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特開2022-71699熱交換効率補助具、及びエアコン用室外機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071699
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】熱交換効率補助具、及びエアコン用室外機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/58 20110101AFI20220509BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
F24F1/58
F24F13/20 202
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180794
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】519439483
【氏名又は名称】一般社団法人ウエタ
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】植田 耕作
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BA03
(57)【要約】
【課題】簡単な手段によって、エアコンの熱交換効率を向上させて、エアコンの電気使用量のバラツキを抑制するための熱交換効率補助具を提供する。
【解決手段】室内機からの冷却媒体と熱交換を行うと共に、躯体1Aに、空気が流入する吸込み口8と空気が吹き出す吹き出し口5とを有するエアコン用室外機1に取り付ける熱交換効率補助具である。上記躯体1A若しくは上記吹き出し口5を保護する吹き出しグリル7に対し着脱可能に取り付けられて、上記吹き出し口5から吹き出した空気を上記吹き出し口5及び上記吸込み口8から離れる方向に誘導する筒体10を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機からの冷却媒体と熱交換を行うと共に、躯体に、空気が流入する吸込み口と空気が吹き出す吹き出し口とを有するエアコン用室外機に取り付ける熱交換効率補助具であって、
上記躯体若しくは上記吹き出し口を保護する吹き出しグリルに対し着脱可能に取り付けられて、上記吹き出し口から吹き出した空気を上記吹き出し口及び上記吸込み口から離れる方向に誘導する筒体を備える、
ことを特徴とする熱交換効率補助具。
【請求項2】
上記筒体は、一端開口部が上記吹き出し口に向き、且つ先端部側である他端開口部が上記吹き出し口の前方若しくは上方に向いた状態に設置される、
ことを特徴とする請求項1に記載した熱交換効率補助具。
【請求項3】
上記筒体の他端開口部が上記吹き出し口の前方に向く場合、上記吹き出し口から上記他端開口部までの張り出し量は、100mm以上200mm以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載した熱交換効率補助具。
【請求項4】
上記エアコン用室外機は、躯体前面に上記吹き出し口が形成され、
上記筒体の他端開口部が上方に向く場合、上記他端開口部の位置は、上記躯体の天板よりも高い位置に設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載した熱交換効率補助具。
【請求項5】
上記室外機は、上記吹き出し口の後方に送風機を備え、
上記筒体の開口断面が円形であり、
上記筒体の軸中心が、上記送風機の回転軸と同軸若しくは略同軸に配置され、上記筒体に内径が、上記送風機の羽根車の直径以上である、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した熱交換効率補助具。
【請求項6】
上記筒体は、上記吹き出し口側を向く一端開口部の開口面積よりも、上記吹き出し口から離れた先端部側である他端開口部の開口面積の方が小さい、
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載した熱交換効率補助具。
【請求項7】
上記筒体の内径面には、上記筒体の延在方向に向けて螺旋状に延びる1条又は2条以上の溝部及び凸部の少なくとも一方を備える、
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した熱交換効率補助具。
【請求項8】
上記筒体の上記吹き出し口から離れた先端部側である他端開口部に連通した、筒状の方向変更部を有し、
上記筒状の方向変更部の延在方向が、上記筒体の延在方向と異なる方向である、
ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載した熱交換効率補助具。
【請求項9】
上記エアコン用室外機は、2以上の吹き出し口を有し、
上記筒体の一端開口部は、上記2以上の吹き出し口を共に覆うことが可能な大きさである、
ことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか1項に記載した熱交換効率補助具。
【請求項10】
上記エアコン用室外機は、上記吹き出し口が上記躯体の天板に形成され、
上記躯体の天板を覆う日除け板を有し、
上記日除け板に上記筒体が固定されている、
ことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか1項に記載した熱交換効率補助具。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載した熱交換効率補助具を備えた、エアコン用室外機。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコン(エアコンディショナー)の熱交換効率(電気使用量)を向上させるために、室外機に取り付けられる部品に関する。本発明は、室内機と室外機が分離して設置されるセパレータ形のエアコン(室外機に吸込み口と吹き出し口とが設けられているエアコン)に対する技術である。
【背景技術】
【0002】
セパレータ形のエアコンは、種々の場所、例えば、工場、商業用施設、公共施設の有する閉空間、更には、マンションの部屋や戸建ての建物等が有する閉空間の空気調和のために使用される。
【0003】
セパレータ形のエアコンは、室内機が建物内の部屋などの閉空間に設置され、室外機が、上記の室内機が設置された閉空間とは別の空間(通常は建物外)に設置される(特許文献1,2等)。
【0004】
そして、例えば、冷房運転時を想定した場合、室内機は、部屋の空気を吸い込み、室内機側の熱交換器で熱だけを奪い取って冷たい空気を室内に吹き出す構成となっている。室内機側の熱交換器に奪われた熱は、室内機と室外機を繋ぐパイプを流れる冷却媒体(ガス)によって、室外機側に運ばれる構成となっている。
【0005】
一方、室外機は、室外機側の熱交換器によって、吸込み口から吸い込まれた外気と、室内機から熱を運んできた冷却媒体との間の熱交換が行われる構成となっている、そして、室外機は、熱交換で暖められた躯体内の空気を、送風機によって、吹き出し口から外に向けて強制的に吹き出すことで、熱を室外機の外に放出する構成となっている。なお、室外機側の熱交換器で熱交換されて冷却された冷却媒体は、パイプによって室内機側に戻される。
【0006】
ここで、室外機の躯体に設けられる吸込み口と吹き出し口は、それぞれ躯体の異なる面に形成されている。例えば、吹き出し口が、躯体の正面板、若しくは天板に形成され、吸込み口が躯体の側面板に形成される。なお、躯体後面側には、通常、冷却フィンが配置されている。
また、吹き出し口側には安全を確保する目的で、躯体には、吹き出し口の前側を覆う吹き出しグリルが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-250459号公報
【特許文献2】特許第4419522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者は、設置されたエアコン設備について、同じような使用環境で使用しても、電気使用量に大きな差が発生していることに気付いた。
【0009】
すなわち、同一規格のエアコンの室内機及び室外機について、空調対象の部屋が同じ部屋構造であり、且つ室内機及び室外機の設置の向きや場所が同じ状態であったとしても、電気使用量に大きなバラツキがあるという課題に気づき、その課題の発生理由について種
々検討した。
【0010】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、簡単な手段によって、エアコンの熱交換効率を向上させて、エアコンの電気使用量のバラツキを抑制するための熱交換効率補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、上記課題の原因について種々、検討した。例えば、エアコンの室内機から室外機への冷媒パイプの長さも、冷却媒体の量も同一量に再調整しても、エアコンの電気使用量が安定しなかった。そして、気象台のデータを参考にして、使用する周りの環境について良く観察すると、風の無い日に電気使用量が悪くなることに気付いた。
【0012】
更に、無風時に悪くなる原因について、種々検討した結果、次のような知見を得た。
すなわち、冷房運転時を想定した場合、室外機内において、熱くなって帰って来た冷媒パイプ(フイン付き)内の冷却媒体と、吸込み口から吸い込んだ空気が熱交換することで、室外機内の空気は、冷却媒体から熱を奪って熱くなると共に湿度も減少する。
【0013】
躯体内のその熱交換後の空気は、送風機(排気用ファン)による強制的な排気によって、吹き出し口から、外部に向けて大気より少し高い圧力で押し出され、外気の相対的に冷たい空気に混ざりながら拡散する。更に、その拡散した湿度の少ない混ざった空気は、室外機の周囲から躯体側面の吸い込み口側の気圧が下がった方向に向かって誘導され吸い込み口から室外機の躯体内に再度吸い込まれて、冷媒パイプを冷やすために使用されているとの知見を得た。具体的には、吹き出し口から吐き出される空気は、湿度も取られ膨張した空気となっているため、吹き出し口から出ると、急拡散して横に広があるため、その一部がどうしても吸込み口側に流れやすい。そして、この現象が繰り返されることで、熱交換効率+が悪くなっていた。
【0014】
特に、風が無い場合、この現象が繰り返されやすい。すなわち、吹き出し口から吹き出した、温度が高く且つ湿度の少ない空気は、風で吹き飛ばされない限り、吸込み口から再度吸い込まれることで、冷却効率が悪くなっていることを突き止めた。また、業務用の場合には、複数台の室外機が狭い間隔で並んで設置されている場合も多いが、一の室外機から吹き出された空気が、他の室外機の躯体側面に形成した吸込み口から吸い込まれる現象も確認された。
【0015】
そこで、発明者は、吹き出し口から吹き出す空気を、筒体によって、吸込み口から引き込まれる空気流に影響しない又はその影響が小さい領域まで誘導することで、外気よりも温かい空気を再度、吸込み口から吸い込むことによる熱交換効率の低下(電気使用量の悪化)を低減出来ることに気づき、本発明を成した。
【0016】
そして、課題解決のために、本発明の態様は、室内機からの冷却媒体と熱交換を行うと共に、躯体に、空気が流入する吸込み口と空気が吹き出す吹き出し口とを有するエアコン用室外機に取り付ける熱交換効率補助具であって、上記躯体若しくは上記吹き出し口を保護する吹き出しグリルに対し着脱可能に取り付けられて、上記吹き出し口から吹き出した空気を上記吹き出し口及び上記吸込み口から離れる方向に誘導する筒体を備える、ことを要旨とする。
なお、一番簡単な構造の筒体は、延在方向が直線状になった(軸が直線)、直管型の筒体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様に係る熱交換効率補助具(筒体)を室外機に取り付けるという簡易な手段
によって、外気よりも温かい空気を再度吸込み口から吸い込むことによる熱交換効率の低下(電気使用量の悪化)の悪循環現象を低減することが出来る。
また、筒体は着脱可能となっているので、室外機の設置環境にあった筒体を、適宜取り付けることが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に基づく実施形態に係る筒体の使用例(吹き出し口が正面板にある場合)を示す斜視図である。
図2】吹き出し口が躯体天板に形成されている場合の例を示す斜視図である。
図3】無風時に、吹き出し口から排出された空気が急に膨張することによる、当該空気の流れの例を示す斜視図である。
図4】筒体に絞り部を設けた場合の変形例を示す図である。
図5】筒体内径面に螺旋状の突起部を形成する場合の例を示す図である。
図6】筒体の先端部に筒状の方向変更部を設けた場合の例を示す図である。
図7】室外機に吹き出し口が2つ存在する場合の例を示す図である。
図8】2つの吹き出し口に対して1つの筒体を用いる場合の例を示す図である。
図9】吹き出し口から吐き出された空気を、室外機よりも上方に誘導する例を示す図である。
図10】吹き出し口が躯体天板に存在する場合の別例を示す図である。
図11】筒体の長さと回り込み量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、同一の構成要素については便宜上の理由がない限り同一の符号を付ける。また、各図面において、見易さのため構成要素の厚さや比率は誇張されていることがあり、構成要素の数も減らして図示していることがある。また、本発明は、以下の実施形態そのままに限定されるものではなく、主旨を逸脱しない限りにおいて、適宜の組み合わせ、変形によって具体化できる。
【0020】
(室外機1)
エアコンの室外機1は、通常、ビルの屋上やベランダなど、建物の外に設置される。本実施形態が対象とする室外機1は、公知のセパレータ形エアコンの室外機であれば対象となる。すなわち、躯体1Aに吸込み口8と吹き出し口5を有する室外機であれば、その構造に限定はない。
【0021】
本実施形態が対象とする室外機1は、公知の構造で室内機からの冷却媒体と躯体1A内で熱交換を行うと共に、図1及び図2に示すように、躯体1Aに、空気を取り込む吸込み口8と空気が吐き出す吹き出し口5とを有する。また、躯体1A内における、吹き出し口5の後方には、送風機が配置されている。図1及び図2では、送風機の回転駆動部である羽根車6を模式的に図示している。その羽根車6(送風機)の回転軸は、一般に、吹き出し口5と同軸若しくは略同軸に配置されている。なお、本実施形態は、羽根車6が吹き出し口5と同軸に配置されていない室外機1であっても適用できる。例えば、躯体1A内に送風機からの風を案内する案内路を有することで、羽根車6が吹き出し口5と同軸に配置されていない場合でもよい。要は、吹き出し口5から強制的に躯体1A内の空気が吹き出す構成であれが適用できる。
なお、図1及び図2における符号20は、冷却フィンが設けられている範囲を示している。
【0022】
また、吹き出し口5の前側には、吹き出し口5を保護する吹き出しグリル7が配置され、吹き出しグリル7の外周部が、吹き出し口5周りの躯体1Aに対し、着脱可能にネジ止
めによって取り付けられている(符号7a部分)。
【0023】
上記の吹き出し口5は、躯体1Aの正面板2に形成されている場合(図1参照)と、躯体1Aの天板4(図2参照)に形成されている場合がある。また、図1及び図2では、躯体1Aの側面板3に吸込み口8が形成されている場合である。吸込み口が形成される面が2面の場合もある。
【0024】
(熱交換効率補助具)
本実施形態の熱交換効率補助具は、筒体10を有する。
<材料>
筒体10を構成する材料は、例えば、樹脂、金属など特に限定はない。軽量の点からは樹脂が好ましい。
【0025】
<取付け方法>
筒体10は、躯体1A又は吹き出しグリル7に対し着脱可能に取付け可能となっている。
【0026】
筒体10の取付け方法は、例えば、図1に示すように、吹き出しグリル7の取付け部7aに対し、筒体10の一端開口部側に設けた張出部11を一緒にネジ9でネジ止めすることで、取付けを実現できる。また、吹き出しグリル7のグリル部に筒体10を、バンドなどの締結具で取り付けても良い。また、躯体1Aに直接、別途ネジ孔を空けて、筒体10の取付け部を着脱可能に取り付けても良い。
【0027】
ここで、図1では、筒体10の一端開口部側の外周部に複数の張出部11を設け、その張出部11にネジ孔を設けた場合を例示している。図2では、天板4にネジ孔を形成して筒体10を取り付けた例を示している。筒体10を躯体1A若しくは吹き出しグリル7に着脱可能に取り付ける方法は、公知の手段を用いれば良く、特に取付け方法は限定されない。
【0028】
なお、張出部11は、筒体10に対して別途張出部となる部品を溶接その他で取り付けても良いし、筒体10の端部を曲げ加工して外向きフランジ部を形成して張出部11としても良い。外向きフランジ部は、筒体10の外周全周に形成されていても良いし、周方向に沿って断続的に形成されていても良い。
【0029】
筒体10を着脱可能に取り付けることで、室外機1の設置位置の環境に応じて、適切な長さや形状の筒体10を適用可能となる。また、メンテナンスも容易となる。
【0030】
<設置その他>
筒体10は、吹き出し口5側の一端開口部が、吹き出し口5後方に配置の送風機の回転軸若しくは吹き出し口5の中心位置と、同軸若しくは略同軸となるように設置されることが好ましい。
【0031】
一般に、吹き出し口5は円形形状であるため、本実施形態では、筒体10の一端開口部側の開口断面形状が円形の場合を例に説明する。もっとも、筒体10の一端開口部側の開口断面形状は、円形に限定されず矩形な多角形形状などであってもよいが、吹き出し口5の形状と同じ若しくは相似の形状であることが好ましい。
【0032】
<筒体の径>
図1及び図2に示す筒体10は、軸が直線に延び且つ径が一定の直管型の筒体の場合を例示している。
筒体10の一端開口部側の内径Dtは、例えば吹き出し口5と同じ径とすればよい。
【0033】
筒体10の一端開口部側の内径Dtは、吹き出し口5よりも小さくても良いが、送風機の羽根車6の径Df以上であることが好ましい。送風機によって強制的に吹き出される空気は、中央側で速度が低く、相対的に羽根の外周部側が強いためである。
【0034】
筒体10の内径Dtの上限は、特にないが、例えば、吹き出し口5全体を覆うことが可能な最小の径よりも、例えば100mm大きな径を上限とする。吹き出し口5よりも筒体10の内径が大きい場合には、結果として、筒体10の一端開口部側よりも筒体10の先端部側の内径が大きくなった状態に近づくため、吹き出し口5と同じ径とした場合に比べ、筒体10から吐き出される空気が横方向へ移動しやすくなり、その分、筒体10の長さを長くする必要がある。
【0035】
<長さ>
筒体10の長さHtは、吹き出し口5から吹き出した空気を、吹き出し口5の前方に、吸込み口8から引き込まれる空気流に影響しない又はその影響が小さい領域まで誘導可能な長さとする。すなわち、筒体10の長さHtは、筒体10からの空気の回り込み量が所定量減少するだけの長さとする。この長さは、使用する室外機1に応じて実験や理論値から決定してもよい。
【0036】
筒体10の長さHtは、例えば、100mm以上が好ましく、更に好ましくは150mm以上である。
羽根径350mmの送風機で風洞実験を行ったところ、図11に示す結果を得た。この実験は、筒体10の内径を350mmとし、筒体10の一端部側に対し送風機で風を強制的に送り込み、そのときの筒体10の先端部から吐き出された空気の横方向への回り込み具合を評価した。なお、この実験では、外気と同じ温度の空気を送風機で送ったが、回り込みの傾向としては精度の良い評価と考えられる。なお、吹き出し口5の径が大きい場合の方が、羽根車6の径も大きくなり、送風の駆動力も大きい。
【0037】
この図11から分かるように、筒体10を付けない場合に比べ、長さ70mmの筒体10を付けることで、空気の回り込みが半分未満に抑えられることが分かる。更に、筒体10の長さHtが150mmで回り込み防止効果が飽和しはじめて、200mm前後でほぼ効果が飽和することが分かる。このため、例えば長さHtは200mmを上限とする。
【0038】
なお、通常室外機1で使用する送風機の羽根車6の径の範囲内において、送風機の羽根径を変更し、筒体10の内径も羽根車6の径+α、つまり吹き出し口5の径相当と同じ径となるようにして、別途実験した場合も、ほぼ、図11と同様な傾向の結果を得た。
【0039】
ただし、室外機1の設置位置によっては、筒体10の長さHtが制限されることも多いため、筒体10の長さHtを余り長く取らない方向が好ましい。この観点と図11とからは、吹き出し口5から筒体10の先端までの張り出し量(筒体10の長さHtとほぼ同じ)は、150mm以下、更には130mm以下とすることが好ましい。
【0040】
ここで、上記説明は、躯体1Aの正面板2に吹き出し口5がある場合を想定して記載しているが、躯体1Aの天板4に吹き出し口5がある場合(図2参照)も同じである。
ただし、躯体1Aの天板4に吹き出し口5がある場合、筒体の長さは、前面に吹き出し口5がある場合(図1参照)よりも短くても構わない。吹き出し口から吹き出す空気は、相対的に熱くなっているために、上方に自然と上昇し、前面から吹き出す場合に比べ、吸込み口側に下降する空気量は少なくない。
【0041】
<筒体10の変形>
上記の説明では、筒体10が同一断面で軸方向に延在する簡易な形状の場合であるが、筒体10の形状はこの形状に限定されない。以下、その変形例について説明する。
【0042】
(1)筒体10は、吹き出し口5側を向く一端開口部の開口面積よりも、吹き出し口5から離れた先端部側である他端開口部の開口面積の方が小さいことが好ましい。
その例を図4に示す。図4の例は、本体10Aに対し先端部10Bの径を絞った例である。
【0043】
一端開口部の開口面積の径Dtに対する、先端部側である他端開口部の開口面積の径Dt0の比は、例えば、70%~90%とする。また、開口面積を小さくするための内径面のテーパ角は例えば15度~25度とする。
もちろん、吹き出す空気の抵抗が余り大きくならない範囲であれば、上記範囲よりも比及びテーパ角を大きく設定しても良い。
【0044】
吹き出し口5側を向く一端開口部の開口面積よりも、吹き出し口5から離れた先端部側である他端開口部の開口面積を小さくすることで、筒体10の先端から吹き出す空気の流速が高くなって横方向に膨れる量を抑えることが可能となる。
【0045】
このため、図1及び図2に示すような、ストレートな形状の筒体10に比べて、筒体10の長さHtを短く設計することが可能となる。
【0046】
(2)筒体10の内径面に、上記筒体10の延在方向に向けて螺旋状に延びる1条又は2条以上の溝部及び凸部の少なくとも一方を形成する。
図5に示す例では、筒体10の内径面に螺旋状に延びる複数条の凸部を形成した例である。螺旋状に延びる複数条の凹部を設けた構成であっても良い。また、螺旋状に延びる複数条の凸部及び凹部を設けても良い。
【0047】
この変形例では、吹き出し口5から吹き出した空気に螺旋状の回転が付加されて整流となること共に流速も速くなることで、筒体10の先端から吹き出す空気の横方向へ膨れる量を抑えることが可能となる。
このため、図1及び図2に示すような、ストレートな形状の筒体10に比べて、筒体10の長さHtを短く設計することが可能となる。
ここで、図5の例は、上記の変形例(1)も適用した例であり、その分より効果が増大する。
【0048】
(3)筒体10の吹き出し口5から離れた先端部側である他端開口部に連通した、筒状の方向変更部12を設けた。その筒状の方向変更部12の延在方向を、筒体10の延在方向と異なる方向とした。例えば、筒状の方向変更部12の延在方向を吸込み口8から離れる方向(例えば吸込み口とは反対側の横方向や上方)に設定する。
【0049】
(4)エアコン用室外機1が、2以上の吹き出し口5を有する場合、図7に示すように、吹き出し口5毎に個別の筒体10を設けても良いが、図8に示すように、2つの吹き出し口5用の筒体10を1つとして、その筒体10の一端開口部の大きさを、2つの吹き出し口5を共に覆うことが可能な大きさとする構成でも良い。
【0050】
なお、この場合には、図7のように個々に筒体10を設ける場合に比べて、図8の筒体10の場合の方が、筒体10で誘導される際の空気の流速が遅くなる傾向があるため、若干筒体10の長さHtを長めに設定することが好ましい。
【0051】
この場合、例えば図9に示すように、筒体10の他端開口部10aを上方に向けると良い。これによって正面板2からの筒体10の張り出し量を抑えることが可能となる。また、上方に向けた筒体10の他端開口部10aは、躯体1Aの天板4よりも上方に設置することが好ましい。好ましくは、他端開口部10aは、天板4よりも100mm以上張り出していることが好ましい。その張り出し量Ddの上限はないが、例えば150mmとする。
【0052】
図6に示す例とは異なり、図9に示す例では、筒体10の先端部側である他端開口部10aが躯体1Aに近いため、筒体10の先端部側である他端開口部10aを、躯体1Aの天板4よりも上方に配置している。天板4から上方の張り出し量Hdは100mm以上が好ましい。張り出し量Hdの上限は無いが、例えば150mmを上限とする。
【0053】
(5)図10に示すように、吹き出し口5が上記躯体1Aの天板4に形成されている場合に、躯体1Aの天板4を覆う日除け板21を有し、日除け板21に筒体10が固定されている構成とする。
日除け板21は断熱材から構成する。また、図10では、天板4の上に直接日除け板21が接触している場合を例示しているが、日除け板21に複数の脚を設けて、躯体1Aの天板4と日除け板21の間に隙間を設けても良い。
そして、その日除け板の上記の筒体10を固定しておく。
【0054】
この場合、日除け板21によって、直射熱による躯体1Aが暖まることを低減することで、躯体1A内の空気の直射熱による温度上昇を低減し、これによって、更に熱交換効率を向上できる。
また、日除け板21を設置するだけで、筒体10を設置可能となるので、筒体10の設置が容易となる。
【0055】
(動作その他)
設置された室外機1について調査すると、筒体10を設けない場合、電気使用量に大きな差が発生していた。
【0056】
その設置環境に関する理由として、設置場所が狭いために躯体1A後面とその後ろの壁までの距離が狭い、設置場所の空気流れが悪い、室外機1の機密度が高い(工場では設備の密集が生じやすい)などが上げられる。
【0057】
また、室外機1の構造による理由として、上述した理由がある。
すなわち、本来室外機1は、室内機から循環して来る銅管内の高温フレオンガスを、外気で強制的に空冷するが、吹き出し口5に近い位置に吸込み口8が存在する設計にも問題が有る。具体的には、室外機1内に設けた送風機で熱を奪って暖かく成った空気を室外機1外に押し出しているが、押し出された空気は湿度も奪われ高温に成り膨張もしている。このため、その空気が室外機1を出ると室外機1周囲に急拡散する。そして、その拡散された空気の一部は、吸込み口8から躯体1A内に再度引き込まれ、その引き込まれた空気がガス管を冷却するために用いられるが、室外機1周囲の環境設計上の問題により、壁と室外機1間が狭いと流速は早くなり室外機1周囲からも躯体1A内の空気が引き込むことになる。つまり、室外機1から吐き出されて室外機1周辺に漂っている湿度が少ない暖まった空気を引き込むことになる。この循環現象は強い風でも来ない限り継続して、熱交換効率(冷却効率)が悪化する。暖房運転時においても同様である。
【0058】
この現象は、複数の室外機1が間隔を狭く設置されていると、特に熱交換効率が悪い結果となっていることを確認している。
これに対し、本実施形態では。吸込み口8から室外機1に引き込まれる空気流に影響し
ない若しくはその影響が小さい範囲まで、吹き出し口5から吐き出される空気を、筒体10によって誘導することで、温かい空気が、吸込み口8から引き込まれる空気流に混ざることを低減する。この結果、本実施形態では、エアコンの熱交換効率が向上するようになる。
【0059】
実機による実験では、吹き出し口5が直径450mmの場合に、直径450mmで150mm(直径の40%に対応)の直管からなる筒体10を吹き出し口5に設置した場合、吹き出し口5から排出された空気が殆ど(95%以上)吸込み口8から吸い込む空気流に巻き込まれることがなかった。このことは、図11に示す実験と同様な効果となっていることが分かる。
【0060】
(その他)
本開示は、以下のような構成も取ることができる。
(1)本実施形態は、室内機からの冷却媒体と熱交換を行うと共に、躯体に、空気が流入する吸込み口と空気が吹き出す吹き出し口とを有するエアコン用室外機に取り付ける熱交換効率補助具であって、上記躯体若しくは上記吹き出し口を保護する吹き出しグリルに対し着脱可能に取り付けられて、上記吹き出し口から吹き出した空気を上記吹き出し口及び上記吸込み口から離れる方向に誘導する筒体を備える。
この構成によれば、吹き出しく口から吹き出した空気が吸込み口から吸い込まれる量を抑えることができて、室外機の熱交換効率が向上する。
【0061】
(2)上記筒体は、一端開口部が上記吹き出し口に向き、且つ先端部側である他端開口部が上記吹き出し口の前方若しくは上方に向いた状態に設置される。
この構成によれば、上記吹き出し口から吹き出した空気を上記吹き出し口及び上記吸込み口から離れる方向に誘導可能となる。
【0062】
(3)上記筒体の他端開口部が上記吹き出し口の前方に向く場合、上記吹き出し口から上記他端開口部までの張り出し量は、100mm以上200mm以下である。
この構成によれば、吹き出し口からの筒体の張り出し量を抑えつつ、吹き出しく口から吹き出した空気が吸込み口から吸い込まれる量をより有効に低減可能となる。
【0063】
(4)上記エアコン用室外機は、躯体前面に上記吹き出し口が形成され、上記筒体の他端開口部が上方に向く場合、上記他端開口部の位置は、上記躯体の天板よりも高い位置に設定される。他端開口部の位置は、好ましくは上記躯体の天板の高さよりも100mm以上高い位置とする。筒体の上方への張り出し量Hdは、特に上限はないが、150mmもあれば十分である(図9参照)。
この構成によれば、筒体による張り出しを抑えつつ、有効に他端開口部から吹き出した空気が吸込み口側に吸い込まれることを抑制可能となる。
【0064】
(5)上記室外機は、上記吹き出し口の後方に送風機を備え、上記筒体の開口断面が円形であり、上記筒体の軸中心が、上記送風機の回転軸と同軸若しくは略同軸に配置され、上記筒体に内径が、上記送風機の羽根車の直径以上である。
この構成よれば、より確実に吹き出し口から吹き出された空気を筒体によって誘導可能となる。
【0065】
(6)上記筒体は、上記吹き出し口側を向く一端開口部の開口面積よりも、上記吹き出し口から離れた先端部側である他端開口部の開口面積の方が小さい。
この構成によれば、筒体から吹き出される空気の流速が速くなり、直管の筒体を設ける場合に比べ、筒体の長さを短く設計可能となる。
【0066】
(7)上記筒体の内径面には、上記筒体の延在方向に向けて螺旋状に延びる1条又は2条以上の溝部及び凸部の少なくとも一方を備える。
この構成によれば、筒体から吹き出される空気が螺旋状に整流されて、直管の筒体を設ける場合に比べ、筒体の長さを短く設計可能となる。
【0067】
(8)上記筒体の上記吹き出し口から離れた先端部側である他端開口部に連通した、筒状の方向変更部を有し、上記筒状の方向変更部の延在方向が、上記筒体の延在方向と異なる方向である。方向変更部の延在方向は、吸込み口から離れる方向が好ましい。
この構成によれば、筒体の長さを短く設計可能となる。
【0068】
(9)上記エアコン用室外機は、2以上の吹き出し口を有し、上記筒体の一端開口部は、上記2以上の吹き出し口を共に覆うことが可能な大きさである。
この構成によれば、吹き出し口が複数あっても、1つの筒体によって対応可能となる。
【0069】
(10)上記エアコン用室外機は、上記吹き出し口が上記躯体の天板に形成され、上記躯体の天板を覆う日除け板を有し、上記日除け板に上記筒体が固定されている。
この構成によれば、直射熱による躯体内の温度が上昇することを防止して、更に熱交換効率が向上する。
また筒体の取付けが更に容易となる。
【符号の説明】
【0070】
1 室外機
1A 躯体
2 正面板
3 側面板
4 天板
5 吹き出し口
6 羽根車
7 吹き出しグリル
8 吸込み口
10 筒体
10a 他端開口部(先端部側)
11 張出部
12 方向変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11