(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071469
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】塗布工具
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20220509BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180452
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】511213410
【氏名又は名称】MMCリョウテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恵
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA12
4F041BA17
4F041BA34
4F041CA03
4F041CA16
4F042AB00
4F042BA03
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB02
(57)【要約】
【課題】塗布幅の調整が容易であり、かつ長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる塗布工具を提供する。
【解決手段】一対のヘッド部材2と、マニホールド4と、マニホールド4と連通し、一対のヘッド部材2の先端部2c間に開口するスロット5と、マニホールド4内に配置される栓部6と、スロット5内に配置されるシム部7と、栓部6およびシム部7を第1方向に移動させる塗布幅調整機構8と、を備え、塗布幅調整機構8は、マニホールド4内に配置され、第1方向において栓部6と連結され、第1方向に伸縮可能なレージトング13と、レージトング13に連結され、少なくとも一部がヘッド部材2の外部に露出し、レージトング13を伸縮させる操作部14と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向において互いに対向する一対のヘッド部材と、
一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、
一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、前記マニホールドと連通し、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において、一対の前記ヘッド部材の先端部間に開口するスロットと、
前記マニホールド内に配置され、前記第1方向に移動可能な栓部と、
前記スロット内に配置され、前記栓部とともに前記第1方向に移動可能なシム部と、
前記栓部および前記シム部を前記第1方向に移動させる塗布幅調整機構と、を備え、
前記塗布幅調整機構は、
前記マニホールド内に配置され、前記第1方向において前記栓部と連結され、前記第1方向に伸縮可能なレージトングと、
前記レージトングに連結され、少なくとも一部が前記ヘッド部材の外部に露出し、前記レージトングを伸縮させる操作部と、を有する、
塗布工具。
【請求項2】
前記レージトングは、
前記第1方向と直交する方向から見て、X字状に交差して配置される一対のリンク部材と、
前記一対のリンク部材同士の交差部に配置され、前記一対のリンク部材を互いに回動自在に連結する連結軸と、を有する、
請求項1に記載の塗布工具。
【請求項3】
前記レージトングは、前記一対のリンク部材および前記連結軸の組を複数有し、
複数の前記組は、前記第1方向に並んで配置され、
前記第1方向において互いに隣り合う前記組の前記一対のリンク部材同士が、互いに回動自在に連結される、
請求項2に記載の塗布工具。
【請求項4】
前記操作部は、
前記レージトングのうち、前記栓部と連結される前記第1方向の一端部とは反対側の、前記第1方向の他端部に連結される回転軸と、
前記回転軸と接続されて前記ヘッド部材の外部に露出し、前記回転軸をその中心軸回りに回転可能な回転操作体と、を有し、
前記回転軸が前記中心軸回りに回転することで、前記レージトングが前記第1方向に伸縮する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項5】
前記回転軸は、その中心軸が前記第1方向と直交する方向に延びる、
請求項4に記載の塗布工具。
【請求項6】
前記ヘッド部材は、前記回転軸をその中心軸回りに回転自在に支持する支持部を有する、
請求項4または5に記載の塗布工具。
【請求項7】
前記支持部は、前記ヘッド部材の内部を延び、前記ヘッド部材の外面および前記マニホールドに開口する貫通孔である、
請求項6に記載の塗布工具。
【請求項8】
前記レージトングは、
前記第1方向と直交する方向から見て、X字状に交差して配置される一対のリンク部材と、
前記一対のリンク部材同士の交差部に配置され、前記一対のリンク部材を互いに回動自在に連結する連結軸と、
前記レージトングの前記第1方向の他端部に配置され、前記一対のリンク部材に設けられ、互いに逆ネジとされた一対の雌ネジ部と、を有し、
前記回転軸は、互いに逆ネジとされた一対の雄ネジ部を有し、
前記一対の雌ネジ部と前記一対の雄ネジ部とが、互いに螺着される、
請求項4から7のいずれか1項に記載の塗布工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布工具として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の塗布工具は、長手方向に延びる一対のヘッド部材と、一対のヘッド部材の内面同士の間に位置して長手方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、一対のヘッド部材の内面同士の間に位置して長手方向に延び、マニホールドと連通し、一対のヘッド部材の先端部間に開口するスロット(スリット)と、マニホールドおよびスロットの内部に配置され、長手方向に移動可能なインナーディッケルと、インナーディッケルを長手方向に移動させるボールねじ機構と、を有する。
特許文献1のようなインナーディッケル式の塗布工具では、ボールねじ機構によりインナーディッケルを長手方向に移動させることで、塗布工具を分解することなく、塗布液の塗布幅を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の塗布工具では、インナーディッケルを長手方向に移動させるためのボールねじ機構がヘッド部材から長手方向に大きく出っ張る。このため、塗布工具の長手方向の外形寸法が大きくなり、設置スペースなどに制限が生じやすく、塗布装置に搭載することが困難となる場合がある。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとすると、その分塗布工具の長手方向の外形寸法も大きくなり、上記問題がより顕著となる。
【0005】
本発明は、塗布幅の調整が容易であり、かつ長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる塗布工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗布工具の一つの態様は、第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向において互いに対向する一対のヘッド部材と、一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、前記マニホールドと連通し、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において、一対の前記ヘッド部材の先端部間に開口するスロットと、前記マニホールド内に配置され、前記第1方向に移動可能な栓部と、前記スロット内に配置され、前記栓部とともに前記第1方向に移動可能なシム部と、前記栓部および前記シム部を前記第1方向に移動させる塗布幅調整機構と、を備え、前記塗布幅調整機構は、前記マニホールド内に配置され、前記第1方向において前記栓部と連結され、前記第1方向に伸縮可能なレージトングと、前記レージトングに連結され、少なくとも一部が前記ヘッド部材の外部に露出し、前記レージトングを伸縮させる操作部と、を有する。
【0007】
本発明の塗布工具は、いわゆるインナーディッケル式のスロットダイであり、塗布幅調整機構により、栓部およびシム部を含むインナーディッケルを、第1方向つまりヘッド部材の長手方向に移動させることで、塗布工具を分解することなく、塗布液の塗布幅を調整可能である。
【0008】
具体的に、この塗布幅調整機構は、オペレーターが操作部を操作することにより、マニホールド内でレージトングを第1方向に伸縮させることができ、これにより栓部およびシム部を第1方向に移動させることができて、塗布幅の調整が容易である。
また、レージトングの伸縮によって塗布幅を調整するため、塗布幅調整機構がヘッド部材から第1方向つまり長手方向に出っ張ることが抑えられる。このため、塗布工具の長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。本発明の塗布工具によれば、設置スペースなどに制限が生じにくく、この塗布工具を塗布装置に搭載しやすい。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとする場合でも、塗布工具の長手方向の外形寸法増加への影響は小さく抑えられる。
【0009】
上記塗布工具において、前記レージトングは、前記第1方向と直交する方向から見て、X字状に交差して配置される一対のリンク部材と、前記一対のリンク部材同士の交差部に配置され、前記一対のリンク部材を互いに回動自在に連結する連結軸と、を有することが好ましい。
【0010】
この場合、レージトングをシンプルな構造とすることができ、レージトングの機能が安定する。
【0011】
上記塗布工具において、前記レージトングは、前記一対のリンク部材および前記連結軸の組を複数有し、複数の前記組は、前記第1方向に並んで配置され、前記第1方向において互いに隣り合う前記組の前記一対のリンク部材同士が、互いに回動自在に連結されることが好ましい。
【0012】
この場合、レージトングの第1方向への伸縮量を大きくして、インナーディッケルの第1方向への移動量を大きく確保できる。すなわち、塗布幅調整機構による塗布幅の調整範囲を大きく確保できる。
【0013】
上記塗布工具において、前記操作部は、前記レージトングのうち、前記栓部と連結される前記第1方向の一端部とは反対側の、前記第1方向の他端部に連結される回転軸と、前記回転軸と接続されて前記ヘッド部材の外部に露出し、前記回転軸をその中心軸回りに回転可能な回転操作体と、を有し、前記回転軸が前記中心軸回りに回転することで、前記レージトングが前記第1方向に伸縮することが好ましい。
【0014】
この場合、オペレーターが回転操作体を操作し、回転軸をその中心軸回りに回転させることにより、レージトングが第1方向に伸縮して、インナーディッケルが第1方向に移動させられる。このため、簡単な操作によって塗布液の塗布幅を調整できる。
【0015】
上記塗布工具において、前記回転軸は、その中心軸が前記第1方向と直交する方向に延びることが好ましい。
【0016】
この場合、回転軸が第1方向と直交する方向に延びるので、操作部がヘッド部材から第1方向つまり長手方向に出っ張ることが抑えられる。塗布工具の長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。
【0017】
上記塗布工具において、前記ヘッド部材は、前記回転軸をその中心軸回りに回転自在に支持する支持部を有することが好ましい。
【0018】
この場合、ヘッド部材の支持部によって、回転軸がその中心軸回りに安定して回転させられる。このため、レージトングの第1方向への伸縮動作が安定する。
【0019】
上記塗布工具において、前記支持部は、前記ヘッド部材の内部を延び、前記ヘッド部材の外面および前記マニホールドに開口する貫通孔であることが好ましい。
【0020】
この場合、ヘッド部材の貫通孔により回転軸を回転自在に支持するので、ヘッド部材の支持部の構成を簡素化できる。また、支持部がヘッド部材から第1方向に出っ張らないため、塗布工具の長手方向の外形寸法をより小さく抑えることができる。
【0021】
上記塗布工具において、前記レージトングは、前記第1方向と直交する方向から見て、X字状に交差して配置される一対のリンク部材と、前記一対のリンク部材同士の交差部に配置され、前記一対のリンク部材を互いに回動自在に連結する連結軸と、前記レージトングの前記第1方向の他端部に配置され、前記一対のリンク部材に設けられ、互いに逆ネジとされた一対の雌ネジ部と、を有し、前記回転軸は、互いに逆ネジとされた一対の雄ネジ部を有し、前記一対の雌ネジ部と前記一対の雄ネジ部とが、互いに螺着されることが好ましい。
【0022】
この場合、オペレーターが回転操作体を操作し、回転軸をその中心軸回りの周方向のうち一方側へ回転させることにより、回転軸の一対の雄ネジ部に螺着する一対の雌ネジ部が中心軸の軸方向において互いに接近させられ、レージトングが第1方向に伸長する。これにともない、レージトングと接続されたインナーディッケルは、第1方向の一方側に移動する。
また、オペレーターが回転操作体を操作し、回転軸をその中心軸回りの周方向のうち他方側へ回転させることにより、回転軸の一対の雄ネジ部に螺着する一対の雌ネジ部が中心軸の軸方向において互いに離間させられ、レージトングが第1方向に収縮する。これにともない、レージトングと接続されたインナーディッケルは、第1方向の他方側に移動する。
すなわち、回転軸を回転させる方向によって、レージトングを第1方向に伸長または収縮させることができ、インナーディッケルを第1方向の所望の向きに簡単に移動できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一つの態様の塗布工具によれば、塗布幅の調整が容易であり、かつ長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1実施形態の塗布工具の一部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の塗布工具の内部構造を示す部分斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の塗布工具の内部構造を示す部分斜視図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の塗布工具の内部構造を示す部分斜視図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の塗布工具の内部構造を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の塗布工具10について、
図1から
図3を参照して説明する。
本実施形態の塗布工具10は、工具の構成部材を分解することなく、被塗布物(図示省略)への塗布液の塗布幅を調整可能ないわゆるインナーディッケル式のスロットダイである。
【0026】
図1から
図3に示すように、本実施形態の塗布工具10は、一対のヘッド部材1,2と、マニホールド4と、スロット5と、塞ぎ板3と、インナーディッケル9と、塗布幅調整機構8と、を備える。
一対のヘッド部材1,2はそれぞれ、略長方形板状または略直方体状であり、所定方向に延びる。一対のヘッド部材1,2は、互いの内面(内側面)1b,2a同士を対向させた状態で、隣接して配置される。
【0027】
〔方向の定義〕
本実施形態では、一対のヘッド部材1,2が延在する方向を、第1方向と呼ぶ。つまり一対のヘッド部材1,2は、第1方向に延びる。本実施形態において第1方向は、水平方向である。第1方向は、左右方向と言い換えてもよい。各図において、第1方向は、X軸方向に相当する。第1方向のうち、一方側を右側(+X側)と呼び、他方側を左側(-X側)と呼ぶ。なお第1方向は、長手方向と言い換えてもよい。
【0028】
第1方向と直交する方向のうち、一対のヘッド部材1,2が互いに対向する方向を、第2方向と呼ぶ。一対のヘッド部材1,2は、第2方向において互いに隣接配置される。
図2および
図3に示すように、本実施形態において第2方向は、例えば、鉛直方向である。この場合、第2方向は、上下方向と言い換えてもよい。各図において、第2方向は、Z軸方向に相当する。第2方向のうち、一方のヘッド部材1から他方のヘッド部材2へ向かう方向を下側(-Z側)と呼び、他方のヘッド部材2から一方のヘッド部材1へ向かう方向を上側(+Z側)と呼ぶ。なお以下の説明では、一方のヘッド部材1を第1ヘッド部材1、他方のヘッド部材2を第2ヘッド部材2と呼ぶ場合がある。第2方向は、各ヘッド部材1,2の板厚方向に相当する。このため第2方向は、厚さ方向と言い換えてもよい。
【0029】
第1方向および第2方向と直交する方向を、第3方向と呼ぶ。
図2および
図3に示すように、本実施形態において第3方向は、例えば、水平方向である。この場合、第3方向は、前後方向と言い換えてもよい。各図において、第3方向は、Y軸方向に相当する。第3方向のうち、一対のヘッド部材1,2間からスロット5が不図示の被塗布物に向けて開口する方向を先端側(+Y側)と呼び、これとは反対方向を後端側(-Y側)と呼ぶ。なお第3方向のうち、先端側は、前側と言い換えてもよく、後端側は、後側と言い換えてもよい。
【0030】
〔ヘッド部材〕
各ヘッド部材1,2は、例えばステンレス製等である。一対のヘッド部材1,2は、図示しないボルト等の締結部材により、互いに固定される。
図1に示すように、ヘッド部材1,2は、支持部11,12を有する。
【0031】
第1ヘッド部材1が有する一方の支持部11は、第1ヘッド部材1の第1方向を向く端面に配置される。支持部11は、第1ヘッド部材1の第1方向を向く端面にネジ止め等により固定される。本実施形態では支持部11が、第1ヘッド部材1の第1方向を向く両端面つまり左端面および右端面に、一対設けられる。
第2ヘッド部材2が有する他方の支持部12は、第2ヘッド部材2の第1方向を向く端面に配置される。支持部12は、第2ヘッド部材2の第1方向を向く端面にネジ止め等により固定される。本実施形態では支持部12が、第2ヘッド部材2の第1方向を向く両端面つまり左端面および右端面に、一対設けられる。
【0032】
一対のヘッド部材1,2の各左端面に配置される一対の支持部11,12同士は、第2方向において互いに間隔をあけて配置される。一対のヘッド部材1,2の各右端面に配置される一対の支持部11,12同士は、第2方向において互いに間隔をあけて配置される。第2方向に対向する一対の支持部11,12同士の間には、マニホールド4の第1方向の端部つまりマニホールド開口部が配置される。
【0033】
支持部11,12は、塗布幅調整機構8が有する後述の回転軸22を、その中心軸C回りに回転自在に支持する。支持部11は、支持部11を第2方向に貫通する軸保持部11aを有する。支持部12は、支持部12を第2方向に貫通する軸保持部12aを有する。軸保持部11a,12aはそれぞれ、第2方向に延びる孔状または溝状であり、各内周部で回転軸22を回転自在に保持する。第2方向に対向する一対の支持部11,12により、回転軸22がその中心軸C回りに回転自在に保持される。
【0034】
図2および
図3に示すように、第2ヘッド部材2は、マニホールド4に塗布液を供給する供給路21を有する。
供給路21は、第2ヘッド部材2を貫通する。供給路21は、例えば円孔状であり、第2ヘッド部材2の第1方向と直交する方向を向く外面のうち、第3方向の後端側を向く後面2b、およびマニホールド4に開口する。本実施形態では供給路21が、マニホールド4の第1方向の中央部に開口する。特に図示しないが、供給路21は、塗布工具10の外部に設けられる配管およびポンプ等を介して、塗布液タンクと接続される。
【0035】
〔マニホールド〕
図1から
図3に示すように、マニホールド4は、一対のヘッド部材1,2の内面1b,2a同士の間に位置して第1方向に延び、内部に塗布液が貯留される。マニホールド4は、塗布工具10の内部に塗布液を一時的に保持する室(空間)である。マニホールド4は、ヘッド部材1,2を第1方向に貫通する貫通孔である。マニホールド4は、ヘッド部材1,2の第1方向を向く両端面に開口する。すなわち、マニホールド4の第1方向の長さは、ヘッド部材1,2の第1方向の長さと等しい。マニホールド4は、第1方向と垂直な断面の形状が、円形状である。マニホールド4には、供給路21から塗布液が流入し、この塗布液はマニホールド4内に一時的に保持されて、スロット5へ流出する。つまりマニホールド4の内部には、塗布液が流通する。
【0036】
本実施形態ではマニホールド4が、第1ヘッド部材1の内面1bから上側(+Z側)に窪み第1方向に延びる第1溝部4aと、第2ヘッド部材2の内面2aから下側(-Z側)に窪み第1方向に延びる第2溝部4bと、を有する。第1溝部4aは、第1方向と垂直な断面の形状が、半円状である。第2溝部4bは、第1方向と垂直な断面の形状が、半円状である。
【0037】
〔スロット〕
スロット5は、一対のヘッド部材1,2の内面1b,2a同士の間に位置して第1方向に延び、マニホールド4と連通する。スロット5は、塗布工具10の内部に設けられたスリット状の流路(空間)である。スロット5は、マニホールド4の先端側に隣り合って配置される。スロット5は、第1ヘッド部材1の先端部(刃先部)1cと第2ヘッド部材2の先端部(刃先部)2cとの間から第3方向の先端側へ向けて、外部に開口する。つまりスロット5は、第3方向において、一対のヘッド部材1,2の先端部1c,2c間に開口する。スロット5の先端部つまりスロット開口部は、第2方向において第1ヘッド部材1の先端部1cと第2ヘッド部材2の先端部2cとの間に位置する。スロット5の後端部は、マニホールド4と接続される。
【0038】
本実施形態では、スロット5の第1方向の長さが、各ヘッド部材1,2の第1方向の長さと等しい。スロット5は、ヘッド部材1,2の第1方向を向く両端面に開口する。スロット5には、マニホールド4から塗布液が流入し、この塗布液はスロット開口部から先端側の被塗布物(図示省略)へ向けて流出する。つまりスロット5の内部には、塗布液が流通する。
【0039】
〔塞ぎ板〕
塞ぎ板3は、例えば樹脂製または金属製等である。塞ぎ板3は、長方形板状であり、一対の板面が第2方向を向く。塞ぎ板3は、一対のヘッド部材1,2の内面1b,2a同士の間に位置して第1方向に延びる。塞ぎ板3は、マニホールド4の後端側に隣り合って配置される。本実施形態では、塞ぎ板3の第1方向の長さが、各ヘッド部材1,2の第1方向の長さと等しい。塞ぎ板3が設けられることにより、マニホールド4から後端側へ向けた塗布液の流通が規制される。
【0040】
〔インナーディッケル〕
インナーディッケル9は、例えば樹脂製または金属製等である。
図2および
図3に示すように、インナーディッケル9は、栓部6と、シム部7と、を有する。つまり塗布工具10は、栓部6と、シム部7と、を備える。各図においては図示を一部省略しているが、インナーディッケル9つまり栓部6およびシム部7の組は、塗布工具10の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。一対のインナーディッケル9は、第1方向に互いに間隔をあけて配置される。一対のインナーディッケル9間の第1方向の距離は、塗布液の塗布幅に相当する。
【0041】
栓部6は、マニホールド4内に配置される。栓部6は、マニホールド4の第1方向の端部に配置される。栓部6は、マニホールド4の内部を第1方向に移動可能である。本実施形態では栓部6が、第1方向に延びる円柱状である。栓部6の外周面は、マニホールド4の内周面と摺動可能に接触する。
【0042】
栓部6は、マニホールド4の内部空間を第1方向から密封(シール)しており、つまりマニホールド4の内部空間を第1方向に仕切る。栓部6は、マニホールド4の内部空間を、第1方向において、塗布液が貯留される部分(塗布液貯留部)と、塗布液が貯留されない部分(塗布液非貯留部)とに区画する。このため、栓部6が第1方向に移動することで、マニホールド4の塗布液貯留部の第1方向の長さが変化する。
【0043】
シム部7は、板状であり、具体的には四角形板状である。図示の例では、シム部7が、第3方向に延びる長方形板状である。シム部7の一対の板面は、第2方向を向く。シム部7は、スロット5内に配置される。シム部7は、スロット5の第1方向の端部に配置される。シム部7の一対の板面は、スロット5の第2方向を向く一対の壁面と摺動可能に接触する。
【0044】
シム部7は、栓部6の先端側に隣り合って配置される。シム部7は、栓部6と接続される。シム部7と栓部6とは、例えば、単一の部材により一体に形成される。シム部7は、スロット5の内部を第1方向に移動可能である。すなわち、シム部7は、栓部6とともに第1方向に移動可能である。
【0045】
シム部7は、スロット5の内部空間を第1方向から密封(シール)しており、つまりスロット5の内部空間を第1方向に仕切る。シム部7は、スロット5の内部空間を、第1方向において、塗布液が流通する部分(塗布液流通部)と、塗布液が流通しない部分(塗布液非流通部)とに区画する。このため、シム部7が第1方向に移動することで、スロット5の塗布液流通部の第1方向の長さが変化する。
【0046】
このようにインナーディッケル9が、ヘッド部材1,2に対して第1方向に移動することにより、スロット5の先端部(スロット開口部)から図示しない被塗布物に塗布される塗布液の第1方向の塗布長さ、つまり塗布幅が変化する。
【0047】
〔塗布幅調整機構〕
塗布幅調整機構8は、栓部6およびシム部7つまりインナーディッケル9を、第1方向に移動させる。塗布幅調整機構8は、レージトング13と、操作部14と、を有する。各図においては図示を一部省略しているが、塗布幅調整機構8は、塗布工具10の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。
【0048】
レージトング13は、マニホールド4内に配置され、第1方向において栓部6と連結され、第1方向に伸縮可能である。レージトング13は、マニホールド4のうち塗布液非貯留部に配置される。
【0049】
図3に示すように、レージトング13は、第1方向と直交する方向から見て、X字状に交差して配置される一対のリンク部材15,16と、一対のリンク部材15,16同士の交差部に配置され、一対のリンク部材15,16を互いに回動自在に連結する連結軸17と、を有する。またレージトング13は、一対のリンク部材15,16および連結軸17の組Pを複数有し、複数の組Pは、第1方向に並んで配置される。
【0050】
第1方向において互いに隣り合う組P,Pの一対のリンク部材15,16同士は、互いに回動自在に連結される。具体的に、第1方向に隣接する組P,Pのうち、左側に位置する組Pの一方のリンク部材15と、右側に位置する組Pの他方のリンク部材16とは、連結軸17と平行に延びる接続ピン24により、互いに回動自在に連結される。また、左側に位置する組Pの他方のリンク部材16と、右側に位置する組Pの一方のリンク部材15とは、連結軸17と平行に延びる接続ピン24により、互いに回動自在に連結される。
【0051】
本実施形態では、各組Pの一対のリンク部材15,16が、第1方向と直交する方向のうち第3方向から見て、X字状に交差して配置される。一対のリンク部材15,16のうち一方のリンク部材15は、第3方向に互いに間隔をあけて配置されかつ互いに平行に延びる2枚の板片を有する。図示の例では、一方のリンク部材15の各板片が、右側(+X側)へ向かうに従い下側(-Z側)に位置する。一対のリンク部材15,16のうち他方のリンク部材16は、第3方向に互いに間隔をあけて配置されかつ互いに平行に延びる2枚の板片を有する。他方のリンク部材16の一対の板片は、一方のリンク部材15の一対の板片よりも、第3方向において内側に配置される。図示の例では、他方のリンク部材16の各板片が、右側へ向かうに従い上側(+Z側)に位置する。
【0052】
連結軸17は、軸状またはピン状であり、本実施形態では第3方向に延びる。連結軸17は、一対のリンク部材15,16の各板片を第3方向に貫通して設けられる。連結軸17は、一対のリンク部材15,16の各板片の延在方向の中央部を貫通する。このため、連結軸17は、組Pにおいて、第1方向(左右方向)の中央部に配置される。また連結軸17は、組Pにおいて、第2方向(上下方向)の中央部に配置される。一対のリンク部材15,16は、連結軸17の中心軸回りに互いに回動可能である。一対のリンク部材15,16が連結軸17を中心に相対的に回動することにより、組Pの第1方向の長さが変化する。
【0053】
レージトング13のうち第1方向の一端部(
図3においては右端部)は、栓部6と連結される。レージトング13のうち第1方向の他端部(
図3においては左端部)には、一対の雌ネジ部18,19が配置される。すなわち、レージトング13は、一対の雌ネジ部18,19を有する。一対の雌ネジ部18,19は、複数の組Pのうち第1方向の他端部に位置する所定の組Pの、一対のリンク部材15,16の第1方向の他端部に設けられる。つまり一対の雌ネジ部18,19は、レージトング13の第1方向の他端部に配置され、一対のリンク部材15,16に設けられる。
図1に示すように、一対の雌ネジ部18,19は、第2方向に互いに間隔をあけて配置される。
一対の雌ネジ部18,19のうち一方が有する雌ネジは、右ネジであり、他方が有する雌ネジは、左ネジである。つまり一対の雌ネジ部18,19は、互いに逆ネジとされる。
【0054】
一対の雌ネジ部18,19の各雌ネジは、第1方向においてマニホールド4から外部に突出して配置される。一対の雌ネジ部18,19は、第2方向に間隔をあけて対向する一対の支持部11,12間に配置される。第2方向から見て、一対の支持部11,12と一対の雌ネジ部18,19とは、互いに重なって配置される。一対の雌ネジ部18,19のうち、第1の雌ネジ部18は、第1方向から見て、マニホールド4の第1溝部4aと重なって配置される。一対の雌ネジ部18,19のうち、第2の雌ネジ部19は、第1方向から見て、マニホールド4の第2溝部4bと重なって配置される。
【0055】
操作部14は、レージトング13に連結され、少なくとも一部がヘッド部材1,2の外部に露出する。オペレーターが操作部14を操作することにより、レージトング13は第1方向に伸長しまたは収縮する。つまり操作部14は、レージトング13を伸縮させる。
【0056】
操作部14は、回転軸22と、回転操作体23と、を有する。
本実施形態では、回転軸22が、ヘッド部材1,2の第1方向を向く端面と隣接して配置される。回転軸22は、ヘッド部材1,2の一対の支持部11,12に回転自在に支持される。回転軸22は、その中心軸Cが第1方向と直交する方向に延び、本実施形態では第2方向に延びる。
以下の説明では、回転軸22の中心軸Cが延びる方向を軸方向、中心軸Cと直交する方向を径方向、中心軸C回りに周回する方向を周方向、と呼ぶ場合がある。
【0057】
回転軸22は、一対の雄ネジ部22a,22bを有する。一対の雄ネジ部22a,22bは、回転軸22の外周面に、中心軸Cの軸方向つまり第2方向に並んで配置される。一対の雄ネジ部22a,22bのうち一方が有する雄ネジは、右ネジであり、他方が有する雄ネジは、左ネジである。つまり一対の雄ネジ部22a,22bは、互いに逆ネジとされる。
【0058】
レージトング13の一対の雌ネジ部18,19と、回転軸22の一対の雄ネジ部22a,22bとは、互いに螺着される。これにより回転軸22は、レージトング13のうち、栓部6と連結される第1方向の一端部とは反対側の、第1方向の他端部に連結される。
【0059】
回転操作体23は、回転軸22と接続されてヘッド部材1,2の外部に露出する。回転操作体23は、回転軸22の軸方向の端部に接続され、図示の例では回転軸22の上端部に固定される。なお回転操作体23は、回転軸22と一体に形成されていてもよい。回転操作体23は、例えば、円板状、円柱状、多角形板状、多角形柱状またはレバー状等である。図示の例では回転操作体23が、中心軸Cと同軸の円板状である。回転操作体23の外径は、回転軸22の外径よりも大きい。本実施形態では回転操作体23が、第1ヘッド部材1の第1方向と直交する方向を向く外面のうち、上側(+Z側)を向く側面1aよりも上側に配置される。中心軸Cの軸方向つまり第2方向から見て、回転操作体23の一部は、側面1aと重なって配置される。
オペレーターが回転操作体23を中心軸C回りの周方向に回転操作することにより、回転軸22は周方向に回転する。つまり回転操作体23は、回転軸22をその中心軸C回りに回転可能である。
【0060】
具体的には、
図3に示すように、オペレーターが回転操作体23を操作し、回転軸22をその中心軸C回りの周方向のうち一方側θ1へ回転させることにより、回転軸22の一対の雄ネジ部22a,22bに螺着する一対の雌ネジ部18,19が中心軸Cの軸方向において互いに接近させられ、レージトング13が第1方向に伸長する。これにともない、レージトング13と接続されたインナーディッケル9は、第1方向の右側(+X側)に移動する。
また
図2に示すように、オペレーターが回転操作体23を操作し、回転軸22をその中心軸C回りの周方向のうち他方側θ2へ回転させることにより、回転軸22の一対の雄ネジ部22a,22bに螺着する一対の雌ネジ部18,19が中心軸Cの軸方向において互いに離間させられ、レージトング13が第1方向に収縮する。これにともない、レージトング13と接続されたインナーディッケル9は、第1方向の左側(-X側)に移動する。
つまり、回転軸22が中心軸C回りに回転することで、レージトング13が第1方向に伸縮し、栓部6およびシム部7が第1方向に移動させられる。
【0061】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具10は、塗布幅調整機構8により、栓部6およびシム部7を含むインナーディッケル9を、第1方向つまりヘッド部材1,2の長手方向に移動させることで、塗布工具10を分解することなく、塗布液の塗布幅を調整可能である。
【0062】
具体的に、この塗布幅調整機構8は、オペレーターが操作部14を操作することにより、マニホールド4内でレージトング13を第1方向に伸縮させることができ、これにより栓部6およびシム部7を第1方向に移動させることができて、塗布幅の調整が容易である。
また、レージトング13の伸縮によって塗布幅を調整するため、塗布幅調整機構8がヘッド部材1,2から第1方向つまり長手方向に出っ張ることが抑えられる。このため、塗布工具10の長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。本実施形態の塗布工具10によれば、設置スペースなどに制限が生じにくく、この塗布工具10を塗布装置に搭載しやすい。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとする場合でも、塗布工具10の長手方向の外形寸法増加への影響は小さく抑えられる。
【0063】
また本実施形態では、レージトング13が、X字状に交差する一対のリンク部材15,16と、一対のリンク部材15,16を相対回動自在に連結する連結軸17と、を有する。
この場合、レージトング13をシンプルな構造とすることができ、レージトング13の機能が安定する。
【0064】
また本実施形態では、レージトング13が、一対のリンク部材15,16および連結軸17の組Pを複数有し、複数の組Pが第1方向に配列している。また第1方向に隣接する組P,Pの一対のリンク部材15,16同士は、接続ピン24を介して互いに回動自在に連結されている。このため、オペレーターが操作部14を操作することで、レージトング13のうち第1方向の他端部、すなわち栓部6とは反対側の端部に位置する所定の組Pの一対のリンク部材15,16が連結軸17回りに回動させられると、これにともない、すべての組Pの各一対のリンク部材15,16が上記同様に回動させられて、レージトング13が全体として第1方向に伸長または収縮する。
この場合、レージトング13の第1方向への伸縮量を大きくして、インナーディッケル9の第1方向への移動量を大きく確保できる。すなわち、塗布幅調整機構8による塗布幅の調整範囲を大きく確保できる。
【0065】
また本実施形態では、操作部14が、回転軸22と、回転操作体23と、を有しており、オペレーターが回転操作体23を操作し、回転軸22をその中心軸C回りに回転させることにより、レージトング13が第1方向に伸縮して、インナーディッケル9が第1方向に移動させられる。このため、簡単な操作によって塗布液の塗布幅を調整できる。
【0066】
また本実施形態では、回転軸22の中心軸Cが、第1方向と直交する方向に延びており、具体的には第2方向に延びる。
この場合、回転軸22が第1方向と直交する方向に延びるので、操作部14がヘッド部材1,2から第1方向つまり長手方向に出っ張ることが抑えられる。塗布工具10の長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。
またオペレーターが、塗布工具10に対して第2方向から回転操作体23を操作できる。このため、塗布工具10の第1方向や第3方向に隣接して他の装置等が配置されている場合であっても、回転操作体23の操作への影響が生じにくい。
【0067】
また本実施形態では、ヘッド部材1,2が、回転軸22をその中心軸C回りに回転自在に支持する支持部11,12を有する。
この場合、ヘッド部材1,2の支持部11,12によって、回転軸22がその中心軸C回りに安定して回転させられる。このため、レージトング13の第1方向への伸縮動作が安定する。
【0068】
また本実施形態では、レージトング13の互いに逆ネジとされた一対の雌ネジ部18,19と、回転軸22の互いに逆ネジとされた一対の雄ネジ部22a,22bとが、互いに螺着される。
この場合、回転軸22を回転させる方向によって、一対の雌ネジ部18,19を互いに接近させたり離間させたりすることができ、つまりレージトング13を第1方向に伸長または収縮させることができ、インナーディッケル9を第1方向の所望の向きに簡単に移動できる。
【0069】
また本実施形態は、例えばインナーディッケル式ではない一般的な塗布工具(従来品)に対して、インナーディッケル9、支持部11,12および塗布幅調整機構8を、後付けで設けることが容易である。このため汎用性が高く、設備費用を抑えつつ、上述した本発明の優れた効果を得ることができる。
【0070】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の塗布工具20について、
図4および
図5を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して、その説明を省略する場合がある。
【0071】
図4および
図5に示すように、本実施形態の塗布工具20は、一対のヘッド部材1,2と、マニホールド4と、スロット5と、塞ぎ板3と、インナーディッケル9と、塗布幅調整機構8と、を備える。なお
図4および
図5は、第1ヘッド部材1の図示を省略している。また、各図において図示を一部省略しているが、インナーディッケル9および塗布幅調整機構8の組は、塗布工具20の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。
【0072】
〔ヘッド部材〕
本実施形態では、一対のヘッド部材1,2の第1方向の全長が、マニホールド4の第1方向の全長よりも長い。マニホールド4の第1方向の両端部は、ヘッド部材2の第1方向の両端部により、第1方向から塞がれる。
【0073】
本実施形態では、ヘッド部材1,2が、ヘッド部材1,2の第1方向を向く端面に外付けされる支持部11,12を有していない。その代わりに、一対のヘッド部材1,2のうち第2ヘッド部材2は、支持部25を有する。支持部25は、ヘッド部材2の内部を延び、ヘッド部材2の外面およびマニホールド4に開口する貫通孔25である。具体的に、この貫通孔25は、ヘッド部材2の内部を第3方向に延びる。貫通孔25は、ヘッド部材2の第1方向と直交する方向を向く外面のうち、第3方向の後端側を向く後面2b、およびマニホールド4の第2溝部4bに開口する。
【0074】
〔マニホールド〕
本実施形態ではマニホールド4が、一対のヘッド部材1,2のうち、第2ヘッド部材2に配置される。マニホールド4は、第2ヘッド部材2の上側を向く内面2aから下側(-Z側)に窪み、第1方向に延びる溝状である。つまりマニホールド4は、第2ヘッド部材2の第2溝部4bにより構成される。マニホールド4は、第1方向と垂直な断面の形状が、半円状である。
【0075】
〔インナーディッケル〕
インナーディッケル9は、栓部6と、シム部7と、を有する。つまり塗布工具20は、栓部6と、シム部7と、を備える。
本実施形態では栓部6が、半円柱状である。栓部6の外周面は、マニホールド4の内周面つまり第2溝部4bの内周面と、摺動可能に接触する。
【0076】
本実施形態ではシム部7が、栓部6とは別体に形成される。シム部7は、ネジ止め等により栓部6と固定される。栓部6およびシム部7つまりインナーディッケル9は、マニホールド4およびスロット5の内部を第1方向に移動可能である。
【0077】
〔塗布幅調整機構〕
塗布幅調整機構8は、レージトング13と、操作部14と、を有する。
本実施形態では、レージトング13が有する複数の組Pの、各一対のリンク部材15,16が、第1方向と直交する方向のうち第2方向から見て、X字状に交差して配置される。一対のリンク部材15,16のうち一方のリンク部材15は、第2方向に互いに隙間をあけて配置されかつ互いに平行に延びる2枚の板片を有する。図示の例では、一方のリンク部材15の各板片が、右側(+X側)へ向かうに従い先端側(+Y側)に位置する。一対のリンク部材15,16のうち他方のリンク部材16は、1枚の板片を有する。他方のリンク部材16の1枚の板片は、第2方向において、一方のリンク部材15の一対の板片間に配置される。図示の例では、他方のリンク部材16の板片が、右側へ向かうに従い後端側(-Y側)に位置する。
【0078】
複数の組Pの各連結軸17は、第2方向に延びる。連結軸17は、一対のリンク部材15,16の各板片を第2方向に貫通して設けられる。連結軸17は、各組Pにおいて、第1方向(左右方向)の中央部に配置され、かつ第3方向(前後方向)の中央部に配置される。
【0079】
接続ピン24は、連結軸17と平行に第2方向に延びる。複数の接続ピン24により、第1方向において互いに隣り合う組P,Pの一対のリンク部材15,16同士が、互いに回動自在に連結される。
【0080】
レージトング13の第1方向の他端部(図示の例では左端部)に位置する一対の雌ネジ部18,19は、第3方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では一対の雌ネジ部18,19が、マニホールド4の内部に配置され、具体的には塗布液非貯留部に配置される。
【0081】
操作部14は、回転軸22と、回転操作体23と、を有する。
回転軸22は、その中心軸Cが第1方向と直交する方向に延び、本実施形態では第3方向に延びる。また本実施形態では、回転軸22が、ヘッド部材2の貫通孔(支持部)25に挿入される。回転軸22は、第3方向において貫通孔25から両側(つまり先端側および後端側)に突出する。回転軸22の先端側部分は、マニホールド4の内部に配置され、具体的には塗布液非貯留部に配置される。回転軸22は、ヘッド部材2の貫通孔25により、中心軸C回りに回転自在に支持される。特に図示しないが、この貫通孔25には、回転軸22の外周面と接触する軸受やOリング等のシール部材が設けられてもよい。
【0082】
回転軸22が有する一対の雄ネジ部22a,22bは、回転軸22の先端側部分に配置される。すなわち、一対の雄ネジ部22a,22bは、マニホールド4内の塗布液非貯留部に配置される。一対の雄ネジ部22a,22bは、中心軸Cの軸方向つまり第3方向に並んで配置される。
【0083】
レージトング13の一対の雌ネジ部18,19と、回転軸22の一対の雄ネジ部22a,22bとは、互いに螺着される。これにより回転軸22は、レージトング13の第1方向の他端部に連結される。
【0084】
本実施形態では回転操作体23が、回転軸22の後端部に接続される。回転操作体23は、ヘッド部材2の第1方向と直交する方向を向く外面のうち、後端側(-Y側)を向く後面2bよりも後端側に配置される。
【0085】
図5に示すように、オペレーターが回転操作体23を操作し、回転軸22をその中心軸C回りの周方向のうち一方側θ1へ回転させることにより、回転軸22の一対の雄ネジ部22a,22bに螺着する一対の雌ネジ部18,19が中心軸Cの軸方向において互いに接近させられ、レージトング13が第1方向に伸長する。これにともない、レージトング13と接続されたインナーディッケル9は、第1方向の右側(+X側)に移動する。
また
図4に示すように、オペレーターが回転操作体23を操作し、回転軸22をその中心軸C回りの周方向のうち他方側θ2へ回転させることにより、回転軸22の一対の雄ネジ部22a,22bに螺着する一対の雌ネジ部18,19が中心軸Cの軸方向において互いに離間させられ、レージトング13が第1方向に収縮する。これにともない、レージトング13と接続されたインナーディッケル9は、第1方向の左側(-X側)に移動する。
つまり、回転軸22が中心軸C回りに回転することで、レージトング13が第1方向に伸縮し、栓部6およびシム部7が第1方向に移動させられる。
【0086】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具20によれば、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0087】
また本実施形態では、ヘッド部材2の貫通孔25により回転軸22を回転自在に支持するので、ヘッド部材2の支持部25の構成を簡素化できる。また、支持部25がヘッド部材2から第1方向に出っ張らないため、塗布工具20の長手方向の外形寸法をより小さく抑えることができる。
【0088】
また本実施形態では、オペレーターが、塗布工具20に対して第3方向から回転操作体23を操作できる。このため、塗布工具20の第1方向や第2方向に隣接して他の装置等が配置されている場合であっても、回転操作体23の操作への影響が生じにくい。
【0089】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0090】
前述の実施形態では、インナーディッケル9および塗布幅調整機構8がそれぞれ、塗布工具10,20の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに一対設けられる例を挙げたが、これに限らない。インナーディッケル9および塗布幅調整機構8は、各1つのみ設けられてもよい。
【0091】
特に図示しないが、第1実施形態の塗布工具10において、第1ヘッド部材1が、第1ヘッド部材1を第2方向に貫通する貫通孔(支持部)を有していてもよい。この貫通孔は、ヘッド部材1の第1方向と直交する方向を向く外面のうち、上側(+Z側)を向く側面1a、およびマニホールド4に開口する。そしてこの貫通孔によって、回転軸22を中心軸C回りに回転自在に支持することとしてもよい。
【0092】
また第2実施形態では、マニホールド4が、第2ヘッド部材2の内面2aから下側に窪み、第1方向に延びる溝状である例を挙げたが、これに限らない。マニホールド4は、第1ヘッド部材1の内面1bから上側に窪み、第1方向に延びる溝状でもよい。この場合、回転軸22を回転自在に支持する貫通孔(支持部)は、第1ヘッド部材1に設けられる。
【0093】
前述の実施形態では、第2方向を鉛直方向とし、第3方向を水平方向として説明したが、これに限らない。例えば、第2方向を水平方向とし、第3方向を鉛直方向としてもよい。この場合、スロット5は、鉛直方向の上側または下側へ向けて外部に開口する。
また、第2方向が、鉛直方向と水平方向との間の傾斜方向であり、第3方向が、水平方向と鉛直方向との間の傾斜方向であってもよい。
【0094】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の塗布工具によれば、塗布幅の調整が容易であり、かつ長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0096】
1,2…ヘッド部材
1b,2a…内面
1c,2c…先端部
4…マニホールド
5…スロット
6…栓部
7…シム部
8…塗布幅調整機構
9…インナーディッケル
10,20…塗布工具
11,12,25…支持部
13…レージトング
14…操作部
15,16…リンク部材
17…連結軸
18,19…雌ネジ部
22…回転軸
22a,22b…雄ネジ部
23…回転操作体
25…貫通孔(支持部)
C…中心軸
P…組