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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071843
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】水中生物忌避装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/12 20110101AFI20220509BHJP
   A01N 47/46 20060101ALI20220509BHJP
   A01N 27/00 20060101ALI20220509BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20220509BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20220509BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A01M29/12
A01N47/46
A01N27/00
A01N25/00 102
A01P17/00
C02F1/50 510E
C02F1/50 520F
C02F1/50 520K
C02F1/50 532A
C02F1/50 532B
C02F1/50 532C
C02F1/50 532D
C02F1/50 532J
C02F1/50 550C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172898
(22)【出願日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2020180430
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514211998
【氏名又は名称】株式会社PRD
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】井伊 重雄
(72)【発明者】
【氏名】浅井 ひろみ
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA06
2B121CB13
2B121CB23
2B121CB42
2B121CB65
2B121CB66
2B121CB69
2B121EA21
2B121FA07
4H011AE02
4H011BB01
4H011BB11
4H011DA13
4H011DC12
4H011DD01
(57)【要約】
【課題】長期にわたって水中の構造物に水中生物が付着し難くすることができる水中生物忌避装置を提供する。
【解決手段】水中生物忌避装置は、内部に流路が形成されており、構造物に取り付けられる面である第1の面と、厚み方向において第1の面とは反対側に配置される第2の面とを有する第1壁部と、第2の面に対向するように配置されると共に第1壁部との間に流路が形成される第2壁部と、を含む、第1部材と、流路内を流通し、イソチオシアン酸エステル類およびテルペン類から選択される1種以上である忌避材を含む液状の第1混合物と、流路内に忌避材を供給すると共に、第1混合物が流路内を流通するように第1混合物を循環させる循環部と、を備える。第2壁部は、気体状の忌避材を外部に透過する。第2壁部を構成する材料は、ポリオレフィン、シリコーンおよびポリウレタンから選択される1種以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の構造物に設置される水中生物忌避装置であって、
内部に流路が形成されており、前記構造物に取り付けられる面である第1の面と、厚み方向において前記第1の面とは反対側に配置される第2の面とを有する第1壁部と、前記第2の面に対向するように配置されると共に前記第1壁部との間に前記流路が形成される第2壁部と、を含む、第1部材と、
前記流路内を流通し、イソチオシアン酸エステル類およびテルペン類から選択される1種以上である忌避材を含む液状の第1混合物と、
前記流路内に前記忌避材を供給すると共に、前記第1混合物が前記流路内を流通するように前記第1混合物を循環させる循環部と、を備え、
前記第2壁部は、気体状の前記忌避材を外部に透過し、
前記第2壁部を構成する材料は、ポリオレフィン、シリコーンおよびポリウレタンから選択される1種以上である、水中生物忌避装置。
【請求項2】
前記第2壁部は、0.01mg/(cm・day)以上の前記忌避材を透過する、請求項1に記載の水中生物忌避装置。
【請求項3】
前記第1混合物は、液状の第1物質をさらに含み、
前記第1物質は、植物油、鉱油、パラフィン類、脂肪酸エステル類、クエン酸エステル類、アジピン酸エステル類およびフタル酸エステル類から選択される1種以上である、請求項1または請求項2に記載の水中生物忌避装置。
【請求項4】
前記第1壁部は、気体状の前記忌避材の透過が制限されており、
前記第1壁部は、金属材料、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリエチレンテレフタレートから選択される1種以上からなるか、または金属材料、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリエチレンテレフタレートから選択される1種以上からなる層を含む積層体である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水中生物忌避装置。
【請求項5】
前記第1壁部および前記第2壁部は、それぞれ板状の形状を有し、
前記第2壁部は、前記第1壁部と間隔をあけて平行に配置される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水中生物忌避装置。
【請求項6】
前記第1壁部および前記第2壁部は、帯状の形状を有し、
前記第1壁部は、長手方向に沿って延びる前記第1の面を有し、
前記第2壁部は、前記第1壁部と間隔をあけて平行に配置される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水中生物忌避装置。
【請求項7】
前記第1壁部および前記第2壁部は、中空筒状の形状を有し、
前記第1壁部の前記第2の面としての内周面と、前記第2壁部の外周面とが対向するように、前記第1壁部と前記第2壁部とは間隔をあけて平行に配置される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水中生物忌避装置。
【請求項8】
前記忌避材は、イソチオシアン酸アリルおよびリモネンから選択される少なくともいずれか一方であり、
前記第2壁部を構成する材料は、高密度ポリエチレンである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水中生物忌避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中生物忌避装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
取水口等の構造物の内壁面に、貝やフジツボ等の水中生物が付着し難くするために、忌避材を含む防汚塗料を内壁面に塗布する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-111515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法の場合、防汚塗料における忌避材が水中に溶出し、忌避材が無くなると、再度防汚塗料を内壁面に塗布する必要がある。水中における構造物では、水中生物が付着し難い効果を長期的に持続できることが好ましい。
【0005】
そこで、長期にわたって水中の構造物に水中生物が付着し難くすることができる水中生物忌避装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の水中生物忌避装置は、水中の構造物に設置される。水中生物忌避装置は、内部に流路が形成されており、構造物に取り付けられる面である第1の面と、厚み方向において第1の面とは反対側に配置される第2の面とを有する第1壁部と、第2の面に対向するように配置されると共に第1壁部との間に流路が形成される第2壁部と、を含む、第1部材と、流路内を流通し、イソチオシアン酸エステル類およびテルペン類から選択される1種以上である忌避材を含む液状の第1混合物と、流路内に忌避材を供給すると共に、第1混合物が流路内を流通するように第1混合物を循環させる循環部と、を備える。第2壁部は、気体状の忌避材を外部に透過する。第2壁部を構成する材料は、ポリオレフィン、シリコーンおよびポリウレタンから選択される1種以上である。
【0007】
本願の水中生物忌避装置は、第1部材と、第1混合物と、循環部と、を備える。第1部材は、水中の構造物に取り付けられる第1壁部と、第1壁部に対向する第2壁部と、を含む。第1部材には、第1壁部と第2壁部との間に流路が形成されている。特定の忌避材を含む液状の第1混合物が、流路を流通する。第2壁部が特定の材料によって構成されることで、気体状の忌避材が第2壁部を透過し、外部に放出される。このため、第2壁部の流路に対応した領域における表面において、水中生物が付着し難くすることができる。水中生物としては、例えば、フジツボ類、イガイ類、ヒドロ虫類、コケムシ類等があげられる。気体状の忌避材が第2壁部から外部に放出されることで、忌避材の第1混合物における割合が低下してしまう。循環部は、流路内に忌避材を供給すると共に、第1混合物が流路内を流通するように第1混合物を循環する。循環部によって流路内に忌避材が供給されることで、流路内における第1混合物の割合を特定の割合に維持することができる。したがって、第2壁部における流路に対応した領域から忌避材が外部に放出される量を長期にわたって維持することができる。このように、本願の水中生物忌避装置によれば、長期にわたって水中の構造物に水中生物が付着し難くすることができる。
【0008】
上記水中生物忌避装置では、第2壁部は、0.01mg/(cm・day)以上の忌避材を透過してもよい。好ましくは、第2壁部は、0.1mg/(cm・day)以上の忌避材を透過してもよい。このようにすることで、第2壁部の流路に対応した領域において、水中生物を付着し難くする効果を十分に確保することができる。
【0009】
上記水中生物忌避装置において、第1混合物は、液状の第1物質をさらに含んでもよい。第1物質は、植物油、鉱油、パラフィン類、脂肪酸エステル類、クエン酸エステル類、アジピン酸エステル類およびフタル酸エステル類から選択される1種以上であってもよい。上記第1物質は、第1混合物に含まれる物質として好適である。
【0010】
上記水中生物忌避装置において、第1壁部は、気体状の忌避材の透過が制限されてもよい。第1壁部は、金属材料、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリエチレンテレフタレートから選択される1種以上からなるか、または金属材料、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリエチレンテレフタレートから選択される1種以上からなる層を含む積層体であってもよい。このような構成を採用することで、第1壁部から外部に気体状の忌避材が放出されることを制限することができる。したがって、第1混合物における忌避材の不要な減少を緩和させることができる。
【0011】
上記水中生物忌避装置において、第1壁部および第2壁部は、それぞれ板状の形状を有してもよい。第2壁部は、第1壁部と間隔をあけて平行に配置されてもよい。第1部材を上記のような構成を有することで、水中における構造物の一部に第1部材を取り付け、水中生物を付着し難くすることができる。
【0012】
上記水中生物忌避装置において、第1壁部および第2壁部は、帯状の形状を有してもよい。第1壁部は、長手方向に沿って延びる第1の面を有してもよい。第2壁部は、第1壁部と間隔をあけて平行に配置されてもよい。上記構成を有する第1部材は、水中に設置される配管に対して好適に取り付けることができる。例えば、配管の内壁面に対して、第1部材をらせん状に取り付けることができる。このようにすることで、配管の形状や大きさに関わらずに、第1部材の配管に対する取り付けが容易となる。
【0013】
上記水中生物忌避装置において、第1壁部および第2壁部は、中空筒状の形状を有してもよい。第1壁部の第2の面としての内周面と、第2壁部の外周面とが対向するように、第1壁部と第2壁部とは間隔をあけて平行に配置されてもよい。上記構成を有する第1部材は、水中に設置される配管に対して好適に取り付けることができる。
【0014】
上記水中生物忌避装置において、忌避材は、イソチオシアン酸アリルおよびリモネンから選択される少なくともいずれか一方であってもよい。第2壁部を構成する材料は、高密度ポリエチレンであってもよい。上記構成は、水中生物忌避装置における忌避材として好適であり、第2壁部を構成する材料として好適である。
【発明の効果】
【0015】
上記水中生物忌避装置によれば、長期にわたって水中の構造物に水中生物が付着し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は実施の形態1における水中生物忌避装置の構造を示す概略図である。
図2図2は容器が構造物に取り付けられている状態を示す概略図である。
図3図3は第1壁部の構造を示す概略断面図である。
図4図4は実施の形態2における水中生物忌避装置の構造を示す概略図である。
図5図5は第1容器および第4容器が構造物に取り付けられている状態を示す概略図である。
図6図6は実施の形態3における水中生物忌避装置の構造の一部を示す概略図である。
図7図7は第1の管の構造を示す概略断面図である。
図8図8は実施の形態4における第1部材が配管に取り付けられている状態を示す概略断面図である。
図9図9は第1部材の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の水中生物忌避装置の一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における水中生物忌避装置の構造を示す概略図である。図2は、容器が構造物に取り付けられている状態を示す概略図である。図1は、図2のB-Bで切断した場合の断面図である。図2は、図1のA-Aで切断した場合の断面図である。図1および図2を参照して、水中生物忌避装置1は、水中の構造物50に設置される装置である。本実施の形態では、構造物50は、例えば、水中に設置される配管である。水中生物忌避装置1は、第1部材としての容器10と、循環部20と、第1混合物30と、を備える。容器10は、内部に第1混合物30を収容した状態で構造物50に取り付けられる部材である。本実施の形態では、容器10は、第1壁部111と、第2壁部112と、第3壁部113と、第4壁部114と、を備える。
【0019】
第1壁部111は、構造物50への取り付けに適した形状を有する。本実施の形態では、第1壁部111は、例えば、平板状の形状を有する。第2壁部112は、例えば、平板状の形状を有する。より具体的には、第1壁部111および第2壁部112の厚みは、例えば1mm以上10mm以下である。第1壁部111および第2壁部112は、厚み方向から平面的に見て、角丸長方形状の形状を有する。第1壁部111と第2壁部112とは、間隔をあけて平行に配置される。第1壁部111は、第1の面11Aと、厚み方向における第1の面11Aとは反対側の第2の面11Bと、を含む。第1の面11Aおよび第2の面11Bは、平面状の形状を有する。第1の面11Aは、構造物50に取り付けられる面である。第2壁部112は、第2の面11Bに対向するように配置される。第2壁部112は、平面状の第3の面12Aと、平面状の第4の面12Bと、を含む。第4の面12Bは、第2の面11Bに対向する。
【0020】
第3壁部113は、第1壁部111と第2壁部112とに接続する。より具体的には、第3壁部113の厚みは、例えば1mm以上10mm以下である。第3壁部113は、第1壁部111および第2壁部112のそれぞれの外縁に接続する。容器10には、第1壁部111、第2壁部112および第3壁部113によって取り囲まれた空間Tが形成されている。容器10には、空間Tを2つに分離し、流路Sおよび流路Sを形成するように、第4壁部114が配置される。第4壁部114は、例えば、平板状の形状を有する。より具体的には、第4壁部114は、第1壁部111の長辺に沿って延びるように配置される。第4壁部114の一方の端部は、第3壁部113に接続される。第1壁部111と第2壁部112とによって挟まれるように、流路S,Sが形成されている。より具体的には、流路S,Sは、第1壁部111の長辺に沿って延びるように形成されている。本実施の形態では、第4壁部114の他方の端部において、流路Sと流路Sとは接続されている。第1壁部111および第2壁部112は、流路S,Sに直接配置されている。
【0021】
第1混合物30は、容器10における流路S,S内を流通する。第1混合物30は、液状である。例えば、第1混合物30は、常温(例えば5℃以上35℃以下の温度)において液体の状態にあることが好ましい。本実施の形態では、第1混合物30は、忌避材と、第1物質と、を含む。忌避材は、例えばイソチオシアン酸エステル類である。より具体的には、忌避材は、イソチオシアン酸アリルである。第1物質は、液状である。例えば、第1物質は、常温(例えば5℃以上35℃以下の温度)において液体の状態にあることが好ましい。本実施の形態では、第1物質は、植物油である。より具体的には、第1物質は、菜種油である。本実施の形態では、忌避材(溶質)が、第1物質(溶媒)に溶解し、溶液の第1混合物30が形成されている。第1混合物30における忌避材の濃度は、例えば、3質量%以上である。第1混合物30における忌避材の濃度の下限は、好ましくは6質量%であり、より好ましくは10質量%であり、さらに好ましくは12質量%であり、最も好ましくは20質量%である。第1混合物30における忌避材の濃度の上限は、例えば70質量%であり、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは50質量%である。
【0022】
第2壁部112は、忌避材が気体状の状態で外部に透過することが可能である。例えば、第2壁部112は、0.01mg/(cm・day)以上(好ましくは0.1mg/(cm・day)以上)の忌避材を透過する。本実施の形態では、第2壁部112を構成する材料は、ポリオレフィンである。より具体的には、第2壁部112を構成する材料は、ポリエチレン(高密度ポリエチレン)である。本実施の形態では、第1壁部111は、第2壁部112を構成する材料とは異なり、気体状の忌避材の透過が制限されている。図3を参照して、本実施の形態では、第1壁部111は、積層体である。より具体的には、第1壁部111は、第1の層111Aと、第2の層111Bと、を含む。第1壁部111では、第1の層111Aに第2の層111Bが貼り合わせられた構成を有する。第2の層111Bは、第1の層111A上に接触するように配置される。厚み方向において、第1の層111Aの第2の層111Bとは反対側の面は、第1の面11Aである。厚み方向において、第2の層111Bの第1の層111Aとは反対側の面は、第2の面11Bである。第1の層111Aを構成する材料は、第2壁部112を構成する材料と同様である。第2の層111Bを構成する材料は、ポリエチレンテレフタレートである。本実施の形態では、第3壁部113を構成する材料は、第2壁部112を構成する材料と同様である。
【0023】
循環部20は、流路S,S内に忌避材を供給すると共に、流路S,Sにおいて第1混合物30を循環させる装置である。本実施の形態では、循環部20は、貯留部21と、ポンプ25と、配管22,23,24,43と、供給部41と、を含む。貯留部21は、一時的に第1混合物30を溜めることが可能な部分である。例えば、貯留部21には、貯留部21内の第1混合物30の量を計測するレベルセンサ(図示せず)が設置されている。貯留部21には、貯留部21内の第1混合物30を攪拌するための攪拌装置44が設置されている。供給部41は、貯留部21内に忌避材を供給する部分である。貯留部21とポンプ25との間に配管22が配置される。ポンプ25と容器10との間に配管23が配置される。容器10と貯留部21との間に配管24が配置される。配管23によって取り囲まれた空間が流路Sに連通するように、配管23は配置される。配管24によって取り囲まれた空間が流路Sに連通するように、配管24は配置される。配管24の容器10とは反対側の端部は貯留部21の内部空間において露出するように、配管24は配置される。供給部41は、配管43を通じて、貯留部21の内部空間内に忌避材を供給する。配管43には、弁42が設置されている。
【0024】
貯留部21内に溜められていた第1混合物30は、ポンプ25によって、容器10の流路S内に流入される。流路S内に流入された第1混合物30は、流路Sを通じて、配管24に流入する。そして、再び貯留部21内に溜められる。第1混合物30は、流路S,S内を流通し、循環部20によって循環される。貯留部21内に溜められる第1混合物30の濃度が、所定の濃度未満となった場合には、弁42を開けて、供給部41から新たな忌避材が貯留部21内に供給される。
【0025】
ここで、本実施の形態における水中生物忌避装置1は、第2壁部112および第3壁部113が特定の材料によって構成されることで、気体状の忌避材が第2壁部112を透過し、外部に放出される。このため、第2壁部112および第3壁部113の流路S,Sに対応した領域における第2壁部112の第3の面12Aや第3壁部113の表面13(図2参照)において、水中生物が付着し難くすることができる。気体状の忌避材が第2壁部112および第3壁部113から外部に放出されることで、忌避材の第1混合物30における割合(濃度)が低下してしまう。循環部20によって流路S,S内に忌避材が供給されることで、流路S,S内における第1混合物30の割合(濃度)を特定の割合(濃度)に維持することができる。したがって、第2壁部112および第3壁部113における流路S,Sに対応した領域から忌避材が外部に放出される量を長期にわたって維持することができる。このように、本実施の形態における水中生物忌避装置1によれば、長期にわたって水中の構造物50に水中生物が付着し難くなっている。
【0026】
本実施の形態における水中生物忌避装置1の容器10が水中の構造物50に取り付けられると、容器10の外部に忌避材が放出される。容器10の近傍では、水中における忌避材の割合が高くなるものの、容器10から離れると、水中における忌避材の割合は非常に低くなる。本実施の形態における水中生物忌避装置1によれば、環境への影響を非常に少なくすることができる。
【0027】
上記実施の形態における水中生物忌避装置1では、第2壁部112および第3壁部113は、0.01mg/(cm・day)以上(好ましくは0.1mg/(cm・day)以上)の忌避材を透過する。第2壁部112および第3壁部113を構成する材料の忌避材の透過量の上限は、例えば10mg/(cm・day)であり、好ましくは5mg/(cm・day)であり、より好ましくは3mg/(cm・day)であり、さらに好ましくは1mg/(cm・day)である。このようにすることで、第2壁部112および第3壁部113の流路S,Sに対応した領域における第2壁部112の第3の面12Aや第3壁部113の表面13において、水中生物を付着し難くする効果を十分に確保することができる。上記忌避材の透過量は、例えば第2壁部112および第3壁部113を構成する材料、第2壁部112および第3壁部113の厚みや表面積、および第1混合物30における忌避材の濃度によって制御することができる。
【0028】
上記実施の形態における水中生物忌避装置1において、第1混合物30は、液状の第1物質をさらに含む。第1物質としては、植物油の他、鉱油、パラフィン類、脂肪酸エステル類、クエン酸エステル類、アジピン酸エステル類およびフタル酸エステル類等を用いてもよい。植物油としては、菜種油の他、例えばオリーブ油、ナッツ油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、ゴマ油、サフラワー油、綿実油、米油、サラダ油(大豆油と菜種油との混合油脂)等があげられる。パラフィン類としては、例えば、流動パラフィン、イソパラフィン等があげられる。脂肪酸エステル類としては、例えば、ラウリン酸メチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル等があげられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、菜種油は、取扱い易く、安価に入手することができる。本実施の形態では、第1物質は、忌避材との反応性や溶解性との観点から、適宜選択される。また、第1物質として、引火性の低い物質を用いることが好ましい。上記実施の形態において、忌避材が、イソチオシアン酸エステル類である場合について説明したが、これに限られず、テルペン類であってもよい。イソチオシアン酸エステル類としては、イソチオシアン酸アリルの他、例えばイソチオシアン酸メチル、イソチオシアン酸エチル、イソチオシアン酸プロピル、イソチオシアン酸イソプロピル、イソチオシアン酸ブチル、イソチオシアン酸フェニル、イソチオシアン酸ベンジル等があげられる。テルペン類としては、ミルセン、リモネン、ピネン、カンファーサビネン、フェランドレン、パラシメン、オシメン、テルピネン、リモネン、シトラール、テルピネオール、リナロール、ビサボレン、シトロネラール、1,8-シネオール、ゲラニオール、ミルセン、オシメン、フェランドレン等があげられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。忌避材としては、取り扱い性の観点から、イソチオシアン酸アリルやリモネンを好適に用いることができる。本実施の形態における忌避材は脂溶性を有するため、第1物質は脂溶性を有することが好ましい。
【0029】
上記実施の形態における水中生物忌避装置1において、第1壁部111は、気体状の忌避材の透過が制限されている。上記実施の形態では、第1壁部111は、第1の層111Aを構成する材料が、ポリオレフィンであり、第2の層111Bを構成する材料が、ポリエチレンテレフタレートである場合について説明したが、これに限られず、第2の層111Bを構成する材料は、ポリエチレンテレフタレートの他、金属材料、ポリアミドやエチレン-ビニルアルコール共重合体であってもよい。これらは、1種以上を組み合わせて用いることができる。第1の層111Aを構成する材料は、ポリオレフィンの他、シリコーンやポリウレタン等を用いてもよい。これらは、1種以上を組み合わせて用いることができる。また、第1壁部111は、金属材料、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリエチレンテレフタレートから選択される1種以上からなる層を少なくとも一層含む積層体であってもよい。さらに、上記実施の形態では、第1壁部111が積層体である場合について説明したが、これに限られず、第1壁部111は、金属材料、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリエチレンテレフタレートから選択される1種以上からなってもよい。このような構成を採用することで、第1壁部111から外部に気体状の忌避材が放出することを制限することができる。したがって、第1混合物30における忌避材の不要な減少を緩和させることができる。
【0030】
第2壁部112を構成する材料は、ポリオレフィンの他、シリコーンやポリウレタン等を用いてもよい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。第2壁部112を構成する材料は、忌避材に合わせて適宜設定される。
【0031】
上記実施の形態では、第3壁部113を構成する材料が、第2壁部112を構成する材料と同様である場合について説明したが、これに限られず、第3壁部113を構成する材料は、第1壁部111を構成する材料と同様であってもよい。上記実施の形態では、第1壁部111が、気体状の忌避材の透過が制限されている場合について説明したが、これに限られず、第1壁部111を構成する材料が、第2壁部112を構成する材料と同様であってもよい。
【0032】
上記水中生物忌避装置1において、第1壁部111および第2壁部112は、それぞれ平板状の形状を有する。第2壁部112は、第1壁部111の厚み方向に間隔をあけて平行に配置されている。流路S,Sは、第1壁部111と第2壁部112との間に形成されている。容器10を上記のような構成を有することで、水中における構造物50の一部に容器10を取り付け、水中生物を付着し難くすることができる。上記実施の形態では、循環部20における供給部41が貯留部21に設置される場合について説明したが、これに限られず、配管43を介して容器10に直接接続されるようにしてもよい。
【0033】
(その他の実施の形態)
次に、本発明の水中生物忌避装置1の他の実施の形態について説明する。その他の実施の形態における水中生物忌避装置1は、基本的に実施の形態1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかしながら、その他の実施の形態においては、第1部材の構成が、実施の形態1の場合とは異なっている。以下、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0034】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2における水中生物忌避装置1の構造を示す概略図である。図5は、第1の容器および第4の容器が構造物50に取り付けられている状態を示す概略図である。図4は、図5のD-Dで切断した場合の断面図である。図5は、図4のC-Cで切断した場合の断面図である。図4において、X軸方向は、第1壁部を厚み方向に平面的に見た時の長辺に沿った方向であり、Y軸方向は短辺に沿った方向である。
【0035】
図4および図5を参照して、実施の形態2における水中生物忌避装置1は、例えば6つの容器として第1容器121と、第2容器122と、第3容器123と、第4容器124と、第5容器125と、第6容器126と、を含む。第1容器121、第2容器122、第3容器123、第4容器124、第5容器125および第6容器126は、構造物50への取り付けに適した形状を有する。第1容器121、第2容器122、第3容器123、第4容器124、第5容器125および第6容器126は、例えば直方体状の形状を有する。本実施の形態では、第1容器121は、第1壁部141と、第2壁部142と、第3壁部143と、第4壁部144と、第5壁部145と、第6壁部146と、を含む。第1壁部141、第2壁部142、第3壁部143、第4壁部144、第5壁部145および第6壁部146は、例えば、平板状の形状を有する。より具体的には、第1壁部141は、第1の面14Aと、厚み方向における第1の面14Aとは反対側の第2の面14Bと、を含む。第1の面14Aおよび第2の面14Bは、平面状の形状を有する。第1の面14Aは、構造物50に取り付けられる面である。第2壁部142は、第3の面15Aと、厚み方向における第3の面15Aとは反対側の第4の面15Bと、を含む。第3の面15Aおよび第4の面15Bは、平面状の形状を有する。第2壁部142は、第2の面14Bに対向するように配置される。第1壁部141と、第2壁部142とは、平行に配置されている。第2の面14Bと第4の面15Bとは対向する。第3壁部143と、第4壁部144とは、平行に配置されている。第5壁部145と、第6壁部146とは、平行に配置されている。第1壁部141の厚み方向から平面的に見て、第1壁部141の一方の長辺には第3壁部143が接続されている。第1壁部141の他方の長辺には第4壁部144が接続されている。第1壁部141の一方の短辺には、第5壁部145が接続されている。第1壁部141の他方の短辺には、第6壁部146が接続されている。
【0036】
第1容器121には、第1壁部141、第2壁部142、第3壁部143、第4壁部144、第5壁部145および第6壁部146によって取り囲まれた内部空間Pが形成されている。本実施の形態では、第5壁部145は、内部空間Pに連通する貫通孔が形成された第1連結部147を有する。第6壁部146は、内部空間Pに連通する貫通孔が形成された第2連結部148を有する。第2連結部148は、第1連結部147に形成された貫通孔に対応した形状を有する。第2容器122、第3容器123、第4容器124、第5容器125および第6容器126は、それぞれ第1容器121と同様の構成を有する。
【0037】
第2容器122の第1連結部147に第1容器121の第2連結部148が嵌め込められ、第1容器121は第2容器122に連結される。同様に、第2容器122に第3容器123が連結される。このようにして、第1容器121と、第2容器122と、第3容器123とは、X軸方向に並んで配置される。第4容器124は第5容器125に連結され、第5容器125は第6容器126に連結される。このようにして、第4容器124と、第5容器125と、第6容器126とは、X軸方向に並んで配置される。第1容器121、第2容器122および第3容器123と、第4容器124、第5容器125および第6容器126とは、Y軸方向に並んで配置される。第1容器121、第2容器122および第3容器123には、流路Sが形成されている。第4容器124、第5容器125および第6容器126には、流路Sが形成されている。
【0038】
配管23によって取り囲まれた空間が第1容器121における第1連結部147の貫通孔に連通するように、配管23は第1容器121の第1連結部147に接続される。配管24によって取り囲まれた空間が第4容器124における第1連結部147の貫通孔に連通するように、配管24は第1連結部147に接続される。配管17は、第3容器123の第2連結部148と、第6容器126の第2連結部148と、を接続する。
【0039】
上記実施の形態では、6つの容器121,122,123,124,125,126を構造物50に取り付ける場合について説明したが、これに限られず、2つまたは4つの容器を構造物50に取り付けるようにしてもよい。また、6つ以上の容器を構造物50に取り付けてもよい。本実施の形態における構成を採用することで、水中における構造物50における所望の領域に対して容器を取り付けることが容易となる。
【0040】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。図6は、実施の形態3における水中生物忌避装置1の構造の一部を示す概略図である。図7は、第1の管の構造を示す概略断面図である。図6は、図7のF-Fで切断した場合の断面図である。図7は、図6のE-Eで切断した場合の断面図である。
【0041】
図6および図7を参照して、実施の形態3における水中生物忌避装置1は、第1部材としての第1の管150を備える。第1の管150は、内部に第1混合物30を収容した状態で構造物50に取り付けられる部材である。本実施の形態では、第1の管150は、第1壁部151と、第2壁部152と、第3壁部153と、第4壁部154と、を含む。第1壁部151は、例えば水中に設置される配管の内壁への取り付けに適した形状を有する。第1壁部151は、例えば、中空筒状(中空円筒状)の形状を有する。第2壁部152は、例えば、中空円筒状の形状を有する。より具体的には、第1壁部151と、第2壁部152とは、同軸上に平行に配置される。第1壁部151の径は、第2壁部152の径よりも大きい。第1壁部151は、第1の面としての外周面161と、厚み方向(径方向)における外周面161とは反対側の第2の面としての内周面162と、を含む。外周面161および内周面162は、それぞれ円筒面状の形状を有する。第2壁部152は、外周面163と、厚み方向(径方向)における外周面163とは反対側の内周面164と、を含む。外周面163および内周面164は、それぞれ円筒面状の形状を有する。第1壁部151の内周面162と第2壁部152の外周面163とは、対向する。第1壁部151と第2壁部152との端部同士を接続するように環状の第3壁部153と第4壁部154とが配置される。第1の管150には、第2壁部152によって取り囲まれた貫通孔Qが形成されている。本実施の形態では、第1壁部151の外周面161は、取り付け面である。
【0042】
第1壁部151、第2壁部152、第3壁部153および第4壁部154によって取り囲まれた空間Rが形成されている。本実施の形態では、空間Rを2つに分離するように第5壁部155A,155Bが配置される。第5壁部155A,155Bは、例えば平板状の形状を有する。より具体的には、第5壁部155A,155Bは、第1壁部151の軸方向に沿って延びる。本実施の形態では、第5壁部155A,155Bは、第1壁部151の内周面162と、第2壁部152の外周面163とに接続される。このようにして、第1の管150には、2つの流路S,Sが形成されている。本実施の形態では、第4壁部154には、流路Sと、流路Sとを接続する配管16が設置されている。
【0043】
実施の形態3における第1の管150は、水中に設置される配管の内壁面に対して好適に取り付けられる。このような場合、第1の管150における貫通孔Qは、配管における水路となる。
【0044】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。図8は、第1部材が配管に取り付けられている状態を示す概略図である。図9は、第1部材の構造を示す概略断面図である。図9は、図8のG-Gで切断した場合の断面図である。
【0045】
図8および図9を参照して、実施の形態4における水中生物忌避装置1は、第1部材170を備える。第1部材170は、内部に第1混合物30を収容した状態で構造物50に取り付けられる部材である。本実施の形態では、第1部材170は、第1壁部171と、第2壁部172と、第3壁部173と、第4壁部174と、第5壁部175と、第1補強部178と、第2補強部179と、を含む。第1壁部171は、例えば水中に設置される配管の内壁への取り付けに適した形状を有する。第1壁部171は、例えば、帯状の形状を有する。第2壁部172は、例えば、帯状の形状を有する。より具体的には、第1壁部171は、第1の面18Aと、厚み方向において第1の面18Aとは反対側の第2の面18Bと、を含む。第1の面18Aおよび第2の面18Bは、それぞれ長手方向に沿って延びる形状を有する。第2壁部172は、第3の面19Aと、厚み方向において第3の面19Aとは反対側の第4の面19Bと、を含む。第3の面19Aおよび第4の面19Bは、それぞれ長手方向に沿って延びる形状を有する。第2壁部172は、第2の面18Bに対向するように配置される。第2壁部172は、第1壁部171と平行に配置される。第2の面18Bと第4の面19Bとは対向する。本実施の形態では、第3壁部173および第4壁部174は、それぞれ第1壁部171と第2壁部172とを接続する。より具体的には、第3壁部173および第4壁部174は、それぞれ第1壁部171の長手方向に沿って延びる。第3壁部173は、長手方向に沿って延びる第1壁部171の一方の外縁に接続されている。第3壁部173は、長手方向に沿って延びる第2壁部172の一方の外縁に接続されている。第4壁部174は、長手方向に沿って延びる第1壁部171の他方の外縁に接続されている。第4壁部174は、長手方向に沿って延びる第2壁部172の他方の外縁に接続されている。
【0046】
第1壁部171、第2壁部172、第3壁部173および第4壁部174によって取り囲まれた空間Uが形成されている。本実施の形態では、空間Uを2つに分離するように、第5壁部175は配置される。第5壁部175は、例えば、長手方向に沿って延びる帯状の形状を有する。より具体的には、第5壁部175は、第1壁部171と第2壁部172とに接続される。このようにして、2つの流路S,Sが形成される。流路Sと、流路Sとは、第1部材170の長手方向における一方の端部において接続されている。第1部材170の他方の端部には、実施の形態1と同様に配管23,24が接続されている。
【0047】
本実施の形態において、第1部材170には、流路Sに沿って延びる帯状の第1補強部178が設置されている。さらに流路Sに沿って延びる帯状の第2補強部179が設置されている。より具体的には、第1補強部178および第2補強部179は、それぞれ第1壁部171と第2壁部172とに接続されている。本実施の形態では、第3壁部173には、第1壁部171の長手方向に沿って延びる凹部176が形成されている。第4壁部174には、第1壁部171の長手方向に沿って延びる突出部177が形成されている。突出部177は、凹部176に対応する形状を有する。
【0048】
実施の形態4における第1部材170は、水中に設置される配管51の内壁面511に対して好適に取り付けられる。例えば、配管51の内壁面511に対して、第1部材170をらせん状に取り付けられる。この際に、突出部177が凹部176に嵌め込まれるように第1部材170が取り付けられる。このようにすることで、配管51の形状や大きさに関わらずに、第1部材170の配管51に対する取り付けが容易となる。
【0049】
上記その他の実施の形態における水中生物忌避装置1によっても、実施の形態1と同様に長期にわたって水中の構造物50に水中生物が付着し難くなっている。
【0050】
上記実施の形態における水中生物忌避装置1は、例えば、船底、海底油田リグ等の海中構築物、火力発電所等の臨界工場の冷却水取水路や熱交換器冷却水配管等の水中構造物に対して好適に用いることができる。
【実施例0051】
本実施の形態における水中生物忌避装置1における第2壁部を構成する材料や忌避材と同様の材料を用いて、水中生物が付着し難くなる効果を確認する実験を行った。実験の手順は、以下の通りである。まず、高密度ポリエチレン製の角型瓶を準備した。角型瓶としては、アズワン社製、商品名「角型瓶フラット型」を用いた。角型瓶の容量は、500mlであった。角型瓶の表面積は、385cmであった。次に、菜種油と、イソチオシアン酸アリルと、を含む液状の第1混合物30を準備した。菜種油としては、日清オイリオ社製、商品名「日清キャノーラ油」を用いた。第1混合物30におけるイソチオシアン酸アリルの濃度を3.1質量%としたサンプル(No.1)、濃度を6.3質量%としたサンプル(No.2)、濃度を12.5質量%としたサンプル(No.3)、濃度を25質量%としたサンプル(No.4)を準備した。第1混合物30においてイソチオシアン酸アリルの代わりにリモネンを用いて、サンプルNo.5~No.8を準備した。サンプルNo.5のリモネンの濃度は、3.1質量%であった。サンプルNo.6のリモネンの濃度は、6.3質量%であった。No.7のリモネンの濃度は、12.5質量%であった。No.8のリモネンの濃度は、25質量%であった。比較のために、イソチオシアン酸アリルおよびリモネンを含まないサンプル(No.9)を準備した。
【0052】
サンプルNo.1~No.9のそれぞれを各瓶に400g供給し、100gの重りをそれぞれの瓶に入れ、瓶を密封した。それぞれの瓶を海面から50cmの深さに沈めた状態を所定期間の間維持した。この際の海水の温度は、約20℃~30℃程度であった。1カ月および2か月の間それぞれの瓶を海水に沈め、それぞれの期間でのフジツボの付着数をカウントした。測定結果を表1に示す。また、サンプルNo.1において、59日後のイソチオシアン酸アリルが放出される量を測定し、イソチオシアン酸アリルの透過量(mg/(cm・day))を算出した。その結果、0.1(mg/(cm・day))となった。
【0053】
【表1】
【0054】
表1を参照して、第1混合物30における忌避材の濃度が3質量%以上であるNo.1~No.8のサンプルでは、忌避材を含まないNo.9のサンプルと比較して、フジツボの付着数を減少させることができる。したがって、第1混合物30における忌避材の濃度は、3質量%以上であることが好ましい。第1混合物30における忌避材の濃度が6質量%以上であるNo.2~No.4のサンプルおよびNo.6~No.8のサンプルでは、フジツボの付着数をさらに減少させることができる。さらに、第1混合物30における忌避材の濃度が10質量%以上であるNo.3、No.4、No.7およびNo.8のサンプルでは、フジツボの付着数をさらに減少させることができる。したがって、第1混合物30における忌避材の濃度は、好ましくは6質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。
【0055】
以上の結果から、上記実施の形態における水中生物忌避装置1における第2壁部を構成する材料や忌避材と同様の材料を用いることで、水中生物が付着し難くなる効果を確認することができた。
【0056】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の水中生物忌避装置は、長期にわたって水中の構造物に水中生物が付着し難くすることが求められる場合に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0058】
1 水中生物忌避装置、10 容器、11A 第1の面、11B 第2の面、12A 第3の面、12B 第4の面、13 表面、14A 第1の面、14B 第2の面、15A 第3の面、15B 第4の面、16,17 配管、18A 第1の面、18B 第2の面、19A 第3の面、19B 第4の面、20 循環部、21 貯留部、22 配管、23 配管、24 配管、25 ポンプ、30 第1混合物、41 供給部、42 弁、43 配管、44 攪拌装置、50 構造物、51 配管、111 第1壁部、111A 第1の層、111B 第2の層、112 第2壁部、113 第3壁部、114 第4壁部、121 第1容器、122 第2容器、123 第3容器、124 第4容器、125 第5容器、126 第6容器、141 第1壁部、142 第2壁部、143 第3壁部、144 第4壁部、145 第5壁部、146 第6壁部、147 第1連結部、148 第2連結部、150 第1の管、151 第1壁部、152 第2壁部、153 第3壁部、154 第4壁部、155A,155B 第5壁部、161 外周面、162 内周面、163 外周面、164 内周面、170 第1部材、171 第1壁部、172 第2壁部、173 第3壁部、174 第4壁部、175 第5壁部、176 凹部、177 突出部、178 第1補強部、179 第2補強部、511 内壁面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9