止剤等を使用してもよく、前記カルボキシレート化工程及び前記ウレタン化工程において例示した化合物と同様の化合物を使用することができる。
【0094】
酸付加工程の反応は適宜サンプリングしながら、反応物の酸価が設定した酸価のプラスマイナス10%の範囲になった点をもって終点とする。
【0095】
又、本発明におけるカルボキシ基含有感光性樹脂(A)には、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a’)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(b)とを反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(c’)と、多塩基酸無水物(g)との反応生成物(A3)も含まれる。
【0096】
本発明において反応生成物(A3)を製造するために用いる1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a’)はとしては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール-A型エポキシ樹脂、ビスフェノール-F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール-Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、グリオキサール型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0097】
該フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN-770(DIC(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、jER154(ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN-201、RE-306(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
該クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN-695(DIC(株)製)、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S(いずれも日本化薬(株)製)、UVR-6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN-195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0098】
該トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、EPPN-503、EPPN-502H、EPPN-501H(いずれも日本化薬(株)製)、TACTIX-742(ダウ・ケミカル社製)、jER E1032H60(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
該ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンEXA-7200(DIC(株)製)、TACTIX-556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0099】
該ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、jER828、jER1001(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、UVR-6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R-331(ダウ・ケミカル社製)、YD-8125(東都化成(株)製)、NER-1202、NER-1302(いずれも日本化薬(株)製)等のビスフェノール-A型エポキシ樹脂、UVR-6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF-8170(東都化成(株)製)、NER-7403、NER-7604(いずれも日本化薬(株)製)等のビスフェノール-F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0100】
該ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC-3000、NC-3000-H、NC-3000-L(いずれも日本化薬(株)製)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX-4000(ジャパンエポキシレジン(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL-6121(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
該ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN-880(DIC(株)製)、jER E157S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
【0101】
該ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えば、NC-7000(日本化薬(株)製)、EXA-4750(DIC(株)製)等が挙げられる。
該グリオキサール型エポキシ樹脂としては、例えば、GTR-1800(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
該脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、EHPE-3150(ダイセル(株)製)等が挙げられる。
該複素環式エポキシ樹脂としては、例えば、TEPIC(日産化学(株)製)等が挙げられる。
【0102】
中でも、フレキシブル性の点において、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂が特に有効で、例えば、NER-1202、NER-1302、NER-7403、NER-7604、NC-3000、NC-3000-H、NC-3000-L等がもっとも好ましい。
【0103】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる架橋剤(B)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)と多カルボン酸の酸無水物(例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等)の反応物であるハーフエステル,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX-220、HX-620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε-カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート(例えば後記実施例に記載のDPCA)、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノ又はポリグリシジル化合物(例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリエトキシグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリエトキシポリグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。架橋剤(B)は、単独で用いることもでき、また、2種以上を混合して用いても良い。これらの感光性樹脂組成物における含有割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100質量%としたとき、通常2~40質量%、好ましくは、3~30質量%である。
【0104】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤(C)は、特に制限なく用いることができるが、具体的には、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン(例えば後記実施例に記載のOmnirad-907)などのアセトフェノン類;2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4-ジエチルチオキサントン(例えば後記実施例に記載のDETX-S)、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。光重合開始剤(C)は、単独で用いることもでき、また、2種以上を混合して用いても良い。これらの感光性樹脂組成物における含有割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100質量%としたとき、通常1~30質量%、好ましくは、2~25質量%である。
【0105】
これら光重合開始剤(C)は、単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の促進剤などと組み合わせて使用することができる。これらの促進剤の添加量としては、光重合開始剤(C)に対して、100質量%以下の添加量が好ましい。
【0106】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(D)の含有割合としては、カルボキシ基含有感光性樹脂(A)の固形分酸価と使用量から計算された当量の200%以下の量が好ましい。より好ましい範囲としては、80%~200%であり、さらに好ましくは80~140%である。エポキシ樹脂(D)の含有割合が200%を超えると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が著しく低下するおそれがあり好ましくない。エポキシ樹脂(D)の含有割合が80%より小さい場合は本発明の硬化物中にカルボキシ基が残存してしまい、絶縁信頼性が低下するおそれがある。
【0107】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(D)は、予め前記、樹脂組成物に混合してもよいが、プリント基板への塗布前に混合することが好ましい。すなわち、前記、(A)成分を主体とし、これにエポキシ硬化促進剤等を配合した主剤溶液と、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(D)を主体としたエポキシ樹脂溶液の二液型に配合し、使用に際してこれらを混合して用いることが好ましい。
【0108】
本発明の感光性樹脂組成物を得るにあたり、必要に応じて各種の添加剤、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、クレーなどの充填剤、アエロジルなどのチキソトロピー付与剤;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタンなどの着色剤、シリコーン系のレベリング剤(例えば、KS-66)、フッ素系のレベリング剤や消泡剤(例えば、BYK-354);ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどの重合禁止剤、熱硬化触媒(例えば後記実施例に記載のトリフェニルホスフィン)などを組成物の諸性能を高める目的で添加することができる。
【0109】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば前記のカルボキシ基含有感光性樹脂(A)に、架橋剤(B)、光重合開始剤(C)、硬化剤としてエポキシ樹脂(D)を混合することにより得ることができる。
【0110】
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂組成物が支持フィルムと保護フィルムでサンドイッチされた構造からなるドライフィルムレジストとしても用いることもできる。本発明の感光性樹脂組成物は、液状又はフィルム状に加工されたものが好ましい。
【0111】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えばプリント基板用のソルダーレジスト、カバーレイ等のレジスト材料、電子部品の層間の絶縁材、光部品間を接続する光導波路として有用である他、カラーフィルター、印刷インキ、封止剤、塗料、コーティング剤、接着剤等としても使用できる。
【0112】
本発明の硬化物は、紫外線等のエネルギー線照射により上記の本発明の感光性樹脂組成物を硬化させたものである。紫外線等のエネルギー線照射により硬化は常法により行うことができる。例えば紫外線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)等の紫外線発生装置を用いればよい。
【0113】
上記のプリント基板は、例えば次のようにして得ることができる。即ち、液状の樹脂組成物を使用する場合、プリント配線用基板に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により5~160μmの膜厚で本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、塗膜を通常50~110℃、好ましくは60~100℃で乾燥させることにより、塗膜が形成できる。その後、ネガフィルム等の露光パターンを形成したフォトマスクを通して塗膜に直接または間接に紫外線等の高エネルギー線を通常10~2000mJ/cm程度の強さで照射し、未露光部分を後述する現像液を用いて、例えばスプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等により現像する。その後、必要に応じてさらに紫外線を照射し、次いで通常100~200℃、好ましくは140~180℃の温度で加熱処理をすることにより、金メッキ性に優れ、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性、屈曲性等の諸特性を満足する永久保護膜を有するプリント基板が得られる。
【0114】
現像に使用される、アルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が使用できる。
【実施例0115】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。又、実施例中、特に断りがない限り部は重量部を示す。
【0116】
エポキシ当量、酸価、GPCの測定は以下の条件で測定した。
1)エポキシ当量(WPE):JIS K 7236:2001に準じた方法で測定した。
2)酸価:JIS K 0070:1992に準じた方法で測定した。
3)GPCの測定条件は以下の通りである。
機種:TOSOH HLC-8220GPC
カラム:TSKGEL Super HZM-N
溶離液:THF(テトラヒドロフラン);0.35ml/分、温度40℃
検出器:示差屈折計
分子量標準:ポリスチレン
【0117】
合成例1:酸変性型ポリウレタン樹脂溶液(A-1)の合成
攪拌装置、還流管をつけた300mLフラスコ中に、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)として、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(商品名RE-310S、WPE=184g/eq、日本化薬(株)製)を342.38g、1分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸(b)としてメタアクリル酸を155.38g、触媒としてとしてトリフェニルホスフィン0.75gを加え、120℃の温度で反応液の酸価が、3mg・KOH/g以下になるまで反応させ、不飽和エポキシカルボキシレート化合物を得た。又、エポキシ価を測定したところ13kg/eqであり、充分にエポキシ基が反応していることも併せて確認した。このときの反応時間は24時間であった。
【0118】
次いで、攪拌装置、還流管をつけた300mLフラスコ中に、先ほど得られた不飽和エポキシカルボキシレート化合物を475.06g、1分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸(d)として、ジメチロールプロピオン酸を116.55、任意のジオール化合物(e)として、ダイマー酸ポリエステルポリオール(商品名PRIPLAST XL 101、CRODA(株)製)を234.53g、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(略称CA)をポリウレタン化合物(A)として固形分含有率が63%になるように表1中記載量加えて80℃で撹拌溶解した。その後にジイソシアネート化合物(c)としてヘキサメチレンジイソシアネートを233.77g、滴下漏斗を用いて加え反応させた。滴下終了後、80℃の温度で10時間反応を継続して、赤外線吸収スペクトルにてイソシアネート基に由来する吸収ピークがないことを確認しポリウレタン化合物を得た。このとき、GPCを用いて測定したポリスチレン換算重量平均分子量は17,000であった。
【0119】
その後、攪拌装置、還流管をつけた300mLフラスコ中に、先ほど得られたポリウレタン化合物のCA溶液を7.42g、更に、多塩基酸無水物(f)として無水コハク酸(新日本理化(株)製)を4.94加えた。更に溶剤としてCAを最終的な固形分含有率が63%になるように加えて撹拌溶解し100℃の温度で5時間反応を継続して、酸変性型ポリウレタン化合物を含む樹脂溶液(A-1)を得た。この酸変性型ポリウレタン化合物の酸価は75.1mg・KOH/gであった。このとき、GPCを用いて測定したポリスチレン換算重量平均分子量は18,000であった。
【0120】
合成例2:エポキシ樹脂(D-1)の合成
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(商品名YX-4000H、三菱ケミカル(株)製)380g、4、4’-ビフェノール98g、メチルイソブチルケトン100gを仕込み、撹拌下で100℃まで昇温した後、トリフェニルホスフィン0.38gを添加し、100℃で3時間、120℃で10時間反応させた後、メチルイソブチルケトンを留去することで、樹脂状固体としてエポキシ樹脂(D-1)(式(1)で表され、GPCの面積比より算出したnは平均で約2.1)を得た。得られた樹脂の軟化点は84℃であり、エポキシ当量は501g/eq.であった。
【0121】
前記合成例1で得られた酸変性型ポリウレタン化合物を含む樹脂溶液(A-1)、及び、前記合成例2で得られたエポキシ樹脂(D-1)を用い、表1に示す配合割合とした後攪拌装置にて均一に分散させ、感光性樹脂組成物を得た。
【0122】
[表1]

*1 日本化薬(株)製:ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
*2 IGM Resins B.V. 製:2-メチル-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン
*3 日本化薬(株)製:2,4-ジエチルチオキサントン
*4 日鉄ケミカル&マテリアル(株)製:ビスフェノール-A型エポキシ樹脂
*5 三菱ケミカル(株)製:テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂
*6 日本化薬(株)製:特殊多官能型エポキシ樹脂
*7 日本化薬(株)製:ビスフェノール-A型エポキシ樹脂
*8 日本化薬(株)製:ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂
*9 北興化学工業(株)製:トリフェニルホスフィン
*10 神港有機化学工業(株)製:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
【0123】
評価項目のそれぞれの項目について詳述する。
【0124】
現像性評価(表中略称:現像性)
レジスト樹脂組成物をアプリケーターにて20μmの厚さになるように銅張積層板 ELC-4762(住友ベークライト(株)製)に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥機で30分乾燥させた後、ビア(直径500μm)のマスクを被せ、紫外線照射器(USHIO製(超高圧水銀灯))を用いて、500mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射した。その後現像液として1%炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像を行った。塗膜が完全に溶解し、ビアが開いたかどうかで現像性を評価した。
〇‥残渣なし ×‥残渣あり
【0125】
耐熱分解性評価(表中略称:耐熱分解性)
レジスト樹脂組成物をアプリケーターにて20μmの厚さになるように圧延銅箔 BHY-82F-HA-V2(JX金属(株)製)に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥機で30分乾燥させた後、紫外線照射器(GS YUASA製:CS 30L-1)を用いて、500mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射した。次にオーブン内で150℃で30分硬化させ、硬化物を得た。銅箔を塩化鉄(III)45°ボーメ(純正化学(株)製)で除去した。作製した硬化物を作成したサンプル3mgを、毎分100mlの空気流中でMETTLER製TGA/DSC1を用いて重量が5%減少する温度を測定した。
【0126】
ガラス転移温度測定(表中略称Tg)
レジスト樹脂組成物をアプリケーターにて20μmの厚さになるように圧延銅箔 BHY-82F-HA-V2(JX金属(株)製)に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥機で30分乾燥させた後、紫外線照射器(GS YUASA製:CS 30L-1)を用いて、500mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射した。次にオーブン内で150℃で30分硬化させ、硬化物を得た。銅箔を塩化鉄(III)45°ボーメ(純正化学(株)製)で除去した。作製した硬化物を作成したサンプルのDMA測定(TA Instruments製:RSA-G2)を行い、tangentδが最大になる温度を求めた。
【0127】
引張弾性率・破断点伸度測定
レジスト樹脂組成物をアプリケーターにて20μmの厚さになるように圧延銅箔 BHY-82F-HA-V2(JX金属(株)製)に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥機で30分乾燥させた後、紫外線照射器(GS YUASA製:CS 30L-1)を用いて、500mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射した。次にオーブン内で150℃で30分硬化させ、硬化物を得て、銅箔を塩化鉄(III)45°ボーメ(純正化学(株)製)で除去した。得られた硬化膜を長さ50mm、幅5mmに切断し、チャック間距離を4cm、温度23℃において、テンシロン(A&D(株)製:RTG-1210)を用い、引張速度5mm/minの条件で引張弾性率(MPa)及び破断点伸度(%)を測定して求めた。
【0128】
マイグレーション評価
各組成物を、L/S=100μm/100μmのくし型パターンが形成されたエスパネックスMシリーズ(新日鐵化学製:ベースイミド厚25μm Cu厚18μm)上に25μmの厚さになるように塗布し、塗膜をオーブンで80℃で30分乾燥させた。次いで、紫外線露光装置(GS YUASA製:CS 30L-1)を用いて500mJ/cmで露光して硬化させたのち、オーブンで150℃で1時間乾燥させることによって、評価用の試験基板を得た。得られた基板の電極部分をはんだによる配線接続を行い、130℃/85%RHの環境下に置き、100Vの電圧をかけてマイグレーション評価をした。
〇‥100時間以上 △‥50時間以上100時間未満 ×‥50時間未満
【0129】
[表2]
【0130】
上記の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物は優れた現像性であり、現像後の剥がれもなく、十分な密着性を有している。また、その硬化膜も耐熱性、弾性率、柔軟性に優れているので、特にプリント基板用感光性樹脂組成物に適している。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の感光性樹脂組成物は、紫外線により露光硬化することによる塗膜の形成において、現像性に優れ、得られた硬化物は、硬化膜も耐熱性、弾性率、柔軟性、無電解金メッキ耐性も十分に満足するものであり、光硬化型塗料、光硬化型接着剤等に好適に使用でき、特にプリント基板用感光性樹脂組成物及び光導波路形成用感光性樹脂組成物に適している。に適している。
好適には、例えば特に高い信頼性を求められるフレキシブルプリント配線板用ソルダーレジスト、プリント配線板用ソルダーレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁材料、メッキレジスト、感光性光導波路等の用途に用いることができる。