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特開2022-71514コントラスト改善機能を有する眼科用材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071514
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】コントラスト改善機能を有する眼科用材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220509BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20220509BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C08F2/44 B
G02C7/04
G02C7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180529
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾下 隆英
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏典
【テーマコード(参考)】
2H006
4J011
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BA06
2H006BB06
2H006BC06
2H006BE01
2H006BE05
4J011PA49
4J011PB25
4J011PC02
(57)【要約】
【課題】防眩性とコントラスト性を改善し得る、眼内レンズ用材料に好適なポリマーを提供することを課題とする。
【解決手段】黄色領域光吸収能を有する有機系色素と重合性モノマー一種又は二種以上とを共重合してなるポリマーであって、前記重合性モノマーがアクリル酸系モノマーを一種又は二種以上含む、ポリマー。前記重合性モノマーは芳香族基を有するアクリル酸系モノマーを一種又は二種以上含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄色領域光吸収能を有する有機系色素と重合性モノマー一種又は二種以上とを共重合してなるポリマーであって、
前記重合性モノマーがアクリル酸系モノマーを一種又は二種以上含む、ポリマー。
【請求項2】
前記有機系色素が、クロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm~605nmの間に主吸収ピーク(P)を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記有機系色素が、下記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物である、請求項2に記載のポリマー。
【化1】
[一般式(1)中、A~Aは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のモノアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数6~20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6~20のアルキルチオ基、炭素数6~20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。]
【請求項4】
前記テトラアザポルフィリン化合物が、前記一般式(1)におけるMが2価の銅原子である、請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
前記テトラアザポルフィリン化合物が、下記化学式(2)で表される化合物である、請求項3又は4に記載のポリマー。
【化2】
[式(2)中、Cuは2価の銅原子を、tBuはターシャリーブチル基を表し、その4個のターシャリーブチル基は式(2)におけるポルフィリン骨格中に存在する4個のピロール環の1個の炭素原子にそれぞれ1個ずつ結合していることを表す。]
【請求項6】
前記アクリル酸系モノマーが、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に30重量部以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記重合性モノマーが芳香族基を有するアクリル酸系モノマーを一種又は二種以上含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
前記芳香族基を有するアクリル酸系モノマーが、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に30重量部以上である、請求項7に記載のポリマー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマーを成形してなる、眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズに好適な、視認される物体のコントラストを改善し得るポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
白内障は水晶体に混濁及び色素の形成と沈着が生じることにより、視界全体に霧がかかったような状態になる疾病である。一般に、加齢とともに発症する可能性が高まることが知られている。
その治療方法として、白濁した水晶体を除去し、眼内レンズ(IOL:Intraocular Lens)を水晶体嚢中に挿入・設置する手術が一般的に行われている。
【0003】
人間の目の感度は、555nmの光で最も高くなるとされている。加齢とともに水晶体は黄変し、青色光が遮られるため、黄色が強調されて視える。相対的に網膜に到達する黄色光(585nm付近)が増え、眩しさを過度に感じやすくなる。
そのため、黄色光を遮ることにより、眩しさを抑えることが提案されている。具体的には、黄色領域光吸収能を有する有機系色素を可塑性組成物に含有させて、眼用レンズの材料とすることが提案されている(特許文献1、2等)。かかる色素により黄色光を遮ると、眩しさが軽減され、相対的に赤色や緑色が見えやすくなる。また、水晶体の黄変によりS錘体は影響を大きく受けて青色光の知覚が鈍るところ、黄色光を遮ることにより相対的に青色光の知覚が向上するので視認される物体のコントラスト感度が改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5778109号
【特許文献2】特開2019-66501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の通り水晶体の黄変は加齢に伴うため、高齢者に適用が想定される眼内レンズにおいても、防眩性とコントラスト性を向上させる要請がある。
しかしながら、眼内レンズ用材料には、手術時の挿入に適した柔らかさと、レンズの薄型化に耐えうる高い屈折率が求められるところ、従来の黄色光遮光能を有する材料では不十分であった。
係る状況において、本発明は、防眩性とコントラスト性を改善し得る、眼内レンズ用材料に好適なポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、黄色領域光吸収能を有する有機系色素とアクリル酸系モノマー、特に芳香族基を有するアクリル酸系モノマーを含む重合性モノマーとを共重合してなるポリマーが、前記課題を解決し得る眼内レンズ用材料として好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]黄色領域光吸収能を有する有機系色素と重合性モノマー一種又は二種以上とを共重合してなるポリマーであって、
前記重合性モノマーがアクリル酸系モノマーを一種又は二種以上含む、ポリマー。
[2]前記有機系色素が、クロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光ス
ペクトルにおいて、565nm~605nmの間に主吸収ピーク(P)を有する、[1]に記載のポリマー。
[3]前記有機系色素が、下記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物である、[2]に記載のポリマー。
【0008】
【化1】
[一般式(1)中、A~Aは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のモノアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数6~20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6~20のアルキルチオ基、炭素数6~20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。]
【0009】
[4]前記テトラアザポルフィリン化合物が、前記一般式(1)におけるMが2価の銅原子である、[3]に記載のポリマー。
[5]前記テトラアザポルフィリン化合物が、下記化学式(2)で表される化合物である、[3]又は[4]に記載のポリマー。
【0010】
【化2】
[式(2)中、Cuは2価の銅原子を、tBuはターシャリーブチル基を表し、その4個のターシャリーブチル基は式(2)におけるポルフィリン骨格中に存在する4個のピロール環の1個の炭素原子にそれぞれ1個ずつ結合していることを表す。]
【0011】
[6]前記アクリル酸系モノマーが、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に30重量部以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリマー。
[7]前記重合性モノマーが芳香族基を有するアクリル酸系モノマーを一種又は二種以上含む、[1]~[6]のいずれかに記載のポリマー。
[8]前記芳香族基を有するアクリル酸系モノマーが、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に30重量部以上である、[7]に記載のポリマー。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のポリマーを成形してなる、眼内レンズ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防眩性とコントラスト性を改善し得る、眼内レンズ用材料に好適なポリマーが得られる。かかるポリマーからは色素が溶出しにくいため、防眩性とコントラスト性が持続し、安全性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】溶出試験を4回繰り返した後の実施例1~2および比較例1の各ポリマーにおける紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
図2】溶出試験を4回繰り返した後の実施例3~6の各ポリマーにおける紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
図3】溶出試験を4回繰り返した後の実施例7~10の各ポリマーにおける紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
図4】試験例4における色素添加量と溶出処理後の残存量との関係を示すグラフである。
図5】溶出試験を4回繰り返した後の実施例11~14の各ポリマーにおける紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0015】
本発明のポリマーは、黄色領域光吸収能を有する有機系色素と重合性モノマー一種又は二種以上とを共重合してなるポリマーである。ここで、前記重合性モノマーがアクリル酸系モノマーを一種又は二種以上含むことを特徴とする。
本明細書において「アクリル酸系モノマー」とは、重合性基としてアクリロイル基を有する化合物を指す。
その含有量としては、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に好ましくは30重量部以上、より好ましくは40重量部以上、さらに好ましくは50重量部以上がアクリル酸系モノマーである。アクリル酸系モノマーの含有量の上限は、特に限定されず、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に100重量部がアクリル酸系モノマーであってもよい。これにより、ポリマーが眼内レンズに適した柔らかさ(ヤング率)を持つものになりやすく、また黄色領域光吸収能を有する有機系色素がポリマーに保持されやすい。
【0016】
アクリル酸系モノマーとしては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる:
アクリル酸;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、tert-ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、
ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェノキシアクリレート等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキルアクリレート類;
【0017】
ペンタメチルジシロキサニルメチルアクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピルアクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルアクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルアクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルアクリレート、トリス(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)シリルプロピルアクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリルアクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリルアクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリルアクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキサニルプロピルグリセリルアクリレート、トリメチルシリルメチルアクリレート、トリメチルシリルプロピルアクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリルアクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピルグリセリルアクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキサニルメチルアクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピルアクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルアクリレート等のシリコン含有アクリレート類;
【0018】
トリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、ペンタフルオロプロピルアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、テトラフルオロ-tert-ペンチルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、ヘキサフルオロ-tert-ヘキシルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、2,3,4,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ビス(トリフルオロメチル)ペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、2-ヒドロキシオクタフルオロ-6-トリフルオロメチルヘプチルアクリレート、2-ヒドロキシドデカフルオロ-8-トリフルオロメチルノニルアクリレート、2-ヒドロキシヘキサデカフルオロ-10-トリフルオロメチルウンデシルアクリレート等のフッ素含有アクリレート類;
【0019】
ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ジヒドロキシプロピルアクリレート、ジヒドロキシブチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート等のヒドロキシ基含有アクリレート類;
アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチル-N-アミノエチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;
アミノエチルアクリレート、N-メチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;
メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基含有アクリレート類;
ベンジルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェニルエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-アクリロイロキシプロピルフタル酸、2-アクリロイロキシエチル
-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール-アクリル酸-安息香酸エ
ステル、EO変性フェノール アクリレート、EO変性ノニルフェノール アクリレート、EO変性オルソフェニルフェノール アクリレート、EO変性トリブロモフェニルアクリ
レート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリ
レート等の芳香環含有アクリレート類;
グリシジルアクリレート;
テトラヒドロフルフリルアクリレート;
N-アクリロイルピペリジン;
N-アクリロイルモルホリン。
また、上記の重合性モノマーを一種又は二種以上選択して重合してマクロモノマーとし、それをポリマー製造用の重合性モノマーの1つとして用いることもできる。
【0020】
これらのアクリル酸系モノマーのうち芳香族基を有するものを重合性モノマーとして一種又は二種以上含むことが好ましい。これにより、ポリマーが眼内レンズに適した柔らかさ(ヤング率)を持つものになりやすい。
その含有量としては、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に好ましくは30重量部以上、より好ましくは40重量部以上、さらに好ましくは50重量部以上である。芳香族基を有するアクリル酸系モノマーの含有量の上限は、特に限定されず、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に96重量部以下、より好ましくは90重量部以下、さらに好ましくは80重量部以下であってよい。
芳香族基を有するアクリル酸系モノマーとしては、ベンジルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェニルエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-アクリロイロキ
シプロピルフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール-アクリル酸-安息香酸エステル、EO変性フェノール アクリレート、EO変性ノニルフェノール アクリレート、EO変性オルソフェニルフェノール アクリレート、EO変性トリブロモフェニルアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。
【0021】
本発明における重合性モノマーとしては、アクリル酸系モノマー以外のものを含んでもよい。他の重合性モノマーとしては、通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば以下のものが挙げられる。
メタクリル酸:
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、tert-ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシメタクリレート等の直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキルメタクリレート類;
【0022】
ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピルメタクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、トリス(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)シリルプロピルメタクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリルメタクリレート、モノ(メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリルメタクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキサニルプロピルグリセリルメタクリレート、トリメチルシリルメチルメタクリレート、トリメチルシリルプロピルメタクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリルメタクリレート、ペンタメチル
ジシロキサニルプロピルグリセリルメタクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピルメタクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート等のシリコン含有メタクリレート類;
【0023】
トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ペンタフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、テトラフルオロ-tert-ペンチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、ヘキサフルオロ-tert-ヘキシルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,3,4,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ビス(トリフルオロメチル)ペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、2-ヒドロキシオクタフルオロ-6-トリフルオロメチルヘプチルメタクリレート、2-ヒドロキシドデカフルオロ-8-トリフルオロメチルノニルメタクリレート、2-ヒドロキシヘキサデカフルオロ-10-トリフルオロメチルウンデシルメタクリレート等のフッ素含有メタクリレート類;
【0024】
スチレン、ペンタフルオロスチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、(ペンタメチル-3,3-ビス(トリメチルシロキシ)トリシロキサニル)スチレン、(ヘキサメチル-3-トリメチルシロキシトリシロキサニル)スチレン、ジメチルアミノスチレン等のスチレン誘導体類;
ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート等のヒドロキシ基含有メタクリレート類;
N-ビニルピロリドン、α-メチレン-N-メチルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-メタクリロイルピロリドン等のビニルラクタム類;
メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-エチル-N-アミノエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド類;
【0025】
アミノエチルメタクリレート、N-メチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルメタクリレート類;
メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート等のアルコキシ基含有メタクリレート類;
ベンジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、2-フェニルエチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート等の芳香環含有メタクリレート類;
イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のアルキル基、フッ素含有アルキル基、又はシロキサニルアルキル基で置換されていても良いアルキルエステル類;
グリシジルメタクリレート;
テトラヒドロフルフリルメタクリレート;
4-ビニルピリジン;
ビニルイミダゾール、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピペリジン、N-ビニルサクシンイミド等のヘテロ環式N-ビニルモノマー;
N-メタクリロイルピペリジン;
N-メタクリロイルモルホリン。
また、上記の重合性モノマーを一種又は二種以上選択して重合してマクロモノマーとし
、それをポリマー製造用の重合性モノマーの1つとして用いることもできる。
【0026】
また、他の重合性モノマーとして、重合性紫外線吸収剤(主に紫外線部分を吸収するもの)や重合性色素(紫外線吸収性能のない主に青色領域の光を吸収するもの)、あるいは重合性紫外線吸収性色素を用いることもできる。それにより、後述のように本発明のポリマーを眼内レンズ用材料に供する場合、眼内レンズの色調を調整したり、紫外線吸収能や青色領域光吸収能を付与したりできるため有用である。
【0027】
重合性紫外線吸収剤としては、例えば特開2003-253248号公報に開示のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤や特許第2685980号公報に開示のベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤を使用することができる。具体例としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-5-t-ブチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2’,4’-ジクロロベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2’-ヒドロキシ-3’-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-t-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(2”-メタクリロイルオキシエトキシ)-3’-t-ブチルフェニル)-5-メチル-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシメチル安息香酸フェニル等のサリチル酸誘導体系重合性紫外線吸収剤;2-シアノ-3-フェニル-3-(3’-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロペニル酸メチルエステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
重合性色素としては、例えば特開平10-148797号公報に開示のアゾ系、アントラキノン系、ニトロ系、フタロシアニン系の重合性色素を使用することができる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
重合性アゾ系色素としては、例えば、1-フェニルアゾ-4-(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1-フェニルアゾ-2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1-ナフチルアゾ-2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1-(α-アントリルアゾ)-2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1-((4’-(フェニルアゾ)-フェニル)アゾ)-2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1-(2’,4’-キシリルアゾ)-2-(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1-(o-トリルアゾ)-2-(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、2-(m-(メタ)アクリロイルアミド-アニリノ)-4,6-ビス(1’-(o-トリルアゾ)-2’-ナフチルアミノ)-1,3,5-トリアジン、2-(m-ビニルアニリノ)-4-(4’-ニトロフェニルアゾ)-アニリノ)-6-クロロ-1,3,5-トリアジン、2-(1’-(o-トリルアゾ)-2’-ナフチルオキシ)-4-(m-ビニルアニリノ)-6-クロロ-1,3,5-トリアジン、2-(p-ビニルアニリノ)-4-(1’-(o-トリルアゾ)-2’ナフチルアミノ)-6-クロロ-1,3,5-トリアジン、N-(1’-(o-トリルアゾ)-2’-ナフチル)-3-ビニルフタル酸モノアミド、N-(1’-(o-トリルアゾ)-2’-ナフチル)-6-ビニルフタル酸モノアミド、3-ビニルフタル酸-(4’-(p-スルホフェニルアゾ)-1’-ナフチル)モノエステル、6-ビニルフタル酸-(4’-(p-スルホフェニルアゾ)-1’-ナフチル)モノエステル、3-(メタ)アクリロイルアミド-4-フェニルアゾフェノール、3-(メタ)アクリロイルアミド-4-(8’-ヒドロキシ-3
’,6’-ジスルホ-1’-ナフチルアゾ)-フェノール、3-(メタ)アクリロイルアミド-4-(1’-フェニルアゾ-2’-ナフチルアゾ)-フェノール、3-(メタ)アクリロイルアミド-4-(p-トリルアゾ)フェノール、2-アミノ-4-(m-(2’-ヒドロキシ-1’-ナフチルアゾ)アニリノ)-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-(N-メチル-p-(2’-ヒドロキシ-1’-ナフチルアゾ)アニリノ)-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-(m-(4’-ヒドロキシ-1’-フェニルアゾ)アニリノ)-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-(N-メチル-p-(4’-ヒドロキシフェニルアゾ)アニリノ)-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-(m-(3’-メチル-1’-フェニル-5’-ヒドロキシ-4’-ピラゾリルアゾ)アニリノ)-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-(N-メチル-p-(3’-メチル-1’-フェニル-5’-ヒドロキシ-4’-ピラゾリルアゾ)アニリノ)-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-(p-フェニルアゾアニリノ)-6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン、4-フェニルアゾ-7-(メタ)アクリロイルアミド-1-ナフトール等が挙げられる。
【0029】
重合性アントラキノン系色素の具体例としては、例えば、1,5-ビス((メタ)アクリロイルアミノ)-9,10-アントラキノン、1-(4’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、4-アミノ-1-(4’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、5-アミノ-1-(4’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、8-アミノ-1-(4’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、4-ニトロ-1-(4’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、4-ヒドロキシ-1-(4’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1-(3’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1-(2’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1-(4’-イソプロペニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1-(3’-イソプロペニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1-(2’-イソプロペニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1,4-ビス(4’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1,4-ビス(4’-イソプロペニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1,5’-ビス(4’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1,5-ビス(4’-イソプロペニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1-メチルアミノ-4-(3’-ビニルベンゾイルアミド)-9,10-アントラキノン、1-メチルアミノ-4-(4’-ビニルベンゾイルオキシエチルアミノ)-9,10-アントラキノン、1-アミノ-4-(3’-ビニルフェニルアミノ)-9,10-アントラキノン-2-スルホン酸、1-アミノ-4-(4’-ビニルフェニルアミノ)-9,10-アントラキノン-2-スルホン酸、1-アミノ-4-(2’-ビニルベンジルアミノ)-9,10-アントラキノン-2-スルホン酸、1-アミノ-4-(3’-(メタ)アクリロイルアミノフェニルアミノ)-9,10-アントラキノン-2-スルホン酸、1-アミノ-4-(3’-(メタ)アクリロイルアミノベンジルアミノ)-9,10-アントラキノン-2-スルホン酸、1-(β-エトキシカルボニルアリルアミノ)-9,10-アントラキノン、1-(β-カルボキシアリルアミノ)-9,10-アントラキノン、1,5-ジ-(β-カルボキシアリルアミノ)-9,10-アントラキノン、1-(β-イソプロポキシカルボニルアリルアミノ)-5-ベンゾイルアミド-9,10-アントラキノン、2-(3’-(メタ)アクリロイルアミド-アニリノ)-4-(3’-(3”-スルホ-4”-アミノアントラキノン-1”-イル)-アミノ-アニリノ)-6-クロロ-1,3,5-トリアジン、2-(3’-(メタ)アクリロイルアミド-アニリノ)-4-(3’-(3”-スルホ-4”-アミノアントラキノン-1”-イル)-アミノ-アニリノ)-6-ヒドラジノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス-((4”-メトキシアントラキノン-1”-イル)-アミノ)-6-(3’-ビニルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2-(2’-ビニルフェノキシ)-4-(4’-(
3”-スルホ-4”-アミノアントラキノン-1”-イル-アミノ)-アニリノ)-6-クロロ-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0030】
重合性ニトロ系色素の具体例としては、例えば、o-ニトロアニリノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
重合性フタロシアニン系色素の具体例としては、例えば(メタ)アクリロイル化テトラアミノ銅フタロシアニン、(メタ)アクリロイル化(ドデカノイル化テトラアミノ銅フタロシアニン)等が挙げられる。
【0031】
重合性紫外線吸収性色素の具体例としては、例えば、2,4-ジヒドロキシ-3(p-スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(p-スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(p-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(p-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(p-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(p-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(p-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(p-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(o-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(o-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(o-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(o-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(o-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(o-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(p-(N,N-ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(p-(N,N-ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(o-(N,N-ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(o-(N,N-ジ(メタ)アクリロイルエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(p-(N-エチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(p-(N-エチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(o-(N-エチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(o-(N-エチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(p-(N-エチル-N-(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(p-(N-エチル-N-(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-(o-(N-エチル-N-(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシ-5-(o-(N-エチル-N-(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収色素や、2-ヒドロキシ-4-(p-スチレノアゾ)安息香酸フェニル等の安息香酸系重合性紫外線吸収色素等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
本発明における黄色領域光吸収能を有する有機系色素は、特定の吸収挙動を示すものが好ましい。
具体的には、前記有機系色素は、クロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm~605nmの間に主吸収ピーク(P)を有する
ものである。
好ましくは、前記有機系色素は、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax:ピーク中で最大吸光係数を示す点)の吸光係数(ml/g・cm)が0.5×10以上であり、該ピーク(P)の(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が50nm以下であり、かつ該ピーク(P)の(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が30nm以下であり、かつ該ピーク(P)の(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下の範囲となるものである。
【0033】
より好ましくは、前記有機系色素は、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)が580nm~590nmの間であるとよい。また、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が40nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が25nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下であってもよい。
【0034】
かかる吸収挙動を示す有機系色素としては、下記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物を好ましく挙げられる。
【0035】
【化3】
【0036】
一般式(1)中、A~Aは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のモノアルキルアミノ基、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のジアルキルアミノ基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数6~20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6~20のアルキルチオ基、炭素数6~20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良い。
一般式(1)中、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表し、好ましくは2価の金属原子であり、より好ましくは2価の銅原子である。
【0037】
一般式(1)中、Mが2価の銅原子であり、AとA、AとA、AとA、及びAとAのそれぞれいずれか一方がターシャリーブチル基であり、他方が水素原子であるものが好ましい。すなわち、一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物
としては、下記化学式(2)で表されるテトラ-t-ブチル-テトラアザポルフィリン・銅錯体が特に好ましく挙げられる。
【0038】
【化4】
【0039】
化学式(2)中、Cuは2価の銅原子を表す。
化学式(2)中、tBuはターシャリーブチル基を表し、その4個のターシャリーブチル基は式(2)におけるポルフィリン骨格中に存在する4個のピロール環の1個の炭素原子にそれぞれ1個ずつ結合していることを表す。
化学式(2)で表されるテトラ-t-ブチル-テトラアザポルフィリン・銅錯体は、これは、三井化学株式会社より品番名「PD-311S」として入手できる。
【0040】
本発明のポリマーは、黄色領域光吸収能を有する有機系色素と重合性モノマーとを、任意の分量で配合して、均一に混合した後、かかる重合性モノマー混合物を共重合させることで得ることができる。
黄色領域光吸収能を有する有機系色素の配合量は、全ての重合性モノマー全体を100重量部とした場合に、0.00001~0.02重量部であることが好ましく、0.0001~0.01重量部であることがより好ましく、0.001~0.005重量部であることがさらに好ましい。0.00001重量部未満では十分な防眩性及びコントラスト性を得られない場合がある。また、0.02重量部を超えると、ポリマーの着色が濃くなりすぎて透明性が低下したり、ポリマーの物性(たとえば、強度等)が低下したり、有機系色素がポリマーから溶出しやすくなったりするおそれがある。
なお、本明細書において、共重合に用いる重合性モノマー以外の成分、すなわち前記有機系色素や、後述の重合開始剤、架橋剤、希釈剤等を重合性モノマー混合物に含有させる際の配合量は、重合性モノマー全体を100重量部とした場合の量で表す。したがって、重合性モノマー混合物全体の合計配合量としては、100重量部を超える表記となる。
【0041】
本発明のポリマーは、当該技術分野において通常行なわれている方法によって合成することができる。例えば、黄色領域光吸収能を有する有機系色素と重合性モノマーとを均一に混合し、及び必要に応じて重合開始剤を添加して、室温~約130℃の温度範囲で徐々に加熱したり、あるいはマイクロ波、紫外線、放射線(ガンマ線)等の電磁波を照射したりすることにより重合することができる。なお、重合は、ラジカル重合、塊状重合または溶媒重合等の当業者にとって広く一般的に使用されている種々の方法を採用することができ、また加熱重合させる場合は、温度を段階的に昇温させてもよい。
【0042】
本発明のポリマーを共重合で製造する際に、重合性モノマー混合物は重合開始剤を含有してもよい。
重合開始剤としては、例えば、やや高温でフリーラジカルを生成する、ラウリルペロキ
シド、過酸化ベンゾイル、イソプロピルパーカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、等の化合物が挙げられる。また、芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシドおよび第三級アミン+ジケトン等の光開始剤も用いることができる。光開始剤の代表的な例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシドおよび2,4,6-トリメチルベンゾイル・ジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、カンフォキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート等を挙げられる。重合開始剤は、これらのうち一種又は二種以上を使用することができる。
【0043】
重合開始剤の使用量は、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に0.01~5.0重量部が好ましく、0.05~2.5重量部がより好ましく、0.1~1重量部がさらに好ましい。
【0044】
本発明のポリマーを共重合で製造する際に、重合性モノマー混合物は希釈剤を含有してもよい。希釈剤は、共重合の反応率を高め、また共重合ポリマーの離型性をも高める役割がある。
希釈剤は水溶性のものが好ましく、例えば、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2-ペンタノール、ターシャリーアミルアルコール(tAA)、ターシャリーブチルアルコール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エタノール、メタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、1-エトキシ-2-プロパノール、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、EH-5、2,3,6,7-テトラヒドロキシ-2,3,6,7-テトラメチルオクタン、9-(1-メチルエチル)-2,5,8,10,13,16-ヘキサオキサヘプタデカン、3,5,7,9,11,13-ヘキサメトキシ-1-テトラデカノール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、水等が好ましく挙げられ、これらを一種又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
希釈剤の使用量は、重合性モノマー全体を100重量部とした場合に0~75重量部が好ましく、10~70重量部がより好ましく、30~65重量部がさらに好ましい。
【0046】
また、本発明のポリマーを共重合で製造する際に、重合性モノマー混合物に架橋剤を配合することにより、得られるポリマー内に三次元架橋構造を形成することができる。これにより、ポリマーの機械的強度や硬度を向上させたり、ポリマーからモノマーや色素(黄色領域光吸収能を有する有機系色素を含む)の溶出を抑制したりすることができる。また、本発明のポリマーを後述のように眼内レンズ用材料に供する場合に、均一で透明で歪みのない光学性に優れた眼内レンズを得ることができたり、眼内レンズに耐久性(耐薬品性、耐熱性、耐溶媒性)を付与したりすることもできる。
架橋剤を配合する場合、その配合割合は全ての重合性モノマー全体を100重量部とした場合に、0.01~10重量部の割合の範囲内で使用することが好ましい。0.01重量部未満ではその効果が得られにくく、また10重量部を超えると得られるポリマーが脆くなる傾向がある。
また、上記のような架橋剤としては、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アジピン酸ジアリル、トリアリルジイソシアネート、α-メチレン-N-ビニルピロリドン、4-ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3-ビニルベンジル(メタ)アクリレート、2,2-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
【0047】
また、本発明の効果を妨げない限りにおいて、適当な重合性モノマーを選択して、本発明のポリマーに種々の機能性を付与することもできる。
本発明のポリマーに酸素透過性を付与する場合は、重合性モノマーとしてシリコン含有(メタ)アクリレート類、シリコン含有スチレン誘導体類等のシリコン含有モノマーやフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート類等を選択すればよい。
ポリマーの強度を高めたり硬度を調節したりする場合は、重合性モノマーとしてアルキル(メタ)アクリレート類やスチレンを含めたスチレン誘導体類または(メタ)アクリル酸等を選択すればよい。
重合性モノマーとしてフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート類やフッ素含有スチレン誘導体類等のフッ素含有モノマーを選択すれば、後述のように本発明のポリマーを眼内レンズ用材料とする場合に抗脂質汚染機能が付与されたものとすることができる。
本発明のポリマーに親水性を付与する場合は、重合性モノマーとしてヒドロキシ(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリレート、N-ビニルラクタム類等の親水性基を有するモノマーを選択すればよく、後述のように本発明のポリマーを眼内レンズ用材料とする場合に含水性の柔軟な眼内レンズを得ることができる。
重合性モノマーとして芳香族環を含有するモノマー、例えば、スチレン系モノマーや芳香族環含有(メタ)アクリレート類等を選択すれば、本発明のポリマーを高屈折率のレンズ用材料とすることができる。
上記のように本発明のポリマーに種々の機能性を付与するための重合性モノマーを選択して配合する場合は、全ての重合性モノマー全体を100重量部とした場合に好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上とし、また全ての重合性モノマー全体を100重量部とした場合に好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下となるように適宜調整する。
【0048】
本発明のポリマーは、黄色領域光吸収能を有する有機系色素をポリマー内部に保持する。それにより、眼内レンズ用材料に供する場合に、視認時にコントラストが明瞭になる。
また、黄色領域光吸収能を有する有機系色素により、防眩性にも優れる。具体的には、本発明のポリマーは黄色領域光の吸収に優れ、具体的には、590nmの光線透過率が好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下である。
【0049】
本発明のポリマーは、内部に保持する黄色領域光吸収能を有する有機系色素の保持性にも優れる。そのため、眼内レンズ用材料に供する場合に、使用中に色素が溶出することな
く、防眩性やコントラスト性の性能が長期にわたって維持されるし、安全性にも優れる。
【0050】
本発明のポリマーは、屈折率が高い。具体的には、好ましくは1.49以上、より好ましくは1.50以上、さらに好ましくは1.51以上である。ポリマーの屈折率が高いことにより、眼内レンズ用材料に供する場合に、レンズの厚さを小さく、薄型化できる点で有用である。
【0051】
本発明のポリマーは、柔らかさに優れる。具体的には、ヤング率が25℃において10MPa未満、より好ましくは8MPa未満、さらに好ましくは6MPa未満である。このような柔らかさを有することにより、眼内レンズ用材料に供する場合に、手術時の挿入がスムーズに行われるため有用である。
【0052】
また、本発明のポリマーは、室温環境(25℃)以下の軟化点を持ち、ゴム状態となりやすく変形しやすい。具体的には、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは15℃以下の軟化点を有する。軟化点が低いことにより、ゴム状態になりやすく眼内レンズ挿入時の温度環境の影響を受けづらくなり有用である。
【0053】
本発明のポリマーは、透明性を有することが、眼内レンズ用材料に供する場合に、適用に好適である。
ここで透明性は、可視光(400~700nmの平均透過率)の透過率が好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であることをいう。
【0054】
本発明のポリマーは眼内レンズ用材料として好適である。
眼内レンズ用材料に供する場合は、公知の方法により成形することができる。例えば適当な型又は容器中で重合反応を行い、棒状、ブロック状、板状のポリマーを得た後、切削加工、研磨加工等の機械的加工により所望の形状に加工したり、あるいは所望の形状に対応した型の中で重合反応を行ってポリマー成形物を得た後、必要に応じて機械的に仕上げ加工を施したりする手法が挙げられる。
また、眼内レンズの支持部を、眼内レンズとは別に作製して後から取り付けても良いし、眼内レンズと同時に(一体的に)成形しても差支えない。
【0055】
本発明のポリマーを成形して眼内レンズとする場合、レンズの表面を親水性化するために、必要に応じて表面改質処理を施してもよく、プラズマ処理または紫外線による処理が好ましく、コロナ放電処理、グロー放電処理または紫外線/オゾン処理がより好ましい。その際の処理装置及び処理方法としては、従来から知られている通常の装置及び方法を用いることができる。
【実施例0056】
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
<試験例1>アクリル酸系モノマーとメタクリル酸系モノマーの比較
表1に示す成分を均一に混合し、重合型(縦30mm,横30mm,厚さ1mm)に入れ、70℃で90分間重合させ、厚さ1mmのポリマーシートを作製し、ポリマーシートを離型した。得られた各ポリマーシートを以下の試験に供し評価した。
【0058】
(1)色素保持率
得られたポリマーシートを10mm×10mm×1mmの大きさに切断し、光線透過率を測定した(0回目)。その後ポリマーシートをエタノール10mLに50℃で16時間浸漬し、溶出液の光線透過率を測定した。溶出液から取り出したポリマーシートは、50
℃で1時間、次いで60℃で2時間乾燥した後、光線透過率を測定した。1つのポリマーシートにつき溶出を4回行い、溶出液及びポリマーシートの光線透過率を各回測定した。ポリマーシートの光線透過率は積分球紫外可視吸光度計(U-4100、日立ハイテクサイエンス)用いて、溶出液は紫外可視吸光高度計(UV-2700、島津製作所)を用いて250~800nmの範囲を測定した。色素保持率を、溶出0回目と4回目のポリマーシートの590nmの各吸光度の測定値から、下記式により算出した。
色素保持率(%)={1-(4回目の吸光度)÷(0回目の吸光度)}×100
【0059】
(2)ヤング率
4回目の溶出および乾燥が完了したポリマーシートを80℃で2時間乾燥した後、調温調湿器(25度、RH50%)内で24時間静置した。調温調湿後に熱機械分析装置(TMA402F1、NETZSCH)を用いて静的ヤング率測定を行った。
【0060】
(3)屈折率
4回目の溶出および乾燥が完了したポリマーシートの屈折率を、アッベ屈折率計(DR-M2、アタゴ)を用いて測定した(25℃、e線(546nm))。
【0061】
(4)軟化点
4回目の溶出および乾燥が完了したポリマーシートを80℃で2時間乾燥した後、調温調湿器(25度、RH50%)内で24時間静置した。調温調湿後に熱機械分析装置(TM
A)を用いて-10℃~50℃の範囲で0.2Nの一定荷重をかけ、ガラス状態からゴム
状態に変移する軟化点を測定した。
【0062】
【表1】
【0063】
結果を表1に併せて記す。
溶出によりポリマーにおける590nmの各吸光度が減少し、一方溶出液の590nmの各吸光度が増加したことから、色素(テトラ-t-ブチル-テトラアザポルフィリン・銅錯体「PD-311S」)がポリマーから溶出したことが認められた。実施例1、2は比較例1よりも、色素の溶出の程度が小さく、また3回目以降の溶出試験では色素の溶出はみられなかった。
アクリル酸系モノマーを用いずに作成した比較例1は、色素保持率が小さく、またヤン
グ率及び軟化点が高く、眼内レンズ用材料に適さない。
また、溶出4回目の実施例1~2および比較例1の各ポリマーについて、紫外可視吸収スペクトルを図1に示す。
【0064】
<試験例2>芳香族基を有するアクリル酸系モノマーの影響検討
表2に示す成分及び配合で、試験例1と同様に、ポリマーを作製し、ヤング率、屈折率、軟化点、及び色素保持率を評価した。
【0065】
【表2】
【0066】
結果を表2に併せて記す。
実施例3~6とも色素保持率が高かった。芳香族基を有するアクリル酸モノマーを用いずに作成した実施例6は、実施例3~5に比べて高いヤング率となった。
また、溶出4回目の実施例3~6の各ポリマーについて、紫外可視吸収スペクトルを図2に示す。
【0067】
<試験例3>アクリル酸系モノマー比率の影響の検討
表3に示す成分及び配合で、試験例1と同様に、ポリマーを作製し、ヤング率、屈折率、軟化点、及び色素保持率を評価した。
【0068】
【表3】
【0069】
結果を表3に併せて記す。
実施例7~10を比較すると、作成に用いる重合性モノマー中のアクリル酸系モノマーの割合が大きくなるほど、色素保持率が高くなる傾向が見られた。なお、いずれのポリマーも、3回目以降の溶出試験では色素の溶出はみられなかった。
また、溶出4回目の実施例7~10の各ポリマーについて、紫外可視吸収スペクトルを図3に示す。
【0070】
<試験例4>
表4に示す成分及び配合で、試験例1と同様に、ポリマーを作製し、色素保持率を評価した。
【0071】
【表4】
【0072】
色素保持率からポリマーに残存する色素量を算出し、色素添加量に対する残存色素量をプロットした結果を図4に記す。色素の残存量(保持量)は添加した色素の量と比例関係にあることから、残存率は添加量で変化しないことが認められた。
また、溶出4回目の実施例11~14の各ポリマーについて、紫外可視吸収スペクトルを図5に示す。
図1
図2
図3
図4
図5