(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071856
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】位置マップを構築している間での心臓除細動のインスタンスの同定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/33 20210101AFI20220509BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20220509BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20220509BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20220509BHJP
【FI】
A61B5/33 120
A61B5/287 300
A61B5/367 100
A61B5/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021175340
(22)【出願日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】17/082,120
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シャウル・ハイム・ラズ
(72)【発明者】
【氏名】オファー・クレム
(72)【発明者】
【氏名】シュムエル・アウアーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】モラン・モラディ
(72)【発明者】
【氏名】ツァフリール・オッツアー
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG07
4C127GG16
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】心臓内処置中にプローブを追跡すること。
【解決手段】方法は、被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算することと、電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認することと、特性セットに基づいて、複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップからプローブの推定位置を導出することと、計算された位置と推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認することと、心電図信号が飽和していないことに応じて、特性セットを計算された位置にマッピングするように位置マップを更新することと、を含む。他の実施形態も、記述されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップを記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサであって、
被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、前記電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算し、
前記電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認し、
前記特性セットに基づいて、前記位置マップから前記プローブの推定位置を導出し、
計算された前記位置と前記推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、前記被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認し、
前記心電図信号が飽和していないことに応じて、前記メモリ内で、前記特性セットを計算された前記位置にマッピングするように前記位置マップを更新する、
ように構成されている、プロセッサと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記所定の閾値が8~15mmである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記所定の閾値が第1の所定の閾値であり、前記プロセッサが、前記距離が第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、前記位置マップを更新するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記距離が前記第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、前記被験者からの前記心電図信号が飽和しているかどうかを確認するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の所定の閾値が15mmよりも大きい、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の所定の閾値が15~30mmである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、
前記プローブの別の位置を計算して別の特性セットを確認し、
前記心電図信号が飽和していることに応じて、前記別の特性セットを計算された前記別の位置にマッピングするように前記位置マップの更新を取り止める、
ように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記心電図信号が飽和していることに応じて、所定の持続時間にわたって前記位置マップの更新を取り止めるように更に構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記所定の持続時間が4~5秒である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、前記電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算することと、
前記電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認することと、
前記特性セットに基づいて、複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップから前記プローブの推定位置を導出することと、
計算された前記位置と前記推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、前記被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認することと、
前記心電図信号が飽和していないことに応じて、前記特性セットを計算された前記位置にマッピングするように前記位置マップを更新することと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記所定の閾値が8~15mmである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の閾値が第1の所定の閾値であり、前記位置マップを更新することは、前記距離が第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、前記位置マップを更新することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認することは、前記距離が前記第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、前記被験者からの前記心電図信号が飽和しているかどうかを確認することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の所定の閾値が15mmよりも大きい、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の所定の閾値が15~30mmである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プローブの別の位置を計算して別の特性セットを確認することと、
前記心電図信号が飽和していることに応じて、前記別の特性セットを計算された前記別の位置にマッピングするように前記位置マップの更新を取り止めることと、
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記心電図信号が飽和していることに応じて、所定の持続時間にわたって前記位置マップの更新を取り止めること、を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記所定の持続時間が4~5秒である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
プログラム命令が格納される有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、前記命令がプロセッサによって読み取られると、前記プロセッサに、
被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、前記電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算させ、
前記電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認させ、
前記特性セットに基づいて、複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップから前記プローブの推定位置を導出させ、
計算された前記位置と前記推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、前記被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認させ、
前記心電図信号が飽和していないことに応じて、前記特性セットを計算された前記位置にマッピングするように前記位置マップを更新させる、
コンピュータソフトウェア製品。
【請求項20】
前記命令が、前記プロセッサに、更に、
前記プローブの別の位置を計算させて別の特性セットを確認させ、
前記心電図信号が飽和していることに応じて、前記別の特性セットを計算された前記別の位置にマッピングするように前記位置マップの更新を取り止めさせる、
請求項19に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓内処置中のプローブの追跡に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,536,218号(Govariら)は、被験者の体腔に導入されるように適合されたプローブを含む位置感知システムについて記載しており、その開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。プローブは、磁界トランスデューサと、少なくとも1つのプローブ電極と、を有する。制御ユニットは、磁界トランスデューサを使用してプローブの位置座標を測定するように構成される。制御ユニットはまた、少なくとも1つのプローブ電極と、被験者の体表面上の1つ又は2つ以上の点との間のインピーダンスを測定する。測定された位置座標を使用して、制御ユニットは、測定されたインピーダンスを較正する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明のいくつかの実施形態によれば、複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップを格納するように構成されたメモリと、プロセッサと、を含む、システムが提供される。プロセッサは、被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算するように構成されている。プロセッサは、電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認するように、更に構成されている。プロセッサは、特性セットに基づいて、位置マップからプローブの推定位置を導出するように更に構成されている。プロセッサは、計算された位置と推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認するように更に構成されている。プロセッサは、心電図信号が飽和していないことに応じて、メモリ内で、特性セットを計算された位置にマッピングするように位置マップを更新するように更に構成されている。
【0004】
いくつかの実施形態では、所定の閾値は8~15mmである。
【0005】
いくつかの実施形態では、所定の閾値が第1の所定の閾値であり、プロセッサが、距離が第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、位置マップを更新するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、距離が第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、第2の所定の閾値は15mmよりも大きい。
【0008】
いくつかの実施形態では、第2の所定の閾値は15~30mmである。
【0009】
一部の実施形態では、プロセッサは、
プローブの別の位置を計算して他の特性セットを確認し、
心電図信号が飽和していることに応じて、別の特性セットを計算された別の位置にマッピングするように位置マップの更新を取り止める、ように更に構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、心電図信号が飽和していることに応じて、所定の持続時間にわたって位置マップの更新を取り止めるように更に構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、所定の持続時間は4~5秒である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算することを含む方法が更に提供される。本方法は、電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認することを更に含む。本方法は、特性セットに基づいて、複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップからプローブの推定位置を導出することを更に含む。本方法は、計算された位置と推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認することを更に含む。本方法は、心電図信号が飽和していないことに応じて、特性セットを計算された位置にマッピングするように位置マップを更新することを更に含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、プログラム命令が格納される有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、命令がプロセッサによって読み取られると、プロセッサに、被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算させる、コンピュータソフトウェア製品が更に提供される。命令は、更に、プロセッサに、電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認させる。命令は、更に、プロセッサに、特性セットに基づいて、複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップからプローブの推定位置を導出させる。命令は、更に、プロセッサに、計算された位置と推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認させる。命令は、更に、プロセッサに、心電図信号が飽和していないことに応じて、特性セットを計算された位置にマッピングするように位置マップを更新させる。
【0014】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、位置マップを計算するためのシステムの模式図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による、体内プローブの模式図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による、体内プローブの模式図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、位置マップを構築している間に心臓除細動のインスタンスを同定するためのアルゴリズムのフロー図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態に従って行われるヒト被験者に対する処置から得られる実験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概要
上の背景技術において引用されたGovariらの米国特許第7,536,218号は、体内プローブの位置を追跡するためのハイブリッド追跡システムについて記載している。このシステムでは、プローブは、電磁センサ及び1つ以上の位置追跡電極を備えている。プローブが被験者の体腔内で移動する間、外部磁界によって信号が電磁センサ内に誘導され、プロセッサは、誘導された信号に基づいてプローブの位置を計算する。加えて、プローブの位置と共に特性が変動する位置追跡信号は、位置追跡電極と被験者の体表面上にある1つ以上の基準電極との間でパスされる。プロセッサは、位置追跡信号の特性を、誘導信号から計算されるプローブの位置にマッピングする位置マップを構築する。続いて、位置追跡電極及び位置マップを使用して、電磁センサを含まないが位置追跡電極を含む別のプローブが追跡され得る。
【0017】
上記のように位置マップを構築する場合の課題は、被験者に対して行われる任意の心臓除細動(cardioversion)処置が位置追跡信号の特性を変更することがあり、それによって、位置追跡信号がプローブの位置を正確に示さないことである。したがって、心臓除細動処置中に位置マップの構築が継続する場合、マップの正確性が損なわれる。心臓除細動に使用される心臓除細動器が典型的にはプロセッサに接続されていないと仮定すると、プロセッサは、心臓除細動がいつ行われたか分からない。
【0018】
この課題に対処するために、本発明の実施形態は、位置追跡信号に基づいてプローブの推定位置を計算するために位置マップを使用する。推定位置が、「真」位置(誘導信号から計算される)から閾値距離を超えて逸脱した場合、プロセッサは、被験者からの心電図(ECG)信号が飽和しているかどうかを確認する。信号が飽和しており、心臓除細動が進行している可能性が高いことを示している場合、プロセッサは、典型的には所定の時間が経過するまで、位置マップの更新を取り止める。
【0019】
典型的には、より高い第2の閾値距離もまた定義される。推定位置が真の位置から第2の閾値距離を超えて逸脱した場合、プロセッサは、ECG信号をチェックすることなく、位置マップの更新を取り止めることができる。
【0020】
システムの説明
最初に、本発明のいくつかの実施形態による、位置マップを計算するためのシステム20の模式図である
図1を参照する。本発明のいくつかの実施形態による、体内プローブ40の模式図である
図2A~
図2Bも参照する。プローブ40は、複数の偏向可能なアーム54(
図2A)、膨張可能なバルーン45(
図2B)、又は任意の他の好適な構造に遠位端で連結され得る、シャフト22を備えている。
【0021】
プローブ40は、1つ以上の位置追跡電極52を備えている。例えば、
図2A~
図2Bに示すように、プローブは、近位位置追跡電極52a及び遠位位置追跡電極52bを備えてもよい。プローブ40は、電磁センサ50を更に備え、当該電磁センサは、2つの追跡電極(
図2A)の間で、近位位置追跡電極52a(
図2B)の近位で、又は任意の他の好適な位置で、シャフト22に連結され得る。任意選択的に、プローブは、心組織の切除及び/又は心組織からの電位図信号の感知のための追加の電極55を更に備えてもよい。上記のセンサ及び電極は、シャフト22を通って延びるワイヤを介して、コンソール24内のインターフェース回路44に接続される。インターフェース回路44は、アナログ-デジタル(A/D)コンバータ及び/又は任意の他の好適な構成要素を備えてもよい。
【0022】
図1に示すように、医師30は、プローブ40を被験者28の脈管構造内に挿入し、次いで、典型的にはシャフト22を操作するために制御ハンドル32を使用して、被験者28の心臓26内の標的位置にプローブをナビゲートする。典型的には、プローブは、プローブの遠位端を拘束するシース23を通してナビゲートされる。標的位置に到達したことに続いて、シース23を後退させ、プローブの遠位端を拡張する。
【0023】
図1に更に示すように、被験者28は、磁界発生器コイル42によって発生した磁界内に配置される。具体的には、第1の信号発生器(SIG GEN)43はコイル42を介して信号を駆動し、それにより、コイルが磁界を発生する。磁界は、電磁センサ50内で信号を誘導し、誘導された信号はセンサの位置と共に変動する。センサ50からの誘導信号は、インターフェース回路44によって受信される。
【0024】
加えて、プローブが心臓26内で移動すると、第2の信号発生器47は、位置追跡電極52と基準電極49との間で位置追跡信号をパスする。基準電極49は、プローブと共に移動しない、それぞれの基準位置に位置している。例えば、基準電極は、被験者の胸部及び/又は背部など、被験者の体表面に連結されてもよい。具体的には、(
図1に示すように)3つの基準電極を被験者の胸部に連結してもよく、別の3つの基準電極を被験者の背部に連結してもよい。(基準電極は、典型的には、ケーブル39を介してインターフェース回路44に接続される。)プローブが移動すると、位置追跡電極52と基準電極49との間のインピーダンスが変化し、それにより、位置追跡信号の特性がプローブの位置と共に変動する。
【0025】
システム20は、典型的にはコンソール24に含まれているプロセッサ(PROC)41を、更に備えている。プロセッサ41は、第1の信号発生器43及び第2の信号発生器47など、システム20の様々な他の構成要素を制御するように構成されている。プロセッサ41は、インターフェース回路44を介して、電磁センサ50からの誘導信号を受信するように更に構成されている。誘導信号に基づいて、プロセッサはプローブ40の位置を計算する。(プローブの位置は、センサの位置として、又はセンサからの固定変位におけるプローブ40の別の部分の位置として定義してもよい。)この計算を行う際、プロセッサは、米国特許第5,391,199号、同第5,443,489号、及び同第6,788,967号(Ben-Haim)、米国特許第6,690,963号(Ben-Haimら)、米国特許第5,558,091号(Ackerら)、及び米国特許第6,177,792号(Govari)に記載されているものなど、任意の好適な技術を使用してもよい。
【0026】
プロセッサ41は、インターフェース回路を介して位置追跡信号を受信し、それぞれの位置追跡信号の特性セットを確認するように更に構成されている。各特性セットは、例えば、電極の各対の間、例えば、近位位置追跡電極52aと基準電極の各々との間、及び遠位位置追跡電極52bと基準電極の各々との間の、電圧及び/又は電流を含み得る。(具体的には、第2の信号発生器47が電圧源として作用する実施形態では、各特性セットは電流を含み得るが、第2の信号発生器が電流源として作用する実施形態では、各特性セットは電圧を含み得る。)代替的に又は追加的に、各特性セットは、電極の各対の間で算出されるインピーダンスを含んでもよい。
【0027】
(前述の電圧、電流、及びインピーダンスの各々は、絶対数として表してもよく、或いは相対数として表してもよくことに留意されたい。後者の例として、近位位置追跡電極52aと基準電極のうちの1つとの間の電流は、近位位置追跡電極52aとその基準電極との間の全電流の割合として表すことができる。)
【0028】
プロセッサ41は、インターフェース回路を介して、被験者の身体に連結された心電図(ECG)電極(図示せず)から心電図電位を受信するように更に構成されている。(ECG電極は、ケーブル39又は別のケーブルを介してインターフェース回路に接続され得る。)当分野において既知の技術を使用して、プロセッサは、電位を単一の心電図信号に組み合わせる。
【0029】
図3を参照して以下で更に説明するように、プロセッサは、プローブのそれぞれの位置(POS)に様々な特性セット(PROP)をマッピングする位置マップ36を構築するように構成されている。マップ36が構築されている間、マップは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などのメモリ34に記憶され得る。位置マップ36を構築するプロセスは、位置追跡信号の特性がプローブの位置を示す方法をプロセッサが学習するという点で、位置追跡電極52及び基準電極49を備える電極ベースの追跡システムの「較正」と呼ばれることがある。電極ベースの追跡システムを較正したことに続いて、後続の処置中に、電極ベースの追跡システムを使用して、位置追跡電極52は備えているがセンサ50は備えていない別のプローブを追跡することができる。
【0030】
較正が行われている間、プローブ40を使用して、心臓内組織を切除すること、標的位置の電気生理学的マップを構築すること、及び/又は任意の他の好適な処置を行うことができる。或いは、任意の他の処置を同時に実行せずに、較正を行ってもよい。このような実施形態では、プローブは、必ずしも、シャフト22の遠位に電極を備える必要はない。
【0031】
典型的には、システム20は、ディスプレイ27を更に備えている。プローブの計算された位置に基づいて、プロセッサ41は、ディスプレイ27上に、プローブを表すアイコンを、標的位置の画像の上に重ねて表示してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、電極55は位置追跡のために使用され、すなわち、電極55と基準電極49との間で位置追跡信号がパスされ、プロセッサは、これらの信号の特性を確認し、それに応じて位置マップ36を構築する。このような実施形態では、プローブ40は、必ずしも位置追跡電極52を備える必要はない。
【0033】
較正が行われている間、被験者は、心臓除細動器51を使用して心臓除細動処置を行う必要がある場合がある。
図3を参照して以下で詳細に説明するように、プロセッサ41は、心臓除細動のあらゆるインスタンスを同定し、それに応じて較正を一時停止するように構成される。
【0034】
概して、プロセッサ41は、単一のプロセッサとして、又は協働的にネットワーク化若しくはクラスタ化されたプロセッサのセットとして具現化され得る。プロセッサ41のいくつかの機能は、例えば、1つ以上の固定機能若しくは汎用集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用して、ハードウェアにのみ実装されてもよい。或いは、この機能は、少なくとも部分的にソフトウェアに実装されてもよい。例えば、プロセッサ41は、例えば、中央処理装置(CPU)及び/又はグラフィック処理ユニット(GPU)を備える、プログラムされたプロセッサとして具現化され得る。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコード、及び/又はデータは、CPU及び/又はGPUによる実行並びに処理のためにRAMにアップロードしてもよい。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でプロセッサにダウンロード可能である。代替的に又は追加的に、プログラムコード及び/又はデータは、磁気、光学、又は電子メモリなどの非一時的有形媒体上に提供及び/又は記憶され得る。このようなプログラムコード及び/又はデータは、プロセッサに提供されると、本明細書に記載されているタスクを行うように構成された機械又は専用コンピュータを生じさせる。
【0035】
心臓除細動のインスタンスを同定する
次に、本発明のいくつかの実施形態による、位置マップ36を構築する間に心臓除細動のインスタンスを同定するためのアルゴリズム56のフロー図である
図3を参照する。アルゴリズム56は、プローブが被験者の心臓の内部にある間に、典型的にはリアルタイムで、プロセッサ41によって実行される。
【0036】
アルゴリズム56により、プロセッサは、位置計算工程58において、電磁(EM)センサから受信した誘導信号に基づいて、被験者の心臓内におけるプローブの位置を反復的に計算する。プローブ位置を計算するたびに、プロセッサはまた、特性セット確認工程60において、位置追跡信号の特性セットを確認する。特性セットに基づいて、プロセッサは、推定位置導出工程62において、位置マップ36(
図1)からプローブの推定位置を導出する。
【0037】
(アルゴリズム56の各反復の間、特性セット確認工程60及び任意選択的に推定位置導出工程62を、位置計算工程58の前に行ってもよいことに留意されたい。)
【0038】
プローブの位置を計算し、推定位置を導出したことに続いて、プロセッサは、距離計算工程64において、計算された位置と推定位置との間の距離を計算する。次に、第1の比較工程66において、プロセッサは、距離を、典型的には8~15mmである第1の所定の閾値と比較する。
【0039】
距離が第1の閾値以下である場合、プロセッサは、マップ更新工程74において、確認された特性セットを位置にマッピングするように位置マップを更新する。距離が第1の閾値以下でない場合、プロセッサは、飽和チェック工程70において、被験者からの心電図信号が飽和しているかどうか、すなわち、心電図信号の振幅が所定の閾値を超えているかどうかを確認する。心電図信号が飽和していない場合、プロセッサは位置マップを更新し、心電図信号が飽和している場合、プロセッサは、心電図信号の飽和が心臓除細動を示し、したがって、位置追跡信号の信頼性を低下させると仮定して、位置マップの更新を取り止める。
【0040】
位置マップを更新したことに続いて、プロセッサは、位置計算工程58に戻る。
【0041】
典型的には、距離が第1の閾値よりも大きい場合、位置マップの更新は、2つの条件が満たされることを必要とする。1つ目は、(上述のように)心電図信号が飽和していないことであり、2つ目は、距離が、典型的には15mm超である、例えば15~30mmである、第2の所定の閾値を超えていないことである。
【0042】
例えば、飽和チェック工程70を行う前に、プロセッサは、第2の比較工程68において、距離を第2の所定の閾値と比較してもよい。距離が第2の所定の閾値を超えていない場合、プロセッサは、飽和チェック工程70を行う。距離が第2の所定の閾値を超えている場合、プロセッサは、位置マップの更新を取り止める。
【0043】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、心電図信号が飽和していることに応じて(又は、距離が第2の閾値よりも大きいことに応じて)、所定の持続時間にわたって位置マップを更新することを取り止める。換言すれば、心電図信号が飽和している(又は、距離が第2の閾値を超えている)ことを確認したことに続いて、プロセッサは、待機工程72において、所定の持続時間にわたって待機する。典型的には、所定の持続時間は4~5秒であり、これは一般的に、電極ベースの追跡システムが心臓除細動事象から回復するのに十分な時間である。待機に続いて、プロセッサは、位置計算工程58に戻る。
【0044】
他の実施形態では、プロセッサは、位置マップを更新するための条件が満たされている限り、任意の後続の時間に位置マップを更新してもよい。このような実施形態では、心電図信号が飽和している(又は、距離が第2の閾値を超えている)ことを確認したことに続いて、プロセッサは、所定の持続時間にわたって最初に待機することなく、位置計算工程58に戻る。
【0045】
いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、誘導信号、ECG信号、及び位置追跡信号の記録に基づいて、オフラインで実行される。このような実施形態では、プロセッサは、位置マップを更新するために、ECG飽和が発生した時(又は、距離が第2の閾値を超え始めた時)の所定の持続時間内に取得された任意の記録されたデータを使用することを取り止めることができる。
【0046】
実験データ
次に、本発明のいくつかの実施形態に従って行われるヒト被験者に対する処置から得られる実験データを示す、
図4を参照する。データは、EMセンサから受信した誘導信号に基づいて計算されるプローブの位置と、位置マップから導出されるプローブの推定位置との間の距離の第1のプロット76を含む。データは、処置中に被験者から得られたECG信号の第2のプロット78を更に含む。2つのプロットは、時間軸に対して整列している、すなわち、プロットは同期している。
【0047】
処置中、心臓除細動事象が約4.525秒から4.528秒の間に発生した。心臓除細動事象の結果として、距離は、約2mmを中心とする以前の範囲から実質的に増大した。加えて、ECG信号が飽和し、P-Q-R-S-T波80を示す代わりに、ECG信号はゼロで平坦であり、ECG電極の各々において見られる心電図電位がシステム20によって測定可能な最大値(100mV)を超え、電位間の差がゼロであったことを示している。
【0048】
したがって、実験データは、ECG信号の飽和が、心臓除細動事象を示すことを実証する。データは更に、電極ベースの追跡システムが心臓除細動事象から回復する時間(したがって、その心臓除細動前の範囲に戻る距離について)が、ECG信号が回復するのに必要な時間よりも実質的に長く(例えば、4~5秒長く)なり得ることを更に実証する。
【0049】
本発明が、本明細書に具体的に示され、上述されたものに限定されない点が、当業者には理解されよう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、本明細書に上述されている様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに、上記の説明を一読すれば当業者には想起されると思われる、先行技術には存在しない特徴の変更例及び改変例を含む。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0050】
〔実施の態様〕
(1) 複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップを記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサであって、
被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、前記電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算し、
前記電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認し、
前記特性セットに基づいて、前記位置マップから前記プローブの推定位置を導出し、
計算された前記位置と前記推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、前記被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認し、
前記心電図信号が飽和していないことに応じて、前記メモリ内で、前記特性セットを計算された前記位置にマッピングするように前記位置マップを更新する、
ように構成されている、プロセッサと、
を備える、システム。
(2) 前記所定の閾値が8~15mmである、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記所定の閾値が第1の所定の閾値であり、前記プロセッサが、前記距離が第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、前記位置マップを更新するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサは、前記距離が前記第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、前記被験者からの前記心電図信号が飽和しているかどうかを確認するように構成されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記第2の所定の閾値が15mmよりも大きい、実施態様3に記載のシステム。
【0051】
(6) 前記第2の所定の閾値が15~30mmである、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサが、
前記プローブの別の位置を計算して別の特性セットを確認し、
前記心電図信号が飽和していることに応じて、前記別の特性セットを計算された前記別の位置にマッピングするように前記位置マップの更新を取り止める、
ように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサが、前記心電図信号が飽和していることに応じて、所定の持続時間にわたって前記位置マップの更新を取り止めるように更に構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記所定の持続時間が4~5秒である、実施態様8に記載のシステム。
(10) 被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、前記電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算することと、
前記電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認することと、
前記特性セットに基づいて、複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップから前記プローブの推定位置を導出することと、
計算された前記位置と前記推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、前記被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認することと、
前記心電図信号が飽和していないことに応じて、前記特性セットを計算された前記位置にマッピングするように前記位置マップを更新することと、
を含む、方法。
【0052】
(11) 前記所定の閾値が8~15mmである、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記所定の閾値が第1の所定の閾値であり、前記位置マップを更新することは、前記距離が第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、前記位置マップを更新することを含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認することは、前記距離が前記第2の所定の閾値を超えていないことに応じて、前記被験者からの前記心電図信号が飽和しているかどうかを確認することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記第2の所定の閾値が15mmよりも大きい、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記第2の所定の閾値が15~30mmである、実施態様14に記載の方法。
【0053】
(16) 前記プローブの別の位置を計算して別の特性セットを確認することと、
前記心電図信号が飽和していることに応じて、前記別の特性セットを計算された前記別の位置にマッピングするように前記位置マップの更新を取り止めることと、
を更に含む、実施態様10に記載の方法。
(17) 前記心電図信号が飽和していることに応じて、所定の持続時間にわたって前記位置マップの更新を取り止めること、を更に含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記所定の持続時間が4~5秒である、実施態様17に記載の方法。
(19) プログラム命令が格納される有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、前記命令がプロセッサによって読み取られると、前記プロセッサに、
被験者の心臓内における、1つ以上の電極及び電磁センサを含む体内プローブの位置を、前記電磁センサから受信される誘導信号に基づいて計算させ、
前記電極と、それぞれの基準位置に位置する複数の基準電極との間でパスされる信号の特性セットを確認させ、
前記特性セットに基づいて、複数の特性セットをそれぞれの推定位置にマッピングする位置マップから前記プローブの推定位置を導出させ、
計算された前記位置と前記推定位置との間の距離が所定の閾値よりも大きいことに応じて、前記被験者からの心電図信号が飽和しているかどうかを確認させ、
前記心電図信号が飽和していないことに応じて、前記特性セットを計算された前記位置にマッピングするように前記位置マップを更新させる、
コンピュータソフトウェア製品。
(20) 前記命令が、前記プロセッサに、更に、
前記プローブの別の位置を計算させて別の特性セットを確認させ、
前記心電図信号が飽和していることに応じて、前記別の特性セットを計算された前記別の位置にマッピングするように前記位置マップの更新を取り止めさせる、
実施態様19に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【外国語明細書】