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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071555
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】コイル装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20220509BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220509BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H01F27/29 V
H01F27/29 J
H01F41/04 B
H01F17/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180590
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220125
【氏名又は名称】東京パーツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 一彰
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 俊亮
【テーマコード(参考)】
5E043
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AB04
5E043EB01
5E043EB03
5E043EB05
5E062FG11
5E070AA01
5E070BA14
5E070EA06
5E070EA08
5E070EA09
(57)【要約】
【課題】外部接続用の端子部の構成等が最適化されたコイル装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】コイル装置10は、巻回形成された導線から成るコイル12と、コイル12が巻回される巻回部17を有するコア11と、コア11を固定するベース13と、コイル12と電気的に接続される端子部19と、を具備する。また、端子部19は、コイル12の下側端末124等と接続されて前方側に配置される第1前方側端子部191等と、コイル12の上側端末123等と接続されて後方側に配置される第1後方側端子部193等と、を有する。更に、第1前方側端子部191等と第1後方側端子部193等とは、長さが異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回形成された導線から成るコイル部を有するコイルと、
前記コイルが巻回される巻回部を有するコアと、
前記コアを固定するベースと、
前記コイルと電気的に接続される端子部と、を具備し、
前記端子部は、前記コイルの下側端末と接続されて前方側に配置される前方側端子部と、前記コイルの上側端末と接続されて後方側に配置される後方側端子部と、を有し、
前記前方側端子部と前記後方側端子部とは、長さが異なることを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記ベースは、台座と、背面板と、を有し、
前記コアは、前記台座上に前記背面板に沿って固定され、
前記コイルの前記コイル部から前記後方側端子部までの、前記上側端末の長さは、前記コイルの前記コイル部の外周長の半分以下であることを特徴とする請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記後方側端子部は、前記ベースの前記背面板の内部を挿通することを特徴とする請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記巻回部は直線状に形成され、
前記コイルは、平角線をエッジワイズ巻きされて構成されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のコイル装置。
【請求項5】
前記端子部は、鉛直部と、水平部と、を有し、
前記コイルの端末は、前記水平部と、前記ベースとの間を挿通することを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のコイル装置。
【請求項6】
前記端子部の前記水平部は、前記ベースの背面板と対向することを特徴とする請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記コアは、直線状の第1巻回部および第2巻回部を有する切れ目のない閉磁気コアであり、
前記コイルは、前記第1巻回部に巻回された第1コイルと、前記第2巻回部に巻回され且つ前記第1コイルとは巻き方向が反対である第2コイルと、を有し、
前記前方側端子部は、前記第1コイルの下側端末と接続された第1前方側端子部と、前記第2コイルの下側端末と接続された第2前方側端子部と、を有し、
前記後方側端子部は、前記第1コイルの上側端末と接続された第1後方側端子部と、前記第2コイルの上側端末と接続された第2後方側端子部と、を有することを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のコイル装置。
【請求項8】
巻回形成された導線から成るコイル部を有するコイルと、前記コイルが巻回される巻回部を有するコアと、前記コアを固定するベースと、前記コイルと電気的に接続される端子部と、を具備し、前記端子部は、前記コイルの下側端末と接続されて前方側に配置される前方側端子部と、前記コイルの上側端末と接続されて後方側に配置される後方側端子部と、を有し、前記前方側端子部と前記後方側端子部とは、長さが異なるコイル装置を製造する方法であり、
前記コイルが巻回された前記コアと、前記前方側端子部および前記後方側端子部が組み込まれた前記ベースと、を準備する工程と、
前記コアを前記ベースに組み込む工程と、
前記前方側端子部および前記後方側端子部と前記コイルとを電気的に接続する工程と、を具備することを特徴とするコイル装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル装置およびその製造方法に関し、特に、外部接続用の端子部を有するコイル装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイル装置はノイズフィルタ等の電子部品として用いられている。
【0003】
図8(A)は特許文献1に記載されたノイズフィルタ100の構成を示す分解斜視図であり、図8(B)はノイズフィルタ100の構成を示す斜視図である。
【0004】
図8(A)および図8(B)を参照して、ノイズフィルタ100は、台座102と、台座102に固定された磁性コア101と、磁性コア101に巻回された巻線104と、を有している。ここでは、2つの巻線104が、磁性コア101に巻回されている。
【0005】
図8(A)に示すように、巻線104の下端近傍を直線状にフォーミングすることで下方端部105が形成されており、巻線104の上端近傍を直線状にフォーミングすることで上方端部106が形成されている。
【0006】
台座102の下端の四隅には、4つの導電性ピン103が配置されている。導電性ピン103は、ノイズフィルタ100を実装する際の端子となる部位である。
【0007】
磁性コア101は、平角線である巻線104がエッジワイズ巻きされた状態で、台座102に固定される。また、下方端部105は、台座102の前方側に配置された導電性ピン103に半田付けされる。一方、上方端部106は、台座102の後方側に配置された導電性ピン103に半田付けされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-110186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した構成のノイズフィルタ100では、その構成および製造方法の観点から改善の余地があった。
【0010】
具体的には、図8(B)に示すように、巻線104の端末である下方端部105と上方端部106とでは、長さが異なる。即ち、巻線104の上端から下方まで引き回される上方端部106は、下方端部105よりも長く形成される。よって、上方端部106の引き回し工程等が簡単では無い。
【0011】
また、長い上方端部106を直線状にするためには、円弧状に湾曲している巻線104を巻きほぐすフォーミング作業が必要となり、製造工程が複雑となり製造コストが上昇してしまう課題がある。
【0012】
更に、上方端部106および下方端部105と導電性ピン103との仮接続は、巻き付けで行われるが、平角線を導電性ピン103に巻き付ける作業が簡単では無い課題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、外部接続用の端子部の構成等が最適化されたコイル装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のコイル装置は、巻回形成された導線から成るコイル部を有するコイルと、前記コイルが巻回される巻回部を有するコアと、前記コアを固定するベースと、前記コイルと電気的に接続される端子部と、を具備し、前記端子部は、前記コイルの下側端末と接続されて前方側に配置される前方側端子部と、前記コイルの上側端末と接続されて後方側に配置される後方側端子部と、を有し、前記前方側端子部と前記後方側端子部とは、長さが異なることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のコイル装置では、前記ベースは、台座と、背面板と、を有し、前記コアは、前記台座上に前記背面板に沿って固定され、前記コイルの前記コイル部から前記後方側端子部までの、前記上側端末の長さは、前記コイルの前記コイル部の外周長の半分以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のコイル装置では、前記後方側端子部は、前記ベースの前記背面板の内部を挿通することを特徴とする。
【0017】
また、本発明のコイル装置では、前記巻回部は直線状に形成され、前記コイルは、平角線をエッジワイズ巻きされて構成されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のコイル装置では、前記端子部は、鉛直部と、水平部と、を有し、前記コイルの端末は、前記水平部と、前記ベースとの間を挿通することを特徴とする。
【0019】
また、本発明のコイル装置では、前記端子部の前記水平部は、前記ベースの背面板と対向することを特徴とする。
【0020】
また、本発明のコイル装置では、前記コアは、直線状の第1巻回部および第2巻回部を有する切れ目のない閉磁気コアであり、前記コイルは、前記第1巻回部に巻回された第1コイルと、前記第2巻回部に巻回され且つ前記第1コイルとは巻き方向が反対である第2コイルと、を有し、前記前方側端子部は、前記第1コイルの下側端末と接続された第1前方側端子部と、前記第2コイルの下側端末と接続された第2前方側端子部と、を有し、前記後方側端子部は、前記第1コイルの上側端末と接続された第1後方側端子部と、前記第2コイルの上側端末と接続された第2後方側端子部と、を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、巻回形成された導線から成るコイル部を有するコイルと、前記コイルが巻回される巻回部を有するコアと、前記コアを固定するベースと、前記コイルと電気的に接続される端子部と、を具備し、前記端子部は、前記コイルの下側端末と接続されて前方側に配置される前方側端子部と、前記コイルの上側端末と接続されて後方側に配置される後方側端子部と、を有し、前記前方側端子部と前記後方側端子部とは、長さが異なるコイル装置を製造する方法であり、前記コイルが巻回された前記コアと、前記前方側端子部および前記後方側端子部が組み込まれた前記ベースと、を準備する工程と、前記コアを前記ベースに組み込む工程と、前記前方側端子部および前記後方側端子部と前記コイルとを電気的に接続する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコイル装置によれば、前方側端子部と後方側端子部とは長さが異なることにより、長く形成される端子部をコイルの端部まで延伸させることで、前方側端子部および後方側端子部とコイル端部との接続信頼性を向上することができる。
【0023】
本発明のコイル装置によれば、コイルの上側端末の長さが、コイル部の外周長の半分以下であることで、上側端末を短くすることができ、コイルの上側端末を巻きほぐすためのフォーミング作業を不要にできる。
【0024】
本発明のコイル装置によれば、後方側端子部がベースの背面板の内部を挿通することで、比較的長く形成される後方側端子部を背面板により保護することができる。
【0025】
本発明のコイル装置によれば、平角線をエッジワイズ巻きされて構成されたコイルの末端を、端子部と簡易に接続でき、更に、コイルの末端と端子部との接続信頼性を高めることができる。
【0026】
本発明のコイル装置によれば、コイルの端末を、端子部の水平部とベースとの間を挿通することで、コイルの端末と端子部とを容易に接続することができる。更に、コイル装置の製造工程において、コイルの端末を、端子部の水平部とベースとの間を挿通することで仮止めを行い、この状態で半田接続を行うことができる。
【0027】
本発明のコイル装置によれば、端子部の水平部が、ベースの背面板の背面側と対向することで、水平部の絶縁性を向上することができる。更に、端子部の水平部に、コイルの上側端末を半田接続する際に、半田ごてにより、水平部および上側端末を背面板に押しつけることができ、確実且つ容易に半田接続を行うことができる。
【0028】
本発明のコイル装置によれば、閉磁気コア、第1コイルおよび第2コイルを有することで、ラインフィルタとして用いることができる。
【0029】
本発明のコイル装置の製造方法によれば、前方側端子部と後方側端子部とは長さが異なることにより、長く形成される端子部をコイルの端部まで延伸させることで、コイルの末端を接続のためにほぐすフォーミング作業を不要にでき、コイルの接続作業を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係るコイル装置を示す図であり、(A)はコイル装置を前方から見た斜視図であり、(B)はコイル装置を後方から見た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコイル装置を示す図であり、コイル巻回後のコアおよびコイルを示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコイル装置のベースを示す図であり、(A)はベースを前方から見た斜視図であり、(B)はベースを後方から見た斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るコイル装置を示す図であり、(A)は第2コイルの上側端末と第2後方側端子部の水平部との接続構成を示す斜視図であり、(B)は第2コイルの下側端末と第2前方側端子部の水平部との接続構成を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るコイル装置を示す図であり、コイルの端部である上側端末の線長の一例を示す上面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るコイル装置を示す図であり、(A)、(B)、(C)および(D)は、端子部の接続部におけるベースの各構成を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係るコイル装置を示す図であり、ベースの構成を示す図である。
図8】背景技術に係るコイル装置を示す図であり、(A)は分解斜視図であり、(B)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態のコイル装置10およびその製造方法を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0032】
図1(A)はコイル装置10を前方から見た斜視図であり、図1(B)はコイル装置10を後方から見た斜視図である。
【0033】
図1(A)および図1(B)を参照して、コイル装置10は、コア11と、コイル12と、ベース13と、端子部19と、を主要に有する。コイル装置10は、例えば、ラインフィルタ、ノイズフィルタ、コモンモードノイズフィルタ、変圧器等として用いることができる。また、コイル装置10は、実装基板等の実装面に対して実装される実装部品である。コイル装置10の実装構造としては、差込または半田溶着等を採用することができる。更に、後述するように、第1コイル121および第2コイル122は、コイル装置10の実装面に対して、略垂直に導線が巻回されている。
【0034】
コア11は、前方から見て略矩形の枠形状を呈している。コア11の材料としては、アモルファス合金、けい素鋼板、フェライト等の磁性体を採用することができる。コア11の詳細は、図2を参照して後述する。
【0035】
コイル12は、巻回形成された導線から成る。具体的には、コイル12は、平角線をエッジワイズ巻きされて構成される。コイル12を構成する導線の表面は、薄い樹脂膜(例えばウレタン樹脂から成る膜)でコーティングされている。ここでは、コイル12は、第1コイル121および第2コイル122から成るが、詳細は図2を参照して後述する。
【0036】
ベース13は、コア11を固定できるように構成された合成樹脂等から成る部材であり、その構成等は図3を参照して後述する。
【0037】
端子部19は、コイル12と電気的に接続され、コイル装置10の下端に配置された接続手段である。端子部19は、銅やアルミニウム等からなる導線を曲折加工したものである。具体的には、端子部19は、第1コイル121の下側端末126と接続された第1前方側端子部191と、第2コイル122の下側端末124と接続された第2前方側端子部192と、第1コイル121の上側端末125と接続された第1後方側端子部193と、第2コイル122の上側端末123と接続された第2後方側端子部194と、を有する。これらの各端子部の詳細は、図4等を参照して説明する。
【0038】
本実施形態では、第1前方側端子部191および第2前方側端子部192と、第1後方側端子部193および第2後方側端子部194とは、長さが異なる。ここでは、第1後方側端子部193および第2後方側端子部194は、第1前方側端子部191および第2前方側端子部192よりも長く形成されている。このようにすることで、後述するように、第1コイル121および第2コイル122の上方側の端末を短くすることができる。この事項は図2を参照して後述する。
【0039】
図2はコア11およびコイル12を示す斜視図である。
【0040】
コア11は、巻回部17として、直線状の第1巻回部171および第2巻回部172を有する切れ目のない閉磁気コアである。第1巻回部171および第2巻回部172は、ここでは図示しないコイル装置10の実装面に対して、略垂直とされている。
【0041】
コイル12は、第1巻回部171に巻回された第1コイル121と、第2巻回部172に巻回され且つ第1コイル121とは巻き方向が反対である第2コイル122と、を有している。第1コイル121と第2コイル122とでは、導線の断面形状(導体幅、導体厚さ)および巻き数は同等である。このようにすることで、第1コイル121および第2コイル122を含むコイル装置10を、前述したように、ノイズフィルタ等として用いることができる。また、コイル部127およびコイル部128は、ここでは図示しないコイル装置10の実装面に対して、略垂直とされている。
【0042】
第1コイル121は、第1巻回部171に巻回された導線から成るコイル部127と、コイル部127の上端部分の導線を巻きほぐした上側端末125と、コイル部127の下端部分の導線を巻きほぐした下側端末126と、を有している。
【0043】
第2コイル122は、第2巻回部172に巻回された導線から成るコイル部128と、コイル部128の上端部分の導線を巻きほぐした上側端末123と、コイル部128の下端部分の導線を巻きほぐした下側端末124と、を有している。なお、コイル部127およびコイル部128は略同一の外径、外周長を有する。
【0044】
図3(A)はベース13を前方から見た斜視図であり、図3(B)はベース13を後方から見た斜視図である。
【0045】
図3(A)を参照して、ベース13は、台座131と、背面板132と、を有する。図2に示したコア11は、台座131上に背面板132に沿って固定される。
【0046】
突出部133は、背面板132の前面中央部を、上下方向に沿って縦長となるように前方に向かって突出させることで形成されている。突出部133は前述したコア11の中央開口に嵌め込まれる。
【0047】
肉盗み部134は、背面板132の前面を部分的に略楕円形に窪ませることで形成されている。ここでは、背面板132の前面において、左方上部、右方上部および中央下部に肉盗み部134が形成されている。肉盗み部134を形成することで、ベース13の製造に要する樹脂量を低減し、低コスト化を図ることができる。
【0048】
左方支持部138および右方支持部139は、台座131の左右方向両端を上方向に突出した部位である。左方支持部138および右方支持部139の内部側面は、コア11の形状に即した曲面を呈している。左方支持部138および右方支持部139により、前述したコア11を左右方向に於いて保持することができる。
【0049】
図3(B)を参照して、第1後方側端子部193および第2後方側端子部194の垂直に延在する部分(図4(A)を参照して後述する鉛直部195)は、ベース13の背面板132の内部を挿通する。このようにすることで、ベース13により、第1後方側端子部193および第2後方側端子部194を強固に支持でき、第1後方側端子部193および第2後方側端子部194の絶縁を確保できる。
【0050】
図4(A)は第2コイル122の上側端末123と第2後方側端子部194の水平部196との接続構成を示す斜視図であり、図4(B)は第2コイル122の下側端末124と第2前方側端子部192の水平部198との接続構成を示す斜視図である。
【0051】
図4(A)を参照して、第2後方側端子部194は、鉛直部195と水平部196とから構成されている。換言すると、第2後方側端子部194は、途中部分が略直角に曲折加工されている。鉛直部195の下端は、ベース13の下端から下方に露出している。また、水平部196は、ベース13の背面板132の後面(対向面135)と対向する。また、第2後方側端子部194は、上記した第1前方側端子部191等と比較して長く形成されている。よって、第2後方側端子部194の上端である水平部196を、第2コイル122の上端近傍に配置し、上側端末123の線長を短くすることができる。
【0052】
第2コイル122の上側端末123は、水平部196と、背面板132の背面との間に、挿通または挟持される。また、上側端末123と水平部196との接続部分は、ここでは図示しない半田により溶着されている。上側端末123が挿通または挟持される構成は、図6および図7を参照して後述する。
【0053】
このようにすることで、上側端末123と水平部196とを強固に接続できる。更に、第2後方側端子部194の水平部196が、第2コイル122の上端部の近傍に配置されるため、上側端末123を、後述する下側端末124と同程度に短くすることができる。また、図1(B)に示した第1コイル121の上側端末125と第1後方側端子部193との接続構造は、図4(A)に示した接続構造と同様である。
【0054】
図4(B)を参照して、第2前方側端子部192は、鉛直部197と水平部198とを有する。また、水平部198と台座131の前面(対向面135)との間に、第2コイル122の下側端末124が挟持また挿通されている。更に、水平部198と下側端末124との接続部分は、ここでは図示しない半田で溶着される。このような接続構造は、図1(A)に示した第1前方側端子部191および第1コイル121の下側端末126に関しても同様である。
【0055】
図5は、上側端末123の線長の一例を示す図である。第2コイル122の上端を巻きほぐした上側端末123の長さL11は、コイル部128の外周長L10の半分以下が望ましい。ここで、上側端末123の長さL11とは、第2コイル122の巻きほぐし部分P1から、上側端末123が第2後方側端子部194の水平部196に接続する部分P2までの長さである。この長さは、コイル部128の上端近傍の第2巻回部172の端面と水平部196との距離L13と略同じ長さである。
【0056】
係る事項は、他の端末である、上側端末125、下側端末124および下側端末126に関して同様である。このようにすることで、上側端末123等を略直線状にするべく、巻きほぐす長さを短くすることができ、製造工程を簡略化して製造コストを低減できる。
【0057】
更に望ましくは、第2コイル122の上端を巻きほぐした上側端末123の長さL11を、コイル部128の外周長L10の1/3以下とすることで、この効果を顕著にすることができる。係る事項は、他の端末である、上側端末125、下側端末124および下側端末126に関して同様である。
【0058】
図6(A)、図6(B)、図6(C)および図6(D)は、各端子の水平部とベース13の水平部との対向面135の関連構成の各形態を示す図である。図6の各図では、対向面135と各水平部との間で、図4に示した各上側端末および各下側端末を挟持する。
【0059】
図6(A)を参照して、ベース13前面の対向面135と水平部198とは略平行とされている。対向面135と水平部198との距離L12は、図4(B)に示した下側端末124の幅(厚さ)の同等以下とされている。このようにすることで、対向面135と水平部198との間で、下側端末126を挟持することができる。
【0060】
図6(B)を参照して、ここでは、ベース13前面の対向面135が水平部198に対して傾斜している。具体的には、対向面135は、左右方向外側である左方に向かって後方に傾斜する傾斜面である。このようにすることで、傾斜面である対向面135と水平部198との間で、下側端末126を好適に挟持することができる。
【0061】
図6(C)を参照して、ここでは、水平部196に面する部分の対向面135を、部分的に後方に向かって突出させることで、突起部136を形成している。突起部136は点状に形成されても良いし、左右方向に沿って連続的に細長く伸びる線状に形成されても良い。突起部136の突端は、水平部196の近傍に配置されても良いし、水平部196に接触しても良い。このようにすることで、突起部136と水平部196との間で、図4(A)に示した上側端末123をより強固に挟持することができる。
【0062】
図6(D)を参照して、ここでは、水平部196に対峙する部分の対向面135を前方に向かって窪ませることで凹状部137が形成されている。このようにすることで、上側端末125が、水平部196と凹状部137との間で、湾曲された状態で挟持されるため、上側端末125をより強固に挟持することができる。
【0063】
図6(A)ないし図6(D)に示した構成は、図1に示した全ての接続部に適用できる。即ち、図1(A)に示した下側端末124と第2前方側端子部192との接続構造、下側端末126と第1前方側端子部191との接続構造、図1(B)に示した第1後方側端子部193と上側端末125との接続構造、第2後方側端子部194と上側端末123との接続構造に適用できる。
【0064】
図7を参照して、水平部198と下側端末126とが接続される部分の他の形態を説明する。ここでは、ベース13前面の対向面135と水平部198の後面との距離L12は、下側端末126の幅(厚さ)よりも長くされている。このようにすることで、下側端末126は、対向面135と水平部198との間に挿通される。係る構成であっても、半田で溶着されることで、水平部198と下側端末126とを電気的に接続すると共に、下側端末126の位置を固定することができる。また、係る構成であっても、製造工程において、下側端末126は、対向面135と水平部198との間に挿通されることで、仮固定することができる。
【0065】
図1ないし図4に基づいて、上記した各図も参照しつつ、図1等に示した構成を有するコイル装置10の製造方法を説明する。
【0066】
図2を参照して、コア11には第1コイル121および第2コイル122が巻回されている。また、第1コイル121の上端および下端には、導線を巻きほぐすことで上側端末125および下側端末126が形成されている。第2コイル122の上端および下端には、導線を巻きほぐすことで上側端末123および下側端末124が形成されている。
【0067】
コア11は、図3(A)に示したベース13に、前方から組み込まれる。この時、ベース13の突出部133がコア11の中央開口に挿入される。また、コア11の下端部は、左方支持部138および右方支持部139により左右方向外側から支えられる。また、ベース13には、コイル12の各端末を接続するための端子部19が、あらかじめ組付けられており、各端子の各水平部(196、198)とベースの対向面135の間には所定の間隔が設けられている。
【0068】
図4(B)を参照して、第2前方側端子部192の水平部198と台座131の前面との間に下側端末124を挟持または挿通し、水平部198および下側端末124を半田ごてで押し当て、下側端末124の周囲を被覆する樹脂膜を溶融し、更に半田溶着を行う。これにより、下側端末124と水平部198とを電気的に接続する。また、同様の工程により、図1(A)に示した第1前方側端子部191の水平部198と、下側端末126とを電気的に接続する。
【0069】
図1(B)を参照して、前述した第2前方側端子部192の水平部198の場合と同様に、第2後方側端子部194の水平部196と上側端末123とを接続する。更に、第1後方側端子部193の水平部196と上側端末125とを接続する。
【0070】
上記工程により、図1に示したコイル装置10が製造される。
【0071】
前述した本実施形態により、以下のような主要な効果を奏することができる。
【0072】
図1(B)を参照して、本発明のコイル装置10によれば、第1前方側端子部191および第2前方側端子部192と、第1後方側端子部193および第2後方側端子部194との長さが異なることにより、長く形成される第1後方側端子部193および第2後方側端子部194をコイル12の上端近傍まで延伸させている。これにより、図4(A)を参照して、上側端末123を短くすることができ、接続信頼性を向上することができる。更に、第2コイル122の上側端末123と、水平部196とを接続した後に、水平部196に対して、端子曲げ 等の後加工を施す必要が無いので、これらの作業を省くことで生産コストを低減できる。
【0073】
図5を参照して、更に、コイル12の上側端末123の長さが、コイル部128の外周長の半分以下であることで、上側端末123を短くすることができ、コイル12の上側端末123を巻きほぐすためのフォーミング作業を、簡易化または不要化することができる。
【0074】
図3(B)を参照して、更に、第1後方側端子部193および第2後方側端子部194が、ベース13の背面板132の内部を挿通することで、比較的長く形成される第1後方側端子部193および第2後方側端子部194を、背面板132により保護すると共に絶縁性を高めることができる。
【0075】
図1(A)を参照して、更に、平角線をエッジワイズ巻きされて構成された第1コイル121および第2コイル122の末端を、第1前方側端子部191ないし第2後方側端子部194と簡易に接続でき、接続信頼性を高めることができる。
【0076】
図4(A)を参照して、更に、第2コイル122の上側端末123を、第2後方側端子部194の水平部196とベース13との間に挟持することで、上側端末123と端子部19とを強固に接続することができる。更に、コイル装置10の製造工程において、上側端末123を、水平部196とベース13との間に挟持または挿通することで仮止めを行い、この状態で半田接続を行うことができる。
【0077】
図4(A)を参照して、更に、第2後方側端子部194の水平部196が、ベース13の背面板132と対向することで、水平部196の絶縁性を向上することができる。更に、水平部196に、上側端末123を半田接続する際に、半田ごてにより、水平部196および上側端末123を背面板132に押しつけることができ、確実且つ容易に半田接続を行うことができる。
【0078】
図1(A)を参照して、更に、閉磁気コア、第1コイル121および第2コイル122を有することで、ラインフィルタとして用いることができる。
【0079】
図1(B)を参照して、更に、製造方法においては、長く形成される第1後方側端子部193および第2後方側端子部194を、コイル12の上端近傍まで延伸させることで、コイル12の端部を接続のためにほぐすフォーミング作業を不要にでき、コイル12の接続構造および接続作業を簡略化することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0081】
例えば、図3(B)を参照して、上記した実施形態では、第1後方側端子部193および第2後方側端子部194は、ベース13の背面板132の内部を挿通していたが、他の構造により、第1後方側端子部193および第2後方側端子部194を背面板132に組み込むこともできる。例えば、背面板132の背面に上下方向に伸びる溝状領域を形成し、この溝状領域に第1後方側端子部193および第2後方側端子部194を嵌め込むようにすることもできる。
【0082】
更に、図1(A)を参照して、本実施形態ではコア11として矩形状コアを採用したが、コア11として他の形状のものを採用することも可能であり、例えば、コア11として環状コアを採用することもできる。また、コイルを1つのみ設け、インダクタとして使用することも可能である。
【符号の説明】
【0083】
10…コイル装置、11…コア、12…コイル、121…第1コイル、122…第2コイル、123…上側端末、124…下側端末、125…上側端末、126…下側端末、127…コイル部、128…コイル部、13…ベース、131…台座、132…背面板、133…突出部、134…肉盗み部、135…対向面、136…突起部、137…凹状部、138…左方支持部、139…右方支持部、17…巻回部、171…第1巻回部、172…第2巻回部、19…端子部、191…第1前方側端子部、192…第2前方側端子部、193…第1後方側端子部、194…第2後方側端子部、195…鉛直部、196…水平部、197…鉛直部、198…水平部、100…ノイズフィルタ、101…磁性コア、102…台座、103…導電性ピン、104…巻線、105…下方端部、106…上方端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8