(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071692
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】積層計画作成方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20220509BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20220509BHJP
B23K 9/032 20060101ALI20220509BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20220509BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220509BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20220509BHJP
B23K 9/16 20060101ALI20220509BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220509BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B22F3/16
B23K9/04 Z
B23K9/04 G
B23K9/04 A
B23K9/032 Z
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K15/00 501B
B23K15/00 505
B23K9/16 K
B33Y50/02
B22F3/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180780
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 碩
(72)【発明者】
【氏名】近口 諭史
【テーマコード(参考)】
4E001
4E066
4E081
4E168
4K018
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB06
4E001DC01
4E066AB00
4E066CC03
4E081CA01
4E081CA10
4E081CA11
4E081CA14
4E081DA14
4E168BA35
4E168BA42
4E168BA81
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】溶着ビードを積層する際のビードの垂れ落ちを考慮して、高精度な積層造形が行える積層計画作成方法を提供する。
【解決手段】積層計画作成方法では、まず、積層造形物の3次元形状データから目標形状を設定し、設定された目標形状を溶着ビードに対応した形状の複数のビードモデルに分割する。分割されたビードモデルが上下に重なるビード積層部でのビード形成時における溶加材の下層への垂れ落ち量を、溶着ビードの溶接条件に応じて予測する。この予測した垂れ落ち量に応じてビード積層部におけるビードモデルそれぞれのビード高さを補正する。ビード高さが補正されたビードモデルを含む複数のビードモデルを用いて、積層造形物を造形する前記積層計画を作成する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶加材を溶融及び固化させた溶着ビードを積層して積層造形物を造形する際の、前記溶着ビードのビード形成パス及び溶接条件を設定した積層計画を作成する、積層計画作成方法であって、
前記積層造形物の3次元形状データから目標形状を設定する工程と、
設定された前記目標形状を前記溶着ビードに対応した形状の複数のビードモデルに分割する工程と、
前記複数のビードモデルのうち、前記ビードモデル同士が上下に重なるビード積層部でのビード形成時における前記溶加材の下層への垂れ落ち量を、前記溶着ビードの溶接条件に応じて予測する工程と、
予測した前記垂れ落ち量に応じて前記ビード積層部における前記ビードモデルそれぞれのビード高さを補正する工程と、
前記ビード高さが補正されたビードモデルを含む前記複数のビードモデルを用いて、前記積層造形物を造形する前記積層計画を作成する工程と、
を有する、積層計画作成方法。
【請求項2】
前記ビード高さを補正する工程は、前記垂れ落ち量を前記溶着ビードを形成する溶接速度に応じて補正する、
請求項1に記載の積層計画作成方法。
【請求項3】
前記ビード形成時の溶接速度と、前記ビード形成時における前記溶加材の垂れ落ち量との関係を表す情報を含むデータベースを用意する工程を更に有し、
前記ビード高さを補正する工程は、前記データベースを参照して、前記ビード形成時の溶接速度に対応する前記垂れ落ち量を求め、前記ビードモデルのビード高さを、前記垂れ落ち量に応じた高さに補正する、
請求項2に記載の積層計画作成方法。
【請求項4】
複数層にわたって積層される前記ビードモデルは、ビード形成方向に直交する断面において、ビード形成面から肉盛りされる領域を表す残存部と、前記ビード形成面より下方に垂れ落ちる垂れ領域を有する場合にのみ設けられる前記垂れ領域を表す垂れ部と、を有し、
前記残存部は、互いに平行な上辺及び下辺と、一対の側辺とを有し、前記下辺が前記上辺より長い台形形状の領域であり、
前記垂れ部は、i層目の前記ビードモデルの前記残存部の下辺より下側に配置され、前記i層目のビードモデルの下層に配置されたi-1層目のビードモデルの前記残存部における一方の側辺又は双方の側辺に沿って形成された1つ又は2つの三角形状の領域であり、
前記i層目のビードモデルに対する、ビードモデル全面積をS、前記残存部の面積をSe、前記垂れ部の合計面積をS
f、前記残存部の上辺の長さをu
i、下辺の長さをw
i、高さをh
i、底角をθ
iとし、
i-1層目の前記ビードモデルに対する、前記残存部の上辺の長さをu
n-1、下辺の長さをw
i-1、高さをh
i-1とし、
前記垂れ部が採り得る最大の合計面積に対する前記垂れ部の面積との比率をαとして、下記式を用いて前記ビードモデルの形状を決定する、
請求項3に記載の積層計画作成方法。
【数1】
【請求項5】
前記ビード積層部が、オーバーハングして積層される場合には、
前記溶着ビードの形成方向に直交する断面において、
前記ビードモデルと周囲の他のビードモデルとの重なり部の面積をf
pとし、
前記残存部の下辺の一端部に前記垂れ部が形成される場合に、当該垂れ部の三角形の底辺の長さをW
R、底辺から頂点までの高さをh
Rとし、
前記残存部の下辺の他端部に前記垂れ部が形成される場合に、当該垂れ部の三角形の底辺の長さをW
L、底辺から頂点までの高さをh
Lとし、
周囲ビードとの重なり部の面積をS
fpとし、
互いに隣接する前記残存部同士の間に形成される隙間面積をS
cとしたとき、
下記式を用いて前記i層目のビードモデルの形状を決定する、
請求項4に記載の積層計画作成方法。
【数2】
【請求項6】
前記ビード積層部における前記ビード高さが補正された複数のビードモデルの積層高さが、前記ビード積層部に対応する前記目標形状の高さより低い場合に、前記目標形状の高さを超えるまで前記ビード積層部に前記ビードモデルを更に追加する、
請求項4又は5に記載の積層計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着ビードを積層して形成される積層造形物の積層計画作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産手段として3Dプリンタを用いた造形のニーズが高まっており、金属材料を用いた造形の実用化に向けて研究開発が進められている。金属材料を造形する3Dプリンタは、レーザ又は電子ビーム、更にはアーク等の熱源を用いて、金属粉体又は金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させることで積層造形物を作製する。
【0003】
例えば、特許文献1には、積層造形物の製造プロセスをシミュレーションにより評価して、最適な溶接パス及び溶接条件を調整し、調整された条件で溶接装置を制御して造形する、積層設計方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アーク溶接により複数の溶着ビードを積層して造形する際、溶着ビードが重力により前層に垂れ落ちることがあり、その場合には、形成される溶着ビードのビード高さが予定した高さより低くなる。このような溶着ビードの垂れは、特許文献1による積層設計方法であっても定量的に予測できず、そのため、完成した積層造形物の形状が目標形状からずれを生じてしまうことがあった。
【0006】
そこで本発明は、溶着ビードを積層する際のビードの垂れ落ちを考慮して、高精度な積層造形が行える積層計画作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の構成からなる。
溶加材を溶融及び固化させた溶着ビードを積層して積層造形物を造形する際の、前記溶着ビードのビード形成パス及び溶接条件を設定した積層計画を作成する、積層計画作成方法であって、
前記積層造形物の3次元形状データから目標形状を設定する工程と、
設定された前記目標形状を前記溶着ビードに対応した形状の複数のビードモデルに分割する工程と、
前記複数のビードモデルのうち、前記ビードモデル同士が上下に重なるビード積層部でのビード形成時における前記溶加材の下層への垂れ落ち量を、前記溶着ビードの溶接条件に応じて予測する工程と、
予測した前記垂れ落ち量に応じて前記ビード積層部における前記ビードモデルそれぞれのビード高さを補正する工程と、
前記ビード高さが補正されたビードモデルを含む前記複数のビードモデルを用いて、前記積層造形物を造形する前記積層計画を作成する工程と、
を有する、積層計画作成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶着ビードを積層する際のビードの垂れ落ちを考慮して、高精度な積層造形が行える積層計画を作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、積層造形物の製造装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、積層造形物の概略形状を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、溶着ビードの形成方向に直交する断面におけるビードモデルの基本形状を示す概略説明図である。
【
図4】
図4は、ビード同士が重なるビード積層部におけるビードモデルを示す概略説明図である。
【
図5】
図5は、条件に応じてビードモデルの垂れ部の大きさが増減する様子を(A),(B)で示す説明図である。
【
図6】
図6は、溶加材送給速度と溶接速度とをそれぞれ変化させて溶着ビードを積層した場合の各溶着ビードの予想プロファイルを示す説明図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す各溶接条件において、溶着ビードを積層数毎のビード高さの変化を示す説明図である。
【
図8】
図8は、溶接速度に対する充填率の変化の様子を示すグラフである。
【
図9】
図9は、溶着ビードの形成方向に直交する断面における、上層のビードモデルと下層のビードモデルの形状を示す説明図である
【
図10】
図10は、ビード積層部にビードモデルを適用する場合の溶着ビードの模式的な説明図である。
【
図11】
図11は、積層計画の作成手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、複数のビードモデルを複数列配置してブロック状にした態様を示すビードモデルの模式図である。
【
図13】
図13の(A),(B)は、オーバーハングを有する積層造形物の形状を複数のビードモデルに分割した態様を示すビードモデルの模式図である。
【
図14】
図14は、積層造形物がオーバーハングを有する積層造形物の場合のビードモデルを示す説明図である。
【
図15】
図15は、ビードモデルの重なり部と隙間部とを示すビードモデルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<積層造形物の製造装置>
図1は、積層造形物の製造装置を示す概略構成図である。
本構成の積層造形物の製造装置100は、積層造形装置11と、積層造形装置11を統括制御するコントローラ13と、電源装置15と、を備える。積層造形装置11は、先端軸にトーチ17が設けられた溶接ロボット19と、トーチ17に溶加材(溶接ワイヤ)Mを供給する溶加材供給部21とを有する。この積層造形装置11は、アークにより溶加材Mを溶融及び固化させてベースプレート23上に溶着ビードBを形成し、溶着ビードBを順次に積層することで積層造形物25を造形する。ここで示す積層造形物の製造装置100は、一構成例に過ぎず、他の構成であってもよい。
【0011】
溶接ロボット19は、多関節ロボットであり、ロボットアームの先端軸に取り付けたトーチ17には、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ17の位置及び姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0012】
トーチ17は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。ここで用いるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接及び炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、又は、TIG溶接及びプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する積層造形物に応じて適宜選定される。
【0013】
例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ17は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部21からトーチ17に送給される。そして、トーチ17を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、ベースプレート23上に溶加材Mの溶融凝固体である線状の溶着ビードBが形成され、この溶着ビードBからなる積層造形物25が造形される。
【0014】
コントローラ13は、CAD/CAM部31と、軌道演算部33と、記憶部35と、これらが接続される制御部37と、を有する。このコントローラ13は、CPU、メモリ、及びストレージ等を備えるコンピュータ装置により構成されている。
【0015】
CAD/CAM部31は、作製しようとする積層造形物25の3次元形状データ(CADデータ等)を入力又は作成する。
軌道演算部33は、3次元形状データに基づいて目標形状となる形状モデルを生成し、得られた形状モデルを溶着ビードBの高さに応じた複数の溶着ビード層に分解する。そして、分解した形状モデルの各層について、ビード形成パス(溶着ビードBを形成するためのトーチ17の軌道)、及び溶着ビードBを形成する溶接条件(ビード幅、ビード積層高さ等を得るための溶接電流、溶接電圧等の加熱条件、又は溶接条件等を含む)を定める積層計画を作成する。つまり、目標形状である形状モデルを、溶着ビードに対応した形状の複数のビードモデルに分割し、分割したそれぞれのビードモデルのビード形成パス及び溶接条件を決定する。作成した積層計画は、積層造形装置11の各部を駆動する駆動プログラムとして記憶部35に記憶される。なお、駆動プログラムは、必要とされる情報をコントローラ13とは異なる他のコンピュータ装置に入力して、他のコンピュータ装置で生成してもよい。その場合、生成した駆動プログラムは、LAN等の適宜な通信手段を介してコントローラ13の記憶部35に入力される。
【0016】
なお、ベースプレート23は、鋼板等の金属板からなり、基本的には積層造形物25の底面(最下層の面)より大きいものが使用される。このベースプレート23は、板状に限らず、ブロック体又は棒状等の、他の形状のベースであってもよい。
【0017】
溶加材Mとしては、あらゆる市販の溶接ワイヤを用いることができる。例えば、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)、又は、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(JIS Z 3313)等で規定されるワイヤを用いることができる。
【0018】
また、溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビーム又はレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビーム又はレーザにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、溶着ビードの状態をより適正に維持して、積層造形物の更なる品質向上に寄与できる。
【0019】
上記構成の積層造形物の製造装置100によれば、制御部37が、記憶部35に記憶された駆動プログラムを実行して、溶接ロボット19及び電源装置15を駆動する。つまり、コントローラ13は、駆動プログラムに設定された手順に従って溶接ロボット19を駆動して、トーチ17をビード形成パスに沿って移動させる。このトーチ17の移動と共に、トーチ先端で溶加材Mをアークにより加熱し、溶融した溶加材Mをベースプレート27上に盛り付ける。これにより、ベースプレート27上に複数の線状の溶着ビードBが形成された積層造形物25が得られる。
【0020】
図2は、積層造形物25の概略形状を示す斜視図である。
一例として示す積層造形物25は、溶着ビードBが複数回積層されたビード積層部41を有する。ビード積層部41においては、初層の溶着ビードB
Pと、初層の溶着ビードB
P上に積層された他の溶着ビードBとのそれぞれは、ビード高さh
P(及びビード幅w
P)が必ずしも一定ではない。そのため、各溶着ビードが積層されたビード積層部41の合計高さHを正確に予測することは難しい。このことは、溶着ビードが形成される際に、加熱された溶融金属が下層に垂れ落ち、この垂れ落ちた溶融金属の容積に応じた分だけビード高さが低くなることに起因する。
【0021】
そこで、上記のようなビード積層部を有する積層造形物25の積層計画を作成する際、溶着ビードの垂れ落ちを予測し、この垂れ落ちによる溶着ビードの形状変化を反映して積層計画を作成する。以下に、溶着ビードの垂れ落ちを考慮した積層造形物の積層計画の作成方法について説明する。
【0022】
<積層計画の作成>
積層造形物を造形するためのビード形成パス及び溶接条件を設定した積層計画を作成するために、まず、積層造形物の3次元形状データに基づく目標形状を、溶着ビードに対応した形状の複数のビードモデルに分割する。
【0023】
図3は、溶着ビードBの形成方向に直交する断面におけるビードモデルBMの基本形状を示す概略説明図である。
基本形状のビードモデルBMは、ビード形成方向(
図3の奥行き方向)に直交する断面において、ビード形成面45(最下層ではベースプレート23であり、上層では下層のビードモデルの上面)から盛り上がる残存部47と、ビード形成面45より下方に垂れ落ちる垂れ部49とを有する。残存部47は、模式的に点線で示す溶着ビードBの断面形状に近似された多角形状であって、ここでは互いに平行な上辺51と下辺53と、一対の側辺55,57とを有する台形の領域となる。なお、ベースプレート23上に形成される初層の溶着ビードについては、上記した垂れ落ちが生じないものとし、ビードモデルBMに垂れ部49を設けない。
【0024】
残存部47の点P1-P2で示す下辺53の長さwは、点P3-P4で示す上辺51の長さuより長い。また、垂れ部49は、残存部47の下辺53の両端P1,P2を含み、ビード形成面45より下方に頂点Kが形成される1つ又は2つの三角形の領域である。
図3においては、残存部47の下辺53の両端部に2つの垂れ部49R,49Lが配置されるが、積層形態によってはいずれか一方の端部にのみ垂れ部が配置されることもある。また、一対の垂れ部49L,49Rの三角形の面積は、それぞれ等しくしているが、異なる場合もある。これら場合については後述することにする。
【0025】
図4は、溶着ビード同士が重なるビード積層部41におけるビードモデルを示す概略説明図である。
ビード積層部41では、ベースプレート23に複数層の溶着ビードが積層される。これら複数層の溶着ビードを、ビード形成方向の垂直面でモデル化すると、初層の溶着ビードに対応するビードモデルBM
1の上にビードモデルBM
2,BM
3,・・・,BM
n(nは溶着ビードの全層数を表す整数)が順次に積層されたモデルとなる。
【0026】
初層のビードモデルBM
1には垂れ部が存在せず、2層目からのビードモデルBM
2,BM
3,・・・,BM
nには、それぞれ垂れ部49R,49Lが形成される。垂れ部49R,49Lの形状は、そのビードモデルの残存部47における下辺53の両端(
図3のP1,P2)と、その下層に配置されたビードモデルの残存部47における上辺51の両端(
図3のP3,P4に対応する。)の位置、側辺55,57及び、溶着ビードを形成する溶接条件に応じて決定される。
【0027】
図5は、条件に応じてビードモデルの垂れ部の大きさが増減する様子を(A),(B)で示す説明図である。
下層の溶着ビードの上に溶着ビードを積層した場合、上層の溶着ビードには下層に向けて垂れ下がる垂れ部を生じる。これをモデルで表すと、
図5の(A)に示すようになる。すなわち、下層のビードモデルBM
n-1の上層にビードモデルBM
nを設けた場合に、上層のビードモデルBM
nに垂れ部49R,49Lが下方に延びて設けられる。
【0028】
ここで、下層のビードモデルBMn-1における残存部47の下辺をQ1-Q2とし、上辺をQ3-Q4する。また、上層のビードモデルBMnにおける残存部47の下辺をP1-P2とし、上辺をP3-P4とする。
【0029】
この場合、垂れ部49Lは、P1-Q3を一辺とし、頂点を下層のビードモデルBMn-1における残存部47の側辺55(Q3-Q1)に沿って設定した三角形にする。垂れ部49Rも同様に、P2-Q4を一辺とし、頂点が下層のビードモデルBMn-1における残存部47の側辺57(Q4-Q2)に沿って設定した三角形にする。
【0030】
垂れ部49Lが採り得る最大の面積は、一辺であるP1-Q3と、下辺53の一端Q1を頂点Kとする三角形の面積である。
図5の(B)に示すように、頂点KがQ1からQ3に近くなるほど、垂れ部49Lの面積が減少する。垂れ部49Rも同様に、頂点KがQ2の位置で採り得る最大の面積となり、頂点KがQ2からQ4に近くなるほど、垂れ部49Rの面積が減少する。
【0031】
ビードモデルBMi(iは溶着ビードの層数を表す整数)の断面積は、溶加材Mの供給量を一定とする溶接条件の下では同一に設定される。そうすると、
図5の(A)に示すビードモデルBM
iの断面積と、
図5の(B)に示すビードモデルBM
iの断面積とは等しく、したがって、
図5の(B)に示すビードモデルの残存部47の高さh
iは、
図5の(A)に示す高さh
iより高くなる。このような垂れ部49R,49Lの形状及び面積は、溶接条件等によって変化する。
【0032】
上記した垂れ部49R,49Lの形状及び面積を定量的に表すため、
図5の(A)に示す垂れ部49R,49Lの最大面積をS
fmaxとし、
図5の(B)に示す垂れ部49R,49Lの面積をS
fとした場合の、S
fmaxとS
fとの面積比を定量値とする。つまり、下層に垂れると予想される最大の三角形領域に対して、実際に垂れた領域の断面積が占める割合を充填率α[%](=S
f/S
fmax×100)と定義する。
【0033】
充填率αは、溶接条件に応じて変化することが分かっている。以下、溶接条件を変化させた場合のそれぞれで、充填率αを求めた一例を説明する。
図6は、溶加材送給速度と溶接速度とをそれぞれ変化させて溶着ビードを積層した場合の各溶着ビードの予想プロファイルを示す説明図である。
【0034】
溶加材送給速度をVa,1.2Va及び1.5Va、溶接速度をVb,2Vb及び3Vb(溶加材供給速度:1.5Vaの場合のみ)のそれぞれの条件で、合計11層を積層した場合の各溶着ビードの形状をシミュレーションにより予測した。
【0035】
図6に示すように、溶加材送給速度がVaの場合、溶接速度をVbから2Vbに増加させると、溶着ビードのビード幅が狭くなるとともに、積層高さが低くなる。溶加材送給速度が1.2Va,1.5Vaの場合も同様である。
【0036】
図7は、
図6に示す各溶接条件において、溶着ビードを積層数毎のビード高さの変化を示す説明図である。
図7に示すビード高さは、1層目のビード高さを基準値(=1)として、2層目以降のビード高さを1層目のビード高さに対する比率で示している。
【0037】
層毎の溶着ビードのビード高さは、条件にもよるが、例えば3層以下の範囲では高くなる傾向があり、4層以上では略一定となる。この傾向は溶接速度が遅いほど顕著となる。一方、溶加材送給速度の違いによるビード高さの違いは殆ど見られない。また、溶加材送給速度が速いほど、溶着ビードの形状は安定しなくなる。このように、種々の溶接条件のうち、特に溶接速度に関しては、溶着ビードのビード高さとの相関を有することがわかる。
【0038】
図8は、溶接速度に対する充填率の変化の様子を示すグラフである。
図8には、
図6,
図7に示す各溶接条件における3層目以降の溶着ビードの形状を、
図3に示すビードモデルに近似させ、その近似させたビードモデルの垂れ部の充填率αを演算により求めた結果を示している。また、このグラフには、各溶接条件で求めた充填率αを最小自乗法により求めた近似曲線LMを示している。
図8によれば、溶接速度が速いほど、溶着ビードの垂れ量が少なくなり、充填率αが小さくなる。また、溶接速度が遅いほど、溶着ビードの垂れ量が多くなり、充填率αが大きくなる。
【0039】
図8に示すような溶接速度に対する充填率の変化特性をデータベースに登録しておくことで、溶着ビード形成時の溶接速度が定まれば、この登録されたデータベースを参照して、溶接速度に対応する充填率αを簡単に求められる。
【0040】
次に、ビードモデルの形状の算出式について説明する。
図9は、溶着ビードの形成方向に直交する断面における、上層のビードモデルBM
iと下層のビードモデルBM
i-1の形状を示す説明図である。
図9に示す記号の意味は次のとおりである。
S:上層のビードモデルBM
iの全断面積(残存部47及び垂れ部49R,49Lを含む)
S
e:ビードモデルBM
iの残存部47の面積
S
f:ビードモデルBM
iの垂れ部49R,49Lの合計面積
u
i:ビードモデルBM
iの残存部47の上辺51の長さ
w
i:ビードモデルBM
iの残存部47の下辺53の長さ
h
i:ビードモデルBM
iの残存部47の高さ
θ
i:ビードモデルBM
iの残存部47の底角(下辺53と側辺55,57とがなす角)
θ
i-1:ビードモデルBM
i-1の残存部47の底角(下辺53と側辺55,57とがなす角)
h
R:ビードモデルBM
iの垂れ部49Rの高さ
h
L:ビードモデルBM
iの垂れ部49Lの高さ
w
R:ビードモデルBM
iの垂れ部49Rの幅
h
L:ビードモデルBM
iの垂れ部49Lの幅
【0041】
この場合、垂れ部49Rの充填率αR[%]と垂れ部49Lとにおける充填率αL[%]は、それぞれ(1)式と(2)式で表せる。
【0042】
【0043】
ここでは、充填率αRとαLとは等しいものとして、纏めてαとして表す(α=αR=αL)。
残存部の面積Seは、ビードモデルBMn全体の面積S及び垂れ部49の面積Sfから、(3)式で表せる。
【0044】
【0045】
また、残存部47の底角θiとwi,ui,hiとは、(4)式の関係を有する。
【0046】
【0047】
上記した(3)、(4)式からn層目の残存部47における、上辺51の長さuiと高さhiとは、(5)、(6)式で表せる。
【0048】
【0049】
以上より、積層計画で溶着ビードを形成する溶接条件を決定した後、その溶接条件に応じた充填率αを前述したデータベースを参照して求め、得られた充填率αを溶着ビードの層数iに応じてαiとして設定する。そして、積層計画から求められる既知のパラメータであるS,wi,tanθi-1、hi-1、及びSf等から計算されるφ、wR,wL,hR,hLの各値を求め、これらの各パラメータと、設定された充填率αiとを(5)、(6)式に代入して、ビードモデルBMiの残存部47における上辺51の長さui、高さhi、を求める。これにより、ビードモデルBMiの形状を、垂れ部49R,49Lに応じたより正確な高さ及び幅に決定できる。
【0050】
図10は、ビード積層部41にビードモデルを適用する場合の溶着ビードBの模式的な説明図である。
ここでは、積層造形物の目標形状61を得るために、ベースプレート23上に溶着ビードBを複数層積層して、ビード積層部41を造形する場合を例示する。
例えば、垂れの影響を考慮せずに目標形状61を得る積層計画を作成した場合、5層の溶着ビードBを積層すれば、目標形状の高さHb以上の積層高さが計算上得られたとする。その場合、実際の溶着ビードBには、前述した垂れ部49が形成されるため、各層のビード高さh1~h5は、生じた垂れの容積分だけビード高さが変化する。すると、5層の溶着ビードBの高さを合計した積層高さHaは、目標形状の高さHbより低くなる。この場合、ビード積層部41を完全な形状に造形できない。
【0051】
そのような場合に、積層高さHcが目標形状の高さHbより高くなるまで、溶着ビードBaを追加する。つまり、最上層のビードモデルの更に上に新たなビードモデルを追加する。これにより、垂れが生じた場合でも確実に目標形状の高さHbを確保できる積層計画が得られる。
【0052】
以上の積層計画の作成手順を纏めると、次のようになる。
図11は、積層計画の作成手順を示すフローチャートである。
まず、積層造形物の3次元形状データを取得して、目標形状を設定する(S1)。
設定した目標形状をベースプレート上で積層造形することを想定し、目標形状を台形形状等の簡易ビードモデルに分割し、簡易ビードモデルの諸寸法と溶接条件とを決定する(S2)。
【0053】
複数の簡易ビードモデルのうち、簡易ビードモデル同士が上下に重なるビード積層部41でのビード形成時における溶加材の下層への垂れ落ち量を、溶着ビードの溶接条件に応じて予測する(S3)。ここでは、決定した簡易ビードモデルの配置と溶接条件とに応じて、前述した数式を用いて前層への垂れを求め、簡易ビードモデルの形状を、残存部47と、垂れ部49(存在しなモデルもある)とを有する
図3に示すビードモデルBMの形状にする。
【0054】
溶着ビードBの溶着量は、溶接条件によらずに不変であることを制約条件とし、各ビードモデルBMの面積は一定とする。また、垂れ部49の面積S
fは、充填率αを用いて決定する。この充填率αは、溶接条件に応じて予め実験的に求めた充填率αのデータベースを参照して求める。充填率αのデータベースは、前述した
図8に示すような溶接速度に応じた充填率αの関係を表す近似曲線の数式であってもよく、溶接速度と充填率αとの対応テーブルであってもよい。
【0055】
予測した垂れ落ち量に応じてビード積層部41におけるビードモデルそれぞれのビード高さを補正する(S4)。
【0056】
次に、ビード積層部41におけるビードモデルBMの各ビード高さを合計した積層高さHaを求める(S5)。そして、求めた積層高さHaが目標形状の高さHbよりも高いかを判断する(S6)。
図10に示すように、積層高さHaが、目標形状の高さHbより低い場合には、目標形状の高さを超えるまで、少なくとも1つのビードモデルBMaを追加する(S7)。
【0057】
そして、ビードモデルBMの積層高さHcが目標形状の高さHbを超えた場合に、新たに追加したビードモデルを含む全ビードモデルBMを用いて積層計画を作成する(S8)。作成した積層計画は、
図1に示す積層造形装置11の各部を駆動する駆動プログラムとして記憶部35に記憶される。
【0058】
このようにして作成された積層計画によれば、多層の溶着ビードが積層されるビード積層部41において、ビード形成時に生じる垂れによって積層高さが変化する場合でも、ビードモデルが垂れを考慮して設定されるため、確実に目標形状の高さ以上の積層高さに造形できる。よって、垂れの影響を受けることなく高精度な積層造形が行える。
【0059】
<他のビードモデルの配列>
次に、溶着ビードの種々の形態におけるビードモデルの配列を説明する。
図12は、複数のビードモデルBM
1,BM
2,BM
3を複数列配置してブロック状にした態様を示すビードモデルの模式図である。
【0060】
各ビードモデルBM1,BM2,BM3は、隣接するビードモデル同士の間に重なり部を有して配列され、複数列のうち両端の列のビードモデルBM1,BM2,BM3に垂れ部49R,49Lを設ける。この場合、両端の列より内側のビードモデルBM1,BM2,BM3は、お互いに重なり部を有するため、垂れが生じてもビード高さは殆ど変化しない。しかし、両端の列のビードモデルBM1,BM2,BM3は、垂れの影響を受ける。
【0061】
そこで、特に垂れによる高さ変化が大きい両端の列のビードモデルBM1,BM2,BM3にのみ垂れ部49R,49Lを設けて、垂れ部49R,49Lの大きさに応じて残存部47の高さを補正する。これにより、部分的な高さ補正を実施するだけで済み、効率よく正確な積層計画を作成できる。
【0062】
図13の(A),(B)は、オーバーハングを有する積層造形物の形状を複数のビードモデルBMに分割した態様を示すビードモデルの模式図である。
図13の(A)には、積層されるビードモデルBM
1,BM
2,BM
3が傾斜して積層され、上層に積層されるビードモデルの下辺53の両端よりも内側に、下層のビードモデルの上辺51が配置される場合を示す。この場合には、ビードモデルBM
2,MB
3のそれぞれに、下辺53の両端に垂れ部49R,49Lを設けて、残存部47の高さを求めるようにする。
【0063】
一方、
図13の(B)に示すように、上層に積層されるビードモデルの下辺53の一方の端部が、下層のビードモデルの上辺51の両端より内側に配置される場合には、上層に配置されるビードモデルの下辺53の他方の端部側にのみ垂れ部(ここでは49L)を設けて、残存部47の高さを求めるようにする。
【0064】
この場合においては、前述した(1)式、(4)式、及び(6)式の関係から、(7)式が得られる。
【0065】
【0066】
そして、垂れ部49R,49Lを合計した面積S
fは(8)式、(9)式で表せる。ここで、S
fpは、周囲のビードモデルとの重なり部63の面積であり、S
cは、隣接するビードモデルの間に生じた隙間部65の面積である(後述の
図15参照)。
【数6】
【0067】
図14は、積層造形物がオーバーハングを有する場合のビードモデルを示す説明図である。
図15は、重なり部と隙間部とを示すビードモデルの説明図である。
【0068】
(7)式、(8)式、(9)式を基本として、前述と同様に前述した(5)式、(6)式からビードモデルBMiの残存部47における上辺51の長さui,高さhi、を求める。これにより、垂れ部49R,49Lが互いに非対称又はいずれか一方のみが存在する場合でも、正確なビードモデルの形状を求めることができる。
【0069】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0070】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶加材を溶融及び固化させた溶着ビードを積層して積層造形物を造形する際の、前記溶着ビードのビード形成パス及び溶接条件を設定した積層計画を作成する、積層計画作成方法であって、
前記積層造形物の3次元形状データから目標形状を設定する工程と、
設定された前記目標形状を前記溶着ビードに対応した形状の複数のビードモデルに分割する工程と、
前記複数のビードモデルのうち、前記ビードモデル同士が上下に重なるビード積層部でのビード形成時における前記溶加材の下層への垂れ落ち量を、前記溶着ビードの溶接条件に応じて予測する工程と、
予測した前記垂れ落ち量に応じて前記ビード積層部における前記ビードモデルそれぞれのビード高さを補正する工程と、
前記ビード高さが補正されたビードモデルを含む前記複数のビードモデルを用いて、前記積層造形物を造形する前記積層計画を作成する工程と、
を有する、積層計画作成方法。
この積層計画作成方法によれば、ビード積層部でのビード形成時に、溶加材が下層へ垂れ落ちる垂れ落ち量を溶着ビードの溶接条件に応じて予測することで、正確なビード高さを有するビードモデルを設定できる。これにより、垂れ落ちの影響を受けることなく、正確な積層高さが得られる積層計画を作成できる。
【0071】
(2) 前記ビード高さを補正する工程は、前記垂れ落ち量を前記溶着ビードを形成する溶接速度に応じて補正する、(1)に記載の積層計画作成方法。
この積層計画作成方法によれば、垂れ落ち量との相関のある溶接速度に応じて垂れ落ち量を補正することで、ビードモデルのビード高さを正確に設定できる。
【0072】
(3) 前記ビード形成時の溶接速度と、前記ビード形成時における前記溶加材の垂れ落ち量との関係を表す情報を含むデータベースを用意する工程を更に有し、
前記ビード高さを補正する工程は、前記データベースを参照して、前記ビード形成時の溶接速度に対応する前記垂れ落ち量を求め、前記ビードモデルのビード高さを、前記垂れ落ち量に応じた高さに補正する、(2)に記載の積層計画作成方法。
この積層計画作成方法によれば、垂れ落ち量を予め用意されたデータベースを参照して求めることで、効率良くビード高さを補正できる。
【0073】
(4) 複数層にわたって積層される前記ビードモデルは、ビード形成方向に直交する断面において、ビード形成面から肉盛りされる領域を表す残存部と、前記ビード形成面より下方に垂れ落ちる垂れ領域を有する場合にのみ設けられる前記垂れ領域を表す垂れ部と、を有し、
前記残存部は、互いに平行な上辺及び下辺と、一対の側辺とを有し、前記下辺が前記上辺より長い台形形状の領域であり、
前記垂れ部は、i層目の前記ビードモデルの前記残存部の下辺より下側に配置され、前記i層目のビードモデルの下層に配置されたi-1層目のビードモデルの前記残存部における一方の側辺又は双方の側辺に沿って形成された1つ又は2つの三角形状の領域であり、
前記i層目のビードモデルに対する、ビードモデル全面積をS、前記残存部の面積をSe、前記垂れ部の合計面積をSf、前記残存部の上辺の長さをui、下辺の長さをwi、高さをhi、底角をθiとし、
i-1層目の前記ビードモデルに対する、前記残存部の上辺の長さをun-1、下辺の長さをwi-1、高さをhi-1とし、
前記垂れ部が採り得る最大の合計面積に対する前記垂れ部の面積との比率をαとして、下記式を用いて前記ビードモデルの形状を決定する、(3)に記載の積層計画作成方法。
【0074】
【0075】
この積層計画作成方法によれば、台形形状の残存部と三角形の垂れ部とを有するビードモデルを用いて、幾何学的な演算により正確なビード高さを予測できる。
【0076】
(5) 前記ビードモデルが上下に重なるビード積層部が、オーバーハングして積層される場合には、
溶着ビードの形成方向に直交する断面において、
前記ビードモデルと周囲の他のビードモデルとの重なり部の面積をfpとし、
前記残存部の下辺の一端部に前記垂れ部が形成される場合に、当該垂れ部の三角形の底辺の長さをWR、底辺から頂点までの高さをhRとし、
前記残存部の下辺の他端部に前記垂れ部が形成される場合に、当該垂れ部の三角形の底辺の長さをWL、底辺から頂点までの高さをhLとし、
周囲ビードとの重なり部の面積をSfpとし、
互いに隣接する前記残存部同士の間に形成される隙間面積をScとしたとき、
下記式を用いて前記i層目のビードモデルの形状を決定する、(4)に記載の積層計画作成方法。
【0077】
【0078】
この積層計画作成方法によれば、溶着ビードがオーバーハングして斜めに積層された場合でも、正確なビード高さを求めることができる。
【0079】
(6) 前記ビード積層部における前記ビード高さが補正された複数のビードモデルの積層高さが、前記ビード積層部に対応する前記目標形状の高さより低い場合に、前記目標形状の高さを超えるまで前記ビード積層部に前記ビードモデルを更に追加する、(4)又は(5)に記載の積層計画作成方法。
この積層計画作成方法によれば、垂れの影響により積層後のビード高さが予定した高さに満たなくなる場合でも、ビード高さが正確に予測できるため、溶着ビードを追加形成して、確実に必要とされる溶着ビードの積層高さにできる。
【符号の説明】
【0080】
11 積層造形装置
13 コントローラ
15 電源装置
17 トーチ
19 溶接ロボット
21 溶加材供給部
23 ベースプレート
25 積層造形物
31 CAD/CAM部
33 軌道演算部
35 記憶部
37 制御部
41 ビード積層部
45 ビード形成面
47 残存部
49 垂れ部
51 上辺
53 下辺
55 側辺
57 側辺
61 目標形状
63 重なり部
65 隙間部
100 積層造形物の製造装置