(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071829
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】温調装置及び温調方法
(51)【国際特許分類】
B65B 51/10 20060101AFI20220509BHJP
B65B 51/14 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B65B51/10 210
B65B51/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163034
(22)【出願日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2020180818
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517018101
【氏名又は名称】公立大学法人山陽小野田市立山口東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000222727
【氏名又は名称】PACRAFT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】海野 ▲徳▼幸
(72)【発明者】
【氏名】結城 和久
【テーマコード(参考)】
3E094
【Fターム(参考)】
3E094AA12
3E094CA06
3E094CA12
3E094DA06
3E094GA01
3E094HA02
3E094HA08
(57)【要約】
【課題】対象物の加熱及び冷却を迅速に行うのに有利な温調装置温調装置及び温調方法温調方法を提供する。
【解決手段】温調装置は、第1圧着部11、温調流体供給装置30及び圧力調整装置50を備える。第1圧着部11は第1流通路13を有する。温調流体供給装置30は、第1流通路13に気体状の温調流体を供給することで、第1圧着面15を、第1加熱温度に調整する。圧力調整装置50は、第1流通路13における液状の温調流体の気化を促すように第1流通路13の内部圧力を下げることで、第1圧着面15を第1加熱温度よりも低い温度に調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流通路と、対象物に接触させられる第1圧着面と、を有する第1圧着部と、
前記第1流通路に気体状の温調流体を供給して前記第1圧着部のうち前記第1流通路を区画する内壁面において当該温調流体を凝縮させ、前記第1圧着面を第1加熱温度に調整する温調流体供給装置と、
前記第1流通路における液状の前記温調流体の気化を促すように前記第1流通路の内部圧力を下げることで、前記第1圧着面を前記第1加熱温度よりも低い温度に調整する圧力調整装置と、を備える温調装置。
【請求項2】
前記温調流体供給装置は、前記第1流通路に連通する温調流体供給路と、前記温調流体供給路を開閉する供給開閉部と、を有し、
前記圧力調整装置は、前記第1流通路に連通する温調流体排出路と、前記温調流体排出路を開閉する排出開閉部と、を有し、
前記温調流体供給装置は、前記温調流体を、前記温調流体供給路を介して前記第1流通路に供給し、
前記圧力調整装置は、前記第1流通路における気体を、前記温調流体排出路を介して吸引することで、前記第1流通路の内部圧力を下げ、
前記供給開閉部が前記温調流体供給路を開閉することによって、前記第1流通路に対する前記温調流体の供給量が調整され、
前記排出開閉部が前記温調流体排出路を開閉することによって、前記第1流通路の内部圧力が調整される請求項1に記載の温調装置。
【請求項3】
前記第1流通路は、前記温調流体の相変化を促す壁面により区画される請求項1又は2に記載の温調装置。
【請求項4】
第2流通路と、前記対象物に接触させられる第2圧着面と、を有する第2圧着部を更に備え、
前記温調流体供給装置は、前記第2流通路に気体状の温調流体を供給することで、前記第2圧着面を、第2加熱温度に調整し、
前記圧力調整装置は、前記第2流通路における液状の前記温調流体の気化を促すように前記第2流通路の内部圧力を下げることで、前記第2圧着面を前記第2加熱温度よりも低い温度に調整する請求項1~3のいずれか一項に記載の温調装置。
【請求項5】
第1圧着部が有する第1流通路に気体状の温調流体を供給して前記第1圧着部のうち前記第1流通路を区画する内壁面において当該温調流体を凝縮させ、前記第1圧着部の第1圧着面を第1加熱温度に調整する工程と、
前記第1圧着部の前記第1圧着面が対象物に接触する工程と、
前記第1流通路における液状の前記温調流体の気化を促すように前記第1流通路の内部圧力を下げることで、前記第1圧着面を前記第1加熱温度よりも低い温度に調整する工程と、を含む温調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温調装置及び温調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
袋体の口部を接合する熱接合技術が広く利用されている。
【0003】
特許文献1が開示するシール装置では、シール部の流通部に熱媒体が流されることにより、シール部の圧着部と熱媒体との間で熱交換が行われて、圧着部が加熱される。一方、流通部に冷却媒体が流されることによって、圧着部が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシール装置では、圧着部を加熱する際には流通部に熱媒体が流され、圧着部を冷却する際には流通部に冷却媒体が流される。
【0006】
そのため、流通部に熱媒体を供給するための機構に加え、流通部に冷却媒体を供給するための機構を設置する必要である。
【0007】
また共通の流通部に熱媒体及び冷却媒体の両者を流すため、流通部に流す流体を熱媒体と冷却媒体との間で切り換えるための機構を設置する必要がある。
【0008】
そして、流通部に熱媒体が流れている状態から、流通部に流す流体を熱媒体から冷却媒体に切り換えて、流通部に冷却媒体を実際に流すことができるまでには、相応の時間を要する。
【0009】
本開示は上述の事情に鑑みてなされたものであり、対象物の加熱及び冷却を迅速に行うのに有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、第1流通路と、対象物に接触させられる第1圧着面と、を有する第1圧着部と、前記第1流通路に気体状の温調流体を供給して前記第1圧着部のうち前記第1流通路を区画する内壁面において当該温調流体を凝縮させ、前記第1圧着面を第1加熱温度に調整する温調流体供給装置と、前記第1流通路における液状の前記温調流体の気化を促すように前記第1流通路の内部圧力を下げることで、前記第1圧着面を前記第1加熱温度よりも低い温度に調整する圧力調整装置と、を備える温調装置に関する。
【0011】
本開示の他の態様は、第1圧着部及び第2圧着部であって、第1圧着部が第1流通路を有し、第1圧着部の第1圧着面及び第2圧着部の第2圧着面が対象物に接触しつつ当該対象物を挟む、第1圧着部及び第2圧着部と、第1流通路に気体状の温調流体を供給して第1圧着部のうち第1流通路を区画する内壁面において当該温調流体を凝縮させ、第1圧着面を、第1加熱温度に調整する温調流体供給装置と、第1流通路における液状の温調流体の気化を促すように第1流通路の内部圧力を下げることで、第1圧着面を第1加熱温度よりも低い温度に調整する圧力調整装置と、を備える温調装置に関する。
【0012】
温調流体供給装置は、第1流通路に連通する温調流体供給路と、温調流体供給路を開閉する供給開閉部と、を有し、圧力調整装置は、第1流通路に連通する温調流体排出路と、温調流体排出路を開閉する排出開閉部と、を有し、温調流体供給装置は、温調流体を、温調流体供給路を介して第1流通路に供給し、圧力調整装置は、第1流通路における気体を、温調流体排出路を介して吸引することで、第1流通路の内部圧力を下げ、供給開閉部が温調流体供給路を開閉することによって、第1流通路に対する温調流体の供給量が調整され、排出開閉部が温調流体排出路を開閉することによって、第1流通路の内部圧力が調整されてもよい。
【0013】
第2圧着部は、第2流通路を有し、温調流体供給装置は、第2流通路に気体状の温調流体を供給することで、第2圧着面を、第2加熱温度に調整し、圧力調整装置は、第2流通路における液状の温調流体の気化を促すように第2流通路の内部圧力を下げることで、第2圧着面を第2加熱温度よりも低い温度に調整してもよい。
【0014】
温調装置は、第2流通路と、対象物に接触させられる第2圧着面と、を有する第2圧着部を更に備え、温調流体供給装置は、第2流通路に気体状の温調流体を供給することで、第2圧着面を、第2加熱温度に調整し、圧力調整装置は、第2流通路における液状の温調流体の気化を促すように第2流通路の内部圧力を下げることで、第2圧着面を第2加熱温度よりも低い温度に調整してもよい。
【0015】
本開示の他の態様は、第1圧着部が有する第1流通路に気体状の温調流体を供給して第1圧着部のうち第1流通路を区画する内壁面において当該温調流体を凝縮させ、第1圧着部の第1圧着面を第1加熱温度に調整する工程と、第1圧着部の第1圧着面が対象物に接触する工程と、第1流通路における液状の温調流体の気化を促すように第1流通路の内部圧力を下げることで、第1圧着面を第1加熱温度よりも低い温度に調整する工程と、を含む温調方法に関する。
【0016】
本開示の他の態様は、第1圧着部が有する第1流通路に気体状の温調流体を供給して第1圧着部のうち第1流通路を区画する内壁面において当該温調流体を凝縮させ、第1圧着部の第1圧着面を、第1加熱温度に調整する工程と、第1圧着部の第1圧着面及び第2圧着部の第2圧着面が対象物に接触しつつ当該対象物を挟む工程と、第1流通路における液状の温調流体の気化を促すように第1流通路の内部圧力を下げることで、第1圧着面を第1加熱温度よりも低い温度に調整する工程と、を含む温調方法に関する。
【0017】
第1流通路および第2流通路は、温調流体の相変化を促す壁面により区画されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、対象物の加熱及び冷却を迅速に行うのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、温調装置の応用例の1つである袋の接合装置の一例の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す接合装置によって接合処理が施されている袋の一例を拡大して示す側方図である。
【
図3】
図3は、接合装置の作動例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、接合装置の作動例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、接合装置の作動例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、接合装置の作動例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、接合装置の作動例を示す平面図である。
【
図8】
図8は、接合装置の作動例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、第1変形例に係る第1圧着部の断面構造を拡大して例示する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照して、袋の接合を行う接合装置及び接合方法について説明する。なお、以下の袋の接合を行う接合装置及び接合方法は、対象物の温調を行う温調装置及び温調方法の具体例として示されているに過ぎない。下記技術は、対象箇所の温度を迅速に上げたり下げたりする温調装置及び温調方法全般に、応用可能である。
【0021】
図1は、接合装置10の一例の概略構成を示す平面図である。
図2は、
図1に示す接合装置10によって接合処理が施されている袋Bの一例を拡大して示す側方図である。
【0022】
本実施形態の接合装置10は、袋Bの熱接合(特に口部B1のヒートシール)を行う装置であり、第1圧着部11、第2圧着部12、温調流体供給装置30及び圧力調整装置50を備える。
【0023】
第1圧着部11は第1移動部21によって移動可能に設けられており、第2圧着部12は第2移動部22によって移動可能に設けられている。第1圧着部11が有する第1圧着面15及び第2圧着部12が有する第2圧着面16は、お互いに向かい合っており、第1圧着面15と第2圧着面16との間に位置付けられた袋B(本例では口部B1)を挟むことで、当該袋Bを熱接合する。
【0024】
第1移動部21及び第2移動部22は、任意の装置によって構成可能であり、例えばエアシリンダによって構成されてもよい。
図1に示す第1移動部21は、第1移動本体部21aと、第1移動本体部21aから突出する第1移動突出部21bとを有する。同様に、
図1に示す第2移動部22は、第2移動本体部22aと、第2移動本体部22aから突出する第2移動突出部22bとを有する。制御装置20の制御下で、第1移動部21は、第1移動本体部21aからの第1移動突出部21bの突出量を変え、第2移動部22は、第2移動本体部22aからの第2移動突出部22bの突出量を変える。第1移動突出部21bの進退方向及び第2移動突出部22bの進退方向は、第1圧着面15及び第2圧着面16の対向方向と一致しており、
図1に示す例では水平方向(すなわち
図1の上下方向)である。
【0025】
第1圧着部11は、第1移動突出部21bの先端部に取り付けられており、第1移動突出部21bの突出量に応じた位置に配置され、例えば袋Bに接触する伸長位置(すなわち閉位置)及び袋Bから離れた退避位置(すなわち開位置)に配置される。同様に、第2圧着部12は、第2移動突出部22bの先端部に取り付けられており、第2移動突出部22bの突出量に応じた位置に配置され、例えば袋Bに接触する伸長位置(すなわち閉位置)及び袋Bから離れた退避位置(すなわち開位置)に配置される。
【0026】
第1圧着部11は、第1圧着部11の本体部11aを貫通する第1流通路13を有する。第2圧着部12は、第2圧着部12の本体部12aを貫通する第2流通路14を有する。第1流通路13は第1圧着面15に沿って第1圧着面15と平行に延び、第2流通路14は第2圧着面16に沿って第2圧着面16と平行に延びる。ただし、第1流通路13は必ずしも第1圧着面15に沿って延びていなくてもよいし、第2流通路14は必ずしも第2圧着面16に沿って延びていなくてもよい。第1流通路13及び第1圧着面15はお互いに非平行に延びていてもよいし、第2流通路14及び第2圧着面16はお互いに非平行に延びていてもよい。
【0027】
温調流体供給装置30は、第1流通路13及び第2流通路14に気体状の温調流体(熱交換媒体)を供給することで、第1圧着面15を第1加熱温度に調整し、第2圧着面16を第2加熱温度に調整する。特に、温調流体が流路内壁面で気体から液体に相変化する際に放出する凝縮熱を利用することによって、第1圧着面15及び第2圧着面16を迅速に加熱することができる。なお第1流通路13及び第2流通路14に気体状の温調流体が供給される際、当該気体状の温調流体に液体状態(例えば液粒状態)の温調流体が混合していてもよく、湿り蒸気の形態の温調流体が第1流通路13及び第2流通路14に供給されてもよい。
【0028】
第1加熱温度及び第2加熱温度は、限定されないが、第1圧着面15及び第2圧着面16に接触して挟まれた袋Bを熱接合することができる温度であり、袋B(特に接合箇所)の融点以上の温度であることが好ましい。第1加熱温度及び第2加熱温度は同じ温度である必要はなく、お互いに異なる温度であってもよい。第1加熱温度及び第2加熱温度は、袋Bの口部B1の熱接合を可能にする温度であればよく、必ずしも特定の温度である必要はなく、環境温度等の条件に応じて変動しうる。
【0029】
温調流体は、任意の流体によって構成可能である。水は、比較的安価に入手可能であり、環境に対する影響も小さく、潜熱も大きいことから、温調流体として適切に使用することが可能である。例えば温調流体として水(特に水蒸気)を用いる場合、第1加熱温度及び第2加熱温度は100℃~180℃程度(例えば120℃~150℃程度)としうる。
【0030】
このように第1流通路13及び第2流通路14を流れる温調流体から伝えられる熱(温調流体が凝縮する際に発せられる熱(凝縮熱)を含む)によって、第1圧着面15及び第2圧着面16の温度が迅速に上げられる。また、後述のように、第1圧着部11及び第2圧着部12の内壁面に付着した液状の温調流体の気化熱を利用して、第1圧着面15及び第2圧着面16の温度が迅速に下げられる。そのため、第1圧着部11(特に第1流通路13と第1圧着面15との間に位置する本体部11a)及び第2圧着部12(特に第2流通路14と第2圧着面16との間に位置する本体部12a)は、熱伝導性(熱交換性)に優れた材料(すなわち熱伝導率の大きい材料(例えば銅))によって構成されることが好ましい。
【0031】
図1に示す温調流体供給装置30は、温調流体供給源31と、第1流通路13に連通する第1温調流体供給路32と、第1温調流体供給路32を開閉する第1供給開閉部(例えば開閉弁)33と、第2流通路14に連通する第2温調流体供給路34と、第2温調流体供給路34を開閉する第2供給開閉部(例えば開閉弁)35とを有する。
【0032】
温調流体供給源31は、合流供給路36を介して第1温調流体供給路32に接続されており、合流供給路36を介して第1温調流体供給路32に気体状の温調流体を送り出す。また温調流体供給源31は、合流供給路36を介して第2温調流体供給路34に接続されており、合流供給路36を介して第2温調流体供給路34に気体状の温調流体を送り出す。温調流体供給源31から送り出される温調流体の温度は限定されないが、本例では第1加熱温度以上及び第2加熱温度以上の温度を持つ温調流体が温調流体供給源31から合流供給路36に送り出される。
【0033】
第1流通路13に対する温調流体の供給量及び圧力は、制御装置20の制御下で第1供給開閉部33が第1温調流体供給路32を開閉することによって調整される。同様に、第2流通路14に対する温調流体の供給量及び圧力は、制御装置20の制御下で第2供給開閉部35が第2温調流体供給路34を開閉することによって調整される。
【0034】
このように温調流体供給装置30は、温調流体供給源31から送り出される温調流体(例えば水蒸気)を、合流供給路36及び第1温調流体供給路32を介して第1流通路13に供給し、合流供給路36及び第2温調流体供給路34を介して第2流通路14に供給する。なお
図1に示す例では、第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34が共通の温調流体供給源31に接続されているが、別体として設けられた複数(2つ)の温調流体供給源31に第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34のそれぞれが接続されてもよい。この場合、第1流通路13及び第2流通路14には、異なる温調流体供給源31から送り出される温調流体が第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34のそれぞれを介して供給される。
【0035】
圧力調整装置50は、第1流通路13における液状の温調流体の気化を促すように第1流通路13の内部圧力を下げることで、第1圧着面15を第1加熱温度よりも低い温度に調整する。また圧力調整装置50は、第2流通路14における液状の温調流体の気化を促すように第2流通路14の内部圧力を下げることで、第2圧着面16を第2加熱温度よりも低い温度に調整する。具体的には、第1流通路13の温度及び第2流通路14の温度よりも温調流体の飽和温度の方が低くなるように、圧力調整装置50は、第1流通路13及び第2流通路14の各々の内部圧力を下げる。例えば、接合装置10の周辺の温度(すなわち環境温度;例えば常温(5℃~35℃))よりも温調流体の飽和温度の方が低くなるように、圧力調整装置50は、第1流通路13及び第2流通路14の各々の内部圧力を下げてもよい。
【0036】
図1に示す圧力調整装置50は、圧力調整源51と、第1流通路13に連通する第1温調流体排出路52と、第1温調流体排出路52を開閉する第1排出開閉部(例えば開閉弁)53と、第2流通路14に連通する第2温調流体排出路54と、第2温調流体排出路54を開閉する第2排出開閉部(例えば開閉弁)55とを有する。
【0037】
圧力調整源51は、合流排出路56を介して第1温調流体排出路52及び第2温調流体排出路54の各々に接続され、また放出路57に接続されている。圧力調整装置50(具体的には圧力調整源51)は、第1流通路13における気体を、第1温調流体排出路52及び合流排出路56を介して吸引することで、第1流通路13の内部圧力を下げる。同様に、圧力調整装置50(具体的には圧力調整源51)は、第2流通路14における気体を、第2温調流体排出路54及び合流排出路56を介して吸引することで、第2流通路14の内部圧力を下げる。なお
図1に示す例では、第1温調流体排出路52及び第2温調流体排出路54が共通の圧力調整源51に接続されているが、別体として設けられた複数(2つ)の圧力調整源51に第1温調流体排出路52及び第2温調流体排出路54のそれぞれが接続されてもよい。この場合、第1流通路13及び第2流通路14における気体は、第1温調流体排出路52及び第2温調流体排出路54のそれぞれを介して異なる圧力調整源51によって吸引され、第1流通路13及び第2流通路14の内部圧力が下げられる。
【0038】
圧力調整源51は、第1流通路13及び第2流通路14から吸引した気体を、放出路57に放出する。放出路57は、圧力調整源51から送られてくる気体を案内し、後段に設けられた装置に当該気体を導いてもよいし、大気中に当該気体を放出してもよい。圧力調整源51は、任意の機器によって構成可能であり、例えば真空アスピレータや真空ポンプを圧力調整源51に用いることが可能である。圧力調整源51の前後には凝縮器(図示省略)が設けられていてもよい。具体的には、圧力調整源51と第1排出開閉部53との間の第1温調流体排出路52、圧力調整源51と第2排出開閉部55との間の第2温調流体排出路54、合流排出路56及び/又は放出路57に、気体に含まれる温調流体を液体化する凝縮器が設けられていてもよい。圧力調整源51よりも上流側(すなわち第1温調流体排出路52、第2温調流体排出路54及び/又は合流排出路56)に凝縮器を設置することで、圧力調整源51に流入する温調流体量が低減し、温調流体に起因する圧力調整源51の故障を有効に防ぐことができる。圧力調整源51よりも下流側(すなわち放出路57)に凝縮器を設置することで、後段に送られる温調流体を低減することができる。
【0039】
第1流通路13の内部圧力は、制御装置20の制御下で、第1供給開閉部33が第1温調流体供給路32を開閉することによって且つ第1排出開閉部53が第1温調流体排出路52を開閉することによって、調整される。同様に、第2流通路14の内部圧力は、制御装置20の制御下で、第2供給開閉部35が第2温調流体供給路34を開閉することによって且つ第2排出開閉部55が第2温調流体排出路54を開閉することによって調整される。特に、第1流通路13及び第2流通路14の内部圧力を下げる場合には、第1排出開閉部53は第1温調流体排出路52を開き、第2排出開閉部55は第2温調流体排出路54を開く。
【0040】
制御装置20は、第1移動部21、第2移動部22、第1供給開閉部33、第2供給開閉部35、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55を制御する。また制御装置20は、他の装置を制御してもよく、例えば温調流体供給源31、圧力調整源51及び袋支持部70を制御してもよい。
【0041】
袋Bは袋支持部70により支持された状態で、接合予定箇所(本例では口部B1)が第1圧着面15と第2圧着面16との間に位置付けられる。
図2に示す袋支持部70は、口部B1(特に第1圧着部11及び第2圧着部12により接触されて挟まれる箇所)よりも下方において袋Bの両側部B3(特にシール部Bsを含む範囲)を挟むことで、袋Bを吊り下げ状態で保持する。したがって袋Bが袋支持部70により支持されている状態で、袋Bの底部B2は、口部B1よりも下方に位置する。
【0042】
袋Bの材質、形状及びサイズ(厚みを含む)は限定されず、例えばバイオマス材料やモノマテリアルによって袋Bを構成することができる。ただし袋Bは、第1加熱温度に加熱された第1圧着面15及び第2加熱温度に加熱された第2圧着面16により挟まれることによって熱接合されることが可能な特性(例えば融点等)を有する。袋Bの内側には、内容物が収容されていてもよいし、内容物が収容されていなくてもよい。図示の袋Bの底部B2及び各側部B3では、袋Bの表側壁面部及び裏側壁面部はお互いに貼り合わされて(例えば熱溶着されて)、シール部Bsが形成されている。
【0043】
次に、接合装置10の作動例について説明する。以下に説明する接合方法は、制御装置20の制御下で接合装置10の各要素が適宜駆動されることによって行われる。
【0044】
図3~
図8は、接合装置10の作動例を示す平面図である。
【0045】
接合装置10によって袋B(本実施形態では口部B1を形成する表側壁面部及び裏側壁面部)を接合する場合、
図3に示すように、第1圧着部11の第1圧着面15と第2圧着部12の第2圧着面16との間に、袋Bの口部B1が位置付けられる(準備工程)。
【0046】
具体的には、第1移動突出部21b及び第2移動突出部22bの各々の突出量が低減されることによって、第1圧着部11及び第2圧着部12はお互いから離れた開位置に配置され、第1圧着面15と第2圧着面16との間にスペースが作られる。そして袋支持部70により支持されている袋Bが袋支持部70とともに移動し、第1圧着面15と第2圧着面16との間のスペースに袋Bの口部B1が位置付けられる。
【0047】
一方、温調流体供給装置30は、第1流通路13に気体状の温調流体を供給することで第1圧着面15を第1加熱温度に調整し、第2流通路14に気体状の温調流体を供給することで第2圧着面16を第2加熱温度に調整する(昇温工程)。
【0048】
一例として、昇温工程では、まず、第1供給開閉部33及び第2供給開閉部35が閉状態に置かれつつ、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55が開状態に置かれる。すなわち、第1供給開閉部33によって第1温調流体供給路32が閉じられ、第2供給開閉部35によって第2温調流体供給路34が閉じられ、第1排出開閉部53によって第1温調流体排出路52が開かれ、第2排出開閉部55によって第2温調流体排出路54が開かれる。これにより第1流通路13及び第2流通路14に新たな温調流体が供給されない状態で、圧力調整源51によって、第1流通路13における気体が第1温調流体排出路52及び合流排出路56を介して放出路57に送られ、第2流通路14における気体が第2温調流体排出路54及び合流排出路56を介して放出路57に送られる。その結果、第1流通路13及び第2流通路14は、真空状態に置かれる。
図3に示す矢印は、気体の流れを示す。
【0049】
その後、第1流通路13及び第2流通路14が真空に置かれている状態で、第1供給開閉部33及び第2供給開閉部35は開状態に置かれる。一方、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55が閉状態に置かれる。この際、第1供給開閉部33及び第2供給開閉部35を開状態に置くタイミングと、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55を閉状態に置くタイミングとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1供給開閉部33及び第2供給開閉部35を開状態に置いた後に、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55を閉状態に置いてもよい。これにより第1流通路13及び第2流通路14には、温調流体供給源31から第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34のそれぞれを介し、気体状の温調流体が供給されて充填される。
【0050】
このようにして第1流通路13及び第2流通路14には高温の温調流体が供給され、温調流体の熱が第1圧着部11及び第2圧着部12に伝わって、第1圧着面15及び第2圧着面16は昇温される。特に、第1流通路13及び第2流通路14の区画壁面で温調流体が気体から液体に相変化することで発せられる凝縮熱によって、第1圧着面15及び第2圧着面16は効率的且つ迅速に昇温される。また第1流通路13及び第2流通路14が真空の状態で第1流通路13及び第2流通路14に温調流体の供給が開始されるため、第1供給開閉部33及び第2供給開閉部35を開状態に置いた直後に、第1流通路13及び第2流通路14に温調流体が勢いよく流入する。また第1流通路13及び第2流通路14が真空の状態で第1流通路13及び第2流通路14の温度が低い場合(例えば環境温度の場合)、温調流体は第1流通路13及び第2流通路14に流入直後から第1流通路13及び第2流通路14の区画壁面において凝縮し、第1圧着面15(本体部11a)及び第2圧着面16(本体部12a)を昇温させることができる。したがって、
図4及び
図5には図示が省略されているが、実際には、
図4及び
図5に示す段階において、第1圧着部11及び第2圧着部12の内壁面(すなわち第1流通路13及び第2流通路14の区画壁面)に温調流体Lの液滴(
図6参照)が存在しうる。
【0051】
このようにして、第1圧着面15及び第2圧着面16はそれぞれ第1加熱温度及び第2加熱温度に調整される。第1圧着面15が第1加熱温度に到達した後も、第1供給開閉部33は開状態に保たれ、第1排出開閉部53は閉状態に保たれる。同様に、第2圧着面16が第2加熱温度に到達した後も、第2供給開閉部35は開状態に保たれ、第2排出開閉部55は閉状態に保たれる。
【0052】
上述の準備工程及び昇温工程を行うタイミングは限定されない。例えば、準備工程が完了した後に昇温工程が行われてもよいし、準備工程及び昇温工程が同時的に行われてもよいし、昇温工程が完了した後に準備工程が行われてもよい。
【0053】
そして、
図5に示すように、第1圧着部11の第1圧着面15及び第2圧着部12の第2圧着面16が袋Bの口部B1を挟む(袋挟み工程)。具体的には、第1移動突出部21b及び第2移動突出部22bの各々の突出量が増大されることによって、第1圧着部11及び第2圧着部12はお互いに近づいて閉位置に配置され、袋Bの口部B1を両側から圧迫する。
【0054】
図5に示す例では、第1供給開閉部33、第2供給開閉部35、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55が移動することなく、第1圧着部11及び第2圧着部12が移動する。そのため、第1圧着部11及び第1供給開閉部33に接続される第1温調流体供給路32の部分、及び、第1圧着部11及び第1排出開閉部53に接続される第1温調流体排出路52の部分の位置(姿勢)が、第1圧着部11の移動に応じて変わる。同様に、第2圧着部12及び第2供給開閉部35に接続される第2温調流体供給路34の部分、及び、第2圧着部12及び第2排出開閉部55に接続される第2温調流体排出路54の部分の位置(姿勢)が、第2圧着部12の移動に応じて変わる。
【0055】
そのため
図5に示す例では、第1圧着部11及び第2圧着部12の移動に応じて、第1温調流体供給路32、第2温調流体供給路34、第1温調流体排出路52及び第2温調流体排出路54が伸縮する。これにより、第1圧着部11と第1供給開閉部33との間の距離及び第1圧着部11と第1排出開閉部53との間の距離が変わっても、第1供給開閉部33、第1温調流体供給路32、第1流通路13、第1温調流体排出路52及び第1排出開閉部53における温調流体Lの適切な流れを確保することができる。同様に、第2圧着部12と第2供給開閉部35との間の距離及び第2圧着部12と第2排出開閉部55との間の距離が変わっても、第2供給開閉部35、第2温調流体供給路34、第2流通路14、第2温調流体排出路54及び第2排出開閉部55における温調流体Lの適切な流れを確保することができる。
【0056】
本実施形態では、第1圧着面15及び第2圧着面16が袋Bを挟む際(すなわち袋Bに対する第1圧着面15及び第2圧着面16の状態を非接触状態から接触状態に切り換える際)、第1圧着面15及び第2圧着面16は高温(すなわち第1加熱温度及び第2加熱温度)に調整されている。したがって、第1圧着面15及び第2圧着面16は、袋Bの口部B1を挟むのと同時的に(すなわち口部B1に接触するのと同時的に)、当該口部B1の熱接合(圧着)を開始する。
【0057】
このように本実施形態の袋挟み工程は、上述の昇温工程において第1圧着面15が第1加熱温度に調整され且つ第2圧着面16が第2加熱温度に調整された状態で行われる。ただし、温調流体の凝縮熱を利用した昇温工程では第1圧着面15及び第2圧着面16を瞬間的に所望の第1加熱温度及び第2加熱温度に調整することも可能であるため、袋挟み工程は、昇温工程(特に第1流通路13及び第2流通路14に高温の気体状の温調流体が供給されるタイミング)と同時的に、開始されてもよい。また、袋挟み工程において袋Bの口部B1が第1圧着面15及び第2圧着面16により挟まれている状態で、昇温工程(特に第1流通路13及び第2流通路14への高温の気体状の温調流体の供給)が開始されてもよい。このように、第1圧着面15及び第2圧着面16が第1加熱温度及び第2加熱温度に到達するタイミングは、第1圧着面15及び第2圧着面16が袋Bの口部B1を挟む動作を開始する前であってもよいし、開始した後でもよい。第1圧着面15及び第2圧着面16が第1加熱温度及び第2加熱温度に到達するタイミングは、第1圧着面15及び第2圧着面16が袋Bの口部B1に接触する前であってもよいし、接触している状態であってもよい。
【0058】
袋Bの口部B1の熱接合の進行とともに、第1流通路13及び第2流通路14における温調流体の熱は徐々に奪われ、第1流通路13を形成する第1圧着部11の壁面及び第2流通路14を形成する第2圧着部12の壁面での、温調流体の凝縮が促される(
図6参照)。なお、通常は、袋Bの口部B1の熱接合の進行にともなって促される温調流体の凝縮の量は、第1流通路13及び第2流通路14への温調流体の流入と同時的に生じる温調流体の凝縮の量よりも小さい。
【0059】
第1圧着面15及び第2圧着面16から袋Bに十分量の熱が加えられて口部B1が熱接合された後、圧力調整装置50によって、第1流通路13における液状の温調流体Lの気化を促すように第1流通路13の内部圧力が下げられ、第2流通路14における液状の温調流体Lの気化を促すように第2流通路14の内部圧力が下げられる(冷却工程)。
【0060】
具体的には、第1供給開閉部33及び第2供給開閉部35が閉状態に置かれつつ、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55が開状態に置かれる。これにより、
図7に示すように、第1流通路13及び第2流通路14の気体が圧力調整装置50(特に圧力調整源51)によって吸い出され、第1流通路13の内部圧力及び第2流通路14の内部圧力は低下する。最終的には、第1流通路13の温度及び第2流通路14の温度よりも温調流体Lの飽和温度の方が低くなるように、第1流通路13及び第2流通路14の圧力は調整される。
【0061】
その結果、第1圧着部11の内壁面及び第2圧着部12の内壁面に付着している液状の温調流体Lは気化(蒸発)し、温調流体Lの気化熱によって第1圧着部11及び第2圧着部12からは大量の熱が奪われ、第1圧着面15及び第2圧着面16の温度は下がる。第1圧着面15は第1加熱温度よりも低い温度に調整され、第2圧着面16は第2加熱温度よりも低い温度に調整され、袋Bの口部B1(特に第1圧着面15及び第2圧着面16により接触され挟まれている接合箇所)は冷却される。
【0062】
このようにして袋Bの口部B1(特に接合箇所)が冷却されることによって、口部B1の接合強度が増大し且つ接合状態が安定化される。
【0063】
その後、第1移動突出部21b及び第2移動突出部22bの各々の突出量が低減されて、第1圧着部11及び第2圧着部12はお互いから離れた開位置に配置される(
図8参照)。この際、第1供給開閉部33、第2供給開閉部35、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55は閉状態に置かれていてもよいし、開状態に置かれていてもよい。消費エネルギーを節約しつつ次の袋Bの接合処理を迅速に行う観点からは、袋Bの口部B1が十分に冷却された後、第1流通路13及び第2流通路14の壁面は液体が付着していない状態(すなわち十分に乾いている状態)に保たれることが好ましい。したがって、第1圧着部11及び第2圧着部12が開位置に移動する間及び/又は開位置に配置されている間、第1供給開閉部33及び第2供給開閉部35は閉じられ、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55は開かれ、第1流通路13及び第2流通路14は真空状態に置かれてもよい。
【0064】
そして、上述の一連の接合処理を受けた袋Bは、袋支持部70とともに後段に移動する。
【0065】
そして、次に接合処理を受ける新たな袋Bが袋支持部70とともに移動し、第1圧着面15と第2圧着面16との間のスペースに当該新たな袋Bの口部B1が位置付けられる。そして、上述の一連の接合処理(
図3~
図8参照)が繰り返される。
【0066】
以上説明したように本実施形態の接合装置10及び接合方法によれば、袋Bの加熱に使われて液化した温調流体Lの気化を促進することにより、第1圧着面15及び第2圧着面16の温度が下げられて、袋Bが冷却される。このように共通の温調流体を使って、第1圧着面15及び第2圧着面16の温度を積極的に且つ迅速に上げたり下げたりすることができる。そのため、加熱用流体を供給する装置と冷却用流体を供給する装置とを別々に設ける必要がなく、第1流通路13及び第2流通路14の各々に供給する流体を加熱用流体と冷却用流体との間で切り換える装置も不要である。さらに、第1圧着面15及び第2圧着面16の温度を下げる場合には、第1流通路13及び第2流通路14の内部圧力を下げればよい。このように本実施形態によれば、接合装置10の構造を簡素化しつつ、袋Bの熱接合を行う第1圧着部11(特に第1圧着面15)及び第2圧着部12(特に第2圧着面16)の加熱及び冷却を迅速に行うことができる。したがって、第1圧着部11及び第2圧着部12の加熱及び冷却を繰り返し行う場合、当該加熱及び冷却の1サイクルに要する周期を著しく短くすることができる。
【0067】
また第1圧着面15及び第2圧着面16は、袋Bに接触する前に、温調流体により昇温が開始され且つ第1加熱温度及び第2加熱温度に調整されている。これにより、第1圧着面15及び第2圧着面16が袋Bに接触してから、袋Bの熱接合が完了するまでの時間を短縮することができる。特に、第1圧着面15及び第2圧着面16が、袋Bに接触する前に第1加熱温度及び第2加熱温度に調整されることによって、袋Bにおける接合箇所(本例では口部B1)の良好な接合強度及び良好な接合外観を実現することができる。
【0068】
[第1変形例]
第1流通路13及び第2流通路14は、温調流体Lの相変化を促す壁面により区画されていてもよい。典型的には、第1流通路13及び第2流通路14の各々は、少なくとも一部において凹凸形状を有する壁面により区画されていてもよい。第1圧着部11の本体部11a及び第2圧着部12の本体部12aの内壁面(特に第1流通路13及び第2流通路14を区画する部分)自体が凹凸形状を有していてもよい。また第1圧着部11の内壁面及び第2圧着部12の内壁面の各々に設置される他の部材によって、第1流通路13及び第2流通路14の各々の区画壁面に凹凸形状を付与してもよい。
【0069】
図9は、第1変形例に係る第1圧着部11の断面構造を拡大して例示する図面である。
【0070】
第1流通路13及び第2流通路14の各々において、気体状の温調流体Lと第1流通路13及び第2流通路14の各々との間の熱伝達率を向上させるための伝熱促進部が設けられていてもよい。
【0071】
伝熱促進部によって、第1圧着部11(特に第1圧着面15)及び第2圧着部12(特に第2圧着面16)の昇温が促されるとともに、第1流通路13及び第2流通路14における温調流体Lの液化が促される。
【0072】
伝熱促進部の設置位置、形状、及びその他の特性は限定されない。典型的には、第1流通路13を形成する第1圧着部11の内壁面及び第2流通路14を形成する第2圧着部12の内壁面から突出するようにして、伝熱促進部を設けることができる。ただし伝熱促進部は、多孔質体状の形状を有していてもよく、例えば発泡金属体或いは粒子焼結体などによって構成可能である。
【0073】
伝熱促進部は、第1圧着部11及び第2圧着部12に対して固定的に設けられてもよいし、第1圧着部11及び第2圧着部12の各々に対して移動可能に設けられてもよい。伝熱促進部が第1圧着部11及び第2圧着部12の各々の内壁面上を移動することで、凝縮により液化した温調流体Lも第1圧着部11及び第2圧着部12の各々の内壁面上で移動する。そのため第1圧着部11及び第2圧着部12の内壁面の各々のうち、伝熱促進部が移動しない場合には液状の温調流体Lが付着しにくく乾きやすい箇所に対しても、伝熱促進部が動くことで液状の温調流体Lの付着を促すことができる。その結果、第1圧着部11及び第2圧着部12の各々の内壁面に対して満遍なく液状の温調流体Lを付着させることができ、その後の温調流体Lの気化によって第1圧着面15及び第2圧着面16の各々の温度を全体的により均一的に下げることができ、袋Bをより均一的に冷却することができる。
【0074】
また第1流通路13を区画する第1圧着部11(本体部11a)の内壁面及び第2流通路14を区画する第2圧着部12(本体部12a)の内壁面の各々に直接的に与えられる構造(形状を含む)によって、伝熱促進部が構成されていてもよい。
【0075】
図9に示されている伝熱促進部60は、第1流通路13に配置され、コイル形状を有する。伝熱促進部60は、任意の材料及び任意の形態により実現可能であるが、典型的には針金などの紐状体が螺旋状に巻かれることによって作られる。
【0076】
伝熱促進部60は、液状の温調流体Lを保持することができる。
図9に示すように、伝熱促進部60の隣り合う位置に配置されるコイル線間に、液状の温調流体Lは留まりやすい。そのため、伝熱促進部60は、第1圧着部11及び第2圧着部12の内壁面上に、液状の温調流体Lを効果的に留めることができる。
図9に示す温調流体Lの状態は一例に過ぎず、例えば、伝熱促進部60によって保持されている温調流体Lはメニスカス状を有していてもよい。
【0077】
このように第1流通路13及び第2流通路14のうち伝熱促進部60に対応する箇所には、液状の温調流体Lが留まりやすい。そのため、第1流通路13のうち第1圧着面15に対応する箇所の全体にわたって、及び、第2流通路14のうち第2圧着面16に対応する箇所の全体にわたって伝熱促進部60を設けることにより、上述の冷却工程(
図7参照)において、温調流体の相変化が促進され第1圧着面15及び第2圧着面16の全体の温度を効果的に下げることができる。
【0078】
また伝熱促進部60が、本来的に、第1流通路13及び第2流通路14の断面径よりも大きな径を有する場合であっても、伝熱促進部60の弾性を利用して当該伝熱促進部60を変形及び小型化することで、当該伝熱促進部60を第1流通路13及び第2流通路14に適切に配置することが可能である。この場合、伝熱促進部60は、第1圧着部11の内壁面(すなわち本体部11a)及び第2圧着部12の内壁面(すなわち本体部12a)に対し、接触しながら弾性力を作用させる。そのため伝熱促進部60は、第1圧着部11の内壁面及び第2圧着部12の内壁面から受ける摩擦力によって位置がずれにくく、第1流通路13及び第2流通路14において固定的且つ安定的に配置される。
【0079】
[他の変形例]
本開示は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。
【0080】
第1圧着部11(特に第1流通路13)及び第2圧着部12(特に第2流通路14)のうちの一方にのみ、温調流体が供給されてもよい。
【0081】
袋Bを第1圧着面15及び第2圧着面16によって挟む場合や、袋Bを第1圧着面15及び第2圧着面16から解放する場合、上述のように第1圧着部11及び第2圧着部12の両方が移動してもよいし、一方のみが移動してもよい。第1圧着部11(特に第1流通路13)及び第2圧着部12(特に第2流通路14)のうちの一方にのみ温調流体が供給され且つ第1圧着面15及び第2圧着面16のうちの一方のみが移動する場合、温調流体が供給される圧着部のみが移動してもよい。
【0082】
上述の冷却工程(
図7参照)では、袋Bが第1圧着面15及び第2圧着面16により挟まれている状態で、第1圧着面15及び第2圧着面16の冷却が開始されている。ただし、第1圧着面15及び第2圧着面16の冷却が開始される前に(すなわち第1流通路13及び第2流通路14の内部圧力が下げられる前に)、第1圧着部11及び第2圧着部12を開位置に配置して、第1圧着面15及び第2圧着面16が袋Bから離れされてもよい。この場合、第1圧着面15及び第2圧着面16が袋Bから離れている状態で、第1流通路13及び第2流通路14の内部圧力が下げられて、第1圧着面15及び第2圧着面16の温度が下げられてもよい。また、第1圧着面15及び第2圧着面16の温度が下げられている最中に又は第1圧着面15及び第2圧着面16の温度が十分に下げられた後に、第1圧着部11及び第2圧着部12を閉位置に配置して、袋Bの接合箇所(本例では口部B1)が第1圧着面15及び第2圧着面16により冷却されてもよい。
【0083】
上述の接合装置10は、袋Bの口部B1を接合するが、袋Bの他の箇所を接合してもよい。
【0084】
上述の接合装置10の接合処理では袋B同士(すなわち袋Bの表側壁面部及び裏側壁面部)が接合されるが、接合装置10は袋Bを他の部材(例えばスパウト)に対して接合させてもよい。例えば、袋Bの口部B1にスパウト(図示省略)を熱接合する装置に、上述の接合装置10を応用することが可能である。この場合、例えば袋Bの表側壁面部と裏側壁面部との間にスパウトを位置付けつつ、第1圧着部11の第1圧着面15及び第2圧着部12の第2圧着面16によって、表側壁面部、スパウト及び裏側壁面部をお互いに接合してもよい。第1圧着部11及び第2圧着部12が袋Bを他の部材(スパウト等)の接合面に押し当てる場合、第1圧着面15及び第2圧着面16は当該他の部材の接合面に対応する形状を有することが好ましい。
【0085】
第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34にヒーター(図示省略)を設置し、当該ヒーターによって第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34を流れる温調流体を加熱してもよい。この場合、制御装置20の制御下で、ヒーターのオン/オフ制御が行われることが好ましい。例えば、「温調流体供給源31から第1流通路13及び第2流通路14への温調流体の供給を開始する前」にヒーターがオン状態に置かれてもよい。この場合、第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34における温調流体の温度低下を抑えるのに有効な温度に、第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34を調整することが可能である。また「温調流体供給源31から第1流通路13及び第2流通路14への温調流体の供給の開始」から「第1圧着面15及び第2圧着面16の温度を下げる処理の開始」までの間の少なくとも一部時間において、ヒーターはオン状態に置かれ、第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34を流れる温調流体を加熱してもよい。一方、「第1圧着面15及び第2圧着面16の温度を下げる処理の開始」後は、ヒーターはオフ状態に置かれ、第1温調流体供給路32及び第2温調流体供給路34を流れる温調流体を加熱しなくてもよい。
【0086】
第1圧着部11及び第2圧着部12の温度を調整する加熱デバイス及び/又は冷却デバイス(図示省略)が設置されていてもよい。これらの加熱デバイス及び冷却デバイスは、制御装置20の制御下でオン/オフ制御が行われることが好ましい。制御装置20は、例えば、第1圧着部11(例えば第1圧着面15)及び第2圧着部12(第2圧着面16)の温度を直接的又は間接的に検出する温度センサーの検出結果に基づいて、加熱デバイス及び冷却デバイスのオン/オフ制御を行ってもよい。
【0087】
例えば、第1圧着部11及び第2圧着部12の温度が低い状態で第1流通路13及び第2流通路14に高温の温調流体を流した場合、第1圧着面15及び第2圧着面16が所望の加熱温度(第1加熱温度及び第2加熱温度)まで昇温されない懸念がある。そのため、第1流通路13及び第2流通路14に高温の温調流体を供給するのに先立って、加熱デバイスにより、第1圧着部11及び第2圧着部12を加熱し、第1圧着部11及び第2圧着部12が所望の準備温度に調整されてもよい。ここで言う「所望の準備温度」は、第1流通路13及び第2流通路14に高温の温調流体を流した場合に第1圧着面15及び第2圧着面16を所望の加熱温度まで昇温させるのに十分な温度である。
【0088】
同様に、第1圧着面15及び第2圧着面16の温度を下げるために第1圧着部11及び第2圧着部12を冷却するのに先立って(すなわち上述の実施形態では第1流通路13及び第2流通路14の内部圧力が下げられるのに先立って)、冷却デバイスにより第1圧着部11及び第2圧着部12を冷却し、第1圧着部11及び第2圧着部12が所望の準備温度に調整されてもよい。ここで言う「所望の準備温度」は、第1圧着部11及び第2圧着部12を冷却した場合に第1圧着面15及び第2圧着面16を所望の冷却温度まで下げるのに十分な温度である。
【0089】
上述の加熱デバイス及び冷却デバイスの設置態様は限定されない。例えば第1圧着部11及び第2圧着部12に、加熱デバイス及び冷却デバイスが設置されてもよい。また第1圧着部11及び第2圧着部12に取り付けられる他の部材に、加熱デバイス及び冷却デバイスが設置されてもよい。長尺の管状体により第1圧着部11及び第2圧着部12が構成される場合、第1圧着部11及び第2圧着部12は比較的大きく撓んでしまう懸念がある。そのため、第1圧着部11及び第2圧着部12は土台(図示省略)により支持されてもよく、加熱デバイス及び冷却デバイスは土台に設定されてもよい。この場合、加熱デバイス及び冷却デバイスは、直接的には土台の温度をコントロールすることで、第1圧着部11及び第2圧着部12の温度を間接的にコントロールすることができる。
【0090】
上述の実施形態では、第1圧着部11及び第2圧着部12の移動にかかわらず、第1供給開閉部33、第2供給開閉部35、第1排出開閉部53及び第2排出開閉部55の位置は変わらない。ただし、第1圧着部11の移動に応じて第1供給開閉部33及び第1排出開閉部53が移動してもよいし、第2圧着部12の移動に応じて第2供給開閉部35及び第2排出開閉部55が移動してもよい。
【0091】
第1圧着部11及び第2圧着部12の移動方向は限定されない。第1移動部21は、上述のように第1圧着部11を直線的に移動させてもよいし、第1圧着部11を曲線(例えば円弧)に沿って移動させてもよいし、2種類以上の直線及び/又は曲線の組み合わせから成る軌道に沿って第1圧着部11を移動させてもよい。同様に、第2移動部22は、上述のように第2圧着部12を直線的に移動させてもよいし、第2圧着部12を曲線(例えば円弧)に沿って移動させてもよいし、2種類以上の直線及び/又は曲線の組み合わせから成る軌道に沿って第2圧着部12を移動させてもよい。したがって第1移動突出部21bの進退方向及び第2移動突出部22bの進退方向は、第1圧着面15及び第2圧着面16の対向方向と一致していなくてもよい。
【0092】
上述の実施形態では、袋Bが第1圧着部11の第1圧着面15と第2圧着部12の第2圧着面16とにより挟まれることで口部B1がシールされているが、第2圧着部12は必ずしも設けられていなくてもよい。例えば、ブロワー(図示省略)からの気体を袋Bに吹き付けて袋B(例えば口部B1)を第1圧着面15に押し当てることによって、袋Bのシール処理が行われてもよい。また真空装置(図示省略)によって袋Bと第1圧着面15との間を真空に調整して袋B(例えば口部B1)を第1圧着面15に密着させることによって、袋Bのシール処理が行われてもよい。
【0093】
上述の接合装置10は袋Bの温調を行う装置ではあるが、上述の技術は袋B以外の対象物の温調を行う装置及び方法に応用可能である。
【0094】
上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また上述の実施形態及び変形例の構成が、全体的に又は部分的に組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 接合装置
11 第1圧着部
11a 本体部
12 第2圧着部
12a 本体部
13 第1流通路
14 第2流通路
15 第1圧着面
16 第2圧着面
20 制御装置
21 第1移動部
21a 第1移動本体部
21b 第1移動突出部
22 第2移動部
22a 第2移動本体部
22b 第2移動突出部
30 温調流体供給装置
31 温調流体供給源
32 第1温調流体供給路
33 第1供給開閉部
34 第2温調流体供給路
35 第2供給開閉部
36 合流供給路
50 圧力調整装置
51 圧力調整源
52 第1温調流体排出路
53 第1排出開閉部
54 第2温調流体排出路
55 第2排出開閉部
56 合流排出路
57 放出路
60 伝熱促進部
70 袋支持部
B 袋
B1 口部
B2 底部
B3 側部
Bs シール部
L 温調流体