(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071484
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】被ばく線量予測システム、被ばく線量予測方法及び被ばく線量予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/00 20060101AFI20220509BHJP
G01T 1/16 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G01T1/00 D
G01T1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180473
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 勝良
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB17
2G188BB19
2G188CC01
2G188JJ05
(57)【要約】
【課題】 本発明は、作業時の被ばく線量を高い精度で予測する被ばく線量予測システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
放射線量を測定する放射線測定装置11と、放射線測定装置11が放射線量を測定した3次元位置を測定し記憶する放射線量位置記録装置12と、作業者が作業する3次元位置と作業時間を測定し記憶する作業時間位置記録装置20と、放射線量位置記録装置12と作業時間位置記録装置20に記憶されたデータから作業者の被ばく線量を演算する被ばく線量演算装置30とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業場の放射線量を測定する放射線測定装置と、
前記放射線測定装置が放射線量を測定した3次元位置と、前記放射線測定装置が測定した放射線量とを関連付け、それを放射線量位置データとして記憶する放射線量位置記録装置と、
作業者が作業する前記作業場の3次元位置と作業時間とを関連付け、それを作業時間位置データとして記憶する作業時間位置記録装置と、
前記放射線量位置記録装置と前記作業時間位置記録装置に記憶されたデータから作業者の被ばく線量を演算する被ばく線量演算装置とを備えることを特徴とする被ばく線量予測システム。
【請求項2】
請求項1の被ばく線量予測システムにおいて、
前記放射線量位置記録装置は、
前記放射線測定装置の周囲の物体までの距離を検出する第1の環境センサと、
前記第1の環境センサの出力に基づいて前記放射線測定装置の周囲の物体の3次元形状を演算する第1の3Dマッピング処理部と、
前記第1の3Dマッピング処理部で演算された3次元形状と、前記作業場の3次元形状とをマッチングすることで、前記作業場において前記放射線測定装置が放射線量を測定した位置を演算する第1の自己位置推定処理部と、
前記第1の自己位置推定処理部で演算された位置と、当該位置で前記放射線測定装置によって測定された放射線量とを関連付け前記放射線量位置データを演算して出力する第1の情報統合処理部と、
前記放射線量位置データを記憶する第1の記憶装置とを備え、
前記作業時間位置記録装置は、
前記作業者の周囲の物体までの距離を検出する第2の環境センサと、
前記第2の環境センサの出力に基づいて前記作業者の周囲の物体の3次元形状を演算する第2の3Dマッピング処理部と、
前記第2の3Dマッピング処理部で演算された3次元形状と、前記作業場の3次元形状とをマッチングすることで、前記作業者の作業位置を演算する第2の自己位置推定処理部と、
前記第2の自己位置推定処理部で演算された位置と、当該位置における前記作業者の作業時間とを関連付け、前記作業時間位置データを演算して出力する第2の情報統合処理部と、
前記作業時間位置データを記憶する第2の記憶装置とを備え、
前記被ばく線量演算装置は、
前記放射線量位置記録装置から出力される前記放射線量位置データと、前記作業時間位置記録装置から出力される前記作業時間位置データとに基づいて、前記作業者の被ばく線量を演算する被ばく線量予測部と、
前記作業者の被ばく線量を保存する第3の記憶装置とを備える
ことを特徴とする被ばく線量予測システム。
【請求項3】
請求項2に記載の被ばく線量予測システムにおいて、
前記第1の環境センサと前記第2の環境センサの各々が、3Dカメラと赤外線センサと超音波センサのうち少なくとも1つを備えることを特徴とした被ばく線量予測システム。
【請求項4】
請求項1に記載の被ばく線量予測システムにおいて、
前記放射線量位置記録装置が、前記放射線測定装置の測定値を読み取る線量読取装置を備えることを特徴とした被ばく線量予測システム。
【請求項5】
請求項2に記載の被ばく線量予測システムにおいて、
前記第1の環境センサと前記第2の環境センサが、1つの環境センサであって、
前記1つの環境センサは、前記放射線測定装置が放射線量を測定した3次元位置と、前記作業者が作業する3次元位置とを、測定することを特徴とした被ばく線量予測システム。
【請求項6】
請求項1に記載の被ばく線量予測システムにおいて、
前記作業時間位置記録装置は、作業者の模擬作業の作業位置と作業時間とを記録することを特徴とした被ばく線量予測システム。
【請求項7】
作業場の放射線量を放射線測定装置に測定させる放射線量測定処理と、
前記放射線測定装置が放射線量を測定した3次元位置と、前記放射線量とを関連付け、それを放射線量位置データとして記憶する放射線量位置記憶処理と、
作業者が作業する3次元位置と作業時間とを関連付け、それを作業時間位置データとして記憶する作業時間位置記録処理と、
前記放射線量位置記憶処理と前記作業時間位置記録処理とにより記憶されたデータから作業者の被ばく線量を演算する被ばく線量演算処理とを備えることを特徴とする被ばく線量予測方法。
【請求項8】
請求項7に記載の被ばく線量予測方法において、
前記放射線量位置記憶処理は、
放射線測定装置の周囲の物体までの距離を検出し、
前記放射線測定装置の周囲の物体の3次元形状を演算し、
前記作業場の3次元形状と、前記放射線測定装置の周囲の物体の3次元形状とをマッチングすることで、前記作業場において前記放射線測定装置が放射線量を測定した位置を演算し、
前記作業場において前記放射線測定装置が放射線量を測定した位置と、当該位置で前記放射線測定装置によって測定された放射線量とを関連付け前記放射線量位置データを演算し、
前記放射線量位置データを第1の記憶装置に記憶し、
前記作業時間位置記録処理は、
作業者の周囲の物体までの距離を検出し、
前記作業者の周囲の物体の3次元形状を演算し、
前記作業場の3次元形状と、前記作業者の周囲の物体の3次元形状とをマッチングすることで、前記作業者の作業位置を演算し、
前記作業者の作業位置と、当該作業位置における前記作業者の作業時間とを関連付け、前記作業時間位置データを演算し、
前記作業時間位置データを第2の記憶装置に記憶し、
前記被ばく線量演算処理は、
前記放射線量位置記憶処理において第1の記憶装置に記憶された前記放射線量位置データと、前記作業時間位置記録処理において第2の記憶装置に記憶された前記作業時間位置データとに基づいて、前記作業者の被ばく線量を演算し、
前記作業者の被ばく線量を第3の記憶装置に記憶することを特徴とする被ばく線量予測方法。
【請求項9】
コンピュータに、
作業場において放射線測定装置が放射線量を測定した位置と当該位置で前記放射線測定装置によって測定された放射線量とを関連付けた放射線量位置データと、作業者が作業する3次元位置と作業時間とを関連付けた作業時間位置データとに基づいて、前記作業者の被ばく線量を演算し、前記作業者の被ばく線量を記憶装置に記憶する処理を実行させることを特徴とする被ばく線量予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の被ばく線量を予測する被ばく線量予測システム、被ばく線量予測方法及び被ばく線量予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などの放射線関連施設では、被ばく線量を予測して作業計画をする。そのため、被ばく線量を予測する装置やシステムが開発されている。例えば、特許文献1には、放射線照射施設内作業者被爆線量当量シミュレーション装置が開示されている。
【0003】
この放射線照射施設内作業者被爆線量当量シミュレーション装置は、まず、放射線照射施設内構造物の放射化物量から放射線照射施設内構造物表面での放射線源強度を計算する。次に、計算された放射線源強度から作業空間の任意の場所での線量率を計算する。そして、計算された線量率と、作業者の作業場所,作業手順,作業時間,移動場所,移動ルートなどの作業者動作データとから被ばく線量を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この放射線照射施設内作業者被爆線量当量シミュレーション装置は、計算した構造物表面での放射線源強度により作業空間の線量率を計算するため、作業空間の放射線量を直接測定していない。また、作業者動作データは3次元可視化機能を有する計算機上で疑似的に作成した作業員のモデルデータである。そのため、実際の作業員が行った動作データではない。したがって、予測された放射線被ばく量が、実際の放射線被ばく量と異なる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、作業時の被ばく線量を高い精度で予測する被ばく線量予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の被ばく線量予測システムは、作業場の放射線量を測定する放射線測定装置と、前記放射線測定装置が放射線量を測定した3次元位置と、前記放射線測定装置が測定した放射線量とを関連付け、それを放射線量位置データとして記憶する放射線量位置記録装置と、作業者が作業する前記作業場の3次元位置と作業時間とを関連付け、それを作業時間位置データとして記憶する作業時間位置記録装置と、前記放射線量位置記録装置と前記作業時間位置記録装置に記憶されたデータから作業者の被ばく線量を演算する被ばく線量演算装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業時の被ばく線量を高精度に予測することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態による被ばく線量予測システムのシステム構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による被ばく線量予測システムが実行する演算処理のフローチャートである。
【
図3】本発明の第1の実施形態による被ばく線量予測システムが実行する放射線量測定処理のフローチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施形態による被ばく線量予測システムが実行する作業時間位置記録処理のフローチャートである。
【
図5】本発明の第1の実施形態による被ばく線量予測システムが実行する被ばく線量演算処理のフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施形態による被ばく線量予測システムの3次元放射線測定データ収集装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の第1~第2の実施形態による被ばく線量予測システムの構成及び動作について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による被ばく線量予測システム100のシステム構成図である。被ばく線量予測システム100は、放射線関連施設等における作業者の被ばく線量を予測するシステムで、3次元放射線測定データ収集装置10と、作業時間位置記録装置20と、被ばく線量演算装置30とを備える。
【0012】
<3次元放射線測定データ収集装置>
3次元放射線測定データ収集装置10は、放射線関連施設等の建屋内の作業場の形状を3次元的に走査して、作業場の各位置の放射線量を測定し、作業場の各位置の放射線量の測定データを収集する装置で、放射線測定装置11と放射線量位置記録装置12を備える。
【0013】
放射線測定装置11は、放射線関連施設等の建屋内の作業場の各位置の放射線量を測定する可搬型放射線測定装置であり、例えば、電離箱方式のサーベイメータが利用可能である。検出対象となる放射線はγ線(X線を含む)及びβ線である。但し、他の放射線が検出されてもよい。放射線測定装置11により測定されたデータは、放射線量位置記録装置12に送信される。
【0014】
放射線量位置記録装置12は、作業場において放射線測定装置11により放射線量が測定された3次元位置と、その3次元位置において測定された放射線量とを関連付けて記憶する装置で、第1の環境センサ12aと放射線情報処理装置12bと第1の操作装置12cとを備える。
【0015】
第1の環境センサ12aは、放射線測定装置11の周囲の物体までの距離を検出して作業場の形状を3次元的に走査する三次元距離センサで、第1の3Dカメラ12aaと第1の赤外線センサ12abと第1の超音波センサ12acのうち少なくとも1つを備える。なお、第1の環境センサ12aに電波センサやレーザーセンサを用いても良い。
【0016】
第1の3Dカメラ12aaは、2つのカメラを用いて基準対象物を撮影し、2枚の画像の画素のズレを算出し、画素のズレをもとに、2つのカメラから被測定物までの角度の差(視差)を算出し、2つのカメラ間の距離(基線長)を計算する三次元距離センサである。第1の3Dカメラ12aaは、画面に写っているものなら距離を測定することができるため、遠距離の測定を容易にすることができる。
【0017】
第1の赤外線センサ12abは、赤外線を被測定物に照射し、それが反射して戻ってくる際のズレや時間を計測して距離を算出する三次元距離センサである。第1の赤外線センサ12abは、赤外線が届く範囲しか距離の測定ができないため、遠距離の測定が難しく、ホコリ等が舞うような環境でも測定が難しい。一方、暗い環境で測定することができる。
【0018】
第1の超音波センサ12acは、超音波を基準対象物に照射し、それが反射して戻ってくる際のズレや時間を計測して距離を算出する三次元距離センサである。第1の超音波センサ12acも、超音波が届く範囲しか距離の測定ができないため、遠距離の測定が難しく、音を吸収する物質(例えば、ポリウレタン)により形成された被測定物に対する測定が難しい。一方、ホコリ等が舞うような環境や暗い環境で測定することができる。
【0019】
放射線情報処理装置12bは、第1の環境センサ12aにより測定された距離データを3次元位置データに演算処理するとともに、放射線測定装置11により測定された放射線量を当該3次元位置データに関連付けて放射線量位置データとして記憶し出力する装置(例えば、コンピュータ)であり、第1の演算処理装置12baと第1の記憶装置12bbと第1の通信装置12bcとを備える。
【0020】
第1の演算処理装置12baは、第1の環境センサ12aにより出力された距離データを3次元位置データに演算処理するとともに、当該3次元位置データを放射線測定装置11により測定された放射線量に関連付ける演算処理を行うプロセッサであり、
図1には第1の演算処理装置12baによって実行される処理を機能ブロック図で示している。
図1に示すように、第1の演算処理装置12baは、第1の3Dマッピング処理部12baaと、第1の自己位置推定処理部12babと、第1の情報統合処理部12bacとして機能する。
【0021】
第1の3Dマッピング処理部12baaは、第1の環境センサ12aの出力に基づいて放射線測定装置11の周囲の物体の3次元形状を演算する。第1の自己位置推定処理部12babは、第1の3Dマッピング処理部12baaで演算された3次元形状と、予め測定され第1の記憶装置12bbに記憶されている作業場の3次元形状とをマッチングすることで、作業場において放射線測定装置11が放射線量を測定した位置(放射線量測定位置)を演算する。第1の情報統合処理部12bacは、第1の自己位置推定処理部12babで演算された位置と、当該位置で放射線測定装置11によって測定された放射線量とを関連付け、それを放射線量位置データとして演算して出力する。
【0022】
第1の記憶装置12bbは、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置やRAM等の揮発性の記憶装置であり、例えば第1の演算処理装置12baから出力された放射線量位置データを記憶する。なお、第1の記憶装置12bbには、放射線量位置データだけでなく、予め測定されていた作業場の3次元形状や、放射線測定装置11により測定された放射線量が記憶される。
【0023】
第1の通信装置12bcは、通信を行うための装置、例えば、有線LANモジュールや無線LANモジュールであり、次のデータ等の通信を行う。第1の通信装置12bcは、放射線測定装置11から出力された放射線量を受信する。放射線測定装置11から出力された放射線量は、第1の記憶装置12bbに記憶され、第1の演算処理装置12baに送信される。また、第1の通信装置12bcは、第1の演算処理装置12baにより演算され第1の記憶装置12bbに記憶された放射線量位置データを被ばく線量演算装置30に送信する。
【0024】
第1の操作装置12cは、放射線情報処理装置12bを操作するための入力装置であり、例えば、操作パネルである。
【0025】
<作業時間位置記録装置>
作業時間位置記録装置20は、模擬作業を行う作業者に装着させ、作業時の作業者の3次元位置と時間とを関連付けて記憶する装置であり、第2の環境センサ21と、タイマー22と、作業情報処理装置23と、第2の操作装置24とを備える。
【0026】
第2の環境センサ21は、作業者の周囲の物体までの距離を検出して作業場の形状を3次元的に走査する三次元距離センサであり、第2の3Dカメラ21aと第2の赤外線センサ21bと第2の超音波センサ21cのうち少なくとも1つを備える。なお、第2の3Dカメラ21aと第2の赤外線センサ21bと第2の超音波センサ21cの各々は、放射線量位置記録装置12の第1の環境センサ12aに備わる第1の3Dカメラ12aaと第1の赤外線センサ12abと第1の超音波センサ12acの各々と同様の機能と性質を備える。
【0027】
タイマー22は、模擬作業において作業者の作業場の各位置における滞在時間(以下、作業時間という。)を計測し、計測した作業時間を作業情報処理装置23に出力する時計である。例えば、第2の自己位置推定処理部23abで演算される作業者の位置変化(例えばその分散値)が所定の閾値内に収まっている場合には作業者の移動は無いものと判定され、タイマー22によって当該作業位置における作業者の滞在時間がカウントされる。
【0028】
また、作業情報処理装置23は、第2の環境センサ21により測定された距離データを3次元位置データに演算処理するとともに、タイマー22により計測された作業時間を3次元位置データに関連付けて作業時間位置データとして記憶し出力する装置、例えば、コンピュータで、第2の演算処理装置23aと第2の記憶装置23bと第2の通信装置23cとを備える。
【0029】
第2の演算処理装置23aは、第2の環境センサ21により出力された距離データを3次元位置データに演算処理するとともに、当該3次元位置データをタイマー22により計測された作業時間を3次元位置データに関連付ける演算処理を行うプロセッサであり、
図1に第2の演算処理装置23aによって実行される処理を機能ブロック図で示す。
図1に示すように、第2の演算処理装置23aは、第2の3Dマッピング処理部23aaと第2の自己位置推定処理部23abと第2の情報統合処理部23acとして機能する。
【0030】
第2の3Dマッピング処理部23aaは、第2の環境センサ21の出力に基づいて作業者の周囲の物体の3次元形状を演算する。第2の自己位置推定処理部23abは、第2の3Dマッピング処理部23aaで演算された3次元形状と、予め測定され第1の記憶装置12bbに記憶されていた作業場の3次元形状とをマッチングすることで、作業者の作業位置を演算する。第2の情報統合処理部23acは、第2の自己位置推定処理部23abで演算された位置と、当該位置における作業者の作業時間とを関連付け、それを作業時間位置データとして第2の記憶装置23bに記憶する。
【0031】
第2の記憶装置23bは、磁気ディスクドライブ、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置やDRAM等の揮発性の記憶装置で、作業時間位置データが記憶される。
【0032】
第2の通信装置23cは、通信を行うための装置、例えば、有線LANモジュールや無線LANモジュールで、第2の記憶装置23bに記憶された作業時間位置データを被ばく線量演算装置30に送信する。
【0033】
第2の操作装置24は、作業情報処理装置23を操作するための入力装置で、例えば、操作パネルである。
【0034】
<被ばく線量演算装置>
被ばく線量演算装置30は、放射線量位置記録装置12から出力される放射線量位置データと、作業時間位置記録装置20から出力される作業時間位置データとに基づいて、作業者の被ばく線量を演算し、その結果をデータベースに保存し表示する装置、例えば、コンピュータで、作業時放射線情報処理装置31と、第3の操作装置32と、表示装置33とを備える。
【0035】
作業時放射線情報処理装置31は、出力される放射線量位置データと、作業時間位置記録装置20から出力される作業時間位置データとに基づいて、作業者の被ばく線量を演算する装置で、第3の通信装置31aと、第3の演算処理装置31bと、第3の記憶装置31cとを備える。
【0036】
第3の通信装置31aは、通信を行うための装置、例えば、有線LANモジュールや無線LANモジュールで、放射線量位置記録装置12の第1の通信装置12bcから送信された放射線量位置データと、作業情報処理装置23の第2の通信装置23cから送信された作業時間位置データとを受信し、第3の演算処理装置31bに送信する。
【0037】
第3の演算処理装置31bは、放射線量位置データと作業時間位置データとから、作業者が被ばくすると予想される放射線量を演算するプロセッサであり、
図1には第3の演算処理装置31bによって実行される処理を機能ブロック図で示す。
図1に示すように、第3の演算処理装置31bは被ばく線量予測部31baとして機能する。
【0038】
被ばく線量予測部31baは、放射線量位置データと作業時間位置データから、作業者の作業位置における被ばく線量を算出し、それらを合算し、作業者の模擬作業における予測被ばく線量を演算処理する。例えば、被ばく線量予測部31baは、作業時間位置データに含まれる或る作業者の作業位置に一致する又は最も近い位置を、放射線量位置データに含まれる放射線量計測位置から選択し、当該選択した放射線量計測位置に関連づけられた放射線量に対して、作業時間位置データに含まれる当該或る作業者の当該作業位置における作業時間を乗算することで当該作業位置における被ばく線量を算出する。この被ばく線量の計算を当該或る作業者の全ての作業位置について行い、それらを全て積算することで当該或る作業者の模擬作業における予測被ばく線量とする。なお、放射線量位置データの放射線量計測位置に作業者の作業位置に近いものが無い場合には、複数の放射線量計測位置の放射線量の内挿または外挿により当該作業位置における放射線量を推定しても良い。
【0039】
第3の記憶装置31cは、磁気ディスクドライブ、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置で、被ばく線量予測部31baから出力された作業者の予測被ばく線量をデータベースとして保存する。
【0040】
第3の操作装置32は、被ばく線量演算装置30を操作するための入力装置で、例えば、キーボードとマウスである。また、表示装置33は、第3の記憶装置31cにデータベースとして保存された予測被ばく線量を表示する装置で、例えば、ディスプレイである。
【0041】
<被ばく線量予測方法>
図2は、被ばく線量予測システム100が実行する演算処理のフローチャートである。
図2を用いて、被ばく線量予測システム100が実行する演算処理について説明する。
【0042】
まず、放射線量測定処理(S110)において、放射線関連施設等の建屋内の作業場の各位置の放射線量を、放射線測定装置11により測定する。
【0043】
次の放射線量位置記憶処理(S120)において、作業場において放射線測定装置11により放射線量が測定された3次元位置と、その3次元位置において測定された放射線量とを関連付け、それらを放射線量位置データとして記録する。
【0044】
次の作業時間位置記録処理(S130)において、作業者に模擬作業を行わせ、作業者が作業する作業場の3次元位置と作業時間とを関連付け、それらを作業時間位置データとして記録する。
【0045】
次の被ばく線量演算処理(S140)において、放射線量位置記憶処理(S120)で記憶された放射線量位置データと作業時間位置記録処理(S130)で記憶された作業時間位置データから、作業者の作業位置における被ばく線量を算出し、それらを合算することにより作業者の模擬作業における予測被ばく線量を求め、データベースに保存して、被ばく線量予測システム100が実行する演算処理を終了する。
【0046】
以下に、被ばく線量予測システム100が実行する演算処理を構成する放射線量位置記憶処理(S120)と作業時間位置記録処理(S130)と被ばく線量演算処理(S140)を、図面を用いて詳細に説明する。
【0047】
<放射線量位置記憶処理>
図3は、被ばく線量予測システム100が実行する放射線量位置記憶処理(S120)のフローチャートである。
図3を用いて、放射線量位置記憶処理(S120)について説明する。
【0048】
まず、ステップS121において、第1の環境センサ12aにより、放射線測定装置11の周囲の物体までの距離を検出する。
【0049】
次のステップS122において、第1の演算処理装置12baの第1の3Dマッピング処理部12baaにより、第1の環境センサ12aの出力に基づいて放射線測定装置11の周囲の物体の3次元形状を演算する。
【0050】
次のステップS123において、第1の演算処理装置12baの第1の自己位置推定処理部12babにより、第1の3Dマッピング処理部12baaで演算された放射線測定装置11の周囲の物体の3次元形状と、予め測定され第1の記憶装置12bbに記憶されている作業場の3次元形状とをマッチングすることで、作業場において放射線測定装置11が放射線量を測定した位置を演算する。
【0051】
次のステップS124において、第1の演算処理装置12baの第1の情報統合処理部12bacにより、第1の自己位置推定処理部12babで演算された位置と、当該位置で放射線測定装置11によって測定された放射線量とを関連付けた放射線量位置データに演算して出力する。
【0052】
次のステップS125において、第1の記憶装置12bbにより放射線量位置データを記憶して、放射線量位置記憶処理(S120)を終了する。
【0053】
<作業時間位置記録処理>
図4は、被ばく線量予測システム100が実行する作業時間位置記録処理(S130)のフローチャートである。
図4を用いて、作業時間位置記録処理(S130)について説明する。
【0054】
まず、ステップS131において、第2の環境センサ21により、作業者の周囲の物体までの距離を検出する。
【0055】
次のステップS132において、第2の演算処理装置23aの第2の3Dマッピング処理部23aaにより、第2の環境センサ21の出力に基づいて作業者の周囲の物体の3次元形状を演算する。
【0056】
次のステップS133において、第2の演算処理装置23aの第2の自己位置推定処理部23abにより、第2の3Dマッピング処理部23aaで演算された作業者の周囲の物体の3次元形状と、予め測定され第2の記憶装置23bに記憶されている作業場の3次元形状とをマッチングすることで、作業場において作業者の位置を演算する。
【0057】
次のステップS134において、第2の演算処理装置23aの第2の情報統合処理部23acにより、第2の自己位置推定処理部23abで演算された位置と、当該位置における作業者の作業時間とを関連付けた作業時間位置データに演算して出力する。
【0058】
次のステップS135において、第2の記憶装置23bにより作業時間位置データを記憶して、作業時間位置記録処理(S130)を終了する。
【0059】
<被ばく線量演算処理>
図5は、被ばく線量予測システム100が実行する被ばく線量演算処理(S140)のフローチャートである。
図5を用いて、被ばく線量演算処理(S140)について説明する。
【0060】
まず、ステップS141において、放射線量位置記憶処理(S120)において第1の記憶装置12bbに記憶された放射線量位置データを収集する。
【0061】
次のステップS142において、作業時間位置記録処理(S130)において第2の記憶装置23bに記憶された作業時間位置データを収集する。
【0062】
次のステップS143において、放射線量位置データと作業時間位置データに基づき、作業者の作業位置における被ばく線量を算出し、それらを合算し、作業者の被ばく線量を演算する。
【0063】
次のステップS144において、被ばく線量予測部31baから出力された作業者の予測被ばく線量をデータベースである第3の記憶装置31cに保存して、被ばく線量演算処理(S140)を終了する。
【0064】
被ばく線量演算処理(S140)は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。被ばく線量演算処理(S140)をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータとしての被ばく線量演算装置30の第3の記憶装置31cにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のコンピュータなどが含まれる。
【0065】
なお、プログラムは、前記で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0066】
(効果)
本実施形態の被ばく線量予測システム100では、作業場の3次元位置の各々の放射線量は実測される。また、作業者動作データは、作業者を模擬作業させて計測される。したがって、予測された放射線被ばく量が実際の放射線被ばく量と異なる可能性を抑制でき、作業時の被ばく線量を高い精度で予測することができる。
【0067】
また、本実施形態の被ばく線量予測システム100は、第1の環境センサ12aが第1の3Dカメラ12aaと第1の赤外線センサ12abと第1の超音波センサ12acのうち少なくとも1つを備え、第2の環境センサ21が第2の3Dカメラ21aと第2の赤外線センサ21bと第2の超音波センサ21cのうち少なくとも1つを備える。そのため、作業場の環境に適した環境センサを随時選択することができる。
【0068】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態による被ばく線量予測システムの3次元放射線測定データ収集装置の構成図である。
【0069】
本実施形態に係る3次元放射線測定データ収集装置10aが第1実施形態の3次元放射線測定データ収集装置10と異なる点は、線量読取装置12dの有無である。
【0070】
即ち、第1実施形態の3次元放射線測定データ収集装置10では放射線測定装置11により測定されたデータは、第1の通信装置12bcにより受信され、第1の記憶装置12bbに記憶される。それに対し、本実施形態の3次元放射線測定データ収集装置10aでは放射線測定装置11により測定されたデータは、線量読取装置12dにより読み取られ、第1の記憶装置12bbに記憶される。
【0071】
これにより、本実施形態の3次元放射線測定データ収集装置10aは、放射線測定装置11に通信手段を備えない廉価な汎用品を用いることができ、コストの抑制をすることができる。
【0072】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0073】
具体的には、第1の環境センサと前記第2の環境センサが、1つの環境センサであって、この1つの環境センサは、放射線測定装置11が放射線量を測定した3次元位置と、作業者が作業する3次元位置とを、測定するようにしてもよい。これにより、コストを抑制することができる。また、この環境センサによれば、放射線量位置記憶処理(S120)と作業時間位置記録処理(S130)における放射線測定装置11と作業者の位置の測定を同時に行うため、作業工数を抑制することができる。
【符号の説明】
【0074】
100…被ばく線量予測システム、11…放射線測定装置、12…放射線量位置記録装置、20…作業時間位置記録装置、30…被ばく線量演算装置