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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071568
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】フィルムヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20220509BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20220509BHJP
   H05B 3/84 20060101ALI20220509BHJP
   B60S 1/56 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H05B3/20 312
H05B3/10 A
H05B3/84
B60S1/56 120Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180608
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】591129508
【氏名又は名称】シライ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中西 悠平
(72)【発明者】
【氏名】奥村 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中澤 綾香
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽香
【テーマコード(参考)】
3D025
3D225
3K034
3K092
【Fターム(参考)】
3D025AC11
3D025AD12
3D225AC11
3D225AD12
3K034AA12
3K034AA15
3K034BB13
3K092PP15
3K092QA05
3K092QB26
3K092QB43
3K092VV38
(57)【要約】
【課題】意匠性の低下を抑制することができるフィルムヒータを提供する。
【解決手段】車両用灯具に搭載して使用できるフィルムヒータは、透過性を有するシート状の基材と、発熱体62と、を備える。発熱体62は、通電することで発熱する。また、発熱体62は、複数の熱線が交差する形状であって、基材上に長尺状に形成される。熱線の幅は、隣り合う2つの熱線同士の間隔よりも小さい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具(30)に搭載して使用できるフィルムヒータであって、
透過性を有するシート状の基材(61)と、
通電することで発熱する発熱体(62)と、
を備え、
前記発熱体は、複数の熱線が交差する形状であって、前記基材上に長尺状に形成され、
前記熱線の幅は、隣り合う2つの前記熱線同士の間隔よりも小さい、フィルムヒータ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムヒータであって、
前記熱線の幅は、5mm以下である、フィルムヒータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフィルムヒータであって、
隣り合う2つの前記熱線同士の間隔は200μmよりも大きい、フィルムヒータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のフィルムヒータであって、
交差する前記熱線が成す角度は45度よりも大きく135度よりも小さい、フィルムヒータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のフィルムヒータであって、
前記発熱体は、前記熱線をメッシュ構造に形成したものを含む、フィルムヒータ。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルムヒータであって、
前記発熱体は、メッシュ構造が分断されることによって形成されている、フィルムヒータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のフィルムヒータであって、
前記発熱体は、前記基材上において蛇行している、フィルムヒータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のフィルムヒータであって、
車両のヘッドライトにおける光を透過する部分に搭載される、フィルムヒータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のフィルムヒータであって、
前記熱線は銅製である、フィルムヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルムヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の所定の部位に、例えば融雪、氷解などを目的として設けられるヒータが知られている。
特許文献1には、ランプレンズの所定の箇所に転写することにより設けられる線ヒータが記載されている。また特許文献1には、線ヒータの有する帯状の導電性ペーストを意匠線として利用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4586805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、次に説明する課題が見出された。すなわち、上述したような線ヒータにおいては、導電性ペーストが視認されてしまうため、意匠線として利用しない場合には意匠性の低下する可能性があった。また、線ヒータが転写された箇所とそれ以外の箇所とで、線ヒータが設けられたことによる視覚的な差異が生じやすく、意匠性が低下する可能性があった。
【0005】
本開示の一局面は、意匠性の低下を抑制することができるフィルムヒータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車両用灯具(30)に搭載して使用できるフィルムヒータであって、透過性を有するシート状の基材(61)と、発熱体(62)と、を備える。発熱体は、通電することで発熱する。また、発熱体は、複数の熱線が交差する形状であって、基材上に長尺状に形成される。熱線の幅は、隣り合う2つの熱線同士の間隔よりも小さい。
【0007】
このような構成によれば、意匠性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ヒータ制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】ヒータ及び制御装置の接続を示す図である。
図3】ヘッドライトにヒータが取り付けられた状態を示す図である。
図4】ヘッドライドにヒータが取り付けられた状態を模式的に示す側面図である。
図5】ヒータの模式図である。
図6図5に示すヒータの断面図である。
図7】本実施形態の発熱体を示す模式図である。
図8図7の一部を拡大した拡大図である。
図9】1本の熱線により構成される従来の発熱体を示す模式図である。
図10】他の実施形態における熱線が交差する形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1及び図2に示すヒータ制御システム100は、出荷後の車両に搭載可能、つまり、車両に後付けで搭載可能なシステムである。本実施形態では、ヒータ制御システム100は、ヒータ10と、制御装置20と、外気温センサ21と、を備える。
【0010】
ヒータ10は、当該ヒータ10に接続されたケーブル40を介して、制御装置20とコネクタ50により接続されている。
制御装置20は、車両のエンジンルーム内に設置されて車両ハーネスなどに共締めされている。以下では、ヒータ制御システム100が搭載された車両を「自車両」という。
外気温センサ21は、自車両の下部に設けられ、自車両の外部の気温を検出するためのセンサである。
【0011】
図3及び図4に示すように、ヒータ10は、自車両の車両用灯具に搭載される。本実施形態では、ヒータ10は、LED31によって構成される自車両のヘッドライト30に搭載されている。具体的には、ヒータ10は、ヘッドライト30における光を透過する、例えばレンズなどの透過部32に、外部から取り付けられている。ヒータ10は、ヘッドライト30の外側、すなわち、透過部32の外面に粘着材などによって貼り付けられている。
【0012】
図5及び図6に示すように、ヒータ10は、通電することで発熱する金属製の発熱体62が、透過性を有するベースフィルム61上に設けられたフィルムヒータである。ベースフィルム61の一方の面には、発熱体62、絶縁層63及び接着層64が積層されている。発熱体62は、例えば銅をベースフィルム61に積層させ、エッチング等によりメッシュ構造にパターニングすることにより形成される。絶縁層63としては、レジスト層が用いられる。接着層64としては、OCAが用いられる。なお、OCAとは、Optical Clear Adhesiveの略である。本実施形態では、接着層64が透過部32の外面に当接することで、ヒータ10がヘッドライト30に貼り付けられている。なお、ヒータ10は、接着層64を用いた方法以外の方法でヘッドライト30に取り付けられてもよい。また、発熱体62は、エッチングを用いた方法以外の方法でベースフィルム61上に形成されてもよい。絶縁層63は、レジスト層以外の方法でベースフィルム61上に形成されてもよい。また、絶縁層63は、形成されていなくてもよい。
【0013】
図7に示すように、発熱体62は、複数の熱線が交差する形状であって、ベースフィルム61上に長尺状に形成されている。発熱体62は、言い換えると、複数の熱線が交差してなる部分が帯状に広がった形状である。具体的には、発熱体62は、蛇行した形状に形成されている。発熱体62は、相対的に長い直線状の部分である長部66と、相対的に短い直線状の部分である短部67と、を有する。複数の長部66の端部が、短部67によってそれぞれ連結されている。複数の長部66は、相互にほぼ平行に配置されている。本実施形態では、発熱体62は、8個の長部66と、7個の短部67と、を有する。
【0014】
発熱体62は、長部66及び短部67における部分がメッシュ構造に形成されている。具体的には、図8に示すように、発熱体62は、メッシュ構造が分断されることにより形成されている。ここでいう分断とは、メッシュ構造において、熱線が通電できないように切断された領域、或いは熱線を有さない領域が存在することをいう。これにより、矩形であったメッシュ構造が、長部66と短部67とによる導通経路が構成された状態となる。メッシュ構造を形成する熱線の幅X1は、5mm以下であってもよい。また、隣り合う熱線同士の間隔X2は、200μmよりも大きくてもよい。また、互いに交差する熱線が成す角度θは45度よりも大きく135度よりも小さくてもよい。なお、メッシュ構造を形成する熱線の幅X1は、100μm以下でもよく、さらに50μm以下でもよい。熱線の幅X1が細いほど、視認性がよくなる。また、隣り合う熱線同士の間隔X2は、300μmよりも大きくてもよい、さらに350μmよりも大きくてもよい。隣り合う熱線同士の間隔X2が大きいほど、視認性がよくなる。
【0015】
制御装置20は、図示しないCPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等を有する周知のマイクロコンピュータを中心に構成される。CPUは、非遷移的実体的記録媒体であるROMに格納されたプログラムを実行する。当該プログラムが実行されることで、当該プログラムに対応する方法が実行される。なお、制御装置20は、1つのマイクロコンピュータを備えていてもよいし、複数のマイクロコンピュータを備えていてもよい。また、制御装置20は、コンパレータを用いて実現されてもよい。
【0016】
例えば、制御装置20は、外気温センサ21から外気温を取得し、ヘッドライト30に雪や氷が付着する程度の温度か否かを判定する。そして、制御装置20は、ヘッドライト30に雪や氷が付着する程度の温度であると判定した場合、ヒータ10への通電を開始する。これにより、発熱体62が発熱し、ヘッドライト30に付着した雪や氷を溶かすことができる。
【0017】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)本実施形態では、発熱体62は、複数の熱線が交差する形状であって、基材上に長尺状に形成されている。また、発熱体62において、熱線の幅は、隣り合う2つの熱線同士の間隔よりも小さい。このような構成によれば、意匠性の低下を抑制することができる。また、発熱体62は、ヘッドライト30の光を十分に透過することが可能であり、ヘッドライト30の照度の低下を抑制することができる。
【0018】
また、より好ましくは、発熱体において、熱線の幅は50μm以下であり、隣り合う2つの熱線同士の間隔は350μmよりも大きい。このような構成によれば、より視認されにくく、意匠性の低下を抑制することができる。
【0019】
ところで、図9のように、1本の熱線によって構成される従来の発熱体70の場合においては、例えば、熱線の太さや全長を変更することで、抵抗値を変化させ、発熱体70全体での発熱量を調整した。一方、本実施形態の発熱体62の場合においては、熱線の太さや長さのみでなく、例えば、隣り合う2つの熱線の間隔、及び、分断位置を変更することでも発熱量の調整が可能である。分断位置を変更すると、帯状部分の全長、並びに幅方向に含まれる熱線の数が変更されるためである。発熱体62の抵抗値を変更することが可能となる。
【0020】
(2b)本実施形態では、熱線をメッシュ構造にすることにより発熱体が形成されている。このような構成によれば、熱線が存在する領域が分散するため、表面温度を均一に発熱させやすくなる。
【0021】
(2c)本実施形態では、熱線が成す角度は45度よりも大きく135度よりも小さい。このような構成によれば、メッシュ構造の密度が上がりすぎず、十分な視認性を確保できる。
【0022】
(2d)本実施形態では、発熱体62は、メッシュ構造が分断されることによって形成される。このような構成によれば、メッシュ構造を分断する幅を変更するだけで、容易に発熱体62の抵抗値の変更を実現できる。また、メッシュ構造を分断する幅を狭くすると、分断された箇所の隙間が狭くなることで、メッシュを貼り付けた領域全体において十分に発熱ができる。
【0023】
(2e)本実施形態では、発熱体は、蛇行するようにベースフィルム61上に形成される。このような構成によれば、まんべんなく融雪等をさせやすくなる。なお、ここでいう蛇行とは、発熱体における電流の流れる方向が繰り返し逆さになるように複数回曲折することを指す。
【0024】
(2f)本実施形態では、フィルムヒータは、自車両のヘッドライト30における光を透過する部分に搭載される。このような構成によれば、ヘッドライト30の融雪等が可能となる。
【0025】
(2g)本実施形態では、熱線は銅製である。このような構成によれば、銅の電気抵抗が小さいことから、効率よく加熱することができる。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0026】
(3a)上記実施形態では、熱線の幅X1は5mm以下であり、隣り合う2つの熱線同士の間隔X2は200μmよりも大きい構成を例示した。しかし、熱線の幅X1及び隣り合う2つの熱線同士の間隔X2はこれに限定されるものではない。少なくとも、熱線の幅X1が、隣り合う2つの熱線同士の間隔X2よりも小さい構成であればよい。
【0027】
(3b)上記実施形態では、発熱体62は、メッシュ構造に形成されていた。具体的には、長い棒状の熱線同士が格子状に交差する形状に形成されていた。しかし、発熱体62を形成する熱線の形状はこれに限定されるものではなく、網目状である様々な形状を採用できる。例えば、図10に示すように、相対的に長い棒状の熱線81と相対的に短い熱線82とが交差している形状でもよい。
【0028】
(3c)上記実施形態では、発熱体62は、熱線が成す角度θが45度よりも大きく135度よりも小さくなるように形成されていた。しかし、熱線が成す角度θはこれに限定されるものではない。例えば、熱線が成す角度θは、45度以下でもよいし、135度以上でもよい。
【0029】
(3d)上記実施形態では、発熱体62は、ベースフィルム61上を蛇行していた。しかし、発熱体62の形状はこれに限定されるものではない。例えば、渦巻きの形状やジグザグの形状など、同じようなパターンを繰り返しながら長尺状に形成されている形状が含まれる。
【0030】
(3e)上記実施形態では、ヒータ10がヘッドライト30に事後的に貼り付けられる形式で搭載されたが、ヒータ10が搭載される方法はこれに限定されるものではない。例えば、ヘッドライト30に当初から設けられる形式で搭載されてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、ヒータ10がヘッドライト30に搭載される構成を例示したが、ヒータ10が搭載される車両用灯具はこれに限定されるものではない。例えば、ヒータ10は、テールライトなどの車両用灯具に搭載されていてもよい。
【0032】
(3f)上記実施形態では、熱線として銅が用いられる構成を例示したが、用いられる熱線の種類はこれに限定されるものではない。例えば、銀、金、アルミニウム、鉄などが用いられてもよい。
【0033】
(3g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…ヒータ、30…ヘッドライト、61…ベースフィルム、62…発熱体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10