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特開2022-71589静止電磁機器および静止電磁機器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071589
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】静止電磁機器および静止電磁機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20220509BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220509BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
H01F30/10 C
H01F41/04 A
H01F30/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180633
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄一郎
【テーマコード(参考)】
5E062
【Fターム(参考)】
5E062EE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】静止電磁機器を組立てる際の作業性を改善した静止電磁機器および静止電磁機器の製造方法を提供する。
【解決手段】静止電磁機器は、鉄心1の周りにセグメントコイル2を巻回した構成とする。すなわち、この静止電磁機器は、複数本のU字状導体21を配置し、そのU字状導体21の配置により形成された空間に鉄心1を配置する。そして、U字状導体21の一端側の脚の先端部と隣接するU字状導体の他端側の脚の先端部とを接続用導体22で接続して製造される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントコイルを形成した静止電磁機器であって、
U字状導体を複数本配置し、
前記U字状導体の配置により形成された空間に鉄心を配置し、
前記U字状導体の一端側の脚の先端部と隣接する前記U字状導体の他端側の脚の先端部とを接続した静止電磁機器。
【請求項2】
請求項1に記載された静止電磁機器において、前記U字状導体として両側の脚の長さが異なるものを使用し、互いに隣接する前記U字状導体の間におけるそれぞれの端部の前記脚の長さが異なるように互い違いに配置し、前記U字状導体の一方側の前記脚の先端部と、隣接する前記U字状導体の他方側の前記脚の先端部とを接続したことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項3】
請求項2に記載された静止電磁機器において、隣接する前記U字状導体の長い方の脚の一方側の先端部と他方側の長い方の脚の先端部とを第1の接続用導体により接続し、隣接する前記U字状導体の短い方の脚の一方側の先端部と他方側の脚の先端部とを第2の接続導体により接続したことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項4】
請求項1に記載された静止電磁機器において、前記U字状導体として、両側の脚の長さは同じであるが隣接するU字状導体との関係では前記脚の長さが異なる2種類の前記U字状導体を用い、前記脚の長さが短い前記U字状導体と、前記脚の長さが長い前記U字状導体とを交互に配置し、前記U字状導体の一方側の前記脚の先端部と、隣接する前記U字状導体の他方側の前記脚の先端部とを接続したことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項5】
請求項4に記載された静止電磁機器において、隣接する前記2種のU字状導体の少なくとも一方側の脚を折曲げ、他方側の脚の先端部と接続したことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項6】
請求項1に記載された静止電磁機器において、前記接続には、接続用導体を用いたことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項7】
請求項1に記載された静止電磁機器において、前記接続は、前記U字状導体の前記脚を折曲げ、先端部同士を接続したことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項8】
請求項1に記載された静止電磁機器において、前記鉄心は少なくとも2つの磁脚を有し、前記2つの磁脚の夫々に低圧用の前記セグメントコイルを巻回し、更に前記2つの磁脚の夫々に高圧用の前記セグメントコイルを巻回したことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項9】
セグメントコイルを形成する静止電磁機器の製造方法であって、
複数本のU字状導体を配置し、前記U字状導体の配置により形成された空間に鉄心を配置し、前記U字状導体の一端側の脚の先端部と隣接する前記U字状導体の他端側の脚の先端部とを接続する静止電磁機器の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載された静止電磁機器の製造方法において、前記U字状導体として両側の脚の長さが異なるものを使用し、互いに隣接する前記U字状導体の間におけるそれぞれの端部の前記脚の長さが異なるように互い違いに配置し、前記U字状導体の一方側の前記脚の先端部と、隣接する前記U字状導体の他方側の前記脚の先端部とを接続したことを特徴とする静止電磁機器の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載された静止電磁機器の製造方法において、隣接する前記U字状導体の長い方の脚の一方側の先端部と他方側の長い方の脚の先端部とを第1の接続用導体により接続し、隣接する前記U字状導体の短い方の脚の一方側の先端部と他方側の脚の先端部とを第2の接続用導体により接続したことを特徴とする静止電磁機器の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載された静止電磁機器の製造方法において、前記U字状導体として、両側の脚の長さは同じであるが隣接するU字状導体との関係では前記脚の長さが異なる2種類の前記U字状導体用い、前記脚の長さが短い前記U字状導体と、前記脚の長さが長い前記U字状導体とを交互に配置し、前記U字状導体の一方側の前記脚の先端部と、隣接する前記U字状導体の他方側の前記脚の先端部とを接続したことを特徴とする静止電磁機器の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載された静止電磁機器の製造方法において、隣接する前記2種のU字状導体の少なくとも一方側の脚を折曲げ、他方側の脚の先端部と接続したことを特徴とする静止電磁機器の製造方法。
【請求項14】
請求項9に記載された静止電磁機器の製造方法において、前記接続には、接続用導体を用いたことを特徴とする静止電磁機器の製造方法。
【請求項15】
請求項9に記載された静止電磁機器の製造方法において、前記接続は、前記U字状導体の前記脚を折曲げ、先端部同士を接続したことを特徴とする静止電磁機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止電磁機器および静止電磁機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器,リアクトル等の静止電磁機器は、環状に閉じた鉄心の周囲に巻線(コイル)が巻回される構成となっており、電磁誘導現象を利用して電圧変換、高調波信号のフィルタリング等の機能を実現する。主に電力系統中に接続される送配電や受配電用変圧器の鉄心は、方向性電磁鋼板、鉄を主成分とするアモルファス合金等の薄板状の軟磁性材料を複数枚積層、成形して構成される。一般に、静止電磁機器を組立てる場合、鉄心にコイルを巻回す作業は大変である。そのため、コイルを巻回す作業を改良した静止電磁機器が検討されている。そのような先行技術文献の一例が、特開2013-131718号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
この特許文献1では、絶縁基板の一方の面にコア(鉄心)が配置されるとともにコア(鉄心)の周囲を囲むように複数本の巻線構成用線材が延設され、巻線構成用線材の両端が絶縁基板を貫通して絶縁基板の他方の面に突出させている。そして、絶縁基板の他方の面において巻線構成用導体パターンの一端が複数本の巻線構成用線材における巻線構成用線材の一方の先端と接合されるとともに他端が他の巻線構成用線材の一方の先端と接合され、鉄心の周りにコイルを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-131718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1の技術は、絶縁基板の一方の面側からコイルの部品となる巻線構成用線材を絶縁基板の他方の面まで差込み、予め絶縁基板の他方の面に形成した巻線構成用導体パターンと半田等で接合することによりコイル(セグメントコイル)が完成するので、静止電磁機器の組立て作業が容易となる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1の技術は、絶縁基板にパターンを形成した場合でも必要な絶縁性を実現できるような小容量の静止電磁機器において有効な技術である。そのため、特許文献1の技術は、電力系統中に接続される送配電用、受配電用変圧器用の静止電磁機器等のような大容量の静止電磁機器への適用は困難である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、基板を使用できない静止電磁機器を組立てる際の作業性を改善した静止電磁機器および静止電磁機器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明は、その一例を挙げると、セグメントコイルを形成した静止電磁機器であって、U字状導体を複数本配置し、前記U字状導体の配置により形成された空間に鉄心を配置し、前記U字状導体の一端側の脚の先端部と隣接する前記U字状導体の他端側の脚の先端部とを接続した静止電磁機器である。
【0009】
また、本発明の他の例を挙げると、セグメントコイルを形成する静止電磁機器の製造方法であって、複数本のU字状導体を配置し、前記U字状導体の配置により形成された空間に鉄心を配置し、前記U字状導体の一端側の脚の先端部と隣接する前記U字状導体の他端側の脚の先端部とを接続する静止電磁機器の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造時の作業が容易である静止電磁機器および静止電磁機器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1における静止電磁機器の組立工程図である。
図2】本発明の実施例2における静止電磁機器の組立工程図である。
図3】実施例2におけるU字状導体の正面図である。
図4】実施例1と実施例2のU字状導体の接続位置の違いを説明するための図である。
図5】実施例2のセグメントコイルを適用した単相変圧器の全体図である。
図6】実施例2のセグメントコイルを適用した単相変圧器の組立工程図である。
図7】実施例2のセグメントコイルを適用した三相三脚型変圧器の全体図である。
図8】本発明の実施例3における静止電磁機器の組立工程図である。
図9】実施例3における第1のU字状導体の正面図である。
図10】実施例3における第2のU字状導体の正面図である。
図11】本発明の実施例4における静止電磁機器の組立工程図である。
図12】実施例4における第1のU字状導体の正面図である。
図13】実施例4における第2のU字状導体の正面図である。
図14】本発明の実施例5における静止電磁機器の組立工程図である。
図15】実施例5における第1のU字状導体の正面図である。
図16】実施例5における第2のU字状導体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明を具体的な実施例により詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。また、以下の図面において、同一の部品や機器には同じ符号(番号)を用いており、既に説明した部品や動作についての重複する説明を省略する場合がある。
【0013】
≪実施例1≫
まず、本発明の実施例1における静止電磁機器の製造方法を、図1により説明する。図1は、実施例1における静止電磁機器の組立工程を示している。図1においては、静止電磁機器の一部である鉄心1の磁脚部周囲に巻回されたセグメントコイル2の一部分である部分Aを拡大して示し、鉄心に巻回すセグメントコイルの製造工程を示している。
【0014】
この実施例では、最初に、工程(a)に示すように、複数のU字状導体21を配置する。配置するU字状導体21の本数は、コイルとして使用するに必要な本数である。この実施例に使用するU字状導体21は、両側の脚の長さが同じものを用いている。
【0015】
ここで、U字状導体21は、セグメントコイルの一部分を構成するものであり、U字状に曲げられた導体である。U字状導体21は、直線状又は円弧状の底部導体とその低部導体の両端から延伸する一対の脚を有する構成となっている。U字状導体21は、断面が四角や円などの線状の導体を折曲げることにより形成することができる。あるいは、底部導体の両端に脚となる導体を溶接等で接続することにより形成することでも良い。また、U字状導体21の外周面は、絶縁物により被覆している。なお、脚と底部との境界部(曲げ部)は、鉄心1を収容するに適した曲面にしている。U字状導体21の一方側の脚の先端部を隣接するU字状導体21の他方側の脚の先端部と接続することにより、鉄心1の周りを巻回すセグメントコイルを形成する。
【0016】
さて、U字状導体21の配置が終了する(工程(a)参照)と、次に、工程(b)に示すように、鉄心1を複数のU字状導体21により形成された内側の空間に配置する。
【0017】
その後、工程(c)に示すように、U字状導体21の一方側の端部と隣接するU字状導体21の他方側の端部とを接続用導体22で接続する。2aは、その接続端部を示す。すなわち、接続用導体22を用いて、接続端部2aにて溶接等の手段で電気的に接続する。この接続(電気的接続)により、鉄心1の周りにセグメントコイルが形成され、静止電磁機器が完成する。なお、コイル部品同士の接続は、熱溶接、レーザ溶接、TIG溶接、はんだ付け、ろう付け等の方法を用いることができる。
【0018】
この製造方法によれば、U字状導体を複数本配置し、その配置されたU字状導体により形成される空間に鉄心を配置し、U字状導体の端部同士を接続することのみによりセグメントコイルを形成することが出来るので、作業性が良く、静止電磁機器を容易に製造することが出来る。
【0019】
ところで、この図1に示す実施例1の静止電磁機器の製造においては、隣接するコイルターン間の接続箇所が互いに近接している。組立作業の観点、および接続箇所間の電気的絶縁の確保を考慮すると、コイルの隣接ターン間の距離を一定以上確保することが要請される。コイルの隣接ターン間の距離を一定以上確保する場合、総巻数が多い巻線(セグメントコイル)ではその全長が長くなることが避けられない。その結果、コイルが巻回される鉄心の長さも長くなり、静止電磁機器の容積が大形化するという課題がある。そこで、以下に示す本発明の実施例では、そのような課題をも解決している。
【0020】
≪実施例2≫
本発明の実施例2の構成および効果について、図2から図7を用いて説明する。
最初に、実施例1における組立工程について図2および図3により説明する。図2は、実施例2における静止電磁機器の組立工程を示しており、静止電磁機器の一部である部分Aを拡大して示し、鉄心に巻回すセグメントコイルの製造工程を示している。図3は、実施例2において使用するU字状導体を示す図である。
【0021】
この実施例2で使用するU字状導体21は、図3に示すように、両側の脚の長さが異なるものを使用する。すなわち、U字状導体21は、両端の脚の長さ(高さ)が一定値Sだけ異なっている。この図2に示す静止電磁機器は、次のような工程により製造される(組立てられる)。
【0022】
まず、図2の工程(a)に示すように、脚の長さが異なるU字状導体21(図3参照)を、隣接するU字状導体21の脚の高さが異なるように互い違いに並べて複数本配置する。つまり、あるU字状導体21の一方側の脚の高さが低い(長さが短い)場合、隣接するU字状導体21の同じ側の脚の高さが高くなる(長さが長くなる)ように配置する。具体的には、奇数番目のU字状導体21を配置し、隣接する偶数番目のU字状導体21を奇数番目のU字状導体21に対して180度回転させて配置することで実現できる。配置するU字状導体21の本数は、静止電磁機器100のコイルに必要な本数である。
【0023】
次に、複数本のU字状導体21により形成される空間に、工程(a)のように鉄心1を配設する。これにより、鉄心の周り(三方向)がU字状導体21で囲まれた状態となる。
【0024】
次に、U字状導体21の一方側の脚の先端部と隣接するU字状導体21の他方側の脚の先端部とを接続用導体で接続する。
【0025】
この実施例では、2種類の接続用導体を用いている。すなわち、第1の接続用導体22aと、第2の接続用導体22bを使用する。まず、図の工程(b)に示すように、隣接するU字状導体21における脚が長い側の先端同士を、第1の接続用導体22aにより接続端部2aで接続する。なお,コイル部品同士の接続は,熱溶接,レーザ溶接,TIG溶接,はんだ付け,ろう付け等の方法を用いることができる。
【0026】
そして、図2の工程(c)に示すように、隣接するU字状導体21における短い脚の先端部同士を、第2の接続用導体22bにより接続端部2bで接続する。
【0027】
このようにしてセグメントコイルが鉄心1に巻回されることになり、静止電磁機器を製造することができる。
【0028】
次に、上述した実施例2の静止電磁機器の製造方法が、実施例1(図1参照)の製造方法に比べて作業性、小型化の点で優れていることについて図4を用いて説明する。図4は、セグメントコイル部品の接続位置を比較したものであり、同図の(a)は実施例1の製造方法を示し、同図の(b)は実施例2に係る製造方法を示している。
【0029】
実施例1(図1参照)では、U字状導体21として両端の脚の長さ(高さ)が同じものを用いている。そのため、図4の(a)に示すように、隣接するU字状導体21同士を比較すると脚の高さ(長さ)は同じになり、そのU字状導体21の脚の先端部同士を接続用導体22で接続端部2aにて接続していた。この構成では、隣接する接続端部2aが同じ高さで近接するため、溶接等の加工による素線のふくらみの分や、接続工程における作業性の確保等の理由により、隣接するセグメントコイル部品(U字状導体)間の距離dを一定以上持たせないと作業性に影響を与える。その結果、セグメントコイル全体の長さが長くなり、コイルが巻回される鉄心1の長さも長くなり、ひいては静止電磁機器自体の大形化、高コスト化につながる。
【0030】
これに対し、実施例2(図2図3参照)の場合、図4の(b)に示すように、隣接するターン間のセグメントコイル部品の接続端部2aの高さが互いに長さSだけ異なるようになる。そのため、接続端部2a、2bにおける溶接等の加工によるふくらみの分や、接続工程における作業性を確保するための距離d’を小さくすることができる。その結果、セグメントコイル全体の長さを短くすることができ、鉄心1を小型化することが出来、ひいては静止電磁機器自体の小形化、低コスト化が可能になる。
【0031】
さて、次に、図2により説明したようなセグメントコイルを用いた単相変圧器の構造および製造(組立て)方法について説明する。図5は、単相巻鉄心(鉄心1)の2本の磁脚部に、2組のセグメントコイル2を巻回して製造した単相変圧器の全体図を示す。各セグメントコイル2は,図2に示したと同様のセグメントコイルからなる低圧コイルの外周に、図2に示したと同様の構造のセグメントコイルからなる高圧コイルを重ねて構成している。図6は、単相変圧器の組立工程図である。この単相変圧器の組立て方法は次のとおりである。
【0032】
まず、図6の工程(a)に示すように、両端の高さ(長さ)が異なるU字状導体21を互い違いに並べたセットを2組(2セット)設け配置する。そして、2セットのU字状導体で形成された夫々の空間部に、単相変圧器用の鉄心1の両側の2本の磁脚部を配設する。
【0033】
次に、工程(b)に示すように、隣接するU字状導体21の脚が長い側の先端同士を、第1の接続用導体22aで接続する。また、隣接するU字状導体21の脚の長さが短い側の先端同士を、第2の接続用導体22bで接続する。このようにして内側のセグメントコイルが鉄心1に巻回され、単相変圧器の低圧コイルが組立てられる。
【0034】
次に、工程(c)に示すように、第2のコイルを構成する両端の高さが異なる高圧用のU字状導体を互い違いに並べたセット23を2セット設け、工程(b)で構成された内側のセグメントコイルの外側に挿入する。
【0035】
そして、工程(d)に示すように、隣接する高圧用のU字状導体のセット23の、脚の長さが長い側の先端同士を第1の接続用導体24aで接続する。また、隣接するU字状導体のセット23の脚の長さが短い先端部同士を、第2の接続用導体24bでそれぞれ接続する。このようにして、外側のセグメントコイルが鉄心1に巻回され、単相変圧器の第2のコイル(高圧コイル)が組立てられる。なお,高圧コイルの一部を構成するU字状導体の接続端部は、低圧コイルの接続端部と隣接しないように、高圧用のU字状導体の挿入方向を、低圧コイルを構成するU字状導体と逆方向とするのが好適である。
【0036】
以上、図2に示したようなセグメントコイルを用いる場合の単相変圧器の製造方法(組立て方法)を説明したが、図2に示したようなセグメントコイルを用いて三相変圧器を製造することもできる。図7は、三相三脚型変圧器の全体図である。この三相三脚型変圧器は、2つの内側巻鉄心を隣接させ、その外側に1つの外側巻鉄心を備えて構成される三相三脚巻鉄心(鉄心1)の3本の磁脚に、図2で説明したようなセグメントコイル2を3組備えて構成している。各セグメントコイル2は、単相変圧器(図6参照)と同様に、低圧コイルの外周に,同様の構造の高圧コイルを重ねて構成している。なお、三相三脚型変圧器の製造方法は、基本的に単相変圧器の製造方法(図6参照)と同様であるため、その説明は省略する。
【0037】
≪実施例3≫
次に、本発明の実施例3について、図8図10を用いて説明する。図8は、実施例3における静止電磁機器の組立工程図である。図9図10は、この実施例3における第1のU字状導体21aと第2のU字状導体21bの断面図を夫々示す。
【0038】
この実施例3におけるU字状導体は、図8の工程(a)、図9および図10に示すように、両端の高さが同一における脚の長さは同じであるが隣接するU字状導体の脚の長さとは異なる2種類のU字状導体(第1のU字状導体21aと、第2のU字状導体21b)とを用いている。実施例3の静止電磁機器の製造方法(組立方法)は次のとおりである。
【0039】
まず、図8の工程(a)に示すように、脚の長さが異なる2種類のU字状導体(第1のU字状導体21aと、第2のU字状導体21b)を、交互に複数本並べて配置する。これにより、隣接する第1のU字状導体21aの脚の長さと、第2のU字状導体21bの脚の長さが夫々の側で交互に異なる状態で配置される。そして、複数本のU字状導体の配置により生成された空間に鉄心1を配置する。この例における鉄心1は、断面形状が円形の鉄心を用いている。なお、工程(a)に示す矢印の方向は、脚を曲げる際の方向と端部同士の接続位置を示している。
【0040】
続いて、工程(b)に示すように、該鉄心1の上方に飛び出した第2のU字状導体21bの脚を折曲げ(この例では、鉄心の形状に合わせて円弧状に折曲げ)、その先端部と隣接する第1のU字状導体21aの脚の先端部同士を接続端部2aにおいて接続する。このようにして、鉄心1にセグメントコイルを巻回すことができ、静止電磁機器の組立てを行うことができる。
【0041】
次に、図9図10により、この実施例3における第1のU字状導体21aと、第2のU字状導体21bの脚の長さを説明する。
【0042】
まず、図9に示した第1のU字状導体21aは、下半分は半径Rの半円を形成する一方、上半分は次式で示される直線状の長さとする。
(2πR/360°)・(90°-θ°/2)…………(1)
また、図10に示した第2のU字状導体21bは、下半分は21aと同じく半径Rの半円を形成する一方、上半分は次式で示される直線状の長さとする。
(2πR/360°)・(90°+θ°/2)…………(2)
【0043】
上記の寸法でU字状導体21aおよび第2のU字状導体21bを構成することにより、図8で示した方法によりセグメントコイルを組み立てた際、隣接するターン間の接続端部2aの位置を角度θ°だけ離すことができる。
【0044】
このような構成にすると、鉄心1に巻回したセグメントコイルにおいて、接続端部2aの位置を、隣接するターン間で角度θだけ離すことができる。よって,隣接するターンの接続端部が同じ位置となる実施例1の構成に比べて、接続端部2aにおける溶接等の加工によるふくらみの分や、接続工程における作業性を確保するためのターン間の距離を小さくすることができる。その結果、セグメントコイル全体の長さを短くすることができ、巻回する鉄心1の長さも短くすることができ、静止電磁機器自体の小形化、低コスト化を実現できる。
【0045】
≪実施例4≫
次に、本発明の実施例4を図11から図13を用いて説明する。図11は、本発明の実施例4における静止電磁機器の組立工程図を示す。図12図13は、この実施例4における第1のU字状導体21aと第2のU字状導体21bの断面図を夫々示す。
【0046】
この実施例4におけるU字状導体は、基本的に上述した実施例3と同様である。すなわち、図11図12及び図13に示すように、両端における脚の長さは同じであるが隣接するU字状導体の脚の長さとは異なる2種類のU字状導体(第1のU字状導体21aと、第2のU字状導体21b)を用いている。そして、U字状導体の底部は直線状となっている。この実施例4における静止電磁機器の製造方法は次のとおりである。
【0047】
まず、図11の工程(a)に示すように、両端の脚の高さが同一であり、互いに脚の高さが異なる2種類のU字状導体(第1のU字状導体21aと、第2のU字状導体21b)を隣接するU字状導体間で脚の長さが異なるように、交互に並べる。そして、複数本のU字状導体の配置により生成された空間に鉄心1を配置する。この例における鉄心1は、断面形状が矩形の鉄心を用いている。なお、工程(a)における矢印は、脚の折り曲げ方向と脚同士の接続箇所(接続端部)を示している。
【0048】
次に、工程(b)に示すように、該鉄心1の上方に飛び出した第2のU字状導体21bの脚を折り曲げ、隣接する第1のU字状導体21aと接続端部2aで接続する。これにより、鉄心1の周りにセグメントコイルを巻回すことができ、静止電磁機器の組立て(製造)を行うことができる。
【0049】
次に、図12図13により、この実施例4における第1のU字状導体21aと第2のU字状導体21bの脚の長さを説明する。
【0050】
まず、図12に示した第1のU字状導体21aは、矩形断面の鉄心1の三方の外周を囲む形状であり、このときの左右の幅をWとする。脚の長さは、鉄心の高さより少し長い。
【0051】
また、図13に示した第2のU字状導体21bは、第1のU字状導体21aと同じく矩形断面の鉄心1の三方の外周を囲む一方、上方に鉄心1の幅Wに相当する長さだけ直線状に延長した形状とする。なお、図中に示した25は、セグメントコイルの組立て時に折曲げ加工を施す位置を示している。図12に示すような第1のU字状導体21aと、図13に示すような第2のU字状導体21bとを構成することにより、図11で示したセグメントコイルを組立てた際、隣接するターン間の接続端部2aの位置を、対向する頂点とすることができる。このようにすると、接続作業が容易となる。
【0052】
このような構成にすると、該鉄心1に巻回させたセグメントコイルにおいて、接続端部2aの位置を、隣接するターン間で対向する頂点とすることができる。よって、隣接するターンの接続箇所が同じ位置となる実施例1のような構成に比べて、接続端部2aにおける溶接等の加工によるふくらみの分や、接続工程における作業性を確保するためのターン間の距離を小さくすることができる。その結果、セグメントコイル全体の長さを短くすることができ、鉄心1の長さも短くすることができ、ひいては静止電磁機器自体の小形化、低コスト化を実現することができる。
【0053】
≪実施例5≫
次に、本発明の実施例5を,図14から図16を用いて説明する。図14は、実施例5における静止電磁機器の組立工程図を示す。図15図16は、実施例5における第1のU字状導体21aおよび第2のU字状導体21bの断面図を夫々示したものである。
【0054】
この実施例5におけるU字状導体は、上述した実施例4(図11参照)に示したと同様の、底部は直線状であり、両端における脚の長さは同じであるが隣接するU字状導体の脚の長さとは異なる2種類のU字状導体を用いている。この実施例5における静止電磁機器の製造方法は次の通りである。
【0055】
まず、図14の工程(a)に示すように、第1のU字状導体21aと第2のU字状導体21bとを交互に並べる。これにより、並べられたU字状導体の脚の高さはU字状導体間で交互に異なることになる。そして、複数本のU字状導体の配置により生成された空間に鉄心1を配置する。この例における鉄心1は、断面形状が矩形の鉄心を用いている。
【0056】
次に、工程(b)に示すように、鉄心1の上方に飛び出した,隣接する第1のU字状導体21aの脚と第2のU字状導体21bの脚の先端同士を折曲げて、頂点部の接続端部2aで接続する。これにより、鉄心1の周囲に巻回されたセグメントコイルが構成され、静止電磁機器の組立てが完成する。
【0057】
次に、図15図16により、実施例5における第1のU字状導体21aと第2のU字状導体21bの脚の長さを説明する。
【0058】
まず、図15に示した第1のU字状導体21aは、矩形断面の鉄心1の三方の外周を囲み、左右の幅がWである形状である一方、上方に長さ(W-G)/2だけ直線状に延長された形状とする。なお図中に示した25は,セグメントコイルの組立て時に折曲げ加工を施す位置を示す折曲部である。
【0059】
また、図16に示した第2のU字状導体21bは、第1のU字状導体21aと同じく矩形断面の鉄心1の三方の外周を囲み、左右の幅がWである形状である一方、上方に長さ(W+G)/2だけ直線状に延伸した形状とする。このような寸法で第1のU字状導体21aおよび第2のU字状導体21bを構成することにより、図14で示したセグメントコイルを組立てた際、鉄心1の上面に形成される隣接するターン間の接続端部2aの位置を、距離Gだけ離すことができる。
【0060】
このような構成にすると、鉄心1に巻回したセグメントコイルにおいて、鉄心1の上面に形成される接続端部2aの位置を、隣接するターン間で距離Gだけ離すことができる。よって、隣接するターンの接続箇所が同じ位置となる実施例1のような構成に比べて、接続端部2aにおける溶接等の加工によるふくらみの分や、接続工程における作業性を確保するためのターン間の距離を小さくすることができる。その結果、セグメントコイル全体の長さを短くすることができ、巻回する鉄心1の長さも短くすることが出来、ひいては静止電磁機器自体の小形化、低コスト化が実現できる。
【0061】
≪その他の実施例≫
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明は様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0062】
1…鉄心、2…セグメントコイル、2a…接続端部、2b…接続端部、21…U字状導体、21a…第1のU字状導体、21b…第2のU字状導体、22…接続用導体、22a…第1の接続用導体、22b…第2の接続用導体、23…U字状導体のセット、25…折曲部
図1
図2
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