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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071612
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】加湿器の保護構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20220509BHJP
【FI】
H01M8/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180671
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】梶尾 克宏
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127EE17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エンドプレートに備えた加湿器を保護する加湿器の保護構造を提供する。
【解決手段】燃料電池システムにおいて、燃料電池1の複数の燃料電池セル1aを一体化するエンドプレート2の外面に、燃料電池1に供給する酸化剤ガスを加湿する加湿器25を設け、加湿器25の外側の周囲を覆う保護部材Fが加湿器25と一体となり取付けられている。さらに、加湿器25が燃料電池1に供給される未反応の酸化剤ガスに対して、燃料電池1から排出された反応後の酸化剤ガスに含まれる水を与える複数のセパレータ25aを有する。複数のセパレータ25aは、エンドプレート2の外面に積層状態で備えられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の複数の燃料電池セルを一体化するエンドプレートの外面に、前記燃料電池に供給する酸化剤ガスを加湿する加湿器を設け、前記加湿器の外側の周囲を覆う保護部材が前記加湿器と一体となり取付けられている加湿器の保護構造。
【請求項2】
前記加湿器が、前記燃料電池に供給される未反応の酸化剤ガスに対して、前記燃料電池から排出された反応後の酸化剤ガスに含まれる水を与える複数のセパレータを有し、
複数の前記セパレータが前記エンドプレートの前記外面に積層状態で備えられている請求項1に記載の加湿器の保護構造。
【請求項3】
前記エンドプレートの前記外面に対し、前記燃料電池に供給する燃料ガスを制御する燃料ガス制御ユニットと、前記燃料電池に供給する酸化剤ガスを制御する酸化剤ガス制御ユニットとが備えられ、
前記燃料ガス制御ユニットを構成する燃料ガス制御体、あるいは、前記酸化剤ガス制御ユニットの酸化剤ガス制御体の少なくとも一方が前記保護部材に支持されている請求項1又は2に記載の加湿器の保護構造。
【請求項4】
前記保護部材が、前記エンドプレートのプレート面から突出する姿勢で前記エンドプレートの前記外面に支持される複数の柱状体と、前記加湿器のうち前記エンドプレートを基準に突出する方向となる突出側外面の外方を覆う位置において複数の前記柱状体の突出側の端部に固定されるカバー体とを備えている請求項1~3のいずれか一項に記載の加湿器の保護構造。
【請求項5】
前記エンドプレートのプレート面に直交する方向視で、前記保護部材の一部が前記エンドプレートの外縁から外方に突出するオフセット位置で前記エンドプレートの前記外面に備えられている請求項1~4のいずれか一項に記載の加湿器の保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿器の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の発電セルを積層状態で備えた燃料電池は、発電セルの積層方向での両端部にエンドプレートを備えており、一方のエンドプレートの外部に燃料ガスの供給を制御する制御部、あるいは、酸化剤ガスの供給を制御する制御部を備えたものが下記の特許文献1及び特許文献2に示されている。
【0003】
特許文献1には、燃料電池スタックの一方のエンドプレートを貫通するように燃料ガスの入口と出口の連通孔が形成され、このエンドプレートの外面に、燃料ガス制御部(文献では燃料ガスユニット)と、酸化剤ガス制御部(文献では酸化剤ガスユニット)とを備えている。
【0004】
特に、この特許文献1に記載される燃料ガスユニットは、燃料ガスユニットカバー部材で覆われ、この燃料ガスユニットカバー部材はエンドプレートに固定されている。尚、酸化剤ガスユニットは加湿器を備えている。
【0005】
特許文献2には、一方のエンドプレートの外方に側方デバイスカバーと上方デバイスカバーと備え、これらのカバーで覆われる空間に水素ガスセンサと、燃料ガス系デバイス群とを収容している。また、上方デバイスカバーの外面に加湿器を備えた実施形態も示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-159005号公報
【特許文献2】特開2015-23598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池は、酸化剤ガスを加湿する加湿器を必要とする。また、加湿器は比較的大型であるため、エンドプレートに支持した場合には、加湿器が外方に突出することになる。特に、車両に備える燃料電池では、不整地を走行する場合に、燃料電池の保護だけでなく、加湿器の保護を考慮する必要がある。
【0008】
燃料電池を車両に備える場合には、燃料電池の配置スペースを拡大することなく、燃料電池の近傍の装置や、燃料電池の近傍の機器との干渉を避ける位置に燃料電池を配置することも求められる。
【0009】
このような観点からすると、特許文献2に記載される側方デバイスカバーを用いることは加湿器等を保護する観点から有効であるが、側方デバイスカバーを備えるため燃料電池システムの大型化を招きやすく改善の余地がある。
【0010】
このような理由から、エンドプレートに備えた加湿器を保護し得る加湿器の保護構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る加湿器の保護構造の特徴構成は、燃料電池の複数の燃料電池セルを一体化するエンドプレートの外面に、前記燃料電池に供給する酸化剤ガスを加湿する加湿器を設け、前記加湿器の外側の周囲を覆う保護部材が前記加湿器と一体となり取付けられている点にある。
【0012】
この特徴構成によると、保護部材が加湿器と一体となるように取付けられているため、保護部材の外面に向けて異物等が接近した場合でも、保護部材が異物等に接触することにより、異物等が加湿器に接触して加湿器が破損する不都合を解消できる。
従って、エンドプレートに備えた加湿器を保護し得る加湿器の保護構造が得られた。
【0013】
上記構成に加えた構成として、前記加湿器が、前記燃料電池に供給される未反応の酸化剤ガスに対して、前記燃料電池から排出された反応後の酸化剤ガスに含まれる水を与える複数のセパレータを有し、複数の前記セパレータが前記エンドプレートの前記外面に積層状態で備えられても良い。
【0014】
これによると、加湿器が、複数のセパレータを積層した構造であるため、エンドプレートから離れる方向に突出するものの、この突出部位を保護部材で保護できる。
【0015】
上記構成に加えた構成として、前記エンドプレートの前記外面に対し、前記燃料電池に供給する燃料ガスを制御する燃料ガス制御ユニットと、前記燃料電池に供給する酸化剤ガスを制御する酸化剤ガス制御ユニットとが備えられ、前記燃料ガス制御ユニットを構成する燃料ガス制御体、あるいは、前記酸化剤ガス制御ユニットの酸化剤ガス制御体の少なくとも一方が前記保護部材に支持されても良い。
【0016】
これによると、燃料ガス制御ユニットを構成する燃料ガス制御体、あるいは、酸化剤ガス制御ユニットの酸化剤ガス制御体が保護部材に支持されるため、燃料ガス制御体と酸化剤ガス制御体とをエンドプレートから離間する位置に配置する場合でも、これらをエンドプレートに支持するために別途大型のブラケット等を用いる必要がない。
【0017】
上記構成に加えた構成として、前記保護部材が、前記エンドプレートのプレート面から突出する姿勢で前記エンドプレートの前記外面に支持される複数の柱状体と、前記加湿器のうち前記エンドプレートを基準に突出する方向となる突出側外面の外方を覆う位置において複数の前記柱状体の突出側の端部に固定されるカバー体とを備えても良い。
【0018】
これによると、例えば、複数の柱状体を、加湿器を取り囲む領域に配置し、これらの柱状体をプレート面から突出する姿勢でエンドプレートに備え、加湿器の突出側外面を覆うようにカバー体を配置して柱状体の突出側の端部に備えることで、加湿器の全体を覆う大型のフレームを用いなくとも、カバー体により加湿器を保護できる。また、この構成では、複数の柱状体によって加湿器の側面の保護も可能であり、複数の柱状体の間の開放した空間から加湿器のメンテナンスも行える。
【0019】
上記構成に加えた構成として、前記エンドプレートのプレート面に直交する方向視で、前記保護部材の一部が前記エンドプレートの外縁から外方に突出するオフセット位置で前記エンドプレートの前記外面に備えられても良い。
【0020】
これによると、燃料電池を車両に備える場合には、例えば、不整地を走行する際に地面等との接触を抑制できる位置に加湿器と保護部材とをオフセットさせることにより、地面等と加湿器との接触を回避できる。また、不整地を走行する際等において地面の石等が飛来した場合には、保護部材が、石等が加湿器に接触する不都合を解消して加湿器を保護できる。更に、エンドプレートの位置を基準にして保護部材を上側となるようにオフセット方向を設定することや、左右方向での一方側に変位するようにオフセット方向を設定することにより、配置の自由度が向上し燃料電池の配置スペースを拡大することなく、燃料電池の近傍の装置や機器と加湿器等との干渉を避ける位置に燃料電池を配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】燃料電池システムのブロック回路図である。
図2】エンドプレートと保護フレーム等との位置関係を示す正面図である。
図3】エンドプレートと保護フレーム等との位置関係を示す縦断側面図である。
図4】分解状態の保護フレームと加湿器とを示す斜視図である。
図5】別実施形態(a)のエンドプレート保護フレームを示す斜視図である。
図6】別実施形態(a)のエンドプレートと保護フレーム等との位置関係を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1図3に示すように、燃料電池1と、燃料電池1の複数の燃料電池セル1aに供給する燃料ガスを制御する燃料ガス制御ユニット10と、燃料電池セル1aに供給される酸化剤ガスを制御する酸化剤ガス制御ユニット20とを備えて燃料電池車(FCV)に搭載される燃料電池システムAが構成されている。
【0023】
この燃料電池システムAでは、図2図3に示すように、酸化剤ガス制御ユニット20を構成する加湿器25を備えており、この加湿器25の周囲を覆い、加湿器25と一体化する保護する保護フレームF(保護部材の一例)を備えている。この保護フレームFの詳細は後述する。
【0024】
図1に示すように、燃料ガス制御ユニット10は、燃料ガス(水素ガス)を貯留する燃料タンク4からの燃料ガスを燃料電池1に供給する燃料ガス供給路11と、燃料電池1で反応した後の燃料ガスを排出する燃料ガス排出路12と、燃料ガス供給路11の燃料ガスの流量を制御する燃料ガス制御弁13(燃料ガス制御体の一例)と、燃料ガス排出路12を流通する反応後の燃料ガスに含まれる水を分離回収する気液分離器14(燃料ガス制御体の一例)と、気液分離器14で回収された水を外部に排出するため気液分離器14の重力作用方向の下端に連結される排出弁15とを備えている。尚、燃料ガス制御弁13と、排出弁15とは、制御信号により作動する電磁弁として構成されている。
【0025】
酸化剤ガス制御ユニット20は、外部のコンプレッサ5から供給される酸化剤ガス(空気、未反応の酸化剤ガス)を燃料電池1に供給する酸化剤ガス供給路21と、燃料電池から排出された反応後の酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス排出路22と、酸化剤ガス供給路21の酸化剤ガスの流量を制御する酸化剤ガス制御弁23(酸化剤ガス制御体の一例)と、酸化剤ガス排出路22の反応後の酸化剤ガスの流量を制御する排出制御弁24(酸化剤ガス制御体の一例)と、加湿器25とを備えている。尚、酸化剤ガス制御弁23と、排出制御弁24とは、制御信号により作動する電磁弁として構成されている。
【0026】
この燃料電池システムAでは、気液分離器14で水が分離された燃料ガスを燃料ガス供給路11の燃料ガスに合流させ、排出された燃料ガスに含まれる燃料ガスの再利用を可能にしている。また、排出弁15は、気液分離器14の内部に貯留された水が設定量を超える毎に開放して水を排出するように制御が行われる。
【0027】
燃料電池1は、図3に示すように、複数の燃料電池セル1aを積層方向で挟む両端位置にアルミニウム材等の金属材で形成されるエンドプレート2(図示は片側のみ)を配置している。エンドプレート2は複数の燃料電池セル1aを一体化するように機能するものであり、燃料電池システムAは、燃料ガス制御ユニット10と、酸化剤ガス制御ユニット20と、加湿器25とを、図2図3に示すように一方のエンドプレート2の外面(燃料電池セル1aが配置された面と反対側の面)に備えている。
【0028】
〔加湿器〕
加湿器25は、酸化剤ガス制御ユニット20の一部であり、この加湿器25は、図3に示すように、酸化剤ガス供給路21を流通する未反応で乾燥状態にある酸化剤ガスと、燃料電池1の反応後で酸化剤ガス排出路22を流通する水分を多く含んだ酸化剤ガスとが流れる複数のセパレータ25aを有している。夫々のセパレータ25aは、酸化剤ガス供給路21から供給される未反応の酸化剤ガスが流れる流路と、酸化剤ガス排出路22から供給される反応後の酸化剤ガスが流れる流路とを有し、夫々の流路の境界に水交換膜(図示せず)を配置している。
【0029】
図3図4に示すように、加湿器25は、保護フレームF(保護部材の一例)のベースプレート31を、加湿器25の支持プレートに兼用している。また、加湿器25は、ベースプレート31と、圧縮バネ25sで付勢されるプレッシャプレート25pと、トップケース25bとを備えており、プレッシャプレート25pと、トップケース25bとの間に、複数のセパレータ25aを積層状態で配置している。
【0030】
また、ベースプレート31に一端が連結されるシャフト25cの他端部に保持ボルト25dを螺合させることで、トップケース25bの位置が決まるように構成されている。
【0031】
積層状態にある複数のセパレータ25aに対し、酸化剤ガス供給路21の導入側と導出側とに夫々連通する2つの流路と、酸化剤ガス排出路22の導入側と導出側とに夫々連通する2つの流路とが、セパレータ25aの積層方向に形成されている。これら4つの流路が、トップケース25bに形成された4つのポート26に連通している。
【0032】
つまり、前述した4つのポート26のうち、酸化剤ガス供給路21の導入側ポートに対してコンプレッサ5から未反応で乾燥状態にある酸化剤ガスが供給され、加湿器25内で加湿された後、この酸化剤ガスが、4つのポート26のうち、酸化剤ガス供給路21の導出側ポートから燃料電池1に送り出される。
【0033】
また、前述した4つのポート26のうち、酸化剤ガス排出路の導入側ポートに対して燃料電池からの反応後で水分を含んだ燃料ガスが供給され、加湿器25内で除湿された後、この酸化剤ガスが、4つのポート26のうち、酸化剤ガス排出路22の排出側ポート送り出される。このように酸化剤ガスが流れることにより、加湿器25において、燃料電池に供給される酸化剤ガスの加湿が行われる。
【0034】
加湿器25は、前述したように、複数のセパレータ25aを重ね合わせた構造であり、一対の流路の一方に未反応で乾燥状態の酸化剤ガスを加圧供給し、一対の流路の他方に反応後で水分を含んだ酸化剤ガスを供給することで、これらの境界の水交換膜を介して水を交換する。しかし、複数のセパレータ25aの間から酸化剤ガスが漏出することもある。
【0035】
このような理由からプレッシャプレート25pに圧縮バネ25sの付勢力を作用させることで、セパレータ25a同士を密着させ、酸化剤ガスの漏出を抑制している。尚、加湿器25は、保護フレームFのベースプレート31を、加湿器25の支持プレートに兼用しているが、専用に支持プレートを用いても良い。
【0036】
〔保護フレーム〕
燃料電池システムAは、前述したように燃料ガス制御ユニット10と酸化剤ガス制御ユニット20とが一方のエンドプレート2の外面に備えられている。燃料電池1は、任意の姿勢で用いることが可能であるが、本実施形態では、図2図3に示す姿勢で車体に備えられており、この姿勢に基づき、各部の位置関係や上下方向を説明する。
【0037】
この燃料電池システムAでは、図2図3に示すようにエンドプレート2のプレート面に直交する方向視(図2に示す方向視)で、保護フレームFの一部が、エンドプレート2の外縁から外方(図2図3では下側)にオフセット量Dだけ変位するオフセット位置に備えられている。図面には示していないが、保護フレームFが、エンドプレート2の横方向でのセンター位置から左右方向での一方にオフセット(変位)するように位置を決めても良い。
【0038】
この実施形態では、保護フレームFがベースプレート31に支持されているため、保護フレームFと、加湿器25とが一体的にオフセットしてエンドプレート2の外面に取付けられている。
【0039】
図3図4に示すように保護フレームFは、トップケース25bを覆う位置に配置されている。つまり、保護フレームFは、ベースプレート31と、このベースプレート31に一体形成した複数(実施形態では4つ)の支柱部32(柱状体の一例)と、支柱部32の突出端に備えられるトップカバー33(カバー体の一例)と、複数の支柱部32の基端部分の外周からベースプレート31に亘る領域に形成された補強リブ34と、トップカバー33を複数の支柱部32に連結する連結ボルト35とを有している。
【0040】
ベースプレート31は、外周部に複数(実施形態では4つ)形成された貫通孔31aを挿通する締結ボルト36によりエンドプレート2に固定されている。これにより保護フレームFはベースプレート31を介してエンドプレート2に支持される。また、ベースプレート31とトップカバー33との中間で、ベースプレート31のプレート面に直交する方向視において、複数の支柱部32で取り囲まれる領域に保護空間Fsに加湿器25が収容されている。
【0041】
このように、加湿器25の複数のセパレータ25aを取り囲む領域に複数の支柱部32が配置され、加湿器25の突出端となるトップケース25bの外方を覆う位置にトップカバー33を配置している。このような構成から、保護フレームFは、加湿器25の突出側の端部をトップカバー33で保護し、加湿器25の側面を複数の支柱部32で保護する。
【0042】
この保護フレームFは、複数の連結ボルト35の連結を解除することでトップカバー33の取り外しが可能であり、この取り外しにより加湿器25のメンテナンスを容易に行える。また、トップケース25bにより加湿器25の内部への保護、外面での飛び石等による保護が十分に可能であれば、トップカバー33は特に設けなくても良い。
【0043】
この保護フレームFでは、ベースプレート31と、支柱部32と、トップカバー33とをアルミニウム材や鋼材等の金属材で形成するものを想定しているが、一部を樹脂で形成することや、全体を樹脂で形成しても良い。
【0044】
図2に示すように、保護フレームFの近傍に燃料ガス制御ユニット10を構成する気液分離器14と燃料ガス制御弁13とが配置されている。これと同様に、保護フレームFの近傍に、酸化剤ガス制御ユニット20を構成する酸化剤ガス制御弁23と、排出制御弁24とが配置されている。
【0045】
保護フレームFの支柱部32、あるいは、補強リブ34には、気液分離器14と、燃料ガス制御弁13と、酸化剤ガス制御弁23と、排出制御弁24とを個別に支持するブラケット37が備えられている。これにより、保護フレームFをエンドプレート2から取り外した場合には、気液分離器14と燃料ガス制御弁13と酸化剤ガス制御弁23と排出制御弁24とを同時に取り外すことが可能となる。
【0046】
〔実施形態の作用効果〕
加湿器25をエンドプレート2の外面に備え、この加湿器25のトップケース25b(突出側外面)を覆う保護フレームF(保護部材の一例)をエンドプレート2に備えているため、このトップケース25bがエンドプレート2から大きく突出する構成であっても、保護フレームFで加湿器25を保護できる。つまり、燃料電池システムAを車両に備えた場合には、車両の走行に伴い地面から加湿器25に向けて石等が飛来することがあるものの、保護フレームFのトップカバー33に石等が接触するだけで、石が当たった(強く接触した)としても、加湿器25が確実に保護され、破損や故障を招くことがなく、性能が劣化することが防止可能となる。
【0047】
また、エンドプレート2の外面に近傍に、燃料電池1を制御する装置や、機器等が配置された車両に燃料電池システムAを備える場合には、これらと加湿器25とが接触しないように加湿器25と保護フレームFとをオフセットさせてエンドプレート2に固定することで、燃料電池システムAを配置するために大きい空間を確保することなく、燃料電池システムAを車体に備えることが可能となる。
【0048】
また、車体に大きい外力が作用して車体の一部が燃料電池システムAに接触する方向に変位する現象を想定すると、例えば、外力の作用による車体の一部の変位方向、変位量等を予め推定しておき、このように変位した場合でも接触しないように、加湿器25等のオフセット量Dとオフセット方向とを設定することも考えられ、この設定により、加湿器25等の破損の抑制が可能となる。
【0049】
更に、この構成では保護フレームFの支柱部32等、ベースプレート31の表面から比較的離間する位置に備えたブラケット37に対して、燃料ガス制御弁13や酸化剤ガス制御弁23を支持できるため、これらの制御弁等をエンドプレート2に支持するための部材を用いることなく、これらを適正な位置に支持できる。
【0050】
保護フレームFが、複数の支柱部32(柱状体)と、トップカバー33(カバー体)とで構成されるため、例えば、保護フレームFが、加湿器25の全体を覆う箱状に形成されるものと比較して、保護フレームFの大型化や重量化を抑制し、支柱部32の間の空間を介して加湿器25のメンテナンスを行える。
【0051】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0052】
(a)図5図6に示すように保護フレームFを構成する。つまり、保護フレームF(保護部材の一例)は、加湿器25のトップケース25b(突出側外面)を覆う位置に配置されるトップカバー33(カバー体の一例)と、トップカバー33の外縁からエンドプレート2の方向に突出する複数(実施形態では4つ)の支持脚部38(柱状体の一例)と、複数の支持脚部38のうち一対の支持脚部38とトップカバー33とを連結する補助フレーム38aと、複数の支持脚部38の夫々と一体化され複数の支持脚部38の延出方向に沿って延出する複数(実施形態では4つ)のボルト挿通部38bと、ボルト挿通部38bに挿通する固定ボルト39とを備えている。
【0053】
この別実施形態(a)では、固定ボルト39が螺合するネジ孔2aをエンドプレート2に形成し、これらのネジ孔2aに固定ボルト39を螺合させることで、保護フレームFをエンドプレート2の外面に固定する。これにより、保護フレームFのトップカバー33が加湿器25の突出端となるトップケース25bの外方を覆う位置に配置される。図面には示していないが、この構成の保護フレームFでも、実施形態と同様に支持脚部38等にブラケット37を備え、このブラケット37に対して制御バルブ等を支持するように構成することが可能である。
【0054】
特に、この別実施形態(a)の保護フレームFは、図6に示すように、エンドプレート2に対してオフセット量Dだけオフセットさせた状態でエンドプレート2に固定するために、トップカバー33の上側と横側とにボルト挿通部38bを配置している。
【0055】
この別実施形態(a)のように保護フレームFを構成することにより、エンドプレート2の外面に加湿器25を備えた後に、保護フレームFをエンドプレート2に固定することが可能となり、しかも、固定ボルト39による締結を解除するだけで保護フレームFの全体の取り外しも可能となる。
【0056】
(b)保護フレームF(保護部材の一例)は、実施形態に示したようベースプレート31に立設した複数の支柱部32(柱状体)の突出端にトップカバー33を備える構成と、別実施形態(a)のようにトップカバー33からエンドプレート2の方向に突出する複数の支持脚部38を備える構成とを組み合わせても良い。
【0057】
(c)エンドプレート2に対して保護フレームF(保護部材の一例)がオフセットする方向は、実施形態に示した方向に限るものではなく、例えば、実施形態とは逆にエンドプレート2に対して保護フレームFを上方にオフセットさせることや、エンドプレート2に対して保護フレームFを横方向にオフセットさせても良い。
【0058】
燃料電池システムAにおける燃料電池1の姿勢は実施形態に示した姿勢に限るものではなく、例えば、複数の燃料電池セル1aの積層方向を縦方向にするように燃料電池1の姿勢を設定することも可能であり、このように燃料電池1の姿勢を任意に設定した場合においても、燃料電池1の近傍に配置される装置類や機器類との位置関係から保護フレームFのオフセット方向を設定できる。特に、車両に備える燃料電池システムAでは、外力の作用によって車体の一部が変位した場合でも、このように変位する車体の一部との接触を避ける方向のオフセット方向を設定できる。
保護フレームFは、車両振動に対する加湿器の耐振動性だけでなく、保護フレームFにより周辺補機部品の保持および耐振動性を向上させることが可能である。また、トップカバー33は、加湿器25を含む周辺補機部品全体を完全に覆う構造としても良い。更に、加湿器25とエンドプレート2の間には、隙間があっても良い。
【0059】
(d)保護フレームFは、加湿器25だけを保護するサイズに限らず、燃料ガス制御ユニット10を構成する複数の燃料ガス制御体の全て、あるいは、酸化剤ガス制御ユニット20を構成する複数の酸化剤ガス制御体の全てを覆うようにトップカバー33(カバー体)のサイズを決めることが考えられる。この別実施形態(d)では、燃料ガス制御体あるいは酸化剤ガス制御体を覆う専用のカバーや専用のフレームを用いることも可能である。
【0060】
(e)実施形態において一部記載したように、例えば、ベースプレート31を環状に形成し、この環状の空間の内側に加湿器25の支持プレートを配置し、この支持プレートで支持されるように加湿器25を配置する。
【0061】
この別実施形態(e)では、加湿器25と、保護フレームFとが、エンドプレート2に対し個別に固定される構成であるため、メンテナンスを容易に行える。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、燃料電池のエンドプレートの外面に備えた加湿器の保護構造に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料電池
1a 燃料電池セル
2 エンドプレート
10 燃料ガス制御ユニット
13 燃料ガス制御弁(燃料ガス制御体)
14 気液分離器(燃料ガス制御体)
20 酸化剤ガス制御ユニット
23 酸化剤ガス制御弁(酸化剤ガス制御体の一例)
24 排出制御弁(酸化剤ガス制御体)
25 加湿器
25a セパレータ
25b トップケース(突出側外面)
32 支柱部(柱状体)
33 トップカバー(カバー体)
38 支持脚部(柱状体)
A 燃料電池システム
F 保護部材(保護フレーム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6