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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071784
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】衝撃吸収床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/22 20060101AFI20220509BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20220509BHJP
   E04F 15/16 20060101ALI20220509BHJP
   B32B 7/022 20190101ALN20220509BHJP
【FI】
E04F15/22
E04F15/18 601A
E04F15/16 A
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180959
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 麻美子
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA16
2E220AA19
2E220AA23
2E220AA26
2E220AA27
2E220AA33
2E220AA44
2E220AB06
2E220BA04
2E220BB05
2E220GA02X
2E220GA07X
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB35X
2E220GB37X
2E220GB43X
2E220GB45X
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AP00A
4F100AP00C
4F100AP02A
4F100AP02C
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DJ01B
4F100GB08
4F100JK04
4F100JK05
4F100JK11
4F100JK12A
4F100JK13B
4F100JL09
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】本発明は、例えば高齢者や幼児などの転倒による衝撃で生じる大腿骨の骨折を抑制することができ、軟質材料による吸収効果をもちながらも、耐静荷重性や耐動荷重性といった耐久性も有する衝撃吸収床材を提供できる。
【解決手段】使用者の転倒による衝撃で生じる大腿骨の骨折を抑制する衝撃吸収床材10であって、硬質性材料からなる床上材20と、床上材20の下方に設けられる軟質材料からなる床下地材30と、床上材20、床下地材30の中間に位置する中間層40との3層からなる衝撃吸収床材10であって、床下地材30は厚さが4mm以上10mm以下であり、試験力と変位とを測定する静的圧縮試験を行った時、エネルギーを5J吸収したときの床下地材30の圧縮ひずみが0.8以内である。また、静的圧縮試験を行ったとき、50%ひずみ時の圧縮試験力が1200N以上1800N以下としても良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の転倒による衝撃で生じる大腿骨の骨折を抑制する衝撃吸収床材であって、
硬質性材料からなる床上材と、
前記床上材の下方に設けられる軟質材料からなる床下地材と、
前記床上材、床下地材の中間に位置する中間層との3層からなる衝撃吸収床材であって、
前記床下地材は厚さが4mm以上10mm以下であり、
試験力と変位とを測定する静的圧縮試験を行った時、エネルギーを5J吸収したときの前記床下地材の圧縮ひずみが0.8以内であることを特徴とする衝撃吸収床材。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃吸収床材において、
前記静的圧縮試験を行ったとき、
50%ひずみ時の圧縮試験力が1200N以上1800N以下となることを特徴とする衝撃吸収床材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の衝撃吸収床材において、
前記中間層は、厚さが1mm以上3mm以下であり、
単位幅における曲げ剛性が0.1Nm2以上10.0Nm2以下であることを特徴とする衝撃吸収床材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の衝撃吸収床材において、
前記床上材は厚さが2mm以上10mm以下であり、
前記3層からなる全体の厚さが5mm以上20mm以下であることを特徴とする衝撃吸収床材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の衝撃吸収床材であって、
前記使用者が転倒した時の前記大腿骨の転子部に加わる圧力分布に基づく重さ及び形状の衝撃付与体を前記使用者の腰の高さに基づいた落下高さから落下させて、人体軟組織を模した材料からなる緩衝材へ衝撃を付与した時に生じる基準衝撃荷重Fsが6500Nとなるように設定された条件において、
前記衝撃付与体を前記落下高さから落下させて、前記緩衝材を介して前記衝撃吸収床材へ衝撃を付与した時に生じる衝撃荷重Fが2000N以上5000N以下となるものであることを特徴とする衝撃吸収床材。
【請求項6】
前記緩衝材は、25℃における測定周波数1Hzでの動的粘弾性Tanδが0.1以上0.7以下のものであることを特徴とする請求項5に記載の衝撃吸収床材。
【請求項7】
前記緩衝材は、厚さが7mm以上80mm以下のものであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の衝撃吸収床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者や幼児などの転倒による衝撃で生じる大腿骨の骨折を抑制することができ、病院、高齢者施設、保育関連施設等に用いられる衝撃吸収床材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高齢者の転倒骨折が社会問題化しており、高齢者が要介護となる要因の10%は転倒骨折が占めている。また、医療事故においても、転倒骨折は20~25%を占める。
転倒による骨折箇所は年代によって異なり、60代以降にて大腿骨骨折のリスクが急増する。
大腿骨骨折は入院治療が必要となり、長時間歩けない状態が続くため、骨量が減少して症状が深刻化しやすく、要介護状態を招きやすい。
また、保育関連施設(幼稚園、保育園、認定こども園)でも、転倒によって骨折した事故は前記3層からなる全体の2割強を占めている。
【0003】
上記のような問題があるため、転倒したときに衝撃を吸収し、骨折リスクを低下させる床材が発明されている。
例えば、病院や高齢者施設で使用される床材は、長尺シートと呼ばれる広幅のシート状の床材が一般的に多く、この床材に衝撃吸収性を与えるために、シート自体を発泡させたり(特許文献1の段落[0040]、及び図3参照)、或いは下地に衝撃吸収用の発泡樹脂性シートを積層させたりすることがある(特許文献2の段落[0025]、並びに図1及び図3参照)。
一方、病院や高齢者施設で使用される床材は、長尺シートと呼ばれる広幅のシート状の床材が一般的に多い。この床材に衝撃吸収性を与えるために、シート自体を発泡させたり、下地に衝撃吸収用の発泡樹脂性シートを積層させたりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3600726号公報
【特許文献2】特許第5244927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した発泡剤を用いた床材は、軟質層を有して衝撃を吸収するものが多いが、これらは病院などでベッド等の重量物が置かれたり、重量物をキャスターで転がすなどの負荷がかかった場合に、軟質層がつぶれてへこみが発生してしまうという問題点があった。
そこで、本発明では、軟質材料による吸収効果をもちながらも、耐静荷重性や耐動荷重性といった耐久性も有する衝撃吸収床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る衝撃吸収床材は、使用者の転倒による衝撃で生じる大腿骨の骨折を抑制する衝撃吸収床材であって、硬質性材料からなる床上材と、前記床上材の下方に設けられる軟質材料からなる床下地材と、前記床上材、床下地材の中間に位置する中間層との3層からなる衝撃吸収床材であって、前記床下地材は厚さが4mm以上10mm以下であり、試験力と変位とを測定する静的圧縮試験を行った時、エネルギーを5J吸収したときの前記床下地材の圧縮ひずみが0.8以内であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る衝撃吸収床材は、前記静的圧縮試験を行ったとき、50%ひずみ時の圧縮試験力が1200N以上1800N以下となることを特徴とする。
本発明の一態様に係る衝撃吸収床材は、前記中間層の厚さが1mm以上3mm以下であり、単位幅における曲げ剛性が0.1Nm2以上10.0Nm2以下であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る衝撃吸収床材は、前記床上材の厚さが2mm以上10mm以下であり、前記3層からなる全体の厚さが5mm以上20mm以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る衝撃吸収床材は、前記使用者が転倒した時の前記大腿骨の転子部に加わる圧力分布に基づく重さ及び形状の衝撃付与体を前記使用者の腰の高さに基づいた落下高さから落下させて、人体軟組織を模した材料からなる緩衝材へ衝撃を付与した時に生じる基準衝撃荷重Fsが6500Nとなるように設定された条件において、前記衝撃付与体を前記落下高さから落下させて、前記緩衝材を介して前記衝撃吸収床材へ衝撃を付与した時に生じる衝撃荷重Fが2000N以上5000N以下となるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る衝撃吸収床材は、前記緩衝材が、25℃における測定周波数1Hzでの動的粘弾性Tanδが0.1以上0.7以下のものであることを特徴とする。
本発明の一態様に係る衝撃吸収床材は、前記緩衝材の厚さが7mm以上80mm以下のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、軟質材料による吸収効果をもちながらも、耐静荷重性や耐動荷重性といった耐久性も有する衝撃吸収床材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係わる衝撃吸収床材の各部材を離れて配置した断面図である。
図2】衝撃吸収床材の測定に用いられる静的圧縮試験機の模式図である。
図3】試験力と変位との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1中、10は、衝撃吸収床材であり、衝撃吸収床材10は、例えば高齢者や幼児などの転倒による衝撃で生じる大腿骨の骨折を抑制することができ、病院、高齢者施設、保育関連施設等に用いられる。
衝撃吸収床材10は、図1に示すように、次の層から構成されている。
なお、次の各層については、後述する。
(1)床上材20
(2)床下地材30
(3)中間層40
(4)絵柄層50
(5)表面保護層60
なお、衝撃吸収床材10の各層は、上記した(1)~(5)に限定されず、絵柄層50と、表面保護層60との一方を省き、4層としたり、或いは両方を省き、3層としても良い。
【0014】
(床上材20)
床上材20は、使用者が歩行する床面を構成するものであり、硬質性材料から構成される。
床上材20は、合板等の木質基材、木粉とプラスチックスとを混合した複合基材、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンや塩化ビニル(PVC)等の樹脂基材等の硬質性材料からなる。
【0015】
(床上材20の厚さ)
床上材20の厚さは、2mm以上10mm以下である。
床上材20の厚さが、2mm未満であると、剛性が低下し、10mmを超えると、剛性が高すぎ、衝撃吸収性が低下する。
【0016】
(床下地材30)
床下地材30は、床上材20の下方に位置し、衝撃を吸収する衝撃吸収部を構成し、軟質性材料から構成される。
床下地材30は、発泡材であって、ポリオレフィン、PVC、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)等の樹脂等の軟質性材料からなり、化学発泡や物理発泡や超臨界発泡等の方法により独立発泡や連続発泡等の発泡構造を有する。
【0017】
(床下地材30の厚さ)
床下地材30の厚さは、例えば4mm以上10mm以下としている。
床下地材30の厚さが、4mm未満であると、衝撃吸収性が低下し、10mmを超えると、床が大きくしずみこむこととなり、歩行感に支障をきたす可能性がある。
【0018】
(中間層40)
中間層40は、床上材20と、床下地材30との中間に位置し、硬質材料からなり、支持層として床上材20から床下地材30にかかる荷重を分散し、耐動荷重性や耐静荷重性といった耐久性を向上させる役割をもったものである。
中間層40は、合板等の木質基材、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンや塩化ビニル(PVC)等の樹脂基材等の硬質材料からなる。
【0019】
(中間層40の厚さ、単位幅における曲げ剛性)
中間層40の厚さは、1mm以上3mm以下である。中間層40の厚さが、1mm未満であると、耐久性に劣り、3mmを超えると、重量は重くなる。
中間層40の単位幅における曲げ剛性が0.1Nm2以上10.0Nm2以下である。
中間層40の単位幅における曲げ剛性が、0.1Nm2未満であると、剛性が足りず、3層化による耐久性及び衝撃吸収性の向上が見込めず、10.0Nm2を超えると、剛性が高すぎるため、歩行時の疲れが大きくなる可能性がある。
曲げ剛性が、上記した規定の範囲内であれば、軽量化するために、中間層40の基材を発泡化させることも可能である。
【0020】
(3層の前記3層からなる全体の厚さ)
床上材20の厚さに、床下地材30及び中間層40を加えた3層の全体は、厚さが5mm以上20mm以下である。
3層の前記3層からなる全体の厚さが、5mm未満であると、衝撃吸収、歩行感、耐久性のバランスをとることができず、20mmを超えると、長尺塩ビ(通常2~3mm)に対して厚くなりすぎてしまい、施工時のおさまりが悪くなる可能性がある。
【0021】
(絵柄層50)
絵柄層50は、床上材20の表面に位置し、意匠性を付与するものであって、必要に応じて適宜設けられるものである。
絵柄層50は、ポリオレフィンやPVC等の床上材20と同一材料からなるシートに、木目や幾何学模様等の絵柄を施したものである。
【0022】
(表面保護層60)
表面保護層60は、絵柄層50の表面に位置し、耐薬品性、耐傷付き性、耐へこみ性等の耐久性を向上させるように表面を保護するものである。
表面保護層60は、アクリルコートや透明なPVC等からなる。
また、表面保護層60の表面に、エンボス加工(エンボス版を用いた凹凸賦型)を施しても良い。衝撃吸収床材10の表面に、エンボス加工を施すことで、触感による立体感をより感じさせる構成とすることができる。
エンボス模様としては、図示しないが、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0023】
(衝撃吸収床材10の製造方法)
衝撃吸収床材10は、上記構成を備え、次のように製造する。
硬質性材料からなる床上材20と、床上材20の下方に設けられる軟質性材料からなる床下地材30との中間に、硬質材料からなる中間層40を設ける。
床上材20の上面には、絵柄層50を布設し、絵柄層50の上面に表面保護層60を更に布設し、衝撃吸収床材10を製造する。
【0024】
(吸収エネルギー)
床下地材30は、次項で説明する静的圧縮試験を行った時、エネルギーを5J吸収したときの床下地材30の圧縮ひずみを0.8以下とする。
0.8を超えると、床下地材30の発泡層が、エネルギーを吸収するために床が大きくしずみこむこととなり、歩行感に支障をきたす可能性がある。
ここで、「圧縮ひずみ」は、「圧縮ひずみ=変形後の厚みmm/変形前の厚みmm」である。
【0025】
(静的圧縮試験方法)
エネルギーを5J吸収したときの圧縮ひずみは、次の「静的圧縮試験」を用いて測定する。
静的圧縮試験は、図2に示すように、静的圧縮試験機100を用いて、次の条件で行うものである。
(1)サンプル120のサイズ:100mm角
(2)圧縮端子130のサイズ:50mm角
(3)圧縮速度:10m/min
サンプル120を、試験台110に置き、サンプル120の中央に圧縮端子130を置き、徐々に押し込んでいったときの試験力と変位を測定する。
【0026】
吸収エネルギーは、図3に示すように、静的圧縮試験で得られる荷重-変位のSSカーブの下部面積で表わされる(図3参照)。
吸収エネルギーは、荷重を積分することで得られる。
エネルギーを5J吸収したときの床下地材の圧縮ひずみを0.8以下としているが、変位が8mm以上であると、エネルギーを吸収するために床が大きくしずみこむこととなり、歩行感に支障をきたす可能性がある。
【0027】
(50%ひずみ時の圧縮試験力)
衝撃吸収床材10は、上記条件で静的圧縮試験を行ったとき、50%ひずみ時の圧縮試験力が、1200N以上1800N以下とする。
試験力が1800Nを超えると、大きい衝撃を受けたときに床下地材30(衝撃吸収材)が変形し難くなり、大きい衝撃が加わった際に衝撃を十分に吸収することができないことがある。
試験力が1200N未満であると、床が変形し易く、通常の歩行でも変形し、かえって転倒を招いてしまう可能性がある。
【0028】
(衝撃荷重)
衝撃吸収床材10は、次の条件において、衝撃付与体を落下高さから落下させて、緩衝材を介して床材へ衝撃を付与した時に生じる衝撃荷重Fが、2000N以上5000N以下とする。
上記条件は、使用者が転倒した時の大腿骨の転子部に加わる圧力分布に基づく重さ及び形状の衝撃付与体を、使用者の腰の高さに基づいた落下高さから落下させて、人体軟組織を模した材料からなる緩衝材へ衝撃を付与した時に生じる基準衝撃荷重Fsが6500Nとなるように設定されている。
衝撃荷重Fが2000N未満であると、衝撃吸収能が強すぎて歩行し難くなってしまい好ましくなく、5000Nを超えると、衝撃吸収能が弱く、大腿骨骨折リスクに十分に対応することが難しくなるため、好ましくない。
【0029】
(緩衝材)
上記緩衝材は、25℃における測定周波数1Hzでの動的粘弾性Tanδが0.1以上0.7以下のものである。
緩衝材は、厚さが7mm以上80mm以下のものである。
【0030】
(実施形態1の作用・効果)
実施形態の作用・効果は、次の通りである。
(1)本実施形態1によれば、床下地材30は厚さが4mm以上10mm以下であり、 試験力と変位とを測定する静的圧縮試験を行った時、エネルギーを5J吸収したときの床下地材30の圧縮ひずみが0.8以内であることで、軟質材料による吸収効果をもちながらも、耐静荷重性や耐動荷重性といった耐久性も有する衝撃吸収床材を提供できる。
床下地材30は厚さが2mm未満であると、衝撃吸収性が低下し、10mmを超えると、床が大きくしずみこむこととなり、歩行感に支障をきたす可能性がある。
エネルギーを5J吸収したときの床下地材30の圧縮ひずみが、0.8を超えると、エネルギーを吸収するために床が大きくしずみこむこととなり、歩行感に支障をきたす可能性がある。
【0031】
(2)本実施形態1は、静的圧縮試験を行ったとき、50%ひずみ時の圧縮試験力が1200N以上1800N以下である。
試験力が1800Nを超えると、大きい衝撃を受けたときに床下地材30(衝撃吸収材)が変形し難くなり、大きい衝撃が加わった際に衝撃を十分に吸収することができないことがある。
【0032】
(3)本実施形態1によれば、中間層40の厚さが1mm以上3mm以下であり、単位幅における曲げ剛性が0.1Nm2以上10.0Nm2以下である。
中間層40の厚さが1mm0.1Nm2未満であると、剛性及び厚みが足りず、3層化による耐久性及び衝撃吸収性の向上が見込めず、10.0Nm2を超えると、剛性が高すぎる為、歩行時の疲れが大きくなる可能性がある。
【0033】
(4)本実施形態1は、床上材20は厚さが2mm以上10mm以下であり、前記3層からなる全体の厚さが5mm以上20mm以下である
床上材20の厚さが、2mm未満であると、剛性が低下し、10mmを超えると、剛性が高すぎ、衝撃吸収性が低下する。
3層の前記3層からなる全体の厚さが、5mm未満であると、衝撃吸収、歩行感、耐久性のバランスをとることができず、20mmを超えると、長尺塩ビ(通常2~3mm)に対して厚くなりすぎてしまい、施工時のおさまりが悪くなる可能性がある。
【0034】
(5)本実施形態1は、使用者が転倒した時の大腿骨の転子部に加わる圧力分布に基づく重さ及び形状の衝撃付与体を使用者の腰の高さに基づいた落下高さから落下させて、人体軟組織を模した材料からなる緩衝材へ衝撃を付与した時に生じる基準衝撃荷重Fsが6500Nとなるように設定された条件において、衝撃付与体を前記落下高さから落下させて、緩衝材を介して前記衝撃吸収床材10へ衝撃を付与した時に生じる衝撃荷重Fが2000N以上5000N以下となるものである。
衝撃荷重Fが2000N未満であると、衝撃吸収能が強すぎて歩行し難くなってしまい好ましくなく、5000Nを超えると、衝撃吸収能が弱く、大腿骨骨折リスクに十分に対応することが難しくなるため、好ましくない。
【0035】
(6)本実施形態1は、緩衝材が、25℃における測定周波数1Hzでの動的粘弾性Tanδが0.1以上0.7以下のものである。
(7)本実施形態1は、緩衝材が、厚さが7mm以上80mm以下のものである。
【実施例0036】
以下、実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例1~実施例3に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
実施例1の主な条件は、次の表1の通りである。
なお、次の表1には、実施例1の外、実施例2、実施例3、比較例1~比較例3の条件を併記している。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例1は、上記表1の通り、評価床材の落下面のサイズを10000mm2とし、床上材として厚さ2mm、単位幅における曲げ剛性が0.07Nm2の塩化ビニル樹脂性床材を使用し、床下地材として厚さ5mm、C硬度60、発泡倍率5倍の塩化ビニル樹脂発泡体を使用し、中間層として厚さ2mm、曲げ剛性0.51N・m2の硬質塩化ビニル樹脂板を使用し、実施例1の衝撃吸収床材を製作した。
【0040】
(実施例2)
実施例2は、表2に示すように、床下地材を厚さ6.5mm、C硬度50、発泡倍率10倍のPE樹脂発泡体を使用した以外は実施例1と同様に、実施例2の衝撃吸収床材を製作した。
(実施例3)
実施例3は、表2に示すように、床上材を厚さ3mm、単位幅における曲げ剛性が0.5Nm2であること以外は実施例2と同様に、実施例3の衝撃吸収床材を製作した。
【0041】
(比較例1)
比較例1は、表2に示すように、中間層は積層せず、床上材及び床下地材の2層構成とした。それ以外は実施例2と同様に、比較例1の衝撃吸収床材を製作した。
(比較例2)
比較例2は、表2に示すように、中間層を厚さ0.5mm、単位幅における曲げ剛性が0.03Nm2の硬質塩化ビニル樹脂板を使用した以外は実施例1と同様に、比較例2の衝撃吸収床材を製作した。
(比較例3)
比較例3は、表2に示すように、床下地材を厚さ3mmとした以外は実施例3と同様に、比較例3の衝撃吸収床材を製作した。
【0042】
(評価項目)
評価項目は、次の通りである。
なお、次の評価項目については後述する。
(1)5J吸収時ひずみ
(2)50%ひずみ時圧縮試験力[N]
(3)衝撃荷重(N/判定)
(4)耐久性
(5)総合評価
【0043】
(5J吸収時ひずみ)
5J吸収時ひずみは、次の条件で、静的圧縮試験方法を用いて測定した。
100×100mmのサンプルを用意し、その上に50mm角の端子を重ねる。
オートグラフ(AGS-500NX、島津製作所製)で圧縮速度10mm/minにて圧縮していき、その際の試験力、変位を測定した。
5J吸収時、圧縮ひずみは、0.8以内を合格とし、それ以外、すなわち0.8を超える場合を不合格とした。
床下地材の動的粘弾性Tanδ及び複素弾性率E*は、株式会社パーキンエルマー製の動的粘弾性測定装置「DMA8000」(型番)を使用して、25℃における測定周波数1Hzでの圧縮モードによって測定した。
【0044】
(50%ひずみ時圧縮試験力)
50%ひずみ時圧縮試験力は、静的圧縮試験を行ったとき、50%ひずみ時の圧縮試験力を測定した。
50%ひずみ時圧縮試験力は、1200N以上1800N以下を合格とし、それ以外、を不合格とした。
【0045】
(衝撃荷重の測定)
衝撃荷重は、床材上で使用者が転倒したときに使用者の大腿骨に加わる衝撃荷重を模擬的に測定する方法(以下「本件衝撃荷重方法」という。特願2019-192234参照)を用いて測定を行った。
本件測定方法は、床材と同一材料の評価床材の上部に重ねて配置され、人体軟組織に模擬した材料で形成した緩衝材と、模擬する転倒により大腿骨の転子部に加わる圧力分布に基づいた重さの錘と、転子部に模擬した形状に形成した打撃部と、を備え、模擬する転倒の高さに基づいた所定の落下高さで一体化した錘及び打撃部を落下させ、打撃部が緩衝材に接触した状態で錘が評価床材に衝撃を付与し、評価床材に生じた衝撃荷重を荷重計測手段で計測する方法である。
なお、本件衝撃荷重測定方法については後述する。
【0046】
(装置の仕様)
本件衝撃荷重測定方法に用いる装置の仕様は、次の通りである。
(1)ロードセル/株式会社東京測器研究所製「TCLU-5A」(型番)
(2)加速度計/昭和測器株式会社製デジタル衝撃・振動加速度計「1340B」(型番)
(3)測定台/定盤サイズ:750mm×1000mm×125mm 重量:185kg
(4)錘本体部/材質:ステンレス
(5)錘打撃部/材質:ステンレス削り出し曲率半径R:100mm
(6)衝撃付与体/重量Sw:5.85kg(加速度計含む)
(7)衝撃付与体/重量Sw:5.85kg(加速度計含む)
(8)緩衝材/株式会社エクシール製「人肌のゲル」(商品名)
(9)厚さ:20mm アスカーC硬度:7 ヤング率:0.22MPa
(10)動的粘弾性Tanδ:0.24 (25℃,測定周波数1Hz)
【0047】
(衝撃荷重の判定)
衝撃荷重の判定は、以下の通りである。
(1)2110N以下(全年代骨折リスク低)の場合は、「◎」(二重丸)であり、合格である。
(2)2110超3440以下(高齢者骨折リスク低)の場合は、「〇」であり、合格である。
(3)3440超5000以下(高齢者骨折リスク中)の場合は、「△」であり、合格である。
(4)5000超7200以下(高齢者骨折リスク高)の場合には、「×」であり、以下、不合格である。
(5)7200超 (全年代骨折リスク高)の場合には、「××」(「×」が2個)であり、不合格である。
【0048】
(耐久性)
耐久性の試験においては、幅20mm、φ50mmの樹脂製のキャスターの上から20kgの荷重をかけ、キャスターを3000往復させた。
除荷後、外観及びへこみを目視で確認した。
耐久性の判定は、以下の通りである。
(1)除荷後1週間でへこみの復元率95%以上、かつ目視観察にて異常な跡残り等が「無し」の場合には、「○」であり、合格である。
(2)へこみの復元率が95%以内、もしくは目視観察にて異常な跡残りが「有り」の場合には、「×」であり、不合格である。
【0049】
(総合評価)
総合評価の判定は、以下の通りである。
(1)すべての評価項目が合格の場合には、「○」であり、合格である。
(2)上記(1)以外の場合、すなわち評価項目のうち、一つ以上が不合格の場合には、「×」であり、不合格である。
【0050】
(評価結果)
結果を表2に示す通りである。
【0051】
【表2】
【0052】
総合評価が合格したのは、上記した表2に示す通り、実施例1~実施例3である。
これに対し、比較例1~比較例3は、すべて不合格であった。
比較例1及び比較例2は、5J吸収時の床下地材の圧縮ひずみが0.8を超え、高すぎ、又、50%ひずみ時圧縮試験力が1200N未満で、低すぎた。
比較例1は、表1に示すように、中間層を積層しないことが原因と考えられ、中間層が必須であることが推測できる。
比較例2は、表1に示すように、中間層の厚さが0.5mmで薄すぎたことが原因であり、中間層の厚さは0.5mmを超えていることが必要であることが推測できる。
比較例3は、50%ひずみ時圧縮試験力が1800Nを超え、高すぎ、又、衝撃荷重が5000超で高すぎた。
比較例3は、表1に示すように、床下地材の厚さが3mmで薄すぎたことが原因で、床下地材中間層の厚さは、3mmを超えていることが必要であることが推測できる。
【0053】
(本件衝撃荷重測定方法)
本件衝撃荷重測定方法は、次の点を特徴とする。
(1)錘が評価床材に衝撃を付与したときの衝撃エネルギーが5J以上50J以下、好ましくは20J以上40J以下となるように、衝撃時の重さ、落下高さを設定する。
(2)使用者の身長、体重、年齢、性別に基づいて緩衝材の材料を選択する。
(3)緩衝材は、アスカーC硬度が0超16未満、好ましくは5以上10以下の値のものを選択する。
【0054】
(4)緩衝材は、測定周波数1Hzにおける人体軟組織の動的粘弾性値tanδが0.1以上0.7以下、好ましくは0.2以上0.50以下の値のものを選択する。
(5)緩衝材は、剛直な測定台上に当該緩衝材を配置し、錘を落下させて当該緩衝材に衝撃を付与して発生した衝撃荷重が3500N以上10000N以下、好ましくは5000N以上8000N以下の値のものを選択する。
(6)緩衝材は、ヤング率が0.05MPa以上0.80MPa以下、好ましくは0.1MPa以上0.5MPa以下の値のものを選択する。
【0055】
(7)緩衝材は、厚さが7mm以上80mm以下、好ましくは9mm以上30mm以下の値のものを選択する。
(8)緩衝材に接触する打撃部の接触面が、曲率R60mm以上R180mm以下、好ましくは曲率R90mm以上R160mm以下の値の曲面を有する。
(9)衝撃荷重の計測値は、経時的に変化する衝撃荷重の最大値である。
(10)評価床材の表面積は、50cm2以上、好ましくは100cm2以上である。
(11)床材衝撃荷重測定方法を使用した床材安全性評価方法であって、使用者の年齢、性別及び骨密度に基づいて骨折荷重を演算し、骨折荷重と、床材衝撃荷重測定方法で計測した衝撃荷重とを指標として表示する。
【符号の説明】
【0056】
10 衝撃吸収床材
20 床上材
30 床下地材
40 中間層
50 絵柄層
60 表面保護層
60 静的圧縮試験機
70 試験台
80 サンプル
90 圧縮端子
図1
図2
図3