(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071470
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】塗布工具
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20220509BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180453
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】511213410
【氏名又は名称】MMCリョウテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】キッティボーンレト キタポン
(72)【発明者】
【氏名】彭 瑶
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA12
4F041BA17
4F041BA34
4F041CA03
4F041CA16
4F042AB00
4F042BA03
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB02
(57)【要約】
【課題】長手方向の外形寸法を小さく抑えることができ、かつ操作性が良い塗布工具を提供する。
【解決手段】一対のヘッド部材1,2と、マニホールド4と、マニホールド4と連通し、一対のヘッド部材1,2の先端部1c,2e間に開口するスロット5と、マニホールド4内に配置される栓部6と、スロット5内に配置されるシム部7と、栓部6およびシム部7を第1方向に移動させる塗布幅調整機構8と、を備え、塗布幅調整機構8は、マニホールド4内に配置されて第1方向に延び、栓部6およびシム部7と固定されるラックギア81と、マニホールド4内に配置され、ラックギア81と噛み合うピニオンギア82と、ヘッド部材1,2の貫通孔内に挿入される回転軸83と、を有し、回転軸83は、ピニオンギア82と接続される接続部83aと、ヘッド部材1,2の第1方向と直交する方向を向く外面から外部に露出される回転操作部83bと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向において互いに対向する一対のヘッド部材と、
一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、
一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、前記マニホールドと連通し、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において、一対の前記ヘッド部材の先端部間に開口するスロットと、
前記マニホールド内に配置され、前記第1方向に移動可能な栓部と、
前記スロット内に配置され、前記栓部とともに前記第1方向に移動可能なシム部と、
前記栓部および前記シム部を前記第1方向に移動させる塗布幅調整機構と、を備え、
一対の前記ヘッド部材のうち少なくともいずれかの前記ヘッド部材は、前記ヘッド部材を貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記ヘッド部材の前記第1方向と直交する方向を向く外面、および前記マニホールドに開口し、
前記塗布幅調整機構は、
前記マニホールド内に配置されて前記第1方向に延び、前記栓部および前記シム部と固定されるラックギアと、
前記マニホールド内に配置され、前記ラックギアと噛み合うピニオンギアと、
前記貫通孔内に挿入される回転軸と、を有し、
前記回転軸は、
前記ピニオンギアと接続される接続部と、
前記ヘッド部材の前記外面から外部に露出される回転操作部と、を有する、
塗布工具。
【請求項2】
前記ラックギアおよび前記ピニオンギアは、前記第1方向において前記栓部の両端部間に配置される、
請求項1に記載の塗布工具。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記ヘッド部材の前記外面のうち、前記第2方向を向く側面に開口し、
前記回転操作部は、前記ヘッド部材の前記側面から外部に露出される、
請求項1または2に記載の塗布工具。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記ヘッド部材の前記外面のうち、前記第3方向を向く後面に開口し、
前記回転操作部は、前記ヘッド部材の前記後面から外部に露出される、
請求項1または2に記載の塗布工具。
【請求項5】
前記塗布幅調整機構は、前記回転軸の中心軸回りの回転位置に基づいて、前記栓部および前記シム部の前記第1方向の位置または塗布幅を外部に表示する表示部を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項6】
前記塗布幅調整機構は、前記回転軸の中心軸回りの回転を許容する調整モードと、前記回転軸の中心軸回りの回転を規制する固定モードと、を切り替え可能な回転止め部を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項7】
前記塗布幅調整機構は、前記回転軸の中心軸回りの所定の回転範囲を超えた回転を規制するストッパーを有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の塗布工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布工具として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の塗布工具は、長手方向に延びる一対のヘッド部材と、一対のヘッド部材の内面同士の間に位置して長手方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、一対のヘッド部材の内面同士の間に位置して長手方向に延び、マニホールドと連通し、一対のヘッド部材の先端部間に開口するスロット(スリット)と、マニホールドおよびスロットの内部に配置され、長手方向に移動可能なインナーディッケルと、インナーディッケルを長手方向に移動させるボールねじ機構と、を有する。
特許文献1のようなインナーディッケル式の塗布工具では、ボールねじ機構によりインナーディッケルを長手方向に移動させることで、塗布工具を分解することなく、塗布液の塗布幅を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の塗布工具では、インナーディッケルを長手方向に移動させるためのボールねじ機構がヘッド部材から長手方向に大きく出っ張る。このため、塗布工具の長手方向の外形寸法が大きくなり、設置スペースなどに制限が生じやすく、塗布装置に搭載することが困難となる場合がある。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとすると、その分塗布工具の長手方向の外形寸法も大きくなり、上記問題がより顕著となる。
また、ヘッド部材の長手方向の両端部にボールねじ機構がそれぞれ設けられる場合、両方のボールねじ機構を操作するためにオペレーターの移動距離が増えるなど、操作性が悪かった。
【0005】
本発明は、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができ、かつ操作性が良い塗布工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗布工具の一つの態様は、第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向において互いに対向する一対のヘッド部材と、一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、前記マニホールドと連通し、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において、一対の前記ヘッド部材の先端部間に開口するスロットと、前記マニホールド内に配置され、前記第1方向に移動可能な栓部と、前記スロット内に配置され、前記栓部とともに前記第1方向に移動可能なシム部と、前記栓部および前記シム部を前記第1方向に移動させる塗布幅調整機構と、を備え、一対の前記ヘッド部材のうち少なくともいずれかの前記ヘッド部材は、前記ヘッド部材を貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔は、前記ヘッド部材の前記第1方向と直交する方向を向く外面、および前記マニホールドに開口し、前記塗布幅調整機構は、前記マニホールド内に配置されて前記第1方向に延び、前記栓部および前記シム部と固定されるラックギアと、前記マニホールド内に配置され、前記ラックギアと噛み合うピニオンギアと、前記貫通孔内に挿入される回転軸と、を有し、前記回転軸は、前記ピニオンギアと接続される接続部と、前記ヘッド部材の前記外面から外部に露出される回転操作部と、を有する。
【0007】
本発明の塗布工具は、いわゆるインナーディッケル式のスロットダイであり、塗布幅調整機構により、栓部およびシム部を含むインナーディッケルを、第1方向つまりヘッド部材の長手方向に移動させることで、塗布液の塗布幅を調整可能である。塗布幅調整機構は、その一部がマニホールド内およびヘッド部材の貫通孔内に配置されており、その回転操作部がヘッド部材の第1方向と直交する方向を向く外面から外部に露出される。具体的に、この塗布工具では、回転操作部を操作して回転軸およびピニオンギアを回転させることにより、ピニオンギアと噛み合うラックギアが、栓部およびシム部つまりインナーディッケルとともに、第1方向に移動する。これにより、被塗布物への塗布液の第1方向の塗布幅が調整される。
【0008】
本発明によれば、塗布幅調整機構が、ヘッド部材から第1方向つまり長手方向に出っ張らないため、塗布工具の長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。このため、設置スペースなどに制限が生じにくく、塗布工具を塗布装置に搭載しやすい。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとする場合でも、塗布工具の長手方向の外形寸法増加への影響は小さく抑えられる。
また、ヘッド部材の長手方向の両端部に塗布幅調整機構がそれぞれ設けられる場合でも、両方の塗布幅調整機構を操作するためにオペレーターが移動する距離は短く抑えられ、操作性が良い。
【0009】
上記塗布工具において、前記ラックギアおよび前記ピニオンギアは、前記第1方向において前記栓部の両端部間に配置されることが好ましい。
【0010】
例えば、ラックギアおよびピニオンギアが、第1方向において栓部とは異なる位置に配置される場合と比べて、本発明の上記構成によれば、塗布工具を第1方向つまり長手方向によりコンパクト化することができる。
【0011】
上記塗布工具において、前記貫通孔は、前記ヘッド部材の前記外面のうち、前記第2方向を向く側面に開口し、前記回転操作部は、前記ヘッド部材の前記側面から外部に露出されることとしてもよい。
【0012】
この場合、オペレーターが、塗布工具の第2方向から回転操作部を操作して栓部およびシム部を移動させて、塗布幅を調整できる。
【0013】
上記塗布工具において、前記貫通孔は、前記ヘッド部材の前記外面のうち、前記第3方向を向く後面に開口し、前記回転操作部は、前記ヘッド部材の前記後面から外部に露出されることとしてもよい。
【0014】
この場合、オペレーターが、塗布工具の第3方向から回転操作部を操作して栓部およびシム部を移動させて、塗布幅を調整できる。
【0015】
上記塗布工具において、前記塗布幅調整機構は、前記回転軸の中心軸回りの回転位置に基づいて、前記栓部および前記シム部の前記第1方向の位置または塗布幅を外部に表示する表示部を有することが好ましい。
【0016】
この場合、オペレーターが、表示部を目視等で確認しつつ、塗布幅を精度よく簡単に調整でき、操作性がより向上する。
【0017】
上記塗布工具において、前記塗布幅調整機構は、前記回転軸の中心軸回りの回転を許容する調整モードと、前記回転軸の中心軸回りの回転を規制する固定モードと、を切り替え可能な回転止め部を有することが好ましい。
【0018】
この場合、回転止め部を調整モードとして、インナーディッケルを第1方向に移動させ塗布幅を調整した後、回転止め部を固定モードとして、稼働中の塗布工具の塗布幅を一定に維持することができる。
【0019】
上記塗布工具において、前記塗布幅調整機構は、前記回転軸の中心軸回りの所定の回転範囲を超えた回転を規制するストッパーを有することが好ましい。
【0020】
この場合、オペレーターが所定の回転範囲を超えて回転軸を回転操作してしまうような不具合が、ストッパーによって抑制される。このため、回転軸の回転量の誤操作によるインナーディッケルの破損等が抑えられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一つの態様の塗布工具によれば、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができ、かつ操作性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1実施形態の塗布工具を示す上面図(半断面図)である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の塗布工具の一部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の塗布工具10について、
図1および
図2を参照して説明する。
本実施形態の塗布工具10は、工具の構成部材を分解することなく、被塗布物(図示省略)への塗布液の塗布幅を調整可能ないわゆるインナーディッケル式のスロットダイである。
【0024】
図1および
図2に示すように、本実施形態の塗布工具10は、一対のヘッド部材1,2と、マニホールド4と、スロット5と、サイドプレート3と、インナーディッケル9と、塗布幅調整機構8と、を備える。
一対のヘッド部材1,2はそれぞれ、略長方形板状または略直方体状であり、所定方向に延びる。一対のヘッド部材1,2は、互いの内面(内側面)1b,2a同士を対向させた状態で、隣接して配置される。
【0025】
〔方向の定義〕
本実施形態では、一対のヘッド部材1,2が延在する方向を、第1方向と呼ぶ。つまり一対のヘッド部材1,2は、第1方向に延びる。本実施形態において第1方向は、水平方向である。第1方向は、左右方向と言い換えてもよい。各図において、第1方向は、X軸方向に相当する。第1方向のうち、一方側を右側(+X側)と呼び、他方側を左側(-X側)と呼ぶ。なお第1方向は、長手方向と言い換えてもよい。
【0026】
第1方向と直交する方向のうち、一対のヘッド部材1,2が互いに対向する方向を、第2方向と呼ぶ。一対のヘッド部材1,2は、第2方向において互いに隣接配置される。本実施形態において第2方向は、鉛直方向である。第2方向は、上下方向と言い換えてもよい。各図において、第2方向は、Z軸方向に相当する。第2方向のうち、一方のヘッド部材1から他方のヘッド部材2へ向かう方向を下側(-Z側)と呼び、他方のヘッド部材2から一方のヘッド部材1へ向かう方向を上側(+Z側)と呼ぶ。なお以下の説明では、一方のヘッド部材1を第1ヘッド部材1、他方のヘッド部材2を第2ヘッド部材2と呼ぶ場合がある。第2方向は、各ヘッド部材1,2の板厚方向に相当する。このため第2方向は、厚さ方向と言い換えてもよい。
【0027】
第1方向および第2方向と直交する方向を、第3方向と呼ぶ。本実施形態において第3方向は、水平方向である。第3方向は、前後方向と言い換えてもよい。各図において、第3方向は、Y軸方向に相当する。第3方向のうち、一対のヘッド部材1,2間からスロット5が不図示の被塗布物に向けて開口する方向を先端側(+Y側)と呼び、これとは反対方向を後端側(-Y側)と呼ぶ。なお第3方向のうち、先端側は、前側と言い換えてもよく、後端側は、後側と言い換えてもよい。
【0028】
〔ヘッド部材〕
各ヘッド部材1,2は、例えばステンレス製等である。一対のヘッド部材1,2は、ボルト等の締結部材15により、互いに固定される。
一対のヘッド部材1,2のうち、第1ヘッド部材1は、貫通孔11と、一対の軸受保持部12a,12bと、オイルシール保持部13と、プレート取付部14と、を有する。貫通孔11、一対の軸受保持部12a,12b、オイルシール保持部13およびプレート取付部14は、貫通孔11の中心軸Cを中心として互いに同軸に配置される。本実施形態では、貫通孔11、一対の軸受保持部12a,12b、オイルシール保持部13およびプレート取付部14の組が、塗布工具10の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。
【0029】
貫通孔11は、第1ヘッド部材1を貫通する。貫通孔11は、円孔状であり、第1ヘッド部材1の内部を第2方向に延びる。貫通孔11は、第1ヘッド部材1の第1方向と直交する方向を向く外面のうち、第2方向の上側を向く側面(外側面)1a、およびマニホールド4に開口する。
【0030】
一対の軸受保持部12a,12bは、第2方向に互いに間隔をあけて配置される。
一対の軸受保持部12a,12bのうち、上側に位置する一方の軸受保持部12aは、貫通孔11の上側開口部に位置する。一方の軸受保持部12aは、貫通孔11よりも内径が大きい円穴状であり、上側に開口する。一方の軸受保持部12aは、第1ヘッド部材1の側面1aに開口し、この側面1aから下側に窪む。
【0031】
一対の軸受保持部12a,12bのうち、下側に位置する他方の軸受保持部12bは、貫通孔11の下側開口部に位置する。他方の軸受保持部12bは、貫通孔11よりも内径が大きい円穴状であり、下側に開口する。
【0032】
オイルシール保持部13は、他方の軸受保持部12bの下側に配置される。オイルシール保持部13は、軸受保持部12bよりも内径が大きい円穴状であり、下側に開口する。
【0033】
プレート取付部14は、オイルシール保持部13の下側に配置される。プレート取付部14は、オイルシール保持部13よりも内径が大きい穴状であり、例えば円穴状である。プレート取付部14は、第1ヘッド部材1の下側を向く内面1bに開口し、この内面1bから上側に窪む。
【0034】
なお、一対の軸受保持部12a,12b、オイルシール保持部13およびプレート取付部14がそれぞれ、貫通孔11の一部を構成することとしてもよい。すなわち、貫通孔11が、一対の軸受保持部12a,12b、オイルシール保持部13およびプレート取付部14を有していてもよい。
【0035】
一対のヘッド部材1,2のうち、第2ヘッド部材2は、マニホールド4に塗布液を供給する供給路21を有する。
供給路21は、第2ヘッド部材2を貫通する。供給路21は、例えば円孔状であり、第2ヘッド部材2の第1方向と直交する方向を向く外面のうち、第3方向の後端側を向く後面2b、およびマニホールド4に開口する。本実施形態では供給路21が、マニホールド4の第1方向の中央部に開口する。特に図示しないが、供給路21は、塗布工具10の外部に設けられる配管およびポンプ等を介して、塗布液タンクと接続される。
【0036】
〔マニホールド〕
マニホールド4は、一対のヘッド部材1,2の内面1b,2a同士の間に位置して第1方向に延び、内部に塗布液が貯留される。マニホールド4は、塗布工具10の内部に塗布液を一時的に保持する室(空間)である。本実施形態ではマニホールド4が、一対のヘッド部材1,2のうち、第2ヘッド部材2に配置される。マニホールド4は、第2ヘッド部材2の上側を向く内面2aから下側に窪み、第1方向に延びる溝状である。マニホールド4は、第1方向と垂直な断面の形状が、半円状である。
【0037】
本実施形態では、マニホールド4が第2ヘッド部材2を第1方向に貫通する。マニホールド4は、第2ヘッド部材2の左側を向く端面2cおよび右側を向く端面2dに開口する。すなわち、マニホールド4の第1方向の長さは、第2ヘッド部材2の第1方向の長さと等しい。マニホールド4には、供給路21から塗布液が流入し、この塗布液はマニホールド4内に一時的に保持されて、スロット5へ流出する。つまりマニホールド4の内部には、塗布液が流通する。
【0038】
〔スロット〕
スロット5は、一対のヘッド部材1,2の内面1b,2a同士の間に位置して第1方向に延び、マニホールド4と連通する。スロット5は、マニホールド4の先端側に隣り合って配置される。スロット5は、第1ヘッド部材1の先端部(刃先部)1cと第2ヘッド部材2の先端部(刃先部)2eとの間から第3方向の先端側へ向けて、外部に開口する。つまりスロット5は、第3方向において、一対のヘッド部材1,2の先端部1c,2e間に開口する。スロット5の先端部つまりスロット開口部は、第2方向において第1ヘッド部材1の先端部1cと第2ヘッド部材2の先端部2eとの間に位置する。スロット5の後端部は、マニホールド4と接続される。
【0039】
本実施形態では、スロット5の第1方向の長さが、各ヘッド部材1,2の第1方向の長さと等しい。スロット5は、ヘッド部材1,2の第1方向を向く両端面に開口する。スロット5には、マニホールド4から塗布液が流入し、この塗布液はスロット開口部から先端側の被塗布物(図示省略)へ向けて流出する。つまりスロット5の内部には、塗布液が流通する。
【0040】
〔サイドプレート〕
サイドプレート3は、例えばステンレス製等である。サイドプレート3は、ヘッド部材1,2の第1方向の両端部に一対設けられる。各サイドプレート3は、図示しないボルト等により一対のヘッド部材1,2と固定される。サイドプレート3は、板状であり、一対の板面が第1方向を向く。一対のサイドプレート3のうち、左側に位置する一方のサイドプレート3Aの右側を向く板面は、各ヘッド部材1,2の左側を向く端面と接触する。一対のサイドプレート3のうち、右側に位置する他方のサイドプレート3Bの左側を向く板面は、各ヘッド部材1,2の右側を向く端面と接触する。一対のサイドプレート3は、マニホールド4の第1方向の両端部を、第1方向から塞ぐ。一対のサイドプレート3は、スロット5の第1方向の両端部を、第1方向から塞ぐ。
【0041】
〔インナーディッケル〕
インナーディッケル9は、例えば樹脂製または金属製等である。インナーディッケル9は、栓部6と、シム部7と、を有する。つまり塗布工具10は、栓部6と、シム部7と、を備える。本実施形態では、インナーディッケル9つまり栓部6およびシム部7の組が、塗布工具10の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。
【0042】
栓部6は、マニホールド4内に配置される。栓部6は、マニホールド4の第1方向の端部に配置される。栓部6は、マニホールド4の内部を第1方向に移動可能である。本実施形態では栓部6が、第1方向に延びる半円柱状である。栓部6の外周面は、マニホールド4の内周面と摺動可能に接触する。
【0043】
栓部6は、マニホールド4の内部空間を第1方向から密封(シール)しており、つまりマニホールド4の内部空間を第1方向に仕切る。栓部6は、マニホールド4の内部空間を、第1方向において、塗布液が貯留される部分(塗布液貯留部)と、塗布液が貯留されない部分(塗布液非貯留部)とに区画する。このため、栓部6が第1方向に移動することで、マニホールド4の塗布液貯留部の第1方向の長さが変化する。
【0044】
栓部6は、凹部61を有する。凹部61は、栓部6の上側を向く面から下側に窪む凹状である。凹部61は、栓部6の第1方向の両端部間に位置し、第1方向に延びる。本実施形態では凹部61が、栓部6の上面および後面に開口し、第1方向を向く左端面および右端面には開口しない。
【0045】
シム部7は、板状であり、具体的には四角形板状である。シム部7の一対の板面は、第2方向を向く。シム部7は、スロット5内に配置される。シム部7は、スロット5の第1方向の端部に配置される。シム部7の一対の板面は、スロット5の第2方向を向く一対の壁面と摺動可能に接触する。
【0046】
シム部7は、栓部6の先端側に隣り合って配置される。シム部7は、栓部6と接続される。本実施形態ではシム部7と栓部6とが、単一の部材により一体に形成される。シム部7は、スロット5の内部を第1方向に移動可能である。すなわち、シム部7は、栓部6とともに第1方向に移動可能である。
【0047】
シム部7は、スロット5の内部空間を第1方向から密封(シール)しており、つまりスロット5の内部空間を第1方向に仕切る。シム部7は、スロット5の内部空間を、第1方向において、塗布液が流通する部分(塗布液流通部)と、塗布液が流通しない部分(塗布液非流通部)とに区画する。このため、シム部7が第1方向に移動することで、スロット5の塗布液流通部の第1方向の長さが変化する。
【0048】
このようにインナーディッケル9が、ヘッド部材1,2に対して第1方向に移動することにより、スロット5の先端部(スロット開口部)から図示しない被塗布物に塗布される塗布液の第1方向の塗布長さ、つまり塗布幅が変化する。
【0049】
〔塗布幅調整機構〕
塗布幅調整機構8は、栓部6およびシム部7つまりインナーディッケル9を、第1方向に移動させる。塗布幅調整機構8は、ラックギア81と、ピニオンギア82と、回転軸83と、一対の軸受84a,84bと、オイルシール85と、シール押さえ板86と、回転止め部87と、表示部88と、を有する。本実施形態では、塗布幅調整機構8が、塗布工具10の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。
【0050】
ラックギア81は、マニホールド4内に配置されて第1方向に延び、栓部6およびシム部7と固定される。ラックギア81は、長細い板状または角棒状である。本実施形態ではラックギア81が、栓部6の凹部61内に配置される。すなわち、ラックギア81は、第1方向において栓部6の両端部間に配置される。ラックギア81は、凹部61にネジ止め等により固定される。本実施形態ではラックギア81が有する複数の歯が、後端側を向き、第1方向に配列する。図示の例では、ラックギア81の歯が、歯すじが第2方向と平行に延びる平歯であるが、これに限らず、歯すじが第2方向に対して傾斜して延びるはす歯でもよい。
【0051】
ピニオンギア82は、マニホールド4内に配置される部分を有する。ピニオンギア82は、ラックギア81と噛み合う。ピニオンギア82は、筒状または柱状であり、本実施形態では筒状である。ピニオンギア82の中心軸は、第2方向に延び、貫通孔11の中心軸Cと同軸に配置される。本実施形態ではピニオンギア82が、栓部6の凹部61内に配置される部分を有する。すなわち、ピニオンギア82は、第1方向において栓部6の両端部間に配置される。具体的に、ピニオンギア82は、上端部以外の部分がマニホールド4内かつ凹部61内に配置され、上端部がプレート取付部14内に配置される。
【0052】
ピニオンギア82は、その外周部に、中心軸C回りに配列する複数の歯を有する。ピニオンギア82の歯は、ピニオンギア82の下端部に配置され、ラックギア81の歯と噛み合う。本実施形態ではピニオンギア82の歯が、歯すじが第2方向と平行に延びる平歯であるが、これに限らず、歯すじが第2方向に対して傾斜して延びるはす歯でもよい。
【0053】
回転軸83は、第2方向に延びる軸状である。回転軸83は、貫通孔11内に挿入される。回転軸83の中心軸は、貫通孔11の中心軸Cと同軸に配置される。回転軸83は、第2方向において貫通孔11から両側(つまり上側および下側)に突出する。
【0054】
回転軸83は、接続部83aと、回転操作部83bと、を有する。
接続部83aは、回転軸83の下端部に位置する。接続部83aは、回転軸83のうち下端部以外の部分よりも外径が小さい柱状であり、第2方向に延びる。接続部83aは、ピニオンギア82内に嵌合し、ネジ止め等によりピニオンギア82と固定される。つまり接続部83aは、ピニオンギア82と接続される。
【0055】
回転操作部83bは、回転軸83の上端部に位置する。回転操作部83bは、回転軸83のうち上端部以外の部分よりも外径が大きい。回転操作部83bは、例えば円板状、多角形板状、柱状またはレバー状等の操作ツマミである。回転操作部83bは、第1ヘッド部材1の上側を向く側面1aから外部に露出される。つまり回転操作部83bは、ヘッド部材1の外面から外部に露出される。
【0056】
一対の軸受84a,84bは、第2方向に互いに間隔をあけて配置される。
一対の軸受84a,84bのうち、上側に位置する一方の軸受84aは、一方の軸受保持部12aに配置される。一対の軸受84a,84bのうち、下側に位置する他方の軸受84bは、他方の軸受保持部12bに配置される。各軸受84a,84bは、ヘッド部材1に対して回転軸83を中心軸C回りに回転自在に保持する。
【0057】
オイルシール85は、オイルシール保持部13に配置される。オイルシール85は、中心軸Cを中心とする環状である。オイルシール85の内周部は、中心軸C回りの全周にわたって、回転軸83の外周面と接触する。
【0058】
シール押さえ板86は、プレート取付部14に配置される。シール押さえ板86は、オイルシール85に対して下側から接触する。シール押さえ板86は、プレート取付部14の下側を向く底面に、ネジ止め等により固定される。
【0059】
回転止め部87は、第1ヘッド部材1の側面1a上に配置される。回転止め部87は、ボルト部材等により第1ヘッド部材1と固定される。回転軸83のうち第1ヘッド部材1の側面1aから上側に突出する部分が、回転止め部87を第2方向に貫通して延びる。回転止め部87は、回転軸83の中心軸C回りの回転を許容する調整モードと、回転軸83の中心軸C回りの回転を規制する固定モードと、を切り替え可能である。回転止め部87は、切替レバー87aを有する。オペレーターは、切替レバー87aを操作することにより、回転止め部87の調整モードと固定モードとを切り替えることができる。
【0060】
表示部88は、回転止め部87の上側に配置される。表示部88は、ボルト部材等により、回転止め部87および第1ヘッド部材1と固定される。回転軸83のうち第1ヘッド部材1の側面1aから上側に突出する部分、具体的には回転止め部87よりも上側に位置する部分が、表示部88を第2方向に貫通して延びる。表示部88は、いわゆるインジケーター等である。表示部88は、回転軸83の中心軸C回りの回転位置に基づいて、栓部6およびシム部7(つまりインナーディッケル9)の第1方向の位置または塗布幅(スロット5の第1方向の開口寸法)を外部に表示する。
【0061】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具10は、塗布幅調整機構8により、栓部6およびシム部7を含むインナーディッケル9を、第1方向つまりヘッド部材1,2の長手方向に移動させることで、塗布液の塗布幅を調整可能である。塗布幅調整機構8は、その一部がマニホールド4内およびヘッド部材1の貫通孔11内に配置されており、その回転操作部83bがヘッド部材1,2の第1方向と直交する方向を向く外面から外部に露出される。具体的に、この塗布工具10では、回転操作部83bを操作して回転軸83およびピニオンギア82を回転させることにより、ピニオンギア82と噛み合うラックギア81が、栓部6およびシム部7つまりインナーディッケル9とともに、第1方向に移動する。これにより、被塗布物への塗布液の第1方向の塗布幅が調整される。
【0062】
本実施形態によれば、塗布幅調整機構8が、ヘッド部材1,2から第1方向つまり長手方向に出っ張らないため、塗布工具10の長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。このため、設置スペースなどに制限が生じにくく、塗布工具10を不図示の塗布装置に搭載しやすい。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとする場合でも、塗布工具10の長手方向の外形寸法増加への影響は小さく抑えられる。
【0063】
また本実施形態のように、ヘッド部材1,2の長手方向の右側部分と左側部分とに塗布幅調整機構8がそれぞれ設けられることで、スロット5の第1方向の開口寸法つまり塗布幅を、第1方向の両端部においてそれぞれ調整でき、被塗布物との位置合わせ等の作業性が良い。
【0064】
また、ヘッド部材1,2の長手方向の両端部に塗布幅調整機構8がそれぞれ設けられる場合でも、両方の塗布幅調整機構8を操作するためにオペレーターが移動する距離は短く抑えられ、操作性が良い。
【0065】
また本実施形態では、ラックギア81およびピニオンギア82が、第1方向において栓部6の両端部間に配置される。具体的に、ラックギア81およびピニオンギア82は、栓部6の凹部61内に位置する。
例えば、ラックギア81およびピニオンギア82が、第1方向において栓部6とは異なる位置に配置される場合と比べて、本実施形態の上記構成によれば、塗布工具10を第1方向つまり長手方向によりコンパクト化することができる。
【0066】
また本実施形態では、回転操作部83bが、ヘッド部材1の第1方向と直交する方向を向く外面のうち、第2方向を向く側面1aから外部に露出される。
この場合、オペレーターが、塗布工具10の第2方向から回転操作部83bを操作して栓部6およびシム部7を移動させて、塗布幅を調整できる。
【0067】
また本実施形態では、塗布幅調整機構8が表示部88を有するので、オペレーターが、表示部88を目視等で確認しつつ、塗布幅を精度よく簡単に調整でき、操作性がより向上する。
【0068】
また本実施形態では、塗布幅調整機構8が回転止め部87を有するので、回転止め部87を調整モードとして、インナーディッケル9を第1方向に移動させ塗布幅を調整した後、回転止め部87を固定モードとして、稼働中の塗布工具10の塗布幅を一定に維持することができる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の塗布工具20について、
図3から
図5を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して、その説明を省略する場合がある。
【0070】
図3から
図5に示すように、本実施形態の塗布工具20は、一対のヘッド部材1,2と、マニホールド4と、スロット5と、インナーディッケル9と、塗布幅調整機構8と、を備える。
【0071】
〔ヘッド部材〕
本実施形態では、一対のヘッド部材1,2の第1方向の全長が、マニホールド4およびスロット5の各第1方向の全長よりも長い。マニホールド4の第1方向の両端部は、ヘッド部材2の第1方向の両端部により、第1方向から塞がれる。スロット5の第1方向の両端部は、ヘッド部材2の第1方向の両端部により、第1方向から塞がれる。すなわち、塗布工具20には、一対のサイドプレート3が設けられていない。
【0072】
図4に示すように、第1ヘッド部材1は、貫通孔11と、オイルシール保持部16と、ピニオンギア挿入部17と、を有する。貫通孔11、オイルシール保持部16およびピニオンギア挿入部17は、貫通孔11の中心軸Cを中心として互いに同軸に配置される。本実施形態では、貫通孔11、オイルシール保持部16およびピニオンギア挿入部17の組が、塗布工具20の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。
【0073】
オイルシール保持部16は、貫通孔11の上側開口部に位置する。オイルシール保持部16は、貫通孔11よりも内径が大きい円穴状であり、上側に開口する。オイルシール保持部16は、第1ヘッド部材1の側面1aに開口し、この側面1aから下側に窪む。
【0074】
ピニオンギア挿入部17は、貫通孔11の下側開口部に位置する。ピニオンギア挿入部17は、貫通孔11よりも内径が大きい円穴状であり、下側に開口する。ピニオンギア挿入部17は、第1ヘッド部材1の内面1bに開口し、この内面1bから上側に窪む。
【0075】
なお、オイルシール保持部16およびピニオンギア挿入部17がそれぞれ、貫通孔11の一部を構成することとしてもよい。すなわち、貫通孔11が、オイルシール保持部16およびピニオンギア挿入部17を有していてもよい。
【0076】
〔インナーディッケル〕
図4および
図5に示すように、インナーディッケル9は、栓部6と、シム部7と、を有する。つまり塗布工具20は、栓部6と、シム部7と、を備える。本実施形態では、インナーディッケル9つまり栓部6およびシム部7の組が、塗布工具20の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。
【0077】
栓部6は、第1方向に互いに間隔をあけて配置される一対の分割体62を有する。各分割体62はそれぞれ、半円板状である。一対の分割体62は、ラックギア81の第1方向の両端部に接続される。一対の分割体62とラックギア81とは、互いに別部材で形成されネジ止め等により固定されてもよいし、または、単一の部材により一体に形成されてもよい。分割体62の外周面は、マニホールド4の内周面と摺動可能に接触する。分割体62は、マニホールド4の内部空間を第1方向から密封(シール)しており、つまりマニホールド4の内部空間を第1方向に仕切る。
【0078】
本実施形態ではシム部7が、栓部6とは別体に形成される。シム部7は、ネジ止め等により、一対の分割体62およびラックギア81と固定される。栓部6およびシム部7は、ラックギア81とともに第1方向に移動可能である。
【0079】
〔塗布幅調整機構〕
図3から
図5に示すように、塗布幅調整機構8は、ラックギア81と、ピニオンギア82と、回転軸83と、オイルシール89aと、Oリング89bと、回転プレート92と、表示部90と、ストッパー91と、を有する。本実施形態では、塗布幅調整機構8が、塗布工具20の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。
【0080】
ラックギア81は、第1方向において一対の分割体62間に配置される。すなわち、ラックギア81は、第1方向において栓部6の両端部間に配置される。
【0081】
ピニオンギア82は、第1方向において一対の分割体62間に配置される部分を有する。すなわち、ピニオンギア82は、第1方向において栓部6の両端部間に配置される。具体的に、ピニオンギア82は、下端部がマニホールド4内かつ一対の分割体62間に配置され、下端部以外の部分がピニオンギア挿入部17内に配置される。ピニオンギア82の外周面とピニオンギア挿入部17の内周面との間には、隙間が設けられる。
【0082】
図4に示すように、回転軸83は、接続部83aと、回転操作部83bと、シール溝83cと、プレート固定溝83dと、を有する。
接続部83aの外径は、回転軸83のうち回転操作部83b、シール溝83cおよびプレート固定溝83d以外の部分の外径と略同じである。
【0083】
シール溝83cは、回転軸83のうち第2方向において接続部83aと回転操作部83bとの間に位置する部分の外周面から窪み、中心軸C回りに延びる溝状である。シール溝83cは、中心軸Cを中心とする環状である。
【0084】
プレート固定溝83dは、回転軸83のうち第2方向において接続部83aと回転操作部83bとの間に位置する部分の外周面から窪む溝状である。プレート固定溝83dは、中心軸Cに対してねじれの位置となる方向に直線状に延びる。つまりプレート固定溝83dは、回転軸83の外周面からDカット状に窪む。プレート固定溝83dは、互いの間に中心軸Cを挟んで平行に延びるように、一対設けられる。プレート固定溝83dは、第1ヘッド部材1の側面1aの上側に配置される。
【0085】
オイルシール89aは、オイルシール保持部16に配置される。オイルシール89aは、中心軸Cを中心とする環状である。オイルシール89aの内周部は、中心軸C回りの全周にわたって、回転軸83の外周面と接触する。
【0086】
Oリング89bは、シール溝83cに配置される。Oリング89bは、中心軸Cを中心とする環状である。Oリング89bは、シール溝83cの内壁および貫通孔11の内周面と、中心軸C回りの全周にわたって接触する。
【0087】
図3および
図4に示すように、回転プレート92は、中心軸Cを中心とする円板状である。回転プレート92の一対の板面は、第2方向を向く。回転プレート92は、スリット92aと、円弧孔92bと、目盛り部(図示省略)と、を有する。
【0088】
スリット92aは、回転プレート92を第2方向に貫通し、中心軸Cと直交する径方向に延びる。スリット92aは、回転プレート92の外周面の一部と、中心軸C上とにわたって直線状に延びる。スリット92aは、プレート固定溝83dに嵌合する。これにより、回転軸83と回転プレート92とは、中心軸C回りの相対回転が規制され、かつ第2方向への相対移動が規制される。すなわち、回転軸83と回転プレート92とは、中心軸C回りに一体に回転させられる。
【0089】
円弧孔92bは、回転プレート92を第2方向に貫通し、中心軸C回りの周方向に延びる円弧状の貫通孔である。図示の例では、円弧孔92bが、中心軸Cを中心とした中心角で約270°にわたって周方向に延びる。中心軸Cと直交する径方向において、中心軸Cと円弧孔92bとの間の距離は、中心軸Cとヘッド部材1の側面1a上の読取り点1dとの間の距離と等しい。このため、回転軸83とともに回転プレート92が中心軸C回りに回転させられたときに、第2方向(上側)から見て、円弧孔92bと読取り点1dとが重なる。なお本実施形態では、読取り点1dが、側面1aから第2方向に窪む雌ネジ穴とされている。
【0090】
特に図示しないが、目盛り部は、回転プレート92のうち円弧孔92bと前記径方向に隣接する部分に配置される。目盛り部は、円弧孔92bと並行して前記周方向に沿って配置される。
【0091】
表示部90は、回転軸83の中心軸C回りの回転位置に基づいて、栓部6およびシム部7(つまりインナーディッケル9)の第1方向の位置または塗布幅(スロット5の第1方向の開口寸法)を外部に表示する。表示部90は、上述した円弧孔92bと、読取り点1dと、目盛り部と、を有する。オペレーターは、円弧孔92b内の読取り点1dの中心軸C回りの位置を目盛り部で読み取ることにより、インナーディッケル9の第1方向の位置または塗布幅を認識可能である。
【0092】
ストッパー91は、回転軸83の中心軸C回りの所定の回転範囲を超えた回転を規制する。ストッパー91は、上述した円弧孔92bと、ネジ部材91aと、を有する。ネジ部材91aは、例えば蝶ボルト等である。ネジ部材91aは、円弧孔92b内に上側から挿入され、ヘッド部材1の側面1aの図示しない雌ネジ穴に螺着される。中心軸Cの軸方向つまり第2方向から見て、この雌ネジ穴と、読取り点1dとは、中心軸Cを間に挟んで互いに反対側に位置する。すなわち、上記雌ネジ穴と読取り点1dとは、中心軸C回りの周方向において、互いに180°回転対称位置に配置される。
【0093】
ネジ部材91aのねじを緩めた状態で、回転軸83とともに回転プレート92を中心軸C回りの周方向に回転させていき、円弧孔92bの周方向の端部とネジ部材91aとが接触させられることで、それ以上の回転軸83および回転プレート92の回転が規制される。すなわち、ストッパー91によって、インナーディッケル9の第1方向の所定範囲を超えた移動が規制される。
【0094】
ネジ部材91aのねじを締め込んだ状態において、ネジ部材91aは、上側から回転プレート92をヘッド部材1の側面1aに押し付けて固定する。このため、ネジ部材91aは、回転軸83の中心軸C回りの回転を許容する調整モードと、回転軸83の中心軸C回りの回転を規制する固定モードと、を切り替え可能な回転止め部91aとしても機能する。すなわち、ネジ部材91aのねじを緩めた状態は、調整モードとされ、ネジ部材91aのねじを締め込んだ状態は、固定モードとされる。
【0095】
なお本実施形態では、ネジ部材91aを上記雌ネジ穴に螺着する代わりに、読取り点1dに螺着することが可能である。このため、ネジ部材91aを上記雌ネジ穴から取り外した状態で、回転軸83および回転プレート92を中心軸C回りに任意の回転量だけ回転させた後、上記雌ネジ穴および読取り点1dのいずれか一方、具体的には円弧孔92b内に位置するいずれか一方に対して、ネジ部材91aを螺着することで、上述した機能(作用)と同様の機能を得ることができる。具体的に、例えばネジ部材91aを読取り点1dに螺着した場合には、上記雌ネジ穴が読取り点とされるとともに、表示部90の一構成要素となる。
このため本実施形態においても、回転軸83の中心軸C回りの回転位置を任意に調整可能である。
【0096】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具20によれば、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0097】
また本実施形態では、塗布幅調整機構8がストッパー91を有するので、オペレーターが所定の回転範囲を超えて回転軸83を回転操作してしまうような不具合が、ストッパー91によって抑制される。このため、回転軸83の回転量の誤操作によるインナーディッケル9の破損等が抑えられる。
【0098】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0099】
前述の実施形態では、インナーディッケル9および塗布幅調整機構8がそれぞれ、塗布工具10,20の第1方向の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに一対設けられる例を挙げたが、これに限らない。インナーディッケル9および塗布幅調整機構8は、各1つのみ設けられてもよい。
【0100】
前述の実施形態では、貫通孔11が、第1ヘッド部材1の内部を第2方向に延びる例を挙げたが、これに限らない。例えば、貫通孔11が、第2ヘッド部材2の内部を第3方向に延びていてもよい。この場合、貫通孔11は、第2ヘッド部材2の第1方向と直交する方向を向く外面のうち、第3方向の後端側を向く後面2b、およびマニホールド4に開口する。また回転軸83およびピニオンギア82の中心軸Cは、第3方向に延び、回転操作部83bは、第2ヘッド部材2の後面2bから外部に露出される。
上記構成によれば、オペレーターが、塗布工具10,20の第3方向から回転操作部83bを操作して栓部6およびシム部7を移動させて、塗布幅を調整できる。
また本発明は上述のように、一対のヘッド部材1,2のうち少なくともいずれかのヘッド部材1,2が、ヘッド部材1,2を貫通する貫通孔11を有していればよい。
【0101】
前述の実施形態では、マニホールド4が、第2ヘッド部材2の内面2aから下側に窪み、第1方向に延びる溝状である例を挙げたが、これに限らない。マニホールド4は、第1ヘッド部材1の内面1bから上側に窪み、第1方向に延びる溝状でもよい。
また、マニホールド4は、第1ヘッド部材1の内面1bから上側に窪み第1方向に延びる第1溝部と、第2ヘッド部材2の内面2aから下側に窪み第1方向に延びる第2溝部と、を有していてもよい。第1溝部と第2溝部とは、第2方向において対向し、互いに連通する。この場合、マニホールド4は、第1方向に延びる円柱状の室(空間)となる。
【0102】
また第2実施形態では、オペレーターが表示部90を用いて、円弧孔92b内の読取り点1dまたは図示しない雌ネジ穴の中心軸C回りの位置を目盛り部で読み取ることにより、インナーディッケル9の第1方向の位置または塗布幅を認識可能である例を挙げたが、これに限らない。
特に図示しないが、例えば、回転プレート92上にマーキング、スリットまたは孔等の目印を設け、ヘッド部材1の側面1aのうち、中心軸Cと直交する径方向において回転プレート92の外側に位置する部分に、中心軸C回りの周方向に配列する目盛りを設けて、目印の周方向位置を目盛りで読み取ることにより、回転軸83および回転プレート92の回転位置、すなわちインナーディッケル9の第1方向の位置または塗布幅を認識可能としてもよい。この場合、表示部は、目印と、目盛りと、を有する。
【0103】
前述の実施形態では、第2方向を鉛直方向とし、第3方向を水平方向として説明したが、これに限らない。例えば、第2方向を水平方向とし、第3方向を鉛直方向としてもよい。この場合、スロット5は、鉛直方向の上側または下側へ向けて外部に開口する。
また、第2方向が、鉛直方向と水平方向との間の傾斜方向であり、第3方向が、水平方向と鉛直方向との間の傾斜方向であってもよい。
【0104】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の塗布工具によれば、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができ、かつ操作性が良い。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0106】
1,2…ヘッド部材
1a…側面
1b,2a…内面
1c,2e…先端部
2b…後面
4…マニホールド
5…スロット
6…栓部
7…シム部
8…塗布幅調整機構
9…インナーディッケル
10,20…塗布工具
11…貫通孔
81…ラックギア
82…ピニオンギア
83…回転軸
83a…接続部
83b…回転操作部
87,91a…回転止め部
88,90…表示部
91…ストッパー
C…中心軸