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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071618
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20220509BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20220509BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20220509BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220509BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20220509BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A61F13/511 500
A61F13/47 100
A61F13/47 200
A61F13/514 500
A61F13/53 100
A61F13/532 100
A61F13/56 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180682
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】前田 知恵子
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA13
3B200BA01
3B200BB03
3B200BB09
3B200BB17
3B200CA12
3B200CA14
3B200DA17
3B200DB15
3B200DB18
3B200DC10
3B200DE03
3B200DE16
(57)【要約】
【課題】介助者も装着者自身でも適正な位置に装着し易く、装着状態を認識し易く、装着感が良好で、他人の目を意識しないで済む吸収性物品の提供。
【解決手段】液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、これらの間の吸収体20とを備え、長さ方向寸法が760mm以上880mm以下、吸収体20の長さ方向寸法が520mm以上680mm以下であり、中央領域を含む領域に配置され、吸収体20を有する吸収部70と、長さ方向両端部が装着者の下着から外方に延出して折り返される延出部60a、60bと、延出部60a、60bを折り返したときに下着側に固定される係合部材61a、61bと、美粧性を付与する装飾部62、63とを備え、装飾部62、63は延出部60a、60bの外形、表面印刷、レース素材、又はこれらの2種以上の組み合わせを含む吸収性物品50。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
長さ方向寸法が760mm以上880mm以下であり、
前記吸収体の長さ方向寸法が520mm以上680mm以下であり、
幅方向中央を長さ方向に延びる中央領域を含む領域に配置され、身体側に接触し、前記吸収体を有する吸収部と、
前記吸収性物品を装着したときに、長さ方向両端部が装着者の下着から外方に延出して折り返される、前記吸収体を含まない延出部と、
前記延出部を折り返したときに、前記下着側に固定される係合部材と、
前記延出部の肌側面に設けられ、美粧性を付与するデザインを含む装飾部と、
を備え、
前記装飾部は、前記延出部の外形、表面印刷、レース素材、又はこれらの2種以上の組み合わせを含んで構成される、吸収性物品。
【請求項2】
前記延出部は、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置され、掴みやすさ、及び着脱操作を向上させる芯材として、ウレタンフォーム又はポリエチレンフォームを含む厚さ1.0mm以上5.0mm以下のシート材を更に備える、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記延出部から前記吸収体部にまたがるように幅方向両端部に配置され、前記係合部材で前記吸収性物品を固定したときの、前記吸収性物品の屈曲状態を保持するための形状保持材として、直径又は厚さ1.0mm以下、長さ50mm以上100mm以下の樹脂製棒状部材を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記装飾部は、前記延出部に配された前記レース素材を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記装飾部は、前記延出部の外形と、前記外形の縁辺に沿って配置された前記レース素材と、を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記装飾部は、前記延出部の外形と、前記延出部に施された前記表面印刷と、を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記レース素材は、綿100%のレース素材である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記表面印刷として絵柄模様が形成されている、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体は、肌面が起毛した親水性不織布に高吸収性ポリマーが担持され、親水性シートで包まれた吸収性シートを含み、
前記吸収性シートは、
幅方向中央を長さ方向に延び、前記高吸収性ポリマーの担持量が高い高密度領域と、
前記高密度領域の長さ方向前後に配置され、前記高吸収性ポリマーの担持量が前記高密度領域よりも低い低密度領域と、を有し、
前記高密度領域の前記高吸収性ポリマー担持量が160g/m以上390g/m以下であり、
前記低密度領域の前記高吸収性ポリマー担持量が30g/m以上120g/m以下である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記高密度領域の長さ方向寸法は、前記吸収体の長さ方向寸法の40%以上60%以下であり、長さ方向において、一端の前記低密度領域の寸法と、他端の前記低密度領域の寸法とが同寸である、請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記表面印刷は、ドット状のホットメルト系インクでインクジェット印刷がなされ、印刷された前記ホットメルト系インクの各ドットの平均面積は、1000μm以上2000μm以下であり、前記ホットメルト系インクの各ドットのドット間隔は、50μm以上300μm以下であり、前記装飾部に前記ホットメルト系インクが印刷されている領域における、前記ホットメルト系インクのドットが占める面積割合は、12%以下であり、
前記インクジェット印刷は、前記吸収性物品の製造ラインに組み込まれたインライン印刷である、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に吸収性物品には、テープ止めタイプ、パンツタイプ、尿取りパッド等の紙おむつがあり、これらの紙おむつは装着対象者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を含んでいる。吸収性物品において、尿等の体液は、トップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないように構成されている。
【0003】
ここで、尿取りパッドの使用には、これを単独で装着者の下着に添わせて用いる場合や、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつをアウターとし、尿取りパッドをインナーとして使用する場合等がある。いずれの場合においても、体液の漏れを有効に防止し、尿取りパッドの吸収性能を十分に発揮させるためには、装着者の股間部へのフィット性を高め、装着者の性別を問わず、装着者の尿道口に尿取りパッドの吸収面を密着させる必要がある。尿取りパッドについては、フィット性を高めて多量の体液を吸収し、かつ体液の漏れを防止することを目的として、種々の提案がなされている。
【0004】
特許文献1には、紙おむつのインナーパッドであって、該パッドの股部が浮くことを防ぎ、人体に対するフィット性の低下を防止するとともに、尿等の体液漏れを防止するために、紙おむつ本体の一対の立体ギャザーの股部の表面に紙おむつ本体側立体ギャザーの内面に着脱自在に止着される第一の固定手段を備え、バックシートの腹側部及び背側部の表面に紙おむつ本体の内面に着脱自在に止着される第二の固定手段をそれぞれ備えた吸収性物品が開示されている。
【0005】
特許文献2には、紙おむつ本体への取り付け作業や位置調節を容易に行うため、及び取り付けた着衣の動きに追従しすぎることなく、フィット性の低下を防ぐとともに尿等の体液の漏れを防ぐために、尿取りパッド(使い捨て補助パッド)の前側部と後側部における幅方向の両縁部に固定手段を備え、尿取りパッドの長さ方向股部及び幅方向中央部に固定手段が存在しない領域を備えた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-240561号公報
【特許文献2】特開2012-249691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
失禁症状を有する高齢者の中でも排泄障害の程度が低く失禁尿量の少ない人は、介護用紙おむつでなく従来の下着に尿取りパッド(軽失禁パッド)を利用するユーザーが多い。また、昨今の、健常から介護状態になるまでの中間段階である「フレイル」予防の高まりから、吸収性物品を装着しても外出する等通常の生活をすることが高齢者のさらなる老化を予防し、介護状態に陥ることを防ぐと言われている。
しかしながら、尿取りパッドは吸収目安量の大小に連動して製品長が異なる製品が主流であり、要介助の高齢者の中には介助者が尿取りパッドを装着すると、該尿取りパッドの吸収量が十分症状に適合した製品でも吸収部分から排泄位置(的)を外してしまう事例が後を絶たず、課題となっている。また、尿取りパッドを利用する高齢者の中には、日中車イスに長時間着座して過ごす人も多い。このような高齢者にとっては、車イスに着座した状態での尿取りバッドの装着し易さを向上させることが課題の一つになっている。
【0008】
介助者でも、吸収性物品の利用者自身でも、適正な位置に装着しやすく、さらに装着している状態を認識しやすく、吸収量を軽度な尿漏れ症状に適正化する手段として、適度な吸収量を有しつつ、従来の吸収性物品よりも長さがあり、股下を通してさらに両端部を下着の前側及び後ろ側から延出させ、該両端部に設けられた固定手段で下着の外側に固定する吸収性物品Aが考えられる。吸収性物品Aにおいて課題となるのは、下着の外側、それもズボン等の着衣のウエスト部から見えやすい位置に吸収性物品の一部である両端部が配置され、装着者が他人の目を意識し易いことである。他人から紙おむつを装着していると認識されてしまうとプライバシーの問題が生じ、外出や面会等の社会的活動へ参画する気分を削いでしまう恐れがあることはフレイル予防促進の観点からも好ましくない。
【0009】
特許文献1及び特許文献2に記載の尿取りパッドは、いずれも装着時、装着中において介助者や装着者自身が、適宜装着位置等を調整することで、適正な位置に装着することを考慮したものではない。また、特許文献1及び特許文献2に記載の尿取りパッドは、装着者の身体との密着性、フィット性を高めようとするものであるが、装着位置を調整するための構成を備えていない。したがって、特許文献1及び特許文献2に記載の尿取りパッドは、吸収性物品Aにも至っていない。
【0010】
本発明の目的は、介助者、装着者が適正な位置に装着し易く、装着状態を認識し易く、他人の目を意識せずに装着でき、快適な装着感を有する吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、長さ方向の両端部が装着者の下着から外方に延出され、下着に所定強度で固定できるように構成するとともに、下着から外方に延出された両端部に、下着の一部であるかのようなデザインで構成された装飾部を設けることで、所望の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0012】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
長さ方向寸法が760mm以上880mm以下であり、
前記吸収体の長さ方向寸法が520mm以上680mm以下であり、
幅方向中央を長さ方向に延びる中央領域を含む領域に配置され、身体側に接触し、前記吸収体を有する吸収部と、
前記吸収性物品を装着したときに、長さ方向両端部が装着者の下着から外方に延出して折り返される、前記吸収体を含まない延出部と、
前記延出部を折り返したときに、前記下着側に固定される係合部材と、
前記延出部の肌側面に設けられ、美粧性を付与するデザインを含む装飾部と、
を備え、
前記装飾部は、前記延出部の外形、表面印刷、レース素材、又はこれらの2種以上の組み合わせを含んで構成される、吸収性物品。
(2)前記延出部は、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置され、掴みやすさ、及び着脱操作を向上させる芯材として、ウレタンフォーム又はポリエチレンフォームを含む厚さ1.0mm以上5.0mm以下のシート材を更に備える、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記延出部から前記吸収体部にまたがるように幅方向両端部に配置され、前記係合部材で前記吸収性物品を固定したときの、前記吸収性物品の屈曲状態を保持するための形状保持材として、直径又は厚さ1.0mm以下、長さ50mm以上100mm以下の樹脂製棒状部材を更に備える、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記装飾部は、前記延出部に配された前記レース素材を含む、上記(1)乃至(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記装飾部は、前記延出部の外形と、前記外形の縁辺に沿って配置された前記レース素材と、を含む、上記(1)乃至(3)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記装飾部は、前記延出部の外形と、前記延出部に施された前記表面印刷と、を含む、上記(1)乃至(3)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記レース素材は、綿100%のレース素材である、上記(1)乃至(6)のいずれかの吸収性物品。
(8)前記表面印刷として絵柄模様が形成されている、上記(1)乃至(6)のいずれかの吸収性物品。
(9)前記吸収体は、肌面が起毛した親水性不織布に高吸収性ポリマーが担持され、親水性シートで包まれた吸収性シートを含み、
前記吸収性シートは、
幅方向中央を長さ方向に延び、前記高吸収性ポリマーの担持量が高い高密度領域と、
前記高密度領域の長さ方向前後に配置され、前記高吸収性ポリマーの担持量が前記高密度領域よりも低い低密度領域と、を有し、
前記高密度領域の前記高吸収性ポリマー担持量が160g/m以上390g/m以下であり、
前記低密度領域の前記高吸収性ポリマー担持量が30g/m以上120g/m以下である、上記(1)乃至(8)のいずれかの吸収性物品。
(10)前記高密度領域の長さ方向寸法は、前記吸収体の長さ方向寸法の40%以上60%以下であり、長さ方向において、一端の前記低密度領域の寸法と、他端の前記低密度領域の寸法とが同寸である、上記(9)の吸収性物品。
(11)前記表面印刷は、ドット状のホットメルト系インクでインクジェット印刷がなされ、印刷された前記ホットメルト系インクの各ドットの平均面積は、1000μm以上2000μm以下であり、前記ホットメルト系インクの各ドットのドット間隔は、50μm以上300μm以下であり、前記装飾部に前記ホットメルト系インクが印刷されている領域における、前記ホットメルト系インクのドットが占める面積割合は、12%以下であり、
前記インクジェット印刷は、前記吸収性物品の製造ラインに組み込まれたインライン印刷である、上記(1)~(10)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、介助者、装着者が適正な位置に装着し易く、装着状態を認識し易く、他人の目を意識せずに装着でき、快適な装着感を有する吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す図面である。(a)は表面を示す模式平面図、(b)は裏面を示す模式平面図、(c)は(a)に示すY-Y切断線による長さ方向の模式断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す図面である。(a)は表面を示す模式平面図、(b)は(a)に示すY-Y切断線による長さ方向の模式断面図、(c)は(b)に示す領域Aの拡大図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す図面である。(a)は表面を示す模式平面図、(b)は(a)に示すY-Y切断線による長さ方向の模式断面図、(c)は(a)に示すX-X切断線における幅方向の模式断面図である。
図4】別形態の吸収体の構成を示す模式断面図である。(a)は長さ方向の模式断面図を示し、(b)は幅方向模式断面図を示す。
図5】装飾部の構成を模式的に示す平面図である。(a)は装飾部の一実施形態を示し、(b)は装飾部の他の実施形態を示す、(c)は(a)及び(b)以外の別の実施形態を示す。
図6】装飾部の一実施形態の作製方法を説明する模式平面図である。
図7】本実施形態の吸収性物品を装着者が装着した状態を示す模式断面図である。
図8】本実施形態の吸収性物品の延出部の機能を示す模式斜視図である。(a)は延出部をパンツタイプ紙おむつの内部から取り出した状態を示し、(b)は延出部をパンツタイプ紙おむつの外表面に固定した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、吸収性物品の装着とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長さ方向(又は長さ方向)とは吸収性物品を身体に装着したときに装着者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、幅方向とは長さ方向に対して直交する方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する方向である。肌面(又は肌側面)とは、吸収性物品を装着したときに、装着者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌面(又は非肌側面)とは、装着者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<吸収性物品(第1実施形態)>
以下、図面を参照しつつ、第1実施形態に係る吸収性物品50について説明する。図1は、吸収性物品50を示す。図4は、他の実施形態の吸収体20を示す。図5は、装飾部62、63を示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0017】
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用及び成人用の種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁パッド、尿吸収パッド等のパッド製品、パンツタイプ、テープ止めタイプ等の紙おむつ等が挙げられる。これらの中でも、吸収体20を幅広に構成したワイドパッド製品として好適に使用できる。また、アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしてのパッド製品形態の吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長さ方向の寸法a(以下単に「長さ」ともいう、図1(b))は760mm以上880mm以下の範囲であり、幅方向の寸法c、w(以下単に「幅」ともいう、図1(b))は特に限定されないが、例えば、50mm以上500mm以下の範囲である。延出部60a、60bの幅cは、吸収体部70の幅wよりも大きくなるように構成することが好ましい。吸収性物品50の長さを前記範囲とすることにより、後述する長さ方向両端部の延出部60a、60bを有効に形成できる。
【0018】
吸収性物品50は、図1に示すように、幅方向中央を長さ方向に延びる中央領域を含む領域に配置され、身体側に接触し、吸収体20を有する吸収部70と、長さ方向では両端部が吸収部70の両側に設けられて対になり、吸収性物品50を装着したときに、長さ方向両端部が装着者の下着から外方に延出して折り返される、吸収体20を含まない延出部60a、60bと、延出部60a、60bの長さ方向両端部を折り返したときに、該両端部の下着に面する表面に設けられ、下着の外表面に係合して該両端部を衣類に固定する係合部材61a、61bと、延出部60a、60bの係合部材61a、61bとは反対側の表面に設けられた装飾部62、63と、を含む。なお、吸収性物品50は、長さ方向において、装着者の腹部に主に当接する前側部と、前側部に連設され、装着者の股間部に主に当接する股部と、股部に連設され、装着者の臀部及び背部に主に当接する後側部と、に区分され、前側部及び後側部のそれぞれ長さ方向端部が延出部60a、60bに相当し、股部が吸収部70に相当する。
【0019】
延出部60a、60bは、例えば、トップシート10及びバックシート30の各長さを、前述の吸収性物品50の長さである760mm以上880mm以下の範囲に設定することにより形成される。延出部60a、60bには、トップシート10及びバッグシート30以外にも、補助不織布等を設けてその引張強度を高めてもよい。補助不織布としては、パンツタイプ紙おむつやテープ止めタイプ紙おむつの外装不織布及び内装不織布として使用される各種不織布を特に限定なく使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。また、係合部材61a、61bとしては、装着者の下着に安定的に固定でき、下着や装着者の肌を傷めないものであれば特に限定されないが、例えば、メカニカルフックテープ、ズレ止め用ホットメルト等が挙げられる。係合部材61a、61bのかなきん3号(JIS L 0803準拠試験用添付白布 綿)への剥離強度が0.4N/cm以上1.1N/cm以下のものが好ましい。前述の剥離強度が0.4N/cm未満では、係合部材60a、60bのいずれか一方又は両方のアウター表面からの外れが発生し、吸収性物品50の装着者股間部に対する密着性が低下し、横モレ等が生じる傾向がある。前述の剥離強度が1.1N/cmを超えると、吸収性物品50の装着感、着け心地が低下する傾向と共に、アウター表面に損傷が生じる傾向がある。ここで、アウターとは、装着者の下着の他に、テープ止めタイプ紙おむつ、パンツタイプ紙おむつ等を含む。なお、延出部60a、60bの一表面(肌側面)に設けられる装飾部62、63については後に詳述する。
【0020】
また、吸収性物品50は、図1(a)及び図1(c)等に示すように、肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向配置され、非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置され、長さ方向寸法が520mm以上680mm以下である吸収体20と、トップシート10の肌側面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。
【0021】
本実施形態によれば、体液を吸収及び保持する吸収部70と、吸収部70の長さ方向両端に、装着性機能の比重を高めた延出部60a、60bを設け、下着の外からでも視認可能にすることで、体液の吸収性と、良好な装着性とを兼ね備えた吸収性物品50が提供される。吸収性物品50を身体に装着する場合には、身体機能の低下がみられるものの失禁症状は軽微なモニターでも、延出部60a、60bをつまんで位置調整することで、装着が簡便になり、装着者自身で延出部60a、60bの状態から装着位置が認識しやすいことで、モレを抑制し得るという結果が得られた。また、吸収性物品50を着用することで、日常動作や就寝時の体勢変換による排尿位置からの吸収体20のズレを抑えることができ、モレの発生を有効に軽減できた。また、本実施形態によれば、延出部60a、60bには所定のデザインを含んで構成される装飾部62、63が設けられていることから、延出部60a、60bを下着の外側に固定装着しても、他者に紙おむつの装着を気づかれ難くなる。したがって、外出時にも装着の心理的負担が軽減できたとのモニター評価が得られた。また吸収性物品50の長さ方向両端部(延出部60a、60b)の肌側面に装飾部62、63を設けたことから、装飾部62、63が下着外表面側への折り返し位置目安となるため、視覚の衰えた装着者や介助者にも視認しやすいとの評価が得られた。
【0022】
本実施形態によれば、延出部60a、60bにブラジャー等の下着用のウレタンフォームといった芯材を配置し、延出部60a、60bに適度な厚みとクッション性とを付与することで、着脱時の掴みやすさと固定時の適度な剛性感とが向上し、着脱しやすいものとなる。また、本実施形態によれば、吸収性物品50の幅方向両端部に、長さ方向に延びる形状保持材65を設けることで、延出部60a、60bを折り返して下着外表面に固定するときに、フィットし固定した状態で折り返し状態を保持することができ、ズレを抑制することができた。
【0023】
図7及び図8は、パンツタイプ紙おむつ80をアウターとし、吸収性物品50をインナー用の尿取りパッドとして装着した状態を示している。なお、図7及び図8では、装飾部62、63の図示を省略しているが、延出部60a、60bの肌側面には装飾部が存在し、装飾部の存在により延出部60a、60bと吸収部70との境界が分かりやすいことから、延出部60a、60bの長さ加減の調整が非常に容易である。吸収性物品50は、吸収部70が装着者の股間部に主に当接し、長さ方向において吸収部70の両側には延出部60a、60bが設けられ、パンツタイプ紙おむつ80の外側に比較的大きな長さで延出され、係合部材61a、61bにより、装着者の腹側及び腰側に固定される。係合部材61a、61bを外した状態で、延出部60a、60bを前後に引っ張れば、大きな力で引っ張らなくても吸収性物品50の移動は容易である。また、高齢者等の身体が硬い人でも、身体の前後に位置する延出部60a、60bを容易に把持し得ることから、高齢者自身でもパンツタイプ紙おむつ80を脱ぐことなく、延出部60a、60bのいずれかを引っ張るだけで吸収性物品50の位置を容易に調整できる。
【0024】
以下、トップシート10、吸収体20、バックシート30、立体ギャザー40及び装飾部62、63の順でさらに詳しく説明する。
【0025】
<トップシート>
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体20を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート10及び/又はバックシート30の長さ方向両端を延長し、吸収性物品50の所定長さに調整することにより、延出部60a、60bが形成される。また、トップシート10及びバックシート30の長さ方向両端に長さ方向に延びる補助不織布を接合することで、延出部60a、60bを形成してもよい。トップシート10は、装着者の肌に当接する場合あることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を含む、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。
【0026】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、公知の方法に従ってエンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10には、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有させてもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m以上40g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0027】
<吸収体の第1実施形態>
吸収体20は、例えば、トップシート10を透過してきた体液を吸収、及び保持する。本実施形態の吸収体20は、前述したように、長さb(図1(b))が520mm以上680mm以下である。520mm未満では、体液吸収性(吸収速度や吸収量)が低下する傾向があり、680mmを超えると、相対的に延出部60a、60bの長さが短くなり、装着性が低下する傾向がある。吸収体20は、例えば、吸収基材として、吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(以下「SAP」ともいう)と、を含有する。
【0028】
(吸収性繊維)
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等の綿状解繊物等が挙げられる。吸収体20に吸収性繊維としてフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、例えば100g/m以上800g/m以下の範囲又は325g/m以上615g/m以下の範囲である。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収できる。
【0029】
(高吸収性ポリマー)
ここで説明する高吸収性ポリマーは、第1実施形態の吸収体20に限定されず、第2実施形態及び第3実施形態の各吸収体20でも使用できる。高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
高吸収性ポリマーは、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマーの使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収体20が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0031】
吸収体20中のSAPの坪量は、例えば、240g/m以上450g/m以下の範囲、又は245g/m以上445g/m以下の範囲である。SAPの坪量を前述の数値範囲内とすることで、吸収体20におけるゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収体20に多量の体液を吸収させることができる。また、吸収体20において、吸収体20全体の重量に対する、高吸収性ポリマーの重量の比率である、高吸収性ポリマーの重量/吸収体20全体の重量×100(%)は、例えば、40重量%以上の範囲、又は40重量%以上70重量%以下の範囲である。
【0032】
吸収体20において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートでもよい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体20の形状の安定化の目的から、吸収体20の下に、キャリアシート(不図示)を設けてもよい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュー、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0033】
また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体20の形状のさらなる安定化を図るために、吸収体20、をキャリアシートで包んでもよい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュー、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布等が挙げられる。キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一でも異なるものでもよい。
【0034】
<吸収体の第2実施形態>
別形態の吸収体20は、2枚の親水性不織布と、これらの間にホットメルト接着剤により高吸収性ポリマーを固着担持させた体液吸収層とを備え、吸収性繊維を含まない高吸収性シートである。親水性不織布としては公知の親水性不織布を特に限定なく使用でき、例えば、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、パルプ含有不織布等の単層不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複層不織布等が挙げられる。ここで、パルプ含有不織布とは、スパンボンド不織布と、スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面にパルプ繊維ウェブを一体化した不織布である(例えば、米国特許第5284703号明細書)。パルプ含有不織布は、例えば、スパンボンド不織布に水流交絡法によりパルプ繊維を高圧水流下に打ち付けることにより製造される。この方法で得られたパルプ含有不織布は、スパンボンド不織布の繊維と、パルプ繊維ウェブのバルブ繊維とが絡み合い、かつパルプ繊維の一部がスパンボンド不織布を厚み方向に貫通することで、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとを強固に一体化したものである。
【0035】
高吸収性ポリマーを固着担持させるホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。ホットメルト接着剤の含有量は、高吸収性ポリマーの吸収性及び装着時の肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m以下の範囲である。ここで説明したホットメルト接着剤は、第2実施形態の吸収体20に限定されず、第3実施形態の吸収体20でも使用できる。
【0036】
<吸収体の第3実施形態>
本実施形態の吸収体20は長さが520mm以上680mm以下であり、図4(b)に示すように、肌面が起毛面11aである親水性不織布(以下「基体不織布」ともいう)11に高吸収性ポリマー12が担持され、これを親水性シート(以下「包装シート」ともいう)13で包んだ、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含まない吸収性シート14を含んで構成され、吸収性シート14は高吸収性ポリマー12の担持量が相対的に高い高密度領域21と、高吸収性ポリマー12の担持量が相対的に低い低密度領域22と、を有している。なお、吸収体20は、長さ方向の一端から他端にかけて、装着者の下腹部に主に当接する腹側部と、腹側部に連設され、装着者の股間部に主に当接する股部と、股部に連設され、装着者の尻部に主に当接する尻側部と、に区分される。
【0037】
(吸収性シート)
図4(b)に示すように、吸収性シート14は、基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aに設けられた体液吸収層16と、包装シート13とを含んで構成される。なお、吸収性シート14とトップシート10との間に、親水性不織布からなるトランスファシート(液拡散性シート)を配置してもよい。
【0038】
(基体不織布)
基体不織布11は親水性不織布から構成され、装着者の肌に対向する肌側面が起毛面11aになり、非肌面が非起毛面11bになる。起毛面11aには複数の起毛繊維11xが立設され、複数の起毛繊維11x間には高吸収性ポリマー12が固着担持され、体液吸収層16を形成する。起毛面11aに立設された複数の起毛繊維11xは、基体不織布11の表面に毛羽立ち加工等の起毛加工を施すことにより、形成される。基体不織布11の複数の起毛繊維11xにより、不織布本来の嵩高さに加えて、吸収性シート14に適度な厚みとやわらかさが付与され、良好なクッション性が発生し、着用時のフィット感が向上する。また、基体不織布11を起毛させると、起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させることができる。基体不織布11の片側表面11aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチ等を用いる方法が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃を用いる方法が好ましい。
【0039】
基体不織布11における起毛の程度は特に限定されず、目視で起毛を確認できればよいが、例えば、起毛の程度としての起毛率が5%以上90%以下の範囲、又は8%以上80%以下の範囲である。起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)=[(T2―T1)/T1]×100である。厚さT1、T2は、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下で測定される。また、基体不織布11の非起毛面11bでも、繊維を起毛させてもよい。
【0040】
包装シート13は親水性シートから構成され、基体不織布11及び体液吸収層16の全体を包む。より具体的には、例えば、包装シート13の表面の幅方向中央部付近に、基体不織布11の非起毛面11bを載置し、これらをホットメルト接着剤等で接着した後、包装シート13の幅方向両端部をC折りし、体液吸収層16の上方で厚み方向に重ね合わせる。これらの両端部をホットメルト接着剤等で固定してもよい。
【0041】
(高密度領域及び低密度領域)
本実施形態の吸収体20では、図4に示すように、体液吸収層16は面方向に、高密度領域21と低密度領域22という2つの領域に区分される。これら2つの領域を設けることで、装着者自身による吸収性物品50の装着のし易さ、装着感、着け心地、装着した状態での吸収性物品50の位置の把握し易さ、モレの防止等を高水準で満たし、利便性の高い吸収性物品50が得られる。
【0042】
高密度領域21は、吸収性シート14(又は体液吸収層16)の幅方向中央部を長さ方向に延びる帯状の領域であり、高吸収性ポリマー12の担持(目付)量が相対的に高くなっている。高密度領域21の高吸収性ポリマー担持量は160g/m以上390g/m以下である。160g/m未満では、吸収性物品50の吸収量や吸収速度等の吸収性能が低下する傾向があり、390g/mを超えると、装着者が高吸収性ポリマー12の体液吸収後の硬さを感じやすくなる傾向がある。また、高密度領域21の長さは、吸収体20の長さよりも短くなるように構成され、例えば、吸収体20の長さの40%以上60%以下である。高密度領域21の長さが40%未満では、延出部60a、60bによる、吸収体20と装着者の股間部との位置合わせを十分に実施できない傾向があり、60%を超えると、体勢により装着者が高吸収ポリマー12由来の固さを感じやすくなる傾向がある。
【0043】
低密度領域22は、高密度領域21の長手方向の前後を挟むように設けられた領域であり、高吸収性ポリマー12の担持(目付)量が相対的に低くなっている。低密度領域22における高吸収性ポリマー12の担持(目付)量は120g/m以下又は30g/m以上120g/m以下である。120g/mを超えると、吸収体20における体液拡散性が低下し、吸収性能の低下や、横モレが発生しやすくなる傾向がある。好ましい実施形態では、低密度領域22は、長さ方向両端部の長さが同寸である。この実施形態によれば、吸収体20全体として、長さ方向に対称な構造になり、装着者が後前等を気にすることなく吸収性物品50を装着できることから、吸収性物品50の利便性が一層向上する。また、基体不織布11を起毛させるとき、高密度領域21及び低密度領域22の部分のみを起毛させてもよく、基体不織布11の全面を起毛させてもよい。
【0044】
次に、第3実施形態の吸収体20中、吸収性シート14を構成する基体不織布11、高吸収性ポリマー12、包装シート13について、この順で説明する。
【0045】
基体不織布11を構成する親水性不織布(基材)としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、嵩を高くする観点等から、基体不織布11にはエアスルー不織布が好ましい。
【0046】
基体不織布11の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下の範囲、0.5mm以上5.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。また、基体不織布11の坪量は特に限定されないが、例えば、35g/m以上120g/m以下の範囲である。また、包装シート13の厚さは0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は5g/m以上40g/m以下の範囲である。
【0047】
なお、基体不織布11としてエアスルー不織布を用いる場合、エアスルー不織布の坪量が35g/m以上120g/m以下の範囲である。好ましい実施形態では、エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。エアスルー不織布を構成する繊維の太さを上述の範囲に調整することにより、エアスルー不織布の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させやすくなり、起毛面11aにおける高吸収性ポリマー12の均一分散性が向上する。
【0048】
包装シート13は、例えば、体液吸収層16全体に体液をほぼ均一に拡散させ、体液吸収層16からの高吸収性ポリマー12の脱落を防止する。包装シート13を構成する親水性シートとしては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。
【0049】
(吸収体の寸法、形状)
第1乃至第3実施形態の吸収体20は、長さ方向の寸法b(図1)が520mm以上680mm以下の範囲であり、幅方向寸法が例えば50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は90mm以上380mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長さ方向寸法が520mm以上680mm以下の範囲、前側部及び後側部の幅がともに180mm以上380mm以下の範囲であり、股部の幅が90mm以上200mm以下の範囲である。また、吸収体20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体20の平面視形状は、本実施形態では長方形状であるが、砂時計状、Iの字状、4角が丸まった角丸四角形、長円等でもよい。
【0050】
<バックシート>
バックシート30には、吸収体20が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を有する基材を用いる。該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層体である複合不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布、これらの2種以上の積層体である複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
【0051】
バックシート30の坪量は、例えば強度及び加工性の点から、15g/m以上40g/m以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止する観点から、通気性を有するバックシート30が好ましい。バックシート30に通気性を付与するには、例えば、樹脂フィルムにフィラーを配合する方法、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施す方法等を利用できる。ここで、フィラーとしては炭酸カルシウムが挙げられ、フィラーを公知の方法に従って配合できる。
【0052】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の装着者が排泄した体液の横モレを防止するために、吸収性物品50の幅方向両端付近で吸収性物品50の長さ方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材と、を含む。
【0053】
弾性伸縮部材40aは、シート部材の自由端(他端)付近に長さ方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材の自由端及びその近傍領域を装着者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材は、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材の固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0054】
シート部材は撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材の坪量は、例えば、13g/m以上20g/m以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0055】
<装飾部>
装飾部62、63は、延出部60a、60bの肌側面に設けられ、延出部60a、60bが下着の一部であるかのようなデザインを含んで構成され、例えば、延出部60a、60bの露出によって、吸収性物品50の装着を他者に気取られるのではないかという装着者の懸念を大幅に軽減し、装着者が自由に外出し、行動的になれるように心理的に補助する機能を有している。また、装飾部62、63を設けることにより、延出部60a、60bの折り曲げ位置が一層視認し易くなり、吸収性物品50の位置調整が容易になる。
【0056】
装飾部62、63は、前述のデザインとして、延出部60a、60bの外形、表面印刷(デザイン印刷)、レース素材、又はこれらの2種以上の組み合わせを含んで構成される。ここで表面印刷としては、花柄、草柄、レース柄、果物柄等(女性向き)が一般的であるが、ストライプ柄、チェック柄(男性向き)等の下着に施される図柄をも含んでいる。また、レース素材としては特に限定されず、繊維素材の異なる各種レース生地を特に限定なく使用できるが、装飾部62、63を下着のように見せるという観点から、綿100%のレース生地(以下「コットンレース」ともいう)が好ましい。
【0057】
図5は、装飾部62、63の具体例を示す模式平面図である。図5(a)に示す装飾部62は、前述のデザインとして、延出部62の長方形の外形と、延出部62の外形の縁辺に沿って配置されたコットンレース62aと、延出部62の肌側面において、係合部材61aの配設位置から吸収体20にかけて設けられたデザイン印刷(ボタニカル風柄)62bと、を含んで構成されている。図5(b)に示す装飾部62は、前述のデザインとして、延出部62の長方形の外形と、延出部62の外形の縁辺に沿って配置されたコットンレース62aと、を含んで構成されている。図5(c)に示す装飾部62は、前述のデザインとして、延出部60aの外形を隠すように平面形状を整えた、花柄印刷シートを含んで構成されている。花柄印刷シートの材質としては、紙、樹脂等が挙げられる。図5(a)乃至図5(c)の装飾部62は、装飾部63としても利用可能であることは、言うまでもない。
【0058】
図5(c)に示す装飾部62は、図6に示すように、延出部60a、60bを覆い隠すような形状のシート62aを作製する工程と、前工程で得られた所定形状のシート62aの表面に装飾用の印刷62bを施す工程と、所定形状を有しかつ表面に印刷が施されたシート62をホットメルト接着剤や熱圧着、圧着等の方法で延出部60a、60bの肌側面に固定する工程と、を含む方法により形成できる。ここで、トップシート10の長さ方向両端部の外形形状をシート62aの形状とし、これに印刷62bを施したのちに、吸収性物品50を組み立ててもよい。
【0059】
装飾部62、63の表面印刷には、不織布等の布帛の表面への印刷が可能な公知の印刷法を特に限定なく利用でき、例えば、パッド印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、昇華転写印刷等が挙げられる。例えば、インクジェット印刷とは、インクジェットプリンターを用い、インクを微滴化して印刷対象に直接吹き付け、印刷対象に所定の文字や画像を形成する印刷法である。インクジェット印刷によれば、印刷デザインを電子データの変更によって容易に変更できるため、版の切り替え作業が不要により、また、フレキソ印刷等の接触式印刷方式と異なり、非接触式の印刷方式のため、印刷対象の坪量等の表面性に左右されずに、印刷されるデザインの位置ずれが生じることもない。
【0060】
本実施形態では、インクジェット印刷は、吸収性物品50の製造ラインに組み込まれたインライン印刷である。これにより、吸収性物品50の高速生産が可能となる。例えば、トップシート10となる不織布シートをインクジェット式印刷装置に搬送し、トップシート10となる不織布シートに対し、ホストコンピュータから転送される印刷画像データに基づいて、インクジェットヘッドを送り方向(機械方向又はMD方向)と直交する方向(機械横断方向又はCD方向)にシリアルスキャンし、ホットメルト系インクを所定の温度とし(好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下)、トップシート10となる不織布シートの着用者肌側面にデザインを印刷する。インクジェット印刷の印刷ライン速度は100m/分以上であり、200m/分以上であることが好ましく、280m/分以下であってもよい。ホットメルト系インクの吐出方式は、特に制限はなく、サーマル方式、ピエゾ方式等が挙げられる。また、ホットメルト系インクは常温でも冷却可能であるが、インクジェット印刷後の吸収性物品50を冷却ロールや送風装置等によって冷却する冷却工程を設けてもよい。さらに、吸収性物品50を個別にカットした後、装飾部62、63における印刷したデザインの位置ずれを欠陥検出装置等によって検出し、検出された位置ずれに基づき、デザインの印刷タイミングを調整する印刷タイミング調整機構を設けてもよい。
【0061】
上述のインクジェット印刷で形成される、ホットメルト系インクの各ドットの平均面積は、1000μm以上2000μm以下の範囲であり、1100μm以上1700μm以下の範囲でもよい。また、延出部60a、60の肌側面に印刷されたホットメルト系インクの各ドットのドット間隔は50μm以上300μm以下の範囲であり、80μm以上270μm以下の範囲もよい。ここで、ホットメルト系インクの各ドットのドット間隔は、送り方向におけるドット間隔であることが好ましい。また、延出部60a、60の肌側面における、ホットメルト系インクのドットが占める面積割合は、例えば、12%以下の範囲、又は9%以下の範囲である。また、延出部60a、60の肌側面におけるホットメルト系インクの各ドットの平均のドット間隔は、例えば、90μm以上280μm以下の範囲、又は100μm以上270μm以下の範囲である。
【0062】
ホットメルト系インクのドットを上述のように印刷することにより、トップシート10の表面に細かいドットにより多色で可変性の高い精細な印刷を有し、視認性に優れた吸収性物品50が得られる。また、延出部60a、60の肌側面の立体構造に沿ってホットメルト系インクの細かなドットが付着するため、該ドットの延出部60a、60の肌側面にに対する付着性が高まり、複数回使用しても装飾部62、63を明確に視認でき、一調整が容易な吸収性物品50が得られる。
【0063】
ここで使用するホットメルト系インクは、120℃で0.1Pa.s以下の溶融粘度を有することが好ましく、0.06Pa.s以下の溶融粘度を有することがより好ましい。これにより、視認性に優れ、吸収性能を阻害することのない表面印刷が施され、生産性が良くコストを抑えた吸収性物品50とすることができる。溶融粘度はJIS K8803に従って120℃で測定される。
【0064】
ホットメルト系インクとしては、上述の溶融粘度を満たすものであれば特に制限はないが、例えば、主成分として、熱可塑性樹脂を含み、さらに該熱可塑性樹脂を溶解可能な有機溶剤、流動性向上剤、無機顔料、有機顔料、染料(以下これらを総称して「着色剤」ともいう)の少なくとも1種、他の添加剤の少なくとも1種を含むものが挙げられる。ここで、熱可塑性樹脂は例えばバインダとして機能する。また、ホットメルト系インクの溶融粘度は例えば熱可塑性樹脂の含有量を選択することにより適宜調整でき、皮膚感作性等安全性をクリアできるものから選択できる。
【0065】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、それらの混合物、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、ポリビニルピリジン、ポリエーテル、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、コポリエステル、オレフィン系ブロックコポリマーゴム、ポリスチレン-アクリル共重合体、テルペン樹脂、ロジン流動体、フェノール樹脂、クマロン-インデン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。ホットメルト系インクにおける熱可塑性樹脂の質量割合は、例えば、20%以上50%以下の範囲、又は30%以上40%以下の範囲である。この範囲で用いることで、ホットメルト系インクの溶融粘度が前述の所定の範囲に調整しやすくなる。実施形態では、ホットメルト系インクの市販品も使用でき、例えば、商品名:MDL5800(イーデーエム(株)製)等が挙げられる。
【0066】
流動性向上剤としては、ワックス、オイル等が挙げられる。その具体例としては、例えば、ポリアルキレンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、Fischer-Tropschワックス、直鎖1級アルコール、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ステアリン酸アミド、パラフィンワックス及びモンタンワックス、エトキシル化長鎖アルコール等が挙げられる。流動性向上剤は1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。ホットメルト系インクにおける流動性向上剤の質量割合は、例えば、40%以上70%以下の範囲、又は50%以上60%以下の範囲である。
【0067】
着色剤としては、ホットメルト系インクに通常用いられるものを特に制限なく使用できる。着色剤としては、例えば、二酸化チタン(ホワイト)、カーボンブラック(ブラック)、酸化鉄(レッド、イエロー、ブラウン)、酸化クロム(グリーン)、フェロシアン化第2鉄アンモニウム(ブルー)等の無機顔料、ジアリライドイエロー(ピグメントイエロー)、フタロシアニンブルー(ピグメントブルー)、レッドレーキ(ピグメントレッド)等の有機顔料が挙げられる。着色剤はそれぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。ホットメルト系インクにおける着色剤の質量割合は、例えば、0.1%以上20%以下の範囲、又は0.5%以上10%以下の範囲である。
【0068】
他の添加剤としては、例えば、可塑剤、増量剤、増粘剤、脱泡剤、湿潤剤、界面活性剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0069】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、トップシート10肌側面の長さ方向両端部に延出部60a、60bを設け、更に装飾部62、63を設ける工程と、バックシート30の非肌側面の長さ方向両端部の所定位置に係合部材61a、61bを設ける工程と、吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10の縁辺とバックシート30の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長さ方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、吸収性物品50の用途や形態に応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等が適宜設けられる。
【0070】
<吸収性物品(第2実施形態)>
第2実施形態に係る吸収性物品51は、延出部60a、60bにおけるトップシート10とバックシート30との間に、芯材64が配設される以外は吸収性物品50と同じ構成を有する吸収性物品50の変形例である。以下、吸収性物品50と共通する部材については、同じ参照符号を付し、説明を省略する。
【0071】
芯材64は、例えば、延出部60a、60bの掴みやすさや着脱操作を向上させ、介助者でも装着者自身でも、吸収性物品51の位置合わせや、使用後に新しい吸収性物品51に取り替える操作性が一層向上する。芯材64としては、その機能を発揮でき、装着者の身体に違和感を与えないものであれば特に限定されないが、例えば、軟質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等を含む発泡シートが好ましい。発泡シートの厚さは、掴み易さ、耐久性等の観点から、例えば1.0mm以上5.0mm以下の範囲である。また、芯材64の平面視形状は特に限定されないが、掴み易さ等の観点から、例えば、長方形状、長円形状、楕円形状、円形状等が挙げられる。
【0072】
<吸収性物品(第3実施形態)>
第3実施形態に係る吸収性物品52は、その幅方向両端部の、延出部60a、60bから吸収部70にまたがるように、長さ方向に延びる4つの形状保持材65が配設される以外は吸収性物品50と同じ構成を有する吸収性物品50の変形例である。以下、吸収性物品50と共通する部材については、同じ参照符号を付し、説明を省略する。
【0073】
4つの形状保持材65は、例えば、係合部材61a、61bで吸収性物品52を固定したときに、吸収性物品52の屈曲状態を付勢し、保持するように機能することで、吸収性物品52の装着安定感が向上し、装着者に安心感を付与することができる。形状保持材としては、変形自在であり、かつ前述の機能を発揮し得る所定の強度を有するものであれば特に限定されず、例えば、直径又は厚さ1.0mm以下、長さ50mm以上100mm以下の樹脂製軟質板状部材、軟質金属製板状部材等が挙げられる。
【0074】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0075】
10 トップシート
11 親水性不織布(基体不織布)
12 高吸収性ポリマー
13 親水性シート(包装不織布)
14 吸収性シート
16 体液吸収層
20 吸収体
30 バックシート
40 立体ギャザー
40a 弾性伸縮部材
50、51、52 吸収性物品
60a、60b 延出部
61a、61b 係合部材
62、63 装飾部
64 芯材
65 形状保持材
70 吸収部
80 パンツタイプ紙おむつ
90 装着者
図1
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