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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071789
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】介護業務管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20220509BHJP
   G16H 40/00 20180101ALI20220509BHJP
【FI】
G06Q10/06 302
G16H40/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020180973
(22)【出願日】2020-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】520049684
【氏名又は名称】株式会社ヘルステクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】520422588
【氏名又は名称】株式会社エフトス
(74)【代理人】
【識別番号】100180080
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 幸男
(72)【発明者】
【氏名】和泉 逸平
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】介護施設における合理的な業務計画の策定や的確な人員配置に資することができる等の介護業務管理システムを提供すること。
【解決手段】介護業務管理システムは、利用者の介護予定を入力するための介護予定入力部11と、入力された介護予定に基づいて必要とされる介護スタッフの業務量を集計する業務量集計部13と、集計された業務量に対し、投入される介護スタッフの労働投入量を比較して分析する業務量分析部15とを備える。分析された業務量と労働投入量との差分が小さくなるように、介護予定を組み替え、また介護スタッフの勤務時間枠やシフト配置を調整する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
介護施設において運用される介護業務管理システムであって、
ユニットグループを構成する複数人の被介護者についての介護予定を入力するための介護予定入力部と、
入力された前記介護予定に基づいて前記ユニットグループにおいて必要とされる介護スタッフの業務量を集計する業務量集計部と、
集計された前記業務量に対し、前記ユニットグループに投入される介護スタッフの労働投入量を比較して分析する業務量分析部と
を備える介護業務管理システム。
【請求項2】
前記業務量と前記労働投入量とを対比可能な態様で表示する表示部を更に備える、請求項1に記載の介護業務管理システム。
【請求項3】
前記業務量と前記労働投入量との差分が小さくなるように前記介護予定を組み替える介護計画編集部を更に備える、請求項1に記載の介護業務管理システム。
【請求項4】
前記業務量と前記労働投入量との差分が小さくなるように前記各介護スタッフの勤務時間枠を変更するシフト調整部を更に備える、請求項1に記載の介護業務管理システム。
【請求項5】
前記介護施設においては前記ユニットグループが複数存在し、
前記シフト調整部が、全ての前記ユニットグループにわたる前記業務量と前記労働投入量との差分の総和が小さくなるように、前記ユニットグループ間で介護スタッフの配置を調整する、請求項4に記載の介護業務管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や老人ホーム等の介護施設における介護業務管理又は当該施設で介護業務を行っている職員(介護スタッフ)の労務管理を、ICTを活用して支援するシステム技術に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や老人ホーム等の多くの要介護者・要支援者(以下、介護・支援を受ける者を「被介護者」という。)が入居する介護施設では、複数人の職員(以下、「介護スタッフ」又は単に「スタッフ」ともいう。)が数分刻みで被介護者ごとに支援内容が異なる様々な業務を行なっている。そのなかでも、とりわけ管理者は、被介護者ごとに記入したカルテ、アセスメントシート及びバイタルデータ等に基づいて、必要かつ無理のない介護業務計画(ケアプラン)の策定、及びそれに対応した介護スタッフの人員配置及びシフト調整等の労務管理も日常業務としている。
【0003】
そのような介護現場での業務管理は、介護業務の効率性・生産性を向上する上で最も重要な要素である一方、担当する管理者にとっては負担が大きいものでもある。このようなケアマネジメントの負担を軽減するため、近年、ICTを活用した業務管理システムの開発が検討されている(例えば特許文献1~4参照)。
【0004】
発明者らは、これまで、介護施設での記録業務の省力化のため、バーコード入力、タブレット端末によるタッチ入力及び自動音声入力機能と、バイタル機器との通信機能とを連携させたシステムの開発に取り組んできた(https://ftcare-i.com参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-035400号公報
【特許文献2】特開2007-233691号公報
【特許文献3】特開2005-050275号公報
【特許文献4】特開2000-003391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らが開発した従来のシステムでは、介護業務の時間の記録と分析をほぼリアルタイムで行うことができる。しかしその一方で、介護業務を更に改善するための現状分析・検討を重ねた結果、新たに少なくとも次の3つの課題・ニーズ(1)~(3)が存在することが顕かとなった。
(1)無理のない介護計画(ケアプラン)の策定に役立つ仕組みが欲しい。現状では、介護スタッフの配置に時間的・量的な無駄がある。スタッフ間でシフト調整のコンセンサスが得られにくく、不満が出やすい。
(2)支援内容やアセスメントを客観的に評価したい。現状では、介護スタッフによってADL評価が異なり基準が統一されていない。
(3)科学的なエビデンスに基づく支援内容決定プロセスを確立したい。現状では、エビデンスが不透明なため決定プロセスが主観的ではないかと疑義が生じている。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、介護施設における業務量を定量的に集計・分析・可視化等することにより、介護スタッフの的確な人員配置若しくはシフト調整を簡便に行えるようにすること、又は当該施設における合理的な介護計画の策定に資することができる等の介護業務管理システム又はその方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、介護施設において運用される介護業務管理システムであって、ユニットグループを構成する複数人の被介護者についての介護予定を入力するための介護予定入力部と、入力された前記介護予定に基づいて前記ユニットグループにおいて必要とされる介護スタッフの業務量を集計する業務量集計部と、集計された前記業務量に対し、前記ユニットグループに投入される介護スタッフの労働投入量を比較して分析する業務量分析部とを備えた介護業務管理システムである。
【0009】
介護業務管理システムは、前記業務量と前記労働投入量とを対比可能な態様で表示する表示部を更に備えることが好ましい。
【0010】
また、介護業務管理システムは、前記業務量と前記労働投入量との差分が小さくなるように前記介護予定を組み替える介護計画編集部を更に備えることが好ましい。
【0011】
また、介護業務管理システムは、前記業務量と前記労働投入量との差分が小さくなるように前記各介護スタッフの勤務時間枠を変更するシフト調整部を更に備ることが好ましい。
【0012】
また、前記介護施設においては前記ユニットグループが複数存在し、介護業務管理システムは、前記シフト調整部が、全ての前記ユニットグループにわたる前記業務量と前記労働投入量との差分の総和が小さくなるように、前記ユニットグループ間で介護スタッフの配置を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、介護施設における合理的な業務計画の策定や的確な人員配置に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ユニット型介護施設の概要を説明するための図である。
図2】本発明の一実施形態による介護業務管理システムの構成を示す機能ブロック図である。
図3】直接介護予定の一例である24時間シートを例示する図である。
図4】間接介護予定の一例である1週間単位の時間割を例示する図である。
図5】介護スタッフの業務量と労働投入量とを比較したグラフを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、ユニット型介護施設(以下、単に「施設」という。)に好適に運用される介護業務管理システムの実施形態を説明する。病院や老人ホーム等では、利用する被介護者(本明細書では「被介護者」を「利用者」又は「入居者」ともいう。)のプライベート空間や個人的な生活環境をできるだけ確保するために、例えば図1に示すように複数の個室と共同生活室を1グループ(このグループを本明細書では「ユニットグループ」という。)とし、そのようなユニットグループを複数配置したユニット型介護施設の形態が主流となっている。すなわち、ユニットグループは、複数人の利用者により構成されるグループであり、各ユニットグループには数人の介護スタッフが直接介護の担当として配置される。なお、1人の介護スタッフが複数のユニットグループにまたがって担当を兼任する場合もある。床数が数十以上ある大・中規模の施設では、入居者をこのような複数のユニットグループに分けて介護・支援を行うことにより、サービスの質の低下を招くことなくスタッフの業務の効率化が図られている。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態による介護業務管理システムの構成を示す機能ブロック図である。本実施形態による介護業務管理システムは、施設に勤務する職員の業務記録及び労務管理等を統合して行えるコンピュータシステムとして構築される。また、以下説明する介護業務管理システムの各処理部の機能は、施設のローカルネットワークシステムで実現されてもよく、又はインターネット上のクラウド管理サーバにより提供されてもよい。
【0017】
図2に示される介護業務管理システムは、介護予定入力部11と、介護記録入力部12と、業務量集計部13と、勤務表入力部14と、業務量分析部15と、表示部16と、介護計画編集部17と、シフト調整部18と、データベース20とを備えている。
【0018】
介護予定入力部11は、ユニットグループを構成する複数人の利用者についての介護予定をシステムに入力するための入力処理部であり、より詳細には、利用者ごとの直接介護予定を入力するための直接介護予定入力部111と、ユニットグループごとの間接介護予定を入力するための間接介護予定入力部112とを有している。介護予定入力部11は、本システムに接続するパソコンやタブレット等の端末装置に組み込まれたヒューマンインタフェースとして機能する。
【0019】
ここで、直接介護予定とは、利用者ごとに定めた1日の予定の時間割であり、例えば図3に示すような従来用いられている24時間シートに記載される内容が相当する。介護スタッフ又は管理者は、各利用者のニーズや支援内容に応じて、直接介護予定入力部111がシステムのパソコン(直接介護予定入力部111)のディスプレイに表示する24時間フォームを介して、当該利用者の日課や時間を入力したり、予定の追加・削除・時間変更等の編集を行うことができる。また、当該利用者にサポートが必要なことや留意すべきこと等のアセスメントや申し送り事項等も入力可能である。
【0020】
また、間接介護予定とは、ユニットグループごとに定められる予定であり、例えば図4に示す1週間単位又は月単位の時間割に記載される内容が相当する。ユニットグループを担当するスタッフのリーダ又は管理者は、他のユニットグループの予定やスタッフの業務量等を考慮しながら、パソコン等のディスプレイに表示する1週間フォームに予定を記入したり日程の調整を行うことができる。
【0021】
次に、介護記録入力部12は、施設に勤務するスタッフの介護・支援業務の記録をシステムに入力するための入力処理部である。1日の業務記録はパソコン又はタブレット等に手入力されてもよいが、入力作業の省力化・ペーパレス化等を図るため、携帯端末機器を使ったバーコード入力、タッチ入力及び音声入力等の各種入力補助機能を導入してもよい。また、Bluetooth(登録商標)等の無線通信を介してバイタル機器等の各種センサと連動させれば、記録業務の更なる自動化及び省力化を図ることができる。
【0022】
介護予定入力部11及び介護記録入力部12に入力された情報は、業務量集計部13により集計・統合されて、データベース20に業務予定・実績記録データ21として保管される。また、これらの集計結果は、業務量分析部15に転送され、例えば介護支援時間チャート22の態様で表示部16に表示することができる。なお、表示部16は、介護業務管理システムのネットワークに接続するパソコン、タブレット、スマートフォン等の端末装置のディスプレイを用いることができる。
【0023】
また、業務量集計部13は、介護予定入力部11に入力された利用者ごとの直接介護予定と、間接介護予定とに基づいて、ユニットグループにおいて必要とされる介護スタッフの所定時間単位ごとの業務量を集計する処理を行う。ここで、「所定時間単位ごと」とは、例えば午前9時から10時までの1時間、午前10時から11時までの1時間、・・・といった1時間単位でもよいし、より細かくして10分~30分単位で業務量を集計してもよい。また、スタッフ人員の補充・削減やシフト配置の見直し等を分析する場合には、所定時間単位を1日、1週間又は1カ月といった、ある程度長い期間に設定してもよい。
【0024】
また、介護スタッフの業務量は、下記の数式(1)に従って、介護・支援サービスにかかる時間Tと、その介護・支援サービスを必要とする被介護者の人数Uと、1人の被介護者に対し直接介護を担当するスタッフの人数Sとを掛け合わせて換算することができる。

介護スタッフの業務量(時間・人)=T×U×S ・・・数式(1)
T:介護・支援サービスにかかる時間
U:介護・支援サービスを必要とする被介護者の人数
S:1人の被介護者に対し直接介護を担当するスタッフの人数
【0025】
例えば、6人の利用者で構成されるユニットグループにおいて、そのうち30分間(T=0.5)の食事に直接介護が必要な被介護者の人数が4人(U=4)であり、スタッフ1人で同時に2人の被介護者の食事支援を行う場合(S=0.5)、この食事支援の業務量は1.0時間・人となる。
【0026】
業務量集計部13は、施設に複数あるユニットグループごとに、上述の所定時間単位で必要とされる業務量を、予定が組まれている期間(好ましくは1箇月かそれ以上)にわたり集計することができる。また、各ユニットグループの業務量を合計すれば、施設全体で必要となる介護スタッフの業務量を、数十分刻みで把握することもできる。
【0027】
次に、スタッフの勤務表を介護業務管理システムに入力するための勤務表入力部14を説明する。勤務表入力部14は、システムのネットワークに接続するパソコンやタブレット等の端末装置上で動作させることができる。入力される勤務表には、介護スタッフの識別情報(識別情報は、氏名、職員番号を含む。)と、当該介護スタッフの勤務時間情報(勤務時間情報は、出勤時間、退勤時間、勤務時間枠、休憩時間を含む。)と、当該介護スタッフが担当するユニットグループの情報とが関連付けられている。管理者又は介護スタッフ本人は、端末装置のディスプレイに表示された勤務表フォームを介して、当該介護スタッフの勤務時間枠を入力したり移動したりすることができる。また、勤務表入力部14は、複数人の介護スタッフの勤務時間枠を時間軸に沿って並べたシフト配置表を作成することもできる。更に、勤務表入力部14は、シフト配置表フォームを介した手入力により、対象の介護スタッフの勤務時間を個別に設定させることもできるし、また時間帯によってユニットグループに人員不足が生じる場合には、他のユニットグループとの間でスタッフの配置を適宜に調整させることもできる。
【0028】
勤務表入力部14は、入力された介護スタッフの勤務表データを業務量分析部15に出力する。業務量分析部15は、業務量集計部13において集計された、ユニットグループを担当する介護スタッフの業務量と、当該ユニットグループに投入される介護スタッフの労働投入量とを分析し、例えば図5に示すような比較グラフ23を作成して、視覚的に対比可能な態様で表示部16に表示する。
【0029】
なお、ここでいう労働投入量とは、ユニットグループに投入される介護スタッフの人数と勤務時間を掛け合わせた量であり、入力された勤務表又はシフト配置表に基づいて集計される。また、図5において、介護スタッフの業務量は棒グラフで示され、労働投入量は線グラフで示されている。
【0030】
また、労働投入量を集計する「所定時間単位」は、上述した業務量の集計に用いた所定時間単位と一致させることが好ましい。すなわち、例えば午前10時から11時までの1時間枠で投入される介護スタッフの人数が2人の場合には、当該時間枠における労働投入量は2時間・人と集計する。
【0031】
このように、ユニットグループにおいて集計された介護スタッフの業務量に対し、当該ユニットグループに投入される介護スタッフの労働投入量を所定単位時間ごとに比較することにより、どの時間帯に介護スタッフ人員の過不足が生じるか又は人員の過不足が生じていたのかを明確に分かりやすく、見える化することができる。
【0032】
介護計画編集部17は、業務量分析部15により分析された介護スタッフの業務量と労働投入量との差分の和が小さくなるように、利用者ごとの介護予定データ21を組み替える処理を行う。具体的には、利用者ごとに異なる介護・支援の必要性や要望等のアセスメントをベースに介護予定の組み替えパターンをいくつか試行し、それぞれのパターンでスタッフ人員の過不足分析を繰り返し検証する、いわゆる試行錯誤的なシミュレーションにより最適解を求めることが好ましい。
【0033】
また、シフト調整部18は、業務量分析部15により分析された介護スタッフの業務量と労働投入量との差分の和が小さくなるように、各介護スタッフの勤務時間(具体的には勤務表又はシフト配置表)を変更する処理を行ってもよい。更にシフト調整部18は、施設の全てのユニットグループにわたる介護スタッフの業務量と労働投入量との差分の総和が小さくなるように、ユニットグループ間で介護スタッフの配置を調整してもよい。このような介護スタッフの勤務時間調整やシフト調整の最適化処理においても、各利用者のアセスメントを最優先に考慮しながら、業務量分析部15にフィードバックされたシフト配置表24に基づいてスタッフ人員の過不足分析を繰り返し試行することが好ましい。
【0034】
以上、一例として、ユニット型介護施設において運用される介護業務管理システムを説明したが、本システムは、多床室介護施設、小規模多機能型居宅介護施設、老人保健施設、認知症対応型グループホーム、有料老人ホーム等における介護業務管理にも応用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
11 介護予定入力部
12 介護記録入力部
13 業務量集計部
14 勤務表入力部
15 業務量分析部
16 表示部
17 介護計画編集部
18 シフト調整部
20 データベース
21 業務予定・実績記録データ
22 介護支援時間チャート
23 業務量と労働投入量とを比較したグラフ
24 シフト配置表
図1
図2
図3
図4
図5