(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071471
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】フライホイール蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/14 20060101AFI20220509BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20220509BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H02K7/14 Z
H02K11/33
H02K21/24 G
H02K21/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180454
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】521344607
【氏名又は名称】ネクスファイ・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷本 智
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝
【テーマコード(参考)】
5H607
5H611
5H621
【Fターム(参考)】
5H607AA00
5H607BB01
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB13
5H607CC01
5H607EE42
5H611BB01
5H611BB02
5H611BB06
5H611TT01
5H611UA04
5H621BB01
5H621BB02
5H621HH01
(57)【要約】
【課題】小型化が可能であるだけでなく、最大装置質量エネルギー密度を飛躍的に向上させることができるフライホイール蓄電装置を提供する。
【解決手段】発電電動機部3と、フライホイール部2とを備える。フライホイール部2は、支持軸5A、5Bと、支持軸5A、5Bに支持された一対のフライホイールハブ8A、8Bと、各フライホイールハブ8A、8Bの外周に設けられた回転質量円輪9A、9Bとを備える。発電電動機部3は、両フライホイールハブ8A、8Bの間に設けられた無鉄心励磁誘導コイル11iによるステータ部10と、各フライホイールハブに保持されたハルバッハ配置永久磁石列によるロータ部12A、12Bとを備える。支持軸5A、5Bを支持して発電電動機部3とフライホイール部2とを共に収容する筐体を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーと回転運動エネルギーとを相互に変換する発電電動機部と、エネルギーを回転運動として蓄積するフライホイール部とを備えるフライホイール蓄電装置であって、
前記フライホイール部は、該フライホイール部の回転軸線に中心軸線が一致する支持軸と、該支持軸に同軸に支持された一対のフライホイールハブと、各フライホイールハブの外周に設けられた環状の回転質量円輪とを備え、
前記発電電動機部は、前記一対のフライホイールハブの間に設けられた無鉄心励磁誘導コイルによるステータ部と、該ステータ部の無鉄心励磁誘導コイルに対向して前記各フライホイールハブに保持された無継鉄ハルバッハ配置永久磁石列によるロータ部とを備え、
前記支持軸を支持して前記発電電動機部と前記フライホイール部とを共に収容する筐体を備えることを特徴とするフライホイール蓄電装置。
【請求項2】
前記フライホイールハブと前記支持軸と前記筐体の1以上またはすべてが軽金属または炭素繊維強化プラスチックで構成されることを特徴とする請求項1記載のフライホイール蓄電装置。
【請求項3】
前記フライホイール部の前記回転質量円輪と前記支持軸との間に環状の空間が形成されており、当該環状空間内に前記発電電動機部への給電及び受電を行うための双方向インバータ部が収容されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフライホイール蓄電装置。
【請求項4】
前記筐体の内部における少なくとも前記発電電動機部及び前記フライホイール部の回転領域を真空化すべく排気を行う排気装置を前記筐体内部に備えることを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のフライホイール蓄電装置。
【請求項5】
前記発電電動機部と前記フライホイール部とで構成された第1蓄電ユニットと、該第1蓄電ユニットに対して等速で逆回転する前記発電電動機部と前記フライホイール部とで構成された第2蓄電ユニットとを備え、
第1蓄電ユニットと第2蓄電ユニットとを同一回転軸線上に同数配設したことを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のフライホイール蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイール蓄電装置の質量エネルギー密度の向上技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フライホイール蓄電装置は電力量と回転運動エネルギーを相互に変換する手段を介して、フライホイールに電力を蓄電したり、逆に、フライホイールから電力を受電したりする機能を備えた装置である。
【0003】
フライホイール蓄電装置は、普及している電気化学蓄電装置(所謂二次電池)と比較すると、低温環境でも高温環境でも安定して機能する、充放電を繰り返しても特性や寿命の劣化がほとんど起こらない、内部抵抗が小さい、など優れた特長を有している。
【0004】
この新しい蓄電装置を用いれば、二次電池利用の従来電気機器やシステムの耐環境性や省エネルギー、メンテナンス性の向上を図ることが可能である。こうした理由を背景にフライホイール蓄電装置の一層の普及と適用領域の拡大が強く嘱望されている。
【0005】
フライホイール蓄電装置普及のための重要課題は、商品力を高めるため、体格を小型化することと、軽量化することである。軽量化は装置最大質量エネルギー密度(フライホイールの最大蓄積エネルギーを装置の質量で除した値)を使って、「最大装置質量エネルギー密度の向上」と言い換えることができる。
【0006】
フライホイール蓄電装置の基本構成要素は2つ、1つはエネルギーを回転運動として蓄積するフライホイール部、もう1つは指令により電力量(=電気エネルギー)と回転運動エネルギーと相互に変換する発電電動機部である。
【0007】
現在のところ、前記最重要課題のうち、装置小型化への取り組みが断然先行している。細かな相違は多少あるものの、いずれの取り組みも、フライホイール部と発電電動機部を集積化(あるいは一体化)させる構成という点で一致しいる。
【0008】
もう少し具体的に説明すると、フライホイール部の回転シャフトと発電電動機部の回転シャフトとを共有するとともに、回転軸の或る1鉛直面にフライホイール部と発電電動機部を同心円状に並べて集約する方法である。
【0009】
集積フライホイール蓄電装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1記載のフライホイール蓄電装置は、アウターロータ型の発電電動機部とフライホイール部とを備えている。
【0010】
発電電動機部とフライホイール部とは、回転シャフトを共有しており、発電電動機部の外周面を囲うようにして外側にフライホイール部が配設されている。更に、発電電動機部のロータ部にフライホイール部の本体を設けることにより、集積度が一層高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の集積フライホイール蓄電装置においては、上述したように、装置としての小型化は達成できるものの、フライホイール蓄電装置における最大の質量エネルギー密度である最大装置質量エネルギー密度については、その向上が殆ど望めない。
【0013】
上記の点に鑑み、本発明は、小型化が可能であるだけでなく、最大装置質量エネルギー密度を飛躍的に向上させることができるフライホイール蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するために、本発明は、電気エネルギーと回転運動エネルギーとを相互に変換する発電電動機部と、エネルギーを回転運動として蓄積するフライホイール部とを備えるフライホイール蓄電装置であって、前記発電電動機部と前記フライホイール部とを共に収容する筐体を備え、前記フライホイール部は、該フライホイール部の回転軸線に中心軸線が一致する支持軸と、該支持軸に同軸に支持された一対のフライホイールハブと、各フライホイールハブの外周に設けられた環状の回転質量円輪とを備え、前記発電電動機部は、前記一対のフライホイールハブの間に設けられた無鉄心励磁誘導コイルによるステータ部と、該ステータ部の無鉄心励磁誘導コイルに対向して前記各フライホイールハブに保持された無継鉄ハルバッハ配置永久磁石列によるロータ部とを備え、前記支持軸を支持して前記発電電動機部と前記フライホイール部とを共に収容する筐体を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、前記フライホイールハブと前記支持軸と前記筐体の1以上またはすべてが軽金属または炭素繊維強化プラスチックで構成されることが好ましい。
【0016】
また、本発明において、前記フライホイール部の前記回転質量円輪と前記支持軸との間に環状の空間が形成されており、当該環状空間内に前記発電電動機部への給電及び受電を行うための双方向インバータ部が収容されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明において、前記筐体の内部における少なくとも前記発電電動機部及び前記フライホイール部の回転領域を真空化すべく排気を行う排気装置を前記筐体内部に備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明において、前記発電電動機部と前記フライホイール部とで構成された第1蓄電ユニットと、該第1蓄電ユニットに対して等速で逆回転する前記発電電動機部と前記フライホイール部とで構成された第2蓄電ユニットとを備え、第1蓄電ユニットと第2蓄電ユニットとを同一回転軸線上に同数配設したことを特徴とする。
【0019】
フライホイール蓄電装置のフライホイール部は、一般に、3つの主要素からなっている。第1の要素は周方向に回転して回転運動エネルギーを蓄える回転質量円輪(円筒の場合も含めてここでは円輪と称する)、第2の要素は回転する前記回転質量円輪の回転中心点を規定するフライホイール中心シャフトである支持軸、第3の要素は前記回転円輪を支持し、前記フライホイール中心シャフトからの距離を等距離に保つフライホイールハブである。ここで、フライホイールハブと回転質量円輪とは一体に回転する。支持軸は筐体に支持されるが、支持軸が筐体に固定保持されてフライホイールハブを回転自在に支持する構成と、支持軸が筐体に回転自在に支持されてフライホイールハブと一体的に回転する構成とが挙げられ、その何れの構成であっても選択的に採用可能である。
【0020】
一方、発電電動機部の基本構成要素は(ここでは広く用いられている永久磁石3相同期発電電動機の例で説明すると)一般に2つの構成要素、すなわち、固定した励磁誘導コイルを備えたステータ部と、強い静磁界を発生させる永久磁石を表層に設置又は埋設した回転自在のロータ部とからなっている。ステータ部とロータ部は中心軸を共有するように配置され、ステータ部の励磁誘導コイルとロータ部の永久磁石は狭い空隙を挟んで対向している。
【0021】
本発明のフライホイール蓄電装置は、前記フライホイール部の回転質量円輪の質量エネルギー密度を最大化させ低下させないという指針のもと、高加重発生要素である鉄製部品を合理的に削減して実現することを要旨とする。
【0022】
よって、本発明によれば、小型化が可能であるだけでなく、最大装置質量エネルギー密度を飛躍的に向上させることができるフライホイール蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるフライホイール蓄電装置の構成を示す説明的断面図。
【
図2】本発明の第2の実施形態によるフライホイール蓄電装置の構成を示す説明的断面図。
【
図3】本発明の第3の実施形態によるフライホイール蓄電装置の構成を示す説明的断面図。
【
図4】本発明の第4の実施形態によるフライホイール蓄電装置の構成を示す説明的断面図。
【
図5】本発明の第5の実施形態によるフライホイール蓄電装置の構成を示す説明的断面図。
【
図6】本発明の第6の実施形態によるフライホイール蓄電装置の構成を示す説明的断面図。
【
図7】本発明の第7の実施形態によるフライホイール蓄電装置の構成を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の各実施形態に係るフライホイール蓄電装置は、前記フライホイール部回転質量円輪の円輪エネルギー密度を最大化させ低下させないという指針のもと、高加重発生要素である鉄製部品を合理的に削減して実現することを要旨とする。
【0025】
フライホイール蓄電装置の全質量(フライホイール部質量と発電電動機部質量の和)をMsys、前記フライホイール部の回転質量円輪に蓄えられる最大の回転運動エネルギーをEfwとすると、フライホイール蓄電装置の最大装置質量エネルギー密度Dsysは次式(1)で定義される。
【0026】
Dsys = Efw/Msys ・・・(1)
【0027】
一方、回転質量円輪の性能を示す指標として最大円輪質量エネルギー密度Dfwが広く用いられている。回転質量円輪の質量をmfwとすると、次式(2)となる。
【0028】
Dfw = Efw/mfw ・・・(2)
【0029】
Dfwと回転質量円輪の材料の関係性を知るために、回転質量円輪の質量密度(または比重)をρ、降伏強度をσyとして、上式のEfwとmfwを数式化して演算すると最終的に次式(3)が導かれる。
【0030】
Dfw = K(σy/ρ)・・・(3)
【0031】
ここでKは回転質量円輪の内半径と外半径の比に応じて0.3~0.5まで緩やかに単調増加する係数で、形状因子と呼ばれることもある。
【0032】
上記の式(1)と式(2)とを組み合わせると次のDsysとDfwの関係式(4)が得られる。
【0033】
Dsys = (mfw/Msys)Dfw =(mfw/(mfw+Moth))Dfw・・・(4)
【0034】
上式(4)のMothはフライホイール蓄電装置の質量Msysから回転質量円輪の質量mfwを差し引いた量、即ち、回転質量円輪を除く全質量である。
【0035】
本発明者は上記解析の式(4)の中辺に着目し、最大装置質量エネルギー密度Dsysを向上させるには、回転質量円輪とフライホイール蓄電装置の質量比mfw/Msysと回転質量円輪のエネルギー密度Dfwの積を増大させると達成できることを知見した。
【0036】
更に、式(4)の右辺に着目すると、最大装置質量エネルギー密度Dsysを向上させるために、次の2つの設計工程が明らかとなる。すなわち、第1ステップとして、円輪質量エネルギー密度Dfwを最大化できる回転質量円輪材料(σy/ρ比が大きい材料)を選択し、続く第2ステップでは、発電電動機の所望性能(出力やトルク)を担保できることを前提に、前記Mothの軽減を最大限に行う。
【0037】
これに基づき、本発明においては、最大のDfwを得るために高強度炭素繊維で強化したプラスチック(以下CFRP)からなる回転質量円輪を用いるとともに、前記質量Mothの軽減するため、同円輪の内径側空間にアキシャル磁束永久磁石(Axial Flux Parmanent Magnetic、以下AFPMと略記)発電電動機を配置し、Mothの大部分を占める鉄製バルク材(例えばフライホイールハブやモータのヨークやコイルコアなど)を削除または、軽量材料に転換する改善を実行している。
【0038】
以下に、本発明の実施形態及びその変形例を図面を参照して説明する。ただし、これら図面では、理解を容易にするために、厚さと平面寸法との関係や各層の厚さの比率などは誇張して描いている。また、同一部材には同一符号を付して再度の説明は省略する。
【0039】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係るフライホイール蓄電装置1においては、
図1に示すように、フライホイール部2と発電電動機部3が一体となって、回転軸線4(極座標系のZ軸)に設置された共通の支持軸である上下回転シャフト5A、5Bとともに回転し、蓄電と放電を行う。
【0040】
5Cは上下回転シャフト5A、5Bを連結するカップリングシャフトである。6は前記回転中心軸線4と直交している中央回転面(極座標系のr―θ面)である。
【0041】
上下回転シャフト5A、5B及びカップリングシャフト6の素材は高い降伏強度を有する軽金属を選択する。例えば、超々ジュラルミン(A7075P)や6Al-4Vチタン合金を用いるのが好ましく、6Al-6V-2Snチタン合金や11.5Al-1Mo-6Zr-4.5Snチタン合金を用いるのがより一層望ましい。
【0042】
フライホイール部2は、回転中心面6に設けられた中心間隙7を挟み、上部フライホイール2Aと下部フライホイール2Bが平行に、かつ、その構造が上下対称になるように配置されている。
【0043】
8Aは上部フライホイール2Aのフライホイールハブであって、底板を備えた円筒形状である。フライホイールハブ8Aは、上部回転シャフト5Aに固着され、或いは、機械的に強固に接続されている。
【0044】
同様に、8Bは下部フライホイール2Bのフライホイールハブであって、(上に)底板がある円筒形状である。フライホイールハブ8Bは、上部回転シャフト5Bに固着され、或いは、機械的に強固に接続されている。
【0045】
フライホイールハブ8A、8Bの素材は高い降伏強度を有する軽金属、または、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を選択する。
【0046】
軽金属の場合は、例えば、超々ジュラルミン(A7075P)や6Al-4Vチタン合金を用いるのが好ましく、6Al-6V-2Snチタン合金や11.5Al-1Mo-6Zr-4.5Snチタン合金を用いるのがより一層望ましい。
【0047】
CFRPの場合は、引張強度5GPa以上の炭素繊維を充填率0.6以上で固化させた強化プラスチックを用いることが望ましい。
【0048】
前記フライホイールハブ8A、8Bの外縁には、それぞれ、円筒状の上部回転質量円輪9A、下部回転質量円輪9Bが外接している。
【0049】
この回転質量円輪9A、9Bには、引張強度6GPa以上炭素繊維を周方向に巻き上げ強化した充填率60%~70%のCFRPを用いる。このようなCFRPは、周知のフィラメントワイディング法、または、シートワイディング法を用いて成形することができる。
【0050】
発電電動機部3には、上述したように、AFPM型発電電動機が採用されている。
図1中、10は発電電動機部3のステータ部であって、形態はカップリングシャフト5Cの外径より大きな内径の円孔を有する中空円盤である。
【0051】
ステータ部10は、前記中心間隙7の位置に、上部フライホイール2Aと下部フライホイール2Bと僅かのギャップを隔てて配設されている。回転シャフト5A、5B寄りで、回転中心軸線4から所定の距離を隔てたステータ部10の内部には、磁束錯交面をZ軸方向に向けた複数の無鉄心励磁誘導コイル11i(i=1、2、・・・、n)が円周方向に等角周期で配置・固定されている。
【0052】
ステータ部10の素材は、銅線からなる無鉄心励磁誘導コイル11iの部分を除き、高い降伏強度を有する軽金属またはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)または両材料の複合材を選択する。
【0053】
軽金属の場合は、例えば、超々ジュラルミン(A7075P)や6Al-4Vチタン合金を用いるのが好ましく、6Al-6V-2Snチタン合金や11.5Al-1Mo-6Zr-4.5Snチタン合金を用いるのがより一層望ましい。
【0054】
CFRPの場合は引張強度5GPa以上の炭素繊維を充填率0.6以上で固化させた強化プラスチックを用いることが望ましい。
【0055】
ステータ部10の一層の軽量化を図るために、無鉄心励磁誘導コイル11i該当部分及び後述の上部、下部指示防御壁接続部分を除く部分を、構造強度の制約が許す限り、刳り貫き、梁構造とする設計が行われる。
【0056】
前記AFPM型の発電電動機部3は図中の上部ロータ部12Aと下部ロータ部12Bとを一対具備している。ロータ部12A、12Bは上部フライホイールハブ8A、下部フライホイールハブ8Bの底板と一体形成されている。
【0057】
13Ai(i=1、2、・・・、k)、13Bi(i=1、2、・・・、k)は、ロータ部の要素であって、磁界が強まる側を前記無鉄心励磁誘導コイル11i(i=1、2、・・・、n)に向くように付設された無継鉄ハルバッハ配置の環状永久磁石列(ただしk≠n)である。環状永久磁石列13Ai、13Biは、それぞれ上部フライホイールハブ8A、下部フライホイールハブ8Bの底板に彫られた環状凹部(深さは永久磁石の厚みと同じか厚みより小さいものとする)に嵌合し固定されている。13Aiの磁極N極には13Biの磁極P極が必ず対向するように、また13Aiの磁極P極には13Biの磁極N極が必ず対向するように配置される。
【0058】
発電電動機部3は、隣接する永久磁石間で磁気接続(回路)ができるハルバッハ配置永久磁石列を用いる構成としたため、ロータ部12A、12Bの基材には、重量のある磁性材・継鉄(ヨーク)を使用する制約がなくなり、軽い材料である軽金属やCFRPの適用を可能とするとともに、このことがロータ部12A、12Bとフライホイールハブ8A、8Bを同一基材で構成することを可能としている。
【0059】
つぎに本発明第1の実施形態に係るフライホイール蓄電装置1の筐体骨格に係る部位の説明を行う。
【0060】
14A、14Bはフライホイール蓄電装置1のそれぞれ円形の、上部支持盤と下部支持盤である。上部支持盤14Aはラジアル軸受とスラスト軸受の対からなる軸受部15Aを介して上部回転シャフト5Aを支持している。同様に、下部支持盤14Bは同様の軸受部15Bを介して上部回転シャフト5Aを支持している。軸受は公知の各種軸受、ボール軸受、滑り軸受、空気軸受、磁気軸受などを任意に選択することができる。
【0061】
前記支持盤14Aと14B及びステータ部10の位置関係を確定し、3者を支持しているのが円管状の上部支持防御壁16A、下部支持防御壁16Bである。両支持防御壁16A、16Bは、高速回転しているフライホイール部2が万一破損したとき、破片が外部に飛び出すのを阻止する役割も担っている。
【0062】
前記支持盤14A、14Bと前記支持防御壁16A、16Bの素材は高い降伏強度を有する軽金属を選択する。例えば、超々ジュラルミン(A7075P)や6Al-4Vチタン合金を用いるのが好ましく、6Al-6V-2Snチタン合金や11.5Al-1Mo-6Zr-4.5Snチタン合金を用いるのがより一層望ましい。これにより、支持盤14A、14Bと支持防御壁16A、16Bの軽量化が達成される。支持盤14A、14B及び支持防御壁16A、16Bは、本発明における筐体を構成している。
【0063】
一般に内半径と外半径の比が大きい(比>0.6)円輪では周方向に生じる回転応力が半径方向に生じる回転応力よりもはるかに高くなる。フライホイール蓄電装置1の回転質量円輪9A、9Bはこれに該当する。
【0064】
第1の実施形態では、回転質量円輪9A、9Bに、引張強度6GPa以上炭素繊維をθ方向に巻いて強化したCFRP(充填率60%~70%)を用いている。このため、回転質量円輪9A、9Bは、周方向に非常に高い降伏強度を呈する。また、近年では、引張強度6.4GPa以上の炭素繊維が市販されている。これとエポキシ樹脂を用いて繊維充填率0.6で製作すると質量密度1.6g/cm3、降伏強度σy=3.8GPaのCFRPが得られる。
【0065】
ここで、同CFRPと高強度工業材料として知られているニッケルクロムモリブデン鋼SNCM439のσy/ρ値及びσy/ρ値と比例する最大円輪質量エネルギー密度Dfw(相対値)を比較したところ、第1の実施形態で採用したCFRPは、SNCM439と一桁以上高いDfwが得られることが分かった(σy/ρとDfwの関係は前式(2)を参照)。
【0066】
また、他の工業材料とDfwを比較しても同CFRPの圧倒的優位性は揺るがない。これにより、前述の設計工程における第1ステップが高度に満たされていることが確認できる。
【0067】
次に、前述の設計工程における第2ステップについて、本実施形態の達成レベルを従来技術と比較して検証する。
【0068】
従来のフライホイール蓄電装置では、その前の世代のフライホイール蓄電装置の材料構成を踏襲して体格を小型化させることを優先させ、進化したため、バルク部品の鉄材使用量が多く、結果としてMothが大きくなり、それが最大装置質量エネルギー密度Dsysを押し下げている要因になっていた。鉄材を多く含むバルク部品としては、回転シャフト、フライホイールバブ、励磁誘導コイルコア、ロータ部・ステータ部の継鉄(ヨーク)、筐体骨格などである。鉄材が残った原因はこれら鉄材が発電電動機の磁気回路を樹立する要素として必要不可欠であったため(削除すると集積構造が成立しなくなるため)であろうと推察される。
【0069】
これに対して、第1実施形態におけるフライホイール蓄電装置1は、上述したように、一対のハルバッハ配置永久磁石列のロータ部12A、12Bを具有するAFPM型発電電動機部3を採用し、AFPM型発電電動機部3のロータ部12A、12Bをフライホイールハブ8A、8Bと一体化する構成としたため、これらバルク部品の鉄材を一掃(削除、または、軽量素材に変更)することができる。
【0070】
よって、Mothの大きな削減が顕著に進み、体格の小型化と最大装置質量エネルギー密度Dsys(軽量化に対応)の向上が同時に達成される。
【0071】
[第2の実施形態]
第1の実施形態で示したものにおいては、支持軸を構成する中心シャフト5A、5B、5Cが回転質量円輪9A、9Bやフライホイールハブ8A、8Bと一体的に回転する構成を採用している。次に説明する第2の実施形態のフライホイール蓄電装置20は支持軸である中心シャフトを静止させた(固定した)構成を採用したものである。
【0072】
図2は第2の実施形態におけるフライホイール蓄電装置20を回転中心軸線4(極座標系のZ軸)で切断したときの断面を示している。なお、第1の実施形態と同一部材には同一符号を付して説明は省略する。
【0073】
図2において、21Aは上部静止シャフト、21Bは下部静止シャフトである。両静止シャフト21A、21Bとも、中空(円管状)のシャフトになっている。その中心軸は回転中心軸線4と一致している。第2の実施形態においても、フライホイール部2と発電電動機部3が一体となって、回転中心軸線4(極座標系のZ軸)の周りを回転し、蓄電と放電を行う点は第1実施形態と同様であるが、両静止シャフト21A、21Bは回転せず、終始静止している点は相違している。
【0074】
静止シャフト21A、21Bの素材は高い降伏強度を有する軽金属が選択される。例えば、超々ジュラルミン(A7075P)や6Al-4Vチタンなどの合金を用いるのが好ましく、6Al-6V-2Snチタン合金や11.5Al-1Mo-6Zr-4.5Snチタン合金を用いると更に望ましい。
【0075】
22Aは上部フライホイール2Aに帰属するフライホイールハブであって、形状は中空円盤の底板を備えた円筒である。フライホイールハブ22Aは上部軸受部23Aのラジアル軸受を介しての上部静止シャフト21Aに、スラスト軸受けを介して後述のステータ部24に接続している。
【0076】
同様に、22Bは下部フライホイール2Bに帰属するフライホイールハブであって、形状は中空円盤の底板を備えた円筒である。フライホイールハブ22Bは下部軸受部23Bのラジアル軸受を介しての下部静止シャフト21Bに、スラスト軸受けを介して後述のステータ部24に接続している。
【0077】
軸受部23A、23Bの軸受は公知の各種軸受、ボール軸受、滑り軸受、空気軸受、磁気軸受などから任意に選択することができる。
【0078】
22Cは中心間隙7の幅をきめるフライホイールハブスペーサであって、設置後、上部のフライホイールハブ22A及び下部のフライホイールハブ22Bと強固に接続される。
【0079】
フライホイールハブ22A、22Bの素材は高い降伏強度を有する軽金属を選択する。例えば、超々ジュラルミン(A7075P)や6Al-4Vチタン合金を用いるのが好ましく、6Al-6V-2Snチタン合金や11.5Al-1Mo-6Zr-4.5Snチタン合金を用いるのがより一層望ましい。
【0080】
前記フライホイールハブ22A、22Bの外縁には、それぞれ、円筒状の上部回転質量円輪9A、下部回転質量円輪9Bが外接している。
【0081】
24は発電電動機部3のステータ部であって、前記静止シャフト21A、21Bと強固に接続している。ステータ部24は、中心間隙7の位置に配設され、上部フライホイール2Aと下部フライホイール2Bとは僅かのギャップで隔たっている。ステータ部24は中央が中空であっても中実であってもよい。
【0082】
ステータ部24の素材は、銅線からなる無鉄心励磁誘導コイル11i部分を除き、高い降伏強度を有する軽金属が選択される。例えば、超々ジュラルミン(A7075P)や6Al-4Vチタン合金を用いるのが好ましく、6Al-6V-2Snチタン合金や11.5Al-1Mo-6Zr-4.5Snチタン合金を用いるのがより一層望ましい。
【0083】
ステータ部24の一層の軽量化を図るために、無鉄心励磁誘導コイル11i該当部分及び前記静止シャフト21A、21Bの接続部分を除く部分を、構造強度が許す限り、刳り貫き、梁構造とする設計が望ましい。
【0084】
AFPM型の発電電動機部3は上下に、上部ロータ部25Aと下部ロータ部25Bを一対具備している。ロータ部25A、25Bは、夫々、フライホイールハブ22A、22Bの底板と一体形成されている。13Ai(i=1、2、・・・、k)、13Bi(i=1、2、・・・、k)は、第1実施形態と同様、ロータ部25A、25Bに付設されたハルバッハ配置環状永久磁石列である。
【0085】
14A、14Bは円形の上部支持盤と下部支持盤である。支持盤14A、14Bの中央には静止シャフト21A、21Bを強固に捕縛するシャフト固定機構26A、26Bが形成されている。
【0086】
前記支持盤14Aと14Bの位置関係を確定し、両者を支持するのが円管状の支持防御壁27である。この支持防御壁27は高速回転しているフライホイール2や発電電動機部3が万一破損したとき、破片が外部に飛び出すのを阻止する役割も担っている。
【0087】
支持盤14A、14Bと支持防御壁27の素材は高い降伏強度を有する軽金属を選択する。例えば、超々ジュラルミン(A7075P)や6Al-4Vチタン合金を用いるのが好ましく、6Al-6V-2Snチタン合金や11.5Al-1Mo-6Zr-4.5Snチタン合金を用いるのがより一層望ましい。
【0088】
一般に内半径と外半径の比が大きい(比>0.6)円輪では周方向に生じる回転応力が半径方向に生じる回転応力よりもはるかに高くなる。従来や本発明の集積フライホイール蓄電装置の回転質量円輪はこれに該当する。
【0089】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同じ仕様のCFRP回転質量円輪(9A、9B)を採用しているので、前述の設計工程の第1ステップの要件が満たされ、高強度金属質量円輪(SNCM439など)より一桁以上高い最大円輪質量エネルギー密度Dfw(相対値)が得られる。
【0090】
また、第2の実施形態も第1の実施形態と同じく、ハルバッハ配列磁石列によるロータ部25A、25Bを具有するAFPM型の発電電動機部3を採用し、ロータ部25A、25Bをフライホイールハブ22A、22Bと一体にする構成としたため、従来のバルク部品から鉄材を一掃(削除、または、軽量素材に変更)することができる。
【0091】
これによって、本発明第2の実施形態は、Mothの大きな削減を顕著に進め、前述の設計工程の第2ステップの要件が満たされ、体格の小型化のみならず最大装置質量エネルギー密度Dsys(軽量化に対応)向上も達成することができる。
【0092】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、移動体(自動車や航空機など)への搭載に適した本発明のフライホイール蓄電装置の構成に関する。
【0093】
フライホイールのような高速で回る回転体に、回転軸の角度を変える外力(重力や機械力など)が働くと、その外力の直角方向に力が生じる(ジャイロ効果)。この力がフライホイール蓄電装置に生じると、移動体が上下左右に方向転換するとき走行が不安定になるという問題が起きる。本発明第3の実施形態はこの問題を解決できる。
【0094】
図3は、第3の実施形態に係るフライホイール蓄電装置30を回転中心軸線4(Z軸)に沿って切断したときの断面図である。フライホイール蓄電装置30は、同一構成の2つのフライホイール蓄電器(第1フライホイール蓄電器31、第2フライホイール蓄電器32)を、回転中心軸線4が一致するように上下に積層した複合構造をしている。
【0095】
第1フライホイール蓄電器31と第2フライホイール蓄電器32とは夫々1つずつ設けたものを挙げたが、同数であればよい。第1フライホイール蓄電器31と第2フライホイール蓄電器32とは、常に等速で逆方向に回転させるように駆動される。
【0096】
なお、第1フライホイール蓄電器31は本発明における第1蓄電ユニットに相当し、第2フライホイール蓄電器32は本発明における第2蓄電ユニットに相当するものである。以下、第1の実施形態と同じ構成要素には同一の符号ならびに説明は省略する。
【0097】
33は中央支持盤である。円盤状の中央支持盤33は、
図3に示すように、第1フライホイール蓄電器31の下部支持盤14Bと第2フライホール蓄電器32の上部支持盤14Aを兼ねている。よって、中央上面に第1フライホイール蓄電器の下部軸受部15Bと中央下面に第2フライホイール蓄電器32の下部軸受部15Aを備えている。
【0098】
中央支持盤33の素材は、上部支持盤14Aや下部支持盤14Bと同じである。高い降伏強度を有する軽金属を選択する。例えば、超々ジュラルミン(A7075P)や6Al-4Vチタン合金を用いるのが好ましく、6Al-6V-2Snチタン合金や11.5Al-1Mo-6Zr-4.5Snチタン合金を用いるのがより一層望ましい。
【0099】
第3の実施形態に係るフライホイール蓄電装置30では、上述のように、等速でかつ回転方向を逆にした同一構成のフライホイール蓄電器31,32を積層する構成にしたため、移動体がフライホイール蓄電装置30の回転シャフトの角度を変える走行(や航行)をした場合であっても、第1フライホイール蓄電器31に生じるジャイロ効果力が第2フライホイール蓄電器32によって相殺され、実質ゼロなる。
【0100】
こうしてフライホイール蓄電装置30を搭載した移動体が進行方向を(上下左右に)変更するときでも、安定した走行(や航行)を実現できる、という新たな効果を奏することができる。
【0101】
第3の実施形態に係るフライホイール蓄電装置30は、第1実施形態または第2実施形態のフライホイール蓄電装置を積層した構成をしているから、第1実施形態または第2実施形態と同等の非常に高い質量エネルギー密度を達成することができる。
【0102】
[第4の実施形態]
一般にフライホイール蓄電装置には発電電動機を駆動(給電と受電)するために双方向のインバータを必ず備える必要がある。厳密に言うと、このインバータもフライホイール蓄電装置の構成要素の一部であるから、インバータを含めたフライホイール蓄電装置体格を小型化するためにインバータ部もフライホイール部や発電電動機部と一体化するのが望ましい。
【0103】
第4の実施形態のフライホイール蓄電装置40はこの要請に応えることを目的としてなされたものである。
【0104】
図4は第4の実施形態に係るフライホイール蓄電装置40を回転中心軸線4(Z軸)に沿って切断したときの断面図である。第1の実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付してその説明は省略する。
【0105】
41A、41Bはフライホイール蓄電装置40の上部支持盤、下部支持盤である。第1実施形態の支持盤14A、14Bと同様、中央部で上部軸受部、下部軸受部に接続しているが、回転シャフト5A、5Bと回転質量円輪9A、9Bの間で上下のフライホイールハブ8A、8Bに向かってせり出す環状凹部42A、42Bを備えているところが第1の実施形態と異なる。環状凹部42A、42Bは、回転シャフト5A、5Bと回転質量円輪9A、9Bとの間に形成された環状空間に対応して形成されている。
【0106】
上部、下部支持盤の環状凹部42A、42Bには発電電動機部3を駆動する双方向インバータ部43A、43Bが収納されている。また、例えば、双方向インバータ部43Bが環状凹部42Bひとつにすべて収まる場合は、他方の環状凹部42Aは設ける必要はなく、その場合は、上部支持盤は第1実施形態の上部支持盤14ままでもよい。
【0107】
図4に示すように、第4の実施形態に係るフライホイール蓄電装置40は第1の実施形態のフライホイール部2と発電電動機部3の集積で生まれた自由空間に支持盤41A、41Bによる仕切りを設け、その凹部42A、42Bに双方向インバータ部43A、43Bを収容する構成としたため、フライホイール部2と発電電動機部3と双方向インバータ部43A、43Bを総合した高い集積度が実現できる。
【0108】
更に、高速回転するフライホイール部2及び発電電動機部3の間に仕切りを設けたので、パワーエレクトロニクス回路である双方向インバータ部43A、43Bはフライホイール部2及び発電電動機部3から熱機械的な影響を受けずに安定して動作することができる。
【0109】
[第5の実施形態]
フライホイール蓄電装置のフライホイール部を高速に回転させると、フライホイール表面と大気との間で風損が発生して、回転数が低下し、蓄積エネルギー密度が低下する。これを防止するために、真空排気装置を外部に設置して、筐体(
図1においては、上部支持盤14A、下部支持盤14B、上部支持防御壁16A、下部支持防御壁16Bで囲まれた空間)の内部を排気することが考えられる。このようなフライホイール蓄電装置の場合、真空排気装置がシステムの一部に加わるから、真空排気装置の分だけ体積が増大し、システムの集積度(小型化の程度)が悪化する。
【0110】
第5の実施形態に係るフライホイール蓄電装置50は、この付加的問題を解決するためになされたもので、第1の実施形態または第2の実施実施形態におけるフライホイール蓄電装置1、20の回転シャフトと内部空きスペースを使って、排気装置たる周知の真空排気装置(例えば、螺旋溝分子ポンプ)を内蔵した。
【0111】
図5は第5の実施形態に係るフライホイール蓄電装置50を回転中心軸線4(Z軸)に沿って切断したときの断面図である。第1の実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0112】
51A、51Bはフライホイール蓄電装置50の上部回転シャフト、下部回転シャフトであり、51Cはカップリングシャフトである。上部回転シャフト51Aは脱着自在の上部軸受部52Aに支持され、下部回転シャフト51Bは脱着自在の下部軸受部52Bに支持されている。上部軸受部52A、下部軸受部52Bには通気孔53A、53Bが備えられている。
【0113】
脱着自在の上部、下部軸受部52A、52Bはそれぞれ上部支持盤54A、下部支持盤54Bに配設された円形開孔部55A、55Bに嵌入され、接続される。
【0114】
上部支持盤54Aには、前記上部フライホイールハブ8Aと間の上部空間をフライホイール空間60と上部軸受側空間60Aに仕切る、脱着自在の上部仕切り56Aが取り付けられている。上部仕切り56Aは中央に上部回転シャフト51Aを通す開孔部を有している。同様に下部支持盤54Bには、前記下部フライホイールハブ8Bとの間の下部空間をフライホイール側空間60と上部軸受側空間60Bに仕切る、脱着自在の下部仕切り56Bが取り付けられている。
【0115】
57Aは、排気装置として前記上部空間に配設した上部螺旋溝分子ポンプであって、螺旋溝テーパリング58Aと逆テーパ鞘リング59Aからなる。螺旋溝テーパリング58Aは上部回転シャフト51Aの所定の位置まで嵌め込まれる。
【0116】
一方、逆テーパ外鞘リング59Aは前記上部仕切り56Aの中央開孔部に嵌め込むか、リングは作らずに前記上部仕切り56Aの中央開孔部の側面を直接切削で逆テーパ外鞘としてもよい。第5図では中央開孔部の側面に逆テーパ鞘59Aを直接形成した例である。
【0117】
57Bは下部螺旋溝分子ポンプ、58Bは下部螺旋溝テーパリング、59Bは下部逆テーパ外鞘リングである。
【0118】
フライホイール蓄電装置50が作動し、フライホイール部2と回転シャフト51A、51Bが回り始めると、螺旋溝分子ポンプ57A、58Bが発動し、フライホイール空間60の空気が軸受側空間60A、60Bに排気され、しばらくするとフライホイール空間は真空に、軸受側空間は大気圧(外気圧)になる。フライホイール空間は真空に維持されるので、フライホイール表面で発生する風損を解消することができる。
【0119】
第5の実施形態においては、フライホイール蓄電装置50の空き空間を活用し、ここに外付け真空排気装置を収納する構成にしたため、真空排気装置の体積の削減が可能となる。これにより、一層集積度が高まり、飛躍的な小型化が可能となる。
【0120】
[第6の実施形態]
第4の実施形態では、第1の実施形態のフライホイール蓄電装置1が有していた空き空間に、双方向インバータ部43A、43Bを収納したフライホイール蓄電装置40を示した。一方、第5の実施形態では、第1の実施形態のフライホイール蓄電装置1の筐体内を真空とするために内部に排気装置である螺旋溝分子ポンプ57A、58Bを設けたフライホイール蓄電装置50を示した。
【0121】
次に説明する第6の実施形態は、第1の実施形態のフライホイール蓄電装置1の空き空間に、双方向インバータ部と排気装置との両方を収納して、集積度(小型化)を高めたものである。
【0122】
図6は、第6実施形態に係るフライホイール蓄電装置70を、回転中心軸線4(Z軸)4に沿って切断したときの断面図である。第1、第4、第5の各実施形態と同じ構成要素においては同じ符号を付してその説明は省略する。
【0123】
フライホイール蓄電装置70は、中央回転面6より上部の構成は、第5の実施形態のフライホイール蓄電装置50の上半部と同じであり、中央回転面6より下部の構成は、第4の実施形態のフライホイール蓄電装置40の下半部と同じである。
【0124】
上部には螺旋溝分子ポンプ57Aが組み込まれ、下部には双方向インバータ部43Bが組み込まれている。
【0125】
双方向インバータ部43Bの給電により発電電動機部3と回転シャフト51A、51Bが回り始めると、螺旋溝分子ポンプ57Aが発動し、フライホイール空間60の空気が軸受側空間60Aに排気され、しばらくするとフライホイール空間60は真空に、軸受側空間60Aは大気圧(外気圧)になる。フライホイール空間60は真空に維持されるので、フライホイール表面で発生する風損を解消することができる。
【0126】
第6の実施形態においては、第1の実施形態のフライホイール蓄電装置1の空き空間に外付け真空排気装置57Aと双方向インバータ部43Bとを収納する構成にしたため、外付け真空排気装置と外付け双方向インバータの体積の同時削減が可能となる。これにより、第1~第5の各実施形態に比べて一層高い集積度(小型化)を得ることができる。
【0127】
[第7の実施形態]
螺旋溝分子ポンプ57A、57Bを具備する前記第5の実施形態を示す
図5を参照すると、軸受部52A、52Bと仕切り56A、56Bとの間に自由空間が認められる。第7の実施形態は、この空間を活用して更に集積度(小型化)を高めたものである。
【0128】
図7は、第7の実施形態に係るフライホイール蓄電装置80を、回転中心軸線4(Z軸)4に沿って切断したときの断面図である。第1、第4、第5の各実施形態と同じ構成要素においては同じ符号を付してその説明は省略する。
【0129】
81Aは環状の上部軸受側空間60Aに配設された上部双方向インバータ部である。上部双方向インバータ部81Aは上部仕切り56Aまたは上部支持盤54Aに接続している。同様に、81Bは環状の下部軸受側空間60Bに配設された下部双方向インバータ部である。下部双方向インバータ部81Bは下部仕切り56Aまたは下部支持盤54Aに接続している。
【0130】
双方向インバータ部81A、81Bから給電により発電電動機部3と回転シャフト51A、51B、51Cが回り始めると、螺旋溝分子ポンプ57A、57Bが発動し、フライホイール空間60の空気が軸受側空間60A、60Bに排気され、しばらくするとフライホイール空間60は真空に、軸受側空間60A、60Bは大気圧(外気圧)になる。フライホイール空間60は真空に維持されるので、本実施形態は外付け真空排気装置なくてもフライホイール部2の表面で発生する風損を解消することができる。
【0131】
第7の実施形態においては、第1の実施形態のフライホイール蓄電装置1の空き空間に排気装置たる螺旋溝分子ポンプ57A、57Bと双方向インバータ部81A、81Bを収納する構成にしたため、外付け真空排気装置と外付け双方向インバータの体積の同時削減が可能となった。これにより、第1~第5の各実施形態に比べて一層高い集積度(小型化)を得ることができる。
【符号の説明】
【0132】
1,10,20,30,40,50,70,80…フライホイール蓄電装置
2…フライホイール部
3…発電電動機部
5A,5B,51A,51B…回転シャフト(支持軸)
8A,8B,22A,22B…フライホイールハブ
9A,9B…回転質量円輪
10,24…ステータ部
11i…無鉄心励磁誘導コイル
12A,12B…ロータ部
13Ai、13Bi…永久磁石列
21A,21B…静止シャフト(支持軸)
31…第1フライホイール蓄電器(第1蓄電ユニット)
32…第2フライホイール蓄電器(第2蓄電ユニット)
43A,43B…双方向インバータ部
57A,57B…螺旋溝分子ポンプ(排気装置)