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特開2022-71691交差接続構造体、接合継手及びフレーム構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071691
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】交差接続構造体、接合継手及びフレーム構造体
(51)【国際特許分類】
   F16B 11/00 20060101AFI20220509BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
F16B11/00 D
F16B7/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180779
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 美速
(72)【発明者】
【氏名】今井 智恵子
【テーマコード(参考)】
3J023
3J039
【Fターム(参考)】
3J023EA02
3J023FA03
3J023GA02
3J023GA03
3J039AA06
3J039BB02
3J039LA02
3J039MA10
(57)【要約】
【課題】剛性を維持しつつ、高い直交精度で接合できる交差接続構造体、接合継手、及びフレーム構造体を提供する。
【解決手段】交差接続構造体100は、アルミニウム展伸材の中空押出材により形成された横材11と、横材に直交して配置され、アルミニウム展伸材の中空押出材により形成された縦材13A,13Bと、縦材13A,13Bの開口に一端部が挿入された接合継手15A,15Bと、を備える。接合継手15A,15Bはフランジ31を有し、フランジ31は、縦材13A,13Bの長手方向の一端面に突き当てて溶接される。縦材13A,13Bの一端面33のうち横材11に沿った端面と、その端面に対面する横材の側面35とが溶接される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム展伸材の中空押出材により形成された横材と、
前記横材の長手方向に直交して配置され、アルミニウム展伸材の中空押出材により形成された縦材と、
前記縦材の開口に一端部が挿入され、他端部が前記横材の一方の開口に挿入された接合継手と、
を備え、
前記接合継手は、前記一端部と前記他端部との間に、前記横材の長手方向の両側から、該長手方向に沿った外側へそれぞれ突出するフランジを有し、
前記フランジは、前記縦材の長手方向の一端面に突き当てて溶接され、
前記縦材の一端面のうち前記横材に沿った端面と、該端面に対面する前記横材の側面とが溶接され、
前記横材と前記縦材とが、前記接合継手を介して互いに直交して接合されている、
交差接続構造体。
【請求項2】
前記フランジは、前記縦材の長手方向の一端面に面接触する平坦面を有する、
請求項1に記載の交差接続構造体。
【請求項3】
前記フランジは、前記接合継手の外周面の全周にわたって環状に形成され、前記縦材の長手方向の一端面に面接触する環状の平坦面を有する、
請求項1に記載の交差接続構造体。
【請求項4】
前記接合継手は、アルミニウム合金により形成され、
前記フランジは、アルミニウム展伸材のインサート板を前記アルミニウム合金によりインサート成形して設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の交差接続構造体。
【請求項5】
前記インサート板は、板厚方向に貫通する開口孔が形成されている、
請求項4に記載の交差接続構造体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の交差接続構造体に用いられる接合継手。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の交差接続構造体を備えるフレーム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差接続構造体、接合継手及びフレーム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車の軽量化と低燃費化との要請に応えつつ、自動車の衝突時に破断しない強度を確保するため、自動車のバンパシステム、ドアビーム、車体骨格材等の構造用部材として、アルミニウム合金を押出成形した中空断面形材もその一部に用いられるようになってきた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
例えば、アルミニウム押出材を縦横に組み合わせて互いを溶接することで、クロスフレームが得られる。図16に示すクロスフレームの交差部では、押出形材111の両端に一対の押出角パイプ113,115を突合せ溶接した横材110と、押出角パイプである縦材120とを組み合わせて、互いの交差部117を溶接して形成される。
【0004】
このクロスフレームは、図17に示すように、まず、横材110である押出形材111の中空部119に縦材120を挿入して、押出形材111の中空内面111aと、縦材120の外面120aとを重ね合わせ、図16、及び図16のXVIII-XVIII線に沿った断面図である図18に示すように、重なり合った押出形材111の中空内面111aと縦材120の外面120aとの縦材120の軸方向端部を溶接することで、横材110と縦材120とを接合して得られる。
【0005】
また、図19図20に示すように、横材100Aの押出形材を、一方の押出形材111Aと他方の押出形材111Bとに分割して、これら分割された押出形材111A,111Bによって縦材120を抱え込ませて組み合わせることもできる。その場合には、上記した中空内面111aと外面120aとの縦材120の軸方向端部を溶接するとともに、押出形材111A,111Bの先端部同士を突合せて溶接する。いずれの場合でも、横材110と縦材120とを溶接により高い剛性で接合できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-245987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように横材110と縦材120とを溶接する場合、横材110と縦材120との表面同士を合わせて位置決めするため、その溶接精度は押出形材(押出角パイプ)の断面精度に支配される。
しかし、図18に示すように、横材110と縦材120との交差部117では、横材110の中空部119の内側高さH1と縦材120の外側高さH2とが必ずしも一致していない。そのため、互いの高さが異なる場合には、中空内面111aと縦材120の上面とが同一平面にならない。このため、横材110と縦材120とを組み合わせても、双方の部材同士を正確に位置決めできず、高い直交精度を維持した溶接が困難となる。また、縦材120が長尺であるほど、横材110の中空部119に貫通させる工程が煩雑となる。
【0008】
一方、図19図20に示す二分割された押出形材111A,111Bを用いる場合は、縦材120を中空部119に貫通させる工程を軽減でき、縦材120の縦壁と横材110との密着性を向上できる。しかし、その場合でも横材110と縦材120とは相互移動の自由度を有したままであり、ずれの発生を阻止できない。そのため、高い直交精度を確保することは依然として困難であった。
【0009】
そこで本発明は、剛性を維持しつつ、高い直交精度で接合できる交差接続構造体、接合継手、及びフレーム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の構成からなる。
(1) アルミニウム展伸材の中空押出材により形成された横材と、
前記横材の長手方向に直交して配置され、アルミニウム展伸材の中空押出材により形成された縦材と、
前記縦材の開口に一端部が挿入され、他端部が前記横材の一方の開口に挿入された接合継手と、
を備え、
前記接合継手は、前記一端部と前記他端部との間に、前記横材の長手方向の両側から、該長手方向に沿った外側へそれぞれ突出するフランジを有し、
前記フランジは、前記縦材の長手方向の一端面に突き当てて溶接され、
前記縦材の一端面のうち前記横材に沿った端面と、該端面に対面する前記横材の側面とが溶接され、
前記横材と前記縦材とが、前記接合継手を介して互いに直交して接合されている、
交差接続構造体。
(2) (1)に記載の交差接続構造体に用いられる接合継手。
(3) (1)に記載の交差接続構造体を備えるフレーム構造体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、横材と縦材とを、剛性を維持しつつ高い直交精度で接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、交差接続構造体の第1構成例を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1に示す交差接続構造体の分解斜視図である。
図3図3は、第1接合継手,第2接合継手の斜視図である。
図4図4は、縦材の分解斜視図である。
図5図5は、横材と縦材とを組み合わせた様子を示す一部拡大斜視図である。
図6図6は、図5に示すVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7は、図5に示すVII-VII線に沿った断面図である。
図8図8は、第2構成例の第1接合継手,第2接合継手の斜視図である。
図9図9は、第2構成例の縦材、及び第1接合継手、第2接合継手の分解斜視図である。
図10図10は、横材である押出形材と縦材とを第1接合継手を介して組み合わせた様子を示す一部拡大斜視図である。
図11図11は、第3構成例の第1接合継手,第2接合継手の斜視図である。
図12図12は、図11のXII-XII線に沿った断面図である。
図13図13は、第4構成例の第1接合継手,第2接合継手の斜視図である。
図14図14は、図13のXIV-XIV線に沿った断面図である。
図15図15は、交差接続構造体を用いて構成されたフレーム構造体の斜視図である。
図16図16は、従来の交差接続構造体の斜視図である。
図17図17は、図16に示す交差接続構造体の分解斜視図である。
図18図18は、図16のXVIII-XVIII線に沿った断面図である。
図19図19は、従来の他の交差接続構造体の分解斜視図である。
図20図20は、図19の交差接続構造体の組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、アルミニウム展伸材の中空押出材により形成された横材と縦材とが、接合継手を介して互いに交差して接合された交差接続構造体を例に説明する。
【0014】
<第1構成例>
図1は、交差接続構造体100の第1構成例を示す概略斜視図である。図2は、図1に示す交差接続構造体100の分解斜視図である。
図1図2に示すように、交差接続構造体100は、横材11と、一対の縦材13A,13Bとが、第1接合継手(接合継手)15A及び第2接合継手(接合継手)15B(図2)を介して互いに交差して接合されている。ここで、横材11の長手方向をX方向、縦材の長手方向をY方向、X方向とY方向に直交する高さ方向をZ方向とする。
【0015】
横材11は、押出形材17と、押出形材17の両端に配置された一対の押出角パイプ19A,19Bとから構成される。押出形材17は、その押出方向に連通する複数の開口21を有するアルミニウム合金製の中空押出材である。押出形材17の押出方向EDh1に直交する長手方向の両端部23には、それぞれ中空の押出角パイプ19A,19Bが突合せ溶接されて、押出形材17と一対の押出角パイプ19A,19Bとが一体にされている。
【0016】
一般に、押出材は、押出方向に直交する端面を用いて溶接することで、高い寸法精度の面出しが可能となり、高精度な接合が行える。本構成では、押出角パイプ19の押出方向EDh2の先端の端面を用いて押出形材17と接合している。
【0017】
縦材13A,13Bは、図2に示すように、中空の押出角パイプで構成される。
これら横材11、縦材13A,13B、第1接合継手15A,第2接合継手15Bの外周形状、及び長手方向の寸法等は任意である。ここでは、いずれも長手方向の垂直断面が縦壁と横壁とを有する矩形状(開口位置を除く)となる直方体で示しているが、断面形状が円形、楕円形、4角形以外の多角形状等の他の形状であってもよい。
【0018】
図3は、第1接合継手15A,第2接合継手15Bの斜視図である。
第1接合継手15A,第2接合継手15Bは、それぞれが同一の形状であるため、図3に共通に示して説明する。第1接合継手15Aと第2接合継手15Bの外形状は、縦材13A,13Bの断面形状に応じた矩形状にされている。また、第1接合継手15Aと第2接合継手15Bは、その一端部25が縦材13A又は13Bの開口29に挿入され、他端部27が横材11の押出形材17の開口21に挿入される。これら第1接合継手15A及び第2接合継手15Bは、Z方向を押出方向Ediとするアルミニウム展伸材の中空押出材であるほか、中実のブロック体であってもよい。
【0019】
第1接合継手15A及び第2接合継手15Bは、一端部25と他端部27との中間位置に、横材11との交差方向、つまり横材11の長手方向(X方向)の両脇から、外側(+X方向と-X方向)に突出する一対のフランジ31を有する。一対のフランジ31は、第1接合継手15A及び第2接合継手15Bの縦壁に沿って(Z方向)、それぞれ連続して形成される。
【0020】
図4は、縦材13A,13Bの分解斜視図である。
第1接合継手15Aの一端部25は、縦材13Aの開口29に挿入され、第2接合継手15Bの一端部25は、縦材13Bの開口29に挿入される。
第1接合継手15Aを縦材13Aに挿入すると、縦材13Aの一端面(以下、端面という。)33がフランジ31に突き当たる。端面33は、縦材13Aの長手方向(Y方向)に直交する平坦面からなり、フランジ31と端面33とが面接触することで、第1接合継手15Aと縦材13Aとが互いに位置決めされる。同様に、第2接合継手15Bを縦材13Bに挿入すると、縦材13Bの端面33と第2接合継手15Bのフランジ31とが突き当たり、互いに面接触して位置決めされる。
【0021】
また、図2に示すように、縦材13Aの開口29に挿入された第1接合継手15Aの他端部27を、押出形材17の開口21に挿入すると、押出形材17の縦壁の端面(横材の側面)35がフランジ31に突き当たる。この端面35は、押出形材17の押出方向(Y方向)に直交する平坦面からなり、フランジ31と端面35とが面接触することで、第1接合継手15Aと押出形材17とが互いに位置決めされる。同様に、縦材13Bの開口29に挿入された第2接合継手15Bの他端部27を押出形材17の開口21に挿入すると、第2接合継手15Bと押出形材17とが位置決めされる。
【0022】
図5は、横材11と縦材13Aとを組み合わせた様子を示す一部拡大斜視図である。
横材11の押出形材17と縦材13Aとは、第1接合継手15Aのフランジ31のY方向の表裏面、すなわち、図3に示す互いに平行な平坦面31a,31bにそれぞれ面接触して位置決めされる。これにより、横材11と縦材13Aとを高い直交精度で位置決めできる。
【0023】
この位置決めされた状態で、第1接合継手15Aのフランジ31に沿った横材11と縦材13Aとの間、及びフランジ31が形成されない辺(図5の上下の辺)で対面する横材11と縦材13Aとの間をそれぞれ溶接する。
【0024】
図6は、図5に示すVI-VI線に沿った断面図である。図7は、図5に示すVII-VII線に沿った断面図である。
図6に示すように、フランジ31の平坦面31aが突き当たる縦材13Aの端面33と、フランジ31の平坦面31bが突き当たる押出形材17の端面35とを含む領域W1を、フランジ31の長手方向(Z方向)に沿って溶接する。また、図7に示すように、フランジ31の厚さ分の隙間を有して対面する縦材13Aと押出形材17との間の領域W2を、押出形材17の長手方向(X方向)に沿って溶接する。これにより、フランジ31、縦材13A及び押出形材17が一体となり、横材11と縦材13Aとが直交して接合される。また、縦材13Bについても同様に溶接することで、縦材13Bと横材11とが直交して接合される。
【0025】
このようにして、縦材13A,13Bと横材11とが高い直交精度で接合された交差接続構造体100が得られる。また、Z方向に関して、縦材13A,13Bの高さと、押出形材17の開口21の高さに差があっても、第1接合継手15A及び第2接合継手15Bの各フランジ31が、縦材13A,13Bと押出形材17とに面接触して接合されるため、互いの直交精度が低下することがない。
【0026】
<第2構成例>
次に、交差接続構造体の第2構成例を説明する。以降の説明では、同一の部材又は同一の箇所について、同一の符号を付与することで、その説明を省略又は簡単にする。
図8は、第2構成例の第1接合継手(接合継手)41A,第2接合継手(接合継手)41Bの斜視図である。
第1接合継手41A、第2接合継手41Bは、Y方向に連通する開口42を有し、外周面の全周にわたって環状のフランジ31Aが形成されている。フランジ31Aは、前述したフランジ31と同様にY方向の表裏面が互いに平行な平坦面31a,31bで形成されている。
【0027】
この場合の第1接合継手41A,第2接合継手41Bは、アルミニウム合金のダイカスト成形によって、フランジ31Aと一体に成形される。
【0028】
図9は、第2構成例の縦材43A,43B、及び第1接合継手41A,第2接合継手41Bの分解斜視図である。図10は、横材11である押出形材17と縦材43Aとを第1接合継手41Aを介して組み合わせた様子を示す一部拡大斜視図である。
図9に示すように、本構成の第1接合継手41Aは縦材43Aに挿入され、第2接合継手41Bは縦材43Bに挿入される。このとき、フランジ31Aは、その全周にわたって縦材43A,43Bの端面33に面接触して、第1接合継手41A,第2接合継手41Bと、縦材43A,43Bとが互いに位置決めされる。
【0029】
そして、図10に示すように、縦材43Aの開口29に一端部25が挿入された第1接合継手41Aは、押出形材17の開口21(図2)に他端部が挿入されると、フランジ31Aが、押出形材17の開口21における端面35の全周にわたり、面接触する。これにより、横材11と縦材43Aとを、より高い直交精度で位置決めできる。また、図示はしないが、縦材43Bについても同様に、高い直交精度で押出形材17に位置決めできる。
【0030】
本構成によれば、フランジ31Aが全周にわたって横材11と縦材43A,43Bとに面接触するため、直交精度が高められる。また、横材11と縦材43A,43Bとを安定した姿勢で溶接できるため、溶接の施工性を高められる。
【0031】
<第3構成例>
次に、交差接続構造体の第3構成例を説明する。
図11は、第3構成例の第1接合継手51A,第2接合継手51Bの斜視図である。図12は、図11のXII-XII線に沿った断面図である。
図11図12に示すように、第1接合継手(接合継手)51A、第2接合継手(接合継手)51Bには、外周面から突出する環状のフランジ31Bが形成される。このフランジ31Bは、インサート板55の外縁部で構成されている。つまり、平板状のアルミニウム展伸材であるインサート板55を、アルミニウム合金によりインサート成形することで、第1接合継手51A、第2接合継手51Bを形成し、その外周面からインサート板55の外縁部を突出させてフランジ31Bを形成している。
【0032】
本構成によれば、アルミニウム展伸材同士の溶接により、横材と縦材とを接合するため、溶接品質が向上して高い接合強度が得られる。
【0033】
<第4構成例>
次に、交差接続構造体の第4構成例を説明する。
図13は、第4構成例の第1接合継手61A,第2接合継手61Bの斜視図である。図14は、図13のXIV-XIV線に沿った断面図である。
図13図14に示すように、第1接合継手(接合継手)61A、第2接合継手(接合継手)61Bは、図11に示す第3構成例のインサート板55と同様にインサート成形されたインサート板65を備える。このインサート板65の中央部には、板厚方向に貫通する円形の開口孔65aが形成されている。その他の構成は第3構成例と同様である。
【0034】
本構成によれば、開口孔65aを設けることにより、軽量化が図れ、材料コストを低減できる。また、インサート成形時のアルミニウム合金材の流動が良好となり、巣等の欠陥の発生が抑制されて、高品質に成形できる。
【0035】
<フレーム構造体>
次に、上記した交差接続構造体を用いて構成されたフレーム構造体の一例を説明する。
図15は、交差接続構造体100を用いて構成されたフレーム構造体200の斜視図である。
フレーム構造体200は、矩形状の底板81と、底板81に沿って配置された複数の縦材85及び横材87と、縦材85と横材との交差部にそれぞれ配置される交差接続構造体100と、を備える。
【0036】
交差接続構造体100は、縦材85と横材87とを直交交差させて接続し、前述した第1~第4構成例における、第1接合継手15A,41A,51A,61A及び第2接合継手15B,41B,51B,61Bと、横材11である押出形材17及び押出角パイプ19A,19Bと、縦材13A,13Bとのいずれかの組合せを含んで構成される。
【0037】
本構成のフレーム構造体200によれば、高い剛性を維持しつつ、縦材85と横材87との高い直交精度が得られる。したがって、フレーム構造体200を例えば車体の骨格の一部、又は車体に設けられる各種の収容部に適用する際に、剛性を高めつつ、歪みの少ない高い寸法精度で車体に組み付けできる。このようなフレーム構造体200は、例えば、自動車のバンパシステム、ドアビーム、車体骨格材等の構造用部材として好適に用いることができる。
【0038】
上記した溶接については、溶け込みの深いMIG溶接、又はTIG溶接、或いはレーザ溶接、摩擦攪拌接合等の各種溶融溶接法により行うことができる。さらには、ブレージング、はんだ付け等も適用可能である。溶接の場合は、溶加材を供給しながら行うのが好ましい。この溶加材は、4000系アルミニウム溶加材である4043又は4047、或いは5000系アルミニウム溶加材である5356又は5183(JIS Z 3232)、Zn-Al系の溶加材等を用いることができる。Siが2~4質量%で残部が実質的にアルミニウム合金からなる皮材のFCW(フラックスコアードワイヤ)を用いることが更に好ましい。また、ブレージングの場合は、アルミろう材を用いてディップブレージング等を行うことができる。更に、上記の溶加材に代えて、はんだを用いることもできる。
【0039】
また、アルミニウム展伸材としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を含み、合金の材質としては、AA又はJIS6000系合金、5000系合金、7000系合金、3000系合金、2000系合金等の各種合金材を使用できる。
アルミニウム合金鋳物としては、AC4C、AC4CH、AC2B(JIS H 5202)又はADC12(JIS H 5302)を用いることができる。
【0040】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0041】
例えば、上記の実施形態では、接合継手によって横材と一対の縦材とを十字形に接続しているが、横材と一つの縦材とをT字形に接続する構成であってもよい。また、横材の長手方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に縦材を接続し、更にその接続位置からずれた位置で、横材の長手方向及び縦材の長手方向とに直交する方向(Z方向)に他の縦材を接続することで、横材と縦材とを3軸方向(X、Y、Z方向)に接続する構成としてもよい。
【0042】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) アルミニウム展伸材からなる中空押出材により形成された横材と、
前記横材の長手方向に直交して配置され、アルミニウム展伸材の中空押出材により形成された縦材と、
前記縦材の開口に一端部が挿入され、他端部が前記横材の一方の開口に挿入された接合継手と、
を備え、
前記接合継手は、前記一端部と前記他端部との間に、前記横材の長手方向の両側から、該長手方向に沿った外側へそれぞれ突出するフランジを有し、
前記フランジは、前記縦材の長手方向の一端面に突き当てて溶接され、
前記縦材の一端面のうち前記横材に沿った端面と、該端面に対面する前記横材の側面とが溶接され、
前記横材と前記縦材とが、前記接合継手を介して互いに直交して接合されている、
交差接続構造体。
この交差接続構造体によれば、縦材に接合継手が挿入される。縦材と接合継手は、横材の開口に挿入される。そして、接合継手のフランジと、縦材の長手方向一端面とが突き当てられて溶接され、縦材の一端面のうち横材に沿った端面と、その端面に対面する横材の側面とが溶接される。これにより、横材と縦材とが、接合継手を介して互いに高い直交精度で接合された構造にできる。
【0043】
(2) 前記フランジは、前記縦材の長手方向の一端面に面接触する平坦面を有する、(1)に記載の交差接続構造体。
この交差接続構造体によれば、フランジの平坦面が縦材の一端面に面接触することで、縦材と、接合継手とが高精度に位置決めされる。
【0044】
(3) 前記フランジは、前記接合継手の外周面の全周にわたって環状に形成され、前記縦材の長手方向の一端面に面接触する環状の平坦面を有する、(1)に記載の交差接続構造体。
この交差接続構造体によれば、フランジの環状の平坦面が縦材の一端面に面接触することで、縦材と、接合継手とを高精度に位置決めできる。また、各部材を安定して固定できるため、良好な溶接が行える。
【0045】
(4) 前記接合継手は、アルミニウム合金により形成され、
前記フランジは、アルミニウム展伸材のインサート板を前記アルミニウム合金によりインサート成形して設けられている、(1)~(3)のいずれか1つに記載の交差接続構造体。
この交差接続構造体によれば、アルミニウム展伸材同士を溶接することになり、高精度で高強度な構造体が得られる。
【0046】
(5) 前記インサート板は、板厚方向に貫通する開口孔が形成されている、(4)に記載の交差接続構造体。
この交差接続構造体によれば、インサート板材に開口孔を形成することで、軽量化が図れ、材料コストを低減できる。また、インサート成形時のアルミニウム合金材の流動が良好となり、巣等の欠陥の発生が抑制されて、高品質に成形できる。
【0047】
(6) (1)~(5)のいずれか1つに記載の交差接続構造体に用いられる接合継手。
この接続継手によれば、煩雑な加工を要することなく、縦材と横材とを高精度に直交させて接合できる。
【0048】
(7) (1)~(5)のいずれか1つに記載の交差接続構造体を備えるフレーム構造体。
このフレーム構造体によれば、高い剛性を維持しつつ、縦材と横材との高い直交精度が得られる。
【符号の説明】
【0049】
11,87 横材
13A,13B,43A,43B,85 縦材
15A,41A,51A,61A 第1接合継手(接合継手)
15B,41B,51B,61B 第2接合継手(接合継手)
17 押出形材
19A,19B 押出角パイプ
21 開口
23 端部
25 一端部
27 他端部
29 開口
31,31A,31B,31C,31D フランジ
31a,31b 平坦面
33 端面(縦材の一端面)
35 端面(横材の側面)
42,52 開口
55,65 インサート板
65a 開口孔
81 底板
100 交差接続構造体
200 フレーム構造体
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