(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071490
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
H05K3/46 X
H05K3/46 N
H05K3/46 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180479
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 一彦
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA43
5E316BB15
5E316CC02
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC33
5E316CC34
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316DD02
5E316DD25
5E316DD33
5E316EE31
5E316FF03
5E316FF07
5E316FF15
5E316GG15
5E316GG16
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH07
5E316HH31
(57)【要約】
【課題】小径のビアホールを形成でき、スミア除去性に優れ、ハローイング現象の発生が抑制された、プリント配線板の製造方法の提供。
【解決手段】(A)レーザーにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層に開口部を形成する工程、及び(B)開口部に、砥粒を用いるサンドブラスト処理を行い、ビアホールを形成する工程、をこの順で含む、プリント配線板の製造方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)レーザーにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層に開口部を形成する工程、及び
(B)開口部に、砥粒を用いるサンドブラスト処理を行い、ビアホールを形成する工程、をこの順で含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
砥粒の平均粒径が10μm以下である、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
開口部の深さが、絶縁層の厚みの50%以上95%以下である、請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
(B)工程は、マスクを通して開口部の底面に砥粒を衝突させてビアホールを形成する工程であり、
マスクの厚み及び開口部の深さの合計値と、ビアホールの開口径との比(合計値/開口径)が、3以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
絶縁層の23℃における弾性率が、0.1GPa以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
樹脂組成物が、無機充填材を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
無機充填材の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、20質量%以上である、請求項6に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
樹脂組成物が、硬化性樹脂を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
硬化性樹脂の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上である、請求項8に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含む、請求項8又は9に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
硬化剤が、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、及びシアネートエステル系樹脂から選択される1種以上である、請求項10に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
レーザーが、CO2レーザー、又はUV-YAGレーザーである、請求項1~11のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板においては、ビルドアップ層が複層化され、配線の微細化及び高密度化が求められている。ビルドアップ層は、絶縁層と導体層とを交互に積み重ねるビルドアップ方式により形成され、ビルドアップ方式による製造方法において、絶縁層は、樹脂組成物を熱硬化させることにより形成されるのが一般的である。
【0003】
内層回路基板の絶縁層の形成に適した樹脂組成物の提案は、例えば、特許文献1に記載されている樹脂組成物を含めて数多くなされてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プリント配線板を製造するにあたって、絶縁層にビアホールを形成することがある。「ビアホール」とは、通常、絶縁層を貫通する孔を表す。ビアホールを形成する方法として、レーザーを用いる方法が考えられる。
【0006】
レーザーにてビアホールを形成すると、ビアホール中にスミアと呼ばれる樹脂残渣が形成されうる。このスミアを除去するため、レーザーによるビアホールの形成後には、薬液を用いてスミアを除去するデスミア処理を行うことが通常である。本発明者は、レーザーを照射すると熱が発生し、この熱が、絶縁層及び内層回路基板の下地金属に伝わることでハローイング現象が生じることを見出した。ハローイング現象とは、ビアホールの周囲において絶縁層と内層回路基板との間で剥離が生じることをいう。このようなハローイング現象は、通常、ビアホールの周囲の樹脂が熱により劣化し、その劣化した部分が粗化液等の薬液に侵食されて生じる。なお、前記の劣化した部分は、通常変色部として観察される。
【0007】
また、サンドブラスト処理を用いてハローイング現象を抑制する方法が考えられるが、サンドブラスト処理にて小径のビアホールを形成することが困難であり、また、ビアホールの加工速度が遅いことがある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、小径のビアホールを形成でき、スミア除去性に優れ、ハローイング現象の発生が抑制された、プリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、レーザーにより開口部を形成した後にサンドブラスト処理にてビアホールを形成することで、スミア除去性に優れ、ハローイング現象を抑制できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の内容を含む。
[1] (A)レーザーにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層に開口部を形成する工程、及び
(B)開口部に、砥粒を用いるサンドブラスト処理を行い、ビアホールを形成する工程、をこの順で含む、プリント配線板の製造方法。
[2] 砥粒の平均粒径が10μm以下である、[1]に記載のプリント配線板の製造方法。
[3] 開口部の深さが、絶縁層の厚みの50%以上95%以下である、[1]又は[2]に記載のプリント配線板の製造方法。
[4] (B)工程は、マスクを通して開口部の底面に砥粒を衝突させてビアホールを形成する工程であり、
マスクの厚み及び開口部の深さの合計値と、ビアホールの開口径との比(合計値/開口径)が、3以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[5] 絶縁層の23℃における弾性率が、0.1GPa以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[6] 樹脂組成物が、無機充填材を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[7] 無機充填材の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、20質量%以上である、[6]に記載のプリント配線板の製造方法。
[8] 樹脂組成物が、硬化性樹脂を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[9] 硬化性樹脂の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上である、[8]に記載のプリント配線板の製造方法。
[10] 硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含む、[8]又は[9]に記載のプリント配線板の製造方法。
[11] 硬化剤が、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、及びシアネートエステル系樹脂から選択される1種以上である、[10]に記載のプリント配線板の製造方法。
[12] レーザーが、CO2レーザー、又はUV-YAGレーザーである、[1]~[11]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小径のビアホールを形成でき、スミア除去性に優れ、ハローイング現象の発生が抑制された、プリント配線板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、内層回路基板の主表面上に絶縁層及び支持体を形成させた様子の一例を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、工程(A)を行った後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、工程(B)を行った後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、従来のレーザー加工でビアホールを形成されるプリント配線板の、導体層を形成する直前の絶縁層を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、従来のレーザー加工でビアホールを形成されるプリント配線板の、導体層を形成する直前の絶縁層を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、内層回路基板の主表面上に絶縁層及び金属箔を形成させた様子の一例を示す模式断面図である。
【
図7】
図7は、金属箔にパターンエッチング処理を行った後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図8】
図8は、工程(A)を行った後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図9】
図9は、工程(B)を行った後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図10】
図10は、フィルドビアを形成した後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図11】
図11は、内層回路基板の主表面上に絶縁層、金属箔、及びドライフィルムを形成させた様子の一例を示す模式断面図である。
【
図12】
図12は、露光、現像した後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図13】
図13は、工程(A)を行った後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図14】
図14は、工程(B)を行った後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図15】
図15は、フィルドビアを形成した後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図16】
図16は、ドライフィルムを除去した後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図17】
図17は、内層回路基板の主表面上に絶縁層及びドライフィルムを形成させた様子の一例を示す模式断面図である。
【
図18】
図18は、露光、現像した後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図19】
図19は、工程(A)を行った後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図20】
図20は、工程(B)を行った後の様子の一例を示す模式断面図である。
【
図21】
図21は、フィルドビアを形成した後の様子の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0014】
本発明のプリント配線板の製造方法について詳細に説明する前に、本発明のプリント配線板の製造方法において使用される「樹脂組成物」及び「支持体付き樹脂シート」について説明する。
【0015】
[樹脂組成物]
硬化体の形成に用いられる樹脂組成物は、その硬化物である絶縁層が十分な硬度及び絶縁性を有するものであり得る。一実施形態において、樹脂組成物は、(a)無機充填材を含む。樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、(b)硬化性樹脂、(c)硬化促進剤、(d)熱可塑性樹脂、(e)エラストマー、及び(f)その他の添加剤を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0016】
<(a)無機充填材>
樹脂組成物は、(a)無機充填材を含有する。無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも炭酸カルシウム、シリカが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(a)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(a)成分の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」、「ASFP-20」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」、「SPH516-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0018】
(a)成分の比表面積としては、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0019】
(a)成分の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0020】
(a)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(a)成分の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0021】
(a)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤が好ましく、アミノシラン系カップリング剤がより好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0022】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0023】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0024】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0025】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0026】
(a)成分の含有量(質量%)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、50質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、80質量%以下である。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0027】
(a)成分の含有量(体積%)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは10体積%以上であり、より好ましくは30体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上であり、好ましくは90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下である。
【0028】
<(b)硬化性樹脂>
樹脂組成物は、(b)硬化性樹脂を含有していてもよい。(b)硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用され得る硬化性樹脂を用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0029】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等が挙げられる。(b)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。以下、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂のように、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させることができる樹脂を、まとめて「硬化剤」ということがある。樹脂組成物としては、誘電正接を低くする観点から、(b)成分として、エポキシ樹脂及び硬化剤を含むことが好ましい。
【0030】
(b)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
樹脂組成物は、(b)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(b)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0032】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(b)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0033】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0034】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0035】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0037】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0038】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR-991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(b)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1~1:20、より好ましくは1:0.3~1:10、特に好ましくは1:0.5~1:5である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、支持体付き樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、支持体付き樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0040】
(b)成分としてのエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分な硬化体をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0041】
(b)成分としてのエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0042】
(b)成分としてのエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化体を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0043】
(b)成分としての活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
【0044】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0045】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0046】
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0047】
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0048】
(b)成分としてのフェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
【0049】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0050】
(b)成分としてのベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
【0051】
(b)成分としてのシアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」、「PT30S」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)、「BADCy」(ビスフェノールAジシアネート)等が挙げられる。
【0052】
(b)成分としてのカルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216、V-05(カルボジイミド基当量:216)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0053】
(b)成分としてのアミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0054】
(b)成分としての酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0055】
(b)成分としての硬化剤としては、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、及び酸無水物系樹脂のいずれかが好ましく、活性エステル系樹脂、フェノール系樹脂、カルボジイミド系樹脂、及びナフトール系樹脂のいずれかが好ましく、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、及びシアネートエステル系樹脂から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0056】
(b)成分としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.1~1:3がより好ましく、1:0.3~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(b)成分として、エポキシ樹脂と硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、柔軟性に優れる硬化体を得ることができる。
【0057】
(b)成分としての硬化剤の含有量は、柔軟性に優れる硬化体を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0058】
(b)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは13質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0059】
<(c)硬化促進剤>
樹脂組成物は、任意の成分として(c)硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0061】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0062】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0063】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0064】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0065】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0066】
(c)硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0067】
なお、(b)成分としての硬化剤を含まない場合、(c)硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0068】
<(d)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物は、任意の成分として(d)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。(d)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
(d)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上、さらに好ましくは20000以上である。上限は、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下である。(d)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、(d)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0070】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0071】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0072】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0073】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0074】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0075】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0076】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0077】
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0078】
中でも、(d)熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。したがって好適な一実施形態において、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。中でも、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂が好ましく、重量平均分子量が10,000以上のフェノキシ樹脂が特に好ましい。
【0079】
(d)熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0080】
<(e)エラストマー>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、(e)エラストマーを用いてもよい。(e)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
(e)成分としては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリエステル構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂であることが好ましく、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリエステル構造、またはポリカーボネート構造から選択される1種または2種以上の構造を有する樹脂であることがより好ましく、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリエステル構造、及びポリカーボネート構造のいずれかを有する樹脂であることがさらに好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレート並びにそれらの組み合わせを包含する用語である。これらの構造は、エラストマー分子の主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。
【0082】
(e)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、高分子量であることが好ましい。(e)成分の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは3000以上、5000以上である。上限は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下である。数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0083】
(e)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、ガラス転移温度(Tg)が低いことが好ましい。(e)成分のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。好ましくは―60℃以上、より好ましくは―50℃以上、さらに好ましくは―45℃以上である。
【0084】
(e)成分は、(b)成分としてのエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させて剥離強度を高めるという観点から、(b)成分としてのエポキシ樹脂と反応し得る官能基を有することが好ましい。なお、エポキシ樹脂と反応し得る官能基としては、加熱によって現れる官能基も含めるものとする。
【0085】
好適な一実施形態において、(b)成分としてのエポキシ樹脂と反応し得る官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。中でも、当該官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基がより好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。ただし、官能基としてエポキシ基を含む場合、(e)成分の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上であることが好ましい。
【0086】
(e)成分の好適な実施形態は、ポリブタジエン構造を含有する樹脂であり、ポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂をポリブタジエン樹脂という。
【0087】
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。一実施形態として、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)、フェノール性水酸基含有ブタジエン等が挙げられる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0088】
(e)成分の好適な実施形態は、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂である。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂をポリ(メタ)アクリル樹脂という。ポリ(メタ)アクリル樹脂としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
【0089】
(e)成分の好適な実施形態は、ポリカーボネート構造を含有する樹脂である。ポリカーボネート構造を含有する樹脂をポリカーボネート樹脂という。ポリカーボネート樹脂としては、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0090】
また、(e)成分の他の実施形態としては、ポリシロキサン構造を含有する樹脂である。ポリシロキサン構造を含有する樹脂をシロキサン樹脂という。シロキサン樹脂としては、例えば、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0091】
(e)成分の他の実施形態としては、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂である。ポリアルキレン構造を含有する樹脂をポリアルキレン樹脂といい、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂をポリアルキレンオキシ樹脂という。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造がさらに好ましい。ポリアルキレン樹脂、ポリアルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
【0092】
(e)成分の他の実施形態としては、ポリイソプレン構造を含有する樹脂である。ポリイソプレン構造を含有する樹脂をポリイソプレン樹脂という。ポリイソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0093】
(e)成分の他の実施形態としては、ポリイソブチレン構造を含有する樹脂である。ポリイソブチレン構造を含有する樹脂をポリイソブチレン樹脂という。ポリイソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0094】
(e)成分の好適な実施形態は、ポリエステル構造を含有する樹脂である。ポリエステル構造を含有する樹脂をポリエステル樹脂という。ポリエステル樹脂としては、東洋紡社製の「バイロン600」、「バイロン560」、「バイロン230」、「バイロンGK-360」、「バイロンBX-1001」、三菱ケミカル社製の「LP-035」、「LP-011」、「TP-220」、「TP-249」、「SP-185」等が挙げられる。
【0095】
(e)エラストマーの含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0096】
<(f)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、難燃剤;有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;着色剤等の樹脂添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0097】
難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられ、ホスファゼン化合物が好ましい。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0098】
ホスファゼン化合物は、窒素とリンを構成元素とする環状化合物であれば特に限定されないが、ホスファゼン化合物は、フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物であることが好ましい。
【0099】
ホスファゼン化合物の具体例としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」「SPE-100」、伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-400」等が挙げられ、大塚化学社製の「SPH-100」が好ましい。
【0100】
ホスファゼン化合物以外の難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA-HQ」、大八化学工業社製の「PX-200」等が挙げられる。難燃剤としては加水分解しにくいものが好ましく、例えば、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド等が好ましい。
【0101】
難燃剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0102】
有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。有機充填材は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0103】
有機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0104】
樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等とともに、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0105】
[支持体付き樹脂シート]
支持体付き樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む。樹脂組成物は、[樹脂組成物]欄において説明したとおりである。
【0106】
樹脂組成物層の厚みは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。樹脂組成物層の厚みの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上等とし得る。
【0107】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0108】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0109】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0110】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0111】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等のアルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルム;デュポンフィルム社製の「U2-NR1」;等が挙げられる。
【0112】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0113】
一実施形態において、支持体付き樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0114】
支持体付き樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0115】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0117】
支持体付き樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。支持体付き樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0118】
[プリント配線板の製造方法]
本発明のプリント配線板の製造方法は、
(A)レーザーにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層に開口部を形成する工程、及び
(B)開口部に、砥粒を用いるサンドブラスト処理を行い、ビアホールを形成する工程、をこの順で含む。
【0119】
上記したが、絶縁層にビアホールを形成する方法として、レーザーを用いる方法が考えられる。レーザーのみを用いてビアホールを形成すると、レーザーを照射することにより発生する熱によりハローイング現象が生じることがある。また、レーザーを用いてビアホールを形成する方法以外に、サンドブラスト処理にてビアホールを形成する方法がある。サンドブラスト処理のみでビアホールを形成すると、ハローイング現象の発生を抑制することができるが、小径のビアホールを形成することが困難であり、また、ビアホールの加工速度が遅いことがある。
【0120】
本発明では、まず、レーザーにより絶縁層に開口部を形成し、次にサンドブラスト処理により開口部の底面に砥粒を衝突させてビアホールを形成することで、小径のビアホールを形成でき、スミア除去性に優れ、ハローイング現象の発生が抑制することが可能となる。また、レーザーによりビアホールの一部としての開口部を形成し、ビアホールの全体を形成しないことから、レーザーのショット数を減らすことができる。また、レーザーにより形成した開口部にサンドブラスト処理によりビアホールを形成することから、ビアホールの底部周辺での樹脂の劣化を抑制できるので、ハローイング現象の発生を抑制することができ、加工時間を短縮することも可能となる(ビア加工性)。
【0121】
工程(A)を行う前に、プリント配線板の製造方法は、
(1)内層回路基板を準備する工程及び
(3)内層回路基板の主表面上に、絶縁層を形成する工程
を含んでいてもよい。また、前記工程(3)での絶縁層の形成に利用するため、プリント配線板の製造方法は、
(2)支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、支持体付き樹脂シートを用意する工程、
をさらに含んでいてもよい。以下、プリント配線板の製造方法の各工程について説明する。
【0122】
<工程(1)>
工程(1)は、内層回路基板を準備する工程である。内層回路基板は、通常、支持基板と、支持基板の表面に設けられた金属層を備える。金属層は、内層回路基板の主表面に露出しており、この金属層があるエリアにビアホールが形成される。よって、内層回路基板の主表面においてビアホールが形成されるエリアは、金属層で形成される。
【0123】
支持基板の材料としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。金属層の材料としては、銅箔、キャリア付き銅箔、後述する導体層の材料等が挙げられ、銅箔が好ましい。
【0124】
内層回路基板の主表面の算術平均粗さ(Ra)としては、好ましくは500nm以下、より好ましくは450nm以下、さらに好ましくは400nm以下、350nm以下である。内層回路基板の主表面の算術平均粗さ(Ra)を500nm以下とすることで、主表面上に形成された絶縁層が内層回路基板の奥深くまで入り込むことを抑制でき、ビアホールの加工性を向上させることができる。下限については特に限定されないが、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。主表面の算術平均粗さ(Ra)は、ISO 25178に準拠して測定された値であり、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。内層回路基板の主表面とは、絶縁層が設けられる、内層回路基板の表面を表す。
【0125】
また、前記の算術平均粗さ(Ra)が主表面において一定でない場合、金属層が形成されたエリアでの主表面の算術平均粗さ(Ra)が前記の範囲にあればよく、ビアホールが形成されるエリアでの主表面の算術平均粗さ(Ra)が前記範囲にあることが好ましい。
【0126】
内層回路基板の主表面の十点平均粗さ(Rz)としては、好ましくは5000nm以下であり、より好ましくは4500nm以下、さらに好ましくは4000nm以下である。内層回路基板の主表面の十点平均粗さ(Rz)を5000nm以下とすることで、主表面上に形成された絶縁層が内層回路基板の奥深くまで入り込むことを抑制でき、絶縁信頼性を向上させることができる。下限については特に限定されないが、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは1000nm以上である。主表面の十点平均粗さ(Rz)は、ISO 25178に準拠して測定された値であり、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0127】
また、前記の十点平均粗さ(Rz)が主表面において一定でない場合、金属層が形成されたエリアでの主表面の十点平均粗さ(Rz)が前記の範囲にあることが好ましく、ビアホールが形成されるエリアでの主表面の十点平均粗さ(Rz)が前記範囲にあることがより好ましい。
【0128】
内層回路基板の主表面は、例えばエッチング処理、研磨を行うことで算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)を前記範囲に調整することができる。
【0129】
<工程(2)>
工程(2)は、支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、支持体付き樹脂シートを用意する工程である。支持体付き樹脂シートについては上記において説明したとおりである。
【0130】
<工程(3)>
工程(3)は、内層回路基板の主表面上に、絶縁層を形成する工程である。工程(3)では、例えば、内層回路基板の主表面上に、支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層を積層させ、樹脂組成物層を熱硬化させることで絶縁層を形成する。
【0131】
図1に一例を示すように、内層回路基板10は、支持基板11、及び支持基板11の表面に設けられた金属層12を備える。工程(3)では、内層回路基板10の主表面10a上に支持体付き樹脂シート(図示せず)を積層させ、樹脂組成物層を熱硬化させることで絶縁層22を形成する。通常、金属層12の表面上に絶縁層22が設けられるので、金属層12の支持基板11側の表面とは反対側の表面が主表面10aである。なお、
図1では金属層12は支持基板11の一方の表面に設けられているが、支持基板11の両表面に設けられていてもよい。
【0132】
内層回路基板と支持体付き樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から支持体付き樹脂シートを内層回路基板に加熱圧着することにより行うことができる。支持体付き樹脂シートを内層回路基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を支持体付き樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層回路基板の表面凹凸に支持体付き樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0133】
内層回路基板と支持体付き樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0134】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0135】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された支持体付き樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0136】
支持体付き樹脂シートを内層回路基板に積層した後、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0137】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0138】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0139】
絶縁層の厚みとしては、小径のビアホールを形成する観点から、25μm以下であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。絶縁層の厚みの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上等とし得る。
【0140】
なお、工程(3)では、樹脂シートを用いる方法の代わりに、内層回路基板の主表面上に直接樹脂組成物を塗布し、絶縁層を形成してもよい。その際の絶縁層を形成する条件は、支持体付き樹脂シートを用いて絶縁層を形成する条件と同様である。
【0141】
樹脂組成物層を200℃で90分間硬化させた絶縁層の23℃における弾性率は、ビア加工性を向上させる観点から、好ましくは0.1GPa以上、より好ましくは1GPa以上、より好ましくは3GPa以上であり、好ましくは30GPa以下、より好ましくは25GPa以下、さらに好ましくは20GPa以下である。弾性率は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0142】
支持体は、支持体付き樹脂シートを積層後熱硬化させる前に除去してもよく、工程(A)終了後に除去してもよく、支持体付き樹脂シートを積層後熱硬化させた後に除去してもよく、工程(B)のサンドブラスト処理にてマスクとして用いた後に除去してもよい。
【0143】
<工程(A)>
工程(A)は、レーザーにより、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層に開口部を形成する工程である。工程(A)の一実施形態として、
図2に一例を示すように、内層回路基板10の主表面10a上に形成された絶縁層22にレーザーを照射し、開口部30を形成する。
【0144】
レーザーの照射は、絶縁層22上にサンドブラスト処理用のマスクを設置した状態で行うことが好ましい。よって、工程(A)は、レーザーの照射の前に、絶縁層22上にマスクを形成する工程を含んでいてもよい。マスクとしては、例えば、ドライフィルム、金属箔、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。これらのマスクは、例えば、支持体を剥離した後に、ドライフィルム及び金属箔のいずれかを絶縁層上にラミネートすることによって、絶縁層22上に設けることができる。
【0145】
ドライフィルムとしては、露光及び現像によりパターンドライフィルムが得られるものが好ましく、後述する工程(B)におけるサンドブラスト処理に対して耐性があるフィルムであればより好ましい。また、ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができる。このようなドライフィルムとしては、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。
【0146】
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0147】
ドライフィルムのマスクの厚みとしては、ビアホールの加工性を向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0148】
金属箔等のマスクの厚みとしては、ビアホールの加工性を向上させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
【0149】
また、マスクとしては、支持体21を用いてもよい。支持体21をマスクとして用いる場合、支持体21とは別のマスクを設ける工程を省略できるので、製造方法を簡単にできる。本実施形態では、
図2に示すように、支持体21をマスクとして用いた例を示して説明する。
【0150】
開口部の深さaとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、絶縁層の厚みの50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。上限としては、絶縁層の厚みの95%以下であることが好ましく、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下である。開口部の深さとは、絶縁層のマスクと接する側の表面(
図2では支持体21)から開口部の底部までの距離をいう。開口部の深さは、絶縁層の非加工部と加工部の最も深い部分の差を断面観察して算出することで求めることができる。
【0151】
開口部の開口径bは、ビアホールの開口径(ビア径)になりうる。開口径bとしては、小径のビアホールを形成する観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは55μm以下であり、好ましくは、5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。なお、開口径bは、
図2に示すように絶縁層22の上端での径を表す。
【0152】
開口部の深さaと開口部の開口径bとの比(開口部の深さa/開口部の開口径b)としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.7以下である。
【0153】
開口部の形成に用いられ得るレーザー光源としては、例えば、CO2レーザー(炭酸ガスレーザー)、UV-YAGレーザー、UVレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。中でも、加工速度、コストの観点から、CO2レーザー、又はUV-YAGレーザーが好ましい。
【0154】
CO2レーザーを照射する場合、ショット数としては、ビア加工性を向上させる観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1である。ショット数を上記範囲内とするために、CO2レーザーのエネルギー及びパルス幅を一定値以上にすることが好ましい。CO2レーザーのエネルギーは、好ましくは0.3W以上、より好ましくは0.5W以上、さらに好ましくは1.0W以上であり、好ましくは30W以下、より好ましくは20W以下、さらに好ましくは15W以下である。また、CO2レーザーのパルス幅は、好ましくは3μsec以上、より好ましくは5μsec以上、さらに好ましくは8μsec以上であり、好ましくは40μsec以下、より好ましくは30μsec以下、さらに好ましくは20μsec以下である。
【0155】
UV-YAGレーザーを照射する場合、ショット数としては、ビア加工性を向上させる観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15である。ショット数を上記範囲内とするために、UV-YAGレーザーのエネルギー及びパルス幅を一定値以上にすることが好ましい。UV-YAGレーザーのエネルギーは、好ましくは0.05W以上、より好ましくは0.10W以上、さらに好ましくは0.15W以上であり、好ましくは20W以下、より好ましくは10W以下、さらに好ましくは5W以下である。
【0156】
ビアホールの形成は、市販されているレーザー装置を用いて実施することができる。市販されている炭酸ガスレーザー装置としては、例えば、日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」、三菱電機社製「ML605GTWII」、松下溶接システム社製の基板穴あけレーザー加工機が挙げられる。また、UV-YAGレーザー装置としては、例えば、ビアメカニクス社製「LU-2L212/M50L」等が挙げられる。
【0157】
工程(A)では、上述したように、支持体21等のマスクが設置された絶縁層22にレーザーを照射して開口部30を形成することが好ましい。よって、好ましくは、開口部30は、絶縁層22だけでなく、マスクにも連通して形成される。したがって、
図2に示す例のようにマスクとして支持体21を用いた場合、開口部30は、絶縁層22及び支持体21に連続して形成されうる。この場合、マスクの厚み(
図2では支持体21の厚み)及び開口部の深さaの合計値cと、工程(B)によって形成されるビアホールの開口径との比(合計値c/開口径)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2以下であり、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上である。ここで、マスクの厚みとは、工程(B)を行う前のマスクの厚みをいう。
【0158】
また、マスクの厚み及び開口部の深さaの合計値cと、工程(B)の前の開口部30の開口径bとの比(合計値c/開口径b)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2以下であり、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上である。
【0159】
マスクの厚み及び開口部の深さの合計値cとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、マスクと絶縁層との合計の厚みの50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。上限としては、マスクと絶縁層との合計の厚みの95%以下であることが好ましく、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下である。
【0160】
<工程(B)>
工程(B)は、開口部に、砥粒を用いるサンドブラスト処理を行い、ビアホールを形成する工程である。工程(B)の詳細な一実施形態として、マスクを通して開口部の底面に砥粒を衝突させてビアホールを形成する。マスクとしては、工程(A)により開口された支持体、ドライフィルム及び金属箔の少なくともいずれかであることが好ましく、支持体がより好ましい。
【0161】
図3に一例を示すように、工程(B)は、サンドブラスト処理を行い、開口部30の底面に砥粒を衝突させてビアホール40を形成する。ここで、サンドブラスト処理とは、支持体、ドライフィルム、又は金属箔等のマスクで覆われていない箇所の表面に、所定の圧力で噴射するエアーによって砥粒又は砥粒のスラリー溶液をノズルから噴射させ、この砥粒を絶縁層に衝突させ、ビアホールを形成する処理をいう。工程(B)におけるサンドブラスト処理は、砥粒を吹き付けるドライブラスト処理、及び砥粒のスラリー溶液を吹き付けるウェットブラスト処理のいずれであってもよいが、小径のビアホールを形成する観点から、ウェットブラスト処理であることが好ましい。
【0162】
サンドブラスト処理にて用いる砥粒の修正モース硬度としては、サンドブラスト処理により小径のビアホールを形成する観点から、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上、7以上である。上限値は通常15以下等としうる。砥粒の修正モース硬度は、例えばモース硬度計を用いて測定することができる。
【0163】
砥粒としては、シリカ、ガラス等の無機化合物;スチール、ステンレス、亜鉛、銅等の金属化合物;ガーネット、ジルコニア、炭化ケイ素、アルミナ、ボロンカーバイト等のセラミックス;ドライアイス等を主成分とした粒子等が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、無機化合物、セラミックスが好ましく、アルミナ、炭化ケイ素、及びシリカのいずれかが好ましい。シリカは、結晶シリカが好ましい。
【0164】
砥粒は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、デンカ社製「DAW-03」、日鉄ケミカル&マテリアル社製「AY2-75」(アルミナ);信濃電気精錬社製「GP#4000」、「SER-A06」(炭化ケイ素);龍森社製「IMSIL A-8」(結晶シリカ);不二製作所製「フジランダムWA」(溶融アルミナ)が挙げられる。
【0165】
砥粒の平均粒径としては、0.5μm以上であり、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。砥粒の平均粒径の下限値を斯かる範囲内とすることでビア加工性を向上させることができる。また、サンドブラスト処理における砥粒の吹き返しを抑制でき、マスクの研削を抑制することが可能となる。砥粒の吹き返しは、開口部に吹き付けられた砥粒が、開口部に侵入して戻ってくる気流の作用によって衝突速度を低下させる現象をいい、特に平均粒径の小さい砥粒においては顕著である。砥粒の平均粒径の上限値は、20μm以下であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。砥粒の平均粒径の上限値を斯かる範囲内とすることで、小径のビアホールの加工性を向上させることができる。砥粒の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡観察により測定することができ、詳細は、特開2008-41932号公報に記載の方法により行うことができる。
【0166】
砥粒を噴射する圧力(加工圧力)としては、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.15MPa以上であり、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.8MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。加工圧力を斯かる範囲内にすることで、加工時間を短縮することができる。ここでの加工圧力は、絶縁層表面における値である。
【0167】
ノズルとマスクとの距離としては、好ましくは200mm以下、より好ましくは190mm以下、さらに好ましくは180mm以下であり、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上である。前記の距離を斯かる範囲内にすることにより、効率的にビアホールを形成することができる。
【0168】
本発明の製造方法を用いれば、通常ビアホールのトップ径が小径のビアホールであっても、サンドブラスト処理の加工時間を短縮することができるという特性を示す。加工時間としては、好ましくは10分未満、より好ましくは8分以下、さらに好ましくは5分以下、5分未満である。下限は特に限定さないが、0.1分以上等とし得る。
【0169】
図3では、支持体21をマスクとする例と示したが、支持体21の代わりに金属箔及びドライフィルムのいずれかをマスクとして用いてもよい。
【0170】
<その他の工程>
プリント配線板を製造するに際しては、工程(B)終了後、(C)絶縁層を粗化処理する工程、(D)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(C)及び工程(D)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。また、必要に応じて、工程(A)~工程(D)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。さらに、プリント配線板の製造方法は、適切なタイミングでマスクを除去する工程を含んでいてもよい。通常、マスクは、工程(B)の後、工程(C)の前に、除去される。
【0171】
工程(C)は、絶縁層を粗化処理(デスミア処理ともいう)する工程である。通常、この工程(C)において、砥粒の除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」、「スウェリングディップ・セキュリガントP」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に1分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0172】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0173】
工程(D)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0174】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0175】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0176】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0177】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0178】
本発明のプリント配線板の製造方法は、工程(A)及び工程(B)を行うので、小径のビアホールを形成可能であるという特性を示す。ビアホールのトップ径(ビア径)としては、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは55μm以下であり、好ましくは、5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。ビア径の測定方法、評価の詳細は、後述する実施例に記載の方法にて行うことができる。
【0179】
本発明のプリント配線板の製造方法は、工程(A)及び工程(B)を行うので、スミア除去性に優れるという特性を示す。よって、本発明の方法によってビアホールを形成した後、膨潤液、粗化液及び中和液の順にて浸漬させるデスミア処理を行うと、ビアホール底部に樹脂残渣が見られない。スミア除去性の評価は、後述する実施例に記載の方法にて行うことができる。
【0180】
本発明のプリント配線板の製造方法は、ハローイング現象が抑制されるという特性を示す。具体的には、ビアホール径が上記範囲内と小径であっても、ハローイング現象を抑制することができる。以下、ハローイング現象について、図面を参照して説明する。
【0181】
図4は、レーザーでビアホールが形成された従来のプリント配線板の、導体層が形成される直前の絶縁層22の、金属層12(
図4では図示せず。)とは反対側の面22Uを模式的に示す平面図である。
図5は、レーザーでビアホールが形成された従来のプリント配線板の、導体層が形成される直前の絶縁層22を、内層回路基板の金属層12と共に模式的に示す断面図である。
図5においては、ビアホール40のビアボトム220の中心220Cを通り且つ絶縁層22の厚み方向に平行な平面で、絶縁層22を切断した断面を示す。
【0182】
図5に示すように、レーザーにてビアホール40を形成すると、レーザーの熱による樹脂の劣化に起因して変色部240が生じることがある。この変色部240は、粗化処理時に薬剤の浸食を受け、絶縁層22が金属層12から剥離し、ビアボトム220のエッジ250から連続した間隙部260が形成されることがある(ハローイング現象)。
【0183】
本発明では、レーザーにより開口部を形成した後に熱を生じにくいサンドブラスト処理を採用しているので、樹脂の劣化を抑制できる。よって、金属層12からの絶縁層22の剥離を抑制することができ、間隙部260のサイズを小さくできる。
【0184】
ビアボトム(ビアの底(ビア底))220のエッジ250は、間隙部260の内周側の縁部に相当する。よって、ビアボトム220のエッジ250から、間隙部260の外周側の端部(即ち、ビアボトム220の中心220Cから遠い側の端部)270までの距離Wbは、間隙部260の面内方向のサイズに相当する。ここで、面内方向とは、絶縁層22の厚み方向に垂直な方向をいう。また、以下の説明において、前記の距離Wbを、ビアホール40のビアボトム220のエッジ250からのハローイング距離Wbということがある。このビアボトム220のエッジ250からのハローイング距離Wbにより、ハローイング現象の抑制の程度を評価できる。具体的には、ビアボトム220のエッジ250からのハローイング距離Wbが小さいほど、ハローイング現象を効果的に抑制できたと評価できる。
【0185】
本発明の製造方法を用いれば、トップ径が50μm以下のビアホールを形成しても、絶縁層22のビアホール40のビアボトム220のエッジ250からのハローイング距離Wbを、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下にできる。下限は特に制限はないが、0μm以上、0.1μm以上等とし得る。
【0186】
本発明の製造方法は、
図6~
図10に一例を示すように、ビアホールとトレンチとを有するプリント配線板を製造することができる。詳細は、
図6に一例を示すように、工程(A)を行う前に内層回路基板10上に絶縁層22を形成し、更に金属箔60を絶縁層22上にラミネートする。金属箔60をラミネート後、
図7に一例を示すように金属箔60にパターンエッチング処理を行い、金属箔60の一部を除去し孔61を形成する。その後、
図8に一例を示すように金属箔60の所定の箇所にレーザーを照射する工程(A)を行い、開口部30を形成する。次に、
図9に一例を示すように工程(B)を行うことで、開口部30からビアホール40が形成されるとともに、サンドブラスト処理により孔61の底部に砥粒を衝突させてトレンチ50が形成される。その後、
図10に一例を示すように、ビアホール40及びトレンチ50を電解めっきにより埋め込んで、フィルドビア80を形成する。フィルドビア80の形成後、必要に応じて、金属箔60を除去してもよい。
また、支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層に金属箔をラミネートし樹脂組成物層付き金属箔を得、樹脂組成物層付き金属箔を内層回路基板にラミネートし、絶縁層及び金属箔を内層回路基板上に形成してもよい。
【0187】
また、本発明の製造方法は、
図11~
図16に一例を示すように、パターン導体層を有するプリント配線板を製造することができる。詳細は、
図11に一例を示すように、工程(A)を行う前に内層回路基板10上に絶縁層22を形成し、更に金属箔60及びドライフィルム70を絶縁層22上にラミネートする。金属箔60及びドライフィルム70をラミネート後、
図12に一例を示すように、ドライフィルム70の一部を露光・現像することでドライフィルム70の一部を除去した孔71を形成する。その後、
図13に一例を示すようにドライフィルム70の所定の箇所にレーザーを照射する工程(A)を行い、開口部30を形成する。次に、
図14に一例を示すように工程(B)を行うことで開口部30からビアホール40が形成される。工程(B)終了後、
図15に一例を示すように、ビアホール40及び孔71を電解めっきにより埋め込んでフィルドビア80を形成し、
図16に一例を示すようにドライフィルム(図示せず)を除去し、パターン導体層を形成する。前記の電解めっきのめっきシード層として、金属箔60を用いてもよい。
ドライフィルムを除去する前に、必要に応じてフィルドビア80の高さを調製するためにフィルドビア80の表面をバフ研磨等で研磨してもよい。
また、支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層に金属箔をラミネートし樹脂組成物層付き金属箔を得、樹脂組成物層付き金属箔を内層回路基板にラミネートし、絶縁層及び金属箔を内層回路基板上に形成してもよい。
【0188】
本発明の製造方法は、
図17~
図21に一例を示すように、ビアホールとトレンチとを有するプリント配線板を製造することができる。詳細は、
図17に一例を示すように、工程(A)を行う前に内層回路基板10上に絶縁層22を形成し、更にドライフィルム70を絶縁層22上にラミネートする。ドライフィル70をラミネート後、
図18に一例を示すようにドライフィルム70の一部に露光・現像することでドライフィルム70の一部を除去した孔71を形成する。その後、
図19に一例を示すようにドライフィルム70の所定の箇所にレーザーを照射する工程(A)を行い、開口部30を形成する。次に、
図20に一例を示すように工程(B)を行うことで開口部30からビアホール40が形成されるとともに、サンドブラスト処理により孔71の底部に砥粒を衝突させてトレンチ50が形成される。その後、
図21に一例を示すように、ビアホール40及びトレンチ50を電解めっきにより埋め込んでフィルドビア80を形成する。フィルドビア80の形成後、必要に応じて、ドライフィルム70を除去してもよい。
ドライフィルムを除去する前に、必要に応じてフィルドビア80の高さを調製するためにフィルドビア80の表面をバフ研磨等で研磨してもよい。
【0189】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、プリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明の製造方法により得られたプリント配線板を用いて製造することができる。
【0190】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0191】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0192】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例0193】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0194】
<合成例1:エラストマーの合成>
反応容器に、2官能性ヒドロキシ基末端ポリブタジエン(日本曹達社製「G-3000」、数平均分子量=3000、ヒドロキシ基当量=1800g/eq.)69gと、芳香族炭化水素系混合溶剤(出光石油化学社製「イプゾール150」)40gと、ジブチル錫ラウレート0.005gとを入れ、混合して均一に溶解させた。均一になったところで60℃に昇温し、更に撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製「IPDI」、イソシアネート基当量=113g/eq.)8gを添加し、約3時間反応を行った。
【0195】
次いで反応物に、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、水酸基当量=117g/eq.)23gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)60gとを添加し、攪拌しながら150℃まで昇温し、約10時間反応を行った。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温した。そして、反応物を100メッシュの濾布で濾過して、ブタジエン構造及びフェノール性水酸基を有するエラストマー(フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂:不揮発成分50質量%)を得た。エラストマーの数平均分子量は5900、ガラス転移点温度は-7℃であった。
【0196】
<支持体付き樹脂シート1の作製>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000-L」、エポキシ当量約269g/eq.)10部、液状1,4-グリシジルシクロヘキサン(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1658」、エポキシ当量約135g/eq.)10部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量約185g/eq.)10部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223g/eq.、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)50部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)6部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、固形分50質量%のトルエン溶液)10部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」)220部、リン系難燃剤(三光社製「HCA-HQ-HS」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド)1部、ゴム粒子(アイカ工業社製、スタフィロイドAC3816N)1部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)5部、メチルエチルケトン25部、シクロヘキサノン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を作製した。
【0197】
次いで、支持体である離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)の離型面上に、樹脂組成物層の厚みが40μmとなるように樹脂ワニス1を均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、支持体付き樹脂シート1を作製した。また、樹脂ワニス1の塗布厚みを変化させることで乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μm及び15μmの支持体付き樹脂シート1も作製した。
【0198】
<支持体付き樹脂シート2の作製>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000-L」、エポキシ当量約269g/eq.)30部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.)20部、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル製「jER1031S」、エポキシ当量約198g/eq.)5部、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-7054」、水酸基当量約125g/eq.、固形分60%のMEK溶液)10部、フェノールノボラック系硬化剤(DIC社製「TD2090」、水酸基当量約105g/eq.)6部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」)140部、リン系難燃剤(三光社製「HCA-HQ-HS」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド)5部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)3部、メチルエチルケトン25部、シクロヘキサノン15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス2を作製した。
【0199】
支持体付き樹脂シート1の作製において、樹脂ワニス1を樹脂ワニス2に変えた。以上の事項以外は支持体付き樹脂シート1の作製と同様にして支持体付き樹脂シート2を作製した。
【0200】
<支持体付き樹脂シート3の作製>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.)20部、ナフトール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」、エポキシ当量約332g/eq.)10部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量約185g/eq.)10部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000」、エポキシ当量約260g/eq.)20部、シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン社製「BA230S75」、シアネート当量約235g/eq.、不揮発成分75質量%のMEK溶液)10部、シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン社製「BADCy」、シアネート当量約142g/eq.)10部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223g/eq.、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)20部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」)170部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)3部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成社製)の1質量%のMEK溶液5部、メチルエチルケトン40部、シクロヘキサノン20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス3を作製した。
【0201】
支持体付き樹脂シート1の作製において、樹脂ワニス1を樹脂ワニス3に変えた。以上の事項以外は支持体付き樹脂シート1の作製と同様にして支持体付き樹脂シート3を作製した。
【0202】
<支持体付き樹脂シート4の作製>
フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「WHR-991S」、エポキシ当量約265g/eq.)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000-L」、エポキシ当量約269g/eq.)20部、合成例1で得たエラストマー50部、メタクリルシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM503」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.08μm、比表面積30.7m2/g、デンカ社製「UFP-30」)15部、リン系難燃剤(三光社製「HCA-HQ-HS」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド)5部、硬化促進剤(1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(四国化成工業社製「1B2PZ」)の固形分10質量%のメチルエチルケトン溶液)2部、メチルエチルケトン20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス4を作製した。
【0203】
支持体付き樹脂シート1の作製において、樹脂ワニス1を樹脂ワニス4に変えた。以上の事項以外は支持体付き樹脂シート1の作製と同様にして支持体付き樹脂シート4を作製した。
【0204】
<支持体付き樹脂シート5の作製>
支持体付き樹脂シート1の作製において、
1)アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」)220部を、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形アルミナ(平均粒径5.3μm、デンカ社製「DAW―0525」)270部に変え、
2)さらに、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形アルミナ(平均粒径0.3μm、デンカ社製「ASFP-20」)50部を用いた。
以上の事項以外は、支持体付き樹脂シート1の作製と同様にして支持体付き樹脂シート5を作製した。
【0205】
樹脂ワニス1~5の調製に用いた成分とその配合量(不揮発分の質量部)を下記表に示した。なお、(a)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の含有量を表す。
【0206】
【0207】
<弾性率の評価>
(1)評価用硬化物の作製
離型剤処理されたPETフィルム(リンテック社製「501010」、厚み38μm、240mm角)の離型剤未処理面に、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(パナソニック社製「R5715ES」、厚み0.7mm、255mm角)を重ね四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した(以下、「固定PETフィルム」ということがある。)。
【0208】
作製した樹脂厚み40μmの支持体付き樹脂シート1~5を、それぞれ上記「固定PETフィルム」の離型処理面上にバッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製、MVLP-500)を用いてラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0209】
次いで、支持体を剥離し、190℃のオーブンに投入後90分間の硬化条件で支持体付き樹脂シートを熱硬化させた。
【0210】
熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、硬化物をガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外し、更にPETフィルム(リンテック社製「501010」)も剥離して、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を「評価用硬化物」と称する。
【0211】
(2)弾性率の評価
得られた評価用硬化物を、日本工業規格(JIS K7127)に準拠し、テンシロン万能試験機(エー・アンド・デイ社製)により硬化物の引っ張り試験を行い、23℃における弾性率を測定した。
【0212】
<実施例1>
(1)支持体付き樹脂シートのラミネート
作製した樹脂厚み40μmの支持体付き樹脂シート1を、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製、MVLP-500)を用いて、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8201」)により銅表面の粗化処理を行った積層板の両面に樹脂組成物層が接するようにラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0213】
(2)樹脂組成物層の硬化
ラミネートされた支持体付き樹脂シートを180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化し絶縁層を形成した。
【0214】
(3)ビアホールの形成
(3-1)レーザーによる開口部の形成
CO2レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し開口部を形成した。絶縁層表面における開口部のトップ径(直径)は50μmであり、開口部の深さは30μmであった。なお、開口部の深さは、絶縁層の非加工部と加工部の最も深い部分の差を断面観察に算出することで求めた。
【0215】
(3-2)サンドブラスト処理
次に、砥粒として#2000のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径6.7μm)を用い、CO2レーザーにより開口された支持体をマスクとして、開口部にサンドブラスト加工を行い、ビアホール(トップ径(直径)は50μm)を形成した。サンドブラスト加工後に支持体を剥離し、評価用基板1を得た。
【0216】
<実施例2>
実施例1において、支持体付き樹脂シート1を支持体付き樹脂シート2に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価用基板2を得た。
【0217】
<実施例3>
実施例1において、支持体付き樹脂シート1を支持体付き樹脂シート3に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価用基板3を得た。
【0218】
<実施例4>
実施例1において、支持体付き樹脂シート1を支持体付き樹脂シート4に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価用基板4を得た。
【0219】
<実施例5>
実施例1において、支持体付き樹脂シート1を支持体付き樹脂シート5に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価用基板5を得た。
【0220】
<実施例6>
(1)樹脂組成物層付き銅箔の作製
キャリア付き銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンMTEx、銅箔の厚み3μm)上に、樹脂組成物層の厚みが40μmとなるように樹脂ワニス1を均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層付き銅箔を作製した。
【0221】
(2)樹脂組成物層付き銅箔のラミネート
得られた樹脂組成物層付き銅箔を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8201」)により銅表面の粗化処理を行った積層板の両面に真空加圧ラミネーター(名機社製、MVLP-500)を用いて樹脂組成物層が積層板に接するようにラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0222】
(3)樹脂組成物層の硬化
キャリア付き銅箔がラミネートされた樹脂組成物層を180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化し絶縁層を形成した。
【0223】
(4)ビアホールの形成
(4-1)レーザーによる開口部の形成
キャリアを剥離後、CO2レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し開口部を形成した。絶縁層表面における開口部のトップ径(直径)は50μmであり、開口部の深さは30μmであった。
【0224】
(4-2)サンドブラスト処理
次に、砥粒として#2000のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径6.7μm)を用い、CO2レーザーにより開口がされた銅箔をマスクとして、開口部のサンドブラスト加工を行い、ビアホール(トップ径(直径)は50μm)を形成した。サンドブラスト加工後に銅箔を剥離し、評価用基板6を得た。
【0225】
<実施例7>
(1)支持体付き樹脂シートのラミネート
作製した樹脂厚み40μmの支持体付き樹脂シート1を、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製、MVLP-500)を用いて、キャリア付き銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンMTEx、銅箔の厚み3μm)に樹脂組成物層が接するようにラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより樹脂組成物層付き銅箔を得た。
【0226】
(2)樹脂組成物層付き銅箔のラミネート
得られた樹脂組成物層付き銅箔を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8201」)により銅表面の粗化処理を行った積層板の両面に真空加圧ラミネーター(名機社製、MVLP-500)を用いて樹脂組成物層が積層板に接するようにラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0227】
(3)樹脂組成物層の硬化
樹脂組成物層を180℃、30分の硬化条件で硬化し絶縁層を形成した。
【0228】
(4)銅箔の開口部の形成
前記のマイクロエッチング剤によりエッチングして、キャリア付き銅箔の一部に、トレンチ形成用の開口部を形成した。
【0229】
(5)ビアホールの形成
(5-1)レーザーによる開口部の形成
CO2レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し開口部を形成した。絶縁層表面における開口部のトップ径(直径)は50μmであり、開口部の深さは30μmであった。
【0230】
(5-2)サンドブラスト処理
次に、砥粒として#2000のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径6.7μm)を用い、CO2レーザーにより開口がされた銅箔をマスクとして、開口部のサンドブラスト加工を行い、ビアホール(トップ径(直径)は50μm)を形成した。また、サンドブラスト加工により、トレンチ形成用の孔が形成された部分でも絶縁層が掘り込まれて、トレンチが形成された。サンドブラスト加工後に銅箔を剥離し、評価用基板7を得た。
【0231】
<実施例8>
実施例7において、(3)樹脂組成物層の硬化の後に以下の操作を行い、(4)銅箔の開口部の形成は行わなかった。以上の事項以外は実施例7と同様にして評価用基板8を得た。
【0232】
(4)ドライフィルムの積層
銅箔表面にドライフィルム(ニッコーマテリアルズ社製、NCM325、厚さ25μm)を貼り合わせた。ドライフィルムの積層は、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、30秒間減圧して気圧を13hPa以下にした後、圧力0.1MPa、温度70℃にて、20秒間加圧して行った。その後、トレンチパターンを有するガラスマスクをドライフィルムの保護層であるポリエチレンテレフタレートフィルム上に置き、UVランプにより照射強度20mJ/cm2にてUV照射を行った。UV照射後、25℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて噴射圧0.15MPaにて50秒間スプレー処理した。その後、水洗を行いトレンチパターン形成用の開口部を形成した。
【0233】
<実施例9>
(1)樹脂組成物層付き銅箔の作製
銅箔(JX金属社製、JDLC、厚み12μm)上に、樹脂組成物層の厚みが40μmとなるように樹脂ワニス1を均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層付き銅箔を作製した。
(2)銅箔付き樹脂組成物層付き銅箔銅箔のラミネート
得られた樹脂組成物層付き銅箔を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8201」)により銅表面の粗化処理を行った積層板の両面に真空加圧ラミネーター(名機社製、MVLP-500)を用いて樹樹脂組成物層が積層板に接するようにラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0234】
(3)樹脂組成物層の硬化
樹脂組成物層付き銅箔がラミネートされた積層板を180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化し絶縁層を形成し、銅箔および硬化層付き積層板を得た。
【0235】
(4)銅箔のハーフエッチング
銅箔および硬化層付き積層板を塩化鉄溶液で浸漬することで銅の厚みを12μmから5μmにするハーフエッチングを行い、付着した塩化鉄溶液を純水で洗い流した。
【0236】
(5)レーザー加工の前処理
続いて、レーザー加工用の前処理液(マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン社製、「MULTIBOND 100」)を用い、レーザー加工用の前処理加工を施した。
【0237】
(6)ビアホールの形成
(6-1)レーザーによる開口部の形成
CO2レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し開口部を形成した。絶縁層表面における開口部のトップ径(直径)は50μmであり、開口部の深さは30μmであった。
【0238】
(6-2)サンドブラスト処理
次に、砥粒として#2000のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径6.7μm)を用い、CO2レーザーにより開口がされた銅箔をマスクとして、開口部のサンドブラスト加工を行い、ビアホール(トップ径(直径)は50μm)を形成した。サンドブラスト加工後に銅箔を剥離し、評価用基板9を得た。
【0239】
<実施例10>
実施例9において、(4)銅箔のハーフエッチングを行わなかった。以上の事項以外は実施例9と同様にして評価用基板10を得た。
【0240】
<実施例11>
実施例1において、樹脂厚み40μmの支持体付き樹脂シート1を樹脂厚み20μmの支持体付き樹脂シート1に変え、
ビアホールの形成を以下のように行った。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価用基板11を得た。
【0241】
(1)ビアホールの形成
(1-1)レーザーによる開口部の形成
CO2レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し開口部を形成した。絶縁層表面における開口部のトップ径(直径)は30μmであり、開口部の深さは15μmであった。
【0242】
(1-2)サンドブラスト処理
次に、砥粒として#3000のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径4.0μm)を用い、CO2レーザーにより開口がされた支持体をマスクとして、開口部のサンドブラスト加工を行い、ビアホール(トップ径(直径)は30μm)を形成した。サンドブラスト加工後に支持体を剥離し、評価用基板11を得た。
【0243】
<実施例12>
実施例7おいて、樹脂厚み40μmの支持体付き樹脂シート1を、樹脂厚み15μmの支持体付き樹脂シート1に変え、
ビアホールの形成を以下のように行った。以上の事項以外は実施例7と同様にして評価用基板12を得た。
【0244】
(1)ビアホールの形成
(1-1)レーザーによる開口部の形成
UV-YAGレーザー加工機(ビアメカニクス社製「LU-2L212/M50L」)を使用し開口部を形成した。絶縁層表面における開口部のトップ径(直径)は20μmであり、開口部の深さは12μmであった。
【0245】
(1-2)サンドブラスト処理
次に、砥粒として#3000のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径4.0μm)を用い、UV-YAGレーザーにより開口がされた銅箔をマスクとして、開口部のサンドブラスト加工を行い、ビアホール(トップ径(直径)は20μm)を形成した。サンドブラスト加工後に銅箔を剥離し、評価用基板12を得た。
【0246】
<実施例13>
実施例12において、キャリア付き銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンMTEx、銅箔の厚み3μm)を、ドライフィルム(旭化成社製、商品名「ATP-10VTDS」、厚み10μm)に変えた。以上の以外は実施例12と同様に評価用基板13を得た。
【0247】
<実施例14>
実施例13において、UV-YAGレーザーにて開口部を形成する前に、マスクを用いてドライフィルムにトレンチパターン用の開口部を形成した。以上の事項以外は実施例13と同様に評価用基板14を得た。
【0248】
<実施例15>
実施例2において、樹脂厚み40μmの支持体付き樹脂シート2を樹脂厚み25μmの支持体付き樹脂シート2に変え、
ビアホールの形成を以下のように行った。以上の事項以外は実施例2と同様にして評価用基板15を得た。
【0249】
(1)ビアホールの形成
(1-1)レーザーによる開口部の形成
CO2レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し開口部を形成した。絶縁層表面における開口部のトップ径(直径)は30μmであり、開口部の深さは25μmであった。
【0250】
(1-2)サンドブラストによるビア加工
次に、砥粒として#3000のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径4.0μm)を用い、CO2レーザーにより開口がされた支持体をマスクとして、開口部のサンドブラスト加工を行い、ビアホール(トップ径(直径)は30μm)を形成した。サンドブラスト加工後に支持体を剥離し、評価用基板15を得た。
【0251】
<比較例1>
実施例1において、ビアホールの形成を以下のように行った。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価用基板16を得た。
【0252】
(1)ビアホールの形成
絶縁層を形成後、支持体であるPETフィルムを剥離した。支持体を剥離した絶縁層にUV-YAGレーザー加工機(ビアメカニクス社製「LU-2L212/M50L」)を使用しビアホールを形成し、評価用基板16を得た。なお、絶縁層表面におけるビアホールのトップ径(直径)は50μmであった。
【0253】
<比較例2>
実施例1において、ビアホールの形成を以下のように行った。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価用基板17を得た。
【0254】
(1)ビアホールの形成
CO2レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用しビアホールを形成し、評価用基板17を得た。なお、絶縁層表面におけるビアホールのトップ径(直径)は50μmであった。
【0255】
<比較例3>
実施例1において、ビアホールの形成を以下のように行った。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価用基板18を得た。
【0256】
(1)ビアホールの形成
(1-1)レーザーによる開口部の形成
CO2レーザー加工機(日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」)を使用し開口部を形成した。絶縁層表面における開口部のトップ径(直径)は50μmであり、開口部の深さは35μmであった。これを基板という。
【0257】
(1-2)デスミア処理
基板に、膨潤液である、アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに60℃で5分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で30分間浸漬させ、最後に中和液として、アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬することで開口部の底部を削り、ビアホールを形成した。
【0258】
<比較例4>
実施例1において、ビアホールの形成を以下のように行った。以上の事項以外は実施例1と同様にして評価用基板19を得た。
【0259】
(1)ビアホールの形成
(1-1)サンドブラスト用レジストによるビアパターンの形成
絶縁層表面にサンドブラスト用レジスト(ニッコーマテリアルズ社製、NCM250、厚さ50μm)を用いて直径50μmのビアが形成されるようパターニングを行った。
【0260】
(1-2)サンドブラスト処理
次に、砥粒として#2000のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径6.7μm)を用い、ビアパターンが形成されたサンドブラスト用レジストをマスクとして、ビア部分のサンドブラスト加工を行い、評価用基板19を得た。
【0261】
<比較例5>
比較例4において、(1)ビアホールの形成を以下のように行った。以上の事項以外は比較例4と同様にして評価用基板20を得た。
【0262】
(1)ビアホールの形成
(1-1)サンドブラスト用レジストによるビアパターンの形成
絶縁層表面にサンドブラスト用レジスト(ニッコーマテリアルズ社製、NCM250、厚さ50μm)を用いて直径150μmのビアが形成されるようパターニングを行った。
【0263】
(1-2)サンドブラストによるビア加工
次に、砥粒として#1200のアルミナ砥粒スラリー(平均粒径9.5μm)を用い、ビアパターンが形成されたサンドブラスト用レジストをマスクとして、ビア部分のサンドブラスト加工を行い、評価用基板20を得た。
【0264】
<ビア径の評価>
〇:100μm以下の開口径でビアホールの形成が可能なもの。
×:100μm以下の開口径でビアホールが形成できないもの。
【0265】
<スミア除去性の評価>
実施例および比較例で得られた評価用基板1~20を、膨潤液である、アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに60℃で5分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で15分間浸漬させ、最後に中和液として、アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。その後、電子顕微鏡でビアホールを観察し、以下の基準で評価した。
〇:ビアホール底部に樹脂残差が見られない。
×:ビアホール底部に樹脂残渣が見られる。
【0266】
<ハローイングの評価>
スミア除去性の評価後の評価用基板を、FIB-SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層を、当該絶縁層の厚み方向に平行で且つビアホールのビアボトムの中心を通る断面が現れるように削り出した。この断面をSEMによって観察した。観察された画像には、ビアボトムのエッジから連続して、絶縁層が内層基板の銅箔から剥離して形成された間隙部が見られるものがあった。そこで、ビアボトムのエッジから、間隙部の外周側の端部までの距離を、ハローイング距離として測定し、以下の基準で評価した。
〇:ハローイング距離が5μm以下。
×:ハローイング距離が5μmを超える。
【0267】
<ビア加工性の評価>
(1)CO2レーザーによるビア加工性評価
CO2レーザー加工によって開口部の深さが所定の深さとするために必要なショット数で評価し、以下の基準で評価した。
◎:ショット数が1。
〇:ショット数が2。
×:ショット数が3以上。
【0268】
(2)UV-YAGレーザーによるビア加工性評価
UV-YAGレーザー加工によって開口部の深さが所定の深さとするために必要なショット数で評価し、以下の基準で評価した。
〇:ショット数が20以下。
×:ショット数が20を超える。
【0269】
(3)サンドブラストによるビア加工性評価
開口部底部の絶縁層を除去し、積層板の導体層が露出するまでに必要なサンドブラスト加工時間で評価し、以下の基準で評価した。
◎:加工時間が5分未満。
〇:加工時間が5分以上10分未満。
×:加工時間が10分以上。
【0270】
【表2】
【表3】
*表中、「WB」はウェットブラスト処理を意味する。無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。