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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071732
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】ブレーキキャリパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/54 20060101AFI20220509BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20220509BHJP
   F16D 55/2255 20060101ALI20220509BHJP
   F16D 65/56 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
F16D65/54 A
B61H5/00
F16D55/2255 103C
F16D55/2255 103F
F16D65/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180843
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大野 智也
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA62
3J058AA69
3J058BA57
3J058CC24
3J058CC85
3J058DA04
3J058DA05
3J058DA13
3J058DA29
3J058FA21
(57)【要約】
【課題】隙間調整器への隙間調整のための伝達量が変化しないブレーキキャリパ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキキャリパ装置20は、ボディ30に固定され、第1ロッド73が所定距離以上移動した場合に、第1ロッド73出力を受けて変位する変位部91と、ボディ30と隙間調整器101とに端部が固定され、ボディ30と隙間調整器101との相対変位量が最も大きい場合におけるボディ30と隙間調整器101との距離よりも長い筒状の可撓性部材からなるアウターチューブ97と、アウターチューブ97の内部を通って変位部91と隙間調整器101の入力部とを接続し、変位部91の変位を隙間調整器101のワイヤー取付部130に伝達することで隙間調整器101を動作させるワイヤー96を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキパッドをそれぞれ保持する2個のキャリパレバーと、
2個の前記ブレーキパッドが1個のディスクを挟むように前記キャリパレバーを移動させるための力を出力する出力ロッドと、
前記2個のキャリパレバーの間に固定され、前記ブレーキパッドと前記ディスクとの隙間を調整する隙間調整器と、
前記2個のキャリパレバーのそれぞれを移動可能に保持するとともに、前記出力ロッドを保持するボディと、
前記ボディに固定され、前記出力ロッドが所定距離以上移動した場合に、前記出力ロッドの出力を受けて変位する変位部と、
前記ボディと前記隙間調整器とに端部が固定され、前記ボディと前記隙間調整器との相対変位量が最も大きい場合における前記ボディと前記隙間調整器との距離よりも長い筒状の可撓性部材からなる案内部材と、
前記案内部材の内部を通って前記変位部と前記隙間調整器の入力部とを接続し、前記変位部の変位を前記入力部に伝達することで前記隙間調整器を動作させる伝達部材と、を備える
ブレーキキャリパ装置。
【請求項2】
前記ボディに固定されるとともに、前記変位部を覆うケースを備え、
前記案内部材の前記ボディに固定される端部が前記ケースに固定されている
請求項1に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項3】
前記出力ロッドと連動し、前記出力ロッドが所定距離以上移動した後、元の位置に戻るときに前記変位部に接触することで前記変位部を変位前の位置へ戻す接触部を備える
請求項1又は2に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項4】
前記変位部は、回転可能なアームを備え、
前記アームは、前記出力ロッドが所定距離移動する前は前記接触部に接触せず、前記出力ロッドが所定距離以上移動した時に前記接触部の移動経路上に位置する
請求項3に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項5】
前記隙間調整器の入力部は、円弧状の面を有し、
前記伝達部材の端部は、前記隙間調整器の入力部の円弧状の面に固定され、
前記伝達部材は、前記円弧状の面の接線方向に延出されている
請求項1~4のいずれか一項に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項6】
前記変位部は、円弧状の面を有し、
前記伝達部材の端部は、前記変位部の円弧状の面に固定され、
前記伝達部材は、前記円弧状の面の接線方向に延出されている
請求項1~5のいずれか一項に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項7】
前記変位部は、前記出力ロッドの出力を増幅して前記伝達部材を牽引する増幅機構を含む
請求項1~6のいずれか一項に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項8】
前記増幅機構は、前記出力ロッドの出力を受けて支点を中心に回転する力点アームと、前記出力を受けて支点を中心に回転することで前記伝達部材を牽引する作用点アームと、を含み、
前記力点アームの長さは前記作用点アームの長さより短い
請求項7に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項9】
前記出力ロッドは、出力する出力方向へ移動するときに前記力点アームと接触し、出力しない非出力方向へ移動するときに前記作用点アームと接触して前記変位部を元の位置へ戻す接触部を備える
請求項8に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項10】
前記変位部は、前記伝達部材の移動方向を前記出力ロッドの移動方向と交差する方向に変換する変換部を備える
請求項1~8のいずれか一項に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項11】
前記変換部は、前記出力ロッドの出力を増幅して前記伝達部材に伝達する増幅機構を兼ねる
請求項10に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項12】
前記隙間調整器の入力部に設けられ、前記伝達部材を引っ張る付勢部材を備える
請求項1~11のいずれか一項に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項13】
前記隙間調整器の入力部は、前記伝達部材が接続されるワンウェイクラッチを備え、
前記伝達部材が前記変位部に牽引されると前記ワンウェイクラッチが回転し、前記変位部が変位前の位置に戻ると、前記付勢部材の付勢力によって前記入力部が反対方向に回転することで前記隙間調整器が伸長して前記ディスクと前記ブレーキパッドとの隙間を狭くする
請求項12に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項14】
前記伝達部材は、ワイヤーであり、
前記案内部材は、筒形状であり前記ワイヤーが内部を変位する
請求項1~13のいずれか一項に記載のブレーキキャリパ装置。
【請求項15】
ブレーキパッドをそれぞれ保持する2個のキャリパレバーと、
2個の前記ブレーキパッドが1個のディスクを挟むように前記キャリパレバーを回転させるための力を出力する出力ロッドを有するアクチュエータと、
前記2個のキャリパレバーの間に固定され、前記ブレーキパッドと前記ディスクとの隙間を調整する隙間調整器と、
前記2個のキャリパレバーのそれぞれを移動可能に保持するとともに、前記出力ロッドを保持するボディと、
前記ボディに固定され、前記出力ロッドが所定距離以上移動した場合に、前記出力ロッドの出力を受けて変位する変位部と、
前記ボディと前記隙間調整器とに端部が固定され、前記ボディと前記隙間調整器との相対変位量が最も大きい場合における前記ボディと前記隙間調整器との距離よりも長い筒状の可撓性部材からなる案内部材と、
前記案内部材の内部を通って前記変位部と前記隙間調整器の入力部とを接続し、前記変位部の変位を前記入力部に伝達することで前記隙間調整器を動作させる伝達部材と、を備え、
前記変位部は、前記出力ロッドの出力を受けて支点を中心に回転する力点側アームと、前記出力を受けて支点を中心に回転することで前記伝達部材を変位する作用点側アームと、前記伝達部材の移動方向を前記出力ロッドの移動方向と交差する方向に変換する変換部とを含み、前記力点側アームの長さは前記作用点側アームの長さより短いことで前記出力ロッドの出力を増幅して前記伝達部材を変位する
ブレーキキャリパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキキャリパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両の車輪と一体に回転するディスクにブレーキパッドを押し付けることにより車輪にブレーキ力を付与するブレーキキャリパ装置が開示されている。ブレーキキャリパ装置は、一対のキャリパレバーを備えている。一対のキャリパレバーの先端部には、ブレーキパッドが取り付けられている。一対のキャリパレバーの基端部の間には、ディスクとブレーキパッドとの隙間を調整する隙間調整器が配置されている。隙間調整器は、一対のキャリパレバーの基端部にそれぞれ連結されている。一対のキャリパレバーの一方は、シリンダの内部に配置されたピストンに固定された出力軸に連結されており、出力軸からの力によって回転する。特許文献1のブレーキ装置では、出力軸が突出すると、一対のキャリパレバーの先端部に支持されたブレーキパッドがディスクに接触する。
【0003】
特許文献1のブレーキキャリパ装置は、出力軸の力を隙間調整器に伝達する伝達棒を備えている。伝達棒は、キャリパレバーの先端部寄りから基端部寄りに向かって延びている。特許文献1のブレーキキャリパ装置では、出力軸が突出すると、伝達棒が伝達棒の軸線方向に移動して隙間調整器に近づく。そして、伝達棒の力が隙間調整器に伝達されると、隙間調整器において、雄ねじ部に対して雌ねじ部が回転する。このように雌ねじ部が回転すると、一対のキャリパレバーの基端部間の距離が長くなる。そして、一対のキャリパレバーの先端部間の距離が短くなるように一対のキャリパレバーが回転して、ディスクとブレーキパッドとの隙間が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0732247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のブレーキキャリパ装置では、キャリパレバーが回転すると、隙間調整器と伝達棒との間の距離が変化する。そして、隙間調整器と伝達棒との間の変化後の距離が変化前の距離に比べて長くなると、隙間調整器によるディスクとブレーキパッドとの隙間の調整量が小さくなる。このため、隙間の調整のための伝達量が変化する課題がある。なお、雄ねじ部及び雌ねじ部を備える隙間調整器に限らず、出力軸の変位が伝達される隙間調整器を備えるブレーキキャリパ装置では上記と同様の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するブレーキキャリパ装置は、ブレーキパッドをそれぞれ保持する2個のキャリパレバーと、2個の前記ブレーキパッドが1個のディスクを挟むように前記キャリパレバーを移動させるための力を出力する出力ロッドと、前記2個のキャリパレバーの間に固定され、前記ブレーキパッドと前記ディスクとの隙間を調整する隙間調整器と、前記2個のキャリパレバーのそれぞれを移動可能に保持するとともに、前記出力ロッドを保持するボディと、前記ボディに固定され、前記出力ロッドが所定距離以上移動した場合に、前記出力ロッドの出力を受けて変位する変位部と、前記ボディと前記隙間調整器とに端部が固定され、前記ボディと前記隙間調整器との相対変位量が最も大きい場合における前記ボディと前記隙間調整器との距離よりも長い筒状の可撓性部材からなる案内部材と、前記案内部材の内部を通って前記変位部と前記隙間調整器の入力部とを接続し、前記変位部の変位を前記入力部に伝達することで前記隙間調整器を動作させる伝達部材と、を備える。
【0007】
ボディに対して2個のキャリパレバーが移動するので、牽引部と隙間調整器とは相対変位することとなり、隙間調整器とボディとの距離も変位する。上記構成によれば、案内部材の長さがボディと隙間調整器との最大距離よりも長いため、ボディと隙間調整器とが相対変位したとしても案内部材及び伝達部材が撓みつつ移動し、案内部材及び伝達部材が引っ張られることがない。よって、ボディと隙間調整器とが相対変位したとしても、隙間調整器への隙間調整のための伝達量が変化しない。
【0008】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記ボディに固定されるとともに、前記変位部を覆うケースを備え、前記案内部材の前記ボディに固定される端部が前記ケースに固定されていることが好ましい。
【0009】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記出力ロッドと連動し、前記出力ロッドが所定距離以上移動した後、元の位置に戻るときに前記変位部に接触することで前記変位部を変位前の位置へ戻す接触部を備えることが好ましい。
【0010】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記変位部は、回転可能なアームを備え、前記アームは、前記出力ロッドが所定距離移動する前は前記接触部に接触せず、前記出力ロッドが所定距離以上移動した時に前記接触部の移動経路上に位置することが好ましい。
【0011】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記隙間調整器の入力部は、円弧状の面を有し、前記伝達部材の端部は、前記隙間調整器の入力部の円弧状の面に固定され、前記伝達部材は、前記円弧状の面の接線方向に延出されていることが好ましい。
【0012】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記変位部は、円弧状の面を有し、前記伝達部材の端部は、前記変位部の円弧状の面に固定され、前記伝達部材は、前記円弧状の面の接線方向に延出されていることが好ましい。
【0013】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記変位部は、前記出力ロッドの出力を増幅して前記伝達部材を牽引する増幅機構を含むことが好ましい。
上記ブレーキキャリパ装置について、前記増幅機構は、前記出力ロッドの出力を受けて支点を中心に回転する力点アームと、前記出力を受けて支点を中心に回転することで前記伝達部材を牽引する作用点アームと、を含み、前記力点アームの長さは前記作用点アームの長さより短いことが好ましい。
【0014】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記出力ロッドは、出力する出力方向へ移動するときに前記力点アームと接触し、出力しない非出力方向へ移動するときに前記作用点アームと接触して前記変位部を元の位置へ戻す接触部を備えることが好ましい。
【0015】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記変位部は、前記伝達部材の移動方向を前記出力ロッドの移動方向と交差する方向に変換する変換部を備えることが好ましい。
上記ブレーキキャリパ装置について、前記変換部は、前記出力ロッドの出力を増幅して前記伝達部材に伝達する増幅機構を兼ねることが好ましい。
【0016】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記隙間調整器の入力部に設けられ、前記伝達部材を引っ張る付勢部材を備えることが好ましい。
上記ブレーキキャリパ装置について、前記隙間調整器の入力部は、前記伝達部材が接続されるワンウェイクラッチを備え、前記伝達部材が前記変位部に牽引されると前記ワンウェイクラッチが回転し、前記変位部が変位前の位置に戻ると、前記付勢部材の付勢力によって前記入力部が反対方向に回転することで前記隙間調整器が伸長して前記ディスクと前記ブレーキパッドとの隙間を狭くすることが好ましい。
【0017】
上記ブレーキキャリパ装置について、前記伝達部材は、ワイヤーであり、前記案内部材は、筒形状であり前記ワイヤーが内部を変位することが好ましい。
上記課題を解決するブレーキキャリパ装置は、ブレーキパッドをそれぞれ保持する2個のキャリパレバーと、2個の前記ブレーキパッドが1個のディスクを挟むように前記キャリパレバーを回転させるための力を出力する出力ロッドを有するアクチュエータと、前記2個のキャリパレバーの間に固定され、前記ブレーキパッドと前記ディスクとの隙間を調整する隙間調整器と、前記2個のキャリパレバーのそれぞれを移動可能に保持するとともに、前記出力ロッドを保持するボディと、前記ボディに固定され、前記出力ロッドが所定距離以上移動した場合に、前記出力ロッドの出力を受けて変位する変位部と、前記ボディと前記隙間調整器とに端部が固定され、前記ボディと前記隙間調整器との相対変位量が最も大きい場合における前記ボディと前記隙間調整器との距離よりも長い筒状の可撓性部材からなる案内部材と、前記案内部材の内部を通って前記変位部と前記隙間調整器の入力部とを接続し、前記変位部の変位を前記入力部に伝達することで前記隙間調整器を動作させる伝達部材と、を備え、前記変位部は、前記出力ロッドの出力を受けて支点を中心に回転する力点側アームと、前記出力を受けて支点を中心に回転することで前記伝達部材を変位する作用点側アームと、前記伝達部材の移動方向を前記出力ロッドの移動方向と交差する方向に変換する変換部とを含み、前記力点側アームの長さは前記作用点側アームの長さより短いことで前記出力ロッドの出力を増幅して前記伝達部材を変位する。
【0018】
ボディに対して2個のキャリパレバーが移動するので、牽引部と隙間調整器とは相対変位することとなり、隙間調整器とボディとの距離も変位する。上記構成によれば、案内部材の長さがボディと隙間調整器との最大距離よりも長いため、ボディと隙間調整器とが相対変位したとしても案内部材及び伝達部材が撓みつつ移動し、案内部材及び伝達部材が引っ張られることがない。よって、ボディと隙間調整器とが相対変位したとしても、隙間調整器への隙間調整のための伝達量が変化しない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、隙間調整器への隙間調整のための伝達量が変化しないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ブレーキキャリパ装置の第1実施形態の構成を示す斜視図。
図2】同実施形態のブレーキキャリパ装置の構成を示す平断面図。
図3】同実施形態のブレーキキャリパ装置の構成を示す分解斜視図。
図4】同実施形態のブレーキキャリパ装置の構成を示す背面図。
図5】同実施形態のブレーキキャリパ装置の構成を示す左側面図。
図6】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間出力部の構成を示す拡大背面図。
図7】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間出力部の構成を示す拡大背面図。
図8】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間出力部の構成を示す拡大斜視図。
図9】同実施形態のブレーキキャリパ装置の変位を示す拡大平面図。
図10】同実施形態のブレーキキャリパ装置の変位を示す拡大平面図。
図11】ブレーキキャリパ装置の第2実施形態の隙間調整装置の構成を示す拡大斜視図。
図12】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間調整装置の構成を示す拡大平面図。
図13】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間調整装置の構成を示す拡大平面図。
図14】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間調整装置の構成を示す拡大左側面図。
図15】ブレーキキャリパ装置の第3実施形態の隙間調整装置の構成を示す拡大斜視図。
図16】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間調整装置の構成を示す拡大下面図。
図17】ブレーキキャリパ装置の第4実施形態の隙間調整装置の構成を示す拡大斜視図。
図18】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間調整装置の構成を示す拡大下面図。
図19】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間調整装置の構成を示す拡大平面図。
図20】同実施形態のブレーキキャリパ装置の隙間調整装置の構成を示す拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、図1図10を参照して、ブレーキキャリパ装置の第1実施形態について説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、ブレーキキャリパ装置20は、図示しない鉄道車両の台車に取り付けられ、台車の車輪を回転させる車軸と一体に回転する円盤状のディスク11(図2参照)にブレーキパッド12を押し付けることによりブレーキ力を車輪に付与する。すなわち、ブレーキキャリパ装置20は、ディスク11とともにディスクブレーキ装置を構成する。
【0023】
ブレーキキャリパ装置20は、台車に取り付けられるブラケット21(図1参照)と、ブラケット21に回転可能に吊り下げられるボディ30と、ボディ30に保持される一対の左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50とを備える。ボディ30は、2個のブレーキパッド12が1個のディスク11を挟む位置と挟まない位置とに移動可能に一対の左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50のそれぞれを回転可能に保持する。
【0024】
また、ブレーキキャリパ装置20は、ブレーキパッド12がディスク11を押圧するように左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50をディスク11に対して回転させるための力を出力するシリンダ装置15を備える。シリンダ装置15は、圧縮空気の供給と排出とによって駆動する。シリンダ装置15に供給される圧縮空気は、鉄道車両に搭載されるタンクから供給される。シリンダ装置15は、ボディ30に着脱可能に取り付けられている。なお、シリンダ装置15がアクチュエータに相当する。
【0025】
ブラケット21は、第1ブラケット21Aと第2ブラケット21Bとを備える。第1ブラケット21Aと第2ブラケット21Bとの間には、ボディ30が挟まれる。第1ブラケット21Aとボディ30と第2ブラケット21Bとには連結ピン22が貫通されて、第1ブラケット21Aとボディ30と第2ブラケット21Bとが連結される。ボディ30は、連結ピン22が貫通する基部31を備える。基部31は、台車の車軸の軸方向と直交し、左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50の延在方向に沿う回転軸Pを中心に回転する。
【0026】
ボディ30は、基部31の下方から左右の左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50に向かって延出して左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50を支持する第1支持部32を備える。ボディ30は、第1支持部32の中央から左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50の長手方向の後方に延出してシリンダ装置15を支持する第2支持部33を備える。第2支持部33は、板状の部材である。ボディ30の基部31、第1支持部32、及び第2支持部33は、一体に成形されている。台車が車軸の軸方向に傾いたとしてもボディ30が回転軸Pを中心に回転するため、ブレーキパッド12をディスク11と常に平行に保つことができる。
【0027】
第1支持部32の左側には、左キャリパレバー40を支持する左側支持部32Aが設けられている。左側支持部32Aには、左キャリパレバー40をボディ30に対して回転可能に支持する左側回転ピン35が貫通されている。左側回転ピン35は、左側支持部32Aに対して回転可能である。左側回転ピン35には、シリンダ装置15の駆動力によって操作される操作レバー35Aが固定されている。第1支持部32の右側には、右キャリパレバー50を支持する右側支持部32Bが設けられている。右側支持部32Bには、右キャリパレバー50をボディ30に対して回転可能に支持する右側回転ピン36が上側と下側とにそれぞれ貫通されている。右側回転ピン36は、右側支持部32Bに固定されている。
【0028】
図3に示すように、左キャリパレバー40は、一対の左上レバー47と左下レバー48とを備えている。一対の左上レバー47と左下レバー48とは、左側回転ピン35の軸方向において離間し互いに対向する。左キャリパレバー40の先端部には、ブレーキパッド12が取り付けられるパッド取付部材42が2個のパッド回転ピン43により接続されている(図1参照)。パッド回転ピン43は、左上レバー47と左下レバー48とに対して回転可能である。パッド回転ピン43は、パッド取付部材42に固定されている。左上レバー47と左下レバー48とは、左レバー連結ピン46によって連結されている。
【0029】
右キャリパレバー50は、一対の右上レバー57と右下レバー58とを備えている。一対の右上レバー57と右下レバー58とは、右側回転ピン36の軸方向において離間し互いに対向する。右キャリパレバー50の先端部には、ブレーキパッド12が取り付けられるパッド取付部材52が2個のパッド回転ピン53により接続されている。パッド回転ピン53は、右上レバー57と右下レバー58とに対して回転可能である。パッド回転ピン53は、パッド取付部材52に固定されている。右上レバー57と右下レバー58とは、右レバー連結ピン56によって連絡されている。
【0030】
図2に示すように、シリンダ装置15は、ボディ30の第2支持部33に取り付けられている。シリンダ装置15は、常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とを備えている。第2支持部33の常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とが取り付けられる面は、車軸と垂直な面である。常用ブレーキシリンダ70は、ボディ30の第2支持部33の左側の面に取り付けられている。駐車ブレーキシリンダ80は、ボディ30の第2支持部33の右側の面に取り付けられている。よって、常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とは、ボディ30の第2支持部33を挟んで設けられている。なお、第2支持部33の常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とが取り付けられる面は、左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50の延出方向と平行であって、ブレーキパッド12の面と平行である。
【0031】
図3に示すように、常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とは、各4個のボルトによって第2支持部33に固定されている。常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とは、第2支持部33の異なる位置にそれぞれボルトが固定されている。このため、常用ブレーキシリンダ70と駐車ブレーキシリンダ80とは、第2支持部33から別々に着脱することができる。
【0032】
図2に示すように、ボディ30の第2支持部33の中央には、開口33Aが設けられている。開口33Aは、左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50の長手方向に延出する長孔となっている。このため、常用ブレーキシリンダ70及び駐車ブレーキシリンダ80を着脱するときに、開口33Aにおいて左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50の長手方向に移動させることができる。
【0033】
常用ブレーキシリンダ70は、複数のボルトを外すことでボディ30の第2支持部33の左側の面から取り外すことができる。また、駐車ブレーキシリンダ80は、複数のボルトを外すことでボディ30の第2支持部33の右側の面から取り外すことができる。また、隙間調整装置100は、ボルト45及びボルト55を外すことで左キャリパレバー40及び右キャリパレバー50から取り外すことができる。このため、シリンダ装置15や隙間調整装置100を点検や交換するときに容易に着脱することができる。なお、シリンダ装置15を固定するボルトの数量は任意に設定してもよい。
【0034】
常用ブレーキシリンダ70は、第1シリンダ室71と、第1ピストン72と、第1ロッド73と、第1ばね74とを備えている。第1ピストン72は、第1シリンダ室71の中を移動する。第1ロッド73は、第1ピストン72に固定されて第1シリンダ室71から突出する。第1ばね74は、第1ロッド73が第1シリンダ室71に収容される方向に第1ピストン72を付勢する。第1シリンダ室71の第1ばね74が設けられていない側を第1空間75とする。常用ブレーキシリンダ70は、第1シリンダ室71の第1空間75に圧縮空気を供給する第1供給ポート76を備えている(図3参照)。第1供給ポート76は、第1シリンダ室71の外部に設けられている。常用ブレーキシリンダ70は、第1シリンダ室71の第1空間75に圧縮空気が供給されると第1ピストン72が押されて第1ロッド73が突出する。また、常用ブレーキシリンダ70は、第1シリンダ室71の第1空間75から圧縮空気が排出されると第1ピストン72が第1ばね74に押されて第1ロッド73が第1シリンダ室71に収容される。なお、第1ロッド73が常用ブレーキシリンダ70の出力ロッドに相当する。第1シリンダ室71が常用ブレーキシリンダ70のケースに相当する。
【0035】
駐車ブレーキシリンダ80は、第2シリンダ室81と、第2ピストン82と、第2ロッド83と、第2ばね84とを備えている。第2ピストン82は、第2シリンダ室81の中を移動する。第2ロッド83は、第2ピストン82に固定されて第2シリンダ室81から第1シリンダ室71に突出する。第2ばね84は、第2ロッド83が第2シリンダ室81から突出する方向に第2ピストン82を付勢する。第2シリンダ室81の第2ばね84が設けられていない側を第2空間85とする。駐車ブレーキシリンダ80は、第2シリンダ室81の第2空間85に圧縮空気を供給する第2供給ポート86(図3参照)を備えている。第2供給ポート86は、第2シリンダ室81の外部に設けられている。駐車ブレーキシリンダ80は、第2シリンダ室81の第2空間85に圧縮空気が供給されると第2ピストン82が押されて第2ロッド83が第2シリンダ室81に収容される。また、駐車ブレーキシリンダ80は、第2シリンダ室81の第2空間85から圧縮空気が排出されると第2ピストン82が第2ばね84に押されて第2ロッド83が第2シリンダ室81から第1シリンダ室71に突出して第1ピストン72を押して第1ロッド73が突出する。なお、第2ロッド83が駐車ブレーキシリンダ80の出力ロッドに相当する。第2シリンダ室81が駐車ブレーキシリンダ80のケースに相当する。
【0036】
第1シリンダ室71は、開口33Aに突出する第1突出部71Aを備えている。第2シリンダ室81は、開口33Aに突出する第2突出部81Aを備えている。第2突出部81Aには、第2ロッド83が貫通している。第1突出部71Aは、第2突出部81Aの外周に嵌合している。これにより、常用ブレーキシリンダ70の第1ロッド73と駐車ブレーキシリンダ80の第2ロッド83とは、同軸上に位置して、駐車ブレーキシリンダ80の出力が常用ブレーキシリンダ70に伝達される。
【0037】
操作レバー35Aの先端には、回転するローラ35Bが取り付けられている。シリンダ装置15の第1ロッド73の先端には、ローラ35Bを収容するとともに接触する貫通孔である収容部73Aが設けられている。この収容部73Aは、第1ロッド73の直線運動と操作レバー35Aの回転運動とのずれを吸収しつつ、第1ロッド73の駆動力を操作レバー35Aに伝達する。
【0038】
図1図2図4、及び図5に示すように、ブレーキキャリパ装置20は、ブレーキパッド12とディスク11との隙間を調整する隙間調整装置100を備えている。隙間調整装置100は、隙間を調整する隙間調整器101と、隙間調整器101に隙間を出力する隙間出力部90とを備えている。隙間出力部90は、シリンダ装置15の第1ロッド73の移動量に応じてワイヤー96を牽引する変位部91と、ワイヤー96とを備える。なお、ワイヤー96が伝達部材に相当する。
【0039】
図5に示すように、ボディ30には、変位部91を収容するケース34が取り付けられている。ケース34内には、変位部91が回転可能に固定されている。変位部91は、第1ロッド73が突出する方向である突出方向に所定距離以上移動した場合に、第1ロッド73の出力を受けて変位する。隙間出力部90は、ボディ30と隙間調整器101とに端部が固定されて可撓性部材からなるアウターチューブ97が設けられている。アウターチューブ97が案内部材に相当する。アウターチューブ97の第1端は、ケース34に固定されている。アウターチューブ97の第2端は、隙間調整器101のケースに固定されている。アウターチューブ97は、変位部91がワイヤー96を牽引した場合には変位しない一方で、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位した場合には変位する。ワイヤー96は、アウターチューブ97を貫通してアウターチューブ97よりも長く、変位部91と隙間調整器101の入力部とに端部が接続される。ワイヤー96は、変位部91の変位量に応じて牽引又は押し出されて隙間調整器101の入力部に伝達する。
【0040】
図6図8に示すように、変位部91は、第1ロッド73の出力を増幅してワイヤー96を牽引する増幅機構92を備えている。増幅機構92は、力点アーム92Aと作用点アーム92Bとを含む。力点アーム92A及び作用点アーム92Bは、支点となる支軸92Cを中心に一体に回転する。支軸92Cの軸線は、第1ロッド73の移動方向と直交し、左キャリパレバー40の延出方向と平行である。力点アーム92Aは、第1ロッド73の出力を受けて支点を中心に回転する。作用点アーム92Bは、力点アーム92Aの回転によって支点を中心に回転する。作用点アーム92Bの先端には、ワイヤー96が回転可能に接続されている。作用点アーム92Bは、ワイヤー96を牽引する。力点アーム92Aの長さL1は、作用点アーム92Bの長さL2より短い(L1<L2)。このため、第1ロッド73から力点アーム92Aに入力された変位距離が増幅されて作用点アーム92Bから出力される。力点アーム92Aの長さL1と作用点アーム92Bの長さL2との比を変更することで増幅の度合いを設定することができる。
【0041】
図7に示すように、第1ロッド73は、変位部91に接触する接触部73Bを備える。接触部73Bは、回転可能なローラであって、第1ロッド73の収容部73Aに取り付けられている。第1ロッド73の変位範囲と増幅機構92の変位範囲とは異なり、支軸92Cの軸方向において並んでいる。接触部73Bは、増幅機構92の変位範囲に突出している。接触部73Bは、第1ロッド73が制動方向へ所定距離以上移動したときには変位部91の力点アーム92Aに接触して増幅機構92を背面視において反時計回りに回転させる。作用点アーム92Bは、第1ロッド73が所定距離移動する前は接触部73Bに接触せず、第1ロッド73が所定距離以上移動した時に接触部73Bの移動経路上に位置する。図6に示すように、接触部73Bは、第1ロッド73が所定距離以上移動した後、元の位置に戻るとき、言い換えれば制動方向と反対の非制動方向へ移動するときには、変位部91の作用点アーム92Bに接触して増幅機構92を背面視において時計回りに回転させる。よって、変位部91の増幅機構92は変位前の位置へ戻る。ワイヤー96は、図6及び図7中において上下方向に移動する。第1ロッド73は、図6及び図7中において左右方向に移動する。よって、増幅機構92は、支軸92Cを中心に回転することで、ワイヤー96の移動方向を第1ロッド73の移動方向と交差する方向に変換する変換部としても機能する。
【0042】
図1及び図4に示すように、隙間調整器101は、左キャリパレバー40の基端部と右キャリパレバー50の基端部とを連結している。左キャリパレバー40と隙間調整器101とは、上下一対のボルト45によって回動可能に連結されている。右キャリパレバー50と隙間調整器101とは、上下一対のボルト55によって回動可能に連結されている。左キャリパレバー40と隙間調整器101とは回転軸44にて回転し、右キャリパレバー50と隙間調整器101とは回転軸54にて回転する。
【0043】
図2に示すように、隙間調整装置100は、左キャリパレバー40の基端部と右キャリパレバー50の基端部との距離を調整することでブレーキパッド12とディスク11との隙間を調整する。さらに、隙間調整装置100は、ブレーキパッド12の摩耗によってブレーキパッド12とディスク11との隙間が長くなったときに、左キャリパレバー40の基端部と右キャリパレバー50の基端部との距離を伸長することで、ブレーキパッド12とディスク11との隙間を短くする。
【0044】
第1ロッド73の移動量が所定値以上であるときに、変位部91はワイヤー96を牽引する。すなわち、変位部91は、第1ロッド73が突出して所定値に達すると第1ロッド73の接触部73Bが増幅機構92の力点アーム92Aに接触することで回転して、増幅機構92の作用点アーム92Bがワイヤー96を牽引する。
【0045】
図1及び図4に示すように、隙間調整器101は、第1ケース121と、第2ケース122とを備えている。第1ケース121は、一対の左上レバー47と左下レバー48との基端部の間に接続されている。第1ケース121と一対の左上レバー47及び左下レバー48とはボルト45によって回動可能に連結されている。第2ケース122は、一対の右上レバー57と右下レバー58との基端部の間に接続されている。第2ケース122と一対の右上レバー57及び右下レバー58とはボルト55によって回動可能に連結されている。
【0046】
図2に示すように、第1ケース121は、第2ケース122に向かって延出する円筒状の延出部121Aを備えている。第1ケース121には、多角柱状の多角形ロッド123が固定されている。多角形ロッド123は、第1ケース121の延出部121Aの延出方向に設けられている。
【0047】
多角形ロッド123の基端部は、第1ケース121の外部に突出している。多角形ロッド123の基端部には、六角柱に形成された六角部123Bが設けられている。多角形ロッド123の六角部123Bを手動にて回すことにより、ブレーキパッド12とディスク11との隙間を調整することができる。
【0048】
第2ケース122には、第1ケース121に向かって延出する円柱状のねじ軸124が固定されている。ねじ軸124は、第1ケース121側のみ開口する円柱状の空間124Aを有している。ねじ軸124の空間124Aには、多角形ロッド123が貫通されている。ねじ軸124の第2ケース122に固定されている部分以外の外周には、雄ねじ124Bが設けられている。ねじ軸124は、支持ばね122Aによって支持されている。ねじ軸124の基端部は、六角柱に形成された六角部124Cが設けられている。ねじ軸124の六角部124Cを手動にて回すことにより、ブレーキパッド12とディスク11との隙間を調整することができる。このため、隙間調整器101の両側から隙間調整が可能であり、1度の隙間調整量が大きくなり、メンテナンス時の調整作業を効率的かつ容易に行うことができる。
【0049】
ねじ軸124の外周には、円筒状の調整ナット125が設けられている。調整ナット125の一部の内壁には、ねじ軸124の雄ねじ124Bと螺合する雌ねじ125Aが設けられている。調整ナット125は、ねじ軸124の雄ねじ124Bに螺合しながらねじ軸124に対して回転する。すなわち、ねじ軸124が多角形ロッド123から離間する方向に移動すると、調整ナット125はねじ軸124の雄ねじ124Bと調整ナット125の雌ねじ125Aとによって回転する。
【0050】
調整ナット125は、第1ケース121の延出部121Aとねじ軸124との間に位置している。調整ナット125の外周には、第1ケース121の延出部121Aの内壁に向かって突出する凸条部125Bが設けられている。調整ナット125と第1ケース121の延出部121Aとの間には、凸条部125Bを調整ナット125の軸方向において第1ケース121側へ付勢する振動対策ばね126が設けられている。振動対策ばね126は、コイルばねであって、調整ナット125の外周に設けられる。調整ナット125の凸条部125Bが振動対策ばね126によって付勢されているので振動による影響を低減することができる。調整ナット125と第1ケース121の延出部121Aとの間には、当接クラッチ127が設けられている。当接クラッチ127は、凸条部125Bが軸方向において左キャリパレバー40側へ押されたときに、凸条部125Bの軸方向に対して垂直な面と接触することで調整ナット125の回転を規制する。また、第2ケース122には、第1ケース121を覆う円筒状のカバー128が固定されている。
【0051】
図2図4、及び図5に示すように、ねじ軸124の第1ケース121寄りには、ワイヤー96が接続されるワイヤー取付部130が取り付けられている。調整ナット125と第1ケース121の延出部121Aとの間には、ワンウェイクラッチ131が設けられている。ワイヤー取付部130は、環状の部材であって円弧状の面を有し、ワンウェイクラッチ131に固定されている。ワンウェイクラッチ131及びワイヤー取付部130は、一体に回転する。ワイヤー96の端部は、ワイヤー取付部130の円弧状の面に固定されるとともに、円弧状の面の接線方向に接続されている。
【0052】
ワンウェイクラッチ131は、隙間調整器101が伸長するための調整ナット125の回転を許容し、隙間調整器101が短縮するための調整ナット125の回転を規制する。ワンウェイクラッチ131には、付勢部材としてのばね132が取り付けられている。ばね132は、ワイヤー96が変位部91によって牽引されていない状態へ戻す方向へ付勢する。すなわち、ワイヤー96が変位部91に牽引されたときには、ワンウェイクラッチ131及びワイヤー取付部130が左側面から見て時計回りに回転し、ばね132が圧縮される。一方、ワイヤー96の牽引が解除されると、ばね132の付勢力によりワンウェイクラッチ131及びワイヤー取付部130が調整ナット125とともに逆回転(反時計回りに回転)して隙間調整器101が伸長する。隙間調整器101が伸長すると、ディスク11とブレーキパッド12との隙間が狭くなる。また、変位部91は、第1ロッド73との接触がなくなると、ばね132によってワイヤー96を牽引していない元の位置へ戻る。なお、ワイヤー取付部130、ワンウェイクラッチ131、及びばね132が入力部として機能する。
【0053】
次に、上記ブレーキキャリパ装置20の作用について説明する。まず、図2を併せて参照して、ブレーキパッド12が摩耗していない状態におけるブレーキキャリパ装置20及び隙間調整装置100の動作について説明する。
【0054】
図2に示すように、ブレーキキャリパ装置20は、常用ブレーキを作動させるときには、シリンダ装置15の常用ブレーキシリンダ70の第1空間75に圧縮空気が供給される。常用ブレーキシリンダ70の第1ロッド73は、第1ピストン72とともに第1シリンダ室71から突出する方向に移動してローラ35Bを介して操作レバー35Aを時計回りに駆動する。このとき、ブレーキパッド12の摩耗が小さく、第1ロッド73の移動量(突出量)が所定値未満であれば、第1ロッド73は変位部91には接触しない。
【0055】
第1ロッド73が第1シリンダ室71から突出する方向に移動すると、操作レバー35Aは左側回転ピン35とともに時計回りに回転する。左側回転ピン35が時計回りに回転すると、左キャリパレバー40が回転軸44を回転中心として左側のブレーキパッド12がディスク11に接触する方向に回転して、左側のブレーキパッド12がディスク11に接触する。
【0056】
このとき、図9及び図10に示すように、左キャリパレバー40は、第1ロッド73が突出することで回転軸44を回転中心として回転すると、左キャリパレバー40及び隙間調整器101は、ボディ30及びケース34に対して相対変位する。ワイヤー96が貫通しているアウターチューブ97は、ケース34と隙間調整器101との相対変位にあわせて撓みつつ移動して引っ張られることはない。アウターチューブ97を貫通しているワイヤー96は、アウターチューブ97と一緒に撓みつつ移動するので引っ張られることはない。
【0057】
続いて、図2に示すように、左側のブレーキパッド12がディスク11に接触した後、左キャリパレバー40はパッド回転ピン43を回転中心として時計回りに回転する。そして、左キャリパレバー40がパッド回転ピン43を回転中心として回転すると、右キャリパレバー50は、回転軸44及び隙間調整器101及び回転軸54を介して右側回転ピン36を回転中心として時計回りに回転して、右側のブレーキパッド12がディスク11に接触する。
【0058】
また、駐車ブレーキシリンダ80の第2空間85から圧縮空気が排出されて、第2ロッド83が第2シリンダ室81から突出するときには、第2ロッド83が第1ピストン72及び第1ロッド73を押すことで、第1ロッド73が第1シリンダ室71から突出したときと同様に動作する。
【0059】
続いて、ブレーキパッド12が摩耗した状態におけるブレーキキャリパ装置20及び隙間調整装置100の動作について説明する。ブレーキパッド12が摩耗した状態のときも常用ブレーキシリンダ70は圧縮空気の供給によって同様に動作して、第1ロッド73の移動量がブレーキパッド12の摩耗量に応じて増加する。そして、ブレーキパッド12の摩耗量が大きくなり、第1ロッド73の移動量が所定値以上となると、隙間調整装置100が動作する。すなわち、隙間調整器101が伸長して、ブレーキパッド12とディスク11との隙間を短くする。
【0060】
第1ロッド73が所定値以上移動すると、第1ロッド73の接触部73Bが変位部91の力点アーム92Aに接触して増幅機構92が支軸92Cを中心に回転することで作用点アーム92Bによってワイヤー96が牽引されてケース34内に引き込まれる。ワイヤー96が変位部91に牽引されると、隙間調整器101はワイヤー96が引き出されるので、ワイヤー取付部130がワンウェイクラッチ131とともに時計回りに回転する。なお、第1ロッド73の移動量が所定値以上とはブレーキパッド12とディスク11との隙間が規定値以上であることに相当する。アウターチューブ97は、変位部91がワイヤー96を牽引した場合には変位しない一方で、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位した場合には連れ動きして変位する。
【0061】
続いて、ブレーキキャリパ装置20は、ディスク11を左側のブレーキパッド12と右側のブレーキパッド12とが挟んで隙間調整器101に圧縮力が発生すると、ねじ軸124が短縮方向に調整ナット125を回転させようとする。このとき、調整ナット125は、当接クラッチ127と調整ナット125の凸条部125Bとの摩擦力と、ワンウェイクラッチ131により回転が規制され、ねじ軸124は短縮方向に移動せず、ブレーキキャリパ装置20の挟み力が維持されてブレーキ力が発生する。
【0062】
続いて、ブレーキキャリパ装置20は、常用ブレーキシリンダ70への圧縮空気の供給が停止されてブレーキが解除されると、第1ロッド73が第1シリンダ室71に戻る。第1ロッド73の非制動方向への移動に伴って、第1ロッド73の接触部73Bが変位部91の作用点アーム92Bに接触して増幅機構92が支軸92Cを中心に回転することで変位部91によるワイヤー96の牽引が解除される。そして、ワイヤー96の牽引が解除されると、ばね132の付勢力によりワンウェイクラッチ131及びワイヤー取付部130が調整ナット125とともに逆回転(反時計回りに回転)する。このとき、ワンウェイクラッチ131は、伸長する方向には回転しないので、調整ナット125とともに反時計回りに回転する。これにより、隙間調整器101の全長が長くなることで、左キャリパレバー40の基端部と右キャリパレバー50の基端部との距離が長くなり、ブレーキパッド12とディスク11との隙間が短縮される。
【0063】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
(1)アウターチューブ97の長さがボディ30と隙間調整器101との最大距離よりも長いため、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位したとしてもアウターチューブ97及びワイヤー96が撓みつつ移動し、アウターチューブ97及びワイヤー96が引っ張られることがない。よって、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位したとしても、隙間調整器101への隙間調整のための伝達量が変化しない。
【0064】
(2)アウターチューブ97の端部が変位部91を覆うケース34に固定されているので、ケース34の外部でワイヤー96が露出することがなく、ワイヤー96を変位部91まで確実に案内することができる。また、ケース34がボディ30に固定されているので、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位してもアウターチューブ97の端部がボディ30とともに移動することができる。
【0065】
(3)第1ロッド73が所定距離以上移動した後、元の位置へ戻るときに第1ロッド73の接触部73Bが変位部91に接触することによって変位部91が変位前の位置に戻ることができ、第1ロッド73の次の制動方向への移動に備えることができる。
【0066】
(4)第1ロッド73が移動するときには作用点アーム92Bが邪魔にならず、第1ロッド73が元の位置へ戻るときに作用点アーム92Bを元の位置に戻すことができる。
(5)ワイヤー96の端部が隙間調整器101のワイヤー取付部130の円弧状の面に固定されて、ワイヤー96が円弧状の面の接線方向に延出している。このため、ワイヤー96が変位したときに、ワイヤー取付部の一部に負荷が集中する、ひいてはワイヤー96の端部に負荷が集中することを抑制することができる。
【0067】
(6)変位部91の出力を増幅機構92が拡大してワイヤー96を介して隙間調整器101のワイヤー取付部130に出力するため、ブレーキパッド12とディスク11との隙間調整の精度を高めることができる。
【0068】
(7)力点アーム92Aの長さに対する作用点アーム92Bの長さによって増幅量を設定することができる。
(8)第1ロッド73の接触部73Bが出力方向に移動するときに力点アーム92A、非出力方向へ移動するときに作用点アーム92Bに接触することで変位部91を変位させることができる。
【0069】
(9)増幅機構92によってワイヤー96が第1ロッド73の移動方向と交差する方向に移動されるので、ワイヤー96が第1ロッド73と同じ方向に変位するよりも設置スペースを抑制することができる。
【0070】
(10)変位部91の増幅機構92が方向を変換する変換部を兼ねるため、設置スペースを抑制するとともに、構成の増加を抑制することができる。
(11)隙間調整器101のワイヤー取付部130は、隙間調整が必要なときにワイヤー96が牽引されることで隙間調整を行うため、ばね132によって牽引前の状態に戻すことで隙間調整を確実に行うことができる。
【0071】
(12)第1ロッド73が非制動方向へ移動すると、ばね132によって変位部91が引っ張られることで変位部91が変位前の位置に戻ることができ、第1ロッド73の次の制動方向への移動に備えることができる。
【0072】
(第2実施形態)
以下、図11図14を参照して、ブレーキキャリパ装置の第2実施形態について説明する。この実施形態のブレーキキャリパ装置は、隙間出力部の構成が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
図9に示すように、隙間調整装置100は、隙間調整器101と、隙間調整器101に隙間を出力する隙間出力部190とを備えている。隙間出力部190は、シリンダ装置15の第1ロッド73の移動量に応じてワイヤー96を牽引する変位部191と、ワイヤー96とを備える。
【0074】
ボディ30には、変位部191を収容するケース34が取り付けられている。ケース34内には、変位部191が回転可能に固定されている。変位部191は、第1ロッド73が突出する方向である制動方向に所定距離以上移動した場合に、第1ロッド73の移動量に合わせて変位する。ワイヤー96は、変位部191の変位量に応じて牽引されて隙間調整器101のワイヤー取付部130に伝達する。ワイヤー96は、ボディ30と隙間調整器101との相対変位量が最も大きい場合におけるボディ30と隙間調整器101との距離よりも長い。隙間出力部190は、ワイヤー96の移動を案内するアウターチューブ97が設けられている。アウターチューブ97の第1端は、ケース34に固定されている。アウターチューブ97の第2端は、隙間調整器101の第1ケース121に固定されている。アウターチューブ97は、変位部191がワイヤー96を牽引した場合には変位しない一方で、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位した場合には変位する。
【0075】
図11図13に示すように、変位部191は、第1ロッド73の出力を増幅してワイヤー96を牽引する増幅機構192を備えている。増幅機構192は、力点アーム192Aと作用点アーム192Bとを含む。力点アーム192A及び作用点アーム192Bは、支点となる支軸192Cを中心に一体に回転する。支軸192Cの軸線は、第1ロッド73の移動方向と直交し、左キャリパレバー40の延出方向とも直交する。力点アーム192Aは、第1ロッド73の出力を受けて支点を中心に回転する。作用点アーム192Bは、力点アーム192Aの回転によって支点を中心に回転する。作用点アーム192Bの先端には、ワイヤー96を取り付ける取付部192Dが設けられている。取付部192Dは、支軸192Cと平行に延出する。取付部192Dには、ワイヤー96が回転可能に接続されている。作用点アーム192Bは、取付部192Dを介してワイヤー96を牽引する。力点アーム192Aの長さL3は、作用点アーム192Bの長さL4より短い(L3<L4)。このため、第1ロッド73から力点アーム192Aに入力された変位距離が増幅されて作用点アーム192Bから出力される。力点アーム192Aの長さL3と作用点アーム192Bの長さL4との比を変更することで増幅の度合いを設定することができる。
【0076】
図14に示すように、第1ロッド73は、変位部191の力点アーム192Aに接触する接触部73Bを備える。接触部73Bは、回転可能なローラであって、第1ロッド73の収容部73Aの上部に取り付けられている。第1ロッド73の変位領域と増幅機構192の変位領域に含まれている。接触部73Bは、力点アーム192Aの変位領域に突出している。図10及び図11に示すように、接触部73Bは、第1ロッド73が制動方向へ所定距離以上移動したときには変位部191の力点アーム192Aに接触して増幅機構192を平面視において反時計回りに回転させる。作用点アーム192Bは、第1ロッド73が所定距離移動する前は接触部73Bに接触せず、第1ロッド73が所定距離以上移動した時に接触部73Bの移動経路上に位置する。接触部73Bは、第1ロッド73が制動方向へ所定距離以上移動した後、元の位置に戻るときに変位部191の作用点アーム192Bに接触して増幅機構192を平面視において時計回りに回転させる。そして、増幅機構192は、変位前の位置に戻る。
【0077】
図14に示すように、ワイヤー96の端部は、ワイヤー取付部130の円弧状の面に固定されるとともに、円弧状の面の接線方向に接続されている。ワイヤー96の端部には、ワイヤー96を隙間調整器101内に引っ張るばね133が取り付けられている。ばね133は付勢部材として機能する。図12に示すように、接触部73Bは、制動方向と反対の非制動方向へ移動したときには、変位部191の力点アーム192Aとの接触が解除される。そして、ワイヤー96がばね133によって隙間調整器101内に引っ張られて、変位部191の増幅機構192を平面視において時計回りに回転させる。ワイヤー96は、図12及び図13中において左右方向に移動する。第1ロッド73は、図12及び図13中において上下方向に移動する。よって、増幅機構192は、支軸192Cを中心に回転することで、ワイヤー96の移動方向を第1ロッド73の移動方向と交差する方向に変換する変換部としても機能する。
【0078】
次に、ブレーキパッド12が摩耗した状態におけるブレーキキャリパ装置20及び隙間調整装置100の動作について説明する。第1実施形態と同じ部分については説明を割愛する。
【0079】
第1ロッド73が所定値以上移動すると、第1ロッド73の接触部73Bが変位部191の力点アーム192Aに接触して増幅機構192が支軸192Cを中心に回転することで作用点アーム192Bによってワイヤー96が牽引されてケース34内に引き込まれる。ワイヤー96が変位部191に牽引されると、隙間調整器101はワイヤー96が引き出されるので、ワイヤー取付部130がワンウェイクラッチ131とともに時計回りに回転する。アウターチューブ97は、変位部191がワイヤー96を牽引した場合には変位しない一方で、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位した場合には連れ動きして変位する。
【0080】
続いて、ブレーキキャリパ装置20は、ディスク11を左側のブレーキパッド12と右側のブレーキパッド12とが挟んで隙間調整器101に圧縮力が発生すると、ねじ軸124が短縮方向に調整ナット125を回転させようとする。このとき、調整ナット125は、当接クラッチ127と調整ナット125の凸条部125Bとの摩擦力と、ワンウェイクラッチ131により回転が規制され、ねじ軸124は短縮方向に移動せず、ブレーキキャリパ装置20の挟み力が維持されてブレーキ力が発生する。
【0081】
続いて、ブレーキキャリパ装置20は、常用ブレーキシリンダ70への圧縮空気の供給が停止されてブレーキが解除されると、第1ロッド73が第1シリンダ室71に戻る。第1ロッド73の非制動方向への移動に伴って、第1ロッド73の接触部73Bと変位部191の力点アーム192Aとの接触が解除される。ワイヤー96がばね133によって隙間調整器101内に引っ張られて、増幅機構192が支軸192Cを中心に回転することで変位部191によるワイヤー96の牽引が解除される。そして、ワイヤー96の牽引が解除されると、ばね132の付勢力によりワンウェイクラッチ131及びワイヤー取付部130が調整ナット125とともに逆回転(反時計回りに回転)する。このとき、ワンウェイクラッチ131は、伸長する方向には回転しないので、調整ナット125とともに反時計回りに回転する。これにより、隙間調整器101の全長が長くなることで、左キャリパレバー40の基端部と右キャリパレバー50の基端部との距離が長くなり、ブレーキパッド12とディスク11との隙間が短縮される。
【0082】
次に、第2実施形態の効果について説明する。なお、第1実施形態の(1)、(2)、(4)~(12)と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
(13)第1ロッド73が非制動方向へ移動すると、ばね133によって変位部191が引っ張られることで変位部191が変位前の位置に戻ることができ、第1ロッド73の次の制動方向への移動に備えることができる。
【0083】
(第3実施形態)
以下、図15及び図16を参照して、ブレーキキャリパ装置の第3実施形態について説明する。この実施形態のブレーキキャリパ装置は、隙間出力部の構成が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0084】
図15及び図16に示すように、隙間調整装置100は、隙間調整器101と、隙間調整器101に隙間を出力する隙間出力部290とを備えている。隙間出力部290は、シリンダ装置15の第1ロッド73の移動量に応じてワイヤー96を牽引する変位部291と、ワイヤー96とを備える。
【0085】
ボディ30には、変位部291を収容するケース34が取り付けられている。ケース34内には、変位部291が回転可能に固定されている。変位部291は、第1ロッド73が突出する方向である制動方向に所定距離以上移動した場合に、第1ロッド73の移動量に合わせて変位する。ワイヤー96は、変位部291の変位量に応じて牽引されて隙間調整器101のワイヤー取付部130に伝達する。ワイヤー96は、ボディ30と隙間調整器101との相対変位量が最も大きい場合におけるボディ30と隙間調整器101との距離よりも長い。隙間出力部290は、ワイヤー96の移動を案内するアウターチューブ97が設けられている。アウターチューブ97の第1端は、ケース34に固定されている。アウターチューブ97の第2端は、隙間調整器101の第1ケース121に固定されている。アウターチューブ97は、変位部291がワイヤー96を牽引した場合には変位しない一方で、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位した場合には変位する。
【0086】
変位部291は、第1ロッド73の出力を増幅してワイヤー96を牽引する増幅機構292を備えている。増幅機構292は、力点アーム292Aと作用点アーム292Bとを含む。力点アーム292A及び作用点アーム292Bは、支点となる支軸292Cとともに一体に回転する。支軸292Cの軸線は、第1ロッド73の移動方向と直交し、左キャリパレバー40の延出方向とも直交する。力点アーム292Aは、第1ロッド73の出力を受けて支軸292Cとともに回転する。作用点アーム292Bは、扇形の部材であって、円弧状の面を有する。ワイヤー96の端部は、作用点アーム292Bの円弧状の面に固定されるとともに、円弧状の面の接線方向に接続されている。作用点アーム292Bは、力点アーム292Aの回転によって支軸292Cとともに回転する。力点アーム292Aの長さL5は、作用点アーム292Bの長さL6より短い(L5<L6)。このため、第1ロッド73から力点アーム292Aに入力された変位距離が増幅されて作用点アーム292Bから出力される。力点アーム292Aの長さL5と作用点アーム292Bの長さL6との比を変更することで増幅の度合いを設定することができる。
【0087】
第1ロッド73は、変位部291の力点アーム292Aに接触する接触部73Bを備える。接触部73Bは、回転可能なローラであって、第1ロッド73の収容部73Aの上部に取り付けられている。第1ロッド73の変位領域と増幅機構292の変位領域に含まれている。接触部73Bは、力点アーム292Aの変位領域に突出している。接触部73Bは、第1ロッド73が制動方向へ所定距離以上移動したときには変位部291の力点アーム292Aに接触して増幅機構292を平面視において反時計回りに回転させる。
【0088】
図15に示すように、ワイヤー96の端部は、ワイヤー取付部130の円弧状の面に固定されるとともに、円弧状の面の接線方向に接続されている。ワイヤー96の端部には、ワイヤー96を隙間調整器101内に引っ張るばね133が取り付けられている。ばね133は付勢部材として機能する。接触部73Bは、制動方向と反対の非制動方向へ移動したときには、変位部291の力点アーム292Aとの接触が解除される。そして、ワイヤー96がばね133によって隙間調整器101内に引っ張られて、変位部291の増幅機構292を平面視において時計回りに回転させる。ワイヤー96は、図16中において左右方向に移動する。第1ロッド73は、図16中において上下方向に移動する。よって、増幅機構292は、支軸292Cを中心に回転することで、ワイヤー96の移動方向を第1ロッド73の移動方向と交差する方向に変換する変換部としても機能する。
【0089】
次に、ブレーキパッド12が摩耗した状態におけるブレーキキャリパ装置20及び隙間調整装置100の動作について説明する。第1実施形態と同じ部分については説明を割愛する。
【0090】
第1ロッド73が所定値以上移動すると、第1ロッド73の接触部73Bが変位部291の力点アーム292Aに接触して増幅機構292が支軸292Cを中心に回転することで作用点アーム292Bによってワイヤー96が牽引されてケース34内に引き込まれる。ワイヤー96が変位部291に牽引されると、隙間調整器101はワイヤー96が引き出されるので、ワイヤー取付部130がワンウェイクラッチ131とともに時計回りに回転する。アウターチューブ97は、変位部291がワイヤー96を牽引した場合には変位しない一方で、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位した場合には連れ動きして変位する。
【0091】
続いて、ブレーキキャリパ装置20は、ディスク11を左側のブレーキパッド12と右側のブレーキパッド12とが挟んで隙間調整器101に圧縮力が発生すると、ねじ軸124が短縮方向に調整ナット125を回転させようとする。このとき、調整ナット125は、当接クラッチ127と調整ナット125の凸条部125Bとの摩擦力と、ワンウェイクラッチ131により回転が規制され、ねじ軸124は短縮方向に移動せず、ブレーキキャリパ装置20の挟み力が維持されてブレーキ力が発生する。
【0092】
続いて、ブレーキキャリパ装置20は、常用ブレーキシリンダ70への圧縮空気の供給が停止されてブレーキが解除されると、第1ロッド73が第1シリンダ室71に戻る。第1ロッド73の非制動方向への移動に伴って、第1ロッド73の接触部73Bと変位部291の力点アーム292Aとの接触が解除される。ワイヤー96がばね133によって隙間調整器101内に引っ張られて、増幅機構292が支軸292Cを中心に回転することで変位部291によるワイヤー96の牽引が解除される。そして、ワイヤー96の牽引が解除されると、ばね132の付勢力によりワンウェイクラッチ131及びワイヤー取付部130が調整ナット125とともに逆回転(反時計回りに回転)する。このとき、ワンウェイクラッチ131は、伸長する方向には回転しないので、調整ナット125とともに反時計回りに回転する。これにより、隙間調整器101の全長が長くなることで、左キャリパレバー40の基端部と右キャリパレバー50の基端部との距離が長くなり、ブレーキパッド12とディスク11との隙間が短縮される。
【0093】
次に、第3実施形態の効果について説明する。なお、第1実施形態の(1)、(2)、(4)~(12)及び第2実施形態の(13)と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0094】
(14)ワイヤー96の端部が変位部291の円弧状の面に固定されているので、ワイヤー96が変位したときに、変位部291の一部に負荷が集中する、ひいてはワイヤー96の端部に負荷が集中することを抑制することができる。
【0095】
(第4実施形態)
以下、図17図20を参照して、ブレーキキャリパ装置の第4実施形態について説明する。この実施形態のブレーキキャリパ装置は、隙間出力部の構成が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0096】
図17図20に示すように、隙間調整装置100は、隙間調整器101と、隙間調整器101に隙間を出力する隙間出力部390とを備えている。隙間出力部390は、シリンダ装置15の第1ロッド73の移動量に応じてワイヤー96を牽引する変位部391と、ワイヤー96とを備える。
【0097】
ボディ30には、変位部391を収容するケース34が取り付けられている。ケース34内には、変位部391が回転可能に固定されている。変位部391は、第1ロッド73が突出する方向である制動方向に所定距離以上移動した場合に、第1ロッド73の移動量に合わせて変位する。ワイヤー96は、変位部391の変位量に応じて牽引されて隙間調整器101のワイヤー取付部130に伝達する。ワイヤー96は、ボディ30と隙間調整器101との相対変位量が最も大きい場合におけるボディ30と隙間調整器101との距離よりも長い。隙間出力部390は、ワイヤー96の移動を案内するアウターチューブ97が設けられている。アウターチューブ97の第1端は、ケース34に固定されている。アウターチューブ97の第2端は、隙間調整器101の第1ケース121に固定されている。アウターチューブ97は、変位部391がワイヤー96を牽引した場合には変位しない一方で、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位した場合には変位する。
【0098】
変位部391は、入出力部391Aと支軸391Cとを含む。入出力部391Aと支軸391Cとは一体に回転する。支軸391Cの軸線は、第1ロッド73の移動方向と直交し、左キャリパレバー40の延出方向とも直交する。入出力部391Aには、第1ロッド73が接触する凹部391Bが設けられている。入出力部391Aは、円板状の部材であって、円弧状の面を有する。ワイヤー96の端部は、入出力部391Aの円弧状の面に固定されるとともに、円弧状の面の接線方向に接続されている。
【0099】
第1ロッド73は、変位部391の入出力部391Aの凹部391Bに接触する接触部73Bを備える。接触部73Bは、回転可能なローラであって、第1ロッド73の収容部73Aの下部に取り付けられている。第1ロッド73の変位領域と変位部391の変位領域に含まれている。接触部73Bは、入出力部391Aの変位領域に突出している。接触部73Bは、第1ロッド73が制動方向へ所定距離以上移動したときには変位部391の入出力部391Aの凹部391Bに接触して変位部391を平面視において反時計回りに回転させる。
【0100】
ワイヤー96の端部は、ワイヤー取付部130の円弧状の面に固定されるとともに、円弧状の面の接線方向に接続されている。ワイヤー96の端部には、ワイヤー96を隙間調整器101内に引っ張るばね133が取り付けられている。ばね133は付勢部材として機能する。接触部73Bは、制動方向と反対の非制動方向へ移動したときには、変位部391の入出力部391Aとの接触が解除される。そして、ワイヤー96がばね133によって隙間調整器101内に引っ張られて、変位部391の入出力部391Aを平面視において時計回りに回転させる。ワイヤー96は、図16中において左右方向に移動する。第1ロッド73は、図16中において上下方向に移動する。よって、変位部391は、支軸391Cを中心に回転することで、ワイヤー96の移動方向を第1ロッド73の移動方向と交差する方向に変換する変換部としても機能する。
【0101】
次に、ブレーキパッド12が摩耗した状態におけるブレーキキャリパ装置20及び隙間調整装置100の動作について説明する。第1実施形態と同じ部分については説明を割愛する。
【0102】
第1ロッド73が所定値以上移動すると、第1ロッド73の接触部73Bが変位部391の入出力部391Aに接触して支軸391Cを中心に回転することで入出力部391Aによってワイヤー96が牽引されてケース34内に引き込まれる。ワイヤー96が変位部391に牽引されると、隙間調整器101はワイヤー96が引き出されるので、ワイヤー取付部130がワンウェイクラッチ131とともに時計回りに回転する。アウターチューブ97は、変位部391がワイヤー96を牽引した場合には変位しない一方で、ボディ30と隙間調整器101とが相対変位した場合には連れ動きして変位する。
【0103】
続いて、ブレーキキャリパ装置20は、ディスク11を左側のブレーキパッド12と右側のブレーキパッド12とが挟んで隙間調整器101に圧縮力が発生すると、ねじ軸124が短縮方向に調整ナット125を回転させようとする。このとき、調整ナット125は、当接クラッチ127と調整ナット125の凸条部125Bとの摩擦力と、ワンウェイクラッチ131により回転が規制され、ねじ軸124は短縮方向に移動せず、ブレーキキャリパ装置20の挟み力が維持されてブレーキ力が発生する。
【0104】
続いて、ブレーキキャリパ装置20は、常用ブレーキシリンダ70への圧縮空気の供給が停止されてブレーキが解除されると、第1ロッド73が第1シリンダ室71に戻る。第1ロッド73の非制動方向への移動に伴って、第1ロッド73の接触部73Bと変位部391の入出力部391Aとの接触が解除される。ワイヤー96がばね133によって隙間調整器101内に引っ張られて、入出力部391Aが支軸391Cを中心に回転することで変位部391によるワイヤー96の牽引が解除される。そして、ワイヤー96の牽引が解除されると、ばね132の付勢力によりワンウェイクラッチ131及びワイヤー取付部130が調整ナット125とともに逆回転(反時計回りに回転)する。このとき、ワンウェイクラッチ131は、伸長する方向には回転しないので、調整ナット125とともに反時計回りに回転する。これにより、隙間調整器101の全長が長くなることで、左キャリパレバー40の基端部と右キャリパレバー50の基端部との距離が長くなり、ブレーキパッド12とディスク11との隙間が短縮される。
【0105】
次に、第4実施形態の効果について説明する。なお、第1実施形態の(1)、(2)、(4)~(9)、(11)、(12)、第2実施形態の(13)、及び第2実施形態の(14)と同様の効果を奏する。
【0106】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0107】
・上記第2~4実施形態において、ワイヤー96を隙間調整器101側へ付勢する付勢部材が設けられていれば、ばね133を省略してもよい。
・上記各実施形態において、ワイヤー96を隙間調整器101側へ付勢する付勢部材が設けられていれば、ばね132を省略してもよい。
【0108】
・上記各実施形態において、各変位部の形状を任意に変更してもよい。
・上記第1~3実施形態では、変位部の増幅機構が方向を変換する変換部を兼ねたが、変位部の増幅機構とは別に方向を変換する変換部を備えてもよい。
【0109】
・上記各実施形態では、第1ロッド73の移動方向とワイヤー96の移動方向とを交差させたが、第1ロッド73の移動方向とワイヤー96の移動方向とを同じ方向にしてもよい。
【0110】
・第1実施形態では、接触部73Bが元の位置に戻るときに作用点アーム92Bに接触することで増幅機構92を元の位置に戻したが、接触部73Bによらず、増幅機構92を元の位置に付勢するばね等の付勢部材を設けてもよい。このようにすれば、接触部73Bと力点アーム92Aとの接触がなくなると、増幅機構92が付勢部材によって元の位置に戻る。
【0111】
・上記第1~3実施形態では、作用点アームの長さを力点アームの長さより長くすることで第1ロッド73の移動量を増幅したが、他の構成によって増幅してもよい。
・上記第1~3実施形態では、第1ロッド73の移動量を増幅機構によって増幅させてワイヤー96に伝達したが、第1ロッド73の移動量を増幅機構によって増幅しないようにしてもよい。
【0112】
・上記実施形態において、アクチュエータとしてシリンダ装置15を採用したが、アクチュエータはモータ装置等の他の装置を採用してもよい。
・上記実施形態において、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0113】
11 ディスク
12 ブレーキパッド
15 シリンダ装置
20 ブレーキキャリパ装置
21 ブラケット
21A 第1ブラケット
21B 第2ブラケット
22 連結ピン
30 ボディ
31 基部
32 第1支持部
33 第2支持部
33A 開口
34 ケース
35 左側回転ピン
35A 操作レバー
35B ローラ
36 右側回転ピン
40 左キャリパレバー
42 パッド取付部材
43 パッド回転ピン
44 回転軸
45 ボルト
46 左レバー連結ピン
47 左上レバー
48 左下レバー
50 右キャリパレバー
52 パッド取付部材
53 パッド回転ピン
54 回転軸
55 ボルト
56 右レバー連結ピン
57 右上レバー
58 右下レバー
70 常用ブレーキシリンダ
73 第1ロッド
73A 収容部
73B 接触部
80 駐車ブレーキシリンダ
90 隙間出力部
91 変位部
92 増幅機構
92A 力点アーム
92B 作用点アーム
92C 支軸(支点)
96 ワイヤー
97 アウターチューブ
100 隙間調整装置
101 隙間調整器
121 第1ケース
121A 延出部
122 第2ケース
122A 支持ばね
123 多角形ロッド
123A 空間
123B 六角部
124 ねじ軸
124A 空間
124B 雄ねじ
124C 六角部
125 調整ナット
125A 雌ねじ
126 振動対策ばね
127 当接クラッチ
128 カバー
130 ワイヤー取付部
131 ワンウェイクラッチ
132 ばね
133 ばね
190 隙間出力部
191 変位部
192 増幅機構
192A 力点アーム
192B 作用点アーム
192C 支軸(支点)
192D 取付部
290 隙間出力部
291 変位部
292 増幅機構
292A 力点アーム
292B 作用点アーム
292C 支軸(支点)
390 隙間出力部
391 変位部
391A 入出力部
391B 凹部
391C 支軸(支点)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20