(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071858
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリオレフィン系スラッシュ粉末組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20220509BHJP
C08L 23/14 20060101ALI20220509BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220509BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L23/14
C08K3/34
C08J3/12 A CES
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175462
(22)【出願日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】17/082,706
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521082259
【氏名又は名称】シーピーケイ インテリオール プロダクツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ムラリ モハン レディー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ジェームス ファーラー
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA15
4F070AB11
4F070AC22
4F070AE03
4F070DA41
4F070DC07
4J002BB142
4J002BP031
4J002BP033
4J002DA019
4J002DJ046
4J002EU077
4J002EU078
4J002FD016
4J002FD037
4J002FD048
4J002FD090
4J002FD189
4J002FD313
(57)【要約】
【課題】熱可塑性ポリオレフィン(TPO)粉末を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリオレフィン(TPO)粉末が提供される。TPO粉末は、オレフィンブロックコポリマー(OBC)と、ポリプロピレンコポリマーと、接着促進剤と、硫黄フリー安定剤添加剤と、非移行性ヒンダードアミン光安定剤(HALS)および着色顔料を含んでいる組成物と、タルクと、を含んでいる。前記TPO粉末から形成されたTPO材料、ならびに前記TPO粉末およびTPO材料を製造する方法も提供される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約50重量%以上、約70重量%以下の濃度のオレフィンブロックコポリマー(OBC);
約10重量%以上、約20重量%以下の濃度のポリプロピレンコポリマー;
約1重量%以上、約10重量%以下の濃度の接着促進剤;
約0.1重量%以上、約0.8重量%以下の濃度の硫黄フリー安定剤添加剤;
約2重量%以上、約6重量%以下の濃度の、非移行性ヒンダードアミン光安定剤(HALS)および着色顔料を含んでいる組成物;並びに
約3重量%以上、約10重量%以下の濃度のタルク
を含んでいる、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)組成物。
【請求項2】
前記OBCは、エチレン-1-オクテンコポリマーを含み、
前記エチレン-1-オクテンコポリマーは、
前記エチレン-1-オクテンコポリマーの総重量に基づいて、約50重量%以上、約70重量%以下のエチレンを含み、且つ
約0.887g/cm3以上、約0.95g/cm3以下の密度を有している、
請求項1に記載のTPO組成物。
【請求項3】
前記エチレン-1-オクテンコポリマーは、2.18kgの前記エチレン-1-オクテンコポリマーおよび約180℃の温度を使用して、ASTM D-1238に従って測定した場合に、約5g/10分以上、約20g/10分以下のメルトフローレートを有している、
請求項2に記載のTPO組成物。
【請求項4】
前記ポリプロピレンコポリマーは結晶性であり、
約30J/m以上、約40J/m以下の低い衝撃強度を有し、且つ
2.16kgの前記ポリプロピレンコポリマーおよび約230℃の温度を使用して、ASTM D-1238に従って測定した場合に、約100g/10分のメルトフローレートを有している、
請求項1に記載のTPO組成物。
【請求項5】
前記接着促進剤は、無水マレイン酸グラフトOBCを含んでいる、請求項1に記載のTPO組成物。
【請求項6】
前記接着促進剤は、
約95重量%以上、約98重量%以下の濃度の無水マレイン酸グラフトエチレン-1-オクテンコポリマー;
約1重量%以上、約3重量%以下の濃度の無水マレイン酸;および
約1重量%以上、約2重量%以下の濃度のN-エチルエチレンジアミン
を含み、
前記重量%は、前記接着促進剤の総重量に基づく、
請求項1に記載のTPO組成物。
【請求項7】
前記硫黄フリー安定剤添加剤は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル-ヘキサデカノエートおよび2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルオクタデカノエートを含んでいる、請求項1に記載のTPO組成物。
【請求項8】
前記TPO組成物は、約100μm以上、約200μm以下の粒径を有している粒子を含んでいるTPO粉末の形態である、請求項1に記載のTPO組成物。
【請求項9】
前記TPO粉末は、約26°以上、約34°以下の安息角を有している、請求項8に記載のTPO組成物。
【請求項10】
前記TPO粉末は、約18lb/ft3以上、約21lb/ft3以下の嵩密度を有している、請求項8に記載のTPO組成物。
【請求項11】
前記TPO組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%以上、約10重量%以下の濃度でグラフェンをさらに含んでいる、請求項1に記載のTPO組成物。
【請求項12】
前記TPO組成物は、スラッシュおよび回転により成形された物品の部品である、請求項1に記載のTPO組成物。
【請求項13】
前記スラッシュおよび回転により成形された物品は、自動車車両の内装コンポーネントである、請求項12に記載のTPO組成物。
【請求項14】
熱可塑性ポリオレフィン(TPO)材料を含んでいる物品であって、
前記TPO材料は、
約50重量%以上、約70重量%以下の濃度のオレフィンブロックコポリマー(OBC);および
約10重量%以上、約20重量%以下の濃度のポリプロピレンコポリマー
を含み、
前記重量%は、前記TPO材料の総重量に基づく、
前記物品。
【請求項15】
前記TPO材料は、
約1重量%以上、約10重量%以下の濃度の接着促進剤;
約0.1重量%以上、約0.8重量%以下の濃度の硫黄フリー安定剤添加剤;
約2重量%以上、約6重量%以下の濃度の、非移行性ヒンダードアミン光安定剤(HALS)および着色顔料を含んでいる組成物;並びに
約3重量%以上、約10重量%以下の濃度のタルク
をさらに含み、
前記重量%は、前記TPO材料の総重量に基づく、
請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記TPO材料は、前記TPO材料の総重量に基づいて、約0.05重量%以上、約10重量%以下の濃度でグラフェンをさらに含んでいる、請求項14に記載の物品。
【請求項17】
前記TPO材料は、可撓性軟質スキンである、請求項14に記載の物品。
【請求項18】
前記物品は、
堅い基材と、
前記堅い基材と前記TPO材料との間に配置された連続気泡フォームと、
をさらに含んでいる、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
熱可塑性ポリオレフィン(TPO)組成物の製造方法であって、
オレフィン-ブロックコポリマー(OBC)、ポリプロピレン、および接着促進剤を一緒に混合して混合物を形成すること;
前記混合物を溶融押出して押出材を形成すること;および
前記押出材をペレット化してTPOペレットを形成すること、
を含んでいる、前記方法。
【請求項20】
前記接着促進剤は、無水マレイン酸グラフトOBCを含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記TPOペレットを粉砕して、TPO粉末を形成することをさらに含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記TPO粉末は、スラッシュ成形グレードである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔背景技術〕
本発明は概して、現場発泡プロセス中にポリウレタン系フォームに付着する、自動車の内装スキン用などのスラッシュ成形シェル用のポリオレフィン系組成物に関する。
【0002】
従来、例えば、インストルメントパネル、ドアアッパー、コンソールなど用といった自動車の内装に使用される軟質スキンは、スラッシュ成形プロセスを用いて作られる。多くのスキンは、現場発泡プロセスによって背面発泡され、当該現場発泡プロセスは、例えば、ポリウレタンフォームがスキンと硬質基材との間に注入および/または形成されて、所望の触覚または所望の触覚および感触をもたらすプロセスである。
【0003】
スラッシュ成形は、モールド(典型的には3~4mm厚のニッケルモールド)を加熱すること、加熱されたモールドに高分子の粉末または樹脂を注入すること、およびモールドを回転させることを含んでいる。モールドが回転している間に、粉末の少なくとも一部が溶融し、所望の形状を有しているモールドの内面に形成される。冷却およびモールドから取り出した後に、所望の形状を有しているスキンが形成される。このプロセスの間に、粉末または樹脂がモールド内を滑らかに流れることが重要である。ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂は、例えば、スラッシュ成形のための良好な流動性を示す非晶質の性質を有している。対照的に、従来の熱可塑性オレフィン配合物は、粉砕技術から生じるフックおよびテールを有しており、これは、スラッシュ成形のための許容できない不十分な流動性につながり、これは次に、より高いスクラップ率および粗悪な製品につながる。
【0004】
現場発泡加工は、所望の触覚を達成するために自動車の内装に使用される。現場発泡加工は、イソシアネートおよびポリオールを、外側スキン(例えば、スラッシュ成形によって製造される)と堅い支持体(例えば、インストルメントパネル用の可塑性の支持体)との間に注入して、スキンと堅い支持体とを一緒に結合するポリウレタンフォームを形成することを含む。得られた製品は、少なくとも部分的にポリウレタンフォームであるために、非常に柔らかい触覚を有している。PVCおよび熱可塑性ポリウレタン(TPU)の極性の性質は、スキンとポリウレタンフォームとの間の所望の接着を達成するための優れたスキン候補を作り、一方、非極性の熱可塑性ポリオレフィン(TPO)は、接着性に劣り、ポリウレタンフォームに適切に接着するために追加の表面処理を必要とする。しかしながら、火炎処理およびプラズマ処理などの表面処理の有効性は、製造されるコンポーネントの設計によって制限される。そのため、PVCおよびTPUは、スラッシュ成形された部品および軟質スキンのために、自動車産業において広く使用されており、TPOは使用されていない。
【0005】
PVCは、コスト上の利点および上記の理由により、スラッシュ成形のための優れた候補である。しかしながら、その性能は可塑剤に依存する。可塑剤は時間が経つにつれておよび様々な温度で劣化することがあり、約-30℃未満の温度では、所望の柔軟性に達しない。TPUは、これらの問題を克服することができる。しかしながら、TPUは、多くの自動車用途にとってコストが法外である。PVCおよびTPUに関する別の共通の問題は、それらが両方とも揮発性有機化合物(VOCs)を放出することである。VOCは、多くの国において法律によって規制されている。
【0006】
米国特許第6,812,285号は、スラッシュ成形用の熱可塑性エラストマー(TPE)組成物を記載している。TPE組成物は、(a)ビニル芳香族炭化水素単量体ユニットである主構成要素を備えた少なくとも1種の重合体ブロックAと、(b)水素化ブタジエン単量体ユニットである主構成要素を備えた少なくとも1種の重合体ブロックBと、を有しているポリプロピレン水素化ブロックコポリマーである。
【0007】
米国特許出願公開第2012/0070665号は、スラッシュ成形用の熱可融性TPE組成物を記載している。この配合物は、40~70重量%の選択的に水素化されたスチレンブロックコポリマー(HSBC)、および1~30重量%のブチレンホモポリマー、ブチレンコポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。この配合物は、スラッシュ粉末を得るために極低温粉砕される。
【0008】
米国特許第8,674,027号は、粉末形態のTPOエラストマー組成物を記載しており、当該組成物は、オレフィン-ブロックコポリマー(OBC)、直鎖エチレンポリマー、および/または直鎖エチレンポリマー、並びに、例えばインストルメントパネルを含む内装用途のためのスキンのスラッシュ成形用のプロピレンポリマーブレンドを含んでいる。
【0009】
参照文献はスラッシュ成形製品用のTPEまたはTPOを記載しているにもかかわらず、PVCおよびTPUは、自動車産業における多くの商業用途において使用され続けている。PVCおよびTPUのこの継続的な使用の理由には以下が含まれる:(i)極低温または室温粉砕から生じるTPE/TPO粉末の不均一な流動挙動、これは不均一な厚さおよび高いスクラップ率を有するスラッシュ成形製品を生じる、(ii)火炎処理、コロナ処理、およびプラズマ処理などの表面処理の有無にかかわらず、ポリウレタンフォームとのTPE/TPOの接着が劣る、(iii)多くのTPE/TPO製品は、120℃でのエージング要件を満たさない、(iv)耐引掻性は、TPE/TPO製品では時間が経つにつれて失われ、且つ(v)大きな破損(許容できない故障モード)を有することなく、TPE/TPOパネルを通じたエアバッグ展開が困難である。
【0010】
優れたポリウレタン接着性、擦れおよびキズ付き(scuff and mar)、低曇り(low fog)、耐紫外線性、サブゼロ温度性能、並びに許容可能なエアバッグ展開を備えたスラッシュ成形グレードのTPO粉末が望まれる。TPOは、その低いVOC産出、可塑剤含有量の欠如、およびリサイクル性のために、この目的のために考慮される。
【0011】
本技術の種々の態様において、TPO組成物は、TPOペレットとして、またはTPO粉末(TPOペレットから形成された)として提供される。TPOペレットは、人工皮革スキンまたは圧延膜に加工されるように構成される。TPO粉末は、PVCおよびTPUの利点を有している成形されたTPO材料にスラッシュ成形されるように構成される。しかし、成形されたTPO材料は、低VOC産出、良好な密着性、長期間の高熱性能、および信頼性の高いエアバッグ展開(インストルメントパネル用途向け)も有している。
【0012】
TPO組成物は、OBC、ポリプロピレンコポリマー、および無水マレイン酸グラフトOBCを含む。ある態様において、OBCはエチレン-1-オクテンコポリマーであり、無水マレイン酸グラフトOBCは、無水マレイン酸でグラフトされたエチレン-1-オクテンコポリマーである。いくつかの態様において、TPO材料はまた、グラフェンなどの抗菌剤、および任意選択で金属酸化物を含んでいる。
【0013】
TPO粉末は、約26°以上、約34°以下の安息角、および約18lb/ft3以上、約21lb/ft3以下の嵩密度を有している。TPO粉末は球形粒子を有しており、例えば、約0.8mm以上、約1.4mm以下の厚さを有しているドアおよびインストルメントパネル用の自動車の内装スキンなどのTPO材料を製造するためのスラッシュ成形プロセスに適している。TPO材料は、火炎処理などの二次加工を施すことなく、約3N/in以上の接着剥離強度で連続気泡フォームに直接結合する。したがって、TPO材料は、堅い基材上に配置された連続気泡フォーム上に配置可能であり、その結果、得られる物品は、TPO材料と堅い基材との間に配置された連続気泡フォームを含んでおり、ここでは、TPOは連続気泡フォームに直接結合する。
【0014】
本技術の種々の他の態様において、TPO粉末を作製する方法は、OBC、ポリプロピレン、および接着促進剤を組み合わせて混合物を形成すること;前記混合物を溶融押出して押出材を形成すること;前記押出材をペレット化してTPOペレットを形成すること;および前記TPOペレットを粉砕してTPO粉末を形成することを含んでいる。TPO粉末は、スラッシュ成形グレードである。
【0015】
本技術の種々の他の態様において、物品を製造する方法は、TPO粉末をモールドの内部に導入すること、ここで、モールドは所定の形状を有している内面を有している;モールドを加熱して、TPO粉末を少なくとも部分的に溶融させること;加熱中に、モールドを回転させて、少なくとも部分的に溶融したTPO粉末で内面をコーティングすること;およびモールドを冷却して、所定の形状を有している成形物品を形成することを含んでいる。いくつかの態様において、物品は、インストルメントパネル、A-ピラー、B-ピラー、C-ピラー、ステアリングホイールスキン、エアバッグカバー、ドアトリムパネル、ドアハンドル、ピラーハンドル、ルーフハンドル、センターコンソール、ニーボルスター、シートメカニズムカバー、またはサンバイザーなどの自動車車両コンポーネントである。
【0016】
さらなる特徴および利点は、添付の図面と併せて以下の説明および添付の特許請求の範囲から確認することができる。
【0017】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本技術の種々の態様によるTPO材料を含んでいる内装トリムパネルを示している斜視図である。
【0018】
図2は、内装トリムパネルを示している
図1の線2-2に沿った断面図である。
【0019】
図3は、本技術の種々の態様によるTPO材料を含んでいる物品を示している斜視図である。
【0020】
図4は、本技術の種々の態様による第1の抗菌性TPO材料を示している斜視図である。
【0021】
図5は、本技術の種々の態様による第2の抗菌性TPO材料を示している斜視図である。
【0022】
図6は、本技術の種々の態様による第3の抗菌性TPO材料を示している斜視図である。
【0023】
図7は、本技術の種々の態様による少なくとも1つのサブレイヤー上に配置された抗菌性TPO材料を示している斜視図である。
【0024】
図8は、本技術の種々の態様によるTPO粉末を作製する方法を示しているダイアグラムフローチャートである。
【0025】
図9は、本技術の種々の態様によるTPO材料から構成された物品を製造する方法を示しているダイアグラムフローチャートである。
【0026】
〔詳細な説明〕
本技術のTPO組成物は、スラッシュ成形、フィルムキャスティング、および熱成形によって物品を調製するように構成され、その結果、物品はTPO組成物に由来するTPO材料を含んでいる。TPO組成物は、ペレットまたは粉末の形態であり得る。物品は、例えば、インストルメントパネル、A-ピラー、B-ピラー、C-ピラー、ステアリングホイールスキン、エアバッグカバー、ドアトリムパネル、ドアハンドル、ピラーハンドル、ルーフハンドル、センターコンソール、ニーボルスター、シートメカニズムカバー、サンバイザーなどの自動車車両の内装コンポーネントである。
【0027】
車輪付き自動車陸上車両用の内装トリムパネルを
図1および
図2に示す。内装トリムパネルは、好ましくはインストルメントパネル10であるが、交互に、センターコンソール12、別個のエアバッグカバー、ドアトリムパネル、ニーボルスター、シートメカニズムカバー、ピラーカバー等を含んでもよい。ステアリングホイール29もまた、
図1に示されている。インストルメントパネル10は、外側スキン14と、中間の柔軟なフォーム層16と、内側の堅い基材18とを含んでいる。ステアリングホイール29は、インストルメントパネル10と同じ全体構造を有していてもよい。
【0028】
外側スキン14の部分は、一体型エアバッグドア20の役割を果たし、その後方にはシュート24を含むエアバッグアセンブリ22がある。一体型エアバッグドア20は、膨張するエアバッグが外側スキン14におけるテアシーム28を破裂させると、略水平方向に延伸した基材エッジ26に隣接する上下の屈曲線を中心に蝶動または枢動する。そのため、テアシーム28は壊れやすい。「継ぎ目のない(シームレス)」または継ぎ目が隠された様式の外側スキン14が好ましく、それにより、壊れやすいテアシーム28はその裏面にあり、車両の乗員またはユーザには見えない。テアシーム28は、好ましくはH字形状を有するが、U字形状およびX字形状などの他の構成を採用することもできる。
【0029】
テアシーム28は、例えば、ガントリー駆動レーザまたは関節式ロボット駆動ナイフを用いて作製することができ、ガントリー駆動レーザまたは関節式ロボット駆動ナイフは、外側スキン14を部分的に切断するまたは切込みを入れるために、それが形成された後に外側スキン14の裏面に沿って水平にスライドする。切込みを入れた後に残っているテアシーム28の材料は、約0.3mm以上、約0.66mm以下であり、平均約0.50mmである。より薄いテアシームが利用可能であるが、それが約0.457mm未満である場合、切込み線は部品の表面を通して読み取られるであろう。したがって、切込みの深さは、スキンの厚さの半分よりも大きいが、全体よりも小さい。約120℃で約1000時間加熱すると、スキン上の切込み線は、いかなる修復または再結合も示さない。言い換えれば、本技術のTPO材料は、壊れやすいテアシーム28の自己修復を示さず、そして、部分的に切断され分離された壁の様式において切込み線を維持するために役立つ。さらに、壊れやすいテアシーム28を有している一体型エアバッグドア20はTPO材料を含んでいるので、約-30℃、約23℃、約80℃、または約120℃の温度でのエアバッグ展開からスキンの破砕は生じない。それにもかかわらず、
図1および
図2を参照して記載されたコンポーネントの全ては、TPO組成物から成型、熱成形、またはスラッシュ成形され得る。
【0030】
TPO組成物は、TPOペレットであろうとTPO粉末の粒子であろうと、約50重量%以上、約70重量%以下の濃度のOBCと、約10重量%以上、約50重量%以下の濃度のポリプロピレンコポリマーまたは約10重量%以上、約20重量%以下の濃度のポリプロピレンコポリマーと、を含んでおり、重量%は粒子の総重量に基づく。別段の記載がない限り、「TPO組成物」は、TPOペレットまたはTPO粉末粒子のいずれかであり得ることが理解される。
【0031】
OBCは、エチレン-1-オクテンコポリマーを含んでおり、エチレン-1-オクテンコポリマーは、エチレン-1-オクテンコポリマーの総重量に基づき、約50重量%以上、約70重量%以下のエチレンを有している。エチレン-1-オクテンコポリマーは、約0.887g/cm3以上、約0.95g/cm3以下の密度、およびASTM D-1238(180℃および2.18kg)に従って測定した場合に、約5g/10分以上、約20g/10分以下のメルトフローレートを有している。
【0032】
ポリプロピレンコポリマーは高度に結晶性であり、例えば、約30J/m以上、約40J/m以下の低い衝撃強度(例えば、35J/m)、およびASTM D-1238(230℃および2.16kg)に従って測定した場合に、約75g/10分以上、約125g/10分以下の高いメルトフローレート(例えば、約100g/10分の例示的なメルトフローレート)を有している。
【0033】
TPO組成物はまた、接着促進剤(相溶化剤と呼ばれてもよい)を、約1重量%以上、約10重量%以下の濃度で含むことができる。接着促進剤は、無水マレイン酸グラフトOBCであり、ここで、OBCは、上記のとおり、ポリプロピレンコポリマーと組み合わせられるものと同じOBCであり得る。例えば、粉末は、OBCとしてエチレン-1-オクテンコポリマーと、接着促進剤として無水マレイン酸グラフトエチレン-1-オクテンコポリマーと、を含むことができる。いくつかの態様において、接着促進剤は、約95重量%以上、約98重量%以下の濃度での無水マレイン酸グラフトエチレン-1-オクテンコポリマーと、約1重量%以上、約3重量%以下の濃度での無水マレイン酸と、約1重量%以上、約2重量%以下の濃度でのN-エチルエチレンジアミンと、を含んでおり、重量%は接着促進剤の総重量に基づく。
【0034】
TPO組成物はまた、約0.1重量%以上、約0.8重量%以下の濃度で、安定剤添加剤を含むことができる。安定剤添加剤は硫黄を含むことができ、あるいは実質的に硫黄を含まないか、または硫黄を含まないことができる。「実質的に硫黄を含まない」とは、硫黄が安定剤添加剤中に意図的に含まれないことを意味するが、硫黄は、安定剤添加剤の総重量に基づいて約5重量%以下の濃度で不純物として存在してもよい。安定剤添加剤の非限定的な例は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル-ヘキサデカノエート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル-オクタデカノエート、およびそれらの組合せを含む。
【0035】
付加物組成物成分はまた、約2重量%以上、約6重量%以下の濃度で、TPO組成物中に含まれ得る。付加物組成物は、少なくとも光安定剤、少なくとも1種の着色顔料、またはそれらの組合せを含む。光安定剤は、可視光安定剤および/または紫外(UV)光安定剤であってもよく、非移行性ヒンダードアミン光安定剤(HALS)であってもよい。光安定剤および少なくとも1種の着色顔料は、約0.3重量%以上、約3重量%以下の濃度で付加物組成物中に提供される。
【0036】
TPO組成物は、約3重量%以上、約10重量%以下の濃度で密度調整剤をさらに含むことができる。密度調整剤は、非限定的な例として、タルクなどの含水ケイ酸マグネシウム鉱物であり得る。密度調整剤は、TPO粉末の嵩密度を増加させ、従って改善する。ある態様において、TPO粉末の嵩密度は、約18lb/ft3以上、約21lb/ft3以下である。
【0037】
TPO組成物はさらに、耐擦れおよび耐キズ付き添加剤を含むことができる。耐擦れおよび耐キズ付き添加剤は、擦れ、キズ付き、および引っ掻きに抵抗するためのTPO組成物の能力を改善する。耐擦れおよび耐キズ付き添加剤は、非限定的な例として、アミド、潤滑剤(シリコンオイルを含む)、有機変性シロキサン、およびグラフトポリマーを含んでいる。例示的かつ非限定的な耐擦れおよび耐キズ付き添加剤は、NOF(登録商標)-ALLOY KA832引っ掻き改善剤(NOF社)である。
【0038】
TPO粉末の粒子は実質的に均一な形状(例えば、実質的に球形)およびサイズを有し、粒径は、約50μm以上、約500μm以下であるか、または約100μm以上、約200μm以下である。さらに、粒子は、約75%以上、約80%以上、または約90%以上の粒子が、約30μm以下、約20μm以下、約15μm以下、または約10μm以下の+/-サイズ偏差を有している点で、狭いサイズ分布を有している。TPO粉末はまた、約26°以上、約34°以下の安息角を特徴とする。
【0039】
図3を参照すると、TPO組成物は、上述のとおり、物品42に、スラッシュ成形されるように(すなわち、TPO粉末からスラッシュおよび回転により成形された)、フィルムキャスティングされるように、または熱成形されるように構成される。したがって、物品42は、TPOマトリックスを有しているTPO材料44を含んでいる。本明細書で使用される場合、「TPOマトリックス」は、TPO組成物から形成されたバルクTPOポリマー系の組成物である。所定の適用に応じて、TPO材料44は、合成皮革または他の可撓性軟質スキンのように可撓性かつ軟質であり得るか、または比較的堅くてもよい。TPO材料44の硬度、剛性、および可撓性は、TPOマトリックスによって提供される。したがって、TPO材料44を含んでいる物品42は、TPOの成分、すなわち、OBC、ポリプロピレンコポリマー、および任意の接着促進剤、安定剤添加剤、付加物組成物、および/または密度調整剤を含んでいる。
【0040】
いくつかの態様において、
図3に示すとおり、TPO材料44を含んでいる物品42は、可撓性軟質スキンである。可撓性軟質スキンは、ポリウレタンフォームなどの連続気泡フォーム46の上および周囲に配置することができる。連続気泡フォーム46は、堅い基材48とTPO材料44との間に配置される。粘着剤は、連続気泡フォーム46と可撓性軟質スキンとの間に適用することができるが、TPO材料44は、約3N/in以上の接着剥離強度で連続気泡フォーム46に直接的に結合する。そのため、いくつかの追加の態様において、接着剤は、可撓性軟質スキンを連続気泡フォーム46に接着するために存在するのではない。可撓性軟質スキンは、約120℃で約500時間、熱老化を受けると、可撓性軟質スキンは約30%を超えて変化しない伸び、約30%を超えて変化しない引張強度を示し、可撓性スキンが壊れやすいテアシームを有している場合、約30%を超えて変化しない引き裂き強度を示す。
【0041】
ある態様において、TPO組成物は、抗菌剤をさらに含むことができ、その結果、TPO組成物から形成されたTPO材料は抗菌性TPO材料である。本明細書で使用される場合、用語「抗菌性の」は、抗菌性TPO組成物が抗ウイルス特性を有していることを提供し、その結果、抗菌性TPO組成物から形成された抗菌性TPO材料は、抗ウイルス性材料であり、いくつかの態様において、抗菌特性も有している、すなわち、抗菌性TPO材料は、抗ウイルス性および抗菌性のTPO材料であり得る、および/または抗真菌特性も有し得る、すなわち、抗菌性TPO材料は、抗ウイルス性および抗菌性および/または抗真菌性TPO材料であり得る。そのため、ウイルスが抗菌性TPO材料に接触すると、ウイルスは無力化され、不活化され、破壊され、または「殺され」、その結果、ウイルスは、もはや対象に感染することができない。同様に、抗菌性TPO材料が抗菌特性を有している場合、細菌が抗菌性TPO材料に接触すると、細菌は殺される。用語「抗ウイルス性」は、抗ウイルス性材料が、少なくともSARS-CoV-2を無力化し、不活化し、破壊し、または「殺し」、いくつかの態様において、他のコロナウイルスを含む他のウイルスも殺すことを提供する。抗菌性TPO材料は、その能力に起因して、抗ウイルス活性を有しており、例えば、ウイルス表面上のタンパク質構造を変性させることによってウイルス宿主細胞認識を妨げ、ウイルスのエンベロープの存在に関係なく、ウイルスの不活化をもたらす。抗菌性TPO材料は、SARS-CoV-2ウイルス粒子またはプラーク形成単位(PFUs)の約90%以上、約95%以上、約98%以上、または約99%以上(例えば、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99.9%)を、約4時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約45分以下、約30分以下、または約15分以下で無力化し、不活化し、破壊し、または「殺す」。
【0042】
したがって、
図4を参照すると、本技術は、抗菌性TPO組成物から形成された抗菌性TPO材料50を提供する。抗菌性TPO材料50は、
図3のTPO材料と同じであるが、抗菌剤をさらに含んでいる。抗菌性TPO材料50は、TPOマトリックス52と、TPOマトリックス52内に配置されたおよび/または埋め込まれたグラフェン粒子54と、を含んでおり、露出面55を含んでいる。したがって、TPOマトリックス52は、グラフェン粒子54などの抗菌性粒子を埋め込む硬化TPOポリマーを含んでいる。所定の適用に応じて、抗菌性TPO材料50は、可撓性かつ軟質であり得るか、または比較的堅くてもよい。抗菌性TPO材料50の硬度、剛性、および可撓性は、TPOマトリックス52によって提供される。
【0043】
グラフェン粒子54は、非限定的な例として、少なくとも抗ウイルス活性を提供する、酸化グラフェンなどのグラフェンまたはグラフェン派生物を含んでいる、抗菌性粒子またはフレークである。グラフェン粒子54は、1層以上、10層以下を有するか、または6層以上、10層以下を有し、各層は、2次元ハニカム形状の格子内に配置された炭素原子を含んでいる。種々の態様において、グラフェン粒子54は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10の層を有している。グラフェン粒子54は、約750nm以上、約250μm以下の直径、約1μm以上、約100μm以下の直径、または約1μm以上、約50μm以下の直径を有している。
【0044】
理論に束縛されるものではないが、グラフェンおよびグラフェン派生物(例えば、酸化グラフェン)の抗菌特性は、それらの電子が微生物に向かって動くことに起因し得る。この移動は、細胞質流出を引き起こし、代謝を低下させ、脂質膜に影響を与え、酸化ストレスを誘導し、活性酸素種(ROS)を産生し、グルタチオンの消失を導き、且つ微生物死を引き起こす。非限定的な例として、グラフェンを使用して、SARS-CoV株を含む種々のコロナウイルスを殺すことができる。
【0045】
いくつかの態様において、抗菌性TPO材料50は追加の抗菌剤を含む。
図5および
図6は、TPOマトリックス52およびグラフェン粒子54を含んでいる抗菌性TPO材料50a、50bを示している。
図5および
図6の抗菌性TPO材料50a、50bは金属酸化物粒子56をさらに含み、金属酸化物粒子56はまた、グラフェン粒子54に関して上記で規定したとおり、少なくとも抗ウイルス活性を提供する。金属酸化物粒子56は、酸化第一銅(Cu
2O)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、酸化銀(Ag
2O)、またはそれらの組み合わせを含む。これらの金属酸化物粒子56は、Cu
1+、Ag
1+、および/またはZn
2+などの抗菌性イオンを放出し、抗菌性表面を調製するために使用される。グラフェンおよび/または酸化グラフェンは、これらのイオンの抗菌活性をさらに促進し、有効性を改善することができる。金属酸化物粒子56は、約100nm以上、約100μm以下の直径、約200nm以上、約10μm以下の直径、約250nm以上、約5μm以下の直径、または約250nm以上、約1.8μm以下の直径を有している。
【0046】
図5に示すとおり、グラフェン粒子54および金属酸化物粒子56は、抗菌性TPO材料50aにおけるTPOマトリックス52全体に個別に均一に分散されている。「個別に均一に分散された」とは、グラフェン粒子54および金属酸化物粒子56が互いを考慮せずにTPOマトリックス52内でブレンドされることを意味する。グラフェン粒子54および金属酸化物粒子56のいくつかが互いに接触していてもよいが、接触はランダムであり、後述するとおり、抗菌性TPO材料50aを製造する方法の混合工程のアーチファクトである。したがって、グラフェン粒子54の部分と金属酸化物粒子56の部分との接触は意図されていないが、接触が存在してもよい。
【0047】
図6に示すとおり、グラフェン粒子54および金属酸化物粒子56は、抗菌性TPO材料50bにおけるTPOマトリックス52全体に均一に分散されたグラフェン-金属酸化物粒子複合体54,56として存在する。そのため、グラフェン粒子54は、グラフェン-金属酸化物粒子複合体54,56中に金属酸化物粒子56を担持する。それにもかかわらず、グラフェン-金属酸化物粒子複合体54,56中ではなく、TPOマトリックス52中に個別に存在するグラフェン粒子54および/または金属酸化物粒子56の一部(すなわち少数部分)が存在し得ることが理解される。以下に論じるとおり、グラフェン-金属酸化物粒子複合体54,56は、製造プロセスの間にTPOマトリックス52を規定するポリマーとブレンドする前に形成される。
【0048】
本明細書に提供された本技術の説明の全てにおいて、抗菌性TPO材料50は、別段の記載がない限り、代替的に、
図5の抗菌性TPO材料50aまたは
図6の抗菌性TPO材料50bのいずれかであり得る。
【0049】
図4の抗菌性TPO材料50は、ポリマー成分、すなわちOBC、ポリプロピレンコポリマー、および接着促進剤(存在する場合)を有しているTPOマトリックス52を、約50重量%以上、約99重量%以下の濃度で含んでいる。グラフェン粒子54は、約0.05重量%以上、約10重量%以下の、約0.1重量%以上、約5重量%以下の、または約0.25重量%以上、約1重量%以下の、抗菌性TPO材料50中の濃度を有し、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.15重量%、約0.2重量%、約0.25重量%、約0.3重量%、約0.35重量%、約0.4重量%、約0.45重量%、約0.5重量%、約0.55重量%、約0.6重量%、約0.65重量%、約0.7重量%、約0.75重量%、約0.8重量%、約0.85重量%、約0.9重量%、約0.95重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%、約4重量%、約4.5重量%、約5重量%、約5.5重量%、約6重量%、約6.5重量%、約7重量%、約7.5重量%、約8重量%、約8.5重量%、約9重量%、約9.5重量%、または約10重量%の濃度で含んでいる。TPOマトリックス52はまた、TPO組成物と共に存在する場合、安定剤添加剤、付加物組成物、および/または密度調整剤を含んでいる。
【0050】
図5および
図6の抗菌性TPO材料50a、50bは、抗菌性TPO材料50と同じ組成物を有しているが、0重量%を超えて、約20重量%以下の金属酸化物粒子56をさらに含んでいる。金属酸化物粒子56が1種よりも多い金属酸化物(例えば、Cu
2OまたはZnOのうちの少なくとも1種など)を含んでいる場合、Cu
2OまたはZnOは、金属酸化物粒子56の0重量%以上、約20重量%以下の濃度で、個々に存在するが、ただし、Cu
2O粒子またはZnO粒子のうちの少なくとも1種は抗菌性TPO材料50a、50b中に存在する。したがって、抗菌性TPO材料50a、50bは、Cu
2O粒子またはZnO粒子の少なくとも1種を、0重量%を超えて、約20重量%以下含んでいる。重量%は、抗菌性TPO材料50a、50bの総重量に基づく。
【0051】
図7を参照すると、いくつかの態様において、抗菌性TPO材料50は、第1のサブレイヤーまたは基材58の上、その周り、およびその上に直接配置される。第1のサブレイヤーまたは基材58は、特に抗菌性TPO材料50が軟質かつ可撓性である場合には圧縮性フォームとすることができ、または特に抗菌性TPO材料50が堅い場合には、堅い基材とすることができる。さらに、第1のサブレイヤーまたは基材58は、第2のサブレイヤーまたは基材60上に配置することができる。例えば、種々の態様において、抗菌性TPO材料50は、圧縮性フォームの第1のサブレイヤーまたは基材58の上に配置された軟質の可撓性材料(例えば、合成皮革など)である。圧縮性フォームの第1のサブレイヤーまたは基材58自体は、堅い第2のサブレイヤーまたは基材60上に配置される。
【0052】
本明細書中に記載された抗菌性TPO材料50、50a、50bは、少なくとも本明細書中に記載された成分を含み得る。しかしながら、抗菌性TPO材料50、50a、50bは代替的に、本明細書に記載された成分または本明細書に記載された成分の一部に限定され得ることが理解される。例えば、抗菌性TPO材料50は、グラフェンを含んでいるか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる抗菌剤を含むことができる。「から本質的になる」とは、抗菌性TPO材料50が、意図的に、抗菌剤としてグラフェンのみを含み、任意の他の抗菌剤を実質的に含まないことを意味する。「実質的に含まない」とは、さらなる抗菌剤が不純物として、微量、すなわち約5重量%以下または約1重量%以下含まれていてもよいことを意味し、ここで、微量は、グラフェンによって提供された抗菌活性に影響しない。同様に、抗菌性TPO材料50a、50bは、グラフェンおよびCu2O、ZnO、またはAg2Oの少なくとも1種を含んでいるか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる抗菌剤を含むことができる。
【0053】
図8を参照すると、本技術はまた、TPOペレットおよびTPO粉末を含んでいるTPO組成物を製造する方法100を提供し、TPO粉末はスラッシュ成形グレードである。TPOペレットは、約1mm以上、約10mm以下の直径、または約1mm以上、約6mm以下の直径を有している。ブロック102において、方法100は、OBC、ポリプロピレン、および任意の接着促進剤、安定剤添加剤、付加物組成物、密度調整剤、および/または抗菌剤を一緒に組み合わせて混合して、混合物を形成することを含んでいる。次に、ブロック104において、方法100は、混合物を溶融混錬し且つ押し出して押出材を形成することを含んでいる。溶融混錬および押出は、例えば、二軸押出機を用いて行われる。押出材は、中空ではない単一の糸であってもよいし、または例えば円筒または管などの中空内部を有していてもよい。任意成分は、溶融混錬および押し出し中に混合物に添加することができる。任意成分は、密度調整剤(得られるTPO組成物の嵩密度を変更および改善するため)、安定剤、顔料(または着色剤)、耐擦れおよび耐キズ付き添加剤(例えば、20g/10分のNOF(登録商標-ALLOY KA832引っ掻き改善剤)、またはそれらの組み合わせを含む。安定剤および顔料は、上記のとおり、単一の付加物組成物において提供され得る。
【0054】
次に、ブロック106において、方法100は、押出材をペレット化してTPOペレットを形成することを含んでいる。ペレット化は、押出材を切断または粉砕してTPOペレットにすることによって行われる。
【0055】
ブロック107に示されるとおり、方法100は、TPOペレットを加工して人工皮革または圧延膜を形成することを含んでいる。この処理は、キャストフィルム加工またはカレンダー加工を含んでいる。例えば、TPOペレットをカレンダー加工/キャストフィルム押出機に供給して、圧延フィルムを得ることができる。人工皮革または圧延膜は、切断および縫製および/または熱成形によって加工可能である。
【0056】
ブロック108において、この方法は、TPOペレットを粉砕してTPO粉末を形成することを含んでいる。粉砕は、例えば、水中粉砕、すなわち水中で粉砕して、所望の粒子形状および粒度分散を達成することを含むことができ、その結果、粒子は約500μm以下の開口を有しているふるいを通過する。密度調整剤をTPO粉末に添加して、TPO粉末の嵩密度を調整し、且つ改善することができる。
【0057】
図9を参照すると、本技術はまた、TPO粉末から物品を製造する方法110を提供する。ブロック112において、方法110は、TPO粉末をモールドの内部に導入することを含み、モールドは、所定の形状を有している内面を有している。次に、ブロック114において、方法110は、モールドを加熱してTPO粉末を少なくとも部分的に溶融させることを含んでいる。ブロック116において、方法110は、加熱中に、モールドを回転させて、少なくとも部分的に溶融したTPO粉末で内面をコーティングすることを含んでいる。ブロック118に示されるとおり、方法110は、次いで、モールドを冷却して、所定の形状を有している成形物品を形成することを含んでいる。
【0058】
上記の実施形態の説明は、例示および説明の目的で提供されている。これは、網羅的であることも、本開示を限定することも意図していない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は一般に、その特定の実施形態に限定されないが、適用可能な場合に、交換可能であり、たとえ具体的に示されるかまたは説明されていなくても、選択された実施形態において使用することができる。同じことは、多くの方法において変更することもできる。そのような変形は、本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、そのようなすべての変更は本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、本技術の種々の態様によるTPO材料を含んでいる内装トリムパネルを示している斜視図である。
【
図2】
図2は、内装トリムパネルを示している
図1の線2-2に沿った断面図である。
【
図3】
図3は、本技術の種々の態様によるTPO材料を含んでいる物品を示している斜視図である。
【
図4】
図4は、本技術の種々の態様による第1の抗菌性TPO材料を示している斜視図である。
【
図5】
図5は、本技術の種々の態様による第2の抗菌性TPO材料を示している斜視図である。
【
図6】
図6は、本技術の種々の態様による第3の抗菌性TPO材料を示している斜視図である。
【
図7】
図7は、本技術の種々の態様による少なくとも1つのサブレイヤー上に配置された抗菌性TPO材料を示している斜視図である。
【
図8】
図8は、本技術の種々の態様によるTPO粉末を作製する方法を示しているダイアグラムフローチャートである。
【
図9】
図9は、本技術の種々の態様によるTPO材料から構成された物品を製造する方法を示しているダイアグラムフローチャートである。