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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071473
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/20 20060101AFI20220509BHJP
   F16B 5/08 20060101ALI20220509BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20220509BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
F16B2/20 A
F16B5/08 Z
F16B11/00 B
F16B19/00 E
F16B19/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180457
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】390025243
【氏名又は名称】ポップリベット・ファスナー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】松野 浩人
(72)【発明者】
【氏名】柴 大輔
(72)【発明者】
【氏名】沖賀 比呂志
(72)【発明者】
【氏名】島崎 洋明
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 怜
【テーマコード(参考)】
3J001
3J022
3J023
3J036
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001GA01
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JD04
3J001JD12
3J001KA21
3J001KB01
3J022DA15
3J022EA41
3J022EB02
3J022EC02
3J022ED02
3J022FB03
3J022FB08
3J022FB12
3J022HB02
3J023EA01
3J023FA01
3J023GA01
3J036AA03
3J036BA02
3J036BB07
3J036DA00
3J036DA04
(57)【要約】
【課題】2枚のパネルを接合するのに接着剤を使用する際に接着品質を安定させる。
【解決手段】2枚の板部材を接着剤により接合する際に支持するためのクリップであって、上側のクリップと下側のクリップとを備え、前記下側のクリップは、前記下側のクリップの上に配置される前記上側のクリップとの間に前記2枚の板部材の一方の板部材を支持するための上側支持部と、前記2枚の板部材の他方の板部材を前記下側のクリップの下側において支持する下側支持部と、前記上側支持部と前記下側支持部の間に延びる壁部とを備え、前記壁部は、前記2枚の板部材の間の距離を一定に維持すると共に、前記2枚の板部材の間の前記接着剤が、前記上側のクリップと前記下側のクリップとを締結する締結機構に流入するのを防ぐように構成されるクリップにより上記課題を解決する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の板部材を接着剤により接合する際に支持するためのクリップであって、
上側のクリップと下側のクリップとを備え、
前記下側のクリップは、
前記下側のクリップの上に配置される前記上側のクリップとの間に前記2枚の板部材の一方の板部材を支持するための上側支持部と、
前記2枚の板部材の他方の板部材を前記下側のクリップの下側において支持する下側支持部と、
前記上側支持部と前記下側支持部の間に延びる壁部とを備え、
前記壁部は、前記2枚の板部材の間の距離を一定に維持すると共に、前記2枚の板部材の間の前記接着剤が、前記上側のクリップと前記下側のクリップとを締結する締結機構に流入するのを防ぐように構成される
クリップ。
【請求項2】
前記締結機構は、前記下側のクリップの前記壁部に対して、前記接着剤とは反対側に配置される、請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記締結機構は、前記上側のクリップのフランジ部から延びるように形成された締結部を有しており、
前記締結部が、前記2枚の板部材の一方の板部材に設けられた穴と前記下側のクリップの上面に設けられた穴を貫通することにより、前記下側のクリップ及び前記上側のクリップを締結するように構成される、請求項1又は2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記締結機構は、前記下側のクリップの上面から上方に延びている突起部を有しており、
前記突起部が、前記2枚の板部材の一方の板部材に設けられた穴を貫通した状態で、前記上側のクリップを前記突起部に被せることにより、前記下側のクリップ及び前記上側のクリップを締結するように構成される、請求項1又は2に記載のクリップ。
【請求項5】
2枚の板部材を接着剤により接合する際にクリップを用いて支持する方法であって、
前記クリップは、上側のクリップと下側のクリップとを備えており、
前記2枚の板部材の一方の板部材を前記下側のクリップの下側において支持するステップと、
前記2枚の板部材の他方の板部材の下面に前記接着剤を塗布した状態で、前記他方の板部材の穴の位置が前記下側のクリップの上面に設けられた穴の位置に一致するように位置合わせすると共に、前記他方の板部材を前記下側のクリップの上面に当接させることにより、前記2枚の板部材を前記接着剤により接合するステップと、
前記上側のクリップに形成された締結部を前記他方の板部材の穴及び前記下側のクリップの上面に設けられた穴を通すことにより、前記上側のクリップと前記下側のクリップを締結するステップと
を備え、
前記下側のクリップに形成された壁部により、前記2枚の板部材の間の距離を一定に維持すると共に、前記2枚の板部材の間の前記接着剤が締結後の前記上側のクリップの前記締結部に流入するのを防ぐように構成される、
方法。
【請求項6】
2枚の板部材を接着剤により接合する際にクリップを用いて支持する方法であって、
前記クリップは、上側のクリップと下側のクリップとを備えており、
前記2枚の板部材の一方の板部材を前記下側のクリップの下側において支持するステップと、
前記2枚の板部材の他方の板部材の下面に前記接着剤を塗布した状態で、前記他方の板部材の穴に対して前記下側のクリップの上面に形成された突起部を貫通させると共に、前記他方の板部材を前記下側のクリップの上面に当接させることにより、前記2枚の板部材を前記接着剤により接合するステップと、
前記上側のクリップを前記下側のクリップに形成された前記突起部に被せることにより、前記上側のクリップと前記下側のクリップを締結するステップと
を備え、
前記下側のクリップに形成された壁部により、前記2枚の板部材の間の距離を一定に維持するように構成される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の金属パネル同士を接着剤により接合する際に用いるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
パネル接合構造に関して、特許文献1には、2枚のパネルの間に形成された空間に位置する接着剤により両パネルを接合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-94936号公報
【0004】
車両用の電池パック等を収納するケースのパネル接合構造は、上パネルと下パネルから構成され、電池パック等は上下のパネルの間に収納され、上パネルと下パネルは、それらの縁部分において上下のパネル間に形成された隙間に位置する接着剤により接合される。このとき、ケースの上パネルに凹み部を作成して、凹み部と下パネルとを当接させ、凹み部に隣接して凹んでいない領域に接着剤が塗布されている。このように、パネルの接合においては、上パネルの凹み部の深さにより接着剤の高さを規制することが行われている。
しかしながら、凹み部の成形は、凹み部のスペースを大きくとらないと成形できず、また、板金の為、バラつきが大きく接着剤の高さが一定にならないという問題がある。この点、電池パックを収納するケースは、密閉性が重要となっており、接着剤の高さが一定にならないという状況は、密閉性にも大きく影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、接着剤を用いて2枚のパネルを接合する際に接着品質を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明の1つの態様は、
2枚の板部材を接着剤により接合する際に支持するためのクリップであって、
上側のクリップと下側のクリップとを備え、
前記下側のクリップは、
前記下側のクリップの上に配置される前記上側のクリップとの間に前記2枚の板部材の一方の板部材を支持するための上側支持部と、
前記2枚の板部材の他方の板部材を前記下側のクリップの下側において支持する下側支持部と、
前記上側支持部と前記下側支持部の間に延びる壁部とを備え、
前記壁部は、前記2枚の板部材の間の距離を一定に維持すると共に、前記2枚の板部材の間の前記接着剤が、前記上側のクリップと前記下側のクリップとを締結する締結機構に流入するのを防ぐように構成される
クリップである。
【0007】
前記クリップにおいて、前記締結機構は、前記下側のクリップの前記壁部に対して、前記接着剤とは反対側に配置される。
【0008】
前記クリップにおいて、
前記締結機構は、前記上側のクリップのフランジ部から延びるように形成された締結部を有しており、
前記締結部が、前記2枚の板部材の一方の板部材に設けられた穴と前記下側のクリップの上面に設けられた穴を貫通することにより、前記下側のクリップ及び前記上側のクリップを締結するように構成される。
【0009】
前記クリップにおいて、
前記締結機構は、前記下側のクリップの上面から上方に延びている突起部を有しており、
前記突起部が、前記2枚の板部材の一方の板部材に設けられた穴を貫通した状態で、前記上側のクリップを前記突起部に被せることにより、前記下側のクリップ及び前記上側のクリップを締結するように構成される。
【0010】
本発明の別の態様は、
2枚の板部材を接着剤により接合する際にクリップを用いて支持する方法であって、
前記クリップは、上側のクリップと下側のクリップとを備えており、
前記2枚の板部材の一方の板部材を前記下側のクリップの下側において支持するステップと、
前記2枚の板部材の他方の板部材の下面に前記接着剤を塗布した状態で、前記他方の板部材の穴の位置が前記下側のクリップの上面に設けられた穴の位置に一致するように位置合わせすると共に、前記他方の板部材を前記下側のクリップの上面に当接させることにより、前記2枚の板部材を前記接着剤により接合するステップと、
前記上側のクリップに形成された締結部を前記他方の板部材の穴及び前記下側のクリップの上面に設けられた穴を通すことにより、前記上側のクリップと前記下側のクリップを締結するステップと
を備え、
前記下側のクリップに形成された壁部により、前記2枚の板部材の間の距離を一定に維持すると共に、前記2枚の板部材の間の前記接着剤が締結後の前記上側のクリップの前記締結部に流入するのを防ぐように構成される、
方法である。
【0011】
本発明の更なる別の態様は、
2枚の板部材を接着剤により接合する際にクリップを用いて支持する方法であって、
前記クリップは、上側のクリップと下側のクリップとを備えており、
前記2枚の板部材の一方の板部材を前記下側のクリップの下側において支持するステップと、
前記2枚の板部材の他方の板部材の下面に前記接着剤を塗布した状態で、前記他方の板部材の穴に対して前記下側のクリップの上面に形成された突起部を貫通させると共に、前記他方の板部材を前記下側のクリップの上面に当接させることにより、前記2枚の板部材を前記接着剤により接合するステップと、
前記上側のクリップを前記下側のクリップに形成された前記突起部に被せることにより、前記上側のクリップと前記下側のクリップを締結するステップと
を備え、
前記下側のクリップに形成された壁部により、前記2枚の板部材の間の距離を一定に維持するように構成される、
方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接着剤の潰し量を一定にし、接着強度のバラつきを少なくすることができ、また、接着剤に影響を受けない締結構造により、安定した接着品質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による下側のクリップの斜視図である。
図2図1の下側のクリップの上面図及び側面図である。
図3】本発明の実施形態による上側のクリップの斜視図である。
図4図3の上側のクリップの側面図及び下面図である。
図5】本発明の実施形態によるクリップを用いて2枚の板部材を固定する様子を示す図である。
図6】本発明の別の実施形態による下側のクリップの斜視図である。
図7図6の下側のクリップの側面図及び上面図である。
図8】本発明の別の実施形態による上側のクリップの斜視図である。
図9図8の上側のクリップの下面図及び側面図である。
図10】本発明の別の実施形態によるクリップを用いて2枚の板部材を固定する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明の実施形態によるクリップは、図1及び2に示す下側のクリップ100と、図3及び4に示す上側のクリップ200とから構成される。図5に示すように、下側のクリップ100と上側のクリップ200とは、組み合わされて2枚の板部材を支持するクリップとして機能する。例えば、本実施例に係るクリップは、車両用の電池パックのケースが、上パネルと下パネルから構成されているような場合に、上パネルと下パネルのそれぞれ板状の縁部分を接合する際に用いることができる。
まず、下側のクリップ100について説明し、次に、上側のクリップ200について説明する。続いて、下側のクリップ100と上側のクリップ200を用いて2枚の板部材を固定する様子について説明する。
【0015】
[下側のクリップ]
図1及び2を参照して、下側のクリップ100について説明する。本発明の実施形態による下側のクリップ100の斜視図について、図1(a)は、上方から見た斜視図を示しており、図1(b)は、下方から見た斜視図を示している。
【0016】
図1の下側のクリップ100について、図2(a)は上面図を示しており、図2(b)及び(c)は側面図を示している。
【0017】
図1に示されるように、下側のクリップ100は、上面板112と、下面板118と、側面板110と、側面板110と反対側の側面に幅の狭い側面支持部116とを有している。また、下側のクリップ100は、上面板112と下面板118の間に側面板110の下端から水平に延びる中間板117を有しており、中間板117と下面板118は、その間に板部材を挿入して支持することができるように構成される。また、下面板118は、板部材を挿入して支持する際に板部材の穴を通って板部材を支持する突起部119を有している。
【0018】
また、上面板112は、穴113を有しており、後述する上側のクリップ200の締結部212を板部材の穴と共に穴113に挿入することにより、板部材を支持すると共に上側のクリップ200と下側のクリップ100とを締結できるように構成されている。
【0019】
[上側のクリップ]
図3及び図4を参照して、上側のクリップ200について説明する。図3(a)は、上側のクリップ200について上方から見た斜視図を示しており、図3(b)は、下方から見た斜視図を示している。図4(a)は、図3の上側のクリップ200について側面図を示しており、図4(b)は下面図を示している。
【0020】
上側のクリップ200は、フランジ部210と、フランジ部210から延びる締結部212を有している。締結部212は、例えば、錨足で構成することができるが、他のものであってもよい。上側のクリップ200の締結部212は、上側のクリップ200と下側のクリップ100を締結する締結機構として機能する。具体的には、締結部212は、位置合わせされた板部材の穴と下側のクリップ100の穴113に挿入されることにより、上側のクリップ200と下側のクリップ100とを締結できるように構成されている。
【0021】
[クリップを用いた2枚の板部材の固定について]
図5を参照して、本発明に係るクリップを用いて2枚の板部材を固定する様子について説明する。
【0022】
まず、図5(a)のように、下側のクリップ100の中間板117と下面板118の間に2枚の板部材のうちの一方の板部材310を挿入して支持する。このとき、下面板118には、板部材310を取り付けるための突起部119があり、突起部119を板部材310の穴に挿入することにより、板部材310を支持することができる。
【0023】
次に、図5(b)のように、もう一方の板部材300の下面に接着剤330を塗布した後に、図5(c)のように、下側のクリップ100により板部材310を支持した状態で、下側のクリップ100の上面板112にもう一方の板部材300を当接させて配置する。このとき、板部材300には穴が設けられており、板部材300の穴と上面板112の穴113の位置を合わせるように板部材300の位置を調整する。板部材300の下面には接着剤330が塗布されており、接着剤330により、板部材300と板部材310と互いに接合することができる。
【0024】
次に、図5(d)のように、上側のクリップ200の締結部212を下側のクリップ100の上面板112の穴113及び板部材300の穴に挿入することにより、接着剤330によって接合されている板部材300と板部材310を支持することができる。
【0025】
板部材300に対する接着剤330の塗布位置については、下側のクリップ100の上面板112の上に板部材300を配置したときに、接着剤が下側のクリップ100の側面板110の外側の近傍に位置するように調整する。このように接着剤の位置を調整しておくことにより、接着剤330は、図5(c)及び(d)に示されるように、板部材300と板部材310の間に挟まれ、その一部は図面の左右方向に押し出され、下側のクリップ100の側面板110に付着する。このとき、側面板110は、接着剤330が下側のクリップ100の内側(図面の右側)に流入するのを防ぐための壁として機能する。
【0026】
締結部212は、上側のクリップ200と下側のクリップ100を締結する締結機構として機能するが、上側のクリップ200と下側のクリップ100の着脱を自在にするために、締結部212を接着剤により固定されないようにすることが望ましい場合がある。そのため、図5(d)に示されるように、締結部212は、接着剤330が付着しないように、接着剤330が塗布される位置から離れた下側のクリップ100の内側に配置されている。
【0027】
上述の通り、本発明では、下側のクリップ100の側面板110は、板部材300と板部材310との間に挟まれて押し出された接着剤330を下側のクリップ100の内側に流入させないように構成されている。したがって、下側のクリップ100の内側に、板部材300と板部材310との間に挟まれて押し出された接着剤330が流入することがなく、締結部212が下側のクリップ100の内側に上手く挿入できなくなる恐れがない。
【0028】
また、板部材300及び310は、図5の紙面に対する垂直方向に延びている。したがって、上側のクリップ200と下側のクリップ100を着脱する際には、側面板110の反対側の側面から、締結部212の締結を解除するように構成されていることが望ましい。具体的には、側面板110の反対側の側面にある側面支持部116は幅が狭くなっており、側面支持部116側から締結部212の締結を解除できるようにしてもよい。
【0029】
また、下側のクリップ100の側面板110は、高さ120を有しており、板部材300と板部材310との間の距離を一定に維持するように機能する。このように、板部材300と板部材310との間の距離を一定に維持することにより、図5(d)に示す通り、接着剤330が塗布される高さも一定に規制されることから、接着剤の潰し量を一定にすることが可能となり、接着品質を安定させることが可能となる。
【0030】
このように、下側のクリップ100の側面板110は、接着剤330を下側のクリップ100の内部に流入しないようにする機能と接着剤の塗布の高さを一定に維持する機能とを併せ持つものである。
【0031】
<変形例>
次に、本発明の別の実施形態によるクリップについて図6から10を参照して説明する。本実施形態によるクリップは、図6及び7に示す下側のクリップ400と、図8及び9に示す上側のクリップ500とからなる。図10に示すように、下側のクリップ400と上側のクリップ500とは、組み合わされてクリップとして機能し、2枚の板部材を固定する。例えば、本実施例に係るクリップは、車両用の電池パックのケースが、上パネルと下パネルから構成されているような場合に、上パネルと下パネルのそれぞれ板状の縁部分を接合する際に用いることができる。
【0032】
まず、下側のクリップ400について説明し、次に、上側のクリップ500について説明する。続いて、下側のクリップ400と上側のクリップ500を用いて2枚の板部材を固定する様子について説明する。
【0033】
[<変形例>下側のクリップ]
図6及び7を参照して、下側のクリップ400について説明する。図6は、本実施形態による下側のクリップ400の斜視図を示している。
【0034】
下側のクリップ400は、図1及び図2の下側のクリップ100と比較すると、突起部410を有している点で異なる。突起部410は、後述する上側のクリップ500に対する締結機構として機能し、上側のクリップ500内に挿入することにより、下側のクリップ400と上側のクリップ500を締結することができるように構成されている。
【0035】
下側のクリップ400は、図1及び図2に示される下側のクリップ100と同様に、上面板414と、下面板418と、側面板412とを有している。また、下側のクリップ400は、上面板414と下面板418の間に側面板412の下端から水平に延びる中間板417を有しており、中間板417と下面板418は、その間に板部材を挿入して支持することができるように構成される。また、下面板418は、板部材を挿入して支持する際に板部材の穴を通って板部材を支持する突起部419を有している。
【0036】
[<変形例>上側のクリップ]
図8及び9を参照して、上側のクリップ500について説明する。図8は、上側のクリップ500の斜視図を示しており、図9(a)は、上側のクリップ500の下面図を示しており、図9(b)は、上側のクリップ500の側面図を示している。
【0037】
上側のクリップ500は、下側のクリップ400の上面板414から上方に延びる突起部410をフランジ510側から挿入できるようになっており、上側のクリップ500と下側のクリップ400とを締結できるように構成されている。この点、上側のクリップ500に下側のクリップ400の突起部410を挿入したときに、爪520は、突起部410が抜けないよう下側から支持するように構成されている。
【0038】
[<変形例>クリップを用いた2枚の板部材の固定について]
図10を参照して、本実施例に係るクリップを用いて2枚の板部材を固定する様子について説明する。
【0039】
まず、図10(a)のように、下側のクリップ400の中間板417と下面板418の間に2枚の板部材のうちの一方の板部材310を挿入して支持する。このとき、下面板418には、板部材310を取り付けるための突起部419があり、突起部419を板部材310の穴に挿入することにより、板部材310を安定して支持することができる。
【0040】
次に、図10(b)のように、もう一方の板部材300の下面に接着剤330を塗布した後に、図10(c)のように、下側のクリップ400により板部材310を支持した状態で、もう一方の板部材300の穴に、下側のクリップ400の上面板414の突起部410を通し、板部材300の下面と下側のクリップ400の上面とを当接させる。このとき、板部材300の下面には接着剤330が塗布されており、接着剤330により、板部材300と板部材310を互いに接合することができる。
【0041】
次に、図10(d)のように、上側のクリップ500を下側のクリップ400の突起部410に被せる。このとき、爪520は、突起部410が抜けないように下側から支持することにより、結果として、上側のクリップ500から板部材300に対して下向きの力が加わり、板部材300及び板部材310に対する接着剤330による接合を支持することができる。すなわち、本実施例では、下側のクリップ400の突起部410と上側のクリップ500の爪520は、互いに締結機構として機能する。
【0042】
板部材300に対する接着剤330の塗布位置については、図5(b)の実施例と同様に、接着剤が下側のクリップ400の側面板412の外側の近傍に位置するように調整する。このように接着剤330の位置を調整しておくことにより、接着剤330は、板部材300と板部材310の間に挟まれ、その一部は下側のクリップ400の側面板412に付着するが、側面板412は、接着剤が下側のクリップ400の内側に流入するのを防ぐための壁として機能する。
【0043】
図10(d)のように、板部材300と板部材310が接着剤330によって接合され、更に、上側のクリップ500と下側のクリップ400により板部材300と板部材310を支持している状態では、突起部410は、接着剤330が塗布される位置から離れた下側のクリップ400の上側に配置されている。したがって、本実施例では、板部材300の下面に塗布されていた接着剤330は、締結時に突起部410に流入しないことを確実にしている。このように構成することにより、上側のクリップ500と下側のクリップ400の着脱を自在に行うことが可能となる。
【0044】
また、下側のクリップ400の側面板412は、高さ420を有しており、板部材300と板部材310との間の距離を一定に維持するように機能する。このように、板部材300と板部材310との間の距離を一定に維持することにより、図10(d)に示す通り、接着剤330が塗布される高さも一定に規制されることから、接着剤の潰し量を一定にすることが可能となり、接着品質を安定させることが可能となる。
【0045】
このように、下側のクリップ400の側面板412は、接着剤を下側のクリップ400の内部に流入しないようにする機能と接着剤の塗布の高さを一定に維持する機能とを併せ持つものである。
【0046】
なお、図6及び7に示されるように、下側のクリップ400の中間板417において、板部材310が挿入される入口部422は、中間板417と下面板418の間が幅広になるように傾斜がつけられていてもよい。このような入口部422の傾斜により、締結時に中間板417と下面板418の間に接着剤330が入り込むことにより、板部材310が接着剤330下側のクリップ400に固定されるように構成することができる。上述の通り、本実施例では、締結機構が接着剤330の位置から離れた下側のクリップ400の上側に配置されており、締結時に中間板417と下面板418の間に接着剤330が入り込むことを許容できる。
【0047】
以上のように、本発明に係るクリップの実施の一形態及び実施例について説明してきたが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、これに種々の変更を加え得るものであることは容易に理解される。そして、それらが特許請求の範囲の各請求項に記載した事項、及びそれと均等な事項の範囲内にある限り、当然に本発明の技術的範囲に含まれる。上記の実施例は、電池パック収納用のパネル等を締結対象とするものであったが、これはあくまでも一例であり、本発明がこの特定の具体例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
100 400 下側のクリップ
200 500 上側のクリップ
112 414 上面板
118 418 下面板
110 412 側面板
116 側面支持部
117 417 中間板
119 410 419 突起部
113 穴
212 締結部
300 310 板部材
422 入口部
520 爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10